Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体 サウンドトラック / THE UNIVERSE WITHIN 』

1989年5月21日 CD発売 N29C-27
1989年5月21日 CT発売 N25K-27
1992年11月21日 CD発売 NACL-1503

 

1989年放送 NHKスペシャル 「驚異の小宇宙 人体」
音楽:久石譲

~遙かなる時間(とき)の彼方へ~
久石譲が奏でる 内なる宇宙への航海!

 

 

1989年4月21日 CDS発売
「THE INNERS」は同作品からの先行シングルである。

1. THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Opnening Theme-Synthesizer Version)
2. THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Ending Theme-Orchestra Version)

 

 

『人体』そのヒューマンなるもの

『驚異の小宇宙・人体』の映像は、最新の技術を投入し、コンピュータ・グラフィックスをふんだんに駆使するなど、時代の最先端をいく要素が多分にあるのです。しかしその反面例えば精子と卵子の合体シーンなどは、卵巣に集団で飛び込んだ精子の中から一つだけが合体するわけで、まるで勝ち残りゲームを見ているようなかんじがしてとてもヒューマンな印象を受けたんです。実はこれら最新の技術が描いているのは”生命のドラマ”なのだなということに気が付き、そのような映像には、テクノロジーを駆使したコンピュータ・ミュージックだけでなく、むしろ、それに生オーケストラのサウンドや、詩情豊かなメロディラインを織り込むことによって、人体という宇宙の持つ計算されないダイナミズム、緻密さの中の壮大さというような様々な融合を表現できるのではないかと思いました。とにかくこのアルバムは、ヒューマンなイメージを頭に置きつつ作りました。

久石譲

(CDライナーノーツ より)

 

 

第1シリーズの「人体」はピアノとオーケストラを中心に構成した。実はCGが多いと聞いてテクノ系の音楽を考えていた。が、精子が卵子に飛び込む顕微鏡撮影の映像を見て考えを変えた。精子がいくつかのグループに分かれ、天の岩戸の前よろしくたむろしていた。何やら話し合っている風でもあるそれらは、どこにでもある学校のクラスを彷彿させた。そのうちに元気のいい、いわばガキ大将のような威勢のいい精子がその岩戸に突入する。が、次々に玉砕する。するとクラスによくいる眼鏡をかけたガリ勉型のひ弱な感じの精子が、するすると抜け出してすんなりと岩戸卵子の壁を突入して侵入に成功した。人間社会の縮図のような光景に感動した僕はヒューマンなアコースティックな方向に音楽を切り替えた。

Blog. 書籍「NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体3 遺伝子・DNA 6」久石譲 音楽制作ノート より抜粋)

 

 

1998年4月28日 CD発売 PCCR-00301

NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」サウンド・トラック THE UNIVERSE WITHIN Vol.1 & 2(2CD) として再発売された。

 

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体 Vol.1』

(2CDジャケット)

 

 

1. THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Opening Theme-Synthesizer Version)
2. TOUR IN CELL ~ミクロの戦士たち~
3. FANTASY ~かくも壮大なる小宇宙~
4. MYSTERIOUS LOVE ~ひと・そして・愛~
5. TRANSIENT LIFE ~うたかたの夢~
6. MICROWORLD ~10数ミクロンの遠景~
7. BIRTH ~生命(いのち)の歓び~
8. THE ORIGIN OF SPECIES ~35億年の結晶~
9. INNER VOYAGE ~内なる宇宙への航海(たびだち)~
10. MIND SPACE ~永遠の亜空間旅~
11. SYSTEM OF LIFE ~細胞60兆のめくるめく世界~
12. THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Ending Theme-Orchestra Version)

COMPOSE & ARRANGEMENT:Joe Hisaishi
PIANO:Joe Hisaishi

Producer:Joe Hisaishi

 

Disc. 久石譲 『THE INNERS ~遙かなる時間の彼方へ~』

1989年4月21日 CDS発売 N09C-29

 

1989年放送 NHKスペシャル 「驚異の小宇宙 人体」
音楽:久石譲

 

オープニングテーマとエンディングテーマを収録したシングルCD。アルバムにも同ヴァージョンで収録されている。

 

 

(CDジャケット)

 

1. THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Opnening Theme-Synthesizer Version)
2. THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Ending Theme-Orchestra Version)

Compose & Arrangement:JOE HISAISHI
Piano:JOE HISAISHI

 

Disc. 久石譲 『魔女の宅急便 イメージアルバム』

魔女の宅急便 イメージアルバム

1989年4月10日 CD発売 32ATC-180
1989年4月10日 CT発売 25AGC-2064
1996年11月21日 CD発売 TKCA-71030
2004年9月29日 CD発売 TKCA-72741
2020年3月11日 LP発売 TJJA-10020

 

1989年公開 スタジオジブリ作品 映画「魔女の宅急便」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

それ自体が作品として成立するイメージアルバムをまず作り、サントラ制作に生かすという方法も本作で4回目。今回も充実した内容となった。「なんとなくヨーロッパ、どこか地中海あたり…」をイメージしながらこのアルバムは制作されている。

 

本作品「魔女の宅急便 イメージアルバム」から、「魔女の宅急便 サウンドトラック」への変化。
曲名をイメージアルバム → サウンドトラック の順番で明記。

  • かあさんのホウキ / 木漏れ日の路地 → 旅立ち / オソノさんのたのみ事…
  • ナンパ通り → 海の見える街(後半) / 大忙しのキキ
  • 町の夜 → 傷心のキキ
  • 元気になれそう → 仕事はじめ
  • 風の丘 → 海の見える街(前半) / おじいさんのデッキブラシ ※モチーフとして
  • リリーとジジ → 身代わりジジ
  • トンボさん → プロペラ自転車
  • 世界って広いわ → 晴れた日に… / 空飛ぶ宅急便 / ウルスラの小屋へ / デッキブラシでランデブー
  • パン屋さんの窓 → パン屋の手伝い

*サウンドトラックへ収録されなかった未使用曲:渚のデイト / 突風

 

こう並べてみるとわかりやすい。

そして曲名タイトルだけを見比べても、アレンジや長さこそ編曲されているものの、どのシーンで使われるべくイメージ作曲されたのかが明確である。そのくらい曲名タイトルがどちらも似ているというか、同じシーンや登場人物をかんたんに連想することができる。

「イメージアルバムの時点ではこのつもりだったけれど、映画本編では全く違う場面やシーン・キャラクターに使われた」というようなミスマッチは起こっていないことがよくわかる。イメージアルバムの時点で、”どのシーンにどんな曲を”ということを、監督と作曲者が入念に打ち合わせをしていることがわかる。

そして、映画本編での未使用曲が2曲しかないのも、イメージアルバムの時点で、それだけ音楽による世界観の完成度が高いことがわかる。未使用となった「渚のデイト」と「突風」もどちらも『魔女の宅急便』の世界観を表現した貴重な曲。

 

映像の絵コンテにあたる、ラフスケッチな音楽集ということで、シンセサイザーをメインに奏でられている。なかにはヴァイオリンの生楽器や、ギター、パーカッションなども登場し、そのヨーロッパ的な雰囲気を表現した楽器たちは、そのままサウンドトラックにも反映されている。

映画本編用の作り込みやオーケストレーションがされていない原石的楽曲だけに、シンプルなシンセサイザー・アレンジでありながら、そのメロディーたちが際立っていて、生き生きと、そして印象的に響いてくる。

 

このイメージアルバムからサウンドトラックへの曲変化をもとに、サウンドトラックのトラックリストを見ると、また別の視点で楽しめる。それは、イメージアルバムの時点では存在しなかった楽曲、つまりは映画本編のシーンのために新しく書き下ろされた曲、それがどのシーンのどの曲なのかがよくわかる。

上記のイメージアルバム→サウンドトラックへの比較リストのなかで、曲名のあがっていない「サウンドトラック」収録楽曲である。

イメージアルバムとサウンドトラック、いろいろな楽しみ方ができる。

 

 

魔女の宅急便 イメージアルバム

1. かあさんのホウキ
2. ナンパ通り
3. 町の夜
4. 元気になれそう
5. 渚のデイト
6. 風の丘
7. トンボさん
8. リリーとジジ
9. 世界って広いわ
10. パン屋さんの窓
11. 突風
12. 木洩れ陽の路地

 

Kiki’s Delivery Service Image Album

1.Mother’s Broom
2.Nampa Street
3.The Town at Night
4.I will be Fine
5.A Date by the Beach
6.A Windy Mountain
7.Mister Tombo
8. Lily and Jiji
9.What a Wide World
10.The Bakery’s Window
11.A Sudden Gust
12.An Alley lit by Treelight

 

Disc. 久石譲 『ヴイナス戦記 オリジナル・サウンドトラック』

ヴィナス戦記 オリジナル・サウンドトラック

1989年4月10日 CD発売 29L2-58
1989年4月10日 LP発売 25L1-58
1989年4月10日 CT発売 25L4-58
2005年12月21日 CD発売 COCX-33509

 

1988年公開 映画「ヴイナス戦記」
監督:安彦良和 音楽:久石譲

 

 

 

 

ヴィナス戦記 オリジナル・サウンドトラック

1. メインテーマ(ヴイナスの彼方へ)
2. 青空市場 -スピトーンにて-
3. 灼熱のサーキット 歌:山根えい子
4. 愛のテーマ(For Maggie)
5. 青春の疾走
6. メインテーマ -ハウンド-(Reprise)
7. ヴイナスの風(Wind On The Venus) 歌:北原拓
8. デッド・ポイント
9. スウVS.ドナー
10. 戦場、そして残るものは…
11. 明日への風 歌:柳ジョージ

作曲・編曲:久石譲 (except 11.)
作詩:冬杜花代子 3. 7.

ストリングス&ホーン・アレンジ:藤野浩一 1. 3. 4. 7.

「明日への風」
作詩:平野肇 作曲:大田黒裕司 編曲:平野孝幸

 

Disc. 久石譲 『となりのトトロ ドラマ編』

1989年2月25日 CD発売 24ATC-174~5
1992年11月25日 CT発売 TKTA-20265
1996年11月21日 CD発売 TKCA-71028

 

1988年公開 スタジオジブリ作品 映画「となりのトトロ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

本作品は映画本編を映像なしの音声のみで聴く作品である。BGMはもちろんセリフや効果音などもそのまま収録されている。

 

 

解説

『となりのトトロ』は、’88年4月、全国東宝系で公開され、大好評を博した、宮崎駿、原作・脚本・監督による劇場用長編アニメーションです。(同時上映「火垂るの墓」製作/新潮社。監督/高畑勲)

昭和30年代のはじめ、まだ自然や四季の美しさにあふれていた頃の日本の都市郊外を舞台に、11歳と4歳の姉妹と大自然の精霊・トトロとの心あたたまる交流を描いたファンタジックな内容は、それこそ大人から小さい子どもにいたるまで幅広く観客の心をとらえました。

「いま、ダサイ、クサイといわれるものの中にこそ、新しいもの、現代人が渇望していながら見失ってしまったものがある」と断言した宮崎監督のみごとな勝利といえるものでしょう。

さらにいえば「もっともナショナルなものこそ、インターナショナルになり得るのだ」という監督の言葉も、’88年8月現在香港における上映の大成功が裏付けしています。(ちなみに、香港における歴代邦画興行成績第1位は『天空の城ラピュタ』第2位が『風の谷のナウシカ』第3位は『子猫物語』。『トトロ』の最終興行成績予想では、ほぼ『ラピュタ』とならぶ。何と、これでBEST3はすべて宮崎作品となる!)

宮崎監督は東映動画を振り出しに、様々なスタジオで傑作を作ってきており、随分前からアニメーション界では伝説的に語られてきた人です。特に『ルパン三世カリオストロの城』(’79年・脚本・監督)はアニメ・アクション映画の最高峰として、いまだ人気を保っていますが、何といっても、その名がアニメーション界にとどまらず映画ファン、一般大衆にまで広く知られるようになったのは『風の谷のナウシカ』(’84年。原作・脚本・監督)においてでしょう。巨大産業文明崩壊後1000年の地球から、するどく現代における自然と人間の在り方を照射したこのSFヒロイックファンタジーは、’84年度、数多くの映画賞を獲得しました。

さらに2年後『天空の城ラピュタ』(’86年。原作・脚本・監督)でも、その並々ならぬ映画作りの腕を見せ、ついに映画界に「宮崎ブランド」を確立させました。そのいうところは、作品の質が高く、なおかつエンターテイメントであるということです。

ところで、一貫して「宮崎作品」の質が高いのは、その製作体制に秘密があります。

ふつうのテレビアニメの場合、制作費や時間的制約のため、分業が極度にすすんでおり、メインスタッフすら、別々のスタジオにいることは珍しくありません。宮崎作品の場合、メインスタッフ、原画、動画、背景、メインの仕上げにいたるまで、同じスタジオに集まります。監督と同じ土俵で、同じ目的意識を持ち、意志の疎通を計ります。なお、それぞれのスタッフが超一流であることはいうまでもありません。

さらにもうひとつ。監督の作画チェックです。自身が超一流のアニメーターだったこともあり、表情、動作、タイミングに実にきびしい、綿密なチェックが入ります。週1本制作したテレビシリーズ『未来少年コナン』でも同じだったと伝えられていますから、1年かける劇場用の場合のきびしさは、想像以上のものです。制作中、アニメーターはつらい思いをしますが、終わって聞いてみると、もてる才能のすべてを燃焼した満足感を語るアニメーターが多くいます。

ところで、『となりのトトロ』は『ナウシカ』『ラピュタ』の後、作られたわけですが、じつは、監督のもともとの発想は10年も前のことです。そのときの仮題は『所沢のオバケ』。『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』などのメインスタッフとして活躍していたころのことです。「なぜいつも、外国を舞台に、外国の子どもを主人公にしなければならないんだろう」という素朴な疑問がその出発点だったといいます。

そうして数多くのイメージボードを自ら描いたもですが、一見ジミに見えるこの企画は、とても通らなかったのです。あるいは時期が早かったのかもしれません。しかし、その後、10年間ひそかに温めつづけ、そして10年前よりさらにウデの上がった監督自身によって作られたこの作品は、むしろ幸運だったかもしれません。

(徳間書店「アニメージュ」編集部 亀山)

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

1000-203本体22

DISC 1
1.さんぽ
2.五月の村

DISC 2
1.風のとおり道
2.となりのトトロ

 

Disc. 久石譲 『ゾイド2 -ゼネバスの逆襲- 音楽集』 ※非売品 *Unreleased

1989年 CDS PCDLZ-1002 非売品 Not for Sale

 

ファミリーコンピューター用ゲームソフト「ゾイド2 -ゼネバスの逆襲-」
音楽:久石譲 編曲:浅倉大介

 

 

 

ゾイド2 ゼネバスの逆襲 久石譲

1. メイン・テーマ
2. 地上移動のテーマ ~ 海上移動のテーマ
3. 戦闘のテーマ ~ 空中偵察のテーマ ~ 空中戦のテーマ
4. 道標のテーマ ~ 地下通路のテーマ ~ クックの街のテーマ ~ 水中のテーマ ~ 廃墟の村のテーマ
5. ヘリックⅠ世のテーマ ~ 共和国の街のテーマ ~ 共和国首都のテーマ
6. 帝国軍要塞のテーマ ~ ゼネバス皇帝のテーマ
7. エンディング・テーマ

音楽:久石譲 編曲:浅倉大介

Disc. 久石譲 『ヴイナス戦記 イメージアルバム』

久石譲 『ヴィナス戦記 イメージアルバム』

1988年12月21日 CD発売 32L2-41
1988年12月21日 LP発売 28L1-41
1988年12月21日 CT発売 28L4-41

 

1988年公開 映画「ヴイナス戦記」
監督:安彦良和 音楽:久石譲

 

 

【楽曲解説】

1.ヴイナスの彼方へ
愛と美の女神の地-ヴイナス。しかしその素顔は冷たく、人々の争いにも救いを与えてはくれない。激しい戦闘のあいまに、ひとときの安らぎを得ようとするヒロインたちの、悲しさをおびた旋律が盛り上がり、そしてまた無情な戦斗の彼方にかき消されてゆく。それでもヒロは走り続けるのだ。ヴイナスの明日は、一体どんなものとなるのか、果たして彼らはそれを戦いとれるのだろうか。

2.灼熱のサーキット
明るいエイトビートにのせ、力強い女声ヴォーカルが、ローリング・ゲームに賭けるヒロたちを唄い上げる。そしてまた、戦場へと世界は移っても、生命を賭けて疾走する彼らの若さが、激しくそして鮮やかな事に少しの変わりはないと。-…熱いものが、ほしいんだ。なにか、熱いものが… それを見つけるためにとび出してゆくヒロ。その後ろ姿にきらめくものは、希望と呼んで良いのだろうか。それを見た者は誰でも、彼を追おうとするだろう。

3.青空市場
大地に根づいた人類のいとなみを感じさせる土着的なリズムは、そのたくましさをも表しているといえよう。特に前半の明るい広がりは、人々の希望を思わせ力強い。そして、後半の金属質な旋律により、のしかかっている現実-すなわち政治的背景の存在を暗示し、日常にひそんだ不安をかいまみせるのである。

4.イシュタルの襲来
響く重低音とそれにかぶる不気味な高音は、重爆撃機の襲来と警報を表しているようだ。雨のように注ぐ爆弾、そして降下する重戦車隊に、街は制圧させてゆく。破壊と死、残るものは絶望ばかりか。そんな凄まじさを不協和音がいっそうあおりたてる。その唐突な終結は、不安なヴイナスの惑星としての未来をすら感じさせる。

5.愛のテーマ(For Maggie)
スローテンポのイントロが、ぎこちないヒロとマギーを映し出す。せつない主旋律は酸っぱいような想いをいっぱいにあふれさせ、ヒロを包み込み支えようとするマギーのおさない母性を感じさせる。激情のままに抱き合っても、心の中心部にはもっと真剣な想いのあふれる二人を、まるでヴイナスが見守っているような、詩情豊かなメロディが広がる。

6.青空の疾走
イオシティを疾走するヒロとバイク。街は頽廃の色から荒廃へと変わろうとしている。人々の不安があたりに満ちるなか、ひたすら走るヒロの目には、絶望しか映らぬようにさえ見える。いや、そんなことはない。何か、何かが起こるはず。その何かこそが、自分をぶつけられるもののはず。いらだちを交えたヒロの疾走を、アップテンポで追う。

7.スウのテーマ
軽いタッチのポップなリズムに、ちょっと散りばめられたのは、大人の女の妖しい気分? 自由奔放で目立ちたがりで、キャリアウーマンのツッパイも一人前。そんなスウがヴイナスにやってきた。スウにとっては戦争だってワクワクのもとだ。けれど、スウだって本当は楽しいことが大好きの明るい純情っ子。軽快なメロディに、スキップしている彼女が見えるようだ。

8.ヴイナスの風(Wind On The Venus)
ロック調のメロディにのせ、迷いながらも前進を続けていくヒロを唄う。負けず嫌いな性格が、いつしか自分ばかりでなく、回りの皆をひっぱって行く程の大きな力となってゆくのがよくわかるだろう。ヴォーカルの繊細さが、ヒロのナイーブさを上手く見せてくれているようでもある。

9.イオ・City
炎と氷、極暑と極寒。この二つの顔をもつヴイナスは、美しさと、すさまじい嫉妬をあわせもつ、きまぐれな女神のようだ。そして、二つのはざまの黄昏地でしか生きることができないヒロたちは、いつも同じ表情の太陽しか知らない。きらめくようなピアノが夜を教えても、見上げる空は薄明…。それでも時間だけは動いてゆく。この眺めが変わらないように、ヒロたちの明日もただ過ぎてゆくのだろうか。空の広がりの壮大さに、悲しみを含ませるような弦が美しい。

10.燃える戦場
緊迫したリズムが、初陣のヒロをふるえさせる。敵重戦車”タコ”の前進の響きが地をゆるがす。巨大な”タコ”を向こうに回し、大口径ミサイルや滑空砲をかいくぐり、戦闘バイクを操るヒロの指がトリガーにかかる。-撃つんだ!! 弾倉が空になるまで!! 40ミリライフルが火を吹き、部厚い”タコ”の胴体にくい込んでゆく。少年たちの歓声が、ヒロにきこえる。閃光と轟音をふくれあがらせ-”タコ”が死んだ。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

 

久石譲 『ヴィナス戦記 イメージアルバム』

1. ヴイナスの彼方へ
2. 灼熱のサーキット
3. 青空市場
4. イシュタルの襲来
5. 愛のテーマ(For Maggie)
6. 青春の疾走
7. スウのテーマ
8. ヴイナスの風(Wind On The Venus)
9. イオ・City
10. 燃える戦場

作曲・編曲:久石譲
作詩:冬杜花代子 2. 8.

 

Disc. 久石譲 『となりのトトロ サウンドブック』

久石譲 『となりのトトロ サウンドブック』

1988年9月25日 CD発売 32ATC-171
1988年9月25日 LP発売 25AGL-3062
1988年9月25日 CT発売 25AGC-2062
1996年11月21日 CD発売 TKCA-71027
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72726
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10016

 

1988年公開 スタジオジブリ作品 映画「となりのトトロ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

映画公開後に、「トトロ」の楽曲をヴァイオリン、ギター、フルート等のアンサンブルで新録音した”音楽の絵本”。サントラとはまた違う、素朴で温かな味わいはいわば「トトロ・アンプラグド」の趣がある。久石譲プロデュース、LPとCDのジャケットは同一。

 

 

久石譲 『となりのトトロ サウンドブック』

1. 風のとおり道 ~Acoustic Version~
2. おかあさん
3. 五月の村
4. さんぽ
5. となりのトトロ
6. まいご
7. すすわたり
8. ねこバス
9. 小さな写真
10. 風のとおり道

演奏:
篠崎正嗣(バイオリン)
赤木りえ(フルート)
宮野弘紀(ギター)

作曲:久石譲

編曲:
宮野弘紀 (1)
大森俊之 (2,5,7,10)
篠田元一 (3,4,6,8,9)

 

My Neighbor Totoro Sound Book

1.The Path of the Wind (Acoustic Version)
2.Mother
3.The Village in May
4.Hey Let’s Go
5.My Neighbor Totoro
6.A Lost Child
7.The Dust Bunnies
8.Cat Bus
9.A Small Photo
10.The Path of the Wind

 

Disc. 久石譲 『王家の紋章 イラスト・ストーリー・ビデオ・オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 王家の紋章

1988年6月21日 CD発売 N20C-6
1988年6月21日 LP発売 N20U-6
1988年6月21日 CT発売 N20T-11
2004年9月25日 CD発売 ABCA-5067

 

「王家の紋章」
原作:細川智栄子 音楽:久石譲

 

原作コミックをもとにイラスト・ストーリー・ビデオ(約45分)が制作され、その音楽を久石譲が担当した作品。

シンセサイザーを基調としたさまざまなサンプリングされた民族楽器がその世界観を表現している。メインテーマである(1)は、エジプトを舞台とした作品だけに、音色的にはオリエントだが、その旋律は久石譲ならではの壮大かつ美しいメロディになっている。他アニメーション作品の「アリオン」や「ヴィナス戦記」に通じる、芯があり心を揺さぶられる久石メロディである。

その他軽快なポップス調の(2)や、ピアノとフェアライトの旋律がからみあう(4)など、この時代の久石譲の旋律美や音色美を感じさせる作品である。

とりわけメインテーマは、フルオーケストレーションされた、壮大な生のオーケストラサウンドで聴いてみたい。

 

 

久石譲 王家の紋章

1. 王家の紋章 ~メイン・テーマ~
2. キャロル ~きらめく瞳の中に~
3. 王者 ~蒼き獅子たち~
4. 愛のテーマ ~はるかなる時空を超えて~
5. キャロル ~想い~黄金の乙女の夢~

ALL TITLES MUSIC & ARRANGEMENT BY JOE HISAISHI

 

Disc. 久石譲 『となりのトトロ サウンドトラック集』

久石譲 『となりのトトロ サウンドトラック集』

1988年5月1日 CD発売 32ATC-165
1988年5月1日 LP発売 25AGL-3058
1988年5月1日 CT発売 25AGC-2058
1996年11月21日 CD発売 TKCA-71026
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72725
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10015

 

1988年公開 スタジオジブリ作品 映画「となりのトトロ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

映画で使用されたBGMを収録したサントラ盤。「ナウシカ」「ラピュタ」とはひと味違った、ほのぼのとした温かさをもつ久石の音楽が心ゆくまで楽しめる。オープニング主題歌「さんぽ」、エンディング主題歌「となりのトトロ」収録。録音は1988年2~3月。

LPと同時発売されたCDのジャケットは、絵柄は同じだがデザインが多少異なっている。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

宮崎作品はぼくの修行の場

-久石さんは10代から20代にかけては超前衛の現代音楽に属していたしたとお聞きしましたが。

久石 「10代の頃にミニマル・ミュージックを始めてね、テリー=ライリーとか、フィリップ=グラスとか、スティーブ=ライヒとか、それにシュトックハウゼンとか、ジョン=ケージとか、ほとんど現代音楽の人から影響を受けていました。あと学生時代は、勉強として、日本の人でいうと、武満徹さんや三善晃さんであったり──そういう人たちの譜面の分析とかをやっていましたから。」

-もともとはクラシックから出発されたんですね。

久石 「そうですね。もっと最初から言うと、4歳の時からヴァイオリンをやっていた蓄積になっちゃうんでしょうね。クラシックって短期間に身につけようとしても、なかなかむずかしいんです。例えば、ピアニストにしても、みんな4歳や5歳の頃からレッスンを始めているでしょ。ヴァイオリンもそうだし。そうして、ずっとやっていても、なかなか芽の出ない世界ですから(笑)。わりと時間がかかる世界なんですよ。」

-それとは逆に、映画音楽はいかに時間をかけずに仕上げるかが勝負なんじゃないかと思うんですけど。

久石 「あ、それは分かります。ただぼくの場合は吉野家の牛丼みたいな、”早い、安い、うまい”仕事は一切断る。つまり1日で音楽を収録してしまうような仕事はやらずに、フェアライト(生の弦音やヴォーカルを加工して使うコンピューターによるサンプリング・キーボード)など、いろんな機械を使いますから、そのための時間がすごくかかるんですよ。当然それに付随して、費用もかかるし、スタジオにも何日間かカンヅメにならなくちゃいけない。それで最後の仕上げにフルオーケストラも使うから、大変なんですよ。

ただ20代のかけ出しの頃は、そんな仕事なんて来ないし、それこそ、3日で70曲近く書くような仕事もやりましたから、早く書くこと自体は、そんなに問題じゃないんですが、あんまり”早い、安い、うまい”仕事ばかりやっていくと、どんどん状況が悪くなっていきますから。だから、例えば、制作期間に2週間、それに、その期間を支えるだけの予算、そういう条件をクリアできない仕事は、今、全部お断りしている状況なんです。」

-宮崎さんの映画の場合、イメージアルバムから、ひっくるめると、相当な時間が……。

久石 「かかりますよ。もう……大変ですね(笑)。ただ、宮崎さんの仕事は内容的にも非常に素晴らしいものだし、共感できますから、ぼくはとても大切にしているし。宮崎さんの映画をやる場合は、それを優先的にしてスケジュールを空けて、そこからやるしかないと思ってます。」

 

直感的に入ってゆきたい「トトロ」の世界

-前回の「天空の城ラピュタ」は、アイルランド民謡を頭において作曲されたそうですが、「となりのトトロ」で、ベースに考えていらっしゃるのは、どんな音楽ですか?

久石 「いやぁ……。むずかしいんですよね。実は「ラピュタ」をやる時は、すごく悩んだんです。あの映画にある、愛と夢と冒険というのは、ぼくとは全然相容れないから(笑)。どちらかというと、ぼくは不純だからね。例えば、マイナーのアダルトなメロディを書く方が楽なんですよ。ところが、メロディ自体が非常に夢を持っていて、優しくて包容力があるものとなると、すごくむずかしいんです。制作中は、えらい騒ぎだった。困ったなと思っていたら、今度はもっと可愛らしい話になって(笑)、「うわぁ、どうしよう」というのが正直な話。しかも「となりのトトロ」のイメージアルバムを作りながら同時進行していたのがセゾン劇場(東京銀座)で上演した、沢田研二さんや役所広司さん出演の「楽劇ANZUCHI」の音楽。かたや、えらくおどろおどろしい悪魔の世界ですからね。それと、あの清純な世界が同時進行していたんだから、ちょっと気が狂いそうだった(笑)。でも、それはある意味で試練であるわけです。」

-ラッシュはご覧になったんですか?

久石 「部分ごとにできたものを、全然脈略なしにつないだフィルムを、先日一度観せていただきました。」

-かなり、手がかりに?

久石 「なりましたね。やはり、また素晴らしい作品になりそう。かなりメロディラインを重要視して、何かとっかかりができるんじゃないだろうかって気がしたんです。いわゆるストーリーらしいストーリーの展開をしていないでしょう。」

-そうですね。「ナウシカ」や「ラピュラ」は、物語のメリハリで見せるというか、緩急自在な展開の映画でしたからね。

久石 「そう。ハッキリと、ストーリーがあったでしょう。でも今度は、田舎の一日というか、ちょっとしたシークエンスが、つながっていく種類のもので、ストーリーが大きく展開するものじゃないからね。その分だけ、こちらも従来のやり方とは、スタンスを変えなきゃいけないという気がするんですよ。まだ具体的には言えないけど、非常に直感的に今回は仕事に入りたいなという気がしてるんです。」

-3本続けて組まれてみて、宮崎さんの映画作りについての印象を。

久石 「宮崎さんは、生きる姿勢というものと、アニメーションを通して表現していくこととが、全部一致してるんですね。映画のための映画、アニメのためのアニメではなくて、自分が生きるという姿勢の中に、ちゃんとアニメーション──アニメーションじゃなくてもいいんですけど、そういう自分の創造物がありますから。非常に姿勢が明確というか、個人的にすごく尊敬しています。

仕事自体は中途半端なことはできないから、メチャクチャ苦しいんですよ。ただ、それをやることによって、こちらも一回りも二回りも大きくなれる。試練の場でもあるし、修行の場でもある。と同時に、自分のアイデンティティを確認できる場でもあるから、とても大切にしています。

ぼくらの場合は、年間にかなりの量の仕事をこなしますでしょう。すると、その中にはビジネスのための仕事があったり、いろいろあるわけですよ。だけど、その中でやっぱり、自分がこれは、という仕事って、年間に何本かあるんです。宮崎さんの映画は、その中でも、ぼくにとっては、特に一番大きな仕事ですね。」

●’88年4月号「月刊アニメージュ」の「野村正昭のジブリ制作レポート・音楽監督から見た〈トトロ〉&〈火垂るの墓〉」より転載。

(CDライナーノーツより)

 

 

解説

88年4月16日より全国東宝系で公開された宮崎駿監督のアニメ映画「となりのトトロ」。監督の前作「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」に引き続き、音楽を担当したのは久石譲氏。

物語の舞台は昭和30年代の自然と四季の美しい日本、とある田舎に越してきた、小学校6年のサツキと5歳のメイのふたりの女の子と、昔からそこに住むオバケ達(トトロ)との心暖まるふれあいが、日常のエピソードを積み重ねながら、のどかに描かれる。

音楽の制作にあたって、まず10曲のイメージソングが制作された。(イメージソング集として87年11月25日LP、CD、TAPE 発売) これをもとにした宮崎駿監督と久石譲氏、録音演出の斯波重治氏らのディスカッションののち2月25日から3月26日まで、東京・六本木のワンダーステーションスタジオ、にっかつスタジオセンターにおいて録音された。

このアルバムでは映画に使用された曲のほか、メロディが使用されているイメージ曲から「まいご」「風のとおり道(インストゥルメンタル)」の2曲を、リミックス(楽器の音のバランスを変えること)した上で収録した。「さんぽ(合唱入り)」もこのアルバムのために楽器を追加、リミックスしたもの。なお、「メイとすすわたり」「メイがいない」の前半部分、「オバケやしき!」「ずぶぬれオバケ」の後半部分は、映画では演出のため使用されていないが、このアルバムでは完全に収録している。

「ナウシカ」「ラピュタ」とはひと味違ったほのぼのとした暖かさをもつ久石譲氏の音楽を、心ゆくまでお楽しみいただきたい。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

「それはこういう物語のあり方とも関わってくるんだけれど、この作品は中編でしょう? ちょっといい方が難しいけれど、普通のオーケストラだけの曲を書くと、ごくあたりまえの幼児映画になってしまうんですよ。だから『トトロのテーマ』はミニマル・ミュージック的な、ちょっとエスニックなふんい気を持たせています。子どもたちが家の中を駆けまわるシーンでは、メロディー自体がリズミックな感じの曲にして、リズム感を出したり。そういうことはかなり意識的にやったし、BGMの曲数もかなり多く作りましたしね、あとで抜いてもいいようにと思って。

エスニックなものと普通のオーケストラの曲を両方使うということでは『ナウシカ』以来一貫しているんですよ。ただ今回は、『さんぽ』 『となりのトトロ』という歌をメインテーマにして、僕らが”裏テーマ”と呼んでいた『風のとおり道』を木の出てくるシーンに使った。そのへんの構造がうまくいったのでよかったんじゃないかな」

「そうですね。それと、一ヵ所ね、三分五十秒ぐらいの曲をオケでやった部分があります。それは、メイがオタマジャクシをみつけて、それから小トトロを発見して、不思議な森の迷路をぬけて、トトロに出会うというシーンなんだけど、この間、五十何ヵ所か、絵とタイミングをピッタリ合わせるという離れ技をやったんです。ゼロコンマ何秒かというタイミングでキッカケ出して。単純になっちゃいけないからというので、倍速にしてリズムをきざんだりとか、いままでのなかでいちばん時間かかったんじゃないですかね。ただ、ダビングの音量レベルが低かったみたい。だからスクリーンで見てもバシッと決まる音が小さいから、いまひとつしまらないというか……」

Blog. 久石譲 「となりのトトロ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「となりのトトロ」は、映画に先駆けて制作されるイメージアルバムのデモ作りから参加させてもらいました。主題歌はわたしが歌うことになっていたのですが、当初「さんぽ」は杉並児童合唱団が歌うことになっていました。でも、「井上あずみの声が入った方がしんがあっていいのでは」とうことになり、児童合唱団用に歌ったわたしのデモがそのまま映画に使われたんです。こんな経験は後にも先にもこの一曲だけです。その曲が、20年たった今でも子どもたちが歌ってくれるわたしの代表曲になったのですから、出会いや縁は大切なものだなってつくづく思いましたね。

Blog. 「別冊カドカワ 総力特集 崖の上のポニョ featuring スタジオジブリ」(2008) 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

音楽と声の出演について

宮崎監督はこの映画に使われる歌について、当初からはっきりとした意向を持っていた。前述の企画書には、「追記 音楽について」として次のように書かれている。

「この作品には二つの歌が必要です。オープニングにふさわしい快活でシンプルな歌と、口ずさめる心にしみる歌の二つです。(中略) せいいっぱい口を開き、声を張りあげて歌える歌こそ、子供達が望んでいる歌です。快活に合唱できる歌こそ、この映画にふさわしいと思います。(後略)」

音楽は『ナウシカ』『ラピュタ』に引き続き、今回も久石譲に決定。そして、これまでの二作と同様に、まずイメージアルバムが作られることになった。映画に実際に使うサントラの音楽を制作する前に、イメージを膨らまし具体化するために生み出される様々な曲をアルバム化したものがイメージアルバムだが、今回は宮崎のこうした意向を受けて、イメージアルバムは歌集として制作されることに。そして歌詞を児童文学作家の中川李枝子に依頼することになった。中川の『いやいやえん』を読んで大きな衝撃を受け、以来ファンとなった宮崎たっての希望であり、中川はこれを承諾。最終的にアルバムは中川作詞の六曲、宮崎他の作詞による四曲のボーカル曲全十曲とインストゥルメンタル一曲の全十一曲の「イメージ・ソング集」として完成した。その中から中川作詞の「さんぽ」が映画のオープニングに、宮崎作詞の「となりのトトロ」がエンディングに使用され、いずれも子供達に広く歌われるスタンダードナンバーとなった。特に「さんぽ」は全国の保育園・幼稚園ではほぼ必ず歌われる歌となり、日本で生まれ育った現在二十歳以下のほとんどすべての人が、この歌を歌ったことがあるのではないだろうか。

サントラ音楽は、久石得意のミニマル・ミュージックの要素を随所に取り入れて制作され、いたずらに神秘的ではなく、不思議でありながら親しみもあるという感じをうまく醸し出し、映画の世界に見事にマッチしていた。また、イメージソング集に入っていたインスト曲の「風のとおり道」はBGMとして劇中のいくつかの場面で使用され、『トトロ』のいわばもう一つのテーマ曲として大変強い印象を残した。なお、前二作は高畑監督がプロデューサーとして音楽の打ち合わせも行ってきたが、『トトロ』は宮崎監督が前面に出て久石と打ち合わせを行った初の作品でもある。

(ジブリの教科書 3 となりのトトロ より抜粋)

 

 

宮崎:
「(中略) 久石さんと話してて、音楽のことなんかも随分悩んだけど、つまり神秘性をやたら強調しちゃうと違うしね。かといって、ムジナが隣に出てきましたっていうふうに、やたら親近感を持って作っちゃうと、これも違う。だから、久石さんのミニマル・ミュージックの無性格な感じが、あれが一番よかったですね。あれよりもっと神秘的になっちゃうと、神秘になっちゃうし、どっかで聞いたような音が入ったりして、そこら辺がわかってるけどちょっと違うっていう、そういう感じがちょうどよかったんじゃないかなと思うんです。

不思議だったのは、サツキの横に現われて立っている時にかかってる音楽はね、一回できた音楽を──七拍子の基調のリズムがあるのを──それがずーっと入ってたのを少し多すぎるから抜いてくれっていったんですよ。

それで、一回ごとに久石さんがミキシングの中で抜いたんですよ。”一、二、三、四、五、六、七。フッ”と数を数えて抜いてね。また数を数えて入れたり。そしたら、とてもよくなったんです。それを映画にひょいとあてたらぴったり合ってたんです。不思議なくらいにうまく合っちゃったんです。

サツキが見上げる時にはリズムがなくて、トトロが出てくるとそのリズムがガガンとかかってね。まあ、こんなことも世の中あるんだなって思いました(笑)。あそこの音楽はよかったですねえ。邪魔しないで、性格を決めないで、なおかつ妙な、不思議な感じが出てきて、でもやたらに不思議じゃなくて、妙に親しくて……音つけて、音楽つけて、あのシーンは本当によくなりました。

音楽の制作に関しては、久石さんもずいぶん悩んでましたね。つまり、明るくしなくてはいけないんだと彼は思ってたわけです。でも、明るくしなくてもいいんだってことが、僕自身もはっきりいいきれたのは、映画が終わってからです。途中では、久石さんにはそんなに明るくする必要はない、アッケラカンと音楽を全部につけちゃうとよくないといって、やり直した所もあります。しまった、音楽は僕がもう少し歌舞音曲にくわしければ、こんなことにはならなかったと思う箇所がいくつかあります。音楽というのは、本当にあててみないとわからないというところがあるんですねえ」(後略)

(ジブリの教科書 3 となりのトトロ より)

Blog. 久石譲 「となりのトトロ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

鈴木:
ぼく、忘れもしないのがね、トトロとサツキとメイが、雨のバス停で出会うシーン。あそこは、すごい大事なシーンでしょ。なのに、宮さんは久石さんに言ってるんですよ、「音楽はいらない」って。でね、しょうがないんで、宮さんには内緒で、『火垂る』を作ってる高畑さんに相談に行ったんです(笑)。そしたら、高畑さんって決断が早いから、「いや、あそこは、音楽があったほうがいいですよ」って。「ミニマルでいくべきだ。久石さんだから、絶対できる」って言った。

久石:
だから、いわゆるメロディーでいくんじゃなくて、ミニマル・ミュージック的な……

鈴木:
そう。で、曲ができました。で、宮さんっていう人は面白いんですよ。聴いた瞬間、「これはいい曲だ!」って(笑)。「あそこは音楽いらない」って言ったのは、かけらも覚えてないわけ。

一同:
あははは(笑)。

鈴木:
とにかく、あの映画の一番のポイントはね、バス停でのトトロとの出会い。子供は、それを信じてくれますよ。だけど、大人が果たして信じてくれるのか。それを、あの曲によって実現した、とぼくは思ってるんですよ。大人も、トトロの存在を信じることができた。そういう意味でね、あの音楽は、本当に大事な曲だったと思います。

鈴木:
いや、だからね、さっきの、バス停での出会い──やっぱりあそこに音楽がなかったら、あの映画がほんとに名作になったのかなって思う。そのぐらいの力を、音楽は持っている。トトロの存在を大人の観客に信じさせるためには、あの音楽は必須でしたね。

Blog. 「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 3」久石譲登場回(2008)「ジブリアニメとの25年」内容 より抜粋)

 

 

 

となりのトトロ LP 復刻

(LPジャケット)

 

 

「となりのトトロ」/井上あずみ

1987年10月25日 EP発売 7AGS-12

となりのトトロ LP 2

(EPジャケット)

 

1.となりのトトロ
2.君をのせて

 

 

「となりのトトロ」/井上あずみ

1988年3月25日 EP発売  7AGS-14
1988年3月25日 CDS発売 10ATC-163

(EPジャケット)

 

1.となりのトトロ
2.さんぽ

 

 

(CDSジャケット)

 

 

「となりのトトロ」CD MINI ALBUM

1988年8月25日 CDS発売 15ATC-170

(CDSジャケット)

 

1.さんぽ /井上あずみ
2.風のとおり道 /杉並児童合唱団
3.まいご /井上あずみ
4.となりのトトロ /井上あずみ

 

 

なお、2000年再発盤にはTrack.3,4に(カラオケ)が追加収録されている。

2000年4月26日 CDS発売 TKDA-71926

(CDSジャケット/ CDS盤)

 

1.となりのトトロ
2.さんぽ
3.となりのトトロ(カラオケ)
4.さんぽ(カラオケ)

 

 

2004年にはマキシシングルとして再発売されている。

2004年10月27日発売 CDS発売 TKCA-72756

(CDSジャケット / CDS盤)

 

1.となりのトトロ
2.さんぽ
3.となりのトトロ(カラオケ)
4.さんぽ(カラオケ)

 

 

なお、同主題歌をふくめたジブリ映画歌曲集やカラオケ版収録CDも発売されている。

 

 

久石譲 『となりのトトロ サウンドトラック集』

1. さんぽ -オープニング主題歌-
2. 五月の村
3. オバケやしき!
4. メイとすすわたり
5. 夕暮れの風
6. こわくない
7. おみまいにいこう
8. おかあさん
9. 小さなオバケ
10. トトロ
11. 塚森の大樹
12. まいご
13. 風のとおり道 (インストゥルメンタル)
14. ずぶぬれオバケ
15. 月夜の飛行
16. メイがいない
17. ねこバス
18. よかったね
19. となりのトトロ -エンディング主題歌-
20. さんぽ (合唱つき)

歌唱:井上あずみ、杉並児童合唱団
作曲:久石譲
作詞:中川李枝子、宮崎駿
編曲:
久石譲
平部やよい (2、10後半、15後半、4、5、6)
武市昌久 (20)

プロデューサー:久石譲

スタジオ:ワンダーステーション、にっかつスタジオセンター

 

My Neighbor Totoro (Original Soundtrack)

1.Hey Let’s Go – Opening Theme Song
2.The Village in May
3.A Haunted House!
4.Mei and the Dust Bunnies
5.Evening Wind
6.Not Afraid
7.Let’s Go to the Hospital
8.Mother
9.A Little Monster
10.Totoro
11.A Huge Tree in the Tsukamori Forest
12.A Lost Child
13.The Path of the Wind (Instrumental)
14.A Soaking Wet Monster
15.Moonlight Flight
16.Mei is Missing
17.Cat Bus
18.I’m So Glad
19.My Neighbor Totoro – Ending Theme Song
20.Hey Let’s Go – With Chorus

 

Mon Voisin Totoro
(France, 1999) LBS A99011-2

1.La ballade / Thème d’ouverture
2.Le village au mois de mai
3.La maison hantée
4.Mei et les boules de suie
5.Le vent du matin
6.Même pas peur
7.Allons à l’hôpital
8.Maman
9.Le petit monstre
10.Totoro
11L’arbre de la forêt de Tukamori
12L’enfant perdu
13.Le chemin du vent
14.Le monstre tout mouillé
15.L’envol au clair de lune
16.Mei a disparu
17.Nekobus
18.Je suis triste

 

이웃집 토토로 Original Soundtrack
(South Korea, 2004) PCKD-20166

1.산책 (오프닝 테마송) 
2.오월의 마을
3.도깨비집!
4.메이와 숯검댕이
5.해질 무렵의 바람
6.무섭지 않아
7.문병 가자
8.엄마 
9.작은 도깨비
10.토토로
11.츠카모리의 큰 나무
12.미아
13.바람이 지나는 길 (Instrumental)
14.흠뻑 젖은 도깨비
15.달밤의 비행
16.메이가 없다
17.고양이 버스
18.다행이야
19.이웃집 토토로 (엔딩 테마송) 
20.산책 (합창)