Blog. 「デイリースポーツオンライン」 2011年11月 久石譲インタビュー内容

Posted on 2015/3/8

2011年11月、3回にわたってWeb掲載されたデイリースポーツオンラインでの久石譲コラムです。

 

 

数々の名曲を残してきた作曲家・久石譲(60)。宮崎駿監督の「ジブリ作品」やテレビドラマのテーマ曲など、エンターテインメントの世界で活躍する傍ら、オーケストラの指揮にピアノ演奏と、クラシック音楽にも精力的に取り組んでいる。10月7日には「第24回 西本願寺音舞台」(TBS・MBS系で11月3日午前9時55分から放送)にも出演した。音楽への関わり方、バックボーン、そして日本人への提言…。日本を代表する音楽家による“言葉のアンサンブル”をご堪能あれ。(聞き手=福島大輔)

◇  ◇

‐数々の曲を作ってこられた中で、曲作りの過程というのはどういった形なのでしょうか。

久石:
「うーん、締め切り日があって、それに向かって必死にひねり出すという感じですかね(笑)。大概、書かなきゃいけないものはいくつかだぶってますから、その時に、今、これを勉強しなきゃいけないなっていう仕込みを時間がとてもかかりますので、割と順序立てて、組み立てながら作っていく感じです。アイデアが湧いた、湧かないみたいなことで必死になるよりは、最終的には確かにそれも大事なんですが、そこに持ち込むまでは、どれだけ論理的にやっていくか、というね」

‐計算の上で、ということですね。

久石:
「そうです。今回もお寺さんでやるわけで、『こういう所だったら、いくらでも曲の発想が浮かぶでしょ』なんて言う人もいるんですが、ふざけんな、ってね(笑)。そんなんだったら、一年中旅行してるよって」

‐ある程度こういう曲を作ると決めて、その世界観をご自身の中で作ってから、具体的な製作に入られると。

久石:
「そうなんです。映画の音楽にしても、脚本を読んで、その映像に合うやり方を考えて、そのままやったんでは面白くないから、一歩先を行くにはどうしたらいいか、とかいう感じでね」

‐世界観の作り方というのは、具体的にはどのようにされるのですか。

久石:
「いやこれは、毎回ケースバイケースですよ。例えば今回、西本願寺で演奏するプログラムを作るにしても、一曲一曲はある映画の音楽だったり、自分のアルバムのための音楽だったりするんですが、曲順を決める段階では、本来それぞれを最初に作ったときの意図とはまったく違って、前後関係でそれぞれの楽曲の意味が変わるんですよ。これが構成。1曲目から最後の曲まで聴き終わったときに、何を感じてもらうか。例えば1つの映画を見たように、聴いていただいた人たちがどのように感じてくれるか、それをすごく考えますよね」

‐曲というのは、そのシチュエーションごと1つの作品であると。

久石:
「もちろんそうです。どんな場合でも、パーツパーツがあって、例えば映画の場合は、1シーンずつ撮ってきたものを、最後にどう編集するかで、その意味づけが変わってきますよね。音楽でいえば、1曲の中にもあるし。何でこれは『ド』から『ソ』に降りたんだ、とかね。それが1曲単位になり、ある時間の長さになる。そんな感じがしますね」

‐これまで、ジブリ作品などのアニメ映画の音楽なども手掛けてこられましたが、そこにはやはりアニメならではの世界観が…。

久石:
「そうですね。アニメーションは、ほとんど宮崎(駿)さんの作品しかやってないんで。あれだけすごい人のをやっちゃうと、ほかの人のができないというのもあるんですが(笑)、宮崎さんの場合は、あまりアニメーションとは考えてないんですよ。現存する映画監督の中で、最低でも十本、あるいは五本の指に入るような優れた監督ですから、その人が何をやりたいかというと、そこに映っているものより、バックグラウンドの方が大きいんですね。やはりこちらが浅はかな知識でやっていると、とてもついていけないので、そうするとやっぱり…、勉強しないといけないですね(笑)」

‐勉強の仕方というのは、どのように。

久石:
「僕は今は基本的に、音楽のことしかやらないようにしているんですね。クラシックの指揮をしたりとかもするんですが、オフィスもありますんで、最低限お金は稼がなきゃいけない(笑)。そうすると、お昼の12時、1時過ぎぐらいから夜中の12時ぐらいまでは、エンターテインメントの作曲なり、仕事と言ったらちょっと語弊があるかもしれませんが、それを書く。そして家に帰ってから明け方まで、過去の作曲家の譜面を読んだり、彼らが生きた時代や本人の生活の環境、その時代の方法に対して、その作曲家がどのくらい進んでいたのか、遅れていたのか、そういうことを考えます。例に出すと、ブラームスなんかは当時の流行からすると、遅れた音楽をやっていたんです。まだベートーベンの影響を引きずっていた。ところが当時は、シューマンとかいろんな人たちが、新しい方法に入っていた。古くさい方法をとっている中で、革新的な方法をとっている人もいた。どっちが優れていたのか、というのは全然言えないんですよ。長く生き残ってきたものというのは、本物ですから。でも本人の中は、絶えず葛藤してたわけだよね。僕ら、ものを作る人間というのは、絶えずそれですから。今のこの時代で、僕が作曲家としてどういう書き方をするか、自分にとってはすごく重要なことで、そのようなことをいっぱい勉強するという感じですかね」

‐ご自身が、その時代に立ち返るという感じでイメージされる。

久石:
「そういうことですね。あの、優れた指揮者というのは大勢いるんですが、自分がやる場合の武器って考えると、『作曲家』なんですよ。作曲家として、もう一回ほかの人の譜面を見るから、それはちょっと普通とは違うみたいで、いい意味での武器だと思いますね」

‐作曲家だけでなく指揮やピアノなど、多方面で活躍されていますが、1人の人間としていろんな方向から音楽を見るのは刺激になりますか。

久石:
「すごくありますよ。指揮をしているのも、基本的には指揮者になりたいのではなくて、通常、他人や古典の譜面を見ると、ざっと見て「こういう感じね」で済んじゃうんですけど、自分で実際オーケストラを指揮するとなると、ものすごく細かく見ますよね。それをやることによって、作曲家として『ああ、ここはこうやって音を動かせばいいんだ』っていうふうに、作曲の肥やしになるというのがベーシックですよ。それがないとやらないです」

‐指揮でも演奏でも、なにがしかのフィードバックがあると。

久石:
「ただ、そのおかげで、久石っていう作曲家はね、クソ難しいんですよ、演奏が(笑)。指揮も難しいし、ピアノも難しくて、もうちょっと演奏する人のこと考えて欲しいな、なんて思いますけど」

‐ご自身で演奏するときも…。

久石:
「最悪ですよね(笑)。やりすぎなんだ、っていつも思いながらやってます」

‐そもそも、作曲家を目指したきっかけというのは。

久石:
「きっかけって、ないんですよ。小さいときから、やるもんだと思ってたから、いろんな職業の中で作曲家を選んだ経緯というのはないんです。いや、作曲家を選んだというのは、中学2年か。音楽をやるというのは決めていたというか、やるもんだと思ってましたから。意識的に選んだという記憶はないです」

‐環境の中で、音楽があふれていたなどは。

久石:
「全然。何もなかったね。普通の一般家庭。ただすごく好きで、絶えず音楽は聴いてたし、小さいときからバイオリンを習ったりはしてましたけど」

‐中学校2年生で、作曲家に針が振れたというのは。

久石:
「ブラスバンドなんかをやっているときに、与えられた譜面を演奏するよりは、一生懸命譜面を書いては皆に聴かせている方が好きだったんですよ。それは再現する方の音楽家ではなくて、作る方だなと。それで作曲家を目指したんです」

‐初めて曲を作られたのはいつでしたか。

久石:
「中学1年ぐらいですね。全然手に負えてはいなかった(笑)。ただ音符を並べただけだったと思います。要は、いろんな蓄積がないとできないですね。よく、作曲家の個性なんていいますけど、ないんですよ、そんなのは。結局、自分が今までいろんな状況で聴いてきた音楽や体験してきたこと以外、出ることないですから。その中のものが、その時の思いで断片的に組み合わされて、『あなたの』というのが出てくるだけで、そんなねえ、オリジナリティーなんて、世の中にないと思いますよ。一生に1曲もできないと思う」

‐作ってできるものではなく、にじみ出てくるものだと。

久石:
「とすると、やはり自分のバックボーンを大きくするしかないわけですよね」

‐これまで音楽家として、多くのことを成し遂げてこられましたが、今後目指していかれるものとは。

久石:
「やっとね、今少し自由になってきた気がするんです。自由になったというのは、こういうふうなものを書きたいな、と思っても、全然書けなかった、行き着けなかったんですよ。それが最近、少し楽になったね。だから、体力があるうちに、長い曲を書きたいですね。この2、30年、エンターテインメントの方でやってたんですが、3、4年前から、クラシックの方にもう一回スタンスを戻してますから、そういう意味では、シンフォニーとかオペラとか、そういう作品をきちっと書きたいです」

‐楽になったというのは、蓄積されたものがある程度、自分の自由に出し引きできるようになったと。

久石:
「多少はね。多少はできるようになりましたけどね。でも、エンターテインメントの音楽も大好きですから、それもできる限りしっかり書いていきたいと思ってます」

‐最近の活動でいうと、東日本大震災の被災者へ向けてのコンサートなども行われました。

久石:
「あのときも、大船渡とか陸前高田、気仙沼あたりに行ったんです。そこでに感じた、日本人はどうなっちゃうんだろう、という思いは強かったですね。その中で…、何て言ったらいいんだろう、僕はもうちょっと、世界を意識しますね。どういうことかというと、こういうことが起こった、しかしいろんな対応を見てて、あまりにひどいじゃないですか。遅すぎるね。僕は日本人って、今一番ノロい民族だと思ってるんですよ。何やるにしても遅いでしょ。街中歩いてても思いますよ。店員も遅いし。本当にね、日本人って器用で速いと思ってたけど、そんなことないんです。例えば、この異常な休日の多さ(笑)。こんなんじゃ仕事できないですよ。一年中虫食いのような日程で動いてるでしょ。で、全部の会社が休む。日本人って、世界で一番働いてないと思う。僕の部屋には、ヨーロッパから見た世界地図が張ってあるんです。日本の地図は、日本がど真ん中にあって、ヨーロッパとアメリカが端にあるでしょ。いかにも日本が世界の中心に見えるじゃないですか。しかしヨーロッパの地図で見ると、日本は本当に東の端なんですよ。そこにいるんだって意識しないと、どんどん世界から置いていかれますよね」

‐日本を愛するが故に、の歯がゆさ。

久石:
「もちろんです。どんなに世界中行ったって、日本食が一番好きですし(笑)。今回の『音舞台』の曲目で『World Dreams』という曲があるんですが、これに作詞をして、大勢のコーラスの中でやるんです。これは、国歌のような曲を作りたいと思って、凛々しく、堂々とした曲になっています。これが多分、全体のピークになるんですが、私の伝えたいメッセージはそこに全部入っていると思います。今だからこそ、力強く、凛としていこう、というね」

◇  ◇

(デイリースポーツオンライン 2011年11月8日 より)

 

久石譲 モノクロ

 

Blog. 久石譲 「アップル iTunes インタビューズ」 『パリのアメリカ人』発売記念

Posted on 2015/3/6

2005年発売『パリのアメリカ人』久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.)としての第2弾アルバムです。

アップル itunesサイト内でのインタビュー。当時はインタビュー動画も閲覧することができました。なかなか貴重な媒体での、そして貴重な作品をクローズアップしてのインタビュー内容となっています。

 

 

隣にいる人に優しくしてあげたくなるような、心安らぐ音楽をプレゼントしたい 久石譲

New ” for winter lovers” ALBUM
『パリのアメリカ人』 発売記念 Special Interview

宮崎駿作品、北野武作品をはじめとする数々の映画音楽を手がけ、さらにはイベントの総合演出や映像監督など、さまざまなフィールドで活躍する作曲家でピアニストの久石譲さん。最近では韓国映画『Welcome To Dongmakgol』、香港映画『A Chinese Tall Story』の音楽監督を務め、アジア各国での活動にも積極的に取り組んでいます。また、2005年11月30日には、新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラを率いてのニューアルバム『パリのアメリカ人』がリリースされ、12月2日からはコンサート『12月の恋人たち』がスタートするなど、ますます精力的な活動を展開中です。そんな久石さんに、ニューアルバムに込められた想い、そして初期の頃からのベテランMacユーザーとしての一面、また、iPodやiTunesの普及によって変化し始めた音楽の環境ついてお話をうかがいました。

 

ポップスオーケストラで奏でる、フランスの映画音楽。

Q. まず、ワールド・ドリーム・オーケストラの新作『パリのアメリカ人』について聞かせてください。フランス映画音楽を多くカバーされていますね。

久石:
ワールド・ドリーム・オーケストラは、僕以外の作曲家の曲を取り上げて指揮をする、というコンセプトで始めたシリーズです。基本的にポップスのオーケストラで、ボストンポップス(オーケストラ)みたいな位置づけになると思います。そのワールド・ドリーム・オーケストラのCDは、今回で2枚目。さあ何をやろうか、と考えた時に、フランスの映画音楽はどうだろうと思ったんです。フランス映画の音楽というのは、とてもいいメロディが多いんですね。あと、12月でしょう。内容的にヘビーなものよりも、心暖まるようなものにしたかった。「今年もキツかったなあ」なんて思っている「お疲れモード」の人たちに、音楽でホッとしてもらいたいという気持ちです。

Q. 『パリのアメリカ人』というコンセプトをもう少し詳しく説明していただけますか?

久石:
1920年代、30年代という世界大恐慌前後の時代、アメリカ人が憧れるものっていうのは「文化」だったんですね。成功したらパリに住むというのが、彼らのステイタスになっていた。それでコール・ポーターもフィッツジェラルドもパリに住むようになった。でも今、成功したらここに住みたい、というような場所はないでしょう? わかりやすい憧れの対象や目的がないこの時代に、「パリのアメリカ人」をテーマにすることで、今の時代性が浮き出てくるといいなと考えたんです。

一方で、パリのアメリカ人ということは、つまり異邦人ですから、基本的に居心地がいいはずがない。どこかに違和感を抱えて暮らさざるを得ない。そしてそれは、今この時代にみんなが抱えている問題とイコールだと思うんです。例えば会社に勤めている人でも、1日の大半を「オレ、この会社に合ってるのかな」って思って過ごしていたりする。なんとなく自分の居場所がないような気持ちになっている人っていっぱいいると思うんです。そういう現代人がこの音楽を聴くことで、安らげるようなものになっていたらいいなと考えています。

Q. フランス映画音楽以外にも、アメリカの作曲家、コール・ポーターの楽曲が多くカバーされているのが印象的でした。

久石:
コール・ポーターはね、作曲家なんだけど作詞もするんです。なので言葉とメロディの関係がすごく上手くいってる。それと、彼はパリに住んでいたんですよ。つまり、「パリのアメリカ人」。アルバムのコンセプトにも合っているということで、カバーしたわけです。

Q. 今作でヴォーカルを取っているレディ・キムの声は心地よいオーケストラの音楽に、いい意味でブルージーな感覚を与えていますよね。

久石:
コール・ポーターっていうと、やっぱり歌ですからね。スウィング的なものや、ジャジーな感覚を持っているということで、彼女を選んだんです。フランス映画音楽だけをそのままやってしまうのではイージーリスニングになってしまうかも知れない。どこかに異種のもの、アメリカン・テイストを入れたかったんですね。フランス料理にハンバーガーが入ってくるというか(笑)。それがコール・ポーターであり、レディ・キムのヴォーカルなわけです。ミスマッチの要素が入ることで両方が際立てばと。そういうことも含めて「パリのアメリカ人」なんです。

あと、こうしたテーマを日本人がやるっていう部分も面白いと思うんです。例えば僕はオーケストラをやってますけど、これは西洋音楽がベースでしょ。なんで日本人がやるんだって言われると困っちゃうわけです。結局みんな根無し草状態なんですよね。でも、だからこそ自分のルーツを知りたいという思いがある。そうした部分から出てくる孤独感や叙情っていうのは僕にとって昔からのテーマなんです。

Q. 2005年12月2日からはじまるコンサートについて教えて下さい。

久石:
基本的にはニューアルバムと共通のコンセプトなんですが、ステージならではの仕掛けも用意してますよ。例えば「パリのアメリカ人」という曲はアルバムでは1分くらいしかないんですが、18分フルでやるつもりです。また、ラヴェルをやったり、12月ですからクリスマス・ソングもやります。女性だけの30人程のコーラスが入ったりするし、レディ・キムの歌があるし、サクソフォン軍団やドラム、ベースも入るので、今までの中でいちばん大がかりな編成です。舞台のレイアウトを考える人が悲鳴をあげていますよ(笑)。ですから自然と、アルバムよりもさらに賑やかになっていくはずです。とにかく、この1年を一生懸命生きてきて、みんな疲れているだろうから、このコンサートを聴くことで心が安らいで、隣にいる人に優しくしてあげたくなるような、そんな音楽をみなさんにプレゼントしたいと思っています。

 

久石譲 itunes 2

 

iPodは大勢の人に選ばれたすぐれたツール。

Q. 久石さんはMacユーザーで、音楽ソフトVisionを使用しているそうですが、ピアノもオーケストラも生音による音楽ですよね。Macを音楽制作にどのように活用しているのでしょうか?

久石:
主に譜面を書くのに使っています。以前は手書きで書いてたんですけど、大量に曲を書かなくてはいけないときには、右手を痛めてしまうんですね。それではピアノを弾くのに困るので、Macで譜面を作成する方式に変えたんです。それが3年くらい前。ところがこれはこれで、問題も出てくる。手書きによる隠し味のようなものが、どうも出てこない。ここでホルンがすうっと伸びて、みたいな部分がオケではとても大事になってくるんですが、それは手描きの線によって無意識に表現されていたりするんですね。それをコンピュータでボーンと作っちゃうと、簡単だけど、情報量が手描きの半分位に落ちてしまう。ただ、逆にコンピュータの良さもあるんです。鉈で割ったような、ガツンという強さが出る。手書きとコンピュータ、それぞれのメリットを、新しい方法として融合させていくのに2年半くらいかかりましたね。

Q. 久石さんがMacを選んだのは何故だったのでしょうか?

久石:
VisionがMacのソフトウェアだったということはあるね。あと、実は僕はずいぶん昔にニューヨークで初めてMacを見て、すごく気に入っちゃってプリンタと一緒に買って、アメリカから持ち帰ってきたことがあるんです。それ以来Mac。かなり初期からのMacユーザーかもしれない。Macってすごくヒューマンなところがあるでしょ。それがよくてね。仕事やる場所には楽器からコンピュータから全て同じセットを置いていて、いつでも制作ができるようにしています。

Q. iPodやiTunesの普及で、音楽を楽しむ環境が大きく変化し始めています。そのことについて、どのように感じていますか?

久石:
僕自身、iPodはよく使っています。これはもう、完全に時代の流れですよね。レコード業界は今までは物流の世界だった。それが本当の意味でのソフトのやり取りになってきている。それは基本的にはいいことだと思います。 ただ、大事なのは、クリエイティブなことをやるためには、それなりの制作費が必要だということ。だから、法律的なことも踏まえて作曲家、作詞家、そして演奏者が存分に音楽を制作できる環境を作っていかないと、結果、クオリティが下がっていくと思うんです。

もうひとつは、曲を作る側の意識がどんどん変わっていくと思います。従来アルバムというのは、アルバムを牽引していくシングル曲があって、その他に実験的な楽曲を入れる余地もあった。それによってアーティストは冒険をし、成長していくわけです。それが1曲単位で選べるようになると、全部がシングルのようなものになっていかざるを得ない。即物的、刹那的な要求に対応していかないといけなくなるわけです。その結果、アーティストが成長するパワーを失う可能性もあるかもしれない。3、4年後にその結果が出てくると思うけど、今後どんな風に音楽を制作していくことになるのか、それを見守っていかなくてはいけないですね。

Q. 逆に、iTunes Music Storeの登場で得るものも大きいですよね。

久石:
そう。これまでドメスティックでしか聴けなかったものが、地球の裏側の人もアクセスして聴けるようになる。これはアーティストにとって絶対にプラスになることなんです。マーケットがレコード会社間の問題を飛び越え、全世界に広がっていく。それはiTunes Music Storeのようなものがないとあり得ない。その上でみんながどういう動きをしていくのか、それを見ていきたいですね。

Q. なるほど、確かにそれは興味深いですね。

久石:
そういう便利さはあればあるほどいいんです。その中でこちらが選択していけばいいわけですからね。僕が音楽やっていて感じるのは、一般の人は本当に頭がいいということ。ものを選ぶ能力が非常に高い。 先日、養老孟司さんと、いい音楽とは何か? という議論をしたんです。結論として、長く聴いても飽きないもの、時代を超えて生き残る音楽がいい音楽だと。それは道具にしても同じですよね。時代を超えて、大勢の人が使っているものというのは、やっぱりいいものなんですよ。何十万人、何百万人もの人と、何十年もの月日によって淘汰され、生き残ったものですからね、そこには絶対的な説得力があるんです。(iPodを指差して)これも、いいものだと思いますよ。これだけ大勢の人に選ばれているわけですから。

 

「AMERICAN IN PARIS」紹介

かろやかなフレンチ・ムーヴィー・ポップスに舞い、しなやかなコール・ポーターの名曲に酔う… 久石譲のセンセーショナルなアレンジによるセレブリティ・アイテム。

久石譲 『パリのアメリカ人』

01. パリのアメリカ人

1928年に作曲家ジョージ・ガーシュインが初めて手がけた同名のフル・オーケストラ用管弦楽曲をもとに、ミュージカル映画「巴里のアメリカ人」が作られたのは1951年のこと。パリに住む画家志望のアメリカ人青年とキュートなパリジェンヌの恋模様を小粋に描いたこのMGM作品は、主演および振付を務めたジーン・ケリーとレスリー・キャロンのダンス・シーンが話題となり、作品賞はじめ8つの部門でオスカーを受賞している。

02. 夜も昼も

コール・ポーターが作詞作曲を手がけた1932年のブロードウェイ・ミュージカル「陽気な離婚」からのナンバーで、主演スターであるフレッド・アステアのために書かれたもの。海辺のリゾートを舞台に、イギリス人作家と離婚を控えた女性との恋が描かれるこの作品は、名ダンス・コンビ、フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャーズの主演で、1934年に「陽気な離婚者」と改題されて映画化された(邦題「コンチネンタル」)。

03. 男と女

フランシス・レイが手がけた「♪ダバダバダ」のメイン・テーマがあまりに名高いこの作品は、過去の痛手から立ち直れず、新たな愛へと踏み切れぬ男女の心の機微を描いた、大人のムードあふれる1966年のフランス映画。主演はジャン・ルイ・トランティニャンとアヌーク・エーメ。監督は、フランシス・レイと組んで「パリのめぐり逢い」(1967)、「白い恋人たち」(1968)等の名作を送り出したクロード・ルルーシュ。

04. ロシュフォールの恋人たち

監督ジャック・ドゥミ、音楽ミシェル・ルグラン、主演カトリーヌ・ドヌーヴのゴールデン・トリオが生み出した、フランス・ミュージカル映画の傑作の一つ。お祭りにわきたつロシュフォールの街を舞台に、さまざまな恋が展開されてゆく1965年の作品で、ドヌーヴは実の姉フランソワーズ・ドルレアックと、夢に恋に生きる双子の姉妹役で生涯唯一の共演をはたした。ジョージ・チャキリス、ジーン・ケリーと、その他の出演者も豪華。

05. Le Petit Poucet

シャルル・ペローの童話「親指トム」をもとにした、2001年製作のフランス映画。小人の“親指トム”が主人公のファンタジーで、ロマーヌ・ボーランジェ、カトリーヌ・ドヌーヴらが出演している。監督は、ジャン・レノ主演の映画「クリムゾン・リバー2」を手がけたオリヴィエ・ダアン。久石譲が音楽を手がけ、主題歌をヴァネッサ・パラディが歌っている。

06. ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ

1943年のミュージカル映画「サムシング・トゥ・シャウト・アバウト」のためにコール・ポーターが作詞作曲した曲。ドン・アメチーとジャネット・ブレアが歌い、アカデミー主題歌賞にノミネートされたが、失敗作続きのブロードウェイ・プロデューサーが新作を舞台に乗せようとするまでの悪戦苦闘を描いた映画自体は流行らず、クリフォード・ブラウンと共演した歌手ヘレン・メリルのレコード等によってポピュラーな曲となった。

07. ビギン・ザ・ビギン

1935年に初演されたブロードウェイ・ミュージカル「ジュビリー」からのナンバーで、西インド諸島のマルチニーク島の民俗舞曲である“ビギン”と“始める=ビギン”を掛けて、コール・ポーターが作詞作曲した。身分を隠して城を抜け出し、普段できないことを楽しむロイヤル・ファミリーの姿を描いた「ジュビリー」はさほどヒットしなかったが、後の大スター、モンゴメリー・クリフトが子役として出演していたことで知られる。

08. 太陽がいっぱい

リッチな放蕩息子に憧れ、彼になりかわるべく恐ろしい犯罪に手を染めていく貧しい青年を描いた映画「太陽がいっぱい」(1960)は、主演のアラン・ドロンがスターの地位を不動のものとしたサスペンス・ドラマ。監督はルネ・クレマン、「ゴッドファーザー」シリーズやフェリーニ作品などで名高いニーノ・ロータが音楽を手がけた。後に「リプリー」(1999)のタイトルで、マット・デイモン主演でリメイクもされている。

09. ラストタンゴ・イン・パリ

パリのアパートでただただセックスに溺れる日々を送る中年男と若い女の姿をとらえた「ラストタンゴ・イン・パリ」は、衝撃的な性描写ゆえに1972年の発表当時世界各国で上映禁止となり、日本でも27年の年月を経てやっと無修正完全版が公開された。「ラスト・エンペラー」(1987)などで名高いベルナルド・ベルトルッチ監督が31歳の若さで発表した問題作で、主演はマーロン・ブランドとマリア・シュナイダー。

10. ソー・イン・ラヴ

シェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」のミュージカル版と、そこに出演している役者たちのラブロマンスが二重写しで描かれるブロードウェイ・ミュージカル「キス・ミー・ケイト」(1948)の、舞台裏の部分で歌われたナンバー。コール・ポーター作品として最大のヒットとなり、第一回トニー賞の栄誉に輝いたこのミュージカルは、1953年にMGMにて映画化されているが、その際コール・ポーターその人も出演をはたした。

11. シェルブールの雨傘

「ロシュフォールの恋人たち」に先駆け、監督ジャック・ドゥミ、音楽ミシェル・ルグラン、主演カトリーヌ・ドヌーヴのゴールデン・トリオが生んだ、フランス・ミュージカル映画の最高傑作で、1964年度のカンヌ映画祭グランプリを受賞した。港町シェルブールを舞台に、戦争で引き裂かれる傘屋の娘と自動車修理工の若者との悲恋が、甘い調べに乗ってせつなく描かれるこの作品は、セリフもすべて歌いあげる手法も話題を呼んだ。

12. 白い恋人たち

フランス・グルノーブルにて1968年に開催された第十回冬季オリンピック大会の模様をとらえたドキュメンタリー映画で、「男と女」や「パリのめぐり逢い」と同じく、クロード・ルルーシュが監督を務め、フランシス・レイが音楽を担当している。アテネからの聖火リレーに始まり、華やかな開会式、各競技に挑む選手たちの姿、そして13日間の白熱した日々を経ての閉会式などが、ヴィヴィッドに描き出されている。

文:藤本真由

 

久石譲 itunes 1

 

Info. 2015/03/17 [CM] ザ・プレミアム・モルツ「MASTER’S DREAM」 音楽:久石譲

2015年3月3日、女優の竹内結子、音楽家の久石譲氏、書道家の武田双雲氏が、都内で行われた『Master’s Dream Lounge』(六本木ヒルズ 期間限定OPEN 3/4-3/18)オープン発表会に出席した。完成したCMのお披露目などやインタビューなどが行われた。

同じくサントリービールは、新商品「~ザ・プレミアム・モルツ~マスターズドリーム」を3月17日より発売。同日より、音楽を久石氏、書を武田氏が担当した新CMが放送される。

 

TVでのCMオンエアに先駆け、Youtubeサントリー公式チャンネルにて公開開始!

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Info. 2015/03/03 [CDマガジン] 「クラシック プレミアム 31 ~ムソルグスキー / リムスキー=コルサコフ~」 久石譲エッセイ連載 発売

2015年3月3日 CDマガジン 「クラシック プレミアム 31 ~ムソルグスキー/リムスキー=コルサコフ~」(小学館)
隔週火曜日発売 本体1,200円+税

「久石譲の音楽的日乗」エッセイ連載付き。クラシックの名曲とともにお届けするCDマガジン。久石による連載エッセイのほか、音楽評論家や研究者による解説など、クラシック音楽の奥深く魅力的な世界を紹介。

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Blog. 週刊ポスト「Macはヒューマン」 久石譲インタビュー内容

Posted on 2015/3/2

2011年11月11日号「週刊ポスト」に掲載された久石譲インタビューです。

長年愛用しているコンピューターMacについて語っています。

 

 

久石譲氏 「Macはヒューマン。よく固まるけどそれも楽しい」

10月に他界した故スティーブ・ジョブズは、常に革新的なアイデアを重視していた。そのため機械に思わぬ不具合が生じることも少なくないのだが、それでもユーザーは減らない。Macintosh愛好家である作曲家の久石譲氏がいう。

「一言でいえばヒューマンなんですよ。Macはよく固まる。集中して1時間ぐらいかけて作った曲がフリーズでおジャンというのは昔は日常茶飯事でした。泣きたくなるけど、それも楽しかったりする。人間味のあるパソコンですよね」

欠陥さえも愛してくれるユーザーがMacには大勢付いている。久石氏はMacintosh Plus(1986年)の思い出について、こう語った。

「ニューヨークにいた時、友人に勧められて衝動買いしました。最初に触った時の驚きは今でも覚えています。画面にはいくつかのアイコン、そして書類を作って必要ならコピーしていらなければゴミ箱に捨てる。今では当たり前ですが、当時の他のパソコンはこんなに直感的ではなかったんです。まるで自分の机の上で仕事をしているような感覚でしたね。それまで無機質だと思ったパソコンに急に人間味を感じました。

とはいえメモリが1MB程度なので、このマシンでは書類作成がメインでした。Macで曲を作るようになったのは1990年代中盤ぐらいでしょうか。皆さんに聴いていただいている最近の曲のほとんどはMacで作っています」

 

【プロフィール】
久石譲(ひさいし・じょう)1950年生まれ。作曲家として宮崎駿や滝田洋二郎の映画の音楽を担当。国内外で数々の音楽賞を受賞する日本を代表する作曲家。最新CD『The Best of Cinema Music』(ユニバーサルシグマ)が発売中。年末には北九州ソレイユホール(12月28日)、大阪ザ・シンフォニーホール(12月31日)にてコンサートを開催。

(週刊ポスト 2011年11月11日号)

(出典:NEWSポストセブン 2011.11.1 より)

 

Macintosh Plus(1986年)と久石譲氏

【Macintosh Plus(1986年)と久石譲氏】

 

Info. 2015/03/02 久石譲が台湾の交響楽団を指揮 ジブリ映画名曲などを披露 台湾・台南

音楽家の久石譲氏が先月26日、南部・台南市で開催中のイベント「台南芸術節」で、台湾のトップオーケストラ、フィルハーモニア台湾(国家交響楽団)を指揮し、ジブリ映画の名曲などを披露した。コンサートは台南文化センターの屋外広場でも同時中継され、素晴らしい演奏に観客からは熱い拍手が送られた。

演奏されたのは、「天空の城ラピュタ」のテーマソングや「千と千尋の神隠し」の挿入曲「あの夏へ」など。久石氏が映画「時雨の記」のメインテーマ曲「la pioggia」をピアノで独奏する場面もあった。

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Info. 2016年公開 映画「家族はつらいよ」 山田洋次監督 音楽:久石譲 決定

2016年公開予定 映画「家族はつらいよ」にて、山田洋次監督と音楽:久石譲が再び。「東京家族」「小さいおうち」に続く同監督3作目。

 

作品情報

山田洋次監督 20年ぶりの本格“喜劇”映画 「家族はつらいよ」 製作決定!

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Blog. 「クラシック プレミアム 30 ~ストラヴィンスキー / プロコフィエフ~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2015/2/28

クラシックプレミアム第30巻は、ストラヴィンスキーとプロコフィエフです。

クラシック音楽のなかでも近代にあたる20世紀を代表する新しい響きとリズムによる名作です。よりストーリー性をもち、劇的でドラマティックな構成と編成。現代音楽にも近く、また古典的な格式も継承しつつ。今聴いていても、さながら映画音楽を聴いているような、時代差をあまり感じない音楽といいますか、はっきりとしたストーリー性、起承転結な音楽だなと思います。

 

【収録曲】
ストラヴィンスキー
バレエ音楽 《春の祭典》
-2部からなるロシアの異教徒の情景
ピエール・ブーレーズ指揮
クリーヴランド管弦楽団
録音/1991年

プロコフィエフ
バレエ音楽 《ロメオとジュリエット》 作品64より
前奏曲
第1幕 街の目覚め / 朝の踊り / 少女ジュリエット / 客人たちの登場 / 仮面 / 騎士たちの踊り / マドリガル
第2幕 マキューシオの死
第3幕 ロメオとジュリエットの別れ / 朝の歌
第4幕 ジュリエットの死
ワレリー・ゲルギエフ指揮
マリインスキー劇場管弦楽団
録音/1990年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第29回は、
音楽を構成する3要素を座標軸で考えると

直近のテーマで数号にわたって展開されてきた視覚と聴覚の締めくくりとなっています。それもさることながら、年末年始にかけての久石譲のお仕事、コンサートから今年2015年に発表されたふたつの作品のこと「かぐや姫の物語 ~女声三部合唱のための」「Single Track Music 1」バンド維新2015委嘱作品 吹奏楽(制作時期が2014年の秋以降だった模様)

さらには、作品化されていないシリーズ!?ジブリ美術館用館内BGMのことまで。今後の予定にも光の射す一文が。いろいろな意味で、旬な久石譲がわかる、しかも本人直々に語られるというオフィシャルな近況報告、読み応え満点な内容になっています。

一部抜粋してご紹介します。

 

「新しい年を迎えた。1月4日にピアノ曲を作曲し、翌日の5日に録音した。曲名は《祈りのうた》で僕自身初のホーリー・ミニマリズムのようなシンプルな三和音を使った楽曲になった。さっそく宮崎駿さんのもとに届けた。これは恒例化した新春の儀式のようなもので、ジブリ美術館で流れる音楽を作曲して以来、毎年ではないけれどもなんとか作っては届けている。去年サボったら年間通して作曲の調子が悪かったので、今年はなんとしても作るという決意を持って臨んだので、正月も緊張したまま過ごしたせいか疲れが残っている。」

「まあ考えてみたら、12月31日に大阪でジルベスターコンサートを行ったこともあり、まったく休んではいない。おまけに2日目のリハーサル(30日)の後、風邪が悪化して熱も出て救急病院に行ったりで体調も悪かったのだから仕方がない。このときは《Winter Garden》という22分くらいのヴァイオリンとオーケストラの曲の改訂初演を行った。関西フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスター岩谷祐之さんの素晴らしい力演もあって成功した。その第1楽章は8分の15拍子という変拍子で2・2・3・2・3・3と分けてリズムを取るというまことに厄介な曲で、かなり肉体的練習をしないと体に入らないので苦労した。”久石さん”の曲はどれも面倒な曲ばかりなので指揮者としてはできるだけ演奏をしないで済ませたい。」

「そう思ったせいか深秋から暮れにかけて書いたウィンド・オーケストラのための《Single Track Music 1》は長年の知り合いである作曲家の北爪道夫氏が振り、次いで書いた女声三部合唱のための《かぐや姫の物語》は東京混声合唱団の指揮者山田茂氏にお願いした。両方ともレコーディングだったので僕はディレクションに専念できて良かったのだが、実は肩の調子が凄く悪くて手が挙がらない状態だったこともある。その状態で暮れに先ほどの変拍子を振り続けなければならなかったのは(しかもテンポが速い)かなり酷だった。だが、人間やればできる!風邪薬を飲んで14~15時間寝たらすっきり、頭もはっきりで、こんなに音楽がクリアに見えたことがないほど調子が良かった。人間やはり寝て休むことが大切だと思い知ったのだが、きっと長くは続かない、たぶん。」

「ついでに言うと救急病院に行くほど風邪がひどかったのでタバコも吸えなかった。翌日、本番が終わり1本吸ったがおいしくなくそれでお終い。1月1日も1本だけ、このまま止められるかな、と思ったら2日は3本、3日は6本、作曲に集中した4日には10本を超え、5日のレコーディングでは、ほぼいつもの状態に戻ってしまった、やれやれ。」

「去年の正月はこの連載などで文章ばかり書いていた気がする。それはそれで言葉に置き換えることによって、頭の中を整理することができてよかったのだが、作曲家はやはり音符を書かないと話にならない。今年は依頼された楽曲も多いので気を引き締めてとにかくたくさん書こうと思っている。」

「やっと本題、視覚と聴覚について書いてきたのだが、その中で聴覚を重視する宗教としてユダヤ教を取り上げ、ユダヤ的なるものを考えることでこの日本で生きること、あるいは日本人であることを考察してきた。そろそろ締めくくろう。」

「視覚と聴覚から入る情報のズレを埋めるために人は言葉を持ち、時空という概念を手に入れた。この時空という概念はそのまま音楽の概念でもある。」

「音楽を構成する要素は小学校で習ったとおり、メロディー(旋律)、ハーモニー(和音)、リズムの3要素だ。座標軸で考えるととてもわかりやすいのだが、横のラインが時間軸、縦のラインが空間軸となる。リズムというのは刻んでいくので時間の上で成り立ち、ハーモニーは響きなのでそれぞれの瞬間を輪切りで捉える、いわば空間把握だ。そしてメロディーはと言えば時間軸と空間軸の中で作られたものの記憶装置である。時間軸上の産物であるリズムと空間の産物であるハーモニー、それを一致させるための認識経路として、メロディーという記憶装置があるわけだ。そしてこれはあらゆる音楽に適合する。例えばあの難解な現代音楽にも当てはまる。不協和音や特殊奏法も響きとしての空間処理であるし、十何連音符のような細かいパッセージも聴き取りやすいリズムではないが時間軸上でのことであるし、覚えやすいメロディーではないとしても基本の音形や何がしかの手がかりがあるし、セリー(十二音列)などでもやはり時間と空間軸の上での記憶装置にはなっている(もちろんわかりにくいが)。そして多くの現代音楽が脳化社会のように込み入ってしまって、本来メロディーが持つ説得力やリズムの力強さ、心に染み入るハーモニーなどを捨て去ったために、力を失ったことは歴史が証明している。今こそ音楽の原点を見直し、多くの人たちに聴いてもらえる「現代の音楽」を必要とする時がきたのである。」

 

 

ということで、読み流せないキーワード満載でした。キーワードごとにチョイスして補足します。

【ジルベスターコンサート 2014】
3年ぶりの復活。久石譲作品の豪華オンパレード。
こちら ⇒ Blog. 「久石譲 ジルベスター・コンサート 2014」(大阪) コンサート・レポート

【ジブリ美術館音楽】
1月5日の宮崎駿誕生日に合わせて、ジブリ美術館用館内BGMを献呈。過去の献呈曲などは下記。
こちら ⇒ Disc. 久石譲 三鷹の森ジブリ美術館 展示室音楽 *Unreleased

今年献呈された楽曲は「シンプルな三和音」のホーリー・ミニマリズムのような曲。ホーリー・ミニマリズムは、作曲家アルヴォ・ペルトなども作品を残しています。

【かぐや姫の物語 ~女声三部合唱のための~】
こちら ⇒ Disc. 久石譲・高畑勲 『かぐや姫の物語 ~女声三部合唱のための~』

【Single Track Music 1】
久石譲最新作品(2015.2現在)にして、吹奏楽第2作目。
こちら ⇒ Disc. VA. 『バンド維新 2015』 (演奏:航空自衛隊 航空中央音楽隊)

【現代の音楽】
久石譲が語る、「現代音楽」ではない「現代の音楽」とは。
こちら ⇒ Blog. 久石譲 新作『WORKS IV』ができてから -方向性-

 

【今年は依頼された楽曲も多いので気を引き締めてとにかくたくさん書こうと思っている。】楽しみでなりません。作曲期間からお披露目されるまでのたっぷりとした時間を考えても…今年どれだけの新曲が聴けるのか。待つのみです。

 

クラシックプレミアム 30 ストラヴィンスキー

 

Info. 2015/02/27 《速報》 久石譲 「世紀音樂大師-久石譲」 台北コンサート プログラム

Posted on 2015/02/27

久石譲の2015年最初となる幕開けコンサートが日本ではなく台湾にて開催されました。気になる演奏プログラムとアンコールはこちらです。

 

 

世紀音樂大師-久石譲 Maestro of the Century – Joe Hisaishi

[公演期間]
2015/02/25,26

[公演回数]
2公演
台北・臺北國家音樂廳 国家音楽ホール National Concert Hall
台南・臺南文化中心

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:国家交響楽団(National Symphony Orchestra)

[曲目]
弦楽オーケストラのための「螺旋」 *改訂初演
天空の城ラピュタ
la pioggia (Pf.solo)
One Summer’s Day (Pf.solo)
Oriental Wind for Orchestra
ショスタコービッチ:交響曲 第5番 ニ短調 作品47

—-encore—-
ショスタコーヴィチ:Tea for Two (Tahiti Trot) (台北)
久石譲:Kiki’s Delivery Service for Orchestra (台南)

 

 

当初は2月25日台北での1公演予定だったものが、あまりの人気に急遽翌日に同プログラムにて台南コンサートが決定したという経緯です。そのあまりの人気の高さは、とりわけアジア人気はすごいものがあります。

コンサートホールには3500人くらいの客席となりますので、一目見ようと、その音楽を聴こうと、台湾では恒例となっている、会場外の屋外放送もされています。巨大スクリーンが設置され、ホール内での臨場感そのままに、リアルタイムに映しだされます。

 

そんな熱狂的な風景はこちら。

久石譲 台北2015 1

 

その場で体感した聴衆の方たちがアップしている写真たちが、こちら。

久石譲 台北2015 2

久石譲 台北 2015 3

 

すごいの一言です。

日本国内では考えられない光景です。野外イベント、野外フェスさながらといった感じです。それだけ海外公演の希少な(日本公演も最近希少ですが)久石譲の音楽を聴きたいと会場につめかけているのですね。そしてそれがすでにわかっているからこそ、ここまで屋外施設を事前に準備しているということですね。

 

今後も台北をはじめとする海外公演は、定期的な恒例行事となっていくのでしょうか。日本でも、海外でも、もっともっと久石譲のコンサートに行きたい、もっともっと久石譲の音楽を体感したい、というファンがたくさんいるという証ですね。

 

久石譲 台北 2015 4

 

Info. 2015/05/09 「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団 富山特別公演」 開催決定!

富山県民会館リニューアルオープン・開館50周年記念事業
県民ふるさとの日記念事業

久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団 富山特別公演

公演 会場 / 富山県民会館 ホール
日時:2015年 5月 9日(土) 【14:00 開演(13:00 開場)】
指揮:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団

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