Disc. 久石譲 『α-BET-CITY アルファベット・シティ』

久石譲 『α-BET-CITY』

1985年6月25日 LP発売 28JAL-3016
1985年6月25日 CT発売 28J-2016
1985年6月25日 CD発売 32JC-130
1992年12月21日 CD発売 TKCA-30725
2009年7月1日 CD発売 TKCA-73443

 

セカンド・アルバム

※LPおよびカセットにはTrack10.「DA・MA・SHI・絵」未収録

 

 

「世界でいちばん凄い都市は、ニューヨークだと思う。ニューヨークは、人種の坩堝だ。さまざまな人種が、まるで違うことを考えながら、それぞれ違う価値観をもって暮らしている。~略~ そのニューヨークの街に、アヴェニューA、アヴェニューB、アヴェニューCという、もっとも危険な場所がある。昼間でも、歩いては通れないほどだ。アヴェニューA、B、Cなので、別名をアルファベット・シティという。1985年6月に出した『α-BET-CITY』というソロアルバムのタイトルは、この別名に由来する。」

「このアルバムはニューヨークのイメージが根底にあるが、もう一つのコンセプトは「だまし絵」だ。画家のエッシャーが描いた「だまし絵」。見る方向を変えると、それまでとは違った像が浮かび上がってくる。さまざまなコンセプトやインフォメーションが入り交じっていて、どれを選ぶかは見る側に委ねられている。このだまし絵と共通する部分が多いのが、ミニマル・ミュージックだ。ミニマルでは同じ音型が繰り返されていくのだが、人によって聴いている音の像が違う。耳に残る音型やフレーズを異にするのだ。たとえば、ある人は繰り返される最高音ばかりに注意が向かい、別な人は最低音ばかり気になる。すると、この二人に聞こえているフレーズは、まったく別なものといっていい。これは、だまし絵を見るのに非常にちかい。」

久石譲・談

 

 

「ほとんどノイズだらけで、まともな音はひとつも使ってないんですよ。アバンギャルドも行きすぎると、逆にポップになり得るんじゃないかと思っているんです」

Blog. 「月刊 ログイン LOGiN 1985年5月号」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「僕はずっと「ミニマル・ミュージック」をやっていた関係で、作曲法も自然にリズムにこだわるようになっていて、普通によくあるリズムでなく、特にCM音楽では「かつて誰も考えつかなかった」新しいリズムパターンを作ってやろうと思い、流行のリズムなどは、できるだけ意識して、使わないようにしてます。」

「カネボウの「ザナックス」のCMですね。これは、今までに3本シリーズで作っていて、全部メロディーは同じなんですけどアレンジを商品に応じて少しずつ変えています。最初にゆっくりとした部分があって、途中から、ティンパニが鋭角的なリズムを刻んでゆくという展開になっています。

このCM音楽の発想は、郷ひろみさんのかっこよさが、まずインパクトとしてあって、あとザナックスのロゴは、角張った文字で構成されてるんだけれど「その角張ったイメージを音で表現できないか」というディレクターの注文の2つの要素でできています。」

Blog. 「CM NOW 1988年 冬号 VOL.19」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「SYNTAX ERROR」というタイトルは、フェアライトにたびたび表示されるエラーコマンド「SYNTAX ERROR」から付けられている。

 

 

久石譲 『α-BET-CITY』

1. SYNTAX ERROR (カネボウ化粧品「XAUAX」CMテーマ)
2. α・BET・CITY
3. SMILE OF ESCHER
4. ROAD RUNNER
5. VENUS & AFRICAN
6. DA・MA・SHI・絵
7. CLUB DANCE
8. LE MO RE
9. MEBIUS LOVE (SCOTEHビデオ・カセット CMテーマ)
10. DA・MA・SHI・絵

PRODUCED BY JOE HISAISHI
EXECUTIVE PRODUCER;KOKI MIURA
YASUYUKI KOIKE
A&R;AKIRA SHIMABUKURO

ALL MUSIC COMPOSED & ARRANGED BY JOE HISASHI
MIXED BY JOE BARBARIA,ROB STEVENS
MIXED AT QUADRASONIC SOUND SYSTEMS, N.Y.
RECORDED AT JAW’S STATION, SUNRISE STUDIO & STARSHIP STUDIO
ENGINEER;YASUHIRO ABE, OSAMU HIROSE
ASSISTANT ENGINEER;PINK MIYAKE, PACO COREY

MUSICIANS;ALL SYNTHESIZERS & RHYTHM MACHINES●JOE HISAISHI
(Equipment;FAIRLIGHT CMI, PROPHET-5, DX-7, MC-4, LINN DRUM)
WADAIKO●EITETSU HAYASHI
(Equipment;SHIME-DAIKO, UCHIWA-DAIKO, OKEDO, ATARI-GANE)
DULCIMER●KEIJI AZAMI
E. VIOLIN●MASATSUGU SHINOZAKI

RECORDING COORDINATION IN N.Y.;
TOM TOEDA, KAMPO CULTURAL CENTER , N.Y.
CHRISTIAN DALBAVIE, TIME CAPSULE BROKERAGE INC., N.Y.

 

Disc. 久石譲 『INFORMATION』

久石譲 『INFORMATION』

1982年10月25日 LP発売 JAL-1005
1992月8月25日 CD発売 TKCA-30670
2009月7月1日 CD発売 TKCA-73444
2018年4月21日 LP発売 TJJA-10003

 

 

「アルバム『インフォメーション』を作ったのは、1982年10月だった。ポップス・フィールドに入っての最初のソロアルバム。ワンダー・シティ・オーケストラとなっているが、ほとんどは僕だった。なぜ、こういうタイトルにしたのか。だれもがメッセージを言いすぎるからだ。メッセージというのは、必ず特定の相手がいて、その人に向けて発するものだ。ところが、インフォメーションというのは、たとえば空港のフロアに流れるインフォメーションのように、不特定多数の相手に事実を伝えるものだ。いってみれば、相手というものを必要としないのだ。メッセージではない、そういう音楽を収めたのが、『インフォメーション』だ。」

「この『インフォメーション』で、僕は初めて自分の歌声をレコーディングした。西アフリカのガーナの言葉で歌った一曲を覗いて、歌詞はすべて英語だった。英語だと、たいがいの日本人は、ボーカルも楽器の一つとして聴くことができるからだ。それを狙っていたのであって、言葉が重要だったので、英語にしたわけではない。むしろ、日本語だと意味を意識されすぎるから、外国語にしたのだ。『インフォメーション』というタイトルを選んだように、歌詞によって特定のメッセージを送りたかったわけではない。言葉は、できるだけ意味をなさないのが、望ましかったのだ。そういうことが、とても大事だった。」

久石譲・談

 

 

西武流通グループの「おいしい生活」「おいしい音楽」のイメージ音楽にもなっていた。

 

 

2018年4月21日アナログレコード復刻

 

 

ファースト・アルバム

久石譲 『INFORMATION』

1. INFORMATION
2. WONDER CITY
3. POP UP I SHAPE UP
4. CHANGING
5. AFRICAN MARKET
6. HIGHWAY CRACKER
7. INFORMATION
8. ISLANDER

WONDER CITY ORCHESTRA

JOE HISAISHI:
PROPHET 5
VOCORDER
SYNTH-BASS
SH-2
CP-80
MC-4
DRUM COMPUTER
PERCUSSION & COMPUTER PROGRAMING
VOCAL
CHORUS

Guests Musician
SAEKO SUZUKI(drums)
SHIGERU INOUE(drums)
JUN MORIYA(drumus)
NOBORU KUROSAKI(Tabla.madoll)
SACHIO HIRASAWA(guiter)
GETAO TAKAHASHI(bass)
TAKUMI IWASAKI(vocal,chorus)
HIROMI INOUE(vocal,chorus)
NORIYO IKEDA(vocal chorus)
PENNY(chorus)
POKARI “GLISS BASS” SASAKI
MIGHTY “CLAPPING” ARAKAWA
POP “VOCORDER” ISOZAKI
WONDER IKEBUKURO PERFECT CHORUS CLUB

Recording:SUNRISE STUDIO JULY-AUGUST 1982

 

Disc. ムクワジュ・アンサンブル 『MKWAJU』

MKWAJU ムクワジュ

1981年6月25日 LP発売 YF-7019-ND
1982年6月25日 CT発売 CTR-7052
1991年8月21日 CD発売 COCO-7764
2005年4月20日 CD発売 COCB-53340
2018年1月31日 UHQCD発売 COCB-54240
2018年11月16日 LP発売 WRWTFWW025

 

 

MKWAJU LP 2

MKWAJU LP 3

MKWAJU LP 4

MKWAJU LP 1

MKWAJU LP 2

(LPジャケット / LP盤)

 

 

パーカッション・トリオ、ムクワジュ・アンサンブル
久石譲プロデュースによる作品

マリンバや民族楽器とシンセサイザーを絡ませた野心作
意欲的なミニマル音楽集

 

「私は旅行と探検家がきらいだ」と書いたのは、レヴィ=ストロスではなかったろうか。未開民族の社会構造を研究し、人間の基本的な生存システムをさぐる。このフィールド・ワークはヨーロッパ人の植民地主義的発想と最初不可分であった。

短い旋律。短すぎて、それだけでは喜びも悲しみも表現できない。
その旋律を単位として何回も何回も繰り返す。はてしなく続く旋律。太陽の動きとおなじくらいゆっくり変化する。
またこの旋律を何人かでひいてみる。ズレが生じる。このズレが思いがけないメロディーを生む。音と音の隙間にできる新しい音。ついには、この新しい音が独立して最初のメロディーとは無関係に動き出す。

ミニマル・ミュージックとのちに名づけられるのは、こんな音楽。
アフリカでもアジアでも、ヨーロッパ文明の浸食をうけていないところでは、多くの場所にのこっている。

(CDライナーノーツ より)

 

ムクワジュ・アンサンブル
高田みどり(マリンバ、ヴィブラフォン、ゴング、トムトム、カウベル、他)
定成庸司(バス・マリンバ、ゴング、トムトム、他)
荒瀬順子(ミトラ・マリンバ)

久石譲(ピアノ:スタインウェイ / エレクトリック・ピアノ:フェンダー)
ペッカー(ラテン・パーカッション)
松武秀樹(コンピューター・プログラミング シンセサイザー:MC-8、プロフェット-5)

 

MKWAJU ムクワジュ

ムクワジュ組曲 MKWAJU SUITE
1. ムクワジュ Mkwaju
2. シャク・シャク Shak Shak
3. レモア Lemore
4. ティラ=リン Tira-Rin

5. パルス・イン・マイ・マインド PULSE IN MY MIND
6. フラッシュ=バック FLASH-BACK

久石譲プロデュース 全作曲:久石譲

録音:1981年2月6日、7日、3月12日 日本コロムビア第1スタジオ

 

 

 

今も色褪せぬ久石譲の1981年のミニマル音楽傑作集
待望の「ムクワジュ・ファースト」リイシュー決定

MKWAJUとはスワヒリ語でタマリンドの樹の意味

 

ミニマルに躍動するアフリカン・リズム。それは大地の鼓動、生命の息吹。世界的作曲家、久石譲の原点がここに。

(UHQ CD帯より)

 

「MKWAJU ムクワジュ・ファースト」
MKWAJU ENSEMBLE ムクワジュ・アンサンブル

久石譲:作曲&プロデュース

最新リマスタリング UHQ CD

発売日:2018年1月31日
品番:COCB-54240

 

ムクワジュ組曲 MKWAJU SUITE
1. ムクワジュ MKWAJU
2. シャク・シャク SHAK SHAK
3. レモア LEMORE
4. ティラ=リン TIRA-RIN

5. パルス・イン・マイ・マインド PULSE IN MY MIND
6. フラッシュ=バック FLASH-BACK

ムクワジュ・アンサンブル
高田みどり(マリンバ/ヴィヴラフォン/ゴング/トム・トム)
定成庸司(バス・マリンバ/ゴング/トム・トム)
荒瀬順子(ミトラ・マリンバ/ゴング)

久石譲(キーボード)
ペッカー(ラテン・パーカッション 他)
松武秀樹(コンピューター・プログラミング)

オリジナル・リリース:1981年6月25日 YF-7019

 

朱に燃ゆる空、はるか地平まで続く草原に生える1本の大きな木、アフリカの大地を想起させるミニマルなアートワークをまとった、ムクワジュ・アンサンブルのファースト・アルバム『ムクワジュ・ファースト』は、1981年、斬新なアイディアと冒険心を胸に、ジャンルの垣根を超えて数々の先進的な音楽を世に送り出したレーベル、BETTER DAYSから発表された。

作曲・プロデュースを手掛けたのは久石譲。メンバーは、クラシックや現代音楽のフィールドで活躍する3人の打楽器奏者、高田みどり、荒瀬順子、定成庸司。高田みどりは、1978年にベルリン放送交響楽団のソリストとしてデビュー後、アジアやアフリカの音楽家と多くの共演を重ねる。荒瀬順子は、深町純が音楽を手掛けた1980年公開の映画『海潮音』のサウンドトラックに参加し、深町のシンセサイザーとのデュオで幻想的な音楽を披露している。定成庸司は1973年に、尺八奏者の山本邦山が廣瀬量平作品を取り上げたリサイタルのスタジオ録音に参加するなど、いずれもクラシックや現代音楽の枠にとどまらず、幅広く演奏活動をしている打楽器奏者だ。メンバーのほかには、久石譲のキーボード、ペッカーのラテン・パーカッションと、松武秀樹のシンセサイザー・プログラミングが加わっている。

『ムクワジュ・ファースト』は、久石譲が大学在学中に出会い深く傾倒した、ミニマル・ミュージックの手法を用いて作曲・プロデュースした初めての作品だ。短い音型をわずかに変化させながら繰り返し演奏することで生じるずれを音楽の構成要素とするミニマル・ミュージック。その起源には諸説あるが、アフリカやアジアなどの民族楽器からの影響もそのひとつとされている。この『ムクワジュ・ファースト』も、アフリカの民族音楽がもつ様々なリズムの音型を素材に作られている。しかし、多様な表現を見せる70年代以降の現代音楽と同様、単にミニマル・ミュージックというひとことでは、このアルバムの魅力を語りきれない。「ムクワジュ組曲」のなかの「ムクワジュ」と「ティラ=リン」では、軽快にリズムを奏でながら少しずつ表情を変えていくマリンバのアンサンブルに、ペッカーの肉体的なパーカッションと、プログラミングされたリズムマシンの機械的なビートが加わることで、現代音楽としてのミニマル・ミュージックにはないグルーヴと、ポップな感覚が生まれている。歪んだ残響音をもった旋律を奏でている楽器は、小さな穴が開けられた共鳴パイプに貼られた薄い紙が震えることで独特の音を発する、《ミトラ》という変型マリンバで、シンセサイザーのノコギリ波のようにも聞こえる音色だ。「パルス・イン・マイ・マインド」では、クロマティック・ゴングという東南アジア原産の銅鑼による、倍音成分をたっぷり含んだ金属的な響きが、柔らかくトレモロするエレクトリック・ピアノとともに幻想的なアンサンブルを奏でている。まるでアンビエント・ミュージックのような佇まいだ。ミニマル・ミュージックのエッセンスを感覚的にとらえてロックやポップスに応用した、クラフトワークなどの電子音楽やブライアン・イーノに代表されるアンビエント・ミュージックとの共通点が見いだせるし、また、90年代に躍進したテクノやハウスなどのダンス・ミュージックに先駆ける手法も見てとれる。『ムクワジュ・ファースト』が昨今、若い世代の耳を惹きつけているひとつの要因だろう。また、「パルス・イン・マイ・マインド」の作曲方法として、ほぼ記憶不可能な音を構成するために、乱数表が用いられたそうだ。アメリカを代表する現代音楽の作曲家、ジョン・ケージの手法を彷彿とさせるが、ジョン・ケージが乱数表から偶然による即興性を得ることを目的としたのとは違い、ここでは緻密な構成を可能にするための手段として利用されている。「フラッシュ=バック」では、複合リズムの極みとでもいうべき、アフリカの民族音楽に肉迫した原始的な躍動感のあるパーカッション・アンサンブルを聴くことができる。ミニマル・ミュージックの面白さがもっとも顕著に現れた楽曲だろう。

久石は『ムクワジュ・ファースト』を発表した後、ポップスのフィールドへ活動の幅を広げたが、『風の谷のナウシカ』などの宮崎駿アニメのサウンドトラックでも、ミニマル・ミュージックの要素をもった楽曲を聴くことができるし、「ムクワジュ組曲」は、オーケストラや弦楽四重奏などにアレンジされてその後も演奏され、今も広く親しまれている。ポップスのフィールドで世界的に名を成した久石の深意には、常にミニマル・ミュージックへの思いがあり、その原点がこの『ムクワジュ・ファースト』にある。同時に、ミニマル・ミュージックに馴染みのないリスナーをも魅了する、フレッシュなエネルギーを秘めていることが、『ムクワジュ・ファースト』を名作たらしめている。

CHEE SHIMIZU(2017.11)

(UHQ CDライナーノーツより)

 

*UHQ CDには封入解説として、オリジナル盤LPのアートワーク(ライナーノーツ)付きです。主に楽曲解説などになりますが(上に一部写真あり)、CHEE SHIMIZU氏によるUHQ CD寄稿文にてきれいに同旨要約されています。ここでのあらためての記載はしていません。

 

 

2018.11 Update!!