Posted on 2015/10/17
久石譲の過去のコンサートから。「PIANO STORIES ’98 Orchestra Night」のコンサート・パンフレットにて特集された、「交響組曲 もののけ姫」のレコーディング日誌。
Making in Czech 「交響組曲 もののけ姫」
スラヴ色の強い音。
「もののけ姫」のメロディに合う、土の匂いのする音。
それを求めた「交響組曲 もののけ姫」のレコーディングで、
すでに100年を超える歴史と東欧独特の響きを持つ、
チェコ・フェルハーモニーとのセッションが実現した。
6月6日
昨日、20時間かけてプラハへ到着。今年は異常気象とのことで、6月というのに30度を超える暑さだ。今日は市民会館の中にあるスメタナホールでピアノのリハーサル。調律UPが予定より延びたため、有名な火薬塔に通じる部屋などを案内してもらう。
リハーサル後はレコーディング会場である「芸術家の家」内のドヴォルザークホールを下見。ホール内で手でたたいてみると、まっすぐな残響が続く。低音のにごりもなく、やわらかくて繊細な、実にきれいな響きだ。
6月7日
録音初日。前の仕事が押して指揮者のマリオ・クレメンス氏の到着が遅れたため、夜からのスタート。録音曲順の打合せ後、「レクイエム」から収録。チェコ・フィルのパターンとして、各セクションに1名ずつ補強メンバーが加わり、弦5部64名、木管12名、金管18名、打楽器4名、ハープ2名というとても厚い編成だ。緊張の中、1曲目をスムーズに録り終え、続いて「アシタカせっ記」。確かなテクニックと重厚な音質が東欧のイメージを醸し出す。指揮のマリオ氏も、久石さんの音楽を楽しんでいるようだ。スタッフ一同、満足のうちに初日終了。
6月8日
午前9:30よりセッションスタート。「TA・TA・RI・GAMI」から。事前に打合せていたチャンチキと〆太鼓(日本から持参)を、初めてにもかかわらず打楽器奏者が上手く演奏してくれた。セッションの雰囲気はしだいに盛り上がり、「シシ神の森」、休憩をはさんで「黄泉の世界」「旅立ち」と4曲を無事、録りおえた。それにしても、団員たちの譜読みの速さには驚かされる。当日セットされたばかりのパート譜で一度合わせを行い、二度目からリハーサルテイクになるが、非常に完成度の高い安定した演奏なので、最良のテイクがまとめられた。
6月9日
レコーディング最終日。「アシタカとサン」「もののけ姫」の収録で、久石さんのピアノとチェコ・フィルとのセッションが実現。美しいピアノの音とオーケストラとが一体となってホールいっぱいに響きわたり、最終日にふさわしい高揚感のうちにアルバム「交響組曲もののけ姫」のレコーディングを終了。
指揮者のマリオ氏、団員たちからスタンディングで拍手をおくられた。夜、世界一といわれるボヘミアのビールで乾杯。明日は日本でのマスタリング作業のため帰国する。
↑ スメタナホールでのピアノリハーサル
(久石譲 PIANO STORIES ’98 Orchestra Night コンサート・パンフレットより)
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