Blog. 久石譲 2013-2014 年末年始コンサートレポート (オフィシャルブログより)

Posted on 2014/1/28

ようやく久石譲オフィシャルサイトのスタッフブログにて2013年12月から2014年1月に行われた久石譲のコンサートレポートがそれぞれアップされていました。

セットリストや詳細など、やはりオフィシャルの情報がより精度が高いですのでこうやって少し遅れてでも?!情報を公開していただけるとうれしいかぎりです。

 

まずは2013年12月に東京・大阪にて開催された「久石譲 第九スペシャル」です。どちらも演奏曲目はすでに紹介していますが、公式スタッフブログでは、ゲネプロ(リハーサル)写真や、コンサート過程での出来事、本番の様子まで紹介してくれています。

余談ですが、冒頭を飾った「Orbis」、もしかしたら発表された「メロディフォニー」(2010年)から少し改訂されているかも、という実際にコンサートに行った方からの情報もありました。

 

そして2014年の幕開け、最初のコンサートとなったのはなんと海外。台湾・台北でのクラシック・コンサート ベートーヴェン・プログラムだったのですが、まったく情報が少なく。スタッフブログでとても細かく紹介されていました。

 

今回新しく知った情報としては、

  • 「5th Dimension」が今公演のために中間部などの緻密なアレンジが行われ改訂初演となったこと
  • 「Kiki’s Delivery Service」(魔女の宅急便)も今公演の編成に合わせて書き直されたこと

ふたつの楽曲で改訂初演だったという、贅沢な内容だったようです。

 

Joe Hisaishi Beethoven Concert 台北NSOコンサート

[公演期間]
2014/1/11

[公演回数]
1公演 国家音楽ホール National Concert Hall (台北市)

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:國家交響樂團 Orchestra: National Symphony Orchestra
ピアノ:孫悅兒 (ソン・ヨルム)

[曲目]
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番変ホ長調 作品73「皇帝」  ピアノ奏者:孫悅兒
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 作品67「運命」
藤澤守(久石譲):5th Dimension ※改訂初演

—アンコール—-
Kiki’s Delivery Service (映画『魔女の宅急便』より) ※改訂初演

 

また公式スタッフブログでは、2014年久石譲台北コンサートのリハーサル風景や会場ホール写真、本番の様子や写真、公演後の共演者との写真などなど、盛りだくさんで紹介されていますので、ぜひそちらものぞいてみてください。

こちら ⇒ 久石譲オフィシャルサイト スタッフブログ

 

2013年~2014年の年末年始にかけて怒涛のコンサートだったわけですが、これからは「本業の作曲家モードにシフトチェンジ」と書かれて、スタッフブログは締めくくられていました。

2014年、今年のこれからの活動が楽しみです。またコンサート開催情報などが入手できましたら、随時このサイトにてご紹介してきます。写真は国家音楽ホール(台北市)のホール写真です。

 

Related page:

 

国家音楽ホール 台北 久石譲コンサート

 

Blog. 映画「小さいおうち」 山田洋次監督×久石譲 レコーディング風景動画 / 音楽試聴

Posted on 2014/1/27

いよいよ映画『小さいおうち』が公開されました。2013年公開の映画『東京家族』にて山田洋次監督との初タッグを果たし今作『小さいおうち』でも続けて音楽を担当しているのが久石譲です。

 

山田洋次監督との仕事はとても貴重だったようで、前作『東京家族』の音楽制作をきっかけに、”映画音楽に対する向き合い方も変化があった”、と久石譲本人も各方面で語っています。

具体的には、

  • オーケストラなどで音楽が主張をすることをひかえたつくり方
  • 空気のような音楽、雰囲気を邪魔しない音楽、芝居や映画と共存する音楽
  • 小編成にシンプルに、おさえるけれど、ただうすいだけにならないつくり方
  • 登場人物や観客の気持ちを煽るような音楽をつけない
  • より映画にコミットするかたちで音楽をつける

 

“今まではどうしても映画音楽としても主張してしまう自分がいたけれど、その力みがなくなった” といつかのインタビューでも語っています。たしかにこれまでの作品は「映像と音楽が対等にある」つくり方だったのかもしれません。決してそれが悪いわけではなく、そのおけげで誕生した名曲はたくさんあります。

2013年は『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』『東京家族』などが公開されましたが、宮崎駿監督、高畑勲監督、山田洋次監督、すべて日本映画界を代表する巨匠との仕事であり、そこから新しい創造力や刺激を受けたことも多かったんだと思います。

そしてまた、3監督とも公開したそれぞれの映画作品に対しての「音楽に求めるもの」が近かったのもあると思います。

 

宮崎駿監督作品でいえば、いつもはファンタジー作品ですので、それにはやはり壮大なフルオーケストラ・サウンドが合います。

しかし『風立ちぬ』は、ファンタジーではない、よりリアリティのある作品だったため、宮崎駿監督も音楽制作に対してこういったオーダーをしています。”音楽はできるだけ、そぎ落としたシンプルなものを”、高畑勲監督もしかりで、そのあたりの詳細は、数あるインタビュー記事で紹介しています。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー 熱風より

 

 

映画『小さいおうち』制作期間にあたる2013年8月に行われたレコーディング。音楽収録での久石譲インタビュー内容です。

久石 「基本的にはメーンとなるテーマ曲は2つなんです。その時代を生きてきたタキのテーマみたいなものと、もうひとつは意表をつくようなワルツ調の曲。深い根拠はないんですが、直感みたいなもので、ある種の軽やかさが出たらいいなと思ったんです。守りに入るよりは、こちらも冒険させてもらったんですが、それが結果的に良い形になればいいなと思っています。」

 

赤い屋根の小さな家で働く女中・タキの目線を通し、昭和から平成へと激動の時代を生き抜いてきたタキの自身のテーマでもある “運命のテーマ” と、アコーディオンの甘美なメロディが印象的な “ワルツのテーマ” を主軸に構成。昭和モダンのノスタルジックな雰囲気が満載のサウンドトラックになっています。

楽器でいうと、印象的なアコーディオンのほかに、ハンマー・ダルシマーという「ピアノの先祖」とも言われる楽器が使われています。

 

また山田洋次監督 x 久石譲 レコーディング風景動画も公開されています。
貴重なメイキング映像です。

movie collection jp YouTube

 

この4分弱の映像のなかで、山田洋次監督がどのような思いを込めて楽器やメロディを選んでいるか、久石氏とどのようにコミュニケーションをとっているのかが感じられます。この動画のラストには久石譲による生ピアノ演奏のおまけ付きです!(詳細は動画を見てのお楽しみということで)

 

 

映画『小さいおうち』に関する、音楽制作の裏側と言いますか、音楽が完成するまでの背景や過程、そういったバックボーンを一気にご紹介しました。

どんなメロディーが生まれるのか?
どんな楽器で奏でられるのか?
どんな音楽世界をつくりあげるのか?

そういったことが、山田洋次監督だけでなく、過去(2013年)作品である、宮崎駿監督や高畑勲監督などのと仕事を通じて、垣間見える瞬間となっています。

結構なボリュームになってしまいましたが、上のレコディーング風景動画やサウンドトラック試聴は、オフィシャル公開ですので、ぜひご覧ください。

そして、本文中や下部にも、関連記事を紹介、まとめていますので、気になった方はそちらもぜひのぞいてみてください。”今の久石譲音楽” と ”これから生まれるであろう久石譲音楽” の道しるべです。

 

Related page:

 

小さいおうち 音楽レコーディング風景動画

 

Info. 2014/01/25 山田洋次監督 映画「小さいおうち」 音楽:久石譲 公開スタート

2013年公開「東京家族」につづいて、久石譲が音楽を担当した、山田洋次監督 最新作 映画「小さいおうち」が1月25日より公開スタート。中島京子さんのベストセラー小説『小さいおうち』の映画化。赤い屋根の小さな家の小さな秘密をめぐるノスタルジックな物語。

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Blog. 久石譲 2014年 日/米 アカデミー賞 ノミネート まとめ

Posted on 2014/1/25

アカデミー賞の時期になってきました。そして本家アメリカの第86回アカデミー賞と第37回日本アカデミー賞とふたつありますので、ごっちゃになってしまいます。一般的には米アカデミー賞はハリウッド映画、日本アカデミー賞は邦画が、それぞれ中心にノミネート、受賞となるので区別できるのですが。

なにぶん今回は、2013年公開作品がジブリ・メモリアル・イヤーだっただけに宮崎駿監督 映画『風立ちぬ』と高畑勲監督 映画『かぐや姫の物語』があるため、日/米アカデミー賞をまたいでノミネートされていてごっちゃになっているわけです。久石譲にとってもこの2作品に関わっているため同じことが言えます。

というわけで、久石譲 に関連する アカデミー賞 および 日本アカデミー賞 のノミネートをまとめてみたいと思います。

 

【第86回 アカデミー賞】

まずは2013年12月12日に、こんな一報が入ってきたわけです。
映画「風立ちぬ」 アカデミー賞作曲賞に出品 久石譲候補入り

久石譲はこれまでにアカデミー賞にノミネートされたことはありません。日本人で言うと、第39回(1966年度)でノミネートされた『天地創造』の黛敏郎と、第60回(1987年度)で受賞した『ラストエンペラー』の坂本龍一だけです。

この審査対象の候補作品は114本あり、候補者にはハンス・ジマー、ジョン・ウィリアムズ、ランディ・ニューマンといった常連も含まれていました。

そして。2014年1月16日、ノミネート作品が発表されたのですが、…映画「『風立ちぬ』のアカデミー賞作曲賞はノミネートを逃してしまいました。日本人3人目の快挙に期待がかかっていたのですが、非常に残念です。

ちなみに。
第86回アカデミー賞 作曲賞にノミネートされたのは以下5作品です。

  • ジョン・ウィリアムズ 『やさしい本泥棒』
  • スティーヴン・プライス 『ゼロ・グラビティ』
  • ウィリアム・バトラー、オーウェン・パレット 『her/世界でひとつの彼女』
  • アレクサンドル・デスプラ 『あなたを抱きしめる日まで』
  • トーマス・ニューマン 『ウォルト・ディズニーの約束』

やはり常連もいますが、『ゼロ・グラビティ』のスティーヴン・プライスなんかは新鋭ですね。

 

ノミネート作品が発表された同日、映画『風立ちぬ』はアカデミー賞 長編アニメーション賞にノミネートされました。宮崎監督作品はこれまでに、2003年(第75回)に『千と千尋の神隠し』が長編アニメーション映画部門賞を受賞、2006年(第78回)に『ハウルの動く城』が同部門にノミネートされていて、今回でノミネートは3度目で8年ぶりです。もし同部門賞の受賞となれば11年ぶりとなり、こちらは期待が高まります。

アカデミー賞作曲賞ノミネートは逃したものの、映画『風立ちぬ』がノミネートされましたので、アニメーション賞 受賞を期待です!

 

【第37回 日本アカデミー賞】

こちらはてんこ盛りです。

優秀作品賞に久石譲が音楽を担当した映画『東京家族』がノミネートされています。山田洋次監督50周年記念作品にして初タッグとなった記念すべき作品です。

ちなみに今月1月25日からは、最新作『小さいおうち』が公開されいます。こちらも山田洋次監督と2作目となる音楽担当です。つい先日公開に先がけて「小さいおうち オリジナル・サウンドトラック」も発売されています。

次に、優秀アニメーション作品賞にジブリ巨匠の2作品が。宮崎駿監督 映画『風立ちぬ』と高畑勲監督 映画『かぐや姫の物語』がノミネートされています。どちらが受賞するのか、どちらも受賞してほしいような、複雑な気持ちもありますが。久石譲もこの2作品のどちらも音楽を担当していますし高畑勲監督とは約30年の付き合いにして初タッグとなった作品です。

この「優秀作品賞」と「優秀アニメーション作品賞」のノミネートを象徴するように、なんと!優秀音楽賞には、久石譲が3作品ノミネートされています。『東京家族』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』です。これはすごい!

 

久石譲 『東京家族 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『風立ちぬ サウンドトラック』

かぐや姫の物語 サウンドトラック

 

もちろん他の候補者、他の作品の音楽賞ノミネートもありますが(下記参照)久石譲がこの3作品のどの作品で「最優秀音楽賞」を受賞するのだろうか?!と今からワクワクしてしまいます。

 

 

少しさかのぼりますと、第34回日本アカデミー賞では「最優秀音楽賞」を 映画『悪人』で久石譲 受賞しています。

第32回日本アカデミー賞では「優秀音楽賞」に久石譲が2作品ノミネートされました。宮崎駿監督 映画『崖の上のポニョ』と滝田洋二郎監督 映画『おくりびと』です。そして『崖の上のポニョ』で「最優秀音楽賞」を受賞しています。

 

脱線しながらも、今年の日/米アカデミー賞の久石譲関連をまとめました。

※最後にもう一度まとめています

もちろん『東京家族』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』、それぞれの作品に関連した各受賞ノミネートは他にもたくさんあります。俳優賞、監督賞、脚本賞、照明賞などなど。あくまでも “久石譲”がメインである「音楽賞」と、主要な作品賞のみを抜粋しました。

ノミネート一覧は下記ご参照ください。
公式サイト:日本アカデミー賞

アカデミー賞も日本アカデミー賞も、最優秀賞の発表は3月です。どちらも今から楽しみですね。

 

 

☆まとめ☆

第86回 アカデミー賞 (ノミネート発表:1月16日 授賞式:3月2日)

□長編アニメ映画賞 ノミネート作品

  • 『クルードさんちのはじめての冒険』
  • 『怪盗グルーのミニオン危機一発』
  • 『アーネストとセレスティーヌ』
  • 『アナと雪の女王』
  • 『風立ちぬ』

公式サイト:WOWOW「第86回アカデミー賞受賞式」公式サイト
関連サイト:第86回アカデミー賞 ノミネート一覧

 

第37回 日本アカデミー賞(ノミネート発表:1月16日 授賞式:3月7日)

□優秀作品賞 ノミネート作品

  • 『凶悪』
  • 『少年H』
  • 『そして父になる』
  • 『東京家族』
  • 『舟を編む』
  • 『利休にたずねよ』

□優秀アニメーション作品賞 ノミネート作品

  • 『かぐや姫の物語』
  • 『風立ちぬ』
  • 『キャプテンハーロック』
  • 『劇場版魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』
  • 『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』

□優秀音楽賞 ノミネート作品

  • 岩代太郎 (利休にたずねよ)
  • 荻野清子 (清須会議)
  • 久石 譲 (かぐや姫の物語)
  • 久石 譲 (風立ちぬ)
  • 久石 譲 (東京家族)
  • 松本淳一/森 敬/松原 毅 (そして父になる)
  • 渡邊 崇 (舟を編む)

公式サイト:日本アカデミー賞

 

 

☆おまけ☆

映画「風立ちぬ」 これまでの受賞一覧(2014年1月現在)

  • 2013年興行収入No.1 120億円突破
  • 第34回ボストン映画批評家協会賞 受賞
  • 第85回ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞(米国映画批評会議賞) アニメーション映画賞 受賞
  • 第80回ニューヨーク映画批評家協会賞 「最優秀アニメーション賞」 受賞

Related page:

 

アカデミー賞 2014 受賞 ノミネート

 

Info. 2014/01/24 第37回日本アカデミー賞 スタジオジブリ2作品「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」

1月16日、日本アカデミー賞協会は、2013年に公開された映画のなかから優秀作品やそのスタッフ、出演者を顕彰する第37回日本アカデミー賞の優秀首各賞を発表した。優秀アニメーション作品賞も、5作品が決定した。

2013年にアニメ映画はヒット作や話題作が多かっただけに、どれもが昨年大きな注目を浴びた作品ばかりになっている。アニメ映画の快進撃を十分に伝わる5作品となっている。

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Info. 2014/01/24 久石譲 第37回日本アカデミー賞 優秀音楽賞に3作品選ばれる

1月16日、日本アカデミー賞協会は、2013年に公開された映画のなかから優秀作品やそのスタッフ、出演者を顕彰する第37回日本アカデミー賞の優秀首各賞を発表した。

優秀音楽賞にて久石譲が3作品選ばれている。

  • 岩代太郎 (利休にたずねよ)
  • 荻野清子 (清須会議)
  • 久石 譲 (かぐや姫の物語)
  • 久石 譲 (風立ちぬ)
  • 久石 譲 (東京家族)
  • 松本淳一/森 敬/松原 毅 (そして父になる)
  • 渡邊 崇 (舟を編む)

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Info. 2014/01/24 映画「風立ちぬ」 第86回アカデミー賞 長編アニメーション賞 ノミネート

第86回アカデミー賞の各賞候補が現地時間16日、米ロサンゼルスで発表され、スタジオジブリの宮崎駿監督『風立ちぬ』が長編アニメーション賞にノミネートを果たした。

宮崎監督作品はこれまでに、2003年(第75回)に『千と千尋の神隠し』が長編アニメーション映画部門賞を受賞、2006年(第78回)に『ハウルの動く城』が同部門にノミネートされており、今回でノミネートは3度目で8年ぶり。もし同部門賞の受賞となれば11年ぶりとなる。ノミネートにあたり宮崎監督は、以下のコメントを発表している。

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Info. 2014/01/24 久石譲 米アカデミー賞作曲賞に惜しくもノミネートならず 【第86回アカデミー賞】

現地時間16日、第86回アカデミー賞のノミネーションが発表されたが、映画『風立ちぬ』で作曲賞の審査対象に選ばれていた久石譲は惜しくもノミネートを逃した。

久石譲が音楽を手掛けた『風立ちぬ』は、昨年12月に発表された同部門の審査対象114作品に選出。これまで同部門にノミネートされた日本人は、1967年に『天地創造』で候補になった故・黛敏郎さん、1988年に『ラストエンペラー』で同賞を受賞した坂本龍一のみで、日本人3人目の快挙に期待がかかっていた。

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Disc. 久石譲 『小さいおうち オリジナル・サウンドトラック』

小さいおうち 久石譲

2014年1月22日 CD発売 UMCK-1472

 

2014年公開 映画「小さいおうち」
監督:山田洋次 音楽:久石譲 出演:松たか子 他

 

 

インタビュー

-今回の『小さいおうち』は、前回にも増して音楽の曲数が多いと思いました。

久石:
単純に、本編の内容から出てくる違いです。『東京家族』は非常にシリアスな内容の作品でしたので、音楽を少なめにした方がよいという判断がありました。それに対し、『小さいおうち』はラブストーリー的な側面が強い作品ですから、音楽も当然増えてきます。山田監督からも「今回は音楽を多くしたい」という要望をいただきました。それと、「非常に甘みのあるメロディが欲しい」という要望も。

-それが、冒頭の火葬場で流れてくるメインテーマですね。

久石:
本編全体を見てみると、最初はタキの葬儀の場面から始まり、ラストシーンもタキがある重要な役割を果たしています。平成から激動の昭和へ、たとえ物語の時空が自由に飛んだとしても、タキの”目線”だけは変わらない。そのタキの”目線”のテーマ、わかりやすく言えば、タキの”運命のテーマ”です。ただし、そのメインテーマだけだと音楽全体が非常に重くなってしまうので、もう1曲、別のテーマを作曲しました。

-アコーディオンで演奏されるワルツのテーマですね。

久石:
こういう作品にワルツが似合うかどうかはともかく、結果的には、ワルツによって”昭和という時代に対する憧れ”や、”小さいおうちの住人に対する憧れ”を表現できたのでは、と思っています。昭和ロマンに憧れるワルツ、という意味では、松たか子さん演ずる”時子のワルツ”と呼んでよいのかもしれません。その”時子のワルツ”と、メインとなるタキの”運命のテーマ”のデモ2曲を最初に作曲したところ、山田監督から早々にOKをいただきました。

Blog. 映画『小さいおうち』(2014) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

「基本的にはメーンとなるテーマ曲は2つなんです。その時代を生きてきたタキのテーマみたいなものと、もうひとつは意表をつくようなワルツ調の曲。深い根拠はないんですが、直感みたいなもので、ある種の軽やかさが出たらいいなと思ったんです。守りに入るよりは、こちらも冒険させてもらったんですが、それが結果的に良い形になればいいなと思っています。」

Info. 2013/08/10 山田洋次監督最新作「小さいおうち」 久石譲音楽レコーディング より抜粋)

 

 

赤い屋根の小さな家で働く女中・タキの目線を通し、昭和から平成へと激動の時代を生き抜いてきたタキの自身のテーマでもある“運命のテーマ”と、アコーディオンの甘美なメロディが印象的な“ワルツのテーマ”を主軸に構成。昭和モダンのノスタルジックな雰囲気が満載のサウンドトラック。

2つのテーマにより構成されたサウンドトラックは、
”運命のテーマ” (1) (2) (3) (5) (8) (10) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21)
”時子のワルツ” (4) (6) (7) (9) (11) (12)

”運命のテーマ”はときにピアノの単音で、ときにフルートやオーボエの木管で、ときに弦楽やピッツィカートで、ギターなども加わりとてもシンプルなアコースティックサウンド。シンプルなというか極限まで削ぎ落としたメロディと言っていい。

”時子のワルツ”はアコーディオンの旋律が特徴的だが、こちらもトラックごとに、ピッツィカートや木管編成、ピアノにより構成されている。

エンドクレジットにあたる(22)は、この主要な2つのテーマが、”運命のテーマ”から”時子のワルツ”へと引き継がれ幕をとじる。その(22)を除く、すべての楽曲が1-2分程度の長さであり、サウンドトラック全体としても30分程の音楽となっている。

ここで注目すべきは、映画本編2時間として音楽が約半分以下の時間しか流れていないということ、まさに山田洋次監督がオーダーした”空気のような音楽”ということである。

久石譲はセリフを重視する山田監督の演出に配慮するため、本編用のスコアでは特徴的な音色を持つ楽器(ダルシマーなど)を効果的に用いている。ハンマー・ダルシマーは「ピアノの先祖」とも言われる楽器である。

しかしながら、主要テーマのどちらもメロディの長さは短くも、とても印象的で、記憶に残らない耳に残らないということは決してない。これこそが久石譲のメロディの強さであり、かつ効果的にモチーフを2つに絞り込んで、あらゆるバリエーションで効果的な楽器編成で配置した結果といえる。

 

この後、久石譲「WORKS IV」にて、フルオーケストラ用にオーケストレーション、メインテーマ(22)は、楽曲構成はほぼ同じとしながらも、ギター、アコーディオン、マンドリンが加わり、サウンドトラックにはないオーケストラの華やかさと優雅さに磨きがかかっている。ひかえめながらも力強い華麗な輪舞曲(ロンド)に仕上がっている。全体の構成は、久石のソロ・ピアノによる序奏に続き、タキが象徴する激動の昭和を表現した「運命のテーマ」、そして時子が象徴する昭和ロマンを表現した「時子のワルツ」となっている。

 

 

映画「東京家族」につづく山田洋次監督とのタッグは久石譲にも大きな変化をもたらしている。具体的には、別項にて紹介しているが、一部抜き出すと下記とおり。

 

  • オーケストラなどで音楽が主張をすることをひかえたつくり方
  • 空気のような音楽、雰囲気を邪魔しない音楽、芝居や映画と共存する音楽
  • 小編成にシンプルに、おさえるけれど、ただうすいだけにならないつくり方
  • 登場人物や観客の気持ちを煽るような音楽をつけない
  • より映画にコミットするかたちで音楽をつける

“今まではどうしても映画音楽としても主張してしまう自分がいたけれど、その力みがなくなった”といつかのインタビューでも語っている。

 

 

 

 

今後の久石譲映画音楽制作の分岐点になるであろう作品である。

 

 

小さいおうち 久石譲

1. プロローグ
2. 僕のおばあちゃん
3. 上京
4. 赤い屋根のおうち
5. 昭和
6. タキと時子
7. 雨の日も風の日も
8. 南京陥落
9. 師走
10. 正治と恭一
11. 嵐の夜
12. タキの幸せ
13. 本当の所
14. タキの悲しみ
15. 開戦
16. 事件
17. 別れ
18. 手紙
19. B29
20. イタクラ・ショージ記念館
21. 時効
22. 小さいおうち

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by Joe Hisaishi (Track 1,11,20)
Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute: Hideyo Takakuwa
Oboe & E.Horn: Satoshi SHoji
Clarinet: Kimio Yamane
Bassoon: Masao Osawa
Guitar: Masayoshi Furukawa
Hammered Dulcimer: Keiko Tachieda
Accordion: Hirofumi Mizuno, Patrick Nugier
Percussion: Marie Oishi
Harp: Yuko Taguchi
Piano & Celesta: Ryota Suzuki
Strings: Manabe Strings

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio
Recording & Mixing Engineer: Suminobu Hamada
Manipulator: Yasuhiro Maeda(Wonder City Inc.)