Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014」 久石譲インタビュー内容

Posted on 2014/08/21

8月9日,10日に行われたコンサート「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014」に寄せての久石譲インタビュー内容です。

 

 

2014年7月某日。「JOE HISAISHI & WORLD DREAM ORCHESTRA 2014」を約1ヶ月後に控えるなか、久石譲はコンサートの曲順に頭を悩ませていた。

「2時間のコンサートはいわば1本の映画。それぞれ別の曲をどう並べるかで聴こえ方がまったく変わってくるんだよね。」

今年、3年ぶりに活動を再開する久石譲と新日本フィルハーモニー交響楽団によるプロジェクト「WORLD DREAM ORCHESTRA」(W.D.O)。コンサートにかける思いを聞いた。

-久々の復活ですね。

久石 「やっぱりオーケストラの奏でる音が好きだし、その魅力を伝えていくことが自分にとって大事な役目だという気持ちがずっとあったので、嬉しいですね。1998年に長野パラリンピック冬季競技大会でプロデューサーを務めた際、「Asian Dream Song」という曲が生まれて、次は”世界の夢”を目指そうと、プロジェクトが始まった2004年にW.D.O.のテーマ曲「World Dreams」を書いたのですが、当時と世界の姿が変わってきていると感じています。

一言でいうと、世界が狭くなっている。かつて世界は羽ばたける場所、あるいは夢の対象だったのが、紛争も止まず、小さな違いばかりが際立っているように感じます。だから”世界”と表現した瞬間にすごく小さなものをイメージするようになってしまっている。そういうなかで、「World Dreams」という曲のタイトルそのままに、このコンサートを通じてもう一度音楽家として夢を見られる場所として”世界”を表現したいという気持ちが強くなってきました。」

-演奏する曲目にも反映されていますか。

久石 「そうですね。前回までのW.D.O.は、世界にある素晴らしい音楽をオーケストラ作品として紹介していこうとプログラムを組んでいました。大きくその思いは変わりませんが、これからはもっと自分の曲を演奏しようと思っています。要望が多かったということもありますが、今、世界をどうとらえるかと考えた時、自分の曲をきちんと届けていくことから再開したかったんです。そこから今回のテーマと重なる楽曲が見えてきました。」

-そのテーマとは。

久石 「全体を”鎮魂”という文脈でとらえたいということです。来年戦後70周年を迎えますが、今、日本を見渡すと、なにやらきな臭いムードが漂い始めています。僕は現在を戦後ではなく戦前の雰囲気ととらえているところがあり、そういう状況を踏まえ、戦争があったことを忘れないために「鎮魂の時」というセクションを作りました。ペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」、バッハ「G線上のアリア」、そして僕の「私は貝になりたい」の3曲をつづけて演奏します。」

-「広島の犠牲者に捧げる哀歌」はプログラムの中で異彩を放っていますね。

久石 「W.D.O.は基本的にエンターテインメントにしたいのですが、根が作曲家なので、やっぱりコンサートを通じて何を伝えていくべきか考えてしまうんです。「広島の犠牲者に捧げる哀歌」はもともと「哀歌、8分26秒」というタイトルで、原爆とは関係のないものでした。しかし、この曲を聴いた日本の作曲家の助言で、現在のタイトルになったそうです。いわゆる図形楽譜の曲で、音を塊で演奏するトーンクラスターという技法をはじめ、特殊奏法が多く、日本ではあまり演奏されてきませんでした。譜面をどうとらえるか、解釈の幅が広いので、指揮者としても演奏家としても苦労しますが、これ以上ない不協和音を経て、「G線上のアリア」が始まる瞬間に何が見えるのかを想像したら、どうしても入れたくなりました。」

-一方、「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」「小さいおうち」は新しい編曲となりますね。

久石 「2013年は宮崎(駿)さん、高畑(勲)さん、山田(洋次)さんという3人の巨匠と向い合って映画を作るという非常にヘビーな年でもありました。この3作品を披露することは、今回のコンサートのもう一つの重要な要素です。いずれも”映画的”に作った曲ばかりで、台詞の邪魔をしないように構成しているため非常に音が薄いんです。それをコンサートで演奏する作品として書き直すのは、ゼロからリニューアルするのと一緒で本当に大変でした。特に「かぐや姫の物語」は昨年秋に公開されたばかりの作品で、まだそれほど時間が経っていない。自分の中でも消化しきれていない状態で作品化に取り組んだので、今までコンサート用に作品化した中で一番と言ってもいいくらい苦労しましたが、手ごたえはあります。」

-W.D.O.として今後の展望は?

久石 「まずは今回のコンサートを最高の形にして、観客の皆さんはもちろん、オーケストラのメンバーにも本当によかったと思ってもらうことが全てではないでしょうか。もちろんせっかくプロジェクトを再開したし、続けばいいなという気持ちはありますが、毎回「これが最後だ」と思って臨みたいのです。」

実は曲順で最も悩んでいたのは「World Dreams」だった。それがインタビューが終わった途端、順番が決まった。

「やっと分かった。これですっきりしたよ」

この曲がどう登場するかが、今回のコンサートの鍵といえるだろう。

(以上 コンサートパンフレットより)

 

 

なお初日の東京・サントリーホール公演の模様は9月23日(火・祝)にWOWOWでオンエアされます。

また10月8日に久石のニューアルバム「WORKS IV」がリリースされることも決定。今作には初日公演と2日目の東京・すみだトリフォニーホール公演からのライブ音源が収録される予定となってます。

 

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