Posted on 2016/6/15
2001年公開 映画「Quartet カルテット」
監督・音楽:久石譲 出演:袴田吉彦 桜井幸子 大森南朋 久木田薫 他
久石譲第1回監督作品です。脚本も共同で手がけ、もちろん音楽も久石譲による書き下ろし。映画タイトル「カルテット」とあるとおり、弦楽四重奏をベースとした青春ストーリーで音楽もクラシカルな弦楽四重奏をベースに構成されていますが、フルオーケストラや、シンセサイザーを織り交ぜた楽曲、久石譲ピアノによる演奏などバラエティ豊かな楽曲群です。
『Quartet オリジナル・サウンドトラック』 / 久石譲
2001.9.27 Release
日本初の本格的音楽映画、劇中使用曲フル・バージョン収録、ボーナス・トラックにリミックス・バージョン収録した映画サウンドトラック盤です。ロンドンにて一流弦楽四重奏団バラネスク・カルテットとそれらを録音しています。当初古典クラシック音楽を使用することも検討していた久石譲が、やはり自身のオリジナル曲で攻めたいとし、それならばと古典と自作を併用するのではなく、全曲オリジナルで書き下ろされた楽曲たちです。
既存のクラシック音楽の使用も構想していたこともあり、楽曲によっては、モーツァルトの「ディベルティメント」、パガニーニの「カプリース24」からイメージされるような楽想をもった楽曲も盛り込まれています。「となりのトトロ」~「HANA-BI」~「KIDS RETURN」というおなじみの楽曲たちも弦楽四重奏メドレーで収録されているのもうれしいところ。久石譲による楽曲解説もCDライナーノーツには記載されていますので、より具体的に理解できると思います。
Disc. 久石譲 『Quartet オリジナル・サウンドトラック』
『久石譲セレクテッド・カルテット・クラシックス』 / オムニバス
2001.9.27 Release
サウンドトラック盤と同日発売されたこちらのCDは、久石譲が自らセレクトした弦楽四重奏曲のコンピレーション・アルバムです。
「音楽を志した頃から、弦楽四重奏というものは当然あるべきスタイルとして頭にありました。カルテットというのは、基本的にはクラシック音楽のエッセンスだという気持ちがすごく強いんです。例えばベートーヴェンの作曲の仕方を見ていても、それぞれの時期、時代にまずピアノ・ソナタで新しい方法にチャレンジする、それをオーケストラでうんと拡大してその時期の自分のスタイルを確立して、最後に必ず弦楽四重奏を書くんですよ。それによってある時代の自分の音楽のアプローチというものに必ず区切りをつけていきます。ピアノでまずチャレンジ、オケで拡大、最後にカルテットでその時期をまとめるという繰り返しです。」
「ベートーヴェンにとってカルテットはどのくらいの重さがあったんだろうか、と作曲家として考えることがよくありました。我々が作曲を勉強する時に和声学という勉強をします。和声学はソプラノ、アルト、テナー、バスという4声体を基準にして音楽を作るんです。そうすると実は弦楽四重奏はそれと全く同じ形式になってしまう。つまり、作曲をやる上で最初に学ぶ形態が発展したものが弦楽四重奏なんだなというのが僕の根底の考え方です。したがって、作曲家にとって弦楽四重奏に最後に行き着くというのは、それが無駄をすべて削ぎ落とした本当のエッセンスのような究極の形態であるからという気がします。」
(CDライナーノーツより)
と同作品CDライナーノーツからの久石譲コメントにもあるとおり、久石譲が映画製作時期にあらゆる古典クラシック音楽のCDを聴きスコアを研究し、そのなかから選りすぐりの弦楽四重奏楽曲がセレクトされています。
Disc. V.A. 『久石譲セレクテッド・カルテット・クラシックス』
映画『Quartet カルテット』 DVD
2002.3.25 Release
映画本編を収録したDVDです。また映像特典「プロローグ・オブ・カルテット」にて久石譲インタビューが収録されています。ちなみに映画本編でエンドロールに使用されたメインテーマ曲は、ここでしか聴くことができません。サウンドトラック盤にボーストラックとして収録されたリミックス・バージョンともまた異なるエンドロール・バージョンが収録されています。具体的には、よりシンセサイザーによるリズム打ち込みをふんだんに際立たせたバージョンになっています。
『ブラス ファンタジア I ~宮崎アニメ作品集~』 / 上野の森ブラス
1994.1.24 Release
『ブラス ファンタジア II ~宮崎アニメ作品集~』 / 上野の森ブラス
1994.2.25 Release
映画『Quartet カルテット』よりも遡ること数年前。お馴染みのジブリ名曲たちを金管アンサンブル(トランペット/チューバ/ホルン/トランペット/トロンボーン)で奏でる、そんなカバーアルバムがありました。久石譲プロデュースでも、久石譲アレンジでもないこの作品ですが、原曲の持ち味を損なわない上質でハイセンスな品のあるカバー作品でした。
どういう経緯からかはわかりませんが、実は映画本編にも登場している上野の森ブラスのメンバー。たしか神社の境内か道端かで練習している金管アンサンブルを横目に、主人公たちが歩いているというシーンだったと思います。そこで上野の森ブラスご本人たちが実演しているのが、「ハトと少年」(天空の城ラピュタ)です。本編では抜粋演奏でしたが、もちろん同楽曲・同アレンジで収録されているオリジナル版がこのCDになります。(『ブラス ファンタジア I ~宮崎アニメ作品集~』収録)
個人的には幾多あるカバー作品、つまみ聴きで終わってしまうことが多いなかで、この上野の森ブラスに関しては、CD発売当時から久石譲CDと同じようにリピートしていつも聴いていた記憶があります。例えば「遠い日々」(風の谷のナウシカ)(同 II 収録)は、あの「ラン、ランララ、ランランラン♪」の切なく美しい旋律です。この作品では中盤から長調に展開したりするのですが、金管楽器のキラキラと輝くような音色の効果もあって、光が射しこみます。そのくらいおすすめな作品です。2006年に再販され、今でも廃盤になっていないようですので、そういうことなんだろうと思います。
Disc. 上野の森ブラス 『ブラス ファンタジア I ~宮崎アニメ作品集~』
Disc. 上野の森ブラス 『ブラス ファンタジア II ~宮崎アニメ作品集~』
『ジブリ・ザ・クラシックス』 / 久木田薫
2005.3.24 Release
『Unplugged GHIBLI アンプラグド・ジブリ』 / 久木田薫
2007.12.19 Release
映画「カルテット」の主人公たちのひとり、弦楽四重奏団にてチェリストを担当していた久木田薫。当時現役音大生として抜擢され、映画本編・サウンドトラック盤でも「冬の夢」(オリジナル版「MY LOST CITY」収録)を演奏しているのが彼女です。この映画の出会いがきっかけで、 『ジブリ・ザ・クラシックス』というジブリ作品カバーCDを発売しました。スタジオジブリ映画の主題歌、挿入曲を、チェロの演奏をメインにクラシック風、タンゴ風などにアレンジ。ギター、バンドネオン、ハーモニカなど多種多彩な楽器によるアコースティック・カバー作品となっています。久石譲プロデュース、久石譲アレンジではありません。
ライト・クラシック・アルバムともいえる、上品なアコースティック・サウンドでありながら、バラエティに富んだアレンジが施されています。それによってチェロの音色としても様々な表情を感じることができます。CD発売当時からお気に入りだったのは、タンゴ風にアレンジされた情熱的な「君をのせて」、料理番組でもはじまりそうなアットホームで軽快な「となりのトトロ」(『ジブリ・ザ・クラシックス』収録)などでした。残念ながらCD作品としてはどちらも廃盤となっているようです。上野の森ブラスと同じくらい、おすすめできるカバー作品です。デジタル・ミュージック(配信音楽)としては今でも買える楽曲もあるようですので、ぜひ探してみてください。
Disc. 久木田薫 『Unplugged GHIBLI アンプラグド・ジブリ』
その他、劇場用公式パンフレットや、雑誌に掲載された久石譲ロングインタビューにて、当時の映画製作過程やエピソードなどを紐解いてみてください。とても興味深い内容です。
Blog. 映画『Quartet カルテット』(2001)監督・音楽:久石譲 劇場用パンフレットより
Blog. 久石譲 映画「カルテット」 ロングインタビュー内容 (キネマ旬報 2001年10月上旬号より)