Blog. 久石譲「ジブリ・ベスト ストーリーズ」はもうひとつのジブリ史

Posted on 2014/05/30

久石譲名義での初のジブリ・ベストアルバム「ジブリ・ベスト ストーリズ」が今年の3月に発売されました。

もちろん購入し何回も聴いていたのですが、そこはベスト、選曲の妙こそあれ、新鮮味にはやはり欠けるわけで。それはこれまでリアルタイムでそのジブリ映画やジブリ音楽を聴いてきたので懐かしさと改めてゆっくり聴く、といった感じでしょうか。

そういう楽しみ方や、手元においておきたいファン心理ももちろんあります。ただ、今回は本作に収められているライナーノーツの話題を。

 

久石譲本人も、この「ジブリ・ベスト ストーリーズ」発売に期して、コメントを寄せています。

『風の谷のナウシカ』の公開(1984年3月11日)から30年の節目にどういう経緯と思いでこのベストアルバムが企画され、久石譲がそれをどう受け止めているのか。

『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで、宮崎駿監督作品のなかからそれぞれの映画の印象的な楽曲が選曲され、さらにはそれはサウンドトラック盤ではなく、久石譲ソロアルバムの音源から。つまりはピアノメインの楽曲たちになっています。

そのあたりのこの「ジブリ・ベスト ストーリーズ」にあたる選曲と考察については以前のブログにまとめていますので興味のある方は。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 初ジブリベスト 宮﨑駿×久石譲 30周年 CD発売決定!

 

 

そんな個人レベルの解説と考察ではとうていおよびもしない(当たり前…)前島 秀国さんによる久石譲解説と楽曲解説が読み応え満点です!「なるほどー!」「言われてみれば!」「そういう背景だったのか!」などなど驚嘆と納得の連続でした。

  • 宮崎駿監督ジブリ映画におけるピアノ・メロディとヒロインの関係性とは?
  • 印象的な音楽を生み出す、根本的な音楽制作の出発点とは?
  • 久石譲がサウンドトラックから離れて宮崎作品をソロアルバムでリアレンジする意味とは?

このあたりのことが鋭い洞察力と説得力で記されています。

 

楽曲解説も端的に要点をずばっと書かれています。そこに発表年順(収録曲順ではなく、ソロ・アルバム発表年順)でまとめられているため、時系列で久石譲の変遷が垣間見れておもしろいです。

たとえば…

『宮崎作品のサントラ録音で初めて常設の交響楽団(東京シティ・フィル)を起用した『もののけ姫』以後、久石は大編成を用いた演奏に意欲を燃やし始める(その論理的な帰結が、2000年から始める彼の指揮活動だ)。』

『久石初の全曲ピアノソロアルバム『ENCORE』は、マイクの設置場所にミリ単位までこだわった入魂作。”破壊された世界の再生”を描く、『もののけ姫』の重要なラストにおいて、久石はそれまで鳴り続けていたオーケストラを止め、シンプルなピアノだけで希望のメロディを奏でてみせた。その意味では《風の伝説》と対をなす楽曲と言えるかもしれない。』

『~略~ 表現の奥深さを示した例のひとつが、飛行船の上でシータがパズーに不安を打ち明ける場面の《Confessions in the Moonlight》(月光の雲海)だ。空間の響きを活かした久石のピアノソロが、オリジナル版以上に《君をのせて》の旋律をしっとりと浮かび上がらせている。』

『『崖の上のポニョ』公開後にピアノ、チェロ12本、コントラバス、マリンバ、打楽器、ハープ2本という編成によるツアーと連動して録音されたアルバムから。伝統的な管弦楽法からは絶対に思いつかない発想だが、チェロのピツィカートとマリンバの倍音が生み出すユーモラスな響きは、不思議とポニョのイメージに合う。』

『2009年のアルバム『Minima_Rhythm』に続き、久石がロンドン交響楽団を指揮したアルバム、メロディフォニーから。《One Summer’s Day》(あの夏へ)と《Kiki’s Delivery Service》(海の見える街)は、それまでの日常と異なる世界──『千と千尋の神隠し』の場合は湯屋の町、『魔女の宅急便』の場合は大都会コリコ──に足を踏み入れようとするヒロインが、そこはかとなく感じる期待と不安を表現しているという点で、対をなす2曲と言えるかもしれない。しかも、《Kiki’s Delivery Service》のリアレンジでは久石のピアノソロがメロディをくっきりと演奏しており、《One Summer’s Day》のニュアンスに富んだピアノソロと見事な対照を生み出している。』

などなど

これを読んでいるだけでも、ジブリ映画ファン、ジブリ音楽ファン、久石譲ファンとしては、あのシーンが、あの音楽が、鮮やかに甦ってきてニンマリしてしまいます。そして、冒頭にも書いたように、もう何回も聴いたことのあったこの楽曲たちを、もう1回注意深く熟聴したくなってしまいます。そういう経緯もあって、最近改めてこの「ジブリ・ベスト ストーリーズ」のリピート・リピートです。

こんな洞察力と考察力があったらなーと思います。ということで、「なるほどー!」「言われてみれば!」「そういう背景だったのか!」などなど驚嘆と納得の連続だったわけです。

 

ぜひCDを手にとってみてください。レンタルや音楽配信もありますが、ライナーノーツはCDを買わないと見れません。そこがいいところだとも思っています。

また上の前島 秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)さんの解説や、久石譲のコメントなど、ライナーノーツの内容は、もう少しだけ詳しく紹介していますので、気になった方はぜひご覧ください。あくまでも抜粋ですので、最終的には…買わないと。 笑

こちら ⇒ Disc. 久石譲 『ジブリ・ベスト ストーリーズ』

 

特にファンとして個人的に思うことですが、久石譲はあまりメディアもふくめ露出も少なく、作品ごとに多くを語っていないですし、「久石譲論」のような専門家・評論家による資料や書籍もほぼないなか、とても貴重な内容でした。

どなたかこういう視点で「久石譲」を書籍としてまとめてくれたらいいのに。「宮崎駿」論や「ジブリ」論はたくさんありますしね。

 

さて、そんなこんなで、久石譲「ジブリ・ベスト ストーリーズ」は『もうひとつの30年のジブリ史』を紡いでいます。もちろん音楽で。

さて、そんなこんなで、この作品の久石譲監修 ピアノ楽譜も5月に発売されています。CDとの完全タイアップ楽譜、オリジナル・エディションです。

こちら ⇒ Score. 久石譲 「ジブリ・ベスト ストーリーズ -オリジナル・エディション-」 [ピアノ譜]

 

さて、そうこうしていたら、7月には「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」が発売されます。『風の谷のナウシカ』から2013年公開の『風立ちぬ』まで。久石譲が手掛けた宮崎駿監督映画のサウンドトラック12作品を収めた豪華BOXセットです。

こちらは正真正銘のサウンドトラック盤ですね。そして音質もオリジナル盤発売当時よりもよくなっているようです。(高音質HQCD)もちろん既発作品たちのBOXセットにはなるのですが、特典CDもついてきます。

また今回の内容と関連しますが、封入ブックレットも楽しみです。

<ブックレット>
徳間書店から発売されている各作品の「ロマンアルバム」より久石譲イタビューと、宮崎駿作品CDカタログを掲載。

とあります。「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」の詳細は

こちら ⇒ Info. 2014/07/16 「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」 発売決定!

今年の夏もジブリの夏、の予感です。

 

Related page:

 

ジブリ・ベスト ストーリーズ 久石譲 収録曲

 

Blog. 「夢と狂気の王国」 ジブリドキュメンタリー映画 鑑賞

Posted on 2014/05/27

スタジオジブリの貴重なドキュメンタリー映画「夢と狂気の王国」を鑑賞しました。

劇場公開時ももちろん映画館へ観に行ったのですが今月21日にブルーレイDVDが発売されましたのであらためてゆっくりと鑑賞しました。

一般的にはジブリの裏側であり、ジブリの日常を追った作品で、ファンなら釘付けになって観てしまう内容です。宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫という3人の王の、ささやかな日常生活のなかの言動ではあるのだけれど、とても鋭く、深く、問いをこちらに投げかけられているような、極論を言えば「働くとは?」がテーマのように思います。

またスタジオジブリの建物やそこで働く人々の内側も垣間見れてとても得した気分になります。個人的には映画の全体を包む映像美や音楽、雰因気など、大満足なドキュメンタリー映画です。

もし、映画「風立ちぬ」の制作現場などを詳しく見たい方は2013年にNHKプロフェッショナルでも特集された番組のほうがいいかもしれません。

それも来月6月にはブルーレイ/DVD化されて発売されます。

こちら ⇒ Info. 2014/06/27 「プロフェッショナル 仕事の流儀 特別編 映画監督 宮崎駿の仕事」 Blu-ray DVD 発売決定

 

そしてこのドキュメンタリー映画「夢と狂気の王国」のジャケットにあるような、宮崎駿・高畑勲・鈴木敏夫の3人の会話などを期待された方も、ちょっと残念な思いをされたかもしれません。

たしかこの作品の封入ライナーノーツにも書いてありましたが、3人が揃って会話をすることはほとんどないらしいです。ましてや、話す機会があったとしても、過去のことは一切話さない、ほとんど雑談めいたちょっとした時間のようです。

宮崎駿・高畑勲・鈴木敏夫の3人が一同に介した貴重な鼎談は、過去「文藝春秋 2014年2月号」に収録されていました。その後「映画を作りながら、考えたこと。/高畑勲」(文春ジブリ文庫)にも、同内容がそのまま収められています。かなり濃い内容で必読です。

こちら ⇒ Blog. 文藝春秋 2014年2月号 スタジオジブリ 高畑勲×宮崎駿×鈴木敏夫 鼎談

 

 

さて、映画の内容はこのくらいにして。

特典映像などあったんだ?くらい期待していなかったのですが、なんとそこにやっと久石譲が登場していました!(本編には残念ながら…)

未公開映像集が8編収録されているのですが(計約32分)そのなかに「宮崎さんと久石譲さん」というチャプターがあります。

ビックリしました!
その内容が貴重な蔵出しものです。

スタジオで宮崎駿監督・鈴木敏夫プロデューサーと一緒に、映像を見ながら音楽打ち合わせをしている風景です。ちょうど「二郎とカプローニの出会い」のシーンのところで、宮崎駿監督は、『二郎のカプローニへの思いは、尊敬と友情です。時空を超えた。』『明るく、高揚感のある感じでもいいんじゃないかなー。』などど端的に会話をしています。

そして久石譲は、隣に座っているのですが、宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーの発言を、おそらく言葉のキーワードとして、どんどんメモをとっているようなシーンでした。劇場公開よりもかなり前(おそらく1年半~2年前)の出来事じゃないかと推測します。

宮崎駿監督のジブリ映画ではいつもそうですが、まだクライマックスもわからない、映画の軸やテーマだけの段階で、音楽制作も同時進行ですから、言葉や途中段階の切り取ったシーンだけで打ち合わせをして、構想を伝え、少しずつ世界観を共有していく、巨匠2人のあうんの呼吸といったところでしょうか。

これで30年間の監督×音楽のゴールデンコンビですからね。

そして、そのレコーディング風景も収録されています。「風立ちぬ サウンドトラック」では3曲目「カプローニ(設計家の夢)」です。二郎とカプローニがはじめて夢の中で出会うシーンです。この音源がまるまる1曲、レコーディング風景として収録されています。

 

2013年の映画「風立ちぬ」公開前後には、いろいろなTV特番もありました。

こちら ⇒ Info. 2014/01/15 [TV] 「笑ってコラえて!ジブリ支局リターンズ 世界中がワンダフォーSP」 放送
こちら ⇒ Info. 2013/07/10 [TV] 笑ってコラえて!ジブリ3時間SP 放送
こちら ⇒ Info. 2013/08/10 [TV]シューイチ×風立ちぬ特集 放送

そのどの番組でも取り上げられなかった、まさに本作品のカメラだけがとらえた初お披露目な内容でした。

 

久石譲が宮崎駿監督の誕生日(1月6日)にスタジオを訪問し、ケーキを囲むなごやかなシーンも収録されていましたが、久石譲が宮崎駿監督へ誕生日に曲をプレゼントしているのはご存知ですか?これはもちろんプライベートな作品としてCD化はされていませんが、そのほとんどは三鷹の森ジブリ美術館でのみ館内BGMとして聴くことができます。

こちら ⇒ Disc. 久石譲 三鷹の森ジブリ美術館 展示室音楽 *Unreleased

 

さてそうこうしていたら、いよいよ来月6月18日には、映画「風立ちぬ」がブルーレイ/DVD発売です!

こちら ⇒ Info. 2014/06/18 ジブリがいっぱいCOLLECTION 「風立ちぬ」 Blu-ray DVD 発売

 

その他、8月くらいまでジブリ作品のブルーレイ/DVD化ラッシュです。「千と千尋の神隠し」に「ルパン三世 カリオストロの城」(これはジブリ名義ではないけれど)、「NHKプロフェッショナル 宮崎駿」に「宮﨑駿監督作品集BOX」まで。

その合間に、7月16日には、「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」も発売されますので、お見逃しなく!

こちら ⇒ Info. 2014/07/16 「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」 発売決定!

 

夢と狂気の王国 ブルーレイ

 

Blog. やっぱり久石譲のCM「伊右衛門」音楽は四季を感じます。ニューバージョンOA開始!

Posted on 2014/04/03

年度末から年度初めは忙しくも慌ただしくもある時期ですね。

今年の冬は日本各地で例年にない大雪で、寒い寒いと思っていたら、3月に入って急に暖かくなってきて桜も咲きそうだと思っていたら、もう桜の花びらは舞い散りはじめ、葉桜に。

この新年度の時期は日常生活でも環境が変わったり、いろいろな意味で新生活がはじまるタイミングです。そんななか久しぶりにTVから久石譲のサントリー伊右衛門CM音楽が流れてきました。

 

2004年のサントリー伊右衛門発売開始からCM音楽は、久石譲の「Oriental Wind」がCMバージョンごとに様々なアレンジで、そして四季折々の映像と音楽でほっとひと息できる瞬間でした。

2012年秋からは「新テーマ曲」(曲名不明)が引き継いでいたのですがこれもまたピアノとストリングのきれいな楽曲です。

 

さて、ここ最近は健康茶ブームもあってか、伊右衛門も「特茶」シリーズということで、いつもの伊右衛門シリーズとは違うCMになっていました。本木雅弘さんと宮沢りえや宮崎あおいさんによる、日本情緒ある古都京都の四季やその景色というシチュエーションからはなれて。

そんななか、この春、4月1日から、これまでのテイストの伊右衛門CMシリーズが新しくOA開始されていました。そしてそこにあの久石譲の音楽が流れていた、というわけです。また新しい曲かな?と思って聞き耳を立てていましたら、後半であのおなじみのピアノの旋律が流れてきました。

 

サントリー緑茶 伊右衛門『お茶の言葉』篇 60秒

※公開終了 2015.4現在

サントリー緑茶 伊右衛門『お茶の言葉』特別篇 120秒

※公開終了 2015.4現在

 

このCM動画はサントリー公式サイトにて視聴できますのでぜひ。
こちら ⇒ サントリーCMギャラリー ※公開終了 2015.4現在

 

このCMギャラリーを見てもわかるように、過去1年は「特茶」「特茶」です。ちなみに、右下に「過去のCMはこちら」という紹介がありますが、そこではあの「Oriental Wind」時代の伊右衛門CMも視聴することができます。

2004年の伊右衛門CM開始から、このCMギャラリーでは、約50本近くの伊右衛門CMシリーズを堪能することができます。これを観るだけで、音楽のいろいろなバージョンやバリエーションを聴くだけで、心が安らぎます。映像の秀逸さもありますが、やっぱり久石譲の「伊右衛門シリーズ」CM音楽は日本の四季を感じます。ぜひこの桜の季節に、ちょっとした時間に、ほっとひと息視聴してみてください。

 

今年はどんな伊右衛門シリーズを見ることができるのか、またCMのシチュエーションや季節の移り変わりにあわせて、久石譲の「新テーマ曲」もどんなアレンジで聴くことができるのか、楽しみです。

ということで、新年度早々、気持ちを新たに、そして春を届けてくれた新情報でした。

 

Related page:

 

 

久石譲 サントリー 伊右衛門 2014 2

久石譲 サントリー 伊右衛門 2014

 

Blog. 久石譲 第37回 日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 受賞 「風立ちぬ」

Posted on 2014/3/10

先日3月7日、ついに第37回日本アカデミー賞が開催されました。ということで、それをもとに結果はこうなりました。

 

第37回 日本アカデミー賞 結果(ノミネート発表:1月16日 授賞式:3月7日)

□優秀作品賞 ノミネート作品

  • 『凶悪』
  • 『少年H』
  • 『そして父になる』
  • 『東京家族』
  • 『舟を編む』 ☆
  • 『利休にたずねよ』

□優秀アニメーション作品賞 ノミネート作品

  • 『かぐや姫の物語』
  • 『風立ちぬ』 ☆
  • 『キャプテンハーロック』
  • 『劇場版魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』
  • 『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』

□優秀音楽賞 ノミネート作品

  • 岩代太郎 (利休にたずねよ)
  • 荻野清子 (清須会議)
  • 久石 譲 (かぐや姫の物語)
  • 久石 譲 (風立ちぬ) ☆
  • 久石 譲 (東京家族)
  • 松本淳一/森 敬/松原 毅 (そして父になる)
  • 渡邊 崇 (舟を編む)

 

メインの音楽賞で、最優秀音楽賞を「風立ちぬ」の音楽で見事受賞いたしました。

2013年に携わった作品のなかで「東京家族」「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」が各部門にノミネートされていたわけですが、アニメーション作品賞の宮崎駿監督×高畑勲監督のジブリ対決では、宮崎駿の映画「風立ちぬ」が選ばれましたね。

優秀音楽賞に久石譲の音楽3作品がノミネートされているだけでもすごいことだったわけですが、最優秀音楽賞は「風立ちぬ」の音楽が選ばれました。

日本アカデミー賞の最優秀音楽賞の受賞は第34回の「悪人」以来です。そしてジブリ作品では、第32回の「崖の上のポニョ」で同じく最優秀音楽賞を受賞しています。

これで日本アカデミー賞最優秀音楽賞の受賞は歴代No.1記録を更新し計8度目の受賞となりました。

 

過去の受賞歴はこちらにまとめています。

こちら ⇒ Blog. 日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 歴代受賞者/受賞作品 一覧

 

ちなみに映画「風立ちぬ」の音楽としては、第10回 国際映画音楽批評家協会賞においてもオリジナル作曲賞アニメーション部門を受賞しています。

こちら ⇒ Info. 2014/02/20 第10回 国際映画音楽批評家協会賞 久石譲「風立ちぬ」受賞

 

日本アカデミー賞の受賞コメントでは、「3作も入っていたので、(票が)割れてとれないんじゃないかと思っていました。とても驚いています。ありがとうございます。」と笑顔で喜びお礼を。

また、ゴーストライター問題がニュースになっている時期でもあったため、「何かと作曲家が注目されていますが、(今回の曲は)私が書いています。念のため。」とニヤリとチクリと話題にしていました。

 

さて、毎年恒例なのですが!?TV放送ではメインの各賞を取り上げているため、久石譲の最優秀音楽賞受賞の瞬間も、上の受賞コメントも、TV放送ではカットされていました。翌日以降の各局のニュースやワイドショーでは取り上げられていましたが。旬な話題ということもあり。

ということで、3月16日21:00-25:00「第37回日本アカデミー賞授賞式 完全版」CS放送・日テレプラス(未公開映像を加えたノーカット版)

こちらを楽しみにしたいと思います。

 

Related page:

 

日本アカデミー賞 久石譲 風立ちぬ

 

Blog. 「クラシック プレミアム 4 ~ショパン ピアノ作品集~」(CDマガジン) レビュー

Posted 2014/3/1

「クラシック プレミアム」第4号は、ショパンです。

他の19世紀作曲家とは違い、生涯ピアノ作品のみをつくりつづけたショパンですが、まさにピアノひとつで多彩な世界、詩人のような作曲家だなと思います。

 

【収録曲】
《幻想即興曲》
スタニスラフ・ブーニン(ピアノ) 録音/1987年
《華麗なる大円舞曲》
ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ) 録音/1990年
ポロネーズ《英雄》
ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ) 録音/1999年
《子犬のワルツ》、ワルツ 第7番
ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ) 録音/1990年
バラード 第1番
アンドレイ・カヴリーロフ(ピアノ) 録音/1991年
練習曲《別れの曲》
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ) 録音/1988年
練習曲《革命》 《黒鍵》 《木枯らし》
ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ) 録音/1971-1972年
夜想曲(ノクターン) 第2番・第20番
マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ) 録音/1995-1996年
前奏曲 第8番・第15番《雨だれ》
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ) 録音/1975年
スケルツォ 第2番
アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ(ピアノ) 録音/1971年

 

収録曲の名前だけを見ても、曲が思い浮かばないものもありますが、かくいう私もCDを聴くまではそうでした。いざCDを流してみてびっくりしました。ほとんどの曲を知っていました、聴いたことがありました。

そのくらいどの曲も、そのなかのメロディーやフレーズも印象的で、TV・映画・CMと引っ張りだこな音楽たちばかりということがわかります。

上品かつ繊細で、イメージを縛らない、動的な曲も静的な曲も印象的でインパクト、まさにピアノ1本で多彩な音楽世界、イメージを広げるショパンの音楽だからこそ、今日まで多くの人に愛され、日常生活にもその音楽が溢れているんだろうなと思います。

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第4回は、僕が指揮をするわけは?

この連載コラムも4回目を迎えましたが、全50巻のうちこの冒頭は、久石譲の指揮者としての考え方や視点を垣間見ることができます。

今回のコラムでは、職業としての指揮者が確立された時代のことや、作曲家が指揮をしていた時代、その背景や逸話など、いろいろな側面からのクラシック音楽の歴史が見れておもしろかったです。

そして印象に残った箇所を一部抜粋してご紹介します。

 

「それでは作曲家兼楽器奏者と作曲家兼指揮者の違いは何なのだろう。ブーレーズによれば「前者は日常的とまでは言わないにせよ、少なくともあまり大きな中断のない筋肉の訓練を必要とし、そうすることによって楽器の名手としての能力を維持するが、他方、後者の方は、専門家としての技能を手中にしていれば、断絶の影響を恐れることなく、いつでも自分の活動を中断したり再開したりできる。」なるほど、おこがましいが僕が最近ピアノを弾かなくなった理由と指揮をするわけがわかった気がする(笑)。」

 

作曲家が指揮をすることの意味は、前回(第3回)のコラムで書かれていましたが、久石譲は、作曲家、ピアニスト、指揮者と3役ありますからね。このあたりそれぞれの住み分けも自身の著書やインタビューで明確に語っていた内容がありますね。

これからどんな指揮者論や、クラシック話、広義での音楽話が聴けるのかますます楽しみです。毎回コラムのなかで、いろいろな人物などキーワードが飛び出すので、それを後から自分なりに調べたりするのもおもしろいです。知らないことや、新しい興味など、どんどん広がっていきます。

 

クラシックプレミアム 4 ショパン

 

Blog. 映画『魔女の宅急便』の音楽 久石譲 高畑勲 インタビュー

Posted on 2014/2/27

先日、文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」について、読書感想としてその内容を書きました。

こちら ⇒ Blog. 文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」 読書

とても読み応えのある内容で、おそらく誰が読んでも、目からウロコ、新しい発見がある、そんな充実した本です。そして、あまりにもたくさん書いてしまって、肝心の音楽:久石譲のことを触れることができなかったので、あらためて。

 

映画『魔女の宅急便』が1989年公開ですから、今から約25年前です。

この作品は音楽:久石譲に加えて、注目すべきなのは音楽演出:高畑勲です。宮崎駿監督との間で、この3者による音楽制作が進められていたということです。なので、当時のインタビューも久石譲と高畑勲監督の、それぞれのインタビューが収録されています。

それがすごく興味深かったです。つい昨年2013年に、映画『かぐや姫の物語』で高畑勲×久石譲の初タッグが実現し、それにともなうインタビューや対談はたくさん紹介してきました。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー 熱風より
※ページ下部に『かぐや姫の物語』関連インタビュー リンクもほぼすべて紹介しています

 

映画『かぐや姫の物語』の物語に関しては、まだ記憶に新しいのもあり、この「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」を読み進んでいくと、久石譲も高畑勲監督も、お互い言っていることがシンクロするほどだったんです。

1989年の『魔女の宅急便』と2013年の『かぐや姫の物語』約25年の時間の隔たりがあるなか、両者とも映画音楽に求めるものや、その位置づけ、大切にしていることなど、その根幹となるものに対して同じことを言っているんですね。

これにはびっくりしました。

 

具体的には、高畑勲監督は、映画『かぐや姫の物語』の音楽に対して、こういう要求をしています。

  • 一切登場人物の気持ちを表現しないでほしい
  • 状況に付けないでほしい
  • 観客の気持ちを煽らないでほしい

つまりは「一切感情に訴えかけてはいけない」、引きの音楽、観る人に委ねる音楽、これを久石譲の音楽に求め、見事にその音楽世界は表現されることになりました。

これを念頭に、本書「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」のインタビューを紐解いてみます。一部抜粋して紹介します。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

-今回はヨーロッパが舞台ということで音楽的にもそのへんを意識されたと思うのですが。

久石 「そうですね、架空の国ではあるけれどもヨーロッパ的な雰囲気ということで、いわゆるヨーロッパのエスニック、それも舞曲ふうのものを多用しようということは考えました。」

(中略)

-たしかに、映画を拝見しますと音楽のつけ方がはっきりしていて、今回でいえばキキがつぎの場所へ移動する時の、つなぎの部分に音楽が使われているような印象がありました。

久石 「たとえば悲しいシーンに悲しい曲をつけるとか、アクションシーンに派手な曲をつけるとか、そういうやり方はいっさいしないという前提でやりましたからね。ある意味でそれはすごく徹底していると思います。むしろ感情に訴えかけるよりも、見ている人を心地よくさせるような音楽のつけ方というんですか、そういう点を心がけたということはありますね。わざとらしくない、自然な音楽といいますか…。」

-久石さんが宮崎作品の音楽を創る時にいちばん、心がけることは何ですか。

久石 「まず大きな声で歌えること。変にこまっしゃくれたものではなく、徹底して童心にかえってストレートに作るということですね。そしてヒューマン、人間愛にあふれていること。これに尽きると思います。」

(中略)

 

-今回の音楽の特徴は、どういうところですか。

高畑 「この作品はいわゆるファンタジーではありません。『トトロ』もそうでしたが、大きな意味ではファンタジーに属するものでしょうが、もっと現実に近い物語であると宮さんは考えてつくった。たとえばキキは空を飛びますけど、それはカッコよく飛ぶのとはちがうし、ふつうの女の子の日常的な描写や気持ちが中心になっているんですね。ですから音楽が担当する部分も、世界の異質さとか戦闘の激しさとかを担当するわけではない。むしろふつうの劇映画のような考え方をして、しかもヨーロッパ的ふんいきをもった舞台にふさわしいローカルカラーをうち出そうということだったんです。それと、つらいところ悲しいところに音楽はつけない、とか、歌とは別にメインテーマの曲を設定して、あのワルツですが、あれをキキの気持ちがしだいにひろがっていくところにくりかえし使うとかが、音楽の扱いの上での特徴というえば特徴ではないでしょうか。はじめ、ホウキで空を飛ぶ、というのはスピード感もないし、変な効果音をつけるわけにはいかないので心配だったのですが、久石さんの音楽もユーミンの歌も、いまいったねらいにピッタリだったし、上機嫌な気分が出ていたのでホッとしているところです。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

いかがでしょうか。

約25年の時空を超えて、考え方や発言がシンクロしていることが、わかってもたえたのではないでしょうか。

それだけスタジオジブリ作品、鈴木敏夫プロデューサーをはじめ、宮崎駿監督、高畑勲監督、それぞれが劇中音楽をいかに大切にしているか、独自の価値観と要求によって、それを見事に久石譲が音楽に昇華しているか、ということがあらためてわかった当時のインタビュー内容でした。

 

本当に読み応え満点で、思わず映画『魔女の宅急便』がまた観たくなります。実際、この読書をしながら、文章を書きながら、『魔女の宅急便』の音楽を聴いています。

 

当サイトでは、もちろん『魔女の宅急便』関連CD作品もそれぞれ詳細紹介しています。

  • イメージアルバムとサウンドトラックの違いって?
  • 同じメロディーの曲なのに曲名がちがう?
  • ヴォーカル・アルバムやハイテックシリーズって?

 

そのあたりも下記CD作品詳細をのぞいてもらえれば、わかると思います。

魔女の宅急便 イメージアルバム

魔女の宅急便 イメージアルバム

 

久石譲 『魔女の宅急便 サントラ音楽集』

魔女の宅急便 サントラ音楽集

 

久石譲 『魔女の宅急便 ヴォーカル・アルバム』

魔女の宅急便 ヴォーカル・アルバム

 

久石譲 『魔女の宅急便 ハイテックシリーズ』

魔女の宅急便 ハイテックシリーズ

 

 

ほかにも、『魔女の宅急便』の音楽たちは、久石譲作品のいろいろなCDアルバムに収録されています。「メロディフォニー」では、美しいフルオーケストラ組曲として。「空想美術館」では、華麗な弦の響きにて。そのあたりは、いつの日か、特集ページでしっかり掘り下げて紹介したいと思います。

 

 

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ジブリの教科書 魔女の宅急便

 

Blog. 文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」 読書

Posted on 2014/2/24

2013年4月から創刊された文春文庫 x スタジオジブリによる文春ジブリ文庫シリーズです。第1弾『風の谷のナウシカ』から始まって、第5弾は『魔女の宅急便』です。

毎回楽しみにしているこのシリーズですが、各界からの豪華執筆陣がその作品を独自の視点から読み解いていたり、当時の製作陣インタビューなど貴重な記録が満載です。当時出版された様々な書籍からの再編集も多いですが、ある意味作品ごとに、その内容がまとめられて収められているのはうれしいところ。

また今回のための書き下ろしや語り下ろしインタビューなどもあり、過去と現在の時間を超えて『魔女の宅急便』の世界を楽しむことができます。多彩な執筆陣から、原作者角野栄子、内田樹、上野千鶴子、青山七恵、氷室冴子、松任谷由実、C.W.ニコル、などいろいろなインタビューや対談満載です。

 

読んで知ったことなど、書きたいことたくさんあるのですが。

目からウロコだったのは

  • 映画『魔女の宅急便』の表テーマと裏テーマの存在
  • どうしてキキは飛べなくなったのか?
  • どうしてキキは黒猫ジジと言葉が通じなくなったのか?

このあたりのことが、宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーの口から語られていてとても興味深いです。

ほかにも上の3点などの主要な問題に対して、豪華執筆陣たちが、それぞれの解釈で、あらゆる角度から解説しているのも、なるほどとうなずけます。どれが正解というよりも、いろいろな考え方や捉え方が自由にあるんだな、ということがすごくよくわかります。

“思春期の女の子の物語”でありながら、そこには、「成長」「才能」「働くということ」がしっかりと描かれていたんだなと、改めて奥が深い作品であることがわかりました。

 

宮﨑駿監督は、この作品にふれて「才能」のことを語っています。

平気に無意識にできていたことが、ある日突然できなくなる。
なぜできなくなったのかわからない。
そして無意識のうちに成長していくことはできない。

ちょっと漫画を描けるだけ、単に空を飛べるだけ、それで食っていけるのか?

 

このように「才能を職業にするということ」「働くこと」「おカネをもらって生活していくこと」つまりは、『自分でおカネを稼いで自立する』ということがどういうことなのか、その過程で起こる不安や葛藤、つまずきや成長を、見事に描いています。

キキは空を飛ぶだけの才能、監督は漫画が描けるだけの才能、その小さい頃から無意識にできていたことを意識的に成長させていく物語、そう両者を捉えると、この作品の見どころや台詞の重さも変わってくるのかもしれません。

 

また”思春期”に対する洞察力がすごい。確かに「思春期の頃ってこういう感情だったかな」と誰もが思うような、思春期特有の言動・葛藤・自分を守ること・避難場所 など宮崎駿監督の語りはそれだけでも読む価値が十分にあります。

そんな”思春期”特有のディティールを、映画のなかに散りばめてあって「なるほど、このシーンはこういうことだったのか」と唸ってしまいます。

 

冒頭に、制作当時のインタビューなどを再編集、と書きましたが、そのおかげて、いろいろな製作陣の話が、とてもリアルです。当時の時間をそのまま切り取ったような鮮明さと具体的な話が満載です。美術ボードなどのカラースケッチも多数収録してあり、キャラクター設定のスケッチもあり、絵としても見どころ満点でした。「西洋と東洋の魔女、その歴史」なんかもかなり深く掘り下げてあって、より専門的な話、歴史観や宗教観も学ぶことができます。

 

そしてあのヨーロッパ的な雰囲気のする舞台ですが、モデルとなったスウェーデンのストックホルム、ゴッドランド島のヴィズビーの他、インタビューのなかからいろいろな街の名前が登場してきます。そんなごっちゃまぜにしたヨーロッパ的な舞台だからこそ、モデル地はありながらも「架空の場所」という設定になっているんですね。

ヴィズビーの街です。

魔女の宅急便 ヴィズビー

素敵ですね!ほかにも「ヴィズビー」や「ストックホルム」などで検索をすると、『魔女の宅急便』的雰囲気をもった街写真がたくさんHitすると思います。

 

さて、肝心の音楽:久石譲のことに触れていませんが、もちろん久石譲の当時制作インタビューも収録されています。ここまで網羅してしまいますと、膨大になってしまいますので、それはまた別の機会にご紹介します。

Related page:

 

ジブリの教科書 魔女の宅急便

 

Blog. 日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 歴代受賞者/受賞作品 一覧

Posted on 2014/2/13

いよいよ来月に、日本アカデミー賞 各最優秀賞の発表、TV放送があります。そして、久石譲に関する今回のノミネート作品一覧もすでに紹介しています。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 2014年 日/米 アカデミー賞 ノミネート まとめ

 

過去の日本アカデミー賞の歴史を振り返ってみます。ここでは最優秀音楽賞の歴史です。1977年に始まった第1回から、2013年の第36回までです。

【日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 受賞者/受賞作品】

1977年 第1回 芥川也寸志 『八甲田山』  /『八つ墓村』
1978年 第2回 武満徹 『燃える秋』 / 『愛の亡霊』
1979年 第3回 佐藤勝 『あゝ野麦峠』 / 『英霊たちの応援歌』 / 『真田幸村の謀略』 / 『闇の狩人』
1980年 第4回 佐藤勝 『遥かなる山の呼び声』
1981年 第5回 宇崎竜童 『駅 STATION』
1982年 第6回 甲斐正人 『蒲田行進曲』
1983年 第7回 佐藤勝 『陽暉楼』 / 『海嶺』 / 『せんせい』
1984年 第8回 池辺晋一郎 『瀬戸内少年野球団』
1985年 第9回 武満徹 『食卓のない家』 / 『火まつり』 / 『乱』
1986年 第10回 井上堯之 『火宅の人』 / 『離婚しない女』
1987年 第11回 本多俊之 『マルサの女』
1988年 第12回 三枝成彰 『椿姫』 / 『優駿』
1989年 第13回 武満徹 『黒い雨』 / 『利休』
1990年 第14回 池辺晋一郎 『少年時代』 / 『夢』 / 『流転の海』
1991年 第15回 久石譲 『あの夏、いちばん静かな海。』『仔鹿物語』『ふたり』『福沢諭吉』
1992年 第16回 久石譲 『青春デンデケデケデケ』
1993年 第17回 久石譲 『ソナチネ』『はるか、ノスタルジィ』『水の旅人 侍KIDS』
1994年 第18回 忌野清志郎 『119』
1995年 第19回 武満徹 『写 楽』
1996年 第20回 周防義和 『Shall we ダンス?』
1997年 第21回 大貫妙子 『東京日和』
1998年 第22回 久石譲 『HANA-BI』
1999年 第23回 久石譲 『菊次郎の夏』
2000年 第24回 佐藤勝 『雨あがる』
2001年 第25回 松田岳二 / 冷水ひとみ 『ウォーターボーイズ』
2002年 第26回 冨田勲 『たそがれ清兵衛』
2003年 第27回 鈴木慶一 『座頭市』
2004年 第28回 ミッキー吉野 / 岸本ひろし 『スウィングガールズ』
2005年 第29回 佐藤直紀 『ALWAYS 三丁目の夕日』
2006年 第30回 ガブリエル・ロベルト / 渋谷毅 『嫌われ松子の一生』
2007年 第31回 大島ミチル 『眉山 -びざん-』
2008年 第32回 久石譲 『崖の上のポニョ』
2009年 第33回 池辺晋一郎 『劔岳 点の記』
2010年 第34回 久石譲 『悪人』
2011年 第35回 安川午朗 『八日目の蟬』
2012年 第36回 川井郁子 『北のカナリアたち』

 

そうそうたる作品たちばかりです。そして受賞者の方々も作曲家として、映画音楽界に一時代を築いてこられた方たちばかり。

そんななか久石譲の名前の多いこと。

最優秀音楽賞は計7度受賞と、歴代No.1です。

また優秀音楽賞受賞(最優秀音楽賞のノミネートにもあたる)も、なんと計13度受賞です。

上には、最優秀音楽賞のみでの受賞一覧になりますので、
第14回 久石譲 『カンバック』『タスマニア物語』『釣りバカ日誌2』『ペェスケガタピシ物語』
第20回 久石譲 『Kids Return』
第26回 久石譲 『Dolls <ドールズ>』
第30回 久石譲 『男たちの大和 YAMATO』
第32回 久石譲 『おくりびと』
第36回 久石譲 『天地明察』

これらの受賞歴も追記しますと、優秀音楽賞は13度となります。

 

第15回~第17回の3年連続最優秀音楽賞、第22回~第23回の2年連続最優秀音楽賞など、日本映画界におけるその功績と、映画音楽の地位確立など、まさに映画音楽の巨匠にふさわしいアワードたちです。

振り返りながら、ふと思ったのですが、北野武監督作品は、音楽を手がけたほぼ全作品が挙がっていますが、スタジオジブリ 宮﨑駿監督作品は、なんと『崖の上のポニョ』だけなんですね。最優秀音楽賞としてもそうですが、優秀音楽賞としても『風の谷のナウシカ』から『ハウルの動く城』までの8作品が、どれも受賞したことがないというのが、意外でしかありません。

アニメーション映画だからということでしょうか?審査基準や選考基準などがわからないため、なんとも言えませんが。というわけで、映画『崖の上のポニョ』で初のジブリ作品音楽として、日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 受賞 となったわけですね。

 

そして、今年2014年の第37回日本アカデミー賞ですが、すでに優秀音楽賞はノミネート発表され、そのなかから最優秀音楽賞が選ばれるのが、3月7日です。(日本テレビ系 放送予定)

□優秀音楽賞 ノミネート作品

岩代太郎 『利休にたずねよ』
荻野清子 『清須会議』
久石 譲 『かぐや姫の物語』
久石 譲 『風立ちぬ』
久石 譲 『東京家族』
松本淳一/森 敬/松原 毅 『そして父になる』
渡邊 崇 『舟を編む』

 

このようになっています。

ここから第37回 日本アカデミー賞 最優秀音楽賞は…

映画『崖の上のポニョ』以来の5年ぶり、映画『風立ちぬ』で宮崎アニメ2度目の受賞か!?約30年の付き合いにして初タッグとなった高畑勲監督 映画『かぐや姫の物語』で受賞か!?日本映画界の巨匠 山田洋次監督との初タッグ作品 映画『東京家族』で受賞か!?

 

過去の受賞歴を見ますと、1作曲者に対して、複数の映画音楽作品が選ばれている年もありますが、近年は1作曲者/1作品が選ばれる傾向にあるようです。おそらく、久石譲が手がけた映画3作品のなかから、今年の最優秀音楽賞は選ばれるのではないか、と期待しています。

 

公式サイト:日本アカデミー賞 では、今年の作品賞/監督賞/俳優賞など主要ノミネート作品の他、過去の受賞作品一覧や、当時の受賞コメントなども閲覧することができます。

気になる賞や作品、年代などあったら、ぜひのぞいてみてください。

 

第37回日本アカデミー賞 3月7日

 

Blog. 久石譲 初ジブリベスト 宮﨑駿×久石譲 30周年 CD発売決定!

ジブリ・ベスト ストーリーズ(CD)

Posted 2014/2/9

突然飛び込んできたビッグ・ニュースです。

  • 久石譲がジブリ・ベストアルバムをリリース!
  • 久石譲名義としては初ジブリ・ベスト盤!
  • 自ら選曲し、さらに初CD化曲収録の全13曲!
  • 『風の谷のナウシカ』(公開日1984年3月11日)から30周年という節目に!
  • 『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで宮﨑駿監督9作品より!
  • タイトルは「ジブリ・ベスト ストーリーズ」、発売日は2014年3月12日!

さてこれにはビックリしました。
まさに上に書いたポイントとおりです。

 

そしてそのベスト盤CDの詳細は…

久石譲 「ジブリ・ベスト ストーリーズ」 収録曲

1. One Summer’s Day (「Melodyphony」収録 / 千と千尋の神隠し)
2. Kiki’s Delivery Service (「Melodyphony」収録 / 魔女の宅急便)
3. Confessions in the Moonlight (「Castle in the Sky」収録 / 天空の城ラピュタ)
4. The Wind Forest (「Piano Stories」収録 / となりのトトロ)
5. 谷への道 (「空想美術館」収録 / 風の谷のナウシカ)
6. Fantasia(for NAUSICAA) (「Piano Stories」収録 / 風の谷のナウシカ)
7. il porco rosso (「PIANO STORIES III」収録 / 紅の豚)
8. Ponyo on the Cliff by the Sea (「Another Piano Stories」収録 / 崖の上のポニョ)
9. 海のおかあさん / 歌:林正子 (崖の上のポニョ) ※初CD化/初CD収録
10. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- (「Piano Stories Best ’88-’08」収録 / ハウルの動く城)
11. もののけ姫 (「WORKS II」収録 / もののけ姫)
12. アシタカとサン (「ENCORE」収録 / もののけ姫)
13. My Neighbour TOTORO(「Melodyphony」収録 / となりのトトロ)

※初回プレス分のみ「スリーブケース」仕様

 

ジブリ・ベスト ストーリーズ 久石譲 収録曲

 

(補足)
※サウンドトラックベースのオリジナル曲原題(タイトル)参考
※主にメインテーマ曲およびメインテーマのモチーフ曲
※どの作品も映画を象徴する主要な楽曲
※原題(タイトル)リンクURL先はサウンドトラック詳細ページJUMP

1. One Summer’s Day 「あの夏へ」
2. Kiki’s Delivery Service 「海の見える街」
3. Confession in the Moonlight 「月光の雲海」
4. The Wind Forest 「風のとおり道」
5. 谷への道 ※サウンドトラック未収録/劇中本編未使用曲
6. Fantasia (for NAUSICAA) 「風の谷のナウシカ〜オープニング〜」
7. il porco rosso 「帰らざる日々」
8. Ponyo on the Cliff by the Sea 「崖の上のポニョ 主題歌」
9. 海のおかあさん 歌 / 林 正子 *CD初収録
10. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- 「人生のメリーゴーランド」
11. もののけ姫 「もののけ姫 主題歌」
12. アシタカとサン 「アシタカとサン」
13. My Neighbour TOTORO 「となりのトトロ 主題歌」

 

 

これまでも「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」という映画『崖の上のポニョ』公開に合わせた記念コンサートを2008年に開催しています。ジブリベスト、総括にふさわしい、オーケストラコンサートで、後にTV特集もされ、DVD・Blu-rayでも発売されています。

この企画も記念碑的であり、かつ画期的でした。当時から「現在進行形なので、ベスト選曲のような、振り返るようなコンサートはしない」と公言していたなか、新しい試みや挑戦もふんだんに盛り込んだ感動のコンサートでした。

 

そして今回の初ジブリ・ベストアルバム発売に至った経緯、映画『風の谷のナウシカ』から宮崎駿との30周年という節目であることです。宮﨑駿監督の長編映画からの引退宣言(2013年)が影響しているかどうかは現時点ではわかりません。

 

さて、「ジブリ・ベスト ストーリーズ」のベスト・アルバムの内容に話を戻します。ご紹介したとおりのポイントと収録曲なのですが、これをもとに補足があります。

それは、

  • 収録曲すべてがサウンドトラックからではない
  • 劇中オリジナル音源ではない
  • 映画「風立ちぬ」からは収録されない

以上の3点です。

宮﨑駿監督との長編映画は『風の谷のナウシカ』から『風立ちぬ』まで全10作品です。でも今回は前作の『崖の上のポニョ』までで区切られています。

なぜでしょう?

そこには “収録曲がオリジナル音源ではない サウンドトラックからではない”というところにヒントがありそうです。今回のベスト・アルバムは、たしかにスタジオジブリ映画・宮﨑駿映画の人気曲がほとんど網羅されています。

同時に、収録音源にあるように、その曲たちは、「久石譲 オリジナル・ソロ作品」からほとんどが選ばれています。「スタジオジブリ サウンドトラック」からではなく。「Piano Stories」シリーズや、「WORKS」シリーズです。

「Piano Stories」シリーズは、その時折の映画作品やCM音楽などを、ピアノを主体とした音楽作品に再構築したもの。楽器編成やアレンジも手を加えられています。

「WORKS」シリーズは、その時折の映画作品やCM音楽などを、オーケストラを主体とした音楽作品に再構築したもの。楽器編成やアレンジも手を加えられ、組曲のような大曲になることも。

そして「Piano Stories」シリーズと「WORKS」シリーズの共通点は、

  • 久石譲が、その時代の自身の作品からマイルストーンとして、選曲しリアレンジしたもの
  • 劇中音楽という映画シーンに合わせた楽曲を、音楽単体で音楽完成型として発表したもの
  • 映画やCMの短いフレーズを、ひとつの楽曲として構築、新しい楽器編成で作品化したもの
  • 時代ごとの集大成として、映画やCMから解放された音楽作品 久石譲オリジナル・ソロ作品
  • 大衆性 × 芸術性 どちらも両立させた久石譲音楽の真骨頂

 

つまりは、久石譲自身が、音楽活動の歴史において、大切にしている音楽作品たちが、「Piano Stories」シリーズと「WORKS」シリーズには詰まっています。久石譲の音楽活動の歴史における、ライフワーク、その時代ごとの集大成、それが「Piano Stories」であり「WORKS」です。

その延長線上に位置づけられて発表された「ENCORE」(ピアノ・ベスト盤)、「Melodyphony」(オーケストラ・ベスト盤)にも同じことが言えます。

これらの作品からの選曲というのが、今回のジブリ・ベスト・アルバムのポイントになっています。

 

宮﨑駿監督との30周年の振り返りを、あえてサウンドトラックや劇中オリジナル音楽からでななく、自身の音楽完成型としての「宮﨑駿作品」音楽によって、映画の一部としてではなく、芸術性のある「スタジオジブリ音楽」として、映画本編やスクリーンから解放された音楽作品(大衆性 × 芸術性)として、音楽家 久石譲として、監督 宮﨑駿と対峙する。

そういった趣旨になっているように思います。

 

  • 収録曲すべてがサウンドトラックからではない
  • 劇場版オリジナル音源ではない
  • 映画「風立ちぬ」からは収録されない

上の2点は解説できましたとして、『風立ちぬ』のことに触れてみます。上の2点の趣旨にかぶるというか背景は含まれるのですが、映画『風立ちぬ』は公開が2013年でした。

まだ公開されて1年も経っていません。そして同時に、『風立ちぬ』の音楽としては、「風立ちぬ サウンドトラック」という1作品でしか発表されていません。

「Piano Stories」シリーズや「WORKS」シリーズとして、久石譲が『風立ちぬ』の音楽を、音楽作品として再構築する経過に至っていない、そういうことからだと思います。

 

だったら、ボーナストラックとして、映画『風立ちぬ』のメインテーマ曲である「旅路」をピアノ・ソロで収録してほしい!そういう気持ちもたしかにありますが、そういうかたちでこの音楽を扱いたくなかったのではないかと。

思い入れも強い作品であることは間違いないですし、つけやきば的に、ピアノ・ソロで録音しとこう、とはならなかったのではないかと推測します。

それだけ大切にしているスタジオジブリ音楽、宮﨑駿作品ですので、久石譲が『風立ちぬ』の音楽を振り返り、音楽完成型として再構築し、新しい息吹きがその音楽に吹き込まれたその時に、新しい音楽作品として発表されるのではないか、と思っています。

(偉そうにすいません)

 

いろいろと自分なりに情報や収録曲から、考察してみました。いや、とにもかくにも!純粋にCD発売が楽しみですね。

初音源化の「海のおかあさん / 林正子」(崖の上のポニョ)も、同サウンドトラックではフルコーラスの収録ではありませんでしたから。「久石譲 in 武道館」コンサートでも披露されたフルコーラスを初収録なのか、はたまたアレンジや楽器編成なども変わっているのか?

楽しみですね。またこのCDに関する情報をキャッチしましたら、更新ご紹介していきます。

 

Related page:

 

ジブリ・ベスト ストーリーズ(CD)

 

Blog. 「クラシック プレミアム 3 ~ドヴォルザーク/スメタナ~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/2/8

「クラシック プレミアム」第3号は、ドヴォルザークとスメタナです。

【収録曲】
ドヴォルザーク 交響曲 第9番 ホ短調 作品95 《新世界より》
イシュトヴァン・ケルテス指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1961年

ドヴォルザーク 弦楽のためのセレナード ホ長調 作品22
ラファエル・クーベリック指揮
イギリス室内管弦楽団
録音/1969年

スメタナ 連作交響詩 《わが祖国》 より 第2曲 《モルダウ》
ラファエル・クーベリック指揮
ボストン交響楽団
録音/1971年

 

どの曲も小中学校の音楽授業でも耳にしたことのある曲ですし、それ以外でもTV・CM・映画など、いろいろな方面で聴いたことのあるおなじみの曲です。

 

「久石譲の音楽的日乗」第3回は、指揮者についてのあれこれ

指揮者の仕事や役割がわからない素人にとっては、とても具体的な話もあり、興味深く一気に読みました。結局、楽器や編成、譜面が同じであれば、誰が指揮をしたとしても、同じ曲は同じように鳴るんじゃないかと思ってしまうことも、「あっ、だから指揮者によってここまで演奏が変わってくるんだ」ということがすごくよくわかりました。

なるほど、本当に奥が深いです。

そういった話を、
●指揮者、映画監督、野球の監督、3つの共通点から
●ベートーヴェン 交響曲 第9番 第3楽章のテンポの問題から

わかりやすく解説しているのがおもしろかったです。また、作曲家が指揮をすることの意味を語っています。その箇所を今回は一部抜粋して紹介します。

 

「生のオーケストラでクラシック音楽を指揮するということは、いろいろなことをリアルタイムで音を出しながら確認でき、それがうれしい。じつは作曲家で指揮をする人は意外に少ないが、それは残念なことだと思う。頭だけで作曲し、現実と自分がやりたいことがどんどん乖離してしまうからだ。現代音楽の作曲家ペンデレツキもよく指揮をし、『曲だけ書いていてもだめだよ』と言っている。自分が演奏して思い通りにならなかった点を確認し、観客の反応もみてやっていかないと、よりよい音楽活動はできないのだと。作曲と演奏は分離してはならず、連動していくべきなのだ。それは作曲家にとってもオーケストラの未来にとっても、とても重要なことだと僕は思う。」

 

なるほど。

だから久石譲作品でも、フルオーケストラとして発表されているオリジナル作品でも、コンサート演奏を繰り返すたびに、改訂されていることもしばしばあります。先日もご紹介しましたが、「5th dimension」やその他多くの作品も、CD化した時点でのものを完成型やゴールとせずに、そこからまた時間の経過や演奏公演に伴って進化し変化していっているのだなあと。

 

また「クラシックプレミアム」本誌では、様々な角度からクラシック音楽を紐解いていますが、そのなかでクラシック音楽の歴史を毎号少しずつ紹介しているコラムがあります。

そういった他の読み物もとてもおもしろく毎号楽しみにしています。

  • クラシック音楽とはいつの時代の音楽をさすのか
  • バロック時代、古典派、ロマン派など、時代背景や楽器編成の特徴
  • 時代ごとに求められたクラシック音楽の役割
  • 宮廷音楽やBGM音楽としての依頼から、「自己表現する音楽」へと変化した時代

こういったことがわかりやすく毎号少しずつ解説されていておもしろいです。純粋にクラシック音楽を楽しむもよし、時代まで紐解いて味わうもよし。クラシック音楽の、バロックから古典派への変化のキーワードは、「コンサートという制度、ソフトとしての交響曲、楽器編成のスダンダード」とありました。この3つが大きくクラシック音楽の歴史と発展、進化に影響しているのだと。

 

これからますますクラシック音楽に触れるのが楽しみになっていきそうな予感です。耳も肥え、知識も肥え、少しずつクラシック音楽を「大人の嗜み」にしていけたらと思います。

また次号以降も紹介していきます。

 

クラシックプレミアム 3 久石譲