1990年8月1日 CD発売
文部省学習指導要領準拠
ダンス学習法・エチュード
●創案・構成・監修●
松本千代栄
(お茶の水女子大学名誉教授・社団法人日本女子体育連盟理事長)
●実践研究●
日本女子体育連盟 提案グループ
解説
III 運動の要素
1. 課題1 伸―縮―回 ~透明な空の下~ 作曲:越部信義
〈伸びる──縮む──まわる〉の板書によって、先ず運動の性質と連続を視覚的にもつかませましょう。人間の運動の中の基本的な曲直の運動の質感をとりだし、舞踊運動──イメージを含んだ運動にむかわせる練習です。
①曲──遅、直──速にじゅうぶんに伸縮し、自転、円、螺旋など、さまざまにまわる。
②方向をかえて伸縮し、遅速をかえてつづける。2人や群であわせあって行う。
③運動から得たイメージをもって新しく動く。植物の成長、山彦(花火など直──速は課題2の音楽で)
2. 課題2 走―跳―転 ~パニック~ 作曲:越部信義
〈走──跳──転〉板書。ダイナミックな性質をもった運動の質の練習。〈走──止〉の練習も加え、スピードのある走、大きい跳躍と廻転転回をクレッシエンドにつづけましょう。
①軽いスキップと停止、あちこちを見る。
②こまかいバランスと各方向への移動。
③走──跳の連続、あるいは、跳──跳──まわって跳ぶの連続、いろいろな空間姿勢で。
④ひとながれの長さでクレッシエンドをくりかえす。パニック、ポップコーン、火山、追跡などイメージをもって動きのフレーズづくり。
3. 課題3 捻―回―見 ~美しい流れ~ 作曲:玉木宏樹
〈ねじれる──まわる──見る〉板書。流動的なスパイラルな動きの練習。8の字が永遠の継続であるように、全身の波動やスクリューのようにねじれる動きは、心をさそいいれる表現的な性質をもたらします。
①上半身のリードするらせん状の動き。
②低い動きから高い螺旋への動き。
③ゆっくりのねじりから、おいあげる旋回へ。
④最後の「見」は、視線をきめることでフレーズをまとめる働きを感じとりましょう。
⑤さわやかな、ブリリアントな音色もいかしましょう。
4. 課題4 運動―変化―連続 ~風紋~ 作曲:佐藤允彦
〈運動──変化──連続〉は、すでにいままでの練習の中にもふくまれていました。ここでは特に、大きなうねりの中に、小さいうねりがいくつも含まれて、全体として大きい流れをつくる舞踏の構造の性質を強調し、感じとれるように設定しています。(動きの展開の練習)
①一連の動きが呼吸するように自由につづける。
②1人の動きに唱和させて、群のユニゾンを反復する。
③集合──分散をいかし、クレッシエンドの反復。
④課題1.2.3の動きをいかし、旋回の軌跡を美しくつくる。
⑤音の深さと知性をいかし、イメージをもって連続して踊る。
(例—宇宙、中央アジア、流砂、原始の顔、心像、等)
IV 群の要素
5. 課題1 群のリズム ~空間の呼応~ 作曲:久石譲
グループのメンバーが空間のどのポジションをしめるかによって人間と空間のつくりだす表現性はかわります。空間に描くリズムを感じて、メンバーの凝集度をかえてみましょう。先ず2人の練習から。
①2人のかたまり、前・後向、並列、高低、遠近をかえて、2人でつくる表現の相互関係を感受しましょう。
②空間の中の距離関係──どこまで離れても関係は密に保てるか。序破急のリズムで追いかけてみましょう。
③2人でつくる空間の経路。(軌跡)
④動く1人と動かすサポートする1人との対応。
⑤2人でイメージをきめて。
(例—鳴動、序破急、遠近感、点描)
6. 課題2 個と群 ~原始林~ 作曲:玉木宏樹
〈動く──止る〉が運動の原素であるように、〈移動──移動しない〉は運動を変化する根源的な働きです。また、群の中では、これらの動──静、移動──移動しない性質が、群の流動性を変化させる源になります。すでに練習した運動の要素の種々な性質をいかして、個と群の対応の練習をしましょう。
①全員での各方向への走──止、壁まで走り、もどって一群等。
②2群にわかれてフーガのように追いかけて走──止。
③ジグザグの方向に走──止。止るポーズは伏せる転がるなど身体の各部位を床につけて止る。
④2群にわかれ、ゆっくり伸—縮をその場で行う密集群と個々に自由に跳び、浮遊する分散群にわかれてハーモニィをつくる。
⑤イメージをもって。
7. 課題3 集合と分散 ~生きてる自然~ 作曲:久石譲
7~8人の小グループが密集している、又は1人1人登場する、又は、2つのサブ・グループに別れるかによって、同じ空間の中での表現性は異なります。個人を超えた群と空間の対応の表現力を感知する練習をしましょう。
①1人ずつゆっくり遠くから近くから集まって群をつくる。
②群のまま、高低、前後、側面の性質を変える。
③群のまま、乱舞したり静止したりリズムを変える。
④1人ずつ去っていく。残る群の動きとの対応。
⑤イメージをきめて各グループで即興的に踊る。
(例—生命の神秘、祭式、神々の集い、永雪、樹氷など)
8. 課題4 個―群の展開 ~挑戦~ 作曲:佐藤允彦
群舞作品の骨組となっている個(ソロパート)対人(デュオ)群(コーラス)などの構成と展開を練習しましょう。
①全員が分散し、床に伏せ、個々に動くオープニング。(予感)
②1~2名が、スピードをあげて人々の間を縫う。
③おいこまれて群が挑むように動く。(試み)
④クレッシエンドで反復。
⑤動かない”間”をつくる。あるいは1人が動く。
⑥群の最大のクレッシエンドとそのくりかえし、テンポアップ。(挑戦)
⑦クライマックスからエンディングへ。
⑧グループでイメージを定め即興的に全体をはこぶ。
(例—森のめざめ、暗黒、葛藤、暗夜を越えて)
(解説 ~CDライナーノーツより)
(CDライナーノーツより)
I ダンス学習法(2)
《運動の要素》
1. 課題1 伸―縮―回 ~透明な空の下~ 作曲:越部信義
2. 課題2 走―跳―転 ~パニック~ 作曲:越部信義
3. 課題3 捻―回―見 ~美しい流れ~ 作曲:玉木宏樹
4. 課題4 運動―変化―連続 ~風紋~ 作曲:佐藤允彦
《Ⅳ群の要素》
5. 課題1 群のリズム ~空間の呼応~ 作曲:久石譲
6. 課題2 個と群 ~原始林~ 作曲:玉木宏樹
7. 課題3 集合と分散 ~生きてる自然~ 作曲:久石譲
8. 課題4 個―群の展開 ~挑戦~ 作曲:佐藤允彦
演奏/コロムビア・オーケストラ