Blog. 文春ジブリ文庫「ジブリの教科書3 となりのトトロ」 読書

Posted on 2013/10/30

2013年4月から創刊された文春ジブリ文庫。

第1弾『風の谷のナウシカ』 第2弾『天空の城ラピュタ』 につづき第3弾は『となりのトトロ』。1988年公開映画でスタジオジブリ作品の中でも最も人気のある作品のひとつ。今回も前2作品同様、あさのあつこ 中川李枝子 川上弘美など豪華執筆陣が作品の背景を解き明かしています。

背景美術を担当した男鹿和雄の世界、サツキとメイの家など、カラーページも満載です。当時の制作現場や秘蔵裏話などが編集されています。監督・プロデューサー・作画・声優・音楽・美術など、この作品に携わったプロフェッショナルなお仕事の現場が垣間見れます。既発の関連書籍からの再編集という趣きももちろんありますが、トトロの世界だけにフォーカスして広く深く読み解いています。

印象的だったのは、ラピュタのそれでも触れましたが、宮崎駿監督の制作に入る段階での企画書一文。

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中編アニメーション映画『となりのトトロ』が目指すものは、幸せな心温まる映画です。
楽しい、清々した心で家路をたどれる映画。
恋人達はいとおしさを募らせ、親達はしみじみと子供時代を想い出し、
子供達はトトロに会いたくて、神社の裏の探検や樹のぼりを始める、
そんな映画をつくりたいのです。

つい最近まで『日本が世界に誇れるものは?』との問いに、
大人も子どもも『自然と四季の美しさ』と答えていたのに、今は誰も口にしなくなりました。
(中略)
この国はそんなにみすぼらしく、夢のない所になってしまったのでしょうか。
国際時代にあって、もっともナショナルなものこそインターナショナルのものになり得ると知りながら、
なぜ日本を舞台にして楽しい素敵な映画をつくろうとしないのか。
(中略)
忘れていたもの 気づかなかったもの なくしてしまったと思い込んでいたもの
でも、それは今もあるのだと信じて、『となりのトトロ』を提案します。」
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鮮明にトトロの世界を表現している一文だと思います。楽しむ映画ではもちろんあるけれど、同時に深いなあと。今でも色褪せない、そして時代を越えて愛されつづけるだろう映画ですが、この宮崎駿監督の視点や考え方も色褪せない、普遍性がありますよね。

今の社会でも言えること、この発言が今だったとしても、なんの疑いもしないというか。『国際時代にあって、もっともナショナルなものこそインターナショナル~』この言葉は強烈ですね。これを1986年に書き記しているんですから、その重みと凄みを感じます。

その他、昭和30年代の日本食卓の視点から当時の社会背景を、はたまた「森のヌシ 森の精霊 etc」というトトロの視点から、古来の日本の神々の世界を、そしてその神々が、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』ではどう表現されたかなど、宗教哲学者がかなり濃厚に掘り下げたりしています。

“ひとつの日本” “自分が知らない日本” をいろんな角度から探求できるかもしれません。

 

 

ジブリの教科書 3 となりのトトロ

本著の表紙でもあり、公開当時の映画宣伝ポスターでもあったこの1枚の画。こんなシーンも劇中にありましたよね。

でも…何かが違う…

そう、ここに描かれているのは、さつきでもメイでもない、ひとりの女の子。有名な秘話ですが、なぜこの画があり、映画ポスターにまでそのまま使われたのか、その辺りもももちろん紹介されています。

長くなってしまうのでここでは割愛します。

これからジブリの教科書は『火垂るの墓』『魔女の宅急便』『もののけ姫』『ハウルの動く城』など、スタジオジブリ作品公開の順番ごとに、発刊が予定されています。なんと、現時点で、『崖の上のポニョ』が発刊されるのは2016年。(予定)

長期的に継続した楽しみのひとつとなりそうです。

 

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