Blog. 久石譲 「風の谷のナウシカ」 レコーディング スタジオメモ

Posted on 2014/10/10

1984年公開 スタジオジブリ作品 宮崎駿監督
映画『風の谷のナウシカ』

宮崎駿と久石譲の記念すべき第1作にして名作です。

2014年7月16日「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」が発売されました。『風の谷のナウシカ』から2013年公開の『風立ちぬ』まで。久石譲が手掛けた宮崎駿監督映画のサウンドトラック12作品の豪華BOXセット。スタジオジブリ作品サウンドトラックCD12枚+特典CD1枚という内容です。

 

さらに詳しく紹介しますと、楽しみにしていたのが、

<ジャケット>
「風の谷ナウシカ」「天空城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」は発売当時のLPジャケットを縮小し、内封物まで完全再現した紙ジャケット仕様。

<特典CD「魔女の宅急便ミニ・ドラマCD」>
1989年徳間書店刊「月刊アニメージュ」の付録として作られた貴重な音源。

<ブックレット>
徳間書店から発売されている各作品の「ロマンアルバム」より久石譲インタビューと、宮崎駿作品CDカタログを掲載。

 

 

そして『風の谷のナウシカ サントラ盤 はるかな地へ…』もLPジャケット復刻、ライナー付き。さらには、楽譜付き!

  • シンフォニー版「遠い日々」より、「鳥の人」のメロディー部分 久石譲自筆スコア
  • サウンドトラックに使用された「風の伝説」(メインテーマ)、「ナウシカのテーマ」、「鳥の人」の主題メロ譜

往年のジブリファン、そして久石譲ファンにはたまらない内容になっています。

 

 

このサントラ制作に使用された楽器も掲載されています。

フェアライトCMI・プロフェット5・ヤマハDX7・ローランドSH・ハモンドオルガン
ヤマハグランドピアノ・サウンドドラムマシン・ローランドTR・ローランドMC ほか

ほかにも掲載楽器あったのですが、いかんせん字が小さすぎてメガネをかけても厳しい粒でした。

 

 

そして貴重なライナーは、サントラ制作のレコーディング録音 スタジオメモです。

 

●2月7日、TAMCOスタジオ入り。17日間、全60曲以上にのぼるサントラのレコーディングの始まりだ。映画公開は3月11日だからギリギリのスケジュール。ディレクターの荒川さんの顔もヒキつろうというもの。

●すでに監督の宮崎駿さん、プロデューサーの高畑勲さんとの打ちあわせは終了。基本コンセプトは、前作のイメージアルバム「鳥の人…」でいこうと決定している。このレコードに付属している楽譜をはじめとする、いくつかの主題を、シーンごとに割りふっていく。

●作業はビデオになったラッシュフィルムを観ながら行なわれる。まず曲を入れるシーンの長さをはかり、曲の秒数を決定。これをMC-4というコンピューターに入力すると、秒数にあわせて、「キッコッコッ、カッコッコッ」というリズムガイドが打ち出される。これに合わせて、シーンのイメージを曲にしていくという手順。久石さんの演奏が24チャンネルのマルチレコーダーによって、ひとつずつ重ねられていく。仕上がったところで、ビデオを再生しながら曲のチェック、スタッフどうしで意見を出し、手なおしを加えて完成。

●「たとえ、ラッシュフィルムでも、画面があると、曲作りにすごくプラスになるね」と久石さん。アニメに限らず、現在のサントラの曲づくりでは、画面なしで、シナリオと秒数だけで作曲してしまうケースが多い。ラッシュフィルムのおかげで、メーヴェの飛翔にあわせて曲想を換えていくといった、きめ細かい作業を行うことができた。

●B面の「王蟲との交流」「ナウシカ・レクイエム」に聞かれる女の子の声は、久石さんのお嬢さん、麻衣ちゃん(4歳)。幼年時代のナウシカと王蟲との交流あたたかく表現しようというわけ。電子楽器を中心とした、とかく無機質になりがちなスタジオワークでの曲作りに、ライブな響きが加わった。

●2月15日、C・A・Cスタジオにて、フェアライトCMIを使ってレコーディング。これはコンピューターをフルに活用した万能電子楽器とでもいうべきもの。価格1200万円ナリ。「王蟲との交流」での、コーラスとストリングス系の音がこれ。ウクツシイ!

●2月20日、久石さんの演奏による録音はすべて終了し、にっかつスタジオにてオーケストラ録り。ビデオの画面に合わせて、久石さんから指揮者に細かい指示が送られる。シンフォニー編アルバム「風の伝説」とは、また違った生の迫力をもった曲が仕上がった。

●2月21日から24日まで、一口坂スタジオでミックスダウン。24チャンネルの音を2チャンネルの音に組み上げていく。そして完成!

●久石さんは語る。「ナウシカとは、イメージアルバムから数えると3枚のLP、約8か月間にわたる長いつき合いでした。一つの作品に対して、ここまでじっくり取り組めたことは大変満足しています。しかも、「ナウシカ」という作品のすばらしさ!これは映画を観ていただければ充分に分かっていただけるでしょう。本当に充実した仕事でした」。

●すべての作業を終えて今、我々、音楽スタッフが想うことは、もう一度「ナウシカ」に出会いたいということ。宮崎駿さんが、ふたたび絵コンテ用紙にとりくむ日を夢見つつ…。

(「風の谷のナウシカ サントラ盤 はるかな地へ…」 LP(復刻) ライナー より)

 

 

Related page

 

風の谷のナウシカ LP復刻

 

Info. 2014/10/10 久石譲 「ミュージック・フューチャー Vol.1」 公式スタッフ・ブログ更新

2014年9月29日に行われたコンサート「久石譲プレゼンツ ミュージック・フューチャー Vol.1」このコンサートレポートが、久石譲オフィシャルサイト内スタッグブログにて紹介されています。当日の演奏プログラムから、楽曲紹介、楽器編成、写真など、楽曲ごとに詳細な解説です。

普段はあまり聴けない楽曲、そしてお目にかかることの少ない希少な楽器など、裏話も交えて紹介されています。

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Disc. 久石譲 『WORKS IV -Dream of W.D.O.-』

2014年10月8日 CD発売 UMCK-1495

 

約9年ぶりのWORKSシリーズ第4弾

3年ぶりに復活したW.D.O.とのコンサート「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2014」から初音源化となる楽曲のみを収録したアルバム。リハーサルと2公演の本番すべての演奏を収録し、ベスト・テイクのみを収めている。豪華なサウンドで奏でられる久石の映画音楽のオーケストラ作品が、コンサートならでは臨場感と共に味わえるハイクオリティな一枚。

2013年の久石のワークスから「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」「小さいおうち」と3巨匠の作品をメインに据え、未だ音源化されていなかった「私は貝になりたい」と「Kiki’s Delivery Service for Orchestra (2014)」を収録。いずれも音楽的な「作品」として新たにオーケストレーションし直した魅力あふれる楽曲たちがラインナップ。

演奏は新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.)との、今年8月9日・10日に行われたコンサートをレコーディングし、チーム久石によって最高のクオリティを追求した作品として仕上げる。

また吉岡徳仁氏の”The Gate”に一目惚れした久石譲が、メインデザインに熱望したジャケットも必見。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

【収録曲 解説】

バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲

宮崎駿監督と久石がタッグを組んだ10本目の長編映画『風立ちぬ』は、ゼロ戦開発に従事した実在の設計者・堀越二郎の半生と、小説『風立ちぬ』の作者・堀辰雄の世界観を融合させ、「美しい風のような飛行機を造りたいと夢見る」主人公・二郎の夢と狂気、そして肺結核に冒された妻・菜穂子と二郎の夫婦愛を描いた作品。本盤に収録された《第2組曲》は、2013年12月に東京と大阪で世界初演された《小組曲》と異なり、本編のストーリーの流れに縛られることなく主要曲を音楽的に再構成している。『風立ちぬ』は、宮崎監督の意向で音声がモノラル制作されたこともあり、本編用のスコアは慎ましい小編成で演奏されていたが、《第2組曲》では原曲の持つ室内楽的な味わいを残しつつも、音響上の制約を一切受けることなく、壮大なオーケストラ・サウンドが展開している。

全曲の中心となるのは、バラライカ、バヤン(ロシアのアコーディオン)、ギターの3つの特殊楽器で主人公の遙かなる旅情を表現した「旅路のテーマ」と、久石らしい叙情的なピアノが凛としたヒロイン像を表現した「菜穂子のテーマ」の2つのテーマ。最初の〈旅路(夢中飛行)〉で3つの特殊楽器とノスタルジックなジンタ(軍楽)が「旅路のテーマ」を導入し、続く〈菜穂子(出会い)〉では久石のソロ・ピアノが「菜穂子のテーマ」をしっとりと演奏する。

次の3つの音楽、すなわち勇壮な行進曲の〈カプローニ(設計家の夢)〉、ミニマル的な推進力に溢れた〈隼班〉と〈隼〉は、いずれも二郎の飛行機への憧れと情熱を表現したセクションと見ることが出来るだろう。

3つの特殊楽器がしみじみと「旅路のテーマ」を演奏する〈旅路(結婚)〉が間奏曲的に登場した後、関東大震災の被災シーンのために書かれた〈避難〉では、オーケストラが凶暴なミニマルの牙を剥く。

続く3つの音楽、すなわち吐血した菜穂子の許に二郎が駆けつける場面の〈菜穂子(会いたくて)〉、二郎の許に菜穂子発熱の報が届く場面の〈カストルプ(魔の山)〉、療養所を飛び出した菜穂子が二郎と再会する場面の〈菜穂子(めぐりあい)〉は、「菜穂子のテーマ」を中心とした夫婦愛の音楽のセクションと捉えることも可能である。

フィナーレは、ラストシーンの〈旅路(夢の王国)〉。3つの特殊楽器と久石のピアノも加わり、万感の想いを込めて「旅路のテーマ」を演奏する。

 

Kiki’s Delivery Service for Orchestra (2014)

魔女の見習い・キキが宅急便で生計を立てながら、逞しく成長していく姿を描いた宮崎駿監督『魔女の宅急便』から、キキが大都会コリコを初めて訪れるシーンの音楽〈海の見える街〉を演奏会用に作品化したもの。今回の2014年版では、スパニッシュ・ミュージックの要素が印象的だった後半部のセクションもすべてオーケストラの楽器で音色が統一され、よりクラシカルな味わいを深めたオーケストレーションを施すことで、ふくよかで温かみのあるヨーロッパ的な世界観を描き出している。

 

ヴァイオリンとオーケストラのための「私は貝になりたい」

太平洋戦争に従軍した心優しい理髪師・清水豊松が米軍捕虜殺害の容疑で逮捕され、BC級戦犯として死刑に処せられる不条理の悲劇を描いた『私は貝になりたい』は、日本のテレビドラマ史を語る上で欠かせない橋本忍脚本の反戦ドラマ。橋本自身が脚本をリライトした2008年の映画版では、物語後半、豊松の妻・房江が夫の助命嘆願の署名を集めるために奔走する”道行き”のシークエンスが大変に印象的だったが、上映時間にして実に15分近くを占める”道行き”のシークエンスのために、久石は格調高い独奏ヴァイオリンを用いたワルツを作曲し、四季折々の美しい風景の中でじっくり描かれる夫婦愛を見事に表現していた。本盤では、そのシークエンスの音楽〈汐見岬~愛しさ~〉と〈メインテーマ〉を中心に、ヴァイオリンとオーケストラのためのコンチェルティーノ(小協奏曲)として発展させたもの。ヴァイオリンがワルツ主題を導入する主部と、ヴァイオリンが重音奏法を駆使する〈判決〉の激しい中間部、そしてワルツ主題が回帰する再現部の三部形式で構成されている。

 

交響幻想曲「かぐや姫の物語」

『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『魔女の宅急便』で音楽演出を務めた高畑勲監督が、久石に初めてスコアを依頼した『かぐや姫の物語』は、実に12年もの製作期間を費やした高畑監督のライフワークというべき大作。言わずと知れた日本最古の文学『竹取物語』を高畑監督独自の解釈で映画化しているが、久石は五音音階を基調とする音楽をはじめ、前衛的なクラスター音、西洋の楽器で東洋的な世界観を表現するマーラー流の方法論、さらには久石の真骨頂というべき、エスニック・サウンドまで多種多様な音楽語法を投入し、高畑監督の世界観を見事に表現してみせた。古来より”赫映姫”とも”輝夜姫”とも記されてきたヒロインの光り輝く姿を表現するため、チェレスタやグロッケンシュピールといった金属系の楽器を多用しているのも本作の大きな特長のひとつで、今回の組曲版ではそうした楽器のメタリカルな響きが、よりいっそう有機的な形でオーケストラの中に溶け込んでいる。組曲としての音楽性を優先させるため、本編のストーリーの順序に縛られない構成となっているのは、『風立ちぬ』の《第2組曲》と同様である。

最初の〈はじまり〉ではピッコロが「なよたけのテーマ」を、チェレスタが高畑監督作曲の「わらべ唄」をそれぞれ導入し、きらびやかな〈月の不思議〉のセクションをはさんだ後、マーラー風の〈生きる喜び〉が東洋的な生命賛歌を歌い上げる。その後、〈春のめぐり〉の8分の6拍子の音楽となり、永遠に繰り返しを続けるようなピアノの三和音の上で、チェロが心に沁み入る旋律を歌う。

曲想が一転すると、怒りと悲しみを込めた衝撃的な不協和音が響き渡る〈絶望〉となるが、今回の組曲版ではミニマル的な展開部分が新たに加わり、重厚かつエモーショナルなオーケストラが壮大なクライマックスを築き上げる。

〈絶望〉の激しい感情が鎮まると、かぐや姫と捨丸が手を携えて飛行する場面の〈飛翔〉となり、幸福感に満ち溢れたオーケストラが〈生きる喜び〉のテーマを美しく展開する。そしてサンバを元に発想したという〈天人の音楽〉となるが、ここで久石はケルト、アジア、アフリカなど様々な民族音楽の要素を掛け合わせ、いわば”究極のエスニック”と呼ぶべき彼岸の音楽を書き上げているが、それをスタンダードなオーケストラで見事に表現している。

最後の〈月〉では「なよたけのテーマ」や「わらべ唄」など主要テーマが再現され、後ろ髪を引かれるようにコーダで全曲が閉じられる。

 

小さいおうち

『東京家族』に続き、久石が山田洋次監督作のスコアを担当した第2作。激動の昭和を生き抜いた元女中・タキの回想録に綴られた、中流家庭の奥方・時子の道ならぬ恋。その彼女たちが暮らした”小さいおうち”の人間模様と迫り来る戦争の足音、そして彼女たちを襲った東京大空襲の悲劇を描いた作品である。久石は、セリフを重視する山田監督の演出に配慮するため、本編用のスコアでは特徴的な音色を持つ楽器(ダルシマーなど)を効果的に用いていたが、本盤に聴かれる演奏はギター、アコーディオン、マンドリンを用いた新しいオーケストレーションを施し、同じ昭和という時代を描いた『風立ちぬ』と世界観の統一を図っている。

全体の構成は、久石のソロ・ピアノによる序奏に続き、タキが象徴する激動の昭和を表現した「運命のテーマ」、そして時子が象徴する昭和ロマンを表現した「時子のワルツ」となっている。

(解説 「WORKS IV」ライナーノーツより 筆:前島秀国)

 

 

「実は昨年の暮れ、東京と大阪で行った第9コンサートでも《風立ちぬ》は演奏している。それなのに何故もう一度書き直しをするのかというと、今ひとつ気に入らなかった、しっくりこない、など要は腑に落ちなかったからだ。これは演奏の問題ではなく(演奏者は素晴らしかった)あくまで作品の構成あるいはオーケストレーションの問題だ。」

「昨年のときには映画のストーリーに即し、できるだけオリジナルスコアに忠実に約16分の組曲にしたのだが、やはり映画音楽はセリフや効果音との兼ね合いもあって、かなり薄いオーケストレーションになっている。まあ清涼な響きと言えなくもないけど、なんだかこじんまりしている。そこで今回、もう一度演奏するならストーリーの流れに関係なく音楽的に構成し、必要な音は総て書くと決めて改訂版を作る作業を始めたのだが、なんと23分の楽曲になって別曲状態になってしまった。そこで後に混乱しないようにタイトルも第2組曲とした。」

Blog. 「クラシック プレミアム 9 ~ベートーヴェン2~」(CDマガジン) レビュー より抜粋)

 

 

 

Related page: 《WORKS IV》 Special

 

 

 

久石譲 WORKS IV -Dream of W.D.O.-

バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲
1. 旅路(夢中飛行)~菜穂子(出会い)
2. カプローニ(設計家の夢)
3. 隼班~隼
4. 旅路(結婚)
5. 避難
6. 菜穂子(会いたくて)~カストルプ(魔の山)
7. 菜穂子(めぐりあい)
8. 旅路(夢の王国)
9. Kiki’s Delivery Service for Orchestra (2014)
10. ヴァイオリンとオーケストラのための「私は貝になりたい」
交響幻想曲「かぐや姫の物語」
11. はじまり~月の不思議
12. 生きる喜び~春のめぐり
13. 絶望
14. 飛翔
15. 天人の音楽~別離~月
16. 小さいおうち

※初回プレス限定 スペシャルパッケージ スリーブケース仕様

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Conducted:Joe Hisaishi
Performed:New Japan Philharmonic World Dream Orchestra
Concert Master:Yasushi Toyoshima

Solo Violin:Yasushi Toyoshima (Track 10)
Piano:Joe Hisahisi (Track 1-8 ,16)

Balalaika & Mandlin:Tadashi Aoyama (Track 1-8 ,16)
Bayan & Accordion:Hirofumi Mizuno , Tomomi Ota (Track1-8 ,16)
Guitar:Masayuki Chiyo (Track 1-8 ,16)

Recorded at Suntory Hall , Tokyo (9th August , 2014)
Sumida Triphony Hall , Tokyo (10th August , 2014)

Mixed at Bunkamura Studio

Recording & Mixing Engineer:Suminobu Hamada

 

WORKS IV: Dream of W.D.O.

“The Wind Rises” Suite No. 2 (for Balalaika, Bayan, Guitar and Small Orchestra)
1.A Journey (A Dream of Flight) ~ Nahoko (The Encounter)
2.Caproni (An Aeronautical Designer’s Dream)
3.The Falcon Project ~ The Falcon
4.A Journey (The Wedding)
5.The Refuge
6.Nahoko (I Miss You) ~ Castorp (The Magic Mountain)
7.Nahoko (An Unexpected Meeting)
8. A Journey (A Kingdom of Dreams)

9.Kiki’s Delivery Service for Orchestra

10.I’d Rather Be a Shellfish (For Violin and Orchestra)

Symphonic Fantasy “The Tale of the Princess Kaguya”
11.Overture ~ Mystery of the Moon
12.The Joy of Living ~ The Coming of Spring
13.Despair
14.Flying
15.The Procession of Celestial Beings ~ The Parting ~ Moon 

16.The Little House

 

Info. 2014/10/08 久石譲 「WORKS IV -Dream of W.D.O.-」 CD発売

約9年ぶりのWORKSシリーズ第4弾!! 根強い人気を誇るシリーズ『WORKS』。

収録曲には、2013年の久石のワークスから「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」「小さいおうち」と3巨匠の作品をメインに据え、未だ音源化されていなかった「私は貝になりたい」と「Kiki’s Delivery Service for Orchestra (2014)」が収められています。いずれも音楽的な「作品」として新たにオーケストレーションし直した魅力あふれる楽曲たちがラインナップ。 “Info. 2014/10/08 久石譲 「WORKS IV -Dream of W.D.O.-」 CD発売” の続きを読む

Info. 2014/10/07 [WEB] 「REAL SOUND」 久石譲 ロング・インタビュー掲載

REAL SOUNDに久石の新作「WORKS IV」のロング・インタビューが掲載されました。
「久石譲が語るエンタメの未来」

記事はこちらからご覧いただけます>>>
リアルサウンド 久石譲、エンタテインメントとクラシックの未来を語る「人に聴いてもらうことは何より大事」

(久石譲オフィサルサイト より)

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Blog. 「クラシック プレミアム 20 ~ラフマニノフ~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/10/06

「クラシックプレミアム」第20巻はラフマニノフです。

最近でいうとフィギュア・スケートの浅田真央選手の演技でも使われ、その他いろいろなシーンで誰しも聴いたことのあるピアノ協奏曲 第2番。そしてこちらも有名な《ヴォカリーズ》は、今号ではピアノをメインとした編曲となっています。いずれの曲も名盤です。

 

【収録曲】
ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
ベルナルト・ハイティンク指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音/1984年

パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
ペーテル・ヤブロンスキー(ピアノ)
ヴラディーミル・アシュケナージ指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1991年

《ヴォカリーズ》 作品34の14
編曲:ゾルターン・コチシュ
ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
録音/2004年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第20回は、音楽と視覚と聴覚の問題

指揮者や演奏家の場合の、譜面を読み取り(視覚)、演奏する(聴覚)ことや、譜面を読んで頭の中で音を鳴らすということなどが、自身の指揮者としての体験やコンサート活動の話も交えながら綴られています。

聴覚を失ったベートーヴェンがどのようにその後も作曲活動をしてきたのか、頭で組み立てる、頭で鳴らすことの可能性とその大変さ。あとは映画音楽作曲家ならではの例も紹介されていました。視覚と聴覚、映像と音楽、について。

一部抜粋してご紹介します。

 

「とにかく想像を絶することだが、頭で音楽を組み立てることができる可能性はある。もちろん多くの作曲家や僕などは頭で組み立てはするが実際ピアノで音を確かめるか、コンピューターでシミュレーションしたりする。それなのに実際のオーケストラでレコーディング、あるいはコンサートのとき、考えたのとは違う音がする場合もある。つまり考えたとおりではないのだ。ちょっと情けないのだが、だからこそ面白いのである。」

「それにマーラーをはじめ多くの作曲家が初演時にかなり手を入れて修正している事実を考えれば、それほど悲観することではないのかもしれない。またベートーヴェン自身も耳が聞こえないながらもピアノに向かって作曲していたらしいので、実際は弦を打つハンマーの振動や微かに水中で聞こえるようなくぐもった音として聞こえていた可能性はある。いずれにせよ、今日のクラシック音楽の世界では譜面を読む視覚的なことと聴覚の連携は欠かせないのだが、ピアニストの辻井伸行さんのように聴覚が視覚をも補って余りある、素晴らしい音楽家もいる。まさに天才と言うしかない。」

「要は、耳、あるいは眼から入った情報をいかに脳で変換するかということだが、実はこの耳からと眼からの情報は微妙な違いを脳にもたらす。場合によってはまったく別の情報を脳にもたらすこともある。」

「一つ例を挙げよう。映画の音楽を作っているとき、1秒24コマあるのだが、その24分の1秒までぴったり映像に音楽を合わせたとしよう。こういう場合は室内から屋外に画面が切り替わるとき、あるいは突然泥棒に襲われたとき、フーテンの寅さんがいきなりお店に帰ってきたときなど多々考えられるのだが、そのときに音楽も変えるか、衝撃を与えようとしたとする。すると必ず音楽が先に鳴ったと感じる。つまり画面と同時に音楽を、物理的には(24分の1秒まで)ぴったり合わせたはずなのに音楽が先行して聞こえる。どうです?面白いでしょう。これは眼から入る情報と耳から入る情報が脳に伝わるときに生じる時間的なずれからきているのだが、紙面が尽きた。続きは次回に。」

 

 

そうなんですね。まったく知りませんでした、というか意識していませんでした。それではジブリ作品、とりわけ「ラピュタ」「トトロ」などで聴かれる、映像シーンと完全にシンクロさせた久石譲の音作り。あれってどんぴしゃ合っているように聴こえていたつもりでしたが。これもまた音楽が先行して聞こえるのでしょうか。

それとも、上のような”視覚と聴覚の時間的ずれ”を熟知したうえで、さらに緻密にずらして、”合っている”ように聴かせているのでしょうか。

映像音楽といってもほんとに奥が深いんですね。それこそこういう作曲家自身から語られない限り、受け手としては純粋にそういうものだと受け入れてしまうことも、水面下のいろいろな制作過程があるという。

今後またお気に入りのジブリ作品でも見て、映像と音楽のシンクロを確認してみようと思います。

 

クラシックプレミアム 20 ラフマニノフ

 

Info. 2014/10/05 [ラジオ] TBS「進藤晶子のBelieve in」 久石譲 出演

進藤晶子さんがパーソナリティを務めるTBSのラジオ番組「Believe in」に出演いたしました。久石がいま大切にしている2つの「言葉」をテーマに、最近の活動や新譜「WORKS IV -Dream of W.D.O.-」などについて楽しいトークが繰り広げられました。オンエアは2週連続です。お楽しみください。

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Info. 2014/10/04 [雑誌] 「考える人 2014年秋号」 久石譲インタビュー掲載

2014年10月4日 発売
雑誌「考える人 2014年秋号」(新潮社)

【特集】「オーケストラをつくろう」にて、久石譲の7ページにおよぶインタビュー掲載。

内容紹介
————————————————————
【特集】
オーケストラをつくろう

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Blog. 「久石譲 presents ミュージック・フューチャー Vol.1」 コンサート・パンフレットより

Posted 2014/10/02

先日久石譲が新しいコンサート・シリーズ企画として始動した「ミュージック・フューチャー Vol.1」 が開催されました。これまでの久石譲作品コンサートとも、クラシック企画コンサートとも一線を画した新しい試みのコンサート企画です。ズバリ、現代音楽中心の構成です。

 

 

まずはセットリストから。

久石譲プレゼンツ「ミュージック・フューチャー vol.1」

[公演期間]
2014/9/29

[公演回数]
1公演(東京・よみうり大手町ホール)

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
ヴァイオリン:近藤薫 / 森岡聡 ヴィオラ:中村洋乃理 チェロ:向井航
マリンバ:神谷百子 / 和田光世
Future Orchestra 他

[曲目]
久石譲:弦楽四重奏 第1番 “Escher” ※世界初演
第1楽章「Encounter」
第2楽章「Phosphorescent Sea」
第3楽章「Metamorphosis」
第4楽章「Other World」
ヘンリク・グレツキ:あるポーランド女性(ポルカ)のための小レクイエム

– interval – (休憩)

久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas ※世界初演
アルヴォ・ペルト:スンマ、弦楽四重奏のための
アルヴォ・ペルト:鏡の中の鏡
ニコ・ミューリー:Seeing is Believing

 

 

今回のコンサートではアンコールはなかったようですが、それでも通常のコンサートとは一味違うとても贅沢な空間だったようです。なによりもアンサンブルのレベルが高く、500席という小規模ホールにて至福の音楽を堪能できる内容。

久石譲作品である「弦楽四重奏 第1番 “Escher”」「Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas」久石譲ピアノ参加はなく、アンサンブル演奏となっています。アルヴォ・ペルト「鏡の中の鏡」はピアノ&チェロ版での演奏、こちらは久石譲によるピアノです。

Future Orchestra(14名)と名づけられたこのためだけの楽器編成もあり、弦楽四重奏やマリンバだけでなく、小編成でありながらも、フルートやクラリネットなど管楽器も加わった大所帯なアコースティック・コンサート。

 

コンサート・プログラムには作曲家ニコ・ミューリーからのコメントも寄せられ、今回のコンサートとシリーズ化への期待が高まります。なによりも、世界初演となった久石譲作品の2曲、今後ますますお披露目の機会が増えるのか、CD作品として発表されるのか、期待しながら目が離せません。

今回のコンサートレポートは、当日コンサートに行かれた方からの貴重な情報をもとにまとめさせていただきました。至福の音楽空間、うやらましい限りです。ありがとうございました。

 

 

【曲目解説】

久石譲(1950-)
弦楽四重奏曲第1番「Escher」(世界初演)
2012年に東京で開催された「フェルメール 光の王国展」のために久石が書き下ろした室内楽曲《Vermeer & Escher》から4曲を選び、弦楽四重奏曲として新たに構成・再作曲した作品。久石は作曲活動の初期から、画家マウリッツ・エッシャーのだまし絵〈錯視絵〉がもたらす錯視効果と、ミニマル特有のズレがもたらす錯聴効果の類似性に強い感心をいだき、「だまし絵」をタイトルとする楽曲を発表している。エッシャーの版画さながらに線的なラインで構成された弦楽四重奏が、久石ミニマルのエッセンスを凝縮して表現した作品。

第1楽章「Encounter」
冒頭のユニゾンで提示される主題を基にした、ユーモアにあふれるズレの遊戯。

第2楽章「Phosphorescent Sea」
グリッサンドの弦の波、それに夜のミステリアスな音楽で表現された「燐光を発する海」の情景。

第3楽章「Metamorphosis」
厳格かつ対位法的な音楽で表現される、ズレの「変容」の過程。

第4楽章「Other World」
13/8拍子という珍しい拍子を持ち、オクターヴを特徴とする反復音形が中心となる終楽章。オリジナル版では、全音階の人懐こいモティーフが静かに登場した後に、コーダを迎えるが、今回の弦楽四重奏版ではそのモティーフを中心とする新たなクライマックスが築き上げられるなど、大幅な改訂が加えられている。

 

Shaking Anxiety and Dreamy Globe  for 2 Marimbas (世界初演)
原曲は2台のギターのために書かれたHakujiギターフェスタ委嘱作《Shaking Anxiety and Dreamy Globe》(2012年8月19日、荘村清志と福田進一により初演)。曲名は、アメリカの詩人ラッセル・エドソン(1935-2014)が生命の宿る瞬間を表現した一節に由来する。躍動感あふれるミニマルの反復と複雑な変拍子を用いた原曲の構成を踏襲しながら、今回の新版ではマリンバの第1奏者がグロッケンシュピールを、第2奏者がヴィブラフォンを兼ねることで、より多彩な音色を獲得している。「dolente(悲しみを込めて)」と記された第208小節からのセクションでは、繊細かつ清麗な響きを奏でるグロッケンとヴィブラフォンがききどころ。

 

ヘンリク・グレツキ(1933-2010)
あるポーランド女性(ポルカ)のための小レクエイム(1993)
《交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」》の大ヒット後にグレツキが発表した作品だが、具体的に誰を追悼したレクイエム(鎮魂歌)なのか、作曲者はいかなる解説も残していない。ドイツ語の原題《Kleines Requiem Für eine Polka》に含まれる”eine Polka”は、民俗舞曲”ポルカ”とも、あるいは”1人のポーランド女性”とも解釈できるので、おそらくダブルミーニングを狙ったものと推測される。1993年6月12日、ラインベルト・デ・レーヴ指揮シェーンベルク・アンサンブルによりアムステルダムで初演。

第1楽章「Tranquillo」
弔鐘が厳かに響く中、ピアノとヴァイオリンが慰めに満ちた主題を導入する。突如として悲しみが絶頂に達し、再びピアノとヴァイオリンの静かな音楽に回帰する。

第2楽章「Allegro impetuoso-marcatissimo」
ピアノが打楽器的にリズムを刻む中、管弦楽が強迫的な主題を反復する。トランペットが悲痛な叫びをあげた後、クラリネット、ホルン、ピアノによる葬送音楽と弦楽のコーダが続く。

第3楽章「Allegro-deciso assai」
ブラックユーモアにあふれたポルカ風の舞曲。管弦楽が、何かにとり憑かれたように舞曲を踊り続ける。

第4楽章「Adagio cantabile」
弔鐘が再び鳴り、安堵の満ちた祈りの音楽で全曲が閉じられる。

 

アルヴォ・ペルト(1935-)
スンマ、弦楽四重奏のために(1977/1991)
「スンマ」とは”大全”の意。もともとはラテン語の信仰宣言(クレド)を歌詞に用いた無伴奏混声四部合唱曲として作曲された。本日演奏されるのは、ペルトがクロノス・クァルテットのために編曲した弦楽四重奏版。参考までに、原曲の歌詞の冒頭部分の大意を掲載する。
「我は唯一の神を信ず/全能の父にして、天と地の創造主、見えるものと見えざるものすべての創造主を/我は唯一の主、イエス・キリストをを信ず/神のひとり子にして、世に先駆けて父よりお生まれになった主を/神の中の神、光の中の光、まことの神の中のまことの神/作られずしてお生まれになり、父なる神と一体となり/すべては主によりて作られた」(訳:前島秀国)

 

鏡の中の鏡(1978)
ペルトが故国エストニアから西側に亡命する直前に書いた作品。それまでの西洋音楽の調性システムと機能和声に頼らず、鏡の響きを思わせる三和音からメロディとハーモニーを定義し直したティンティナブリ様式(鈴鳴り様式、鐘鳴り様式)と呼ばれる作曲技法で作曲されている。原曲はヴァイオリンとピアノのための二重奏で、指揮者/ヴァイオリニストのウラディーミル・スピヴァコフに献呈された。聴く者の心を安らかにする三和音が微妙に色合いを変えながら、合わせ鏡のような無限のイメージを生み出していく。今回の演奏ではチェロとピアノの二重奏版を使用。

 

ニコ・ミューリー(1981-)
Seeing Is Believing(2007) (日本初演)
曲名は「百聞は一見に如かず」の意。通常の4弦ヴァイオリンより2弦多い、6弦エレクトリック・ヴァイオリンがループペダル(ループマシーン、ルーパー)をを使って自己の演奏音を反復再生するという特殊なテクニックが用いられている。作曲者自身の解説によれば、空に点々と浮かぶ星々を線をつないで星図を描いていくように、エレクトリック・ヴァイオリンがオーケストラという”空”の中で”星図”を描いていく作品で、1980年代に制作された科学教育ビデオの伴奏音楽を意識しながら作曲したという。2008年1月7日、トーマス・グールド(独奏ヴァイオリン)とニコラス・コロン指揮オーロラ・オーケストラによりロンドンにて初演。

TEXT:前島秀国 (サウンド&ヴィジュアル・ライター)

(【曲目解説】 ~コンサート・パンフレットより)

 

 

オリジナル作品「Vermeer & Escher」
久石譲 『フェルメール&エッシャー』

「Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas」
和訳「揺れ動く感情と夢の形態」
※コンサート内での久石譲コメントより

 

 

2014年夏に開催された「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014」そのパンフレットに収められた久石譲インタビューを紹介します。

 

ABOUT
MUSIC FUTURE

日本を代表する作曲家、久石譲が最先端の現代の音楽を紹介するコンサートを仕掛ける。

「欧米に比べ、日本では現代の音楽が演奏される機会が極めて限られている。難解、取っつきにくいというイメージでとらえられてしまうのがネックとなっているようだが、本当にそうなのだろうか。現代に書かれた優れた音楽を紹介することで、そういった先入観を変えるきっっかけにしたい」

そんな思いが発端となった。「1回限りの公演ではなく、現代の音楽に触れられる場としてシリーズ化したい」と構想が膨らみ、その第1弾がついに実現する。

初回は久石自身のルーツと言えるミニマル音楽に焦点を合わせる。国立音楽大学時代、テリー・ライリーやスティーヴ・ライヒらが作り出した最小限の音楽を繰り返すミニマル音楽に、「何だこれは」と衝撃を受けた。1981年のデビュー・アルバム「MKWAJU」はこのスタイルを踏襲している。壮麗な映画音楽で大成功を収めた後も、「Shoot The Violist」(2000)や「Minima_Rhythm」(2009)など、ミニマル色の強いアルバムを出してきた。「折に触れて自分の原点を突き詰めたいという欲求が湧いてくる」のだという。

「現代音楽が生んだスタイルの中で、ミニマル音楽は、ポピュラーを含めその後の音楽に最も大きな影響を与えてきたと言えるんじゃないでしょうか。今回取り上げる作曲家にもはっきりその痕跡が刻まれている」

エストニアのアルヴォ・ペルトやポーランドのヘンリク・グレツキはミニマルとともに教会音楽からの影響が色濃い。「戻るべき伝統と精神的よりどころを持つ彼らヨーロッパの作曲家には羨望を覚える」と語る。ペルト作《鏡の中の鏡》では、久石がピアノを演奏する。両巨匠に加え、30代のニコ・ミューリーも取り上げる。「映画音楽もオペラも、ビョークと共演するなど、ジャンルの壁を感じさせない活動は共感できる。まさにポスト・クラシカルの新星だ」と評する。

自作曲も披露する。オランダの画家、マウリッツ・エッシャーのだまし絵をイメージした《弦楽四重奏曲 第1番「Escher」》と、「エモーショナルなミニマル音楽」だという《Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2Marimbas》で、いずれも世界初演となる。「この2曲を収録したアルバムも作りたい」と意欲を見せている。

(コンサートパンフレットより)

 

 

PROFILE of COMPOSERS
作曲家 プロフィール

ヘンリク・グレツキ(1933-2010)
ポーランド・チェルニツァ生まれ。小学校教師を勤めながらカトヴィツェ音楽院で作曲を学び、パリでシュトックハウゼンやブーレーズらの前衛音楽の影響を受ける。その後、ペンデレツキと並ぶポーランドきっての現代作曲家として頭角を現すが、1970年代に入ると伝統的な調性音楽に回帰し、反復語法を用いた宗教色の強い作品を作曲するようになった。15世紀ポーランドの哀歌とゲシュタポ収容所に書き残された言葉を歌詞に用いた《交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」》(1976)は、作曲から16年を経た1992年に突如として大ブレイク。全英ポップスチャート第6位、ビルボード・クラシック・チャート38週連続第1位にランクインし、数百万枚とも言われる現代音楽史上空前のCDセールスを記録した。ペルト、ジョン・タヴナーらと共にホーリー・ミニマリズム(聖なるミニマリズム)を代表する作曲家のひとり。遺作は今年4月ロンドンで初演された、グレツキの反復音楽の集大成というべき《交響曲第4番「タンスマンのエピソード」》(2010)。

アルヴォ・ペルト(1935-)
エストニア・パイデ生まれ。エストニア放送のサウンド・プロデューサーを努めるかたわら、先鋭的な現代音楽を禁じられていた旧ソ連支配下のエストニアで前衛作品を発表。70年代に入ると作曲に行き詰まりを感じ、創作活動を中断してロシア正教に改宗。中世・ルネサンス期の聖歌や古楽を学びながら伝統に回帰し、70年代後半からティンティナブリ様式と呼ばれる作曲技法で西洋音楽のあり方を問い直す。80年代に入ると、スティーヴ・ライヒやフィリップ・グラスらのアメリカン・ミニマル・ミュージックと共通する反復語法が注目を集めるようになり、現在ではホーリー・ミニマリズムを代表する作曲家とみなされている。クラシック、オペラ、バレエ演奏のデータベースサイト「Backtrack.com」の統計によれば、ペルトは2013年に最も多く演奏された現役作曲家第1位(現役第2位はジェームズ・マクミラン、現役第3位はジョン・ウィリアムズ)にランクイン。過去の作曲家も含めた演奏回数ランキング(第1位モーツァルト、第2位ベートーヴェン、第3位バッハ)では、ペルトは第38位にランクインしている。

ニコ・ミューリー(1981-)
バーモント州生まれ。コロンビア大学とジュリアード音楽院で学び、ジョン・コリリアーノに作曲を師事した後、フィリップ・グラスのアシスタントを務める。2006年にはビョークから直接の依頼を受け、DVDシングル『Oceania』のピアノ・アレンジを担当。翌年には名プロデューサー、ヴァルケイル・シグルズソン率いるBedroom Communityレーベルからデビューアルバム『Speaks Volumes』を発表し、ポスト・クラシカルの新しい才能として一躍脚光を浴びる。2011年にはメトロポリタン・オペラから作曲委嘱を受けたオペラ《Two Boys》を初演するなど、いまアメリカで最も注目を集めている若手作曲家のひとり。映画音楽での代表作に『愛を読むひと』(2008)や『キル・ユア・ダーリン』(2013、DVD公開)など。ザ・ナショナル、オーラヴル・アルナイズ、ヒラリー・ハーンなど、同世代のアーティストとのコラボも多い。

(作曲家プロフィール ~コンサート・パンフレットより)

 

 

上記紹介した久石譲インタビューにもあるように、長い歴史の久石譲音楽活動において原点とも言えるミニマル・ミュージックは、年代ごとにその代表作を発表してきていることがわかります。

エンターテイメント音楽としての映画音楽やCM音楽のかたわら、自身のルーツや音楽性、そのバランスをとるかのように、芸術性の高いオリジナル作品(とりわけミニマル音楽も色濃く反映)を発表しています。

2015年の久石譲の音楽活動、その方向性を導くかのうような今企画。このミュージック・フューチャーが布石となるのでしょうか。新しい幕開けへと、確証はないですが勝手に胸踊っています。

 

最後に、YOMIURI ONLINEが掲載したコンサートレポートのご紹介と、コンサートの模様をおさめた貴重な写真です。

こちら ⇒ 久石譲がコンサート…“現代の音楽”ナビゲート 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

「ミュージック・フューチャー Vol.1」に関する久石譲関連ページや、アルヴォ・ペルト作品を動画視聴で紹介したページなどは、下記ご参照ください。

 

久石譲 ミュージック・フューチャー Vol.1

 

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