Info. 2018/04/15 第37回香港アカデミー賞 最優秀音楽賞 久石譲 映画『Our Time Will Come』受賞

4月15日香港にて行われた第37回香港アカデミー賞、映画「明月幾時有 Our Time Will Come」で久石譲が最優秀音楽賞を受賞しました。同映画は最優秀作品賞をはじめ5部門最多受賞にも輝いています。

久石譲は2008年第27回香港アカデミー賞での最優秀音楽賞(映画「おばさんのポストモダン生活」)につづいて2度目の受賞になります。 “Info. 2018/04/15 第37回香港アカデミー賞 最優秀音楽賞 久石譲 映画『Our Time Will Come』受賞” の続きを読む

Info. 2018/04/21 久石譲「INFORMATION」リイシュー アナログレコード発売

’82年発表、久石譲の実質的1stアルバムが遂にアナログリイシュー!

久石氏自身がソロアーティストとして活動を開始した1982年に制作され、ソロユニットとして名乗られたWonder City Orchestra。当名義唯一の作品が、アナログ・リマスタリングにて遂にLPレコード復刻です。

国内外問わず再評価が高まる現代音楽家/打楽器奏者、高田みどりらのムクワジュ・アンサンブルへ提供した国産ミニマルミュージック名宝『MKWAJU』から1年後となる本作は、ミュージック・コンクレート的な実験性と、YMO諸作品にも通ずる最先端のポップミュージックが邂逅した独創的な作品。 “Info. 2018/04/21 久石譲「INFORMATION」リイシュー アナログレコード発売” の続きを読む

Disc. 久石譲 『二ノ国 II レヴァナントキングダム』 *at game release

2018年3月23日 PS4/PC GAME発売

 

*at game release
これはゲームソフト発売後まもなく、サウンドトラック盤リリース情報の前にまとめたものである。

 

 

レベルファイブ「二ノ国」シリーズ最新作。『二ノ国 漆黒の魔導士』(2010・Nintendo DS)、『ニノ国 白き聖灰の女王』(2011・PlayStation 3)にひきつづき本作も久石譲が音楽担当。

2015年12月「PlayStation Experience 2015」にて発表、同時に公開された1stトレーラー(約3分)では久石譲による本作のための書き下ろし音楽を聴くことができた。以降順次トレーラー公開され、コアスタッフによる特別インタビュー動画なども公開された。

映像集で使用された久石譲音楽についてもふれたいので映像リストをまとめる。

 

【公式映像集】

  • 1stトレーラー(約3分)2015/12 公開
  • 2ndトレーラー(約2分)2016/12 公開
  • 3rdトレーラー(約1分半)2017/6 公開
  • 4thトレーラー(約1分半)2017/8 公開
  • TGS 2017トレーラー(約1分半)2017/9 公開
  • 声優紹介トレーラー(5thトレーラー)(約5分)2017/12 公開
  • 特別インタビュー映像 第1弾「アニメーション編」(約3分半)2017/12 公開
  • 特別インタビュー映像 第2弾「キャラクター編」(約3分半)2018/1 公開
  • ゲームプレイ映像 システム紹介篇(約3分)2018/2 公開
  • 特別インタビュー映像 第3弾「音楽編」(約3分半)2018/2 公開
  • 特別インタビュー映像 第4弾「ゲームシステム編」(約3分半)2018/2 公開
  • 特別インタビュー映像 第5弾「アート編」(約3分半)2018/3 公開
  • ファイナルトレーラー(約1分半)2018/3 公開
  • コマさんと風丸一郎太の二ノ国II大冒険・前編(約6分) 2018/3 公開
  • コマさんと風丸一郎太の二ノ国II大冒険・後編(約6分)2018/3 公開
  • TVCM『二ノ国II レヴァナントキングダム』王に集いし英傑篇(15秒)2018/3 公開
  • TVCM『二ノ国II レヴァナントキングダム』アニメの世界を旅する篇(15秒)2018/3 公開

(レベルファイブ公式サイト/公式Youtubeにて視聴可能 ※2018年4月現在)

 

音楽にフォーカスして掘りさげる。

 

【公式映像集/使用楽曲】

  • 1stトレーラー(約3分)2015/12 公開
    「クーデター The Toppled Throne」「希望 There is Hope」をもとに構成されたトレーラー専用音楽
  • 2ndトレーラー(約2分)2016/12 公開
    「The Zodiarchs」「The Wrath of the White Witch」「Kokoro no Kakera -Pieces of a Broken Heart- (English Version)」※Ni No Kuni: Wrath Of The White Witch Original Soundtrack
  • 3rdトレーラー(約1分半)2017/6 公開
    「戦闘開始 Let Battle Commence」「二ノ国 II メインテーマ Theme from Ni no Kuni II」
  • 4thトレーラー(約1分半)2017/8 公開
    「守護神 Kingmaker’s Theme」
  • TGS 2017トレーラー(約1分半)2017/9 公開
    「ボスバトル Boss Battle」「キングダム Evan’s Kingdom」
  • 声優紹介トレーラー(5thトレーラー)(約5分)2017/12 公開
    「命運をかけた戦い Fateful Encounter」「勇ましき進軍 To Arms!」「果てしない空 The Boundless Skies」
  • 特別インタビュー映像 第1弾「アニメーション編」(約3分半)2017/12 公開
    「二ノ国 II メインテーマ Theme from Ni no Kuni II」
  • 特別インタビュー映像 第2弾「キャラクター編」(約3分半)2018/1 公開
    「キングダム Evan’s Kingdom」「戦闘開始 Let Battle Commence」
  • ゲームプレイ映像 システム紹介篇(約3分)2018/2 公開
    「キングダム Evan’s Kingdom」「戦闘開始 Let Battle Commence」「勇ましき進軍 To Arms!」「命運をかけた戦い Fateful Encounter」
  • 特別インタビュー映像 第3弾「音楽編」(約3分半)2018/2 公開
    「希望 There is Hope」「The High Seas 大海原」「果てしない空 The Boundless Skies」
  • 特別インタビュー映像 第4弾「ゲームシステム編」(約3分半)2018/2 公開
    「戦闘開始 Let Battle Commence」「The High Seas 大海原」「闇の呪文歌 Dark Rite」
  • 特別インタビュー映像 第5弾「アート編」(約3分半)2018/3 公開
    「ボスバトル Boss Battle」「広大な大地 The Great Outdoors」
  • ファイナルトレーラー(約1分半)2018/3 公開
    「守護神 Kingmaker’s Theme」「戦闘開始 Let Battle Commence」「夢の中の少年 The Curious Boy」
  • コマさんと風丸一郎太の二ノ国II大冒険・前編(約6分) 2018/3 公開
    「キングダム Evan’s Kingdom」「果てしない空 The Boundless Skies」「命運をかけた戦い Fateful Encounter」「欲望の町 City of Hunger」「ネズミ王国の城下町 In the Kingdom of the Mice」「フニャ Here Come the Higgledies!」「脱出 The Escape」「The High Seas 大海原」
  • コマさんと風丸一郎太の二ノ国II大冒険・後編(約6分)2018/3 公開
    「キングダム Evan’s Kingdom」「勇ましき進軍 To Arms!」「クーデター The Toppled Throne」~(曲間つなぎめ1stトレーラー専用音楽version)~「守護神 Kingmaker’s Theme」「広大な大地 The Great Outdoors」
  • TVCM『二ノ国II レヴァナントキングダム』王に集いし英傑篇(15秒)2018/3 公開
    「勇ましき進軍 To Arms!」
  • TVCM『二ノ国II レヴァナントキングダム』アニメの世界を旅する篇(15秒)2018/3 公開
    「二ノ国 II メインテーマ Theme from Ni no Kuni II」

 

 

上記【公式映像集】から取り上げたいことは3つ。

1stトレーラー
本作のために書き下ろされた主要テーマ・メインテーマが初公開となった2015年12月。そして見逃してはいけないこと、1stトレーラー用音楽はこの映像のためだけに構成された音楽であるということ。目まぐるしくテンポよくカット割りされ小出しにされる映像に合わせて、音楽も展開しながら緩急つけて多楽曲から構成されている。映像集がでそろいゲームソフトが発売になり全貌がわかる今だからこそ、気づくことができる貴重な発見。これについては後にも詳しく掘りさげたい。

2ndトレーラー
全映像集が久石譲による「二ノ国 II」新作音楽から使用されているなか、2dnトレーラーだけは前作音楽からの使用になっている。

特別インタビュー映像 第3弾「音楽編」
久石譲インタビューが公開された貴重な記録。レコーディング風景や日野晃博氏のインタビューもまじえた久石譲が語る二ノ国 II。

【日本語テロップ】

自分の中でいろいろ考えていって、どうしてもやっぱりゲームの音楽っていうのは音楽の数が多いので、それをどうやってまとめるかなということと、ちょうど今、割とリズムをオーケストラでしっかり出すやり方をしているから、それで全体をやってみようという、そういうつもりでやりましたね(久石)

今回は2回目なので、日野さんのこともすごく尊敬しているので、これはやろうと(久石)

ジブリ作品のファンじゃないですか、皆、僕も含め。だからやっぱり久石さんにお会いしたら、もう凄いオーラで緊張しまくったんですけれども、久石さん熱い人なので正面からちゃんと付き合おうという形でやらしていただきましたね(日野)

日野さん本当にいろいろ考えられて作ったゲームなので、(僕も)精一杯作ったし、比較的全体の様子が見えてたので、作り易かったですよね(久石)

ちょっとメゾフォルテなんで、ちょっと大きめにフォルテに吹いてもらって良いですか?それで22小節目でメゾフォルテを下げて行く感じで(久石)

前作の二ノ国に比べてちょっと音楽的なレベルを上げたというか、難しいという訳じゃないんだけど、知的レベルを上げたアプローチ。ですからちょっとかなりオーケストラは難しいんですよ演奏が。だけど本当、東フィルさん(東京フィルハーモニー交響楽団)が一生懸命やってくれてとてもいい録音ができましたね(久石)

ゲームの常識を超えたところでいろいろ音楽を作ってこられるので、戦闘シーンの音楽も普通のRPGの戦闘とは一線を画すものだし、ゲームを超えた音楽性だと思いますね(日野)

ゲーム音楽はどうしても繰り返して聴く訳ですよね。ですから、繰り返して聴く(曲を作る)方法と通常に作る方法とちょっと違うんですよ。その中で音楽とそのゲームにはまってもらうと嬉しいかなというか浸ってもらうと嬉しいかなと思います(久石)

(動画より書き起こし)

 

 

 

《得意技を封印した新境地》

「二ノ国 II レヴァナントキングダム」の音楽は、久石譲の得意技をことごとく封印したなかで新境地を切り拓いた快作である。ポイントは久石譲インタビューにもあるとおり”くり返し聴かれる”ことを想定した音楽づくり。

  • 展開しない音楽 ~起承転結を排除した構成~
  • 歌えないメロディ ~リズムモチーフと違和感~
  • 音楽三要素の優先順位 ~一般常識の真逆~
  • ミニマル手法の封印 ~くり返す手法は同じはず なのに~

 

展開しない音楽 ~起承転結を排除した構成~

ゲーム音楽はオープニングやエンディングを除き、プレイ中に同じ音楽をくり返し聴くことが多い。それは本作のようなRPGであっても同じである。「二ノ国 II」の楽曲の多くは、Aメロ-Bメロ-サビ-転調-大サビなどと展開しない、起承転結を排除したAメロ-BメロもしくはA-B-Cをループするような音楽構成になっている。同時に最小限に展開するA-B-Cなど一曲のなかにおいても、雰囲気が大きく変わる曲想にはつくられていない。曲の終止部はフェードアウトや接続的フレーズ、くり返しイントロに戻ってもつながりやすい音楽づくりがされている。

「二ノ国 II メインテーマ Theme from Ni no Kuni II」はコーラスを編成した構成になっている。より大きく広がりのある世界観になっていて、前二作からの変化も聴き比べるとおもしろい。本作では混声合唱を巧みに使った楽曲群も複数ある。メインテーマでありゲームオープニングで華やかに流れる同曲と、メインテーマのバリエーションでプレイ中に聴くことができる「広大な大地 The Great Outdoors」「キングダム Evan’s Kingdom」。この3楽曲をもっても、展開する音楽(メインテーマ)と展開しない音楽(バリエーション2曲)の組み立て方の違いをわかりやすく感じとることができる。

話は音楽全体に戻して、くり返し聴くことを目的としたという点では、起承転結しない展開しないことはまっとうな手法である。だがデメリットとしてこれを表面的に施しただけでは単調になり、くり返されることで飽きてしまう音楽になりうる。

 

歌えないメロディ ~リズムモチーフと違和感~

どの楽曲もそれぞれに性格のはっきりしたバリエーションに富んだもの。印象に残るにもかかわらず実は歌えるメロディは少ない。歌心のある・ドラマティックに展開する、そういった主役的メロディは意図的に排除されている。

なにで推しきっているかといえばリズムであり、リズム動機・リズムモチーフのような旋律を配置していること。メロディのない曲という見方もあるけれど、それだと陳腐なBGMと勘違いされるので、そうではない、モチーフや旋律はしっかりと存在する。そしてこの手法において、ハーモニーとぶつかる違和感のある旋律も多い(一瞬の不協和音のようなもの)。旋律としてもリズムとしてもより輪郭がはっきりし、アクセントやインパクトもクリアする。さらにこれらモチーフのキャッチーさと違和感のさじ加減こそ、くり返し聴かれる飽きのこない音楽という久石譲の絶妙のバランス感覚といえる。

 

音楽三要素の優先順位 ~一般常識の真逆~

音楽三要素はメロディ、ハーモニー、リズム。ポップスで言えば、歌(メロディ)があって伴奏(ハーモニー)があってドラム(リズム)があって成立するし、楽曲として成立させるうえでの優先順位も当然この順番になる。

しかし、本作で久石譲が切り拓いた新境地は一般常識の真逆ともいえる音楽構成である。リズムにもっとも重点がおかれている。先に書いたリズム動機・リズムモチーフに徹底していることはもちろん、ほかにも随所にある。

展開しない音楽において飽きを克服するべく、テンポに変化をつけている。同一楽曲内で曲想が変化したり、パートが展開していけば、もちろんテンポも変わってくる。でもそういった作り方をしていないなかで、曲想やフレーズの変化によるものではない、聴き流していて自然すぎて気づかない範囲でテンポ変化を施している。つまり曲の緩急をテンポによって実現している。ダンス・ミュージックのように均一なテンポを刻みつづける趣とは異なる、人が聴いていて心理的・生理的に心地よいと感じる流れ。それは人の呼吸や脈が一定リズムではないことと同じ無意識下に本能的に気持ちいいと感じる、極めてレベルの高いテクニック。しかも、くり返すことを前提にしたテンポバランスなのだから、これはもう。

リズムに重点というと、パーカッション群が大活躍しているのかと思うがそうではない。旋律そのものがリズムの役割も果たしているのでパーカッションはむしろ少ない方である。誤解を生むので、一般的でオーソドックスなパーカッションの種類と量であり、久石譲独特のパーカッション群や緻密に飛び交うパーカッション群は少ない。つまりメロディとリズムを切り離した三要素ではなく、メロディ=リズムなのだ。メロディでありながらリズムを刻んでいる。

このような意図があったときに、大変になってくるのがその演奏。まるで映像にあわせるように繊細で心地いいテンポ変化をつけること、しかしながら、メロディに抑揚やアクセントをつけてしまわないこと。メロディでありリズムであることの持ち味を実現する、東京フィルハーモニー交響楽団に求められた音楽レベル・知的レベルの難易度のひとつではないかと推測している。ついつい演奏に気持ちや力が入ってしまわないこと、きっちりそろえること、奏法やビブラートもふくめてあくまでもフラットであること。悠々と歌うような旋律も、横揺れして流れてしまわないように、しっかりとブレスしてフレーズごとに切っている楽曲たち。

たとえば歌でいうと、2番はこぶしが入りました。それは悪いことではない、同じフレーズでも単純にくり返すよりも表現方法を変える。楽曲が展開している、ピークにもっていくための、一般的である。でも、本作の音楽においてそれをしてしまうとくり返し聴くという制約に叶わない。こぶしが入ったり表現(奏法)に凹凸が出過ぎるとループがきれいに流れないからだ。くり返しのどの場所にあるか気づきやすくなってしまう。やはり音楽的アプローチの肝は「きっちりそろえる」こと。

 

まだまだある。

楽曲が展開するというのは、メロディの変化でもあり、コード進行の展開でもあり転調でもあったりする。本作の楽曲群がシンプルな音楽構成といえるのは、これらが施されていないからであることは書いてきた。

いま一度「シンプル」ということに重点を置くと、本作の楽曲たちと前二作において大きく異なるのが、緻密で密度の濃いつくり込まれた音楽か否かである。くり返し飽きのこない音楽にするために余白のある音楽にしているとも言える。でもそれだけではないようにも思う。ここで登場するのがハーモニー、本作の音楽にはハーモニーを意図的に避けているように聴こえる。メロディをハモるということではなく、メロディに絡めた複雑な対旋律や内声といったものが緻密で密度の濃い久石譲音楽たらしめているとしたら。

リズムを最優先する手法をとるために、リズムの輪郭を一本際立たせるために、別のリズムやテンポ感・フレーズ感といったものを誘発させる対旋律や内声を配置していない。そしてまたメロディと異なるフレーズを絡めるこということは、必然的に和音やコード感といったハーモニーを生んでしまうのである。実際に楽曲群の多くは旋律が入りくんでいないし、複数の楽器で奏されているけれど同じ旋律のユニゾンも多い。なぜハーモニーを抑えたかは、くり返すこと・展開しないことに軸(コードが進行することは楽曲の起承転結を促す)があるし、先に書いたメロディ・モチーフそのものにハーモニーとぶつかる不協和音的エッセンスを散りばめているから。ん?ということは、あえて違和感のある音をぶつけているのは、メロディや曲が展開しないようにくい止めている効果もあるのか?!曲がきれいに流れていかないですよと宣言している音たちなのか?! そうこの考察もループしてしまう。

もちろん最小限に配置された対旋律たちも最大の効果をあげている。本作でのハーモニーの役割は、和声感やコード感といった響きではなく、ハーモニーもリズムであり、リズムのためのハーモニー(複旋律)である。そう、すべてはリズムのために。

 

ミニマル手法の封印 ~くり返す手法は同じはず なのに~

くり返し聴くことが目的ならば、まさに久石譲の真骨頂ともいえるミニマル手法があるではないか。ミニマル・ミュージックは最小限の音型(モチーフ)がくり返したりズレたりするもの。

本作の楽曲群では、なんとこのミニマル手法は使われていない。なぜだろう?と疑問に思い考えてみる。そうすると意外な一面が見えてきたように思う。ミニマル音楽はただくり返しているわけではない。ズレや変化といった展開することと同居している。ただくり返すだけならそれはミニマル・ミュージックではないとも言える。久石譲のオリジナル作品や映画音楽などあらゆる音楽のなかなら、ミニマル手法が炸裂している楽曲を思い浮かべると、共通して覚醒的に陶酔的に音楽は展開している。シンプルにくり返すことがミニマル・ミュージックなのだけれど、変化や展開のないそれは持ち味がなくなり、ミニマルとしてのアイデンティティを失ってしまうということなのかもしれない。

 

 

前二作の緻密で密度の濃い音楽は、音楽完成度からすると非常に高い。本作ではさらに一歩推し進めて、あえて自身の持ち味得意技を封印し新しい境地に挑んでいる。

イメージをかきたてる起承転結のはっきりしたドラマティックな音楽、一度聴いたら耳から離れない歌いたくなる心揺さぶるメロディ、緻密なオーケストレーションと独特の楽器編成でつくりこまれた密度の濃い音楽、原点であり真骨頂でもあるミニマル手法を盛りこんだオリジナリティある音楽。

久石譲音楽が久石譲音楽たらしめているこれらの得意技をすべて封印して挑んだのが「二ノ国 II レヴァナントキングダム」の音楽。そして結果、それは同じように久石譲音楽ブランドをしっかりとまとい、新しい可能性をも提示してくれた新境地にして傑作。

 

 

1stトレーラー専用音楽

ちょっと力を抜いて、百聞は一見にしかず。1stトレーラーの音楽だけがそれ専用につくられた音楽だということは冒頭に書いた。

今現在視聴することができる公式動画をもとに進める。本作楽曲より「クーデター The Toppled Throne」をもとに構成された音楽で、0:50~1:25、1:45~2:00のパートはゲーム本作には採用されていない。ちょっとした数十秒の間で繰り広げられる展開やフレーズといった曲想の変化こそ、上に書いたいつもの久石譲音楽たらしめているかたちのひとつである。2:00以降の「希望 There is Hope」もゲームにはないバージョン、壮大に盛り上がっていく展開が聴けるのはこの1stトレーラーならでは。

つらつらだらだらと考察してきたことを、百聞は一聴にしかず。この人はこういうことを言いたいのかなぁ、そのひとつ少しでも伝わっていただけたら幸いです。

 

【二ノ国II レヴァナントキングダム】1st トレーラー 約3分
レベルファイブ公式Youtubeチャンネルより

 

 

エンディングテーマ「希望の未来」

久石譲作曲/編曲による楽曲で、前2作とは異なり歌曲ではない。麻衣のヴォイスによるヴォカリーズになっている。(前作テーマ曲「心のかけら」作詞:鈴木麻実子 歌:麻衣)

オリエンタルな旋律と前衛的でアヴァンギャルドな音やリズム構成。民族音楽からのヴォイス・サンプリングも織り交ぜた、今の久石譲からは耳を疑うような斬新な楽曲に驚く。「オリエントへの曵航」(オリジナルアルバム「illusion」(1988)収録)の再来かと錯覚するようなニンマリしてしまうようなアグレッシブな楽曲。

クレジットにはないが、久石譲本人のヴォイスも隠し味として入っている気がする、そんなパートが数箇所ある。いや、きっと入っていると思う。

なんという凝りに凝ったリズムアレンジだろう、エネルギーが湧き出るようなグルーヴ感と最先端のリズムパーカッション・プログラミング。このリズムアレンジは共作となっている。手がけたのは、ガブリエル・プロコフィエフ、松浦晃久、久石譲。久石譲の好奇心・実験・挑戦のつまった渾身の楽曲になっている。体の底から心の底から覚醒する快感を味わえる楽曲。

興味深いのが、この楽曲ベースラインがまったく動かない。拍子も刻まないほどに。これだけリズム感があり躍動的な曲なのにである。そしてうねるような低音は曲中盤に集約されている。ここだけ一気に乱れ狂い重厚重音な渦をまく。怒涛の低音ミニマル。そう、この楽曲はリズム・アレンジが要なのだ。リズムで大きく楽曲を支え疾走する。その他フィーチャーされた楽器群による構成も相乗効果で素晴らしい。なんだか「こんなのどうですか?」と新しいギフトを自信たっぷりに差し出された気分だ。

ガブリエル・プロコフィエフ、どこかで聞き覚えのある名前と思ったら、久石譲ともつながりの深い音楽家。久石譲が興味を抱き、刺激を受け、出会い、共作し、別作品を自身のコンサートで取り上げ、そんな歩みを紐解くことができる。音楽家同士の共鳴と一期一会の結晶のひとつ、今だからこそ作ることができた楽曲、それが「希望の未来」。

 

以下、ガブリエル・プロコフィエフ氏にフォーカスして掘り下げる。

 

◇2014年 WEB「REAL SOUND」掲載インタビュー

――先ほどもお話に出ましたが、久石さんが刺激を受けるクリエイターを何人か挙げていただけますか。

久石:
最近だと、アメリカの32歳のニコ・ミューリー。彼はいいですね、完全にポストクラシカルの人間で、ビョークのプロデュースをしたり、メトロポリタンオペラというアメリカで一番大きな歌劇場でも曲を書いています。技術力もある。こういう新しい世代がガンガン出てきています。セルゲイ・プロコフィエフの孫にあたるガブリエル・プロコフィエフも面白いと思います。

Blog. 久石譲 『WORKS IV』 発売記念インタビュー リアルサウンドより 抜粋)

 

◇2014年 雑誌「モーストリー・クラシック 2015年2月号」掲載 インタビュー

「僕の作曲の根本にはミニマルミュージックがありますが、正統派のミニマル・ミュージックの作曲家は、ライリー、ライヒなど4人だけで、あとはポスト・ミニマルやポスト・モダンで、いまポスト・クラシカルというクラシックの範疇にとどまらないミューリーや大作曲家の孫のガブリエル・プロコフィエフといった人達が出ている。そんなミニマルの与えた影響や流れなどは、大きな意味があるのに日本では聴くことができない。それをもっと紹介したいし、自作も書きたいということで始めました。集客は大変ですが、今後も続けていきます」

Blog. 久石譲 「モーストリー・クラシック 2015年2月号」 インタビュー内容 より抜粋)

 

◇2016年 NHK WORLD 「Joe Hisaishi Special Program」

ガブリエル・プロコフィエフ氏本人がインタビュー出演し、久石譲音楽の魅力を語る。

Blog. NHK WORLD 「Joe Hisaishi Special Program」 久石譲特番放送内容

 

◇2017年 「久石譲 presents ミュージック・フューチャー Vol4」コンサート

ガブリエル・プロコフィエフ:弦楽四重奏曲第2番 (2006)
Gabriel Prokofiev:String Quartet No. 2

ガブリエル・プロコフィエフの《弦楽四重奏曲第2番》もクラブシーンの影響を受けながらも祖父譲りの強い音の構成力と感情を揺さぶる強い力があります。そう、今年は「くり返す」ということと「揺さぶられる感情」あるいは「揺れ動く感情」がテーマです。

このお三方とは今年ニューヨークやロンドンで直接お会いしてそれぞれの楽曲へのアドバイスをいただきました。また作曲家どうしの話題はとても刺激的で至福の時間でもありました。

(久石譲)

Blog. 「久石譲 presents ミュージック・フューチャー vol.4」 コンサート・レポート より抜粋)

 

休憩を挟んで3曲目に演奏された『弦楽四重奏曲第2番(ガブリエル・プロコフィエフ/2006』では、ヴァイオリンが弦を激しく叩いてビートを紡ぐといった斬新な演奏を披露。楽器こそクラシック系だが、これはもはやEDM等のダンスミュージック。作者のガブリエル・プロコフィエフは、ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフの孫。祖父のDNAを引き継ぎポスト・クラシカル系の作曲家でありながら、DJとしても活動し、クラブミュージックとの競作も発表しているほど。

Info. 2017/10/26 「久石譲 ミュージック・フューチャーVol.4コンサート開催」(Webニュースより) 抜粋)

 

 

「二ノ国 II レヴァナントキングダム」の音楽は公式にクレジットのあるもので全31曲。ただし、追加音楽の明記もあるので、全31曲が久石譲によるものではないと推測している。といっても、他者による追加音楽は1曲程度だろう。こういう書き方をするのは楽曲ごとの作者が不明だからである。またゲーム内では久石譲作曲をベースにしたシンセサイザー・アレンジ楽曲(他者による編曲)や追加楽曲、ジングルもふくめるとトータル約60曲にも及ぶ。

ひとつ確かな手引きとなること。冒頭に紹介した公式映像集に使用された楽曲たち、また下記紹介する海外限定版にのみ付属するLPやCDに収録された楽曲たち。これらは間違いなく久石譲が作曲したものであり、同時に「二ノ国 II」の音楽を語るうえで主要なテーマ曲ということになる。ゲーム発売にともなう完全なるオリジナル・サウンドトラック盤CDには至っていない。

久石譲が約30曲も本作のために書き下ろし、こんなにも素晴らしいクオリティの音楽なのに、ゲーム愛好家しか聴けないというのは非常にもったいない。2015年12月に初めて耳にした時から、約2年越しにようやくその全貌を現した「二ノ国 II」音楽。待ち望んだ二ノ国ファン、ゲームファン、久石譲ファンのためにも、ぜひCD化を熱望している。オリジナル・サウンドトラック完全盤として。そのとき1stトレーラー専用音楽などもボーナス・トラックで収録してくれたなら、歓喜にふるえる。

くり返し聴くことを目的とした音楽づくりは完成度が低いのだろうか。決してそうではないことは書いてきた。もし制作段階からサントラ盤を出す意図がなかったとしたら、それはとても残念に思う。今の久石譲がいっぱいにつまった快作、実験と挑戦で新しい可能性を響かせてくれた傑作。

いつの日か久石譲コンサートによって、組曲として壮大に起承転結する音楽作品へと昇華されることも夢みる。「二ノ国 II レヴァナントキングダム」音楽は、CD化されること・コンサートで披露されることではじめて完結する。着地できない優れた楽曲たちに、とびっきりのゴールをつくってほしい。

 

注)
「Ni No Kuni: Wrath of the White Witch - Original Soundtrack」は、2011年「二ノ国 白い聖灰の女王」(日本・PS3)を経て2013年1月海外版ゲームソフト発売に連動するように発売された。

 

 

商品パッケージについて

音楽に関連する商品情報のみピックアップする。いずれも日本国内版にはない特典で本作の海外人気をうかがわせる。

「Ni No Kuni II: Revenant Kingdom: King’s Edition (PS4) / (PC DVD) EU版」には、二ノ国 IIからの2楽曲が収録されたアナログレコード(LP)が付属している。

 

(LPジャケット)

 

(LP盤)

 

The Sound of NI NO KUNI II: REVENANT KINGDOM

Track 01. Theme from Ni no Kuni II
Track 02. The Curious Boy

Music Composed and Directed by Joe Hisaishi
Performed by the Tokyo Philharmonic Orchestra in Tokyo, Japan.

 

 

「Ni No Kuni II: Revenant Kingdom – Premium Edition (北米版)」には、二ノ国 IIからの4楽曲が収録されたCDが付属している。

 

(ケース CD盤)

 

Ni no Kuni II: Revenant Kingdom Music CD Collection

01 Theme from Ni no Kuni II 3:59
02 The Boundless Skies 3:19
03 Evan’s Kingdom 2:52
04 There is Hope 1:55

Artist: Joe Hisaishi
Genre: Original Soundtrack
Published by: BANDAI NAMCO Entertainment America
Release Region: North America
Release Date: 2018/3/23

Composed & Conducted by Joe Hisaishi
Orchestration: Chad Cannon, Kosuke Yamashita, Joe Hisaishi
Performed by the Tokyo Philharmonic Orchestra
Chorus: Ritsuyukai

Recording & Mixing Engineer: Mikio Obata
Sound Manipulator: Yusuke Yamashita (WONDER CITY)
Recording Studio: AVACO CREATIVE STUDIO, SOUND INN STUDIO
Mixing Studio: SOUND INN STUDIO

 

 

(日本国内版 PS4)

 

楽曲情報

・二ノ国 II メインテーマ Theme from Ni no Kuni II
・クーデター The Toppled Throne
・別れ Leavetaking
・闇の呪文歌 Dark Rite
・広大な大地 The Great Outdoors
・大海原 The High Seas
・果てしない空 The Boundless Skies
・脱出 The Escape
・危険な谷 Treacherous Valley
・神秘の森 Forest of Mysteries
・海底洞窟 Deep Sea Cave
・ファクトリー The Factory Floor
・キングダム Evan’s Kingdom
・欲望の町 City of Hunger
・進化の大都市 City of the Future
・水の都 Kingdom by the Sea
・ネズミ王国の城下町 In the Kingdom of the Mice
・滅びの王国 The Lost Kingdom
・戦闘開始 Let Battle Commence
・苦闘 Into the Fray
・ボスバトル Boss Battle
・命運をかけた戦い Fateful Encounter
・守護神 Kingmaker’s Theme
・ラストバトル The Final Showdown
・夢の中の少年 The Curious Boy
・のどかな日常 Carefree Days
・勇ましき進軍 To Arms!
・希望 There is Hope
・切ない思い出 Painful Memories
・フニャ Here Come the Higgledies!
・希望の未来 Happily Ever After

 

ミュージック・クレジット

音楽:久石譲
オーケストレーション:チャド・キャノン 山下康介 久石譲
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:栗友会
指揮:久石譲

エンディングテーマ「希望の未来」
作/編曲:久石譲
リズム・アレンジ:ガブリエル・プロコフィエフ 松浦晃久 久石譲
ヴォイス:麻衣
コーラス:東京混声合唱団
パーカッション:和田光代
ケルティック・ティンホイッスル:野口明生
ハープ:堀米綾
ピアノ:鈴木慎崇
ストリングス:真部ストリングス

レコーディング&ミキシングエンジニア:小幡幹男
マニピュレーター:山下祐介(ワンダーシティ)

レコーディング・スタジオ:AVACO CREATIVE STUDIO SOUND INN STUDIO
ミキシング・スタジオ:SOUND INN STUDIO

追加音楽:西郷憲一郎
サウンドデザイナー:山中大 西浦智仁 橋詰友美子 畑田浩孝
サウンド制作サポート:森下真都香 吉田祐也 柴田陽介

 

※ミュージック・クレジット項はゲーム本作エンドロールクレジットより。編集記載のため紹介順序は異なる。

 

 

【商品情報】
対応機種:PlayStation®4/PC
発売日:2018年3月23日(金)
CERO:B(12才以上対象)
価格:
[通常版] 8,000円(税別)
[初回限定版「COMPLETE EDITION」] 10,000円(税別)
[シーズンパス] 2,000円(税別)
制作・発売:株式会社レベルファイブ
海外発売:株式会社バンダイナムコエンターテインメント

【キャスト】
エバン役:志田 未来
ロウラン役:西島 秀俊
シャーティー役:門脇 麦
シャリア役:木村 文乃
セシリウス役:山崎 育三郎
ラティエ役:吉谷 彩子

ガットー役:吉田 鋼太郎

【スタッフ】
ストーリー/ゼネラルディレクター:日野 晃博
キャラクターデザイン:百瀬 義行
音楽:久石 譲

©LEVEL-5 Inc.

 

 

2018.6.6 release

 

 

Info. 2018/04/10 JR栃木駅の発車メロディに市歌「栃木市民の歌~明日(あす)への希望~」 【4/12 Update!!】

4~6月、19年ぶりに県内を対象とするJRグループの大型誘客事業、デスティネーションキャンペーン(DC)に合わせ、JR栃木駅では4月10日の始発電車から、発車メロディーとして栃木市の市歌「栃木市民の歌~明日(あす)への希望~」が流される。 “Info. 2018/04/10 JR栃木駅の発車メロディに市歌「栃木市民の歌~明日(あす)への希望~」 【4/12 Update!!】” の続きを読む

Info. 2018/04/21 山口美央子「恋するバタフライ/ANJU」7インチレコード+シングルCD 発売

“オリエンタルなシンセ・ポップの才媛” 山口美央子がシンガーソングライターとしてキャリア最後に残した名曲「恋するバタフライ」と「ANJU」。編曲は久石譲が担当。すべてを完璧に磨き抜いた日本の80年代ポップ音楽の傑作曲、遂に初シングル・レコード+シングルCD化!

『夢飛行』、『NIRVANA』、『月姫』の3枚のアルバムから山口美央子本人が選んだベストセレクションに、東映のビデオ作品『ANJU』の為に作られた新曲「恋するバタフライ」と「ANJU」が加わり1985年にリリースされたアルバム『ANJU』。その2曲が初シングル・レコード+CDシングル化。 “Info. 2018/04/21 山口美央子「恋するバタフライ/ANJU」7インチレコード+シングルCD 発売” の続きを読む

Info. 2018/07/07 「アートメントNAGANO 2018」【善光寺・奉納コンサート】整理券応募方法

クラシック界を席巻する旬の若手トップ・アーティストたちが、長野市芸術館公演を前に善光寺での生演奏でフェスティバルの幕開けを彩ります。

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会場:善光寺 本堂
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■整理券応募方法:2018年5月31日(木)必着 “Info. 2018/07/07 「アートメントNAGANO 2018」【善光寺・奉納コンサート】整理券応募方法” の続きを読む

Blog. 武道館で宮崎アニメの音楽を一挙演奏 久石譲と鈴木敏夫プロデューサーに聞く

Posted on 2018/04/01

2008年Webヨミウリ・オンラインに掲載された内容です。読売新聞朝刊2008年7月30日付に掲載されたものと同内容と思われます。

 

 

武道館で宮崎アニメの音楽を一挙演奏 久石譲と鈴木敏夫プロデューサーに聞く

音楽家の久石譲さんが、8月4、5日に東京・九段下の日本武道館で宮崎駿監督作品の音楽を一挙に演奏するコンサートを開く。久石さんとスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに意気込みを聞いた。

 

―宮崎アニメの曲だけでコンサートを行うのは今回が初めてだそうですね。

久石:
いつかやりたいと思っていましたが、まとめて演奏すると気持ちに一区切りついてしまうのではという不安がありました。でも、「崖の上のポニョ」(7月公開)でコンピューターを使わず、すべて手描きで表現しようとする宮崎さんの創作意欲を目の当たりにして、「ここで総括してもまだまだ先に進める」と確信が持てました。

 

―しかも200人のオーケストラと400人の合唱隊という異例の大編成での演奏。

久石:
自分で言い出したことですが、もう大変。合唱は一般から公募しようかとか他にも壮大なアイデアがどんどん広がっているので、世界でも類をみない大規模なものになりそうですね。関係者は僕を放っておかない方がいいと思います(笑)。

 

―宮崎さんとの付き合いも25年になりますね。

久石:
最初に会ったのは「風の谷のナウシカ」(1984年)の制作時。実はそれまで宮崎さんのことはほとんど知りませんでしたが、当時、阿佐ヶ谷にあった準備室を訪ねたら、いきなり「これが腐海で、これが王蟲で」と舞台やキャラクターの設定を熱心に説明されて面食らった。でも一方で「この情熱はすごい」「すごく純粋な人だ」と感じました。

鈴木:
実は久石さんを選んだのは、「ナウシカ」のプロデューサーだった高畑(勲)さんだったんです。彼の曲は無邪気だから、熱血漢でロマンの人である宮(崎)さんとは息が合うだろうって。宮さんは自分は音楽のことはよくわからないからと言って高畑さんに任せていたんです。

久石:
あの頃は、打ち合わせの相手は主に高畑さんでしたよね。音楽に対する知識が豊富で驚きました。

鈴木:
ところが、作品ごとに音楽家を変えた方がいいという考えの高畑さんは、「天空の城ラピュタ」(1986年)では別の人に依頼しようとした。それでいろんな方向性を模索していたのですが、結局は「久石さんの方がいい」ということになった。

久石:
半ばあきらめかけていたら電話をいただいて、すごく嬉しかったです。泣いちゃいましたよ。

鈴木:
その次の「となりのトトロ」(1988年)で印象的だったのが、サツキとメイがバス停でトトロと出会うシーン。宮さんは当初、あの場面に音楽はいらないと言っていました。でも僕はあった方がいいと思い、宮さんに内緒で高畑さんに相談したんです。そうしたら「久石さんが得意なミニマル・ミュージックの手法でやったらどうか」と提案してくれた。それを久石さんが見事に表現してくれて、大人がトトロの存在を信じることができる場面になりました。そうしたら宮さんも「こっちがいい」って(笑)。

久石:
今の話を聞いていたらあのシーンの曲も演奏したくなってきました。実は今回、巨大なスクリーンを用意しようと思っているので、映像付きでやりたいですね。

鈴木:
そういえば「トトロ」の頃はまだ電子機器が発達していなかったから、スクリーンを観ながら録音していましたよね。

久石:
そうでした。特にメイが小トトロと会う場面では40か所ぐらいきっかけを合わせなければならず苦労しました。でも、音楽と映像を合わせることだけに集中しすぎるのも駄目なんですよ。音楽がストーリーにぴったり寄り添う場合と、曲のうねり、メロディーを活かす場合を分けて考えないと。

 

―普段はどうやって映画音楽を作っているのですか。

久石:
絵コンテや映像を霧の中を歩くように見つめ、ピンとくるきっかけを探すところから始まります。それが見つかったら、今度はどんな音色が合うのか、メインテーマがいいか別の曲がいいか、いやそんなことを気にしていることがそもそも駄目なんじゃないかとか、とにかく悩み続けます。大切なのは、自分が一番最初の観客だという意識ですね。

鈴木:
しかもそれを時間のない中でやらなければならならない。日本では映像が出来上がってから音楽を付けるのが一般的ですから、大変ですよね。

久石:
今がまさにそう(笑)。映画って作り物でしょう? その虚構性の中で音楽がどんなことを果たせばいいかというのは、僕にとって永遠の課題なんです。特に9.11のように現実が虚構を追い越してしまうことがあると、創作活動はより難しくなります。 

 

―「ポニョ」の進行状況は。

久石:
主人公の宗介は5歳だから、何事にもまっすぐ。音楽は気持ちが揺れる場面の方が入り込む余地があるので、宗介の場合、どう表現したらいいか悩んでいます。でも、今回は宮崎さん、鈴木さんともイメージアルバムを作る段階からやりとりを重ねているので、皆で一緒に作っているという気がすごく強く、気持ちがいい。問題は、ある程度出来上がった曲をいつ宮崎さんに聴いていただくか。

鈴木:
第一印象を忘れない人ですからね。

久石:
いくらデモの曲だと言っても、宮崎さんは最初のイメージから抜け出せなくなるんです。「もののけ姫」では、そのために主題歌を前段階の曲に戻したこともありました。でも、結果的にはそれが良かったから不思議。宮崎さんは自分のことを音楽に詳しくないと言っていますが、あれは嘘ですね。鋭い指摘にはっとさせられることがよくあります。

 

―コンサートのポスターは宮崎監督の描き下ろしになるそうですね。

鈴木:
マジックでちょこちょこっと描くのかと思っていたら、譜面に向かっている久石さんをちゃんと描きたいって、悪戦苦闘しています。そのくせ、「久石さんってどんな顔だっけ?」と言い出してみたり(笑)。今では机の周りに久石さんの写真を貼りまくっていますよ。

久石:恐れ多いです(笑)。

 

―どんなプログラムになりそうですか。

久石:
やるからには、「ナウシカ」から「ポニョ」まで全9作品を網羅したものにしたい。久しぶりに昔のスコアを引っ張り出して、すべての作品を観なおしたら、改めて映像のすごさを感じ、音楽で追いつきたいと思いました。おそらく今までの僕のコンサートでやらなかった曲も演奏することになるでしょう。オリジナルの強さを十分に満喫できる機会になると思いますよ。

(ヨミウリ・オンライン連載「ジブリをいっぱい」より 依田謙一)

 

 

 

 

 

Info. 2018/03/28 【7/16 NCO第7回定期演奏会】合唱団公募 (長野市芸術館公式HPより)

夏の音楽フェスティバル「アートメントNAGANO2018」のフィナーレとして、7/16開催の「NCO第7回定期演奏会」にて、ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)と共演する合唱団を募集します。多くの方の応募をお待ちいたします!

■公演日・会 場 
2018年7月16日(月・祝)長野市芸術館メインホール “Info. 2018/03/28 【7/16 NCO第7回定期演奏会】合唱団公募 (長野市芸術館公式HPより)” の続きを読む

Info. 2018/03/24 映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III」予告編&メインテーマ 公開

映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III」(5月25日公開)の予告編動画が公開されています。シリーズ3作目のために久石譲が書き下ろした新しい楽曲も聴くことができます。

また映画公式サイトでは、サイトBGMとして映画メインテーマをフルサイズで聴くことができます。サイト右上の「BGM ON」を選択して視聴できます。シリーズ共通のメインテーマ、今回はどんな新しいアンサンブルを聴かせてくれているのか、フルサイズ約1分半がいち早く聴ける公式サイトぜひご覧ください。 “Info. 2018/03/24 映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III」予告編&メインテーマ 公開” の続きを読む

Overtone.第16回 「オーケストラ解体新書 読売日本交響楽団 編」を読む

Posted on 2018/03/21

ふらいすとーんです。

たまたま音楽雑誌で紹介されて目についた本です。オーケストラのことがもっともっとわかるかもしれない、オーケストラ運営に関わる人や仕事、そしてオーケストラの日常や舞台裏をちょっと垣間見れるかも。そんな思いで手にした本です。

 

「オーケストラ解体新書 読売日本交響楽団 編」、本帯にはこうあります。

「〈感動〉の舞台裏に秘められたドラマ 常に最高のパフォーマンスを目指し、音楽の喜びを伝えることに情熱を注ぐオーケストラ。指揮者、楽団員、そして事務は何を考え、どのように行動しているのか。コンサートが作られていくプロセスを楽しく「暴露」する前代未聞の案内書!」

 

またブックデータベースにはこう紹介されています。

「クラシックのコンサートはどのように製作されているのか。楽団員の生活や意見をはじめ、スタッフたちの肉声など、興味深い話題が満載。コンサートが待ち遠しくなる本。図版多数。2018年4月に読響の首席客演指揮者に就任する山田和樹らによる座談会や、クラシック業界関係者への多角的なインタビューも収録。」

 

指揮者、楽団員、事務局員などいろいろな人の声を集めた、オーケストラの表と裏をつめこんだドキュメント。僕ら聴衆には見えないところで起こっているたしかなドラマ。そうこれは、ひとつのコンサートができるまでの物語です。

今回は目次をなぞりながら、その章で印象に残ったことを個人の備忘録よろしく記していきます。

 

 

目次

まえがき

第1章 一期一会の音楽を作る

1 カリスマ指揮者の放つオーラ
 テミルカーノフの手/ロジェストヴェンスキーの「怖い本番」/音楽を変える統率力

2 スクロヴァチェフスキの緻密な設計図
 遅咲き、日本でブレイク/「うるさい!」/日本での最後の演奏会/偉大な指揮者を悼む

コラム① マエストロ輸送作戦

3 「鬼才」カンブルラン
 明晰さと色彩感/曲が作られた時点へ/ファンタジーを大事に/強固な関係があればこそ

コラム② カンブルランの七二時間

4 指揮者とソリストの微妙な関係
 指揮者の息遣いに耳を/音楽家同士の丁々発止/鬼才と呼ばれるソリストたち

5 コンサートマスターの役割
 楽団の顔/指揮者の音楽への橋渡し/理不尽な場合はモノ申す

コラム③ 常任指揮者と音楽監督の違いは

 

ステージの上ではいったい何が起きているのか。指揮者と楽団員との音でつながれた信頼関係、リハーサルや本番で感じたこと、リアルなやりとりが多数紹介されています。あらゆる指揮者を迎え入れる楽団員だからこそ見えてくる各指揮者の特色、肌で感じている説得力があります。なにが名指揮者たらしめているのか、そんなエピソード満載です。久石譲著「音楽する日乗」からも参考文献として引用紹介されています。

 

 

第2章 楽団員の日常生活と意見

1 天才肌のプレーヤーたち
 狭き門のオーディション/コンクールの覇者も/演奏中に意識することは

2 フラットな組織、厳格なルール
 運営の要となる「プロビル」/欠席、遅刻は厳禁/楽器の手入れも/ステージでは燕尾服と黒のドレス

3 オフタイムの過ごし方
 自己研鑽の道/アマチュアの指導も

コラム④ 曲目の変化が映し出すもの

 

ポストが空席にならないとオーディションが開かれないオーケストラの世界。奏者が一人いればいい楽器などは何十年に一度という機会を待たなければいけないことも、すごい世界です。日本にオーケストラ楽団は数あれど、どの楽団においても選りすぐりのプロ集団ということが、この狭き門からもひしひしと伝わります。またコラムでは、読響の初期10年間と直近10年間の演奏会で取り上げた作曲家ランキングが比較されています。時代の変化はたまたオーケストラの目指す方向性などが顕著に現れているプログラムであることがわかります。

参考までに、ここでは日本全体の集計も紹介されていました。(2015年度版)

演奏回数ランキング
一位 ベートーヴェン 87回
二位 ブラームス 69回
三位 モーツァルト 47回
四位 マーラー 43回
五位 ラフマニノフ 37回

演奏曲目ランキング
一位 交響曲第2番/ラフマニノフ 10回
一位 管弦楽のための協奏曲/バルトーク 10回
三位 交響曲第3番/ベートーヴェン 5回
三位 幻想交響曲/ベルリオーズ 5回
三位 交響曲第2番、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第1番/ブラームス 各5回
三位 春の祭典/ストラヴィンスキー 5回
三位 交響曲第5番/マーラー 5回

 

おもしろいなあと思います。観客のニーズを満たす人気作品ということもあるので、このあたりからクラシック音楽に慣れ親しむための手引きにもなります。クラシック音楽の魅力や醍醐味を充分に伝えてくれる作曲家や作品。初級編の僕でもランキング作品はすぐに頭で浮かぶものもちらほら、プログラムされた演奏会があれば生で体感してみたいと思う作品ばかりです。

久石譲ファンという視点から見ると。久石さんがコンサートで取り上げるクラシック音楽との共通点や時代としての傾向値も読みとることができる。一方で久石譲だからこそのプログラムもあるということがはっきりとわかります。そうすると、なぜこの作品? その真意は? 想いめぐらせてみる”ものさし”にもなるかもしれません。作曲家としてなにを確認したいのか? 音楽構成・響き・楽器編成? この作品を通して観客になにを伝えたいのか? きっとそれが先の自身の創作活動につながっているんだろうと。僕にはそう思えただけでも学びの収穫でした。

 

 

第3章 ドキュメント・オブ・ザ・コンサート

1 演奏会当日
 難曲ぞろいの定期演奏会/午後一時-関係者スタンバイ/午後三時-会場リハーサル開始/午後六時半-ホール開場/午後七時-本番開始

2 演奏会の企画立案
 カンブルランとの打ち合わせ/たちまちチケット完売

コラム⑤ オーケストラの練習所

3 リハーサル
二〇一六年一〇月一七日-「オスカー」/ぴりぴりした雰囲気/微笑んで楽団員に一礼/一〇月一八日-「コルンゴルト」/期待と不安が交錯

インタビュー① 番組ディレクターの仕事 [黄木美奈子]

 

五嶋みどりさん(ヴァイオリニスト)を迎えての読響定期演奏会の様子、最高のコンサートをつくるための一日が紹介されています。五嶋みどりさんのインタビューがとても興味深かったです。久石さんが語る”現代の音楽”についてと共鳴するようです。

「20世紀以降の作品は敬遠されがちですが、心の壁を取り払って聴いてほしい。」「私たちが『現代曲』と呼んでいる作品も100年後には、スタンダードなクラシック音楽になっていても不思議ではない。」「現代作品と聴衆の出会いの場を設け、次世代に伝承していくことは、現代に生きる音楽家としての使命です。」

番組ディレクターの仕事項では、TV番組「読響シンフォニックライブ」の制作舞台裏が紹介されています。収録会場には、プロデューサー、ディレクター、構成作家、カメラ、音声、照明など約50人ものスタッフが会場入りするそうです。カメラも通常6台、ピアニストの手元をアップで撮る時などはさらに1台追加、中継車2台。また事前に公演曲のスコアを用意し参考CDを聴きながらカメラのカット割りを決めておく。そうやって収録台本をつくってゲネプロ(当日リハーサル)から本番に臨む。どんなに入念に準備しても、イメージと違っていたり想定外のことも起こるため収録現場は戦場とあります。さらには、初演作品など事前に参考音源がない場合は、ゲネプロを聴いて大幅にカット割りを手直し、本番までの短時間で修正と再度指示を出す…はぁ、すごい。やりなおしがきかない本番だけに、緊張感の張りつめた舞台裏だろうなあと想像すると。その音楽や映像だけに純粋に聴き入り、パーソナルスペースでリラックスして楽しむことができている、そんな視聴者として感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 

第4章 事務局の日常と意見

1 オーケストラ経営の実情
チケット収入では賄えない/欠かせない様々な助成金/運営の基盤となる会員制度/一回券をいかに売るか/「力強さ」、「親しみやすさ」が読響ブランド/知られざる名曲の発掘を/いかに依頼公演を獲得するか

インタビュー② オーケストラの経営-米国と比較すると [伊藤美歩]

2 プログラム制作の現場
 「ドタキャン」で代役探しも/スケジュールは二年先まで/メシアンの一曲だけでも完売/オペラ作品にも挑戦

インタビュー③ 劇場が取り組むオペラの共同制作 [鈴木順子]

3 ステージマネージャーの「気配り」
 トイトイトイ!/下準備は入念に/楽団所有の楽器管理/楽器搬入とセッティング

インタビュー④ 楽器運搬の今昔 [松田浩美]

 舞台転換のワザ/バンダの設営/神社で演奏会も/不測の事態への備え

コラム⑥ コンサートのマナー

4 ライブラリアンは楽じゃない
 演奏する立場で譜面を見る/蔵書か、購入か、レンタルか/版によっても異なる/総譜とパート譜の照合は基本動作/リハーサルは「仕上げ」/楽譜に指揮者の個性

コラム⑦ 人類の遺産・南葵音楽文庫

 

オーケストラ経営の難しさ、チケット収入では賄えない実情などが詳しくわかりやすく紹介されています。定期演奏会を例に、2000人満席でチケット収入は一回あたり800万円前後。でも…

「大雑把に必要経費を差し引いてみよう。指揮者、ソリストの出演料は一回の本番で数10万円から数100万円と幅がある。それにホール使用料等150万円、楽器運搬費35万円、プログラム誌20数万円、チラシ制作費約10~20万円、エキストラの人件費…、もういくらも収益は残らない。100人近い楽団員、30人近い事務局員のリハーサルから本番まで数日間に見合う人件費は到底賄えない。指揮者、ソリストを海外から招くと、渡航費、宿泊費なども加算される。プロの合唱団が加わる大規模の楽曲だと、なおさら経費は膨れ上がる。」

もちろんこれをふまえてどんな努力や活動をしているかということも詳しく紹介されています。

またライブラリアンというお仕事も興味深い。譜面の調達や管理を専門に行う人で、この項を読むと譜面に関するあれこれが見えてきます。オーケストラのスコアからそれぞれのパートを抜き出して奏者が演奏する楽譜(パート譜)を写譜専門業者に依頼したり、公演曲が決まったときにオーケストラが所蔵する楽譜を使用するのか、指揮者が指定した版がなければ新たに購入するのか。また近代以降の作曲者で著作権の保護期間中である曲などはレンタル楽譜となることもあり、レンタル楽譜の場合は貸出記録が管理できるのでその曲が世界のどこの楽団に演奏されているのかを把握できるというメリットもある、などなど。なるほどー!

使用する楽譜が決まったら、コンサートマスターに第1ヴァイオリンのボウイングをつけてもらう。ボウイングというのは弦楽器を弾くときの弓の上げ下げのことで、これを決めることで同じパートを演奏するセクションの弓の動きもそろいます。同じように第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの各首席奏者にもボウイングをつけてもらう。言われてみれば、弓のアップダウンの動きがバラバラってないですよね。ボウイングは音色の作り方にも影響するのでそろえる意味も大きいと思いますが、見映えとして美しい理由もここにあるんですね。

 

 

第5章 読響の誕生、現在、そして未来

1 世界でもユニークな存在
 読売新聞を中心に/日テレでクラシック番組/楽団員確保にひと苦労/初めての労働組合結成/「第九」が年末の風物詩に

コラム⑧ チェリビダッケの伝説

コラム⑨ テノールがいない

2 海外公演の今昔
 北米五四日間からスタート/カラヤンの招待/初のザルツブルク祝祭大劇場/日本人作曲家の作品を/日中国交正常化記念で北京へ/フェイスブックで情報発信

インタビュー⑤ オーケストラの”輸出”で国内最高の実績 [西山信雄]

3 初演に挑戦
 アルブレヒト時代に数多く/委嘱作品の作り方

4 西欧との距離
指揮者に従順すぎる?/積極性、自発性が乏しい?/日本の音楽教育の問題/アルブレヒトの六つの信念/可能性のアンサンブル

インタビュー⑥ 音楽事務所から見た日本のオーケストラ [入山功一]

 

読売日本交響楽団の発足から今日に至るまでの活動経緯が具体的に紹介されています。常に時代や社会の変化と向き合っているプロセス、日本クラシック音楽界の歴史や変化そして課題となっていることも垣間見れておもしろいです。

 

 

第6章 日本のオーケストラの課題を語る

鼎談 石田麻子 西村朗 山田和樹

「指揮者に従順」はいいことなのか/技術力は高く評価されるが…/日本人にとって音楽とは/レパートリーをどう考えるか/聴衆を獲得するには/オーケストラの意義/日本文化の潜在力/「ヤマカズ知らないの?」

アンコール 好奇心を持ってコンサートホールに来てほしい
-カンブルラン・インタビュー

あとがき

主要参考文献

 

音大教授、作曲家、指揮者という三人による日本オーケストラを深く読み解くやりとりが収められています。本書全体を読みすすめることで、オーケストラ経営はなぜ厳しいのか? なぜ現代曲はプログラムしにくいのか? など今抱える課題が多方面から浮かびあがってくるように思います。

読み物としては決して読みやすい本ではないかもしません。ストーリー仕立てというよりは資料を集めたような構成になっているからです。それでも目次をながめ、気になった項目のページを開いてみる、そのくりかえしで理解が深まるように思います。

 

 

 

久石譲と読響の歴史

 

番組内 久石譲インタビュー

読響との初共演時の印象は…?

松井(司会):
久石さんと読響の初共演は3年半前ですが、今でも印象に残っていることはありますか?

久石:
ショスタコーヴィチの交響曲第5番などを演奏したのですが、作曲家の僕が指揮をするということで、読響の皆さんに助けていただき、とてもいい演奏になったということを覚えています。その他にも、初共演の翌年、2013年には宮崎駿監督作品、「風立ちぬ」の映画音楽レコーディングに読響が参加。読響にとってスタジオジブリの映画音楽を演奏するのは初めての経験でした。また、その直後に読響と久石さんは2度目の共演を果たし、オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」(語り:樹木希林)、ベートーヴェン・交響曲第7番、そしてジョン・アダムズ作曲の「ザ・チェアマン・ダンス」を演奏しました。

今後の読響と久石さんの関係性は?

松井:
改めて、久石さんにとって読響はどんな存在ですか?

久石:
日本を代表する素晴らしいオーケストラで、皆さん一生懸命に演奏してくれます。なので、この関係性は長く続けていきたいと思いますし、より大きなプロジェクトが出来るような、点ではなく、線になる活動を今後もできるといいなと思っています。

(2016年5月開館予定、久石譲が芸術監督をつとめる長野芸術館、そのこけら落とし公演を読売交響楽団との共演にて記念コンサート開催予定)

「コントラバス協奏曲」について

久石:
音がこもりがちになる低域の楽器をオケと共演させながらきちんとした作品に仕上げるのはハードルが高かったです。僕は明るい曲を書きたかったので、ソロ・コントラバス奏者の石川滋さんには今までやったことないようなことにもチャレンジしていただく必要もありました。

Info. 2015/12/26 [TV] 「読響シンフォニックライブ」カルミナ・ブラーナ(12月) コントラストバス協奏曲(1月) より抜粋)

 

 

 

読響との共演がCD作品化されているのは「風立ちぬ サウンドトラック」です。コンサートは上のインタビュー内容ふくめ多数共演しています。

 

読響シンフォニックライブ 「深夜の音楽会」(2012年5月30日開催)
第1部
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
久石譲/シンフォニア-弦楽オーケストラのための-
第2部
ショスタコーヴィッチ/交響曲第5番 ニ短調 作品47

 

「読響シンフォニックライブ 公開録画」(2013年8月28日開催)
<第1部>
ジョン・アダムズ/ザ・チェアマン・ダンス
久石譲/オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」 朗読:樹木希林
久石譲/風立ちぬ(アンコール)
<第2部>
ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調 作品92
ハチャトゥリアン/仮面舞踏会よりワルツ(アンコール)

 

「久石譲 第九スペシャル」(2013年12月13日開催)
久石譲:「Orbis」 ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~
久石譲:バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための『風立ちぬ』 小組曲
久石譲:『かぐや姫の物語』より 「飛翔」
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」

 

「読響シンフォニックライブ 公開収録」(2015年10月29日開催)
-第1部-
久石譲:
コントラバス協奏曲 (日本テレビ委嘱作品) ※世界初演
第1楽章 Largo – Con brio
第2楽章 Comodo
第3楽章 Con brio
-第2部-
カール・オルフ:
《カルミナ・ブラーナ》
運命、世界の王妃よ
第1部「春に」
草の上で
第2部「居酒屋にて」
第3部「求愛」
ブランツィフィロールとヘレナ
運命、世界の王妃よ

 

「久石譲 第九スペシャル 2015」(2015年12月11,12日開催)
久石譲:
Orbis for Chorus, Organ and Orchestra
オルビス ~混声合唱、オルガン、オーケストラのための
I. Orbis ~環
II. Dum fata sinunt ~運命が許す間は
III. Mundus et Victoria ~世界と勝利
ベートーヴェン:
交響曲 第9番 ニ短調 作品125 〈合唱付き〉
I. Allegro ma non troppo, un poco maestoso
II. Molto vivace
III. Adagio molto e cantabile
IV. Presto – Allegro assai

 

「長野市芸術館 グランドオープニング・コンサート」(2016年5月8日開催)
久石譲:「TRI-AD」 for Large Orchestra ※世界初演
アルヴォ・ペルト:交響曲 第3番
チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64

 

久石譲(指揮) ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)
第5回定期演奏会 〈久石譲 ベートーヴェン・シンフォニー・ツィクルス〉
(2017年7月17日開催)*読響ソリスト共演
久石譲:コントラバス協奏曲 (2015・日本テレビ委嘱作品)
—-encore—-
パブロ・カザルス:鳥の歌

 

こう眺めてみると、2012年初共演以来、自作他作問わず非常に重要な作品を読売日本交響楽団との演奏会で披露していることがわかります。久石譲インタビューにもあった「今後も長い付き合い」これからの共演にも期待です。

「オーケストラ解体新書 読売日本交響楽団 編」、紹介できたのはほんの一部分です。クラシック音楽に興味のある人、演奏会に足を運ぶ人、馴染みがない人これから接してみたいという人にもオーケストラの世界がぎっしり詰まっています。少し舞台裏を知ることで、届けられる音楽によりいっそうの深い感動を味わえる。すべては最高のパフォーマンスのために。一発勝負の本番で聴衆は純粋素直にジャッジしていいと思います。感動の種が無限大ならば、音楽センサーに磨きをかけて新しい刺激や味を求めることもキャッチすることもまた終わりはない。もし舞台裏を知ることで受けとめることでジャッジが甘くなるのではなく、新しい感動を味わえるなら。ひとつのコンサートをつくる物語です。

それではまた。

 

reverb.
「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」(W.D.O.)のコンサートができるまでの物語、とても興味がありますね♪

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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