Posted on 2023/11/10
作曲家・久石譲、目指す音は自然の造形美…オペラにオーケストラ指揮と挑戦続く
秋の叙勲で、旭日小綬章を受章した作曲家の久石譲(72)が企画する現代音楽のシリーズ公演「ミュージック・フューチャー」が、10回目を迎えた。同じ音型を繰り返す「ミニマル・ミュージック」の系譜に連なる作曲家を自負する久石が目指す音楽とは。(金巻有美)
10月31日、11月1日に行われた公演は、「僕がミニマルに行くきっかけを作ってくれた人」と話すこのジャンルの第一人者、テリー・ライリー(山梨県在住)をゲストに迎えた。ライリーの新曲2曲が演奏され、そのうち「Aquatic Parc Mix」は、久石が指揮棒を振った。
一方、自身の曲はチェロ曲に編曲された「揺れ動く不安と夢の球体」と、1981年のアルバム「MKWAJU」収録曲を組曲化した作品を披露。即興性の強いライリー、論理的に構築された久石、とミニマル・ミュージックの幅広さを味わえる公演となった。「やってみて、全く違うことがよく分かった」と笑う。
AI(人工知能)による作曲について、「面白いとは思うけど、『美は乱調にあり』ということまでAIに教え込むのは無理。やっぱり音楽は人間が書いていかなきゃいけないんじゃないかな」=園田寛志郎撮影
スタジオジブリのアニメや北野武監督作品などの映画音楽で、世界的に知られる。しかし、自身が目指しているのは、木の年輪や風の通り道にできる落ち葉の模様といった自然の造形美のような音楽だという。「アートは 所詮 、人間が作るもの。今の現代音楽の作曲家は戦争や災害などのインパクトによる感情的な部分を作曲に使う人が多いけど、バッハのように元々ある音の素材をきちんと組み立て、感情を押しつけない音楽が、今、一番大事な気がします」
最近力を入れているオーケストラの指揮もまた、そうした音楽を探る試みの一つ。ビブラートを抑えた奏法やオーケストラでは珍しい立奏スタイルを取り入れるなどしている。「僕は基本的に作曲家。だからこそ、その視点で余計なものを排除して骨格を表現する『新クラシック』と言えるようなアプローチができるなら、僕が指揮をする意味がある」と力を込める。
現在、「元々すごくやりたかったことの一つ」というオペラ制作の話がヨーロッパで進んでいるという。交響曲も「いっぱい書く予定」と意欲は尽きない。「作品は音楽としてどういうものかということが大事で、人から好評を得られればいいわけじゃない。だけど、観客を忘れている芸術至上主義の音楽も嫌いなんだよね」。芸術とエンターテインメント、前衛と伝統の間で格闘を続ける作曲家ならではの言葉が飛び出した。
出典:作曲家・久石譲、目指す音は自然の造形美…オペラにオーケストラ指揮と挑戦続く : 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/culture/music/20231110-OYT1T50155/
*2023年11月10日付 読売新聞夕刊 にも掲載