Posted on 2013/11/3
1997年公開 スタジオジブリ作品 映画「もののけ姫」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲
構想に16年、制作に3年をかけ、自然と文明の衝突というテーマに挑んだ作品で、公開当時、映画国内歴代興行成績の記録を塗り替え1位を記録した作品です。あれから16年経った今でも、歴代5位です。
この「もののけ姫」という作品に対して、スタジオジブリ鈴木プロデューサーはこう振り返っています。
「自分のためじゃなく誰かのために戦う。子どものころから、主人公はそういうものだと思っていた。ナウシカは風の谷の500人のために戦った。だから、納得がいった。観客として、主人公に共感するのは、その一点だった。」
「しかし、「もののけ姫」の主人公、アシタカは違う。アシタカは、誰かのためじゃなく、自分のために戦った。腕に痣あざの出来たアシタカは、体良く村を追い出される。痣あざは村人たちにとって忌まわしいものだった。」
「この時期を境に、その後のヒーローたちは、自分のための戦いを繰り広げている。いま振り返ると分かることがある。「もののけ姫」のころに、大きな時代の転換点があったのだと。」
なるほどなあと思います。ヒーロー像が時代とともに変化していると。そしてそんな『大きな時代の転換点』となったのが、映画「もののけ姫」であったと。
実は音楽についても同じようなことが言えるかもしれません。「風の谷のナウシカ」から一連の宮崎アニメの音楽を担当してきた久石譲ですが、「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「紅の豚」を経て、この「もののけ姫」の音楽は、作曲家としてのひとつの転換期だったという人もいるからです。
大きく作風が変わったということではないでしょうが、それほどまでに宮崎駿監督の構想から映画完成までのエネルギーに刺激され、音楽的にもそんな監督の期待と作品の世界観に応えるべく、新しい表現方法が開花した、そういう作品なのかもしれません。まさに作品トータルとして、発表された時代として、『大きな転換点』だったのかもしれませんね。
そして、当時を振り返る、「もののけ姫」の音楽に、こんな秘話があります。
本編前半でアシタカがタタリ神の痣を負い、村を旅立つことになるシーン。その旅立ちの音楽は、当然、アシタカの複雑な心境を表現しなければいけない。宮崎駿監督は久石譲に、そう依頼したそうです。
それに対して鈴木プロデューサーは悩んだそうです。
「それでいいのだろうか。たとえそうだったとしても、ぼくは、主人公の旅立ちはいつだって、勇壮さが必要だと思った。」
そんな鈴木プロデューサーの悩みを打ち明けると、久石譲は、二曲を用意したそうです。
鈴木プロデューサーはこの時の情景を、
「そしてふたつの曲が出来あがった。いずれ劣らぬ名曲だった。さて、どっちがいいだろうか。どちらにするか決めるとき、久石譲さんがぼくに目で合図を送った。宮さんは、迷うことなく勇壮さを選んだ。」
と振り返っています。
あのアシタカの旅立ちのシーンはとても印象的に記憶に残っています。まさかこんなエピソードがあろうとは。確かに、あのシーンには『覚悟を決めた者、決意を秘めた者の強い意志』を感じますし、旅が始まる勇壮さだけでなく、『運命を背負って生きていく覚悟を決めた者』の重みも感じます。
こんな話をしていると、また映画が観たくなってしまいますね。映画「もののけ姫」は、12月ついにブルーレイ化が決定しました。
当時の空気をそのままに、そしてさらに進化した映像美と高音響が今から楽しみです。
こちら ⇒ 2013/12/04 ジブリがいっぱいCOLLECTION 「もののけ姫」 Blu-ray DVD 発売決定
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