Posted on 2025/06/06
2025年5月28~30日、久石譲コンサートがカナダ・トロントで開催されます。共演オーケストラは2022年と2024年に続いてトロント交響楽団です。新作初演予定になっています。 “Info. 2026/05/28-30 「Hisaishi Returns」久石譲コンサート(トロント)開催決定!!【1/20 update】” の続きを読む
Posted on 2025/06/06
2025年5月28~30日、久石譲コンサートがカナダ・トロントで開催されます。共演オーケストラは2022年と2024年に続いてトロント交響楽団です。新作初演予定になっています。 “Info. 2026/05/28-30 「Hisaishi Returns」久石譲コンサート(トロント)開催決定!!【1/20 update】” の続きを読む
Posted on 2026/01/20
2026年1月17日「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第295回 定期演奏会」が開催されました。日本センチュリー交響楽団音楽監督に就任した今シーズンは、ベートーヴェン交響曲と近現代曲をプログラムしています。
前日16日には同内容プログラムでの北摂定期演奏会・箕面公演も開催されました。
日本センチュリー交響楽団 定期演奏会 #295
[公演期間] 
2026/01/17
[公演回数]
1公演
大阪・ザ・シンフォニーホール
[編成]
指揮:久石譲
ハープ:エマニュエル・セイソン
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
[曲目]
久石譲:Encounter for String Orchestra
久石譲:ハープ協奏曲
—-Soloist Encore—-
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女(1/16 箕面公演)
マルセル・トゥルニエ:「オ・マタン」(1/17)
—-intermission—-
ベートーヴェン:交響曲 第3番 ホ長調 作品55「英雄」
—-Orchestra Encore—-
シューベルト:「ロザムンデ」より 間奏曲 第3番
[参考作品]
まずは会場で配られたプログラム冊子からご紹介します。
Program Notes
久石譲:Encounter for String Orchestra
2012年にフェルメール展が催され、その作曲を依頼されたのですが、僕の強い要望でエッシャーも展示されました。ミニマリストとしてはフェルメールよりも(もちろん好きですけど)だまし絵のエッシャーの方に興味があったからです。その楽曲を中心に、後に「弦楽四重奏曲第1番(String Quartet No.1)」を作曲しました。その第1曲がこの「Encounter」です。それをストリング・オーケストラとして独立した楽曲にしました。マーラーがシューベルト等の弦楽四重奏曲をオーケストラ用に書き直していますが、厚くなる部分と、ソロの部分をうまく活かしてよりダイナミックに作っている。僕もそのことを大切にしました。
レの音を中心としてモードによるリズミカルなフレーズが繰り返されます。ややブラックなユーモアもありますが、変拍子と相まって曲の展開の予想はつきにくい、従って演奏もかなり難しいです。
曲のタイトルはエッシャーの「Encounter」という絵画(版画)からきています。もちろんインスピレーションも受けています。決して重い曲ではないので、楽しんでいただけたら幸いです。
(久石譲)
久石譲:ハープ協奏曲
Harp Concertoはロサンゼルス・フィルハーモニック(LAフィル)とボルドー国立オペラ、フィルハーモニー・ド・パリ、シンガポール交響楽団の共同委嘱として作曲を依頼された。LAフィルに在籍しているハープ奏者のエマニュエル・セイソンが演奏する前提の依頼である。
2023年の夏にハリウッドボウルで初めてLAフィルと共演して(その時は17500人の会場はSold Outになった)、エマニュエルとも最初のセッションを持った。早く作曲を開始したかったが過密なスケジュールのため翌年の2月から作曲を開始した。2024年5月に来日した彼とほぼ完成した第1楽章を聞きながら修正の方向を確認し7月にハープパートを完成し、9月中旬にオーケストレーションがも終了した。約30分の全3楽章の楽曲になった。
第一楽章はロ短調の分散和音を主体としたAllegroで構成し、一番最後に完成した第2楽章はニ短調6/8+7/8のゆったりしたリズムによる緩徐楽章になり、カデンツァを経て第三楽章のヘ短調Allegroのトッカータでクライマックスに到達する。通常イメージするハープは優雅で優しく穏やな音楽なのだが、このコンチェルトは激しく、荒々しく、躍動的で今までの概念とはだいぶ異なっていると思う。それはエマニュエルの演奏スタイルに感化されたこともあり自分が望んでいたことでもある。
約9ヶ月に及ぶ作曲期間は(もちろん思考していた時間も入れたら1年半以上になる)自分にとってはかなり長い期間である。もちろんその間多くのコンサートがあったため時間を取られたこともあるが、その分、曲を吟味する時間もあったことも事実だ。多くの関係者に感謝するとともに、これから演奏を通して楽曲が育っていくことを心から期待する。
(久石譲)
*ベートーヴェン作品については小味渕彦之氏による解説が掲載されています。
(「日本センチュリー交響楽団 第295回定期演奏会/北摂定期演奏会~箕面公演~」コンサートプログラム冊子より)
ここからはレビューになります。
久石譲指揮のオーケストラ配置は、対向配置がデフォルトです。
久石譲:Encounter for String Orchestra
この作品の誕生と変遷は、久石譲による楽曲解説にあるとおりです。いつもアグレッシブで音圧のある!ダイナミックで現代的な!演奏を聴かせてくれる日本センチュリー交響楽団弦楽セクションにはうってつけの作品です。弦楽四重奏版は4本の弦楽器、この弦楽オーケストラ版は約40名に拡大されています。
ミニマルに進んでいくモチーフの重なりと、長調とも短調ともとれない絶妙なバランスの上にたつ楽想は、聴くほどに味が出てきます。不思議な魅力というか、どうにも見過ごせなくなる作品です。『Vermeer & Escher フェルメール&エッシャー』収録のピアノ五重奏版がオリジナルです。それが弦楽四重奏第1曲となり、そこからまた弦楽オーケストラで単曲を引っ張り上げた経緯ですね。そうして振り返ってみると、アルバムの背面ジャケットになっている絵こそエッシャーの「Encounter」です。当時から久石譲の並々ならぬ手応えやその先の意欲まで伝わってきそうです。
ピアノ五重奏版(2012)


弦楽四重奏版(2014)*発表年

弦楽オーケストラ版(2017)*発表年

久石譲:ハープ協奏曲
2025年7月サントリーホール満を持しての日本初演とその衝撃から約半年。よし今日は少し落ち着いて聴けるかなと深呼吸。でもやっぱり始まってみたら全然落ち着いてなんかいられない。すごすぎる!やばい!待って!語彙力消滅。
エマニュエル・セイソンさんのハープ力は凄まじいものがあります。ハープの固定概念を吹き飛ばす楽想と演奏スタイルではあるのですが、さらに超えてくる表現力には驚嘆します。激しいけれど力任せじゃない強靭さ。ハープ用にマイク置いてる?!と勘違いしてしまうほどの圧倒的なボリュームと存在感。ハープの響きが引き立つようにと通常のオーケストラよりも少しだけ小さい弦12型編成その必要ないくらいの持って行き感。めまぐるしくキャストが入れ替わり立ち回っても常時輝いてしまう全編主役。ダンスグループなどで一人にフォーカスして追いかけるカメラアングル、韓国語でいうところの「チッケム」状態。英語圏では「ファンカム(Fan Cam)」ですね。もう目も耳も釘付けです。語彙力推し活。
第1楽章からハーピストが奏でるモチーフを、オケの中にもいるハープとピアノらで絡み合いながら進んでいきます。大きなタペストリーを織りあげていくように、ハープが中心となりオーケストラも合わせて流れていきます。とにかく第1楽章から激しく荒々しい、そして狂気なまでに美しい。鮮烈に圧倒されます。
第2楽章は緩徐楽章です。久石譲の交響曲第3番第2楽章にも見られるような、メロディアスなミニマルに心を打たれます。ハープらと一緒にチェロでも低音をピッツィカートしたりと音色が豊かに調合されています。耳だけでは難しいかもしれませんが、楽器や音色を目で見て気づくこともたくさんあります。弾(はじ)ける音のブレンドマイスター久石譲です。
個人的には「ASIAN SYMPHONY IV.Absolution」や「Asian Works 2020 II.Yinglian」なども思い起こします。深い慈悲や慈愛です。終盤ではオーケストラが重なり合い膨らみ押し寄せるように、旋律は大きな流れをつくりあげます。
カデンツァは、前回聴いたものと同じでした。本来は即興性の高いカデンツァですが、このパートにも久石譲の強いコンセプトが内在しているように感じます。まるで民族楽器を模したような特殊奏法については前回のコンサート・レポートで触れています。よかったら開いてみてください。このすぐ下にあります。
第3楽章は、カデンツァの延長上に続けられます。また激しく躍動的な楽章です。こちらも前回レビューに書いていたかもしれませんが、後半に「Encounter」(出会い/邂逅)に近しいユーモラスなモチーフも登場します。行きつ戻りつ繋がっているように感じます。本公演でプログラムを並べたのにも意図はあるのか?興味ポイントです。「Encounter」もさらに好きになってしまう。音楽っておもしろい面がたくさんありますね。
ハープ協奏曲は久石譲の真骨頂です。久石譲ミニマリズムの面目躍如です。そこへまた新しい言い方を加えたい。「久石譲のミニマルとリズムの美学」がここに。
初演を聴いたときの感想は、もう少し音楽的にしっかり感じ取りたいと努めて記しました。いろいろな面から読んでいただけるとうれしいです。
ソリスト・アンコール
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女(1/16 箕面公演)
マルセル・トゥルニエ:「オ・マタン」(1/17)
うっとりするには充分すぎるほどの時間です。セイソンさんの音色は手先からというよりもハープと体が一体となって大地的な大きさと静けさで響いてくるようです。優雅に泳ぐ白鳥の水面下のように、ハープの足捌きまで見れる至近距離は贅沢そのもので、ペダルで音高の調節(半音装置)などを自由自在に、やっぱり全身からその音を奏でているのです。
ここでセイソンさんの登場が終わるかと思うと、いつまででも拍手したくなる、ついつい立ち上がりたくなる衝動を抑えていた観客は僕だけではなかったことが、終演後ファン談話で無事明らかになりました。エマニュエル・セイソンさんのハープが日本で聴けるチャンスは次あるのでしょうか!?やっぱり立てばよかったですね!
ベートーヴェン:交響曲 第3番 ホ長調 作品55「英雄」
クラシック定期演奏会らしい安定と貫禄のパフォーマンスでした。ベートーヴェンだと第3番、ブラームスだと第1番、シューマンだと第3番を選びたくなるマイ・フェイバリットです。理由は聴いていて好きだからです。つい最近、本の整理をしていたら、ブラームの交響曲第1番は「英雄」の作曲技法に近いとあって(第5番と第9番の影響も受けている)、シューマンの交響曲第3番第1楽章は「英雄」を強く意識しているとも知りました。なんとなく好きなグループにしていたものたちは、ちゃんと好きになってしまう理由がそこに潜んでいたんですね。自分の好きアンテナを褒めてあげたい。これだから聴くことと知ることはやめられない。天空の城ラピュタの音楽はブラームス交響曲第1番と深いところでつながっていると勝手に確信しています。
2014年長野・ホクト文化ホールで聴いた「英雄」は大きくて重い鎧だったとすると、それからフューチャー・オーケストラ・クラシックスの録音を経た現在のアプローチは、デザインも動きやすさも進化した現代的な鎧です。今回の演奏を聴いて、ちょうどいい重さだなと好きだけにうれしく感じました。ブラームスの第1番はアルバム版と別に全集用に新録音したものがあるように、この「英雄」も今のアプローチで新しく刻んでほしい。そう思う理由はたとえば、と話が続くのだけれど、それはまた今度。
チェロ素晴らしかった!第4楽章のあの重厚なザクザク感。弾いている上半身が浮いてしまうほど下半身に強く重心を置いてザクッ!ザクッ!を連発する。もう筋トレみたい。こんな音聴いたことない!というほどしびれました。音に電流が走り、こっちの体にも電流が走る。
第4楽章では主題が弦楽四重奏で奏でられるパートもあります。そしてオーケストラ全体に拡大する。ひとつの楽章のなかで拡大と削ぎ落としをやっている。久石譲交響曲第3番第2楽章などにも聴くことができます。何が言いたいのかって、つまり久石譲はクラシックの王道を行くんだと自らも語り、実際に伝統を継承しながら進化させているということです。こうやって時代の作品をクロスオーバーさせていくことで今の音楽がもっと輝きます。久石譲の音楽がさらに輝きます。

オーケストラ・アンコール
シューベルト:「ロザムンデ」より 間奏曲 第3番
美しい調べです。シューベルトの代表曲のひとつです。劇付随音楽『キプロスの女王ロザムンデ』のために作曲されたもので、この間奏曲第3番は単独でよく取り上げられます。シューベルトの手応えを象徴するかのように、のちに弦楽四重奏曲第13番イ短調(通称『ロザムンデ』)の第2楽章に、またピアノ即興曲集D.935の第3番(変ロ長調)にも転用されています。
本日のプログラム第1曲は「久石譲:Encounter for String Orchestra」です。弦楽四重奏であったものを弦楽オーケストラに拡大しています。まったく逆の流れになりますね。おもしろいですね!こうやって長い歴史のなかで作曲家たちは、自身の作品を拡大したり削ぎ落としたりしながら、コアを磨き上げている、尊い。
シューベルトはベートーヴェンを深く尊敬していました。ベートーヴェンの葬儀にも参列しその棺を担いだ一人でもあったと言い伝えられています。シューベルトにとってベートーヴェンは英雄そのものかもしれません。そこに想い馳せるとこのアンコール曲はまた格別なものになります。
リアルな現代社会を見ると、力を持つ人が英雄なのか、力を持ってしまった人が英雄なのか、戸惑い考えさせられることも多い日常にいます。本公演のプログラム全てを聴き終わった今、音楽だけが語ってくれる、音楽だけが導いてくれる真の力があることを強く感じました。たくさん聴いて、たくさん感じて、たくさん考えて、その繰り返しです。
ということで、僕はカーテンコールで立ちたかったけれど、立てませんでした。雰囲気を異にするクラシック演奏会は勝手に空気を読んでしまいます。それはスタンディングオベーションする恥ずかしさよりも、後ろの人の邪魔になるんじゃないかという気遣いのほうが勝ってしまう日本人です。ほら、冠・久石譲コンサートはわりとみんな一斉に立ち上がるから。そんな有志はきっとたくさんいたと思います。どうぞ今回は拍手の熱量で感じ取っていただけたなら幸いです。素晴らしい時間をありがとうございました。
久石譲音楽監督シーズン2年目のテーマは「ブラームス」
リハーサル風景











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公演風景(1/16)



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Posted on 2025/12/30
2025年12月26,27日「久石譲×日本センチュリー交響楽団 特別演奏会「第九」」が開催されました。今年4月から日本センチュリー交響楽団音楽監督に就任した久石譲のジルベスターコンサート的!年末の特別なひとときです。
久石譲×日本センチュリー交響楽団 特別演奏会「第九」
[公演期間] 
2025/12/26,27
[公演回数]
2公演
大阪・フェスティバルホール
[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ソリスト:森麻季(ソプラノ) 山下 裕賀(アルト) 山本 耕平(テノール) 山下 浩司(バリトン)
合 唱 :日本センチュリー合唱団
オルガン:室住 素子 ※
[曲目]
久石譲:Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~ ※
—-intermission—-
ベートーヴェン : 交響曲 第9番 ニ短調 Op. 125「合唱付き」
—-encore—-
White Night (for Chorus and Orchestra)
[参考作品]
Program Notes
久石譲:Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~
I. Orbis ~環
II. Dum fãta sinunt ~運命が許す間は
III. Mundus et Victoria ~世界と勝利
Orbisは2007年の「サントリー1万人の第九」で演奏する序曲として委嘱された。「Orbis」は、ラテン語で「環」や「つながり」を意味する。その後2015年に全3楽章、約25分の作品として仕上げた。
約8年を経ての作曲はスタイルも変化していて多少戸惑ったのだが、ラテン語の言諺で「運命が許す間は(あなたたちは)幸せに生きるがよい。(私たちは)生きているあいだ、生きようではないか」という言葉に出会い第2楽章を完成することができた。第3楽章は「Orbis」のあとに作った「Prime of Youth」をベースに合唱を加えて全面的に改作した。この楽曲も第1楽章と同じく11/8拍子でリズムのドライヴ感が大切である。
もっとも大切に考えたことは明るく前向きな楽曲を作る!ということだが、それはベートーヴェンの「第九」と通じることであり人が生きるということへの讃歌でもある。
久石譲
(「久石譲×日本センチュリー交響楽団 特別演奏会「第九」」コンサート・パンフレットより)
「第九について」は柴田克彦氏による解説が掲載されています。
ここからはレビューになります。
今年最後の特別演奏会は、弦14型3管編成のオーケストラと混声合唱の総勢約200名という大所帯です。久石譲指揮ならおなじみの対向配置と、作品によって楽器群も細かく入れ替わる豊かな音色パレットを楽しむことができます。
久石譲:Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~
この作品の誕生から進化までの流れは、久石譲の楽曲解説にあるとおりです。今回は全3楽章となった2015年版です。当時その初演を聴いた衝撃と鳥肌は今でも鮮明に覚えています。あれから10年の大いなる沈黙を経て、待望の再演を果たしました。
I. Orbis ~環
人気と定番を併せ持ったアルバム『メロディフォニー』(2010)に単一楽章の作品として収録されています。久石譲ファンであることを声を大にするファンのなかには、この曲は絶対好き(外せない作品)!という人が多いです。いろいろなきっかけでファンになって探し聴くうちに必ず辿り着く地点。この曲が好き!って言うなら、ここまでに結構聴いてきてるね、好きのベクトルが近いかもと暗黙の共感が生まれる。そんな楽曲だと思います。
序曲のような楽章は、華やかさと品格があります。変拍子なのに気難しさよりも快感を感じるのはリズムの魔術師久石譲、聴きながら心が躍動していくのがわかります。合唱もバランスといい安定感といい素晴らしかったです。全楽章を通して歌われますが、すべて作詞:久石譲で貫かれた作品というのも稀だと思います。
II. Dum fãta sinunt ~運命が許す間は
厳かな楽章です。チューブラーベルズの等間隔で打たれる鐘の音とオルガンの分散和音から始まります。合唱がその流れに静かに乗ります。前楽章とは大きく雰囲気を変えた楽想は、合唱も諭すように語りかけてくるように進んでいきます。次第に濃淡に複雑な混声合唱のハーモニーへと広がり静謐な世界観に包まれます。
この楽章は管楽器はほとんど登場せずに弦楽セクションとオルガンと合唱が主です。後半にはミニマルな伴奏音型を第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンで交互にかけあい、左右対称に位置する音響的な揺らぎと、想いの揺らぎがこちらに近づいてきます。グレゴリオ聖歌やミサ音楽に通じる厳粛さに胸を打たれます。
III. Mundus et Victoria ~世界と勝利
勇壮さと威厳に満ち溢れた楽章です。冒頭からエネルギーの漲りに圧倒されます。オーケストラだけでも空中分解してしまいそうなほどの超最高難易度を誇る楽章だと思います。だからかっこいい!混声合唱はオーケストラと対等に拮抗して並走します。だからかっこいい!高みを極めるオーケストラと合唱がぶつかり合い結びつきを強めながら大きな有機体へと膨らんでいく。だからかっこいい!
弦楽セクションが淀みなく引っ張ってくれていると感じました。中間部では第1楽章が再現されます。そしてクライマックスは人間の、命の潜在パワーの爆発です。この楽章を聴いて活力を注入されない人はいないと言い切りたい。
歴代の大作曲家たちは、一歩先の時代を見据えた難易度の作品を書いてきました。現在は十全に演奏できなかったとしても、未来の演奏家たちはクリアするだろう難易度です。Orbis全3楽章版はそういう作品だと思います。だからしびれる!バロックやベートーヴェンの時代を繋ぎながら新次元の世界がここにあります。久石譲の真骨頂といえる作品です。
久石譲を語るうえで欠くことのできないOrbis。これから先はその橋渡しです。演奏、出版、音源の”環”がしっかり結ばれる日を心から期待しています。僕にできることは、音源を聴く、コンサートに行く、感想のリアクションを起こす、この”環”を貫いていきます。
2015年初演のレポート
ベートーヴェン : 交響曲 第9番 ニ短調 Op. 125「合唱付き」
久石譲クラシック演奏会といえば「第九」そんなイメージも強いかもしれません。演奏回数を重ねている作品ですが2018年NCO以来の久しぶりです。その前には2015年「第九スペシャル」が開催されています。戦後70年にもあたるその年は夏のWDO2015で「祈りのうた」「The End of the World」を、大晦日に「新版Orbis」「第九」をプログラムしています。十年後、戦後80年にあたる今年の夏そして年末に同じ流れのプログラムになった。とても興味深い点と線です。
音楽監督就任1年目の2025/2026シーズンでは、全ての定期演奏会でベートーヴェン交響曲と現代の音楽を組み合わせています。当初発表のなかったこの特別演奏会を加えることでベートーヴェン交響曲ツィクルスが完遂する布陣になりました。
2025
4/13 第5番(下野竜也)
6/12,13 第6番(久石譲)
7/25 第4番(デルヤナ・ラザロワ)
9/26,27 第1番(久石譲)
10/24 第2番(太田弦)
11/28 第7番(アルヴォ・ヴォルマー)
12/26,27 第9番(久石譲)
2026
1/16,17 第3番(久石譲)
2/28 第8番(鈴木雅明)
日本では師走感いっぱいの作品です。久石譲指揮による作曲家視点のアプローチは新鮮です。新年に聴いても楽しめるくらいフレッシュです。終演後のSNSにはいろいろな感想・意見が飛びかっていましたが、それだけ多くの日本人に根付いている作品でもありますね。
昔からよく耳にする一般的な第九に比べたら快速快演です。初めて聴いた時は、これがあの第九?同じ第九?と耳が新しくなる感覚でした。譜面にあるものを全て浮き立たせるような明瞭さと、精神性よりも音符と向き合うことを追求した表現は、他の指揮者では拝めない魅力がつまっています。ミニマル・ミュージックをベースとする現代作曲家は、とことんミニマル(それは音型の連なりを積み上げていくように)とリズムに集中して音楽を構築していきます。
小気味良いティンパニや、トランペットからコルネットにするなど、ベートーヴェン時代のピリオド音像も踏襲しながら、現代的な第九を鳴らす手腕はさすがです。ソリストと合唱も迫力があって鼓膜が揺れるほどの喜びでした。先入観からきれいに解放されることができるなら、こんなに好奇心いっぱいな第九はないでしょう。
スコア片手にもっと詳しいレビューはthuruさんのコンサート・レポートでお楽しみください。
音源もそろってます。手にとってお楽しみください。


アンコール
White Night
作曲:久石譲 編曲:宮野幸子
第九のあとにアンコールがある久石譲演奏会は初です。生粋の久石譲ファンなら冬に必ず聴くことになっている名曲です。コンサートでやるなんていつ以来だろう?!調べてみると初めてかもしれない!?あまりにも名曲すぎて一回もコンサートで演奏していないなんて思いもしない。1996年発表から約30年を経て久石譲コンサートでは初です(たぶん)。
冬の定番曲といえば「White Night」、クリスマスに聴きたい曲といえば「White Night」そうなっています。ファンが人にすすめたくなる珠玉のピースです。『Piano Stories II』(1996)に収録されたオリジナル版はピアノと室内楽の美しく温かく上品です。当時からノンタイアップな楽曲のままにいつだって澄んで輝いています。
2008年に歌曲版「ホワイトナイト」としてリトルキャロルのアルバム『The Christmas Album』で歌われました。そして本公演のための合唱+オーケストラ版は宮野幸子さん編曲です。「久石譲 in 武道館コンサート」や「NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲」などでもオーケストレーションを担当した曲があります。久石さんからの信頼も厚いことがわかります。リスナーも安心して心を預けることができます。
全体構成は同じです。優しい合唱の歌声に、ストリングスやハープや木管のやわらかい伴奏が温もりを添えます。ぐっとくるサビのメロディのところでリングベル(鈴)やグロッケンシュピールも結晶のようにキラキラと輝きをましていきます。そうして間奏の旋律はやっぱりホルンでしょう。まろやかに遠く彼方まで響きわたります。思っていたよりも壮大に膨む楽想は、シンバルによってバーンと一面銀世界が広がって、もうそこからは夢見心地で憶えていません。2コーラス目からは合唱もメロディをハモるだけではなく、いくつかの旋律をかけあったりと混声合唱らしい声部構成でした。
スペシャルなアンコールは冬の贈りもの。歌い出しは ”鐘の音が響く 「世界はひとつ」とうたう” の歌詞から始まります。ここからもう涙腺は崩壊しそうになりました。久石譲コンサート2025は、”戦争”という現代を色濃くにじませたプログラムで繋がっていました。日本センチュリー交響楽団との「祈りのうた2025」ツアーでも、「祈りのうた」「The End of the World」「World Dreams」で祈り・警鐘・希望の鐘が鳴り響いていました。そうして2025年を締めくくるにふさわしい鐘の音が響く。
静かにしっとりなイメージかと思ったら、「World Dreams」合唱版のようにメリハリが効いた壮大なナンバーに仕立てられていました。もう感動です。クリスマスはもちろんのこと広く冬の歌として聴ける曲です。「World Dreams」と並ぶ希望や祈りを響かせる曲がまたここに。冬のコンサート定番曲になってほしい、心からそう思いました。夏は「World Dreams」冬は「White Night」素敵すぎます。約30年ぶりに甦るくらいだからどんなことにだって希望はある。

ホワイトナイト
鐘の音が響く
「世界はひとつ」とうたう
雪の街にも南の街にも 響きわたる
一年一度の この星の降る夜は
ほほえみと 温もりが
どの窓にもあふれるの
どうかこの夜だけは
小さな私のこころ
すべてのいのち 愛せるように
鐘のうた響け
海の向こうまで
いつの日か世界中が
声あわせるまで
鐘の音が響く
「世界はひとつ」とうたう
西の街にも東の街にも 響きわたる
一年一度の 星の輝く夜には
喜びや 幸せを
どの瞳も映しだすの
*今日も星に祈る 灯を消さないで*
どうかこの夜だけは
大きな君のこころよ
昨日の痛みをゆるせるように
鐘のうた響く
海の向こうまで
いつの日か世界中が
声あわせるのね
作詞:河野清香&小池光子(Little Carol)
作曲:久石譲
編曲:松波千映子
(CDライナーノーツより)
注)*で囲んだ一節だけが歌詞カードから抜けていると思われる。漢字・かな表記は正確ではないかもしれないが補足。

White Night, Joe Hisaishi, Little Carol, 女声合唱
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久石譲の曲にはインスト版と歌版とどちらも輝いている名曲がたくさんあります。White Nightも紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
ベストアルバム『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』(2021)にも収録されています。CD会場販売もありました。終演後、ゆっくりした足取りでホールから出てくる観客たちに「アンコール曲のオリジナルが収録されています!」そんな活気ある掛け声があってもよかったくらいです。きっと喜んで列を作る人たちがいたでしょう。
スタンディングオベーションもたくさん見られ、とても温かく盛り上がったコンサートでした。海外ファンのテンションの高い歓声にも久石さんは両手でガッツポーズしながら満面の笑みで応えていました。今年一年の疲れをとるどころか歓喜と新たな活力をもらったコンサートでした。ありがとうございました!
今シーズンの最後を飾るのはこちら。まだ間に合います!
久石譲コンサート2025を振り返ってみると、数年に一度くらいの超特大級のプログラムが勢ぞろいしました。どれか一つでもコンサートに行けたらアタリです。
今年は20本のコンサートレポートを紹介できました。届けてくれたふじかさん、tendoさん、thuruさん!紹介しあってくれたショーさん、Alainさん!どうもありがとうございました。来年も久石譲の音楽を楽しんでいきましょう!
リハーサル風景














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Posted on 2025/12/29
2025年12月26,27日「久石譲×日本センチュリー交響楽団 特別演奏会「第九」」が開催されました。今年4月から日本センチュリー交響楽団音楽監督に就任した久石譲のジルベスターコンサート的!年末の特別なひとときです。
今回ご紹介するのは、初めてコンサート・レポートを届けてくれた今夏からもう4回目のthuruさんです。コンサートを楽しむための予習から、余すところなく感じとったものまでが詰まっています。スコアを読める人だからこその鋭い気づきと分析の宝庫です。ぜひお楽しみください。
久石譲×日本センチュリー交響楽団 特別演奏会「第九」
[公演期間] 
2025/12/26,27
[公演回数]
2公演
大阪・フェスティバルホール
[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ソリスト:森麻季(ソプラノ) 山下 裕賀(アルト) 山本 耕平(テノール) 山下 浩司(バリトン)
合 唱 :日本センチュリー合唱団
オルガン:室住 素子 ※
[曲目]
久石譲:Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~ ※
—-intermission—-
ベートーヴェン : 交響曲 第9番 ニ短調 Op. 125「合唱付き」
—-encore—-
White Night (for Chorus and Orchestra)
[参考作品]

今回は日本センチュリー交響楽団第九特別演奏会の12月27日の様子をレポートさせていただきます。
今年は夏の3大コンサートなど日本での公演数が25回と海外公演の22回を上回る珍しい年となりました。そんな年を締めくくる最後の公演です。
会場の大阪フェスティバルホールは改装され赤を基調としたモダンでゴージャスの内装となっており美しかったです。ホール内には、限定久石ラベルの獺祭特別販売や新シーズンラインナップなども設置されていました。
曲目のOrbisと第九はセットで演奏されることが多いですが、意外にも2018年以来です。コンサートパンフレットには各楽曲の解説と、Orbis全楽章の歌詞(ラテン語、日本語)が掲載されていました。
久石譲:Orbis for Chorus, Organ and Orchestra
ラテン語で”環”や”繋がり”を意味するこの曲は元々はサントリー一万人の第九のために書かれたオリジナル曲です。そのため合唱も入る第九とたびたび一緒に演奏されてきました。2007年作曲のものですが2015年に組曲として三楽章からなる新版となっており、自分は今回初めて聞きました。
いつものように対向配置で、合唱が入るため打楽器は右端のほうに集中していました。スネアを担当する方のみ指揮台の前に配置されていました。今年の定期のボレロのような感じです。金管はティンパニを挟んでTrp,Hrnが左側、Trb,Tubが右側に配置されていました。指揮台より左側への指示出しが多かったように感じました。
第1楽章:Orbis~環
主に合唱とオルガンが中心の3/4拍子の部分とオーケストラによる11/8拍子によって構成されています。合唱部の歌詞は、第九と同じようにいくつかの単語からなっています。
OrbisもそうですしLinksやDeparturesの中間部、坂の上の雲より日本海海戦など2000年代後半から2010年代前半における久石リズムというのはこういった変拍子や独特なリズムがよくみられます。
メロディフォニー版から小さな変化が2つ。1つ目はチューブラーベルのパート譜です。具体的な箇所としては、スコアでいうと81小節目。11/8になる前のオルガンの六連符のさらに前のテノール(Fl,Picc,Ob,Ca,Hrn,Vla)によるアクセントの「Or-bis!」の部分が同じように演奏されていました。188小節目からも同じような再現部がありますがここはスコアに“Tub.Bells”と明記されています。いつもスコアを読み込んでいるからこそ気付いた本当に小さな変化です笑。スコア持っていない方、言語化が下手で申し訳ございません。
小さな変化の2つ目はテンポです。メロディフォニー版より遅めのテンポで始まりました。およそ10分の曲中で2度11/8になる箇所がありますが1回より2回目のほうが早くなっていました。意図されたアップテンポなのか、演奏で盛り上がっている中でのアップテンポなのかどちらかはわかりませんが、どちらにせよ聞く側としてもとても世界観が良くわかる、ノっていける演奏でした。出版スコアでは1回目も2回目もどちらも同じテンポ設定となっています。
少しスコアからしかわからない話をしますね。合唱部は全体通してソプラノ・テノールとアルト・バスがそれぞれ同じリズムで歌っています。途中でアルト、テノール間で半拍ズレていたりとオーケストラのみならず合唱にも難しいことを求めている作品です。オーケストラのほうは言わずもがな。なんだこれはとしか言えません。とんでもない数の16分音符です。果てしない数の音符からなるOrbis。生演奏でしかわからない気づきだだらけでした。
ここからの第2楽章と第3楽章は、音源もなく本当に初聞きだったので内容は薄くなってしまいます。すいません、、、
第2楽章: Dum fata sinunt ~運命が許す間は
「(第1楽章の作曲から)約8年を経ての作曲はスタイルも変化していて多少戸惑ったのだが、ラテン語の言諺で、”運命が許す間は(あなたたちは)幸せに生きるがよい。(私たちは)生きている間、生きようではないか”という言葉に出会い第2楽章を完成することができた。」(コンサートパンフレットより)
最初に思ったのは、この曲久石さんっぽくないな、ということです。作風が変化している中でOrbisに続く曲を作るという事で新しい試みだったんじゃないかなと思います。全体の雰囲気は教会のミサ音楽のようで、バッハのフーガのような感じもしました。
3拍子の短調で8分音符のオルガン伴奏から始まります。テンポはAndantino(4分音符=78)くらいだった気がします。オルガン、ストリングス、チューブラーベル、合唱の構成で管楽器の出番はありませんでした。ストリングスはヴィオラ、チェロ、コントラバスが和声を担当し、オルガン→2ndヴァイオリン→1stヴァイオリンの順を何周もするような形で同じ伴奏を繰り返していました。途中よりヴァイオリンの伴奏がトレモロになるなどミニマル的な要素ももちろん入り込んでいました。合唱は第1楽章とは異なり長い詩が歌詞となっているメロディーが中心の美しい旋律でした。女声メロディー→男声メロディー→同一単語を2度繰り返す、の連続です。
「運命が許す間は 幸せに生きるがよい 生きている間、生きようではないか 時は逃げる 時は逃げる」
歌詞より抜粋です。本当はラテン語ですが、少しでも伝わるように日本語訳を載せました。こんな感じで詩の後に2回何か言葉が繰り返されます。この繰り返す部分がユニゾンでした。リズムはナウシカレクイエムとほぼ一緒だったように記憶しています。一番スコアが気になる楽章です。
第3楽章: Mundus et Victoria ~世界と勝利
第2楽章からほぼ途切れることなく始まりました。一貫して11/8の第3楽章です。第3楽章の中でも曲調的に3つに分かれているような曲でした。常に合唱がメインのこの楽章は今までの久石さんの楽曲の要素を詰め合わせたような曲でした。
Part1,金管のファンファーレから始まります。弦楽器はポニョの浦の町のような雰囲気でした。合唱は第1楽章と第2楽章の間くらいの単語だけではないけど文章でもないくらいの言葉を歌っていました。イメージは第1楽章に近かったです。
Part2,ここではOrbisのメロディーが再現されていました。調を変えて少し変奏曲のような感じでした。途中から金管のファンファーレ、合唱はタタリ神の咆哮のような合唱も加わりました。
Part3,ヴィオラ、チェロのメロディーから始まります。僕の好きな系統のやつです。ちょっとXparkっぽさもあったでしょうか。Part2からたびたび出てくる金管のファンファーレがだんだん大きくなり盛り上がってアクセントのユニゾンで終わります。DA・MA・SHI・Eのラスト30秒のような盛り上がりでした。
第3楽章は全体通して一言でいうと長調でめちゃくちゃ明るい「Beyond the World」です。
久石さんが以前、1つのコンサートで自作と他の作曲家の曲をやるときは自作よりも他作を優先する。とおっしゃっていました。今回、自分も同じで第九ばかり勉強してあまりOrbisのほうに手が回せませんでした。今となってはすごく後悔していますが、新しい感覚で聞けてすごく満足しています。本当に度肝を抜かれました。素晴らしい演奏でした!
Orbisだけでもこんなに長くなってしまいました。うまく言語化できておらず、伝わりにくいかもしれませんが少しでもなんとなくわかれば幸いです。
―休憩―
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」
日本ではこの正月によく演奏される、一年を締めくくるこの曲は実に7年ぶりの披露となりました。今回この演奏会に行けるとわかったときから、時間があれば第九の勉強をしてきました。今回の教材は3つ。音源(FOC)、スコア、著書です。久石さん曰く、第九は“無駄をそぎ落とした完璧なスコア”だそうで、自分も勉強をしていく中でたくさんの気づきがありました。また、腕時計をはめて演奏時間も測ってみました。(ちゃんと演奏のほうに大集中しています)タイムは最後に発表します。
※ここからの解説はスコアを確認しながらのほうが120倍わかりやすいです。動画共有サイトやIMSLPなどにのっているので確認してみてください。申し訳ありません、、、
第1楽章:Allegro ma non troppo, un poco maestoso
2ndヴァイオリン、チェロの6連符から始まります。スコアに着目すればするほどベートーヴェンのすごさがどんどんわかってきます。ニ短調ですが数小節、調性が決定されないようにベートーヴェンによって仕掛けられています。小節数でいうと最初のおよそ20小節です。空虚5度というものが使われています。最初に何とも言えない雰囲気にもっていかれる原因です。最初、1stヴァイオリンが「ミラ ラミ」という感じで下がっていくんですがこの2つ目の4分音符がすごい伸びていました。テヌートくらいですかね。音源よりも全体的に解釈が新しくなっている印象でした。
第2楽章:Molto vivace
僕の1番好きな楽章です。解釈関係なく元のテンポ設定が速くてスコアでもついていくのが難しいこの楽章。久石さんはベーレンライター版で二楽章のリピートはすべてやります。「タンタタン,タンタタン,タンタタン」フォルテッシモの轟音で始まります。が、最初は少し抑えめでだんだん大きくなるように調節されていました。中間部のチェロの流れるような旋律は本当に美しいです。久石さんの指揮にのせてどんどん盛り上がっていきました。
第3楽章:Adagio molto e cantabile
木管の旋律から始まります。本当に美しい。その言葉に限る楽章です。ここで寝ちゃう方、まだまだです。見どころ満載ですよ。弦楽器のピチカート、ファゴット、ホルンのソロなど要所に見どころがあります。ホルンのソロ、本当に素晴らしかったです。めちゃくちゃうまい。ホールに響き渡る残響もちょうどよく耳に届いてとても聞きやすかったです。ホールの良さかな?
第4楽章:Finale, Presto(S,森麻季 A,山下裕賀 T,山本耕平 B,山下浩司)
嵐のような轟音を響かせスタートします。チェロとコントラバスのソロです。第1楽章から第3楽章を振り返り、それを否定する形です。途中では歓喜の歌のメロディーも登場します。ふたたび轟音が鳴ったかと思えばバリトンのソロです。マイクも使わずにホール全体に響き渡る声量は本当にすごいです。テノールのソロも同様で男性でもあそこまで高い声を響かせるのは本当に脱帽です!合唱も素晴らしかったです。一般募集の臨時団員も参加していたそうですがそれも全く感じさせない歌声でした。alla marciaでは跳ねるように楽しそうに指揮をされていました。最後の100小節ほどのからの「シラ」(名前でいうとPoco allegro stringendo il tempo, sempre più allegro)のところからは観客の皆さんがスゥーともうクライマックスが来る!と言わんばかりの音にならない深呼吸をしていました。自分もその中の1人です。大団円完璧に決まりました。ちょっと拍手早い人何人かいたかな??それでも本当に素晴らしい演奏でした。
第九全楽章通して変わらないことはいくつかありました。まずは左手の指揮が効いていたことです。左手での指示出しが露骨に演奏に反映されていて、久石さんがやりたかったことは伝わっていたんじゃないかなと思います。そしてもう一つ。音源(FOC)とは表現が変わっていることです。全体的にタメが多く、ここだ!というところで一発ドカンとくる印象でした。(特に第1、2楽章)
今回の演奏時間を発表します。カウント開始は久石さんが1拍目をとった13時55分25秒(推定)です。今回の演奏時間は63分でした。音源から数分伸びています。しかしこの伸びた時間は決して久石さんの個性が薄れたとかではなく、今年1年日本センチュリー交響楽団とベートーヴェンの交響曲を通していく中での新しい気づき、解釈、試みだったんじゃないかなと思います。素晴らしい演奏でした!!!
―Encore―
久石譲:White Night (for Chorus and Orchestra)編曲:宮野幸子
まさかの曲です。まず第九にアンコールを持ってくるのかと。過去公演ではアンコールなかったですし、やるとしても合唱版World Dreamsかなと思っていたんですが、ピアノストーリーズⅡよりこの曲でした。本当にまさかの選曲。原曲はピアノを中心としたものですがそれを合唱に置き換える形となっていました。オーケストラの伴奏も途中でタンバリンやトランペットの軽やかなメロディーなどクリスマス感もある編曲が施されていました。一年間頑張ったねと労わってくれるようなそんな曲でした。リトルキャロルの公式YouTubeに女声のみのヴァージョンがアップロードされています。参考程度に聞いてみてください。
激動の2025年を締めくくる今回のコンサート、足を運べて本当に良かったです。新年の国内最初のコンサートは1月16日の定期演奏会です。ハープコンチェルト行きたいですねー。いや行くしかない。日程が合えば行きます。来年以降は個人的に予定がたくさん入っていてもしかすると一度もコンサートに行けないかもしれないのでそんな気持ちで向かった今回の第九でしたが本当に満足です。久石ファンとしてはやっぱり完全版Orbisすごかったです。もっとたくさんの人に聞いてもらいたい。音源化、映像化、全楽章スコア出版、待ってます!!
長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました♪
2025年12月28日 thuru

オリジナル版Orbisから新版Orbis 第1楽章の微細な変化の気づきもおもしろかったです。第2楽章の深く聴いている様子も、第3楽章の久石譲らしさを浴びている様子も、とても楽しく伝わってきました。
第九も勉強の成果がすごくてただただ脱帽です。スコアや音楽用語がわからなくても雰囲気で伝わってくることもいっぱいある、わかりやすさもまたすごいです。確かに今回の第九は快速感は音源よりも感じなかったかもしれませんね。演奏するたびにアプローチやこだわりも進化していく久石譲指揮を感じるのがコンサートです。
まさか第九コンサートにアンコールがあるなんてびっくりしますよね!今回も最後まで楽しく読ませていただきました。コンサートの翌日にここまでホットで濃厚な感想を届けてくれて感謝です。来年もまた楽しんでいきましょう!
「行った人の数だけ、感想があり感動がある」
「想い書くことで、新しく聴こえる音がある」
コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。
どうぞお楽しみください。
reverb.
ハープコンチェルト行けるといいですね♪


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