Blog. 「久石譲 PIANO STORIES II Part.1-3」(1996)コンサート・パンフレットより

Poated on 2015/9/13

久石譲の過去のコンサートから

「久石譲 PIANO STORIES II ~The Wind of Lie」
Part.1 Orchestra Night (2公演)
Part.2 Ensemble Night (7公演)
Part.3 Piano Solo Night (11公演)

なんとこの1996年は、当時最新作ソロアルバム『PIANO STORIES II』を引き下げ、上のように3タイプでのコンサートが精力的に開催されました。オーケストラ編成、アンサンブル編成、ピアノ・ソロ、しかもこれが10-12月という3ヶ月間のなかで、怒涛のように全国で開催されていたわけで伝説的です。

演奏プログラムもそれぞれの編成を活かした当時の久石メロディー満載のラインナップです。当時は小ホールもそうですが、短大や学園祭でも演奏していたんですね。

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 1 Orchestra Night

[公演期間]20 PIANO STORIES II
1996/10/14-15

[公演回数]
2公演 Bunkamuraオーチャードホール(東京)

[編成]
ピアノ:久石譲
指揮:金洪才
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

[曲目]
タスマニア物語

『My Lost City』より
1920
冬の夢
Madness

『もののけ姫』より
アシタカせっ記
シシ神の森

DA・MA・SHI・絵

『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』より
Friends
Angel Springs
Highlander
Kids Return
Asian Dream Song

【Melody Fair】
魔女の宅急便
「水の旅人」より FOR YOU
「水の旅人」より THEME

—–アンコール—–
Two of Us
「ナウシカ組曲」より 鳥の人

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 2 Ensembles Night

[公演期間]20 PIANO STORIES II
1996/11/1-22

[公演回数]
全国7公演
11/1 長野県民文化会館中ホール(長野)
11/9 山口芸術短期大学(山口)
11/15 赤坂BLITZ(東京)
11/20 シアタードラマシティ(大阪)
11/21 草津文化芸術会館(滋賀)
11/22 関内ホール(横浜)

11/3 国立音楽大学講堂大ホール [国立音楽大学芸術祭]

[編成]
ピアノ:久石譲
String Quartet
Contra Bass
Marimba
Wood Wind

[曲目]
794BDH
Venus

『MKWAJU』より
MKWAJU
SHAK SHAK
LEMORE
TIRA-RIN

Tango X.T.C
Modern Strings

『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』より
Friends<ピアノソロ>
Angel Springs
Kids Return
Highlander
Les Aventuriers
Asian Dream Song

DA・MA・SHI・絵

—–アンコール—–
君だけを見ていた<ピアノソロ>
Madness

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 3 Piano Solo Night

[公演期間]20 PIANO STORIES II
1996/12/10-27

[公演回数]
全国11公演
12/10 柏崎市民会館(新潟)
12/11 砺波市文化会館(富山)
12/12 松本市文化会館(長野)
12/14 パナソニック・グローブ座(東京)
12/15 パナソニック・グローブ座(東京)
12/16 仙台電力ホール(仙台)
12/19 米子市文化ホール(鳥取)
12/21 広島アステールプラザ(広島)
12/24 中野市民会館(長野)
12/26 しらかわホール(名古屋)
12/27 いずみホール(大阪)

[編成]
ピアノ:久石譲

[曲目]
The Inners
Dream
君だけを見ていた

『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』より
Friends
Angel Springs
Kids Return (MIDI)

Fantasia for Nausicaä
Drifting in the City

Cape Hotel
Tango X.T.C
※東京公演のみゲスト。
2曲差し替え<ゲスト:茂木大輔(Oboe)>
Two of Us
DA・MA・SHI・絵

『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』より
The Wind of Life
Les Aventuriers (MIDI)
Asian Dream Song (MIDI)

—–アンコール—–
風のとおり道
Labyrinth of Eden

 

 

この伝説的コンサートを紐解くべく、当時会場で販売されたコンサート・パンフレットから、いくつかご紹介していきます。

 

 

【message】
-これは、まるでトライアスロンのような、
刺激的で、かつ知的な『久石譲の世界』だ。
”Orchestra Night 〈10月〉”
”Ensemble Night 〈11月〉”
”Piano Solo Night 〈12月〉”
漕いで、泳いで、そして走る。
エネルギーをそそいだパワフルなステージから
”最高の音楽”を演出していく、音楽の”トライアスロン”そのものなのである。

10月は『DA・MA・SHI・絵』の初演など、シンフォニックなサウンドで贅沢な響きを、11月ではミニマルを中心とした前衛的なアンサンブルで斬新なステージ構成を、12月はじっくりと落ち着いた雰囲気を醸し出すピアノ・ソロ。それぞれに個性的な表情が新鮮だ。

あの『Piano Stories』のリリースから8年。新譜『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』で、再び”原点”であるピアノに戻った久石譲が、ピアノとストリングスによる”良質”のアコースティック・インストゥルメンタルを提案している。

新作・初演に、これまで親しまれてきた曲を加えた、その1曲1曲が、ポップでアヴァンギャルドなアレンジメント・センスによって、限りなくピュアなメロディを創り出していく。

 

【楽曲解説】

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 1 Orchestra Night

■オープニングを飾る”タスマニア物語”は映画「タスマニア物語」(降旗康男監督)のメインテーマ。3拍子のリズムによって醸し出される雄大なスケール感が印象的。

■1920年代、”アール・デコ”の時代にインスピレーションを得たアルバム「My Lost City」(1992)からは”1920” ”冬の夢” ”Madness”の3曲。シンフォニック・コンサートにおいてもたびたびプログラムに取り上げられ、その美しいメロディと重厚なオーケストレーションの響きがみごとな統一感を出している。

■「もののけ姫」は1997年夏に公開予定の宮崎駿監督作品。公開に先がけてすでにイメージアルバムが発売されており、コンサートでは初演となる。”アシタカせっ記”(メインテーマ)他が演奏される予定。-「もののけ姫」は日本にとどまらず、これから世紀末を迎える、世界中のすべての人々に向けて創られるものだと思う。その音楽を手がけることになって、いま一番考えていることは、日本人としてのアイデンティティーをどう保ち、どう表現するかということである。映画の公開まで、宮崎監督との豪速球のキャッチボールが続きそうだ。「もののけ姫 イメージアルバム」より

■アルバム「α-BET-CITY」に収録されている”DA・MA・SHI・絵”はオーケストラ・バージョンでは初演となる。サンプリングを使用したミニマル的な原曲を再構成、弦・管楽器の広がりのある響きと爽快なリズムのコンビネーションが小気味良さを生み出している。

■今秋10月下旬発売予定の新譜「PIANO STORIES II ~The Wind of Life」より、5曲演奏される。オーケストラでの演奏はもちろん初演。”Friends”はトヨタ「クラウンマジェスタ」CMで、”Angel Springs”はサントリーウイスキー「山崎」CMで、それぞれなじみ深いメロディとなっている。また”Kids Return”は今年7月に公開された北野武監督の最新作「Kids Return」のメインテーマ。”Asian Dream Song”は、久石譲が総合プロデューサーを務める「長野パラリンピック冬季競技大会」(1998年開催)の大会テーマ曲として作曲された。

■Melody Fairでは、これまでに発表された数多くの作品の中から印象的なメロディ3曲を取り上げる。久石譲の魅力を再認識させてくれるような曲ばかりである。”魔女の宅急便”は1989年宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」のテーマ曲。「水の旅人」(1993年公開/大林宣彦監督作品「水の旅人 ~侍Kids~」)はオーケストラとピアノによって、よりシンフォニックに再現されたスケールの大きい作品。”THEME”は文字通り、この映画のメインテーマ、”FOR YOU”はエンディングで中山美穂が歌って話題になったが、インストとしてもとても美しい曲。

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 2 Ensembles Night

■オープニングの”794BDH”はマツダ「ファミリア4WD」CM曲。後にCM曲を集めたアルバム「CURVED MUSIC」に収録。”Sonatine”は1993年公開の北野武監督の話題作「Sonatine」メインテーマ。スリリングなメロディラインが印象的。”Modern Strings”はアルバム「I am」(1991)の中でも、ストリングスの裏アップ・ビートのカッティングが耳に残る、過激な作品。センチメンタルなタンゴの響きが懐かしい”Tango X.T.C.”は1992年のソロアルバム「My Lost City」に収録。

■『MKWAJU(ムクワジュ)』と題したこのコーナーでは、1981年にリリースされたアルバム「MKWAJU」から4曲演奏される。パーカッション・グループ、ムクワジュ・アンサンブルのために書かれたこの組曲は、アフリカの民族音がうから得た音型をもとに、アフリカのリズムが持っている多重的なリズム要素を、構造として”見せる”ことを目的として作曲した作品。ミニマル・ミュージックのおもしろさも味わえる。

■この秋の新譜「PIANO STORIES II ~The Wind of Life」は、ピアノ&ストリングスの編成を中心としたアコースティック・インスト・アルバム。このコンサートでは、久石譲のプロデュース&アレンジによるストリングス、木管等のアンサンブルが、斬新なサウンドを聴かせてくれる。『アンサンブルの魅力』を充分に堪能できる構成となっている。

■”DA・MA・SHI・絵”はアルバム「α-BET-CITY」の中の1曲。原曲は、ミニマル的なサンプリングによる弦楽器、管楽器の響きが心地よい、オーケストラ的な広がりを持つ作品。

 

 

PIANO STORIES II 〜The Wind of Life〜 Part 3 Piano Solo Night

Part 3 Piano Solo Nightでは、これまでリリースしてきた代表的なアルバムの中からセレクトした曲を、ピアノソロそして、ピアノプレーヤーとのジョイントによる演奏で構成していく。「MKWAJU」「I am」「PIANO STORIES」「PIANO STORIES II ~The Wind of Life」等は、いずれも、その音のイメージひとつひとつが吟味され表現されたアルバム。久石譲の感性が光るメロディ・ラインが、独自のピアノ・ワールドを創り上げる。

■ピアノプレーヤーとの”協演”
〈ピアノ・ソロ・ナイト〉で独自の世界を表現するのは、一人と一台の織りなす美しいハーモニー。ピアノプレーヤーがひとつのテーマを繰り返し、そこに生で演奏されるピアノが絡んでゆく。”久石ワールド”が2台のピアノによって紡ぎ出される。

「ピアノプレーヤーは、人間の可能性をより拡大するシステム。たとえば同じテーマを、ずっと同じテンポで弾くという、難しい部分を担当させています」 -久石譲

(【message】【楽曲解説】 ~コンサート・パンフレットより)

 

 

楽曲解説からもわかるとおり、コンサート編成に合わせて楽曲を再構成するという、久石譲のスタンスの土台がつくられていった、そんな時代のような気もします。

これがのちの、オーケストラ作品であれば「WORKSシリーズ」「ミニマリズム・シリーズ」、アンサンブル作品であれば、「PIANO STORIESシリーズ」や「Shoot The Violist」など。

現在からこの20年近く前を振り返れば、簡単にそう言い表せてしまうのですが、やはり久石譲音楽活動において、コンサートというのは作品になる前段階もふくめた、重要な実験の場、創作活動の源、楽曲が成長していく場のような気がしてきます。

作品化されるまでに5年以上経過するものも常ですが、コンサートで披露(しかも幾度にわたって)された作品たちは、これからもいつか作品化されていくのではないか、と。。。

たとえば、「DA・MA・SHI・絵」。オリジナルが「α-BET-CITY」(1985)に収録されているわけですが、この1996年にオーケストラ初演されてから、その後も数々のコンサートで取り上げられてきて、オーケストラバージョンとしてCD作品化されたのは「ミニマリズム」(2009)。なんと13年という月日が流れています。

アンサンブル・バージョンもおそらくこのツアーあたりが原型だと思うのですが、コンサート演奏、修正・改訂を重ね、CD作品化されたのは…「Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~」(2000)。

久石譲の音楽と歩んでいくというのは、そういうことなんじゃないかと、そんな心境で当時のパンフレットを見返していました。久石譲のエネルギーが四方に爆発し、かつそれを収拾つけるかのように多種多彩な創作活動と演奏活動。そんな当時40代の走りつづける久石譲を感じます。

 

 

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