Posted on 2021/07/07
待望のミニマリズム・シリーズ第4弾!! 久石譲のソロアルバム「ミニマリズム4」が、7月7日に発売。「コントラバス協奏曲」と「The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra」を豪華に収録した本作の発売に合わせ、ソロを務めたコントラバス奏者の石川滋氏とホルン奏者の福川伸陽氏、そして久石譲の3人による鼎談が実現しました。貴重なインタビューの模様をギュッと約10分の映像にまとめてお届けいたします。
(from Offical Youtube テキスト)
2021.7.7 Release「ミニマリズム4」 秘蔵インタビュー映像 公開!!
Joe Hisaishi “MinimalRhythm IV”
July 7th, 2021 Release!!
Universal Sigma UMCK-1682
¥3,300 (本体¥3,000+tax )
●Contrabass Concerto (2015)
1. Movement 1
2. Movement 2
3. Movement 3
●The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra (2020)
4. I. Crossing Lines
5. II. The Scaling
6. III. The Circles
All music composed, arranged and produced by Joe Hisaishi
Joe Hisaishi, conductor
Shigeru Ishikawa, solo contrabass
Nobuaki Fukukawa, Mika Toyoda, Marie Fujita, solo horns
Future Orchestra Classics
Kaoru Kondo, concertmaster
Official scores and materials on hire, are available from Zen-On Music!!
from Joe Hisaishi Official YouTube
2021.08.06 Update
英語字幕付き 公開されました。
“MinimalRhythm IV” Special Interview
Joe Hisaishi New Solo Album “MinimalRhythm IV”
[Special Interview!!]
Joe Hisaishi × Shigeru Ishikawa (contrabass) × Nobuaki Fukukawa (horn)
Interviewer: Takuya Katagiri
from Joe Hisaishi Official YouTube
(2021.08.06 Update ここまで)
このインタビューは、クラシック音楽雑誌の掲載も予定されているものじゃないかなとは思います。
書き起こし
Q.久石さんにとってのコンチェルトとは
久石:
作品をつくるというもののなかでは、やっぱり半分占めるぐらい重要なことですね。オーケストラに書く、これはオーケストラという機能のなかで一番いい、、、コンセプトによって作ります。ところが、ソリストとオケというのは、やっぱりある意味で五分五分なんですね。単純にオケが伴奏にまわるようなこともしたくはない。ですが、ソリストがオケ全員分のものを引き受けるわけですから、その楽器のことを最大限発揮させる、そして作るという、これはとても魅力的なことですから。とても大事だと思っています。
Q.コントラバスとホルンを選んだ理由とは
久石:
それは頼まれたから(笑)。最初は「読響シンフォニックライブ」ディレクターの斎藤さんから「コントラバスのコンチェルト書きませんか」と言われたのがきっかけだし、福川さんからは「ホルンのために曲書きませんか」と言われたのがきっかけなので。やっぱり言われないと書かないね。
Q.レコーディング・制作を終えて感じたことはありますか
石川:
いやもう、とにかく新しいの連続ですよね。第2楽章にピッツィカートがくるっていうのは、ピッツィカートって本来どっちかというとバックのもので伴奏するための奏法ですから、それがオーケストラの前に出た僕がやるっていう、そのアイデアからして斬新でびっくりしました。
福川:
我々演奏家って再現する人たちだから、クリエイティブなことにはなかなか通常関われないですけど、こういうことができるとちょっと演奏家冥利につきるというか、ひとつのものが生まれる瞬間に立ち会うというのは、ほんとにすごい幸せなことでしたね。
Q.はじめて譜面を見て(コントラバス・石川さん)
石川:
これちょっと長くなっちゃうかもしれない(笑)。最初は松本のホテルで譜面をいただいたんですよ。松本に僕1ヶ月近くいたので。それでもう感動して、この譜面を見るのは僕が世界で初めてだなと思って。そんなことなかなかないですよ。じゃあ弾いてみようと思ってゆっくり弾いて。この音出すの僕が世界で初めてだよなって、毎日が感動でした。難しいからちっとも弾けるようにならないんですけど。それを毎日丁寧に丁寧に積みあげていって、それで1ヶ月ぐらいですね、もうほぼ松本から帰ろうかなっていう頃に、まあゆっくりなテンポでだいたいの指使いとボーイングを決めて、こんな感じかなとイメージができて、まあなんかできたなって。そしたら次の譜面がきたんですよ。見てみたら、改訂版、全然違う(笑)。
Q.自身の作曲スタイルについて
石川:
すごいんですね。なんか彫刻を作って、次の段階でもう少し掘って、もっとさらに次ははっきりさせてとか、なんかそういうイメージだったんですけど。そういうふうに作られるんですか曲って。
久石:
村上春樹の本の書き方と同じやり方みたいですね。昨日と今日は同じ人間じゃないと。同じ久石なんだけど、昨日の自分ではもうないですよね。そうすると、昨日書いた曲は、昨日書いた曲としてちゃんととっておく。それで、今日の分、今日の分、今日の分、今日の分。それでやってみて、だけど当然悪いところは全部わかってるからね、自分のなかではね。それで、また戻って頭からやっていくときに、そこを修正しながら次のポイント考えていく。で、どうやっても詰まっちゃったら、そこまでのやり方を捨てる。あるポイントから全部捨てる。で、もう一回。ある程度出来たなあと思って、石川さんにドーンって送るわけですよね。でもそのうちオーケストレーションしていくうちに、あれまずいじゃんここ、嫌がるだろうなあと思いながら、全部捨ててまたハイって(笑)。
石川:
必ず改訂版のほうが難しいんです(笑)。
Q.はじめて譜面をみて(ホルン・福川さん)
福川:
一番最初、久石さんに曲書いてほしいなあと思った時は、ホルンとピアノとかで全然いいなと思ってたんですよ。コンチェルトだとはまったく僕も考えていなかったし。コンチェルトのほうがオーケストラがいるから、やる機会で少なくなっちゃうから。どちらかというとホルンとピアノだったら、リサイタルも僕たくさんやるので、いろんなところでできるし、久石の曲ぜったい全国で喜んでもらえるだろうなと思ったから。そしたら電話かかってきたら「コンチェルトです」ということで。「あっそうなんですか?!いや、めちゃくちゃうれしいですけどそれは」みたいな(笑)。だから実際楽譜がきて、うわぁなんじゃこりゃあ、みたいな。さっきちょっと久石さんがおっしゃったんですけど、3本のホルンが交差してほんとにもう縦横無尽に。で、実際やってみてほんと効果的に、もう音響効果としても素晴らしい。ホルン奏者としてもすごいおもしろい曲になったので、全然ホルン1本のコンチェルトじゃなくても楽しいみたいな、すごいおもしろかったですね。
Q.コンチェルトの魅力を教えてください
久石:
今まで誰もやってないことが出来る可能性があると。実はもうひとつ経済的な効果もあるんです。なんでかっていうと、コンチェルトって必ずオケ使うじゃないですか。当然ピアノ・コンチェルトでもねオケでしょ。オケでクラシックの普通のチャイコフスキーでもなんでも後半やるとしたとき、ホルンがいないわけないんですよ。そうすると、ソリスト一人とオケのセクションの人が入れば、演奏機会が少ないわけないんですよ。そうすると、例えば福川さん一人で海外のオケだとかに呼ばれて行っても、そのオケのホルン首席奏者なんかと組めば、これってどこでも演奏できるんですよね。逆に言うと、我々は演奏されてなんぼだと思うんです。書いたら。演奏していただくためにも、なんかその辺でものすごいハードルが高かったらできませんよね。だから、ちょっとそういうこともふまえて考えていったときに、福川さんの能力、オケを知り抜いてる方ですからね、そうすると新たなところでどこででも世界でもできる方法をとるとしたときは、このやり方が間違ってないかもなって思ったことも事実ですね。
Q.「The Border」の由来は?
久石:
リミット・ラインといいますかね。国境だったりとか。要するに、わりと音程がパルスのようにつながっていくのは、ひとつの地平線とか水平線とか、そういうイメージがあって。そこに向かって上がったり下がったりしていく。それをちゃんと計算されたようにつくっていくというときに、なんとなくキーになる言葉として”The Border”というのはずっとありましたね。
Q.オーケストラについて思うことを教えて下さい
久石:
オーケストラって年間で100~200回近いコンサートやるじゃないですか。そうすると、月1回これしかないというときだったら、もっとこうみんなガチンコになっちゃうと思うんですよ。だけど、ひとつの流れのなかでやっていくってなると、当然そこの節度とか距離感を保たないと人間ってやっぱりやってけないですよね。FOCなんか年に2回だからね。あっ、でもあんまり関係ないか(笑)。
福川:
いや、でもたまに会ってそこからのインスピレーション。普段全然ちがうところで活動している人たちだから「あっ、めちゃくちゃおもしろいですねこれ、その表現、タッチ」みたいなので。そこで、じゃあこうしてみようかなみたいな。そういうことをガチでやって。5日間とかで解散しちゃうので、めちゃくちゃ名残惜しく終わるんですよ。これがだから、FOCが年に100回コンサートがあるオケになったら、まあちょっと変わってくるでしょうね。
石川:
あっ、同じメンバーで?!
久石:
当然変わるよね。
(動画「2021.7.7 Release「ミニマリズム4」 秘蔵インタビュー映像 公開!!」より 書き起こし)
今後、音楽誌などで同内容が活字化される可能性も十分にあります。あくまでも会話口調をベースにテキスト化したものとしてお楽しみいただければ幸いです。
2021.07.15 追記
同インタビュー内容は、Webインタビューとしてテキスト公開されました。