Info. 2026/07/10,11 「Joe Hisaishi in Concert」久石譲コンサート(ニューヨーク)開催決定!!

Posted on 2025/12/5

2026年7月10,11日、久石譲コンサートがアメリカ・ニューヨークで開催されます。共演オーケストラはセントルークス管弦楽団です。新作協奏曲のニューヨーク初演です。カーネギーホール、ナショナル交響楽団、トロント交響楽団など共同委嘱作品です。 “Info. 2026/07/10,11 「Joe Hisaishi in Concert」久石譲コンサート(ニューヨーク)開催決定!!” の続きを読む

Blog. 久石譲はお好きですか? -独白-

Posted on 2025/12/01

久石譲はお好きですか?

私は久石譲の音楽をこよなく愛するファンの一人だ。どのくらい好きかと聞かれたら、それはもう人生そのものだ。ズームアップしてみる。自分の人生の中で起きた出来事をその時々の主旋律とするなら、久石譲の音楽はその時々の対旋律だ。どんな小さなメロディも豊かにしてくれるカウンターメロディ、絡み合い寄り添い共に歩むことができている。

生活するうえで「衣食住」は基盤だが、「衣音住」であったらいいなとすら思う。音楽を食べるように味わいたい。音楽が体や心の栄養になって補給してくれたらどれほど潤い満たされるだろう。

久石譲の熱烈なファンはグローバルに星の数ほどいる。応援する輝きもさまざまだ。私といえば「一応おさえている」という程度ではないことは確かだと思う。周りがどのように思い、どのような印象を抱いているのかはわからない。突然こんな話を聞かされても引くと思うがいったん話をさせてほしい。もしよければ聞いてほしい。

私がこれから言うことはシンプルで最強である。《久石譲コンサートはオール久石譲プログラム》で聴きたい。

 

 

一. 実録

2025年9月26日、大阪 ザ・シンフォニーホールで「日本センチュリー交響楽団 定期演奏会 #292」が開催された。久石譲が登場するコンサートはSOLD OUTに国際色豊かな観客層、この二つはもう名物と言っていい。近年、私が足を運んだコンサートでも座席の両隣が海外客、あるいは前後左右を見渡して世界地図のようにバラエティな海外客に囲まれることも珍しくはない。

だが、その日は一点だけが異なっていた。私の隣に座ったのは欧米人の若い男性二人組だった。その一人がめちゃくちゃ果敢に話しかけてくるのだ。英語でしゃべれると思った?最初に何か話しかけてきた時それ理解してそうな顔してた?、レベルは察知したようで一生懸命に日本語を頭の上で探しながら、また話かけてくる。私は私で一生懸命に英語を頭の上で探しながら、なんとか応えようとする。欧米人は拙い日本語で、日本人は拙い英語で、となんともちぐはぐな会話で暴投よろしくキャッチボールを繰り返した。

お互いの悪送球をカバーリングするとこうだ。

「写真撮影はOKですか?」~「この公演は写真撮影NGです」/「みんなが撮影している時はOKですか?」~「基本NGです。終演後とか舞台に誰もいない時は一枚くらいはいいかもね メイビーだけど」/「でもそれだと久石譲はいませんね」~ お互いに顔を見合わせ苦笑い

「久石譲の曲がたくさん聴けると思ってました」「私はこのプログラム(クラシック)の曲を知りません」「残念です」「スタジオジブリの曲はやりますか?」「私はそれで好きになりました」「残念です」「あなたも久石譲の曲が聴きたかったでしょ」~「そうですね」 お互いに顔を見合わせ苦笑い

あとは、休憩時間に入った時、何分くらいか?後半はどのくらいの時間か?とか。アンコールが終われば、今の曲はなんていう曲?とか。入口に掲示してると思いますよって言ったつもりだが伝わったのどうかは怪しいところだ。

 

 

一. クラシック作品との並列

久石譲は作曲家視点でクラシック音楽を読み解き現代的アプローチで演奏することの意義を、そして何百年と残ってきたクラシック作品と現在の自作品をプログラムで並べることの意義を語り、実際に2009年から本格的に実践してきた。この16年間でそれはもう証明できた、と私はどの立場から物を言ってもそう思っている。久石譲指揮 ベートーヴェン交響曲全集など賞も受賞し高い評価を得ている。

久石譲はもうそこの人じゃない。他作品ばかりで自作品をやらないのは、結果的に自作品の価値を下げていることにはならないだろうか。いい曲ありますからそっちをやりますとされたら、久石譲のよりもそっちのほうがすごいんだ、だって本人が自分の曲を差し置いてそっちを選んでるんだから、ってならないだろうか。そんなことはない!それは絶対に違う!この文章を書きながら頭を左右に振りすぎて少しくらくらする。

新しいフェーズは他者が並列プログラムするかをぜひ時代の必見ポイントにしたい。日本の海外の指揮者・オーケストラが、クラシック音楽と久石譲音楽を並べた演奏会を積極的に開催する。しびれる展開だ。きっとその未来は近づいていると確信している。

 

 

一. コンセプトとプログラム

なぜこの作品をプログラムするのか。意図や狙いがしっかりとあるものもある。ベートーヴェン交響曲と久石譲、ブラームス交響曲と久石譲、スティーヴ・ライヒと久石譲、などはすぐに思い当たる。そればかりか、久石譲コンサートで取り上げることでその作品の再評価を促したり、世界初録音もしくはそれに近い役割を果たすケースもある。だがしかした。だからゆえにだ。なんともその輝きすぎる功績に悩ましい限りだ。

久石譲が振るクラシックは新しい魅力で妙にたまらないのだ。昔からあったベートーヴェンに心躍らされわくわくしてしまう。今はじめて知った音楽に豊かな体験をさせられてしまう。どんな作品を取り上げても、その音楽のどこかに久石譲らしさを感じてしまうのだ。録音が音源化されるとあれば条件反射で浮かれてしまう。いけない、心を強く持て。私の高揚感よ鎮まれ。

その時代のために作品を書き、しかも作品の価値が時代を超えることの素晴らしさがある。「ベートーヴェン:第九」と並べることで傑作際立つ「久石譲:Orbis」しかり、「ライヒ:砂漠の音楽」と並べることで存在感膨れる「久石譲:The End of the World」しかり。時空でつながるリスペクトと境地への相乗効果だ。だからこそ今一番演奏されるべきは久石譲作品であると言いたい。いまの時代のために作品を書いているのだから。

MUSIC FUTUREコンサート・シリーズはその限りではない。

 

 

一. クラシック演奏会

久石譲は日本のみならず世界の名立たるオーケストラのシーズンプログラムで定期演奏会/特別演奏会に登場している。一口にクラシック演奏会だ。そこでこそ自作の交響曲・交響作品・協奏曲・室内楽が聴きたい。こんなことは誰にでも出来ることではない。作曲家自らが指揮をする。これに勝る価値と喜びはない。

スタジオジブリ作品からアンコール演奏されることもある。観客の無言の期待値は計り知れない。そうしてサービス感が満たされることもある。いや、もっていかれることもあるかもしれない。ライブラリを訪ねるとアンコール候補は360度くまなくある。周知の事実だ。久石譲が手掛けたエンターテインメント音楽はタイアップを知らない世代もいる。しかるにそれは、色眼鏡のない純粋に素晴らしい音楽として観客は楽しめるということ。どうしてこの曲を選んだんだろう? いい曲だからだ。

グラモフォンから世界リリースされたベスト盤2枚からセレクトするなら、コンサート会場での物販にも好影響だろう。コンサートの思い出を持ち帰れることにも好影響だろう。

仮に演目が変更になっても問題ないクラシック作品を挙げるのは心からもったいない。

 

 

一. 作曲家と指揮者

久石譲よりも若い世代の日本人作曲家が、自作の交響曲とマーラー交響曲を並べるコンサートを開催するなどニュースを耳にする。彼らもまた映画・ドラマで引っ張りだこの作曲家だ。久石譲が進んできた道のりには、いい風をつかまえることができる。もしまだ追随できないものがあるとするなら、それは書き下ろした作品を指揮者とオーケストラに託すかどうかだ。

自らの意思でその細部までコントロールして思うままのサウンドを作りあげる。他者の解釈が混ざらないピュアゴールドの輝きだ。あるいは、それは一流シェフが存分に腕を振るう特別ディナーみたいなもので、出されたものをただもう美味しくいただくしかない。作曲家久石譲・指揮者久石譲の演奏を余すところなく堪能できるのは時代のギフトだ。

 

 

一. ジョン・ウィリアムズ

映画音楽の世界的巨匠だ。たとえ映画は見たことがなくてもその音楽は聴いたことある。そんな人も世代とともに広がりをみせる。ジョン・ウィリアムズの映画音楽をプログラムしたコンサートは世界各地で開催されている。そして自ら指揮を振るコンサートとあらばその熱狂ぶりはプレミアものだ。

もし、自国にジョン・ウィリアムズが来てくれて待望のコンサートを開催したときに、そこで映画音楽をしなかったらがっかりする。それでも自作の交響曲や協奏曲が聴けるなら純度100%でうれしい。ジョン・ウィリアムズの音楽とわかるコンサートだ。その時「これは素晴らしい曲なんですよ」と全く他作品ばかりされたら心からがっかりする。はたまた、ジョン・ウィリアムズの母国に海外旅行中に運よくコンサートも開催される。そこでも同じことが起こる。せっかくのラッキーチャンスも目減りする。どうして自分の曲をやらないんだろうと純粋な疑問と不思議で頭の中はいっぱい帰国することになる。

上の文章からジョン・ウィリアムズを久石譲に置き換えてもセンテンスは成立するだろうか。

 

 

一. ポップスで考える

もし、宇多田ヒカルや米津玄師が「この曲に影響受けました」「めっちゃいい曲だから聴いてほしい」とライブでカバー曲ばかりしたらどうなるだろうか。インタビューなどで影響のバックボーンを知ることはファンにとってうれしい。リスナーの音楽フィールドも広がる。私ならすぐに曲を探して聴く。ライブのセットリストで1,2曲ならやってくれた希少さと喜びに沸くだろう。好きなアーティスト色に染まって聴ける曲はなんとも贅沢だ。しかしながら、セットリストの半分もそれ以上もカバー曲だったらファンは納得しないだろう。私たちはその流れを受けて生まれたあなたの曲が聴きたい。だって今を生きているのだから。

 

 

一. オーケストラ界

映画音楽は今や作曲家にとってのメインストリームだ。モーツァルト、ベートーヴェン、チャイコフスキー、彼らの序曲・歌劇・組曲は映画音楽のドラマティックさに匹敵する。時代が違えは映画音楽を書いただろう。それ以降続くオペラ・ミュージカル・バレエもそうだ。全てが当時のメインストリームであり歴史の中でクラシックになったのだ。時代のエンターテインメントがアートとなり遺ったのだ。はっきり言う。オーケストラの魅力を発揮する作品であるならばクラシックも映画音楽も素晴らしさは変わらない。

今の時代の作品をやってやってやって、それでもベートーヴェンが残る未来なら受け入れよう。でも現状はきっとそうじゃない。スポーツ界にもレジェンドはたくさんいる。そして今をときめくスーパースターもいる。昔の偉人はすごいよ、それはわかる、リスペクトも惜しまない。彼らがいたから今があるのだとしたら受け継いだものにこそ時代の共感性は最大限に生まれるのではないか。順番が逆だ。スーパースターが輝いてこそレジェンドにも光が伸びる。そう信じたい。

今のこの状況をどう了解するのがよいのかわからなくなる。

 

 

一. オフィシャルスコア

近年、久石譲作品のオフィシャルスコアも少しずつではあるが充実をみせている。ショット・ミュージックや全音楽譜出版社に加えてブージー・アンド・ホークスと音楽出版契約を結び演奏団体へのスコアレンタルも基盤が整う。これは同時に、世界中でどの久石譲作品が演奏されているのか把握できるというメリットもある。今年演奏された作曲家ランキングのようなニュースはこうした公式楽譜を管理する出版契約あっての統計だ。非公式楽譜のプログラムは含まれない。

ファンとしては片手にアルバム、片手にスコアを並べて心ゆくまで久石譲音楽を楽しみたいところだ。まずは、演奏してくれる人たちへの紹介と環境づくりはもっともだ。願わくは原典版から進化した改訂版が存在することを、その音源とスコアのアップデートもしっかりと形にしてほしい。びっくりするほど素晴らしい改訂版があるのに、いつまでも何十年も前のバージョンが演奏されたりそれが広まったり、そんな未来は想像したくない。作曲家として名を残し十全な作品ラインナップを実現してほしい。

 

 

一. スティーヴ・ライヒ

『スティーヴ・ライヒ対談集』その中で彼の2024年インタビューにこうあった。「現在、出版社のブージー・アンド・ホークス社に、今後予定されているコンサートを確認したところ、97のコンサートがあるとのことだ。そのうち7~9公演がアメリカで、残りの90公演ほどは世界中、主にヨーロッパで開催される」(p.430)ミニマル・ミュージックに代表される彼の作品はすでに古典になっている。

また別出典では「2022年欧米で最も作品が演奏された現代作曲家」は演奏回数順に1.アルヴォ・ペルト/2.ジョン・ウィリアムズ/3.ジョン・アダムズ/4.トーマス・アデス/5.フィリップ・グラスとあった。彼らの現代音楽と商業音楽はおそらく分け隔てなくカウントされている。

 

 

一. はじめまして/ありがとう

いつ誰に何があるかはわからない。誰かにとっては初めてのコンサートになるだろう。誰かにとっては最後のコンサートになるかもしれない。SNSで実感するのは5割以上が「はじめまして」じゃないかと思うほど客層とファンの絶え間ない広がりだ。初恋も初デートも、それがどんなに空を飛ぶようにうれしかったものでも、それがどんなに甘酸っぱく苦かったものでも、しっかりと刻まれることになる。その思い出は一人に一つしかない。

もし私がおすすめする機会があるなら、その人にとってキラキラになるコンサートをすすめたい。

 

 

一. まことの主題

まことの主題は久石譲によって生み出された旋律だ。これほど心をうごかされる美しさはおぼえたことがない。名曲も新作も私の目は好奇心で潤い輝いている。いつも未知の歓びがある。

日本公演でのスタンディングオベーション、海外公演での熱狂的な歓迎ぶりはクラシック/現代音楽の範疇を超えている。世界中が久石譲の音楽を聴きたがっている。久石譲 presents オール久石譲プログラム、それはエンターテインメントとアートが創る音楽世界だ。ワン・アンド・オンリーだから夢中になる。いつか満たされる日などは来ない。

もしクラシックよりも自作を振ったほうが充実していると思われるなら是が非でも待機万全だ。好機を得たらクラシックとのプログラム比率を再考する瞬間が訪れてほしい。コンサートのサイクルが変われば、リリースのサイクルもまた変わるだろうか。それもまた待機万全だ。

 

 

一. 極めて独白

久石譲は作曲家である。久石譲は指揮者としても個性を放つ。久石譲のピアノは心にたまる。45年以上のキャリアで第一線であり続けることは本当に稀有だ。常に作品を書き続けていることには、言葉ではとてもとらえきれない尊さと価値がある。作曲のためならやりたいことをやってほしい。やりたいことをやったその結実で私は常に新しい久石譲音楽を楽しめていることもまた事実だ。

私は未熟だ。いかなる思慮深さをもったとしてもまず初めに思うことはそうだし、納得を示したとしても最終的に思うこともまた同じである。あなたの曲が聴きたい。

私の独白はここで留める。ただただファンの一人という小さな一滴の自分が楽しみたいことを最優先に置いている。視野を狭めることでファンを謳歌している。とうてい模範的で最良のファンにはなれない。私はどこまでも久石譲の音楽を偏愛する。

作曲家自らの指揮による自作交響曲全曲演奏会シリーズ!交響曲全集パッケージ!こんな未来を想像させてくれる作曲家を私は知らない。

幸せをこめて

2025年12月 ふらいすとーん

 

 

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最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

Info. 2026/07~08 スーパー歌舞伎『もののけ姫』 上演決定!!

Posted on 2025/11/27

「もののけ姫」が歌舞伎に、来夏

 松竹は、スタジオジブリのアニメ映画「もののけ姫」を「スーパー歌舞伎」として2026年7、8月に東京・新橋演舞場で上演すると27日付で発表した。主人公のアシタカ役で市川団子さん、サン役で中村壱太郎さんが出演する。 “Info. 2026/07~08 スーパー歌舞伎『もののけ姫』 上演決定!!” の続きを読む

Info. 2026/05/14-16 「Hisaishi Conducts Hisaishi」久石譲コンサート(ワシントンD.C.)開催決定!!

Posted on 2025/11/23

2026年5月14-16日、久石譲コンサートがアメリカ・ワシントンD.C.で開催されます。共演オーケストラはワシントン・ナショナル交響楽団です。新作協奏曲の世界初演です。ナショナル交響楽団、トロント交響楽団など共同委嘱作品です。 “Info. 2026/05/14-16 「Hisaishi Conducts Hisaishi」久石譲コンサート(ワシントンD.C.)開催決定!!” の続きを読む

Info. 2026/03/04 「JOE HISAISHI CONDUCTS HISAISHI」久石譲コンサート(ハワイ)開催決定!!

Posted on 2025/11/20

2026年3月4日、久石譲コンサートがハワイで開催されます。共演オーケストラはハワイ交響楽団です。ホノルルでの一夜限りのコンサートは、自作品や映画音楽をプログラム予定となっています。 “Info. 2026/03/04 「JOE HISAISHI CONDUCTS HISAISHI」久石譲コンサート(ハワイ)開催決定!!” の続きを読む

Info. 2025/11/16 《速報》 「Joe Hisaishi Returns」久石譲コンサート(フィラデルフィア)プログラム 【11/20 update】

Posted on 2025/11/16

2025年11月13,14日、久石譲コンサートがアメリカ・フィラデルフィアで開催されました。共演オーケストラは今年6月に初共演したばかりのフィラデルフィア管弦楽団です。10月には同楽団の「コンポーザー・イン・レジデンス」に任命されました。 “Info. 2025/11/16 《速報》 「Joe Hisaishi Returns」久石譲コンサート(フィラデルフィア)プログラム 【11/20 update】” の続きを読む

Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE VII』

2025年11月19日 CD発売 OVCL-00896

 

久石譲主宰 Wonder Land Records×クラシックのEXTONレーベル
夢のコラボレーション第7弾!未来へ発信するシリーズ!

久石譲が”明日のために届けたい”音楽をナビゲートするコンサート・シリーズ「ミュージック・フューチャー」より、アルバム第7弾が登場。

今回は「ミュージック・フューチャー・バンド」のメンバーが、様々な組み合わせで展開するプログラムで、ストリングカルテット、木管、金管、室内オーケストラと形を変え、カラフルな音色を奏でていきます。レコーディングは「EXTON」レーベルが担当し、音楽性高い臨場感のあふれるサウンドを作り出しています。「明日のための音楽」がここにあります。

ホームページ&WEBSHOP
www.octavia.co.jp

(CD帯より)

 

 

『久石譲 presents ミュージック・フューチャー VII』について

サウンド&ヴィジュアル・ライター
前島 秀国

久石譲が2014年に開始したコンサートシリーズ「MUSIC FUTURE」は、今年2025年10月で第12回目の開催を迎えようとしている。最初の「MUSIC FUTURE VOL.1」の開催が、つい先日のことのように思い出されるが、もちろん当時は10年後のことなど想像もつかなかった。だが、日本で初めてミニマル・ミュージックの魅力と意義を前面に押し出したコンサートを開催する喜びとプライドと高揚感は、10年前から現在に至るまでいささかも変わっていないように思う。

「MUSIC FUTURE」は、いわゆる”ゲンダイオンガク”を紹介するプロジェクトとは完全に一線を画している。聴衆のことなどほとんど考慮せず、己の作曲テクニックの誇示と、譜面上の美しさだけを追求するような”ゲンダイオンガク”は、1970年代に作曲を学んでいた若き日の久石に大きな疑問符を投げかけ、それが彼をミニマル・ミュージックの作曲に向かわせたのだが、彼がミニマルの魅力に開眼した半世紀前も、「MUSIC FUTURE」を開始した10年前も、そしていま筆者が拙稿を書いている2025年も、ミニマルは日本のクラシック音楽家で市民権を得ているとは言えない。一例を挙げれば、これまで外国人演奏団体の来日公演でしか演奏されなかったスティーヴ・ライヒの《18人の音楽家のための音楽》は、2025年10月開催予定の「MUSIC FUTURE VOL.12」で初めて日本人中心の演奏が実現するのだが、海外ではすでに多くの音楽大学のアンサンブルがこの楽曲を演奏している(つまり”教材”になっている!)のが現実である。そう考えると、「MUSIC FUTURE」が10年後の未来にも開催されるとして(もちろん筆者はそうなると固く信じているが)、ミニマル・ミュージックとその作曲家を紹介していくこのコンサートシリーズは──日本の常設演奏団体が何の偏見もなくミニマルに取り組むような未来が実現しない限り──今後もユニークかつ重要な役割を担い続けていくのではあるまいか。

話がFutureに飛びすぎた。2024年7月に開催された「MUSIC FUTURE VOL.11」の演奏曲を収めた本盤『久石譲 presents ミュージック・フューチャー Vll』の意義を明らかにするためにも、これまでの「MUSIC FUTURE」の軌跡を簡単に振り返っておこう。

筆者が記憶している限りでは、久石は「MUSIC FUTURE」の開始に際して次の3つの指針を打ち出していた。①”未来に伝えたい古典”というべき、評価の定まった重要な作品を紹介すること。②久石より下の世代に属する注目の作曲家を紹介すること。③作曲家・久石の作品を初演または演奏すること。まず①に関しては、久石自身が強く影響を受けたアメリカン・ミニマル・ミュージックの作曲家(テリー・ライリー、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラスとやや年下のジョン・アダムズ)は言うに及ばず、ヨーローッパのホーリー・ミニマリズムの作曲家(アルヴォ・ペルト、ヘンリク・グレツキなど)の音楽がこれに該当するが、その代表的な例として、フィリップ・グラスの《String Quartet No.5》が本盤に収録されている。②に関しては、ニューヨークの現代音楽プロジェクト「Bang on a Can」を共同創設したデイヴィッド・ラング、イギリスでクラシックとエレクトロニカを融合したジャンル「ポスト・クラシカル」を提唱したマックス・リヒター、そして彼らよりも下の世代に属するニコ・ミューリーやブライス・デスナーといった作曲家の作品が紹介されてきた。本盤ではラングの《Breathless》とリヒター/久石の《On the Nature of Daylight》が演奏されている。

10年以上前に「MUSIC FUTURE」が始まった当時、①や②の作曲家たちは久石と直接の面識を持っているわけではなかった。ところが「MUSIC FUTURE」が回を重ねていくにつれ、久石はライリーやグラスと親交を温めるようになり、リヒター、ラング、ミューリーらがいずれも久石の音楽の熱烈なファンだということが明らかになった。これが「MUSIC FUTURE」最大の”嬉しい誤算”であり、このコンサートシリーズを継続していくうえでの大きな力を与えたという点は、もっと広く知られて然るべきだろう(彼らの協力も得て、2018年と2022年にはニューヨーク公演も実現している)。「MUSIC FUTURE」は、もはや単なる日本国内のコンサートシリーズというより、ミニマリスト、ポスト・ミニマリスト、ポスト・クラシカルの作曲家たちがコラボレートする世界的なプロジェクトに成長したのではないか、というのが筆者の考えである。

そして、③についても急いで触れておかなければならない。現時点で、久石の作曲活動における「MUSIC FUTURE」の最大の意義は、彼がこのコンサートシリーズにおいて初演したいくつもの作品によって、「シングル・トラック・ミュージック」と名付けられたミニマルの方法論を発展・確立した点にあると思う。2015年開催の「MUSIC FUTURE VOL.2」で初演された《Single Track Music 1 for 4 Saxophones & Percussion》で初めて試みられたこの方法論は、本盤収録の《The Chamber Symphony No.3(室内交響曲第3番)》や『君たちはどう生きるか』(2023)などの映画音楽でも重要な役割を果たしている。

鉄道の単線(シングル・トラック)に由来する「シングル・トラック・ミュージック」は、ある単旋律(フレーズ)がユニゾンで何度も演奏されていくうち、単旋律の中のいくつかの音が高く/低く再配置されることで、別のフレーズが浮かび上がったり、それらが重なることで偶発的なハーモニーが生まれたりするという、シンプルだが多くの可能性を秘めた方法で作られている。《室内交響曲第3番》を例に挙げれば、第1楽章「Symphonia」の冒頭でピアノ、クラリネット、弦が提示する威勢のよい単旋律が何度も繰り返され、オーケストレーションを変えていきながら、多種多様な音風景を生み出していくが、最初に提示された単旋律はリスナーの耳にはっきり残っているので、音楽の変容のありさまを即座に理解できる。単旋律の音が再配置されることで生まれる別のフレーズは、ちょうど単線鉄道の車窓から外を眺めていると、ビルの窓ガラスや川のっ水面に自分の姿の反射が映ってハッとするような、意外な面白さを秘めている。第2楽章「Invention for two voices」の、どことなく乾いたユーモアを備えたピアノの主題についても同じことが言えるが、第1楽章が都会を走る”快速”ならば、第2楽章は郊外の田舎風景を走る”各駅停車”か。そして”暴走特急”に変わった第3楽章「Toccata」は、その名の通り”脱線”や”正面衝突”の危険も顧みずに各奏者が驚くべき名人芸を披露していく。

こうした面白さを実現するためには、基本となる単旋律が思わず口ずさみたくなるような親しみやすさを持ちながら、同時に高度な可塑性に耐えうる可能性を潜在的に備えていなければならない。つまり、久石のようにキャッチーなメロディを書ける作曲家でなければ「シングル・トラック・ミュージック」の方法論は成立しないのだ、ということをここでぜひとも強調しておきたい。

これまで「MUSIC FUTURE」が育んできた作曲家同士の友愛とリスペクト、そして久石ならではのミニマルな方法論を収めたアルバムが、すなわち本盤なのである。

(まえじま・ひでにく)

(CDライナーノーツより)

 

 

 

曲目解説

久石譲:The Chamber Symphony No.3  [世界初演]

 原曲のPiano Sonataは2020年にピアニストの滑川真希さん、Philharmonie de Paris、Art Electronica Festivalからの共同委嘱で作曲を開始したが、Covid-19によりコンサートが2022年に延期されたため楽曲の仕上げも2022年の春となった。

 当初、Sonatineと題して3楽章の楽曲として完成したが、作曲が遅かったせいで初演は第3楽章のToccataのみとなった。誠に反省しているのだが、その時の真希さんのパフォーマンスはパリの観客を完全に魅了した。

 そして今年MUSIC FUTURE用に書き直せないか?と思いつき、その年の1月より編曲を試みたが、実際原曲自体も修正して全く別の作品に仕上がった。そこでタイトルもThe Chamber Symphony No.3(室内交響曲第3番)とした。

 4月には完成したが、元々ピアノのソロという制約もあったので同時に多くの要素を入れることはできなかった。そのため2声部を基本に作曲したので(のちに3声部に変えたため作曲が大幅に遅れた)、それを活かせる方法として僕のSingle Track Musicという単旋律を基本としたオーケストレーションを導入した。その説明は省くが、その方法によりピアニスティックなパッセージとうまくマッチして立体的な楽曲に仕上がった。

 全3楽章、約22分の作品となった。

久石譲

(「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.11 コンサート・パンフレット」/ 「MUSIC FUTURE VII」CDライナーノーツより)

 

*曲目解説は、2024年7月25-26日 MUSIC FUTURE Vol.11 プログラムノートより転載

(CDライナーノーツより)

 

他作品の楽曲解説は前島秀国氏によるものが掲載されている。

 

 

 

ミュージック・フューチャー・バンド
Music Future Band

2014年、久石譲のかけ声によりスタートしたコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」から誕生した室内オーケストラ。現代的なサウンドと高い技術を要するプログラミングにあわせ、日本を代表する精鋭メンバーで構成される。

”現代に書かれた優れた音楽を紹介する”という野心的なコンセプトのものと、久石譲 (1950-) の世界初演作のみならず、ミニマル・クラシックやポストクラシカルといった最先端の作品や、日本では演奏機会の少ない作曲家による作品を取り上げるなど、他に類を見ないプログラムを披露している。これまでに、シェーンベルク (1874-1951)、ヘンリク・グレツキ (1933-2010)、テリー・ライリー (1935-)、アルヴォ・ペルト (1935-)、スティーヴ・ライヒ (1936-)、フィリップ・グラス (1937-)、ジョン・アダムズ (1947-)、レポ・スメラ (1950-2000)、デヴィット・ラング (1957-)、マックス・リヒター (1966-)、ガブリエル・プロコフィエフ (1975-)、ブライス・デスナー (1976-)、ニコ・ミューリー (1981-)などの作品を取り上げ、日本初演作も多数含む。

”新しい音楽”を常に体験させてくれる先鋭的な室内オーケストラである。

(CDライナーノーツより)

 

 

 

 

 

 

The Chamber Symphony No.3
I. Symphonia
II. Invention for two voices
III. Toccata

Piano Sonata
I. Heavy Metal
II. Blues Invention
III. Toccata

Piano Sonataの姉妹作品にあたるThe Chamber Symphony No.3は、久石譲が提唱するSingle Track Music(単旋律)の手法が使われています。その説明は「ここ数年僕は単旋律の音楽を追求しています。一つのモチーフの変化だけで楽曲を構成する方法なので、様々な楽器が演奏していたとしても、どのパートであっても同時に鳴る音は全て同じ音です(オクターヴの違いはありますが)」(久石譲)とあるとおりです。

The Chamber Symphony No.3の第2楽章は「II. Invention for two voices」です。つまりタイトルそのまま2声のインヴェンションで作られている。そこに単旋律の手法が加わることで、ある音だけ同時に複数の楽器で鳴っていたり、ドとかレとか同じ音だけどオクターヴ高いまたは低い音でこれもまた必ず同時に鳴っていたり。

Piano SonataもThe Chamber Symphony No.3も第2楽章は2声で書かれていると思います。単旋律の手法を取り入れることで複数のモチーフ(声部)があるような錯覚効果もありながら、実は上のように同じ音が重なっていてモチーフ自体は2声になることをタイトル「II. Invention for two voices」が示しています。また楽器の出し入れで楽想がカラフルになることもあってPiano Sonataの「II. Blues Invention」からくるブルースの雰囲気はなくなっていると感じました。いろいろな意図やコンセプトでタイトルが変わっているのかもしれません。

Blog. 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.12」コンサート・レポート より抜粋)

 

 

久石譲の室内交響曲第1番は「Chamber symphony for Electric Violin and Chamber Orchestra」(2015/『久石譲 presents MUSIC FUTURE 2015』収録)、室内交響曲第2番は「”The Black Fireworks” for Bandoneon and Chamber Orchestra」(2017/『久石譲 presents MUSIC FUTURE III』収録)である。

 

 

 

久石譲
Joe Hisaishi (1950-)
The Chamber Symphony No.3 [世界初演]
1. I Symphonia
2. II Invention for two voices
3. III Toccata

フィリップ・グラス
Philip Glass (1937-)
String Quartet No.5
4. I
5. II
6. III
7. IV
8. V

 Vn1 郷古 廉、 Vn2 小林 壱成、
 Va 中村 洋乃理、 Vc 中 実穂

マックス・リヒター/久石譲
Max Richter (1966-) / Joe Hisaishi (1950-)
9. On the Nature of Daylight

 Hr1 福川 伸陽、 Hr2 信末 碩才、
 Tp 辻本 憲一、 Tb 青木 昂、B.Tb 野々下 興一、
 Cl マルコス・ペレス・ミランダ、 Fg 向後 崇雄

デヴィッド・ラング
David Lang (1957-)
10. Breathless

 Fl 柳原 佑介、 Ob 坪池 泉美、
 Cl マルコス・ペレス・ミランダ、
 Fg 向後 崇雄、 Hr 信末 碩才

 

久石譲(指揮)1-3
Joe Hisaishi (Conductor)

ミュージック・フューチャー・バンド 1-3
Music Future Band

2024年7月25−26日 東京、紀尾井ホールにてライヴ収録
Live Recording at Kioi Hall, Tokyo, 25-26 July 2024

 

JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VII

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Music Future Band
Live Recording at Kioi Hall, Tokyo, 25-26 July  2024

Produced by Joe Hisaishi
Recording & Balance Engineer: Tomoyoshi Ezaki
Assistant Engineers: Takeshi Muramatsu, Masashi Minakawa
Mixed and Mastered at EXTON Studio, Tokyo
Production Management: Wonder City Inc.
Music Sheet Preparation: Saori Minomo
A&R: Moe Sengoku
Cover Design: Miwa Hirose

Executive Producers: Ayame Fujisawa (Wonder City Inc.), Tomoyoshi Ezaki

Special thanks to MUSIC FUTURE Vol.11, Kenichi Yoda (ntv)

WELLFLOAT products were used in this mastering process.

Joe Hisaishi by the courtesy of Deutsche Grammophon GmbH

 

Info. 2025/11/17 日本センチュリー交響楽団 2026-27シーズン ラインナップ発表!!

Posted on 2025/11/17

【日本センチュリー交響楽団 2026-27シーズン ラインナップ発表!!】

平素より日本センチュリー交響楽団のご愛顧、ご支援を賜りまして、誠にありがとうございます。 “Info. 2025/11/17 日本センチュリー交響楽団 2026-27シーズン ラインナップ発表!!” の続きを読む

Info. 2025/11/17 安彦良和 アニメーション作品 音楽集 発売決定

Posted on 2025/11/13

2024年4月より全国各地にて創作活動の軌跡をたどる展示会が開催中の巨匠・安彦良和。安彦氏が手掛けた、数々のアニメ化作品の音楽を振り返る「安彦良和 アニメーション作品 音楽集」が発売決定! “Info. 2025/11/17 安彦良和 アニメーション作品 音楽集 発売決定” の続きを読む