Disc. 久石譲 『Dolls オリジナル・サウンドトラック』

2002年10月2日 CD発売 UPCH-1191
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9010

 

2002年公開 映画「Dolls」
監督:北野武 音楽:久石譲 出演:菅野美穂 西島秀俊 他

 

北野武監督10作品目、久石譲が音楽を手がけた北野武映画7作目。そしてこの映画を最後に北野武と久石譲のタッグはない。

 

 

シンセサイザーの神秘的な響きとピアノを基調としたシンプルな構成。ほぼメロディといえるような旋律はないなかで、かくも絵画的な印象を与える世界。久石譲音楽のなかでも異色な作品といえるが、その完成度は素晴らしく、新しい境地を切り拓いたともいえる作品。

サウンドトラックとしても30分にも満たないが、まさに循環音楽、ずっとエンドレスで聴いていたくなる力がある。(1) (3) (5)は映画のメインテーマともいえるモチーフのバリエーション。そして(4)はピアノ・ソロで、美しすぎる名曲である。癒される、心が洗われる、涙がでる、心にしみる、それを超えた言葉として形容しがたい音楽が込められている。

主張がない映画と同じく、主張しない音楽を貫いているが、かといって印象に残らないわけではない、芯のある音楽。主張しない音楽が薄っぺらい安い音楽になっていないのは久石譲の巨匠たるゆえんだろう。

日本の四季を美しく表現した映画本編と同じく、この音楽にも日本の美、四季の美しさ、そして儚さがある。神秘的であり叙情的でありポエムのような音楽。絵画的な音楽ということは、起承転結がない。封じ込められた一瞬の世界、時間軸のない世界。だからこそその瞬間が永遠につづくのである。これこそがこの作品の極意といえる。

日本を象徴する風景が桜や紅葉とするならば、そのような美に共鳴する音楽こそがこの作品だろう。

 

 

久石譲 『Dolls』

1. 桜 – SAKURA –
2. 白 – PURE WHITE –
3. 捩 – MAD –
4. 感 – FEEL –
5. 人形 – DOLLS –

All Music Composed, Arranged, Produced and Performed by Joe Hisaishi

Recording Studio:Wonder Station

M-5:Asian Samples Courtesy of Spectrasonics “Heart of Asia”

 

“Disc. 久石譲 『Dolls オリジナル・サウンドトラック』” への2件の返信

  1. これは、本当に異色作ですね。でも最近、何か妙に心に引っかかってよく聴いてます♪絞り出した5曲という感じ(笑)
    この映画音楽製作のエピソードで、北野武による「たけし」という本の中で北野監督が下記のように語っているので、よっぽど苦労したみたいです(^^;)

    「Dolls」のときにね、それまでものすごくうまくいってた関係が、ちょっとぎくしゃくしちゃったんだよね。映画にぴたっとくる音楽が見つけられなくてね。
    久石さんのアレンジが映像を歪曲して見せるような気がしたり、そうかと思うと、俺の撮ったシーンが久石さんの音楽の風味を落とすような、そんな妙な感じがして。結局は、ある時点であきらめて、映画の中で流れてる音楽を選んだんだけど、俺も久石さんも満足とは言えなかったんだよ。
    編集段階でもまだ音楽の問題は解決できてなかった。で、そのあたりから俺と久石さんはすごく対立するようになってさ。でも、ときにはヒートしてもいいって思ってたよ。言い合うことでいいものが生まれるってわかってるからね。

    1. 貴重なエピソードの詳細ありがとうございます♪いいサントラですけどね♪

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