2014年10月22日 深夜24:35から放送されるフジテレビの特番「世界文化賞」において
音楽部門の受賞者アルヴォ・ペルト氏にまつわる人物として久石が登場いたします。
授賞式会場に祝福に駆けつけた久石とペルト氏との貴重な対面シーンも公開されるそうです。
是非ご覧ください。
Disc. 東京佼成ウインドオーケストラ 『吹奏楽燦選 / 嗚呼! アフリカン・シンフォニー』
2014年10月22日 CD発売 COCQ-85096
吹奏楽の定番と今後の定番化が期待される作品を、日本を代表する名門、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)による最新のセッション録音で拡充してゆく「吹奏楽燦選」シリーズの第3弾。第1作はエバーグリーンとして定番化しつつあり専門誌でも高い評価、すでにロングセラーとなっている。第2作「フェスティーヴォ!」はレコード・アカデミー賞を受賞、チェコ吹奏楽曲の素晴らしさを広く知らしめてる。
今回の第3弾は、吹奏楽初挑戦となるクラシック界の実力派指揮者、関西フィル首席指揮者を務める藤岡幸夫とTKWOとの、実り豊かなチーム・ケミストリーに注目。藤岡は、吹奏楽オリジナル作品にはスケールの大きさと格調の高さをもたらし、ポップな曲には、タルカス等のクロスオーバー曲で吹かせた熱風を送り込んでいる。TKWOレコーディング・プロジェクトならではの委嘱作。今回は、ブリテン:青少年のための管弦楽入門の吹奏楽版といった趣の伊藤康英の意欲作『ラ・フォリア』を収録。TKWOの高い個人技と緊密なアンサンブル力をフルに発揮させる凝った逸品です。演奏会用マーチの定番『アルセナール』の勇壮な音楽、卒業式の定番曲で美しいコラールの『ロマネスク』といった新旧のオリジナルの名作に加え、2014年5月に亡くなった岩井直溥の代表作であり人気定番曲『ボレロ・イン・ポップス』、高校野球応援に必携の『アフリカン・シンフォニー』といった誰もが聞き知っている名曲が目白押し。久石譲初の吹奏楽曲である箱根駅伝の新テーマ曲など、神曲詰まり過ぎの贅沢極まりない一枚。
(メーカーインフォメーションより)
本作品に久石譲楽曲が収録されている。
「吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》」
Runner of the Spirit for Symphonic Band
I. オープニング Opening
II. エンディング Ending
【楽曲解説】
久石譲 / 吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》
久石譲(1950-)はスタジオ・ジブリの映画音楽などで著名な、言わずと知れた作曲家。そんな久石と吹奏楽の関係は古い。吹奏楽ポップスの歴史を培ってきた「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」のシリーズにおいて、1978年から1985年にかけて、全部で13曲のアレンジを手がけている。また、1976年から1980年の間にはバンドジャーナル誌の付録楽譜の編曲も15回担当している(本名の名義によるものも含む)。久石が商業的なデビューを果たしたのが1974年であることを考えると、初期において吹奏楽の占めたウェイトは小さくはない。
1980年代後半から久石本人による吹奏楽のスコアは世に知られていないが、その長い沈黙を破って生まれたのが、この「ランナー・オヴ・ザ・スピリット」である。毎年正月2日と3日にかけて行われる箱根駅伝の、日本テレビによる中継番組のテーマ音楽として作られたもので、2009年の放送以来、毎年使用されている。テレビ番組用だが、最初から吹奏楽編成で作られているのは珍しいケースである。ファンファーレ的な「オープニング」(CM前のジングルとしても使用されている)と、選手の健闘をねぎらい讃えるかのような「エンディング」の2曲からなる。
(CDライナーノーツ 楽曲解説 より)
本作品に収録されているこの2楽曲は、2009年から箱根駅伝のTV放送で流れている音源ではない。
2009年のオリジナル版も東京佼成ウインドオーケストラによる演奏である。楽曲構成が変わっていたり、改訂されているという意味ではなく、録音時の指揮者と団員奏者の違いによる微細な演奏の変化である。
よって同じオリジナルのスコアを使用しているなかで、指揮者の違いによる楽曲のダイナミクス、テンポ、演奏表現方法、パートごとに前面にフィーチャーされている楽器の違いによる印象と響きの違いと思われる。
それでも2009年発表から現時点(2014年)までに、久石譲名義として作品化されていないだけに、ほぼオリジナル版と言ってもいいくらいのバージョンがCD作品化されたことは、貴重でありうれしい限りである。
2009年版および以降毎年正月TV放送される際のオリジナル版、指揮は久石譲自らによる。


1.音楽祭のプレリュード (アルフレッド・リード)
2.コンサートマーチ《アルセナール》 (ヤン・ヴァンデルロースト)
3.ロマネスク (ジェイムズ・スウェアリンジェン)
4.海の男達の歌 (船乗りと海の歌) (ロバート・W・スミス)
5.マゼランの未知なる大陸への挑戦 (樽屋雅徳)
6.百年祭 (福島弘和) 2012年改訂版
7.嗚呼! (兼田敏)
8.吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》 I. オープニング (久石譲)
9.吹奏楽のための《ランナー・オヴ・ザ・スピリット》 II. エンディング (久石譲)
10.ラ・フォリア ~吹奏楽のための小協奏曲 (伊藤康英)
11.ボレロ(イン・ポップス) (モーリス・ラヴェル/岩井直溥 編)
12.アフリカン・シンフォニー (ヴァン・ マッコイ/岩井直溥 編)
演奏:東京佼成ウインドオーケストラ
指揮:藤岡幸夫
録音:2013年9月9~10日、江戸川文化センター(東京) [96kHz/24bit録音]
Blog. 「クラシック プレミアム 21 ~オペラの時代2 序曲・間奏曲集~」(CDマガジン) レビュー
Posted on 2014/10/20
「クラシックプレミアム」第21巻は、オペラの時代2 序曲・間奏曲集 です。
第16巻にて、オペラの時代1 アリア集 が特集されています。アリア集が声に焦点をあてたものであったのに対して、今号ではオーケストラに的を絞り、序曲・間奏曲・前奏曲やバレエ音楽まで、華やかでオペラを盛りたてる絶品のオーケストラ音楽が収録されています。
【収録曲】
ロッシーニ:《セビリャの理髪師》 序曲
クラウディオ・アバド指揮
ヨーロッパ室内管弦楽団
ヴェルディ:《椿姫》 第1幕への前奏曲
カルロス・クライバー指揮
バイエルン国立管弦楽団
ヴェルディ:《アイーダ》 第2幕「凱旋の場」より 〈凱旋行進曲と大合唱およびバレエ音楽〉
ニコライ・ギャウロフ(バス)
クラウディオ・アバド指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団
プッチーニ:《マノン・レスコー》 第3幕間奏曲
マスカーニ:《カヴァレリア・ルスティカーナ》 間奏曲
レオンカヴァッロ:《道化師》 間奏曲
マスネ:《タイス》より 〈瞑想曲〉
オッフェンバック:《ホフマン物語》より 〈舟唄〉 編曲:マニュエル・ロザンタル
ポンキエッリ:《ジョコンダ》より 〈時の踊り〉
ヴォルフ=フェラーリ:《マドンナの宝石》 第3幕間奏曲
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
グリンカ:《ルスランとリュドミラ》 序曲
ミハイル・プレトニョフ指揮
ロシア・ナショナル管弦楽団
「久石譲の音楽的日乗」第21回は、
視覚と聴覚のズレはどうして起こるのか?
前号からの話つづきになっています。
一部抜粋してご紹介します。
「視覚と聴覚から入る情報にはズレが生じる。では何でそういうことが起こるのか?本来映像は光だから音より速い。だとすると映像のほうが先に飛び込んで来るから、音楽を逆に先行させなければ映像にぴったり合うことはない。ところが現実は逆である。」
「そのことに関して養老孟司先生は「おそらくシナプスの数です。意識がどういう形で発生するかわかりませんけど、自分がこういうことを見ているというのと、聞こえてくるのと、脳の神経細胞が伝達して意識が発生するまでの時間が、視覚系と聴覚系とでは違う。だからズレているわけです」と僕との対談本『耳で考える』で語っている。」
「いつも気になることがある。テレビやDVDでクラシックのコンサートを観るとき、特に速いテンポのときなど指揮者の打点とオーケストラの音の出るタイミングが微妙に違うのだ。「まだ点に行き着いてないそこで音は出ないよ」といつも変な感じがするのは音が早く出過ぎているためだ。現場では音声と映像がタイムコードでしっかりシンクロしているはずだが、結果として音が早く感じる。そんなに多くはないが、僕もコンサートのDVDを作るとき、このことが気になってすべてのシーンのタイミングを合わせるために何度も徹夜したことがある。また普通に映画を観ているときでもセリフと映像のタイミング(リップシンク)のズレがとても気になる。このことも視覚と聴覚のズレが関係しているのだろうか?もっとも音声を録る機材と映像を撮る機材の(特にケーブル)問題やそれを家庭で再生するときの装置の問題でズレる場合もある。ブラウン管より液晶のほうが圧倒的に映像は遅れる。僕の家の4Kテレビでは……これは気にならない。何故なら見ている番組のほとんどがアメリカのテレビドラマだから、字幕を見るのに忙しくリップシンクにまで眼が行かない(笑)。まあ普通は気にしないだろうな、こんなこと。」
その他、ふと耳にした音楽から過去を思い出して胸を熱くすることはあっても、逆に昔の懐かしい場面を思い浮かべて、それから音楽を思い浮かべる人はそういうない、など、なるほどそう言われればそうかもな、と日常生活に置き換えて納得することも多く。
視覚(映像)と聴覚(音楽)のズレ。とても精通している専門家じゃないと気にならないような、視覚と聴覚のズレのようにも思いますが、なるほどそういう感覚なのかと思います。いざコンサートDVDを制作しようとしたときに、こういった点でも水面下の調整、苦労があるとは知りませんでした。
ただ単にLive コンサートで録画したものを編集したらいいわけではないんですね。何十本にも及ぶ録音用マイクで音はバランス調整しているのはわかりますが、映像も十数台のカメラワーク、カット割りの編集のみならず、総合的に視覚(映像)と聴覚(音楽)のズレの微調整まで。
なかなか久石譲コンサートがDVD化されないのは、こういった作曲者・指揮者の繊細な感覚と、やるなら!というこだわりからでしょうか。それでも映像作品として残してほしいことに変わりはないのですが。コンサートはLive感、その臨場感を楽しむものですから。
武道館DVDはこのズレどうなっているんだろう?など、またいろいろと気が散漫してしまいます。いつかゆっくりチェックしてみます。いや、素人よろしく楽しく鑑賞するのが一番いいのかもしれませんね。

Blog. 久石譲 「天空の城ラピュタ」 レコーディング スタジオメモ
Posted on 2014/10/18
1986年公開 スタジオジブリ作品 宮崎駿監督
映画『天空の城ラピュタ』
2014年7月16日「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」が発売されました。『風の谷のナウシカ』から2013年公開の『風立ちぬ』まで。久石譲が手掛けた宮崎駿監督映画のサウンドトラック12作品の豪華BOXセット。スタジオジブリ作品サウンドトラックCD12枚+特典CD1枚という内容です。
さらに詳しく紹介しますと、楽しみにしていたのが、
<ジャケット>
「風の谷ナウシカ」「天空城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」は発売当時のLPジャケットを縮小し、内封物まで完全再現した紙ジャケット仕様。
<特典CD「魔女の宅急便ミニ・ドラマCD」>
1989年徳間書店刊「月刊アニメージュ」の付録として作られた貴重な音源。
<ブックレット>
徳間書店から発売されている各作品の「ロマンアルバム」より久石譲インタビューと、宮崎駿作品CDカタログを掲載。
そして『天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎』もLPジャケット復刻、ライナー付き。
さらには、
●ジャケット特典/パズーとシータの複製セル画付き!
往年のジブリファン、そして久石譲ファンにはたまらない内容になっています。
そして貴重なライナーは、サントラ制作のレコーディング録音 スタジオメモです。
●6月20日(金)オールラッシュフィルム(セリフや音楽のない状態で編集されたフィルム)がほぼ完成。小雨が降り続く、深夜の東京・吉祥寺東映に関係スタッフを集めて映写された。映像のクオリティの高さに、一同息をのむ。
●6月23日(月)『ラピュタ』の制作をしている、スタジオジブリの近くにある喫茶店でBGMの本格的な打ちあわせ。3月に制作したイメージアルバム『空から降ってきた少女』をもとに、監督の宮崎駿さん、プロデューサーの高畑勲さん、音楽の久石譲さんが互いに意見を出し合って決めていく。1曲目からたちまち熱のこもった議論に。シータが捕らわれている飛行船に、海賊たちのフラップターが急襲するシーンに、音楽をつけるのかどうか、それはどんな曲か。熱論2時間、結局この曲は最後にもう一度話し合うことになった。午後4時から場所をジブリ第2スタジオ(実は仮眠室)に移して、深夜まで打ちあわせが行われた。
●6月24日(火)久石さんのワンダーステーション(スタジオ)にてレコーディング開始。「今回は徹底して絵の動きと音楽の流れを合わせることにこだわりたい」と久石さん。ラッシュフィルムのビデオをもとに、絵の動きのポイントの秒数を正確にチェック。『フェアライトIII』というスーパーシンセサイザーにデータを入れて、ベースとなるリズム体を作っていく。タイガーモス号の見張台にいるパズーとシータの曲からスタート。
●7月2日(水)連日徹夜の日が続く。海賊たちとスラッグ渓谷の親方との力くらべのシーンの曲を録る。絵のユーモラスな動きと完全に一致した曲に。楽しいシーンになりそう。
●7月7日(月)作品の最後に流れるテーマ曲『君をのせて』のボーカル録り。イメージアルバムの曲『シータとパズー』のメロディを生かした曲。作詩も宮崎さんとあって、作品にぴったり合ったテーマ曲に。井上杏美の澄んだ声がスタジオに響く。
●7月8日(火)日活スタジオでオーケストラ部分の録り。録るシーンごとに絵をスクリーンに映し、見て感じをつかんでもらってから、レコーディング開始。日活スタジオはじまって以来という総勢50名近くの大編成オーケストラの響きはさすが!
●7月10日(水)クライマックスで使用される児童合唱を録る。『ナウシカ』では4歳の女の子の歌った曲が話題になったが、今回は、杉並児童合唱団の30人の女の子を起用。3声にアレンジされた『シータとパズー』のメロディを歌う。
●7月12日(土)それぞれに録った音をひとつにまとめ上げる作業、トラックダウンを行う。最後まで課題として残っていた、作品の冒頭、フラップターの急襲シーンの曲を入れることに決定。あとはセリフや効果音とのダビング作業を待つばかりとなる。公開まであと1ヵ月弱、『ラピュタ』は4チャンネルドルビーサウンドで公開される。迫力あるラピュタサウンドが楽しめるはずだ。
●『ナウシカ』のサントラ盤を出した時、もう一度『ナウシカ』に、宮崎駿さんに会いたいと書いた。そして今、こうして『ラピュタ』のサントラをお届けできることを大変うれしく思う。あれから2年、自然と人間の調和の中に人間の未来を指し示した『ナウシカ』の叫びが起こした、様々な反響とは裏腹に世相はますます荒れすさんでいくように思える。「おとなから子どもまで、けなげにも非人間的なデジタル的なものにむりやり適応しようと涙ぐましい努力をしている現在、あらゆる面でアナログ的なものこそ人間的であると信じ、徹底してその復権を作品世界の中でめざす熱血漢・宮崎駿の、これは現代人全体への友愛の物語」(企画書の高畑さんの文章より)。という、『ラピュタ』のコンセプトは、このアルバムにも生かされている。そのサウンドに心安らぎ、胸ときめかせてほしい。 (渡辺)
(「天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎」 LP(復刻) ライナー より)
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Info. 2014/10/16 「第26回世界文化賞」 久石譲駆けつける
偉大な芸術家たちを包む祝福の声-。東京・元赤坂の明治記念館で15日夜、第26回高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式典に続いてカクテルレセプションと祝宴が開かれ、駆けつけた文化人らが、受賞した5人と喜びを共にした。
音楽部門は、エストニアの作曲家アルヴォ・ペルトさん。ソ連による統治時代に西側諸国の音楽を学び、独自の音楽様式を確立した現代音楽を代表する作曲家。
Blog. 久石譲 「長野市芸術館 広報準備号 vol.2」 インタビュー
Posted on 2014/10/15
2015年開館予定の長野市芸術館。その芸術監督に就任した久石譲のインタビューです。10月12日に開催された「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」コンサート前のメッセージとなります。
このインタビュー内容をふまえて、コンサートレポートもお楽しみください。
こちら ⇒ Blog. 「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」(長野) コンサート・レポート
久石譲が考える長野市芸術館のすがた
芸術監督に就任して初めての舞台を前に、東京の事務所にて、開館プレイベント「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」公演によせる想いと、芸術館の未来について語っていただきました。
■ いま、やるにふさわしいものを。
-芸術監督に就任して初の長野でのコンサート。どんな想いで臨まれますか?
久石 長野で音楽を、とりわけクラシックを聴ける環境をたくさん作っていくことが僕の使命なので、今回のプログラムは僕がやりたいものをきっちりと選んだ。かなりおもしろいコンサートになると思っています。
-「風立ちぬ」第2組曲は、映画で使われた音楽がベースになっているのですか?
久石 そうですね。ただ映画では使われなかった曲もずいぶん入っていて、映画とはまったく別の、その時に書いた素材をもとに新たにオーケストラのための組曲として作り直したものです。初演は今年の5月に台湾。夏に東京でやって、長野は3回目ということになります。
-ベートーヴェンは久石さんにとってどのような存在?
久石 最高の作曲家です。彼の作品は非常に明快なロジックとエモーショナルな部分をあわせもっている。そしてキャッチーでわかりやすい。交響曲第5番や第7番とかは本人の中でも整理されているんだけど、この3番あたりはまだちょっと思いついちゃったから書いちゃった、みたいなところがあって。当時もっている勢いみたいなものが最も表れているし、各楽章のテーマがすごくハッキリしているからね。芸術監督になって最初に選ぶ曲は何がいいかずっと悩んでいたけど、『英雄』がふさわしいと思った。
■芸術監督として僕がやるべきこと
-今後のポイントを教えてください。
久石 とにかく良いプログラムを作ること。方針をもって5年10年の長いスパンで定着していくことをやっていくことですね。生活のなかでコンサートに行くことが日常になってほしい。ふだん聴く音楽のひとつにクラシックがきちんとあってほしい。そのためにも良いものを数多くやって、みなさんの生活のなかで芸術館が中心にあるようになったら、一番良いことですよね。
(長野市芸術館 広報誌準備号 vol.2 より)
なお、長野市芸術館のFacebookページでは、今回のコンサートのリハーサルから本番の様子まで紹介されています。公演前のコンサートプログラム冊子の作成過程なども。2015年の開館に向けて、いろいろなニュースやリポートも詳細に紹介していく予定になっているそうです。
公式Facebook 》 長野市芸術館 Facebook

2014年11月には、長野市芸術館 公式ウェブサイトもオープン予定とのことです。公式ウェブサイト 公式Facebookページふくめて、久石譲の最新情報もHOTに更新されるかもしれませんので、随時チェックですね。
「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」長野公演本番写真を、公式Facebookページより1枚お借りしています。

Blog. 「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」(長野) コンサート・レポート
Posted on 2014/10/15
長野市芸術館 開館プレイベントとして開催された「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」 コンサート。
長野市では2015年の完成に向け、新たな文化芸術の拠点となる「長野市芸術館」の整備を進めています。それに伴い、長野市芸術館の運営の中心を担う一般財団法人長野市文化芸術復興財団が発足しました。この財団では、芸術監督・久石譲氏の監修のもと、豊かな文化に支えられた〈文化力あふれるまち 長野市〉をめざします。また、さまざまな文化芸術が身近に感じられるような機会を提供できるよう、開館に向けて準備を進めています。
(コンサートパンフレットより)
まずはセットリストから。
久石譲 × 新日本フィルハーモニー交響楽団
[公演期間]
2014/10/12
[公演回数]
1公演(長野・ホクト文化ホール)
[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
バラライカ/マンドリン:青山忠
バヤン/アコーディオン:水野弘文
ギター:千代正行
[曲目]
<第一部>
久石譲:弦楽オーケストラのための「螺旋」
久石譲:バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲
—アンコール—
Summer
<第二部>
ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55
—アンコール—
Kiki’s Delivery Service for Orchestra
当初予定されていたプログラムから一部変更になり、上記の演奏プログラムとなっています。
曲目ごとに。
- 久石譲:弦楽オーケストラのための「螺旋」
2010年コンサート「久石譲 Classics Vol.2」にて世界初演されて以来、2011年コンサート「久石譲 Classics Vol.4」で二度目の演奏後、幻の曲として沈黙を守ってきた楽曲、14分に及ぶ大作です。
当初プログラムでは「ピアノと弦楽オーケストラのための新作」もしくは「螺旋」の披露予定、どちらを演奏されたにせよ貴重なプログラムだっただけに、これはレアな演目となりました。どういう曲か? は後述の久石譲本人による解説をご参考ください。
- バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲
2014年のコンサート活動を象徴する楽曲です。曲詳細については過去コンサートレビューや、新作CD「WORKS IV」にて紹介しています。
- Summer
第1部のアンコールとして。久石譲の代名詞的な名曲「Summer」をピアノ&オーケストラとの共演で。CD「メロディフォニー」が基調となるシンフォニー・バージョン。
- 交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55
長野市芸術館のコンセプトにもあるように、さまざまな文化芸術が身近に感じてもらえるべく、久石譲作品以外から選曲されたベートーヴェンの「英雄」。第9、第5番「運命」が一般的にはポピュラーですが、「英雄」も引けをとりません。長野市芸術館の開館を前にプレイベントの演目として選ばれているだけに、「新しいなにかが始まる」、幕開け、ファンファーレのような意味合いだったかどうかは、定かではありませんが、そんな気もしています。
- Kiki’s Delivery Service for Orchestra
こちらも新作「WORKS IV」に収録された、2014年今一番ホットな楽曲です。
Program Notes
久石譲:弦楽オーケストラのための「螺旋」
弦楽オーケストラのための「螺旋」は、2010年2月16日に行ったコンサート《久石譲 Classics Vol.2》のために書いた作品である。作曲は、2010年1月20日より2週間という短い期間で一気に書き上げ、その後直しを含めて時間の許す限り手を加えた。ミニマル・ミュージックの作家としてコンテンポラリーな作品を書きたいという思いが強かったのかもしれない。
曲は、8つの旋法的音列(セリー)と4つのドミナント和音の対比が全体を通して繰り返し現れる。もちろんミニマル・ミュージックの方法論で作曲したが、その素材として上記の12音的なセリーを導入しているため結果として不協和音が全体の響きを支配している。
心がけたことは、感性に頼らず決めたシステムに即して音を選んでいくことだった。もちろんそのシステムを構築する土台は(それが良いと決めたこと自体)個人的な感性である。
曲の構成は日本の序・破・急(※)の形をとり、第1部は遅めのテンポの中で様々なリズムが交差し、第2部では同じセリーのスケルツォ的躍動感を表現している。第3部の前には、もう一度基本セリーによる静かな神秘的な部分があり、その後、急としての激しい空間のうねりが展開される。
曲のタイトルとして Spiral という言葉を最初考えていたが、この急の部分を作曲したときに「螺旋」という日本語が最もふさわしいと確信した。
(※)序・破・急 = 音楽・舞踊などの形式上の三区分。序と破と急と。舞楽から出て、能その他の芸術にも用いる。
(2011年9月7日《久石譲 Classics Vol.4》 曲目解説より一部補筆し転用)
– コンサートパンフレットより –
この久石譲本人による楽曲解説を見ても、ハテナが頭に浮かぶだけですが、キーワードとしては「ミニマル」「空間のうねり」「序・破・急」、すなわち《螺旋》です。
”不協和音が全体の響きを支配している”とありますが、とはいえミニマル・ミュージック特有のリズムがそこにはあり、躍動感と神秘性をかねそなえた弦の響きがまさにスパイラルしている楽曲。
コンサートで聴いても、その渦を巻いた弦楽オーケストラの響きに圧倒されます。今回3度目の貴重なお披露目となったわけですが、久石譲の現代音楽作品として後世に残るべき重要な作品だと思います。ぜひこれからのコンサートや、またCD作品としても聴きたい大作です。
余談。当初予定されていた「ピアノと弦楽オーケストラのための新作」。こちらもいつか聴ける日が来ることを切望していることは、言うまでもありません。
長野芸術館の芸術監督を務める久石譲は、「日常の中に音楽が入ってくるための魅力的なプログラムをつくりたい」「出身県でもあり、自分の年齢も考え、少しは世の中に貢献しようと思った」「善光寺での野外コンサートを含んだコンサート週間を柱にし、長野だけでなく全国に発信したい」、自身も毎年コンサートを開催していきたいと語っていて、2015年の開館イベントやその以降、長野から発信される久石譲音楽に期待です。
2014年、いろいろな企画・編成・形式でのコンサート活動が行われてきましたが、その最後を飾るファイナルは、「久石譲 ジルベスターコンサート 2014 in festival hall」です。12月31日大晦日のこの日、久石譲の2014年集大成、総決算です。と同時に2015年の何かを予感させてくれるコンサートとなるのでしょうか。
久石譲コンサートの歴史はひとつひとつと刻まれています。
こちら ⇒ 久石譲 Concert 2010-
最後に、今コンサート終演後のメディア情報より。
指揮者久石さん躍動 長野市芸術館開館プレイベント
建設中の長野市芸術館(新市民会館)の開館記念プレイベントとして同館芸術監督の作曲家久石譲さん(63)=中野市出身=が指揮する新日本フィルハーモニー交響楽団(東京)の特別公演が12日、長野市若里のホクト文化ホール(県民文化会館)であった。久石さんの県内公演は4年半ぶり。オーケストラの重厚な演奏が、大ホールを埋めた幅広い世代の約2200人を魅了した。
約2時間の公演で、ともに久石さん作の「弦楽オーケストラのための『螺旋(らせん)』」、昨夏公開の宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」の曲を再構成した組曲のほか、ベートーベンの交響曲第3番「英雄」を演奏。久石さんは全身を躍動させて力強い指揮を披露した。「風立ちぬ」では、指揮の合間にピアノを弾く場面もあった。曲が終わるごとに笑顔で両手を広げ、聴衆の拍手に応えた。
久石さんは公演後、「話ができないほど精いっぱい出し切り、お客さんの反応もすごく良かったので、やってよかったなあと思う」と話した。
(信濃毎日新聞[信毎日web] より一部抜粋 )

Info. 2014/10/14 [CDマガジン] 「クラシック プレミアム 21 ~オペラの時代2 序曲・間奏曲集~」 久石譲エッセイ連載 発売
2014年10月14日 CDマガジン 「クラシック プレミアム 21 ~オペラの時代2 序曲・間奏曲集~」(小学館)
隔週火曜日発売 本体1,200円+税
「久石譲の音楽的日乗」エッセイ連載付き。クラシックの名曲とともにお届けするCDマガジン。久石による連載エッセイのほか、音楽評論家や研究者による解説など、クラシック音楽の奥深く魅力的な世界を紹介。
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Blog. 久石譲 「天空の城ラピュタ」 インタビュー ロマンアルバムより
Posted on 2014/10/12
1986年公開 スタジオジブリ作品 宮崎駿監督
映画『天空の城ラピュタ』
映画公開と同年に発売された「ロマンアルバム」です。インタビュー集イメージスケッチなど、映画をより深く読み解くためのジブリ公式ガイドブックです。
今では復刻版としても登場していますし、さらに新しい解説も織り交ぜた「ジブリの教科書」シリーズとしても刊行されています。
今回はその原本ともいえる「ロマンアルバム」より、もちろん1986年制作当時の音楽:久石譲の貴重なインタビューです。
「こんなに密度の濃い音楽打ちあわせは初めてです」
-まず「ラピュタ」の音楽を書くにあたっての、基本的な考え方がどういうものだったのか、聞かせてください。
久石:
「基本コンセプトとしては、やはり映画のイメージというものを基礎にして、愛と夢と冒険の感じられる音楽にしようということでした。具体的にいうと、メロディをキチッと聞かせるものにしよう、それも、子どもたちが聞いて、心があたたかくなるようなものにしよう、というのが基本的な考え方ですね」
-でも、それは意外に難しいことですね。
久石:
「そうなんです。明るくて、しかも胸にジーンとくるような良さを持った曲というのは、なかなか作れませんからね。しかし、今回はそれにどうしても挑まなければならなかったと思います。それと、音とイメージは、あくまでもアコースティックにいこうと、はじめから考えました。『アリオン』の場合は、音のサンプルの数がひじょうに多かったわけで、この『ラピュタ』ではむしろシンプルなアコースティックの音が中心になっています」
-実際に音を聴きますと、かなり大編成のような感じがしますが。
久石:
「ええ。オーケストラは五十人編成でした。これは日本映画の場合、最も大きい編成といえると思いますね。なにしろ録音スタジオに入りきらないぐらいの人数でしたから。それと、シンセサイザーは、フェアライトのIIとIIIという最新型を使用しています。だから、予算的にも、通常の三倍ぐらいかかっていますね」
-今回も「ナウシカ」の場合と同じように、プロデューサーの高畑勲さんと、だいぶ綿密な打ちあわせをなさったようですね。
久石:
「いや、それほどでもなかったと思います。高畑さんとは前回の『ナウシカ』のときの経験がありますから、むしろかなりラフにやっていたと思います。
ただ密度そのものはかなり濃いんです。というのは、実際に映画用の音楽を書くまえに、イメージアルバム(『空から降ってきた少女』)を作っているでしょう。だから、高畑さんの頭にも、ぼくの頭にも、そのイメージアルバムのメロディが鳴っているわけです。たとえばこのシーンではあのテーマ、あのシーンには別のテーマ、というように、きわめて具体性があるんですね。おたがいにそのメロディを鳴らしながら、打ちあわせをしていくわけです。たぶんこんなことは、他の誰もやっていないでしょう。それだけレベルの高い打ちあわせなわけです。だから『ラピュタ』の音楽は、いわば二段階をへて書かれていったわけですね」
-実際の作業は、やはりラッシュ・フィルムのビデオを観ながら進めるわけですか。
久石:
「そうですね。技術的にいうと、音楽を絵にあわせていくのは、コンピューターが発達していますから、0(ゼロ)コンマ何秒というところまで、ピッタリあわせることが可能なんです。だから僕のほうとしては、コンマ何秒単位であわせていき、それを高畑さんと宮崎さんに検討してもらうということでした。
じつは高畑さんも、ここまで音楽の方がピッタリあうことは期待していなかったみたいですね。それと、テレビアニメじゃないので三十秒、四十秒といった短い音楽はつけていないんです。やはり映画は、三分、四分という長さを持った音楽でないと、全体に堂々とした感じになりません」
-今回意外に思ったのは、パズーが早朝小屋の上でトランペットを吹いたときのメロディなんですね。あの、ルネサンス期の音楽のような明るさを持ったメロディというのは、いままでの久石さんのメロディ・ラインになかったものですね。
久石:
「たしかにそうかもしれません。でも、ぼくにとっては身近な音楽なんです。というのは、大学のときに、バロック・アンサンブルの指揮をやっていたことがあったからなんです。それ以降なぜかエスニックな音楽の方へ行ってしまったので、意外と思われるかもしれないけれど、むしろそっちの方がぼくの原点に近いんですよね。
また、ぼくのメロディ・ラインは、スコットランドやアイルランドの民謡のような感じに近いんです。だから『ラピュタ』は、かなりぼくのもともとの持っている音楽に近いところでやれた作品なんです」
-映画のために作った音楽のなかで苦労した曲、あるいは、大変だったシーンなどはありますか。
久石:
「全体にスムーズに行ったんですが、難しいのが一曲だけありましてね。M-37というやつなんですが。パズーとシータが”天空の城”についたあと、気がついて、城の内部へ入っていき、その内部の様子や大樹をあおぎ見て、お墓の前に立つ、というシーンのための音楽なんです。これは解釈がすこしちがっていましたね。ぼくは、大樹やお墓というところから、壮大なそして神秘的な感じの曲を作ってしまったんですが、あそこはむしろ、マイナーでハートにしみいるような曲のほうがよかったんです。もの悲しさが必要だったんですね。
なぜそうなったかというと、ラッシュのビデオのなかに、色のついていない未完成の部分があって、それがだいじなカットだったわけですが、それをつかめていなかったんですね。この部分が唯一難しかったところといえますね。」
-今回は4ch・ドルビーというシステムだったんですが、その点については?
久石:
「高畑さん、宮崎さんをふくめて、ダビングのときにびっくりしましてね。映画はぜったい4chにしなきゃいけないと思いますね。音質とかダイナミック・レンジなんかでも、モノラルとは格段の差があって、この作品を4chとモノラルの両方で見たら別物に見えるぐらいのちがいがあるはずです。こういう作品こそ、ぜったいに4ch・ドルビーであるべきだと思いました。音楽の世界ではあたりまえのことなんですが、映画は音の点ではまだ遅れてますね。」
とにかく、アニメーションで『ラピュタ』以上の音楽は当分書けないでしょうね。そのぐらいの自信作です」
(天空の城ラピュタ ロマンアルバムより)
スタジオジブリがその手法を築き上げたといってもいい、ひとつの映画に対する音楽のイメージアルバムからサウンドトラックへという流れ。そして当時の映画ならびに映画音楽の位置づけや技術的な環境も垣間見れる貴重なインタビュー内容です。
初期のジブリ作品、とりわけ『ラピュタ』や『トトロ』などでは、生き生きとした映像にあわせて、コンマ何秒まで絵と音楽がシンクロした、躍動感あり、そしてコミカルでもある、音楽が多くつけられています。
『ラピュタ』でいうと、ドーラ一族と鉱夫たちの愉快なケンカシーンでも、そしてあの名場面パズーがシータを救出するシーンでも。M-37のインタビューのくだりは、興味深かったですね。おそらくサウンドトラック収録の「月光の雲海」がそうなのでしょうか。メインテーマが印象的に使用されている、記憶に残る1曲です。
そして、最後のインタビューコメントをいい意味で覆すようですが、この後も『ラピュタ』に並ぶ、『ラピュタ』を超える?!、数々の名曲たちが生まれていきます。
「ジブリの教科書 2 天空の城ラピュタ」(2013刊)にもオリジナル再収録されています。

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Blog. 久石譲 「風の谷のナウシカ」 レコーディング スタジオメモ
Posted on 2014/10/10
1984年公開 スタジオジブリ作品 宮崎駿監督
映画『風の谷のナウシカ』
宮崎駿と久石譲の記念すべき第1作にして名作です。
2014年7月16日「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」が発売されました。『風の谷のナウシカ』から2013年公開の『風立ちぬ』まで。久石譲が手掛けた宮崎駿監督映画のサウンドトラック12作品の豪華BOXセット。スタジオジブリ作品サウンドトラックCD12枚+特典CD1枚という内容です。
さらに詳しく紹介しますと、楽しみにしていたのが、
<ジャケット>
「風の谷ナウシカ」「天空城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」は発売当時のLPジャケットを縮小し、内封物まで完全再現した紙ジャケット仕様。
<特典CD「魔女の宅急便ミニ・ドラマCD」>
1989年徳間書店刊「月刊アニメージュ」の付録として作られた貴重な音源。
<ブックレット>
徳間書店から発売されている各作品の「ロマンアルバム」より久石譲インタビューと、宮崎駿作品CDカタログを掲載。
そして『風の谷のナウシカ サントラ盤 はるかな地へ…』もLPジャケット復刻、ライナー付き。さらには、楽譜付き!
- シンフォニー版「遠い日々」より、「鳥の人」のメロディー部分 久石譲自筆スコア
- サウンドトラックに使用された「風の伝説」(メインテーマ)、「ナウシカのテーマ」、「鳥の人」の主題メロ譜
往年のジブリファン、そして久石譲ファンにはたまらない内容になっています。
このサントラ制作に使用された楽器も掲載されています。
フェアライトCMI・プロフェット5・ヤマハDX7・ローランドSH・ハモンドオルガン
ヤマハグランドピアノ・サウンドドラムマシン・ローランドTR・ローランドMC ほか
ほかにも掲載楽器あったのですが、いかんせん字が小さすぎてメガネをかけても厳しい粒でした。
そして貴重なライナーは、サントラ制作のレコーディング録音 スタジオメモです。
●2月7日、TAMCOスタジオ入り。17日間、全60曲以上にのぼるサントラのレコーディングの始まりだ。映画公開は3月11日だからギリギリのスケジュール。ディレクターの荒川さんの顔もヒキつろうというもの。
●すでに監督の宮崎駿さん、プロデューサーの高畑勲さんとの打ちあわせは終了。基本コンセプトは、前作のイメージアルバム「鳥の人…」でいこうと決定している。このレコードに付属している楽譜をはじめとする、いくつかの主題を、シーンごとに割りふっていく。
●作業はビデオになったラッシュフィルムを観ながら行なわれる。まず曲を入れるシーンの長さをはかり、曲の秒数を決定。これをMC-4というコンピューターに入力すると、秒数にあわせて、「キッコッコッ、カッコッコッ」というリズムガイドが打ち出される。これに合わせて、シーンのイメージを曲にしていくという手順。久石さんの演奏が24チャンネルのマルチレコーダーによって、ひとつずつ重ねられていく。仕上がったところで、ビデオを再生しながら曲のチェック、スタッフどうしで意見を出し、手なおしを加えて完成。
●「たとえ、ラッシュフィルムでも、画面があると、曲作りにすごくプラスになるね」と久石さん。アニメに限らず、現在のサントラの曲づくりでは、画面なしで、シナリオと秒数だけで作曲してしまうケースが多い。ラッシュフィルムのおかげで、メーヴェの飛翔にあわせて曲想を換えていくといった、きめ細かい作業を行うことができた。
●B面の「王蟲との交流」「ナウシカ・レクイエム」に聞かれる女の子の声は、久石さんのお嬢さん、麻衣ちゃん(4歳)。幼年時代のナウシカと王蟲との交流あたたかく表現しようというわけ。電子楽器を中心とした、とかく無機質になりがちなスタジオワークでの曲作りに、ライブな響きが加わった。
●2月15日、C・A・Cスタジオにて、フェアライトCMIを使ってレコーディング。これはコンピューターをフルに活用した万能電子楽器とでもいうべきもの。価格1200万円ナリ。「王蟲との交流」での、コーラスとストリングス系の音がこれ。ウクツシイ!
●2月20日、久石さんの演奏による録音はすべて終了し、にっかつスタジオにてオーケストラ録り。ビデオの画面に合わせて、久石さんから指揮者に細かい指示が送られる。シンフォニー編アルバム「風の伝説」とは、また違った生の迫力をもった曲が仕上がった。
●2月21日から24日まで、一口坂スタジオでミックスダウン。24チャンネルの音を2チャンネルの音に組み上げていく。そして完成!
●久石さんは語る。「ナウシカとは、イメージアルバムから数えると3枚のLP、約8か月間にわたる長いつき合いでした。一つの作品に対して、ここまでじっくり取り組めたことは大変満足しています。しかも、「ナウシカ」という作品のすばらしさ!これは映画を観ていただければ充分に分かっていただけるでしょう。本当に充実した仕事でした」。
●すべての作業を終えて今、我々、音楽スタッフが想うことは、もう一度「ナウシカ」に出会いたいということ。宮崎駿さんが、ふたたび絵コンテ用紙にとりくむ日を夢見つつ…。
(「風の谷のナウシカ サントラ盤 はるかな地へ…」 LP(復刻) ライナー より)
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