Posted on 2015/9/10
クラシックプレミアム第44巻は、ヤナーチェクとバルトークです。
いろいよ終盤は近代に突入しています。
【収録曲】
ヤナーチェク
《シンフォニエッタ》
クラウディオ・アバド指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1987年
バルトーク
管弦楽のための協奏曲 Sz.116
サー・ゲオルグ・ショルティ指揮
シカゴ交響楽団
録音/1980年
《ルーマニア民俗舞曲》 Sz.68
エルネスト・アンセルメ指揮
スイス・ロマンド管弦楽団
録音/1964年
「久石譲の音楽的日乗」 ルポルダージュ
久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015 リハーサルを取材
今号では久石譲によるエッセイ(音楽講義?)はお休みです。
ルポルタージュとして、8月に開催されたW.D.O.コンサートの、クラシックプレミアム編集部によるルポルタージュとなっています。前年(W.D.O. 2014)のルポルタージュにつづき今年も。うれしい限りです。
こちら ⇒ Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014」 クラシックプレミアム編集部 ルポルタージュ
ルポルタージュでは、普段わからない舞台裏が垣間見れることが一番です。2日間のリハーサル風景や、楽曲が仕上がっていく過程が、たっぷりと語られています。今年はどんな舞台裏だったのでしょうか。
昨年に続いて、久石譲と新日本フィルハーモニー交響楽団による「ワールド・ドリーム・オーケストラ」のコンサートが8月に開催。今年は8年ぶりの全国ツアーで、大阪(8月5日)を皮切りに、広島(6日)、東京(8日・9日)、名古屋(12日)、仙台(13日)をめぐる。そのリハーサル(3日・4日)のようすを編集部が取材した。
今回の「ワールド・ドリーム・オーケストラ」のプログラムは、久石さんが昨年から構想を練り、ぎりぎりまで検討したプログラムだという。それは戦後70年の大きな節目の年に行う「ワールド・ドリーム・オーケストラ」に、特別の想いを込めていることの表れなのだろう。その結果、すべて自作品で構成され、その大半が世界初演だ。ツアーでめぐる都市に広島や仙台があることからも想いの強さが伺える。
挨拶をしようとリハーサル直前の楽屋に向かう。中へ招じられるとそこには楽譜に向かって集中している久石さんの背中が見えた。気安く声をかけられるような雰囲気ではない。が、一瞬の後、くるりと振り向くと笑顔だ。
【15時 リハーサル開始 セッション①】
演奏会は2部構成で、第1部は、久石さんのピアノとチューブラー・ベルと弦楽合奏による《祈りのうた》に始まり、4楽章からなる交響作品《The End of The World》、続けて1962年に発表されたスタンダードナンバー《The End of the World》(邦題「この世の果てまで」)を久石さんが再構成した作品で終わる。
リハーサルの最初は大曲《The End of The World》第1楽章だ(リハーサルでは曲の楽器の編成等で演奏の順を決める)。その冒頭から久石さんの指示が飛びリズムの刻み方のこまかいニュアンスを伝えていく。このリズムは曲全体を覆うことになる重要なモティーフなのだ。指示される前と後の演奏を比べると、アクセントの置き方の微妙な違いで、これほど表情が変わるのかと驚く。巨大な音の魂が押し寄せてくるような楽章だ。この《The End of The World》の原曲は、2008年、久石さんが「9.11」に衝撃を受けて作曲した作品なのだ。
第2楽章は、中東風のメロディーを歌うチェロのソロとティンパニの応答で始まる。濃厚でエキゾティックな香り。やがてアルト・サクソフォーンのソロでジャズ風の展開となり、オーケストラ全体がスウィングしてくる。それを先導して久石さん自身がスウィングしている。身体全体からリズムが溢れているようだ。16時15分に休憩。
【16時35分~17時45分 セッション②】
久石さんのピアノとオーケストラによる《紅の豚》から始まる。これは第2部で演奏される曲。そしてテレビCMで聴きなれた《Dream More》。メロディーは聴きなれた曲だが、久石さんの新たな書き下ろしによる豊饒な響きのオーケストラ作品になっている。速い分散和音の繰り返しを異なる楽器で分けて受け持つという離れ業を聴かせる。それが楽器を変えながらメロディーを支えていくのだが、ぴたりとリズムが合う時の爽快感は格別だ。1時間の食事休憩。
【18時45分~19時45分 セッション③】
ここからオーケストラに混声合唱とカウンターテナーが加わる。《Symphonic Poem “NAUSICCÄ” 2015》は、映画『風の谷のナウシカ』の音楽を演奏会用の作品として発表してきたもののいわば集大成ともいえる交響詩。演奏会では第2部の冒頭に演奏される。破壊と再生の叙事詩が、レクイエムのディエス・イレ(怒りの日)や壮大なフーガ、低弦が唸る不気味な音、清澄な女声合唱などで綴られていく。そして《The End of The World》の第3楽章。カウンターテナーの高橋淳さんの深く強靭な声が印象的だ。
【20時~21時 セッション④】
引き続き、オーケストラと混声合唱とカウンターテナー。《The End of The World》の壮大な第4楽章。次いで久石さん再構成版《The End of the World》で、オーケストラと混声合唱にカウンターテナーという珍しい組み合わせなのだが、心に強く訴えてくるものがある。そしてこの日の最後に《祈りのうた》。久石さんのピアノとチューブラー・ベルの応答に弦楽合奏が加わる静謐な音楽だ。今回の演奏会が、この曲から始まる意味は大きい。
翌日の4日のリハーサルにも顔を出した。前日と同じ《The End of The World》の第1楽章から始まる。するとオーケストラの音がまったく違う。音は厚く豊かになり、複雑なリズムもソリッドになっている。たった1日のリハーサルでここまで仕上がるのかと驚く。休憩時に垣間見た久石さんの表情も高揚したなかに確信がみなぎっていた。21時までリハーサルが続き、そのまま大阪入りするのだという。いよいよツアーが始まる。
(クラシックプレミアム 第44巻 より)
2日間にわたる濃厚なリハーサルだったようです。2日間ぶっ通しではあるものの、2日間で仕上げる集中力は、久石譲も新日本フィルも、さすがはプロだなと感嘆します。
さて、今年2015年の一大イベントとなった「W.D.O.2015」ですが、コンサート・レポートや、公式パンフレット内久石譲インタビューなど、興味のある方はそちらもぜひご覧ください。
そしてその歴史の1ページを刻んだコンサートの、WOWOW放送も日にちが迫ってきました。
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