Score. 『久石譲 地上の楽園』

1994年12月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム『地上の楽園』とのマッチング・ピアノ譜。ヴォーカル曲はピアノ弾き語り、インスト曲はピアノ・ソロとなっている。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / 地上の楽園

1. The Dawn
2. She’s Dead
3. さくらが咲いたよ
4. HOPE
5. MIRAGE
6. 季節風 (Mistral)
7. GRANADA
8. THE WALTZ (For World’s End)
9. Lost Paradise
10. Labyrinth of Eden
11. ぴあの (English Version)

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/パイオニアLDC株式会社
編曲・採譜:青山しおり
定価:1,500円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 テレビ・ドラマ・アルバム』

1994年12月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。久石譲が手がけたテレビドラマからのセレクト。ピアノ弾き語り、ピアノソロ、ヴァイオリン+ピアノなど、バラエティに富んだピアノスタイルで収載。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲/テレビ・ドラマ・アルバム

Original Sound Track 『ぴあの Vol.1』より
ぴあの “Joe’s Project” [ピアノ弾き語り]
Ripply Mind ~さざめく心~ [ピアノ・ソロ]
The Bonds Of Love ~愛情の絆~ [ピアノ・ソロ]
Fortepiano ~心の動機~ [ピアノ・ソロ]
From Pianissimo ~小さな決心~ [ピアノ・ソロ]
Path To The Lights ~希望への道~ [ピアノ・ソロ]
White Lie ~罪のない嘘~ [ピアノ・ソロ]
Twitter ~姉妹の喜び~ [ピアノ・ソロ]
Behind Backs ~ひそかな裏切り~ [ピアノ・ソロ]
Instrumental ~ぴあの~ [ピアノ・ソロ]

Original Sound Track 『ぴあの Vol.2』より
Regrets ~夕焼け~ [ピアノ・ソロ]
She Calls ~おむかえ~ [ピアノ・ソロ]
Tears ~夜~ [ピアノ・ソロ]
No Answer [ピアノ・ソロ]
ぴあの “純名里沙&Joe’s Project” [ピアノ弾き語り]
ぴあの ~Instrumental~ [ヴァイオリン・ソロ+ピアノ伴奏]
へんなまち ~Introduction~ (※) [ピアノ・ソロ]
へんなまち “純名里沙” [ピアノ弾き語り]
ぴーかぴか “純名里沙” [ピアノ弾き語り]
Broken Whistle ~拾いもの~ [ピアノ・ソロ]

Album 『地上の楽園』より ☆特別収載
ぴあの “English Version” [ピアノ弾き語り]

フジテレビ系全国ネット・ドラマ 『大人は判ってくれない』より
君だけを見ていた ~オープニング・テーマ~ [ピアノ・ソロ]

(※)CD『ぴあの Vol.2』に収録されている11曲目「へんなまち」と12曲目「ぴーかぴか」の前後に本楽譜のインストの曲が収録されています。

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/パイオニアLDC株式会社
編曲・採譜:青山しおり
定価:1,500円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 スペシャル・セレクション』

1994年6月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム「PIANO STORIES」、および初期アルバムからセレクトされたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

寄稿

”PIANO”──自分にとって”PIANO”は、とても大切な楽器であって、”PIANO”と向かい合う時には、自分は作家としてではなく、まったくの「個人」に戻ってしまいます。

「個人に戻る」──ということは、非常に基本的なことに戻るということなのです。

メロディーを創り、それに対してコード付けをし、さらにベース・ラインを付け加える…いろいろな要素が一体となり、「自分が素朴に指を動かす」。──この行為の先、そして指の先から”メロディー”が立ち昇って行く…このような一番シンプルな行為に戻りたいと思っています。そして結集されて生まれ出たものが、アルバム『PIANO STORIES』なのです。

この基本姿勢は、今日まで変わりません。それは何かというと、「自分の内なるメロディーに対して、自分で耳を傾ける」ということなのです。このような素朴な行為に身を委ねたいと思っています。

作家としてわがままに言わせてもらえば、『PIANO STORIES』の一番最初の聴衆は「自分」である…と。「自分個人」に向けて創ってきたものなのです。

そして、第二の聴衆として、僕と対峙するもう一人の「あなた」。いつも、「僕対もう一人の個人」に向けられる、「一対一の音楽」として創り上げてきました。そういう関係の音楽だと自分では思っています。

それが少しずつ拡大してきていることは事実です。

例えば、アルバム『THE UNIVERSE WITHIN』では、もっと自分が感じる世の中の人々に対する「やさしさ」のメッセージ、さらに広がりを持ったメッセージになっています。

NHKスペシャル『驚異の小宇宙・人体』をご覧になってすでにご承知のように、人間の持っているメカニズムは、人間が創りうる範囲を超越しています。人間生体のメカニズムの凄さ、これはまさに「神の領域」なのではないか…ということや、「人間」に対する「尊厳」と「やさしさ」をテーマに謳い上げたものです。

この時、自分の中で「一対一」の関係で創り上げた、”PIANO”の楽曲がもっと広がりをもてたことは事実です。毎回アルバムをリリースするごとに、自分の中で、「自分」と「PIANO」の関係が少しずつ広がりながら、日々進行形で変わってきています。

例えば、アルバム『illusion』は基本的にヴォーカル・アルバムでしたが、タイトル・チューンの「illusion」に象徴されるように、このアルバムは自分にとって一番大事な作品であり、また次のアルバム『PRETENDER』でニューヨーク・フィルのメンバーと共演した「View of Silence」でも、「自分」と「PIANO」の関係は広がり、脈々と自分の中でも「PIANO STORY」が毎日できあがっています。

JOE HISAISHI

(寄稿 ~本スコア収載)

 

 

Cover Photo by Joel Meyerowitz
Prouncetown 1977

 

久石譲 / スペシャル・セレクション

◎from Album 『PIANO STORIES』
A Summer’s Day [Epilouge]
Resphonia [レスフィーナ] 『アリオン』から
W Nocturne [Wの悲劇] 『Wの悲劇』から
Fantasia (for Nausicaä) [風の伝説] 『風の谷のナウシカ』から
Innocent [空から降ってきた少女] 『天空の城ラピュタ』から
The Wind Forest [風のとおり道] 『となりのトトロ』から
Dreamy Child
Green Requiem 『グリーン・レクイエム』から
The Twilight Shore [砂丘 I] 『恋人たちの時刻』から
Lady of Spring [早春物語] 『早春物語』から

◎from Album 『THE UNIVERSE WITHIN 「NHKスペシャル驚異の小宇宙・人体 サウンドトラック」』
The Origin of Species [35億年の結晶]
The Inners [遥かなる時間(とき)の彼方へ] (Opening Theme-Synthesizer Version)
Mysterious Love [ひと・そして・愛]
Transient Love [うたかたの夢]
Birth [生命(いのち)の歓び]
The Inners [遥かなる時間(とき)の彼方へ] (Ending Theme-Orchestra Version)

◎from Album 『illusion』
冬の旅人 [フジ・東海テレビ全国ネット・テレビ・ドラマ『華の別れ』主題歌/Piano Solo Version]
illusion

◎from Album 『PRETENDER』
Manhattan Story
View of Silence

◎from Original Soundtrack 『タスマニア物語』
Tasmania Story “Main Theme” 『タスマニア物語』から

 

監修:久石譲
編曲・採譜・解説:青山しおり
定価:1,600円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 MY LOST CITY』

1992年2月20日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム『MY LOST CITY』のマッチング・ピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / MY LOST CITY

1. PROLOGUE [プロローグ]
2. 漂流者 [DRIFTING IN THE CITY]
3. 1920 [AGE OF ILLUSION]
4. SOLITUDE [IN HER・‥]
5. TWO OF US
6. JEALOUSY
7. CAPE HOTEL
8. 狂気 [MADNESS]
9. 冬の夢 [WINTER DREAMS]
10. MY LOST CITY
11. TANGO X.T.C.

 

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/東芝EMI株式会社
編曲・採譜・解説:田中あさ子
定価:1,300円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 スペシャル・セレクション II』

1992年2月20日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。アルバム『I am』『あの夏、いちばん静かな海』またシングル「草の想い」からもセレクトされたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / スペシャル・セレクション II

■from Album 『I am』
Deer’s Wind (from Main Theme of“KOJIKA STORY”) (映画「仔鹿物語」)
On The Sunny Shore
Venus
Modern Strings
Dream
伝言
Echoes
Silencio de Parc Güell
White Island
Tasmania Story (from Main Theme of “TASMANIA STORY”) (映画「タスマニア物語」)

■from Album 『あの夏、いちばん静かな海」
Silent Love (Main Theme)
Clifside Waltz I
Silent Love (In Search Something)
Bus Stop
Clifside Waltz II
Melody of Love
Clifside Waltz III
Silent Love (Forever)

■from CD Single 『草の想い/風の時間』
草の想い (映画「ふたり」 愛のテーマ)
風の時間 (映画「ふたり」 オープニング・テーマ)

 

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/東芝EMI株式会社
編曲:青山しおり/田中あさ子
定価:1,600円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 I am』

1991年3月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム『I am』のマッチング・ピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

本楽譜「I am」に掲載収録されている久石譲インタビューや、久石譲自身による楽曲解説をご紹介します。

 

 

「Piano Solo 久石譲/アイ・アム (I am)」 監修:久石譲 ドレミ楽譜出版社

はじめに

今回のアルバム『I AM』は、とてもピアニスティックな仕上がりになっています。

”Piano”──自体にとても入り込んで作品を作り上げました。基本的には、例えば、メロディーをていねいに、綺麗に歌わせていくところや、モード的な音の組み合わせ方でかもしだす微妙なコード進行の変化、そしてその「響き」などを大切にして欲しいところです。

”Piano”から奏でられる「微細な音」を聴いて、微妙なタッチをつねに意識して演奏してみてください。

それから、一番重要なポイントは「Pianoと遊ぶ」ことです。

本当に音楽を楽しむ、趣がある、そういう「自分だけの時間」を持つ為に、そして「自分を再発見する」とか、あるいは「自分に戻りたい時」に作品を弾いてもらえれば、とても嬉しいですし、これほど作家としての幸せはありません。

より多くの方々に僕の作品を聴いていただけて、そして、みなさん御自身が弾いてくだされば、”Hisaishi Melody”はよりいっそう馴染み深いものになっていただけると信じています。両手で演奏するのが難しければメロディーだけを指1本でポンポンとなぞるだけでも作品を味わっていただけると思います。

久石譲

 

 

INTERVIEW

アーティストとしてだけではなく、コンポーザー、アレンジャー、パフォーマー、プロデューサー、映像[映画・CF等]や舞台音楽などの活動を通して、次々と”MUSIC”を創り上げ、世界的にも高い評価を得ている”Mr. Joe Hisaishi”。

そこで、”Mr. Joe Hisaishi”の魅力を解明するために、小さい頃のこと、学生時代、そして、今回の力のこもったアルバムのことなど、熱く語っていただきました。

 

Q.最初に音楽と出逢った頃のお話から教えていただけますか?

久石:
そうですね、ヴァイオリンを習い始めたのが最初で、4歳の時でした。レッスンは、クラシック・オンリーでしたが、それと別にラジオから流れるあらゆるジャンル、例えば、童謡、歌謡曲、ポップスなどいろいろと聴くことが好きでしたね。

 

Q.音楽とは別に、小さい頃に興味を持っていたものはなんですか?

久石:
映画がとても好きでしたね。父が好きで、小さい頃よく映画館に連れていってもらいましたよ。多少、大きくなってからは一人で見に行くようになりました。僕が住んでいた街には、映画館が2館あって、当時、上映作品が週変わりで3本立てだったんです。両方の映画館に行って週に6本、そうすると1ヵ月に合計24本。夏休みや特別上映期間になると、上映作品が増えて、平均して1ヵ月に30本近い作品を見て、そして年間を通しては360本ぐらい。このペースで幼稚園から小学校の時期に見てましたね。

 

Q.年間に360本の上映作品を見ると映画からの影響が強かったのではないですか?

久石:
これだけ見てくると1本1本の作品からの影響や印象は逆に薄くて、今、普通の人達が「テレビを見る」という感覚と同じで、ずっと映画館にいた、という感じですよね。映画館に座って見て……、小さい頃の「基礎体験」のような形で自分の中に残っています。だから「映画」という特別なものに対して、影響や印象が残るのではなくて、本当に日常生活の中でそれがなければならないもの、という感じで自分に染み付いてしまいました。それと当時、テレビの普及が過渡期にあった頃で、テレビが貴重だった時代でしょ、こんな話をすると古いと言われるけど(笑)。テレビが普及していても画面は小さいし、音も悪かった…。その点やっぱり一番良い音をしていたのは映画館だったんですよね。そういう意味では、当時、大きな画面で、しかも一番良い状態で「(映画)音楽」を含めて、見て、聴いていたということになりますね。

 

Q.「映画」や「音楽」から影響され、そこから「感受性の引き出し」が蓄積されていったわけですよね?

久石:
そういうこともあります。あるハズなんだけど、基本的に「引き出し」になるものは「技術」なんですよ。で、この当時はそんなこと考えていないから、むしろ、引き出しになるか? ならないかということよりは、「映画」を通して様々な人生を見せてもらったわけですよね。お話したように年間360本近い本数を見るっていうことは、作品を選んでないんですよ。例えば、アニメーション、西部劇、恋愛物語、怪談映画…とにかくなんでも見ました。つまりありとあらゆるものに対して、僕は素直に受け入れていたわけです。それは、もしかしたら、今の自分が「音楽のジャンルをこだわらない」っていうことに近いことなのかもしれませんね。

 

Q.当時、平行してどんな「音楽」に興味を持っていましたか?

久石:
中学に入学した頃は、ブラス・バンドに入部しました。最初はトランペット。入部したその日に音が出て、翌日からサード・トランペットを吹きました。半年たって、トップを吹いて、ソロをやったり…。翌年の2年生には、サキソフォンをやって、同時に指揮もしました。でも3年生になったらやめちゃったんですけどね(笑)。そういう状態だったら、むしろ、音楽的にはクラシックよりは、中学時代に出逢った「ビートルズ」の影響が強かったですね。高校時代には、ビートルズの他にもポップスやジャズをよく聴いていましたし、当時は聴く側から、ブラス・バンドのような「音の出せる側」の現場に、つまり自分で演奏することが、楽しかったことですね。

 

Q.数々の映画や音楽との出会いを経て、大学時代にはどのようなものに興味を持ち始めていましたか?

久石:
大学(国立音楽大学作曲科)の3年になる頃に出逢ったテリー・ライリーの『ア・レインボウ・イン・カーブド・ミュージック』にショックを受けましたね。それまでの「現代音楽」の語法とは違うなにかがあって、衝撃的でした。

 

Q.その頃は、「現代音楽」の語法に基づき作曲をしていたわけですか?

久石:
大学当時、「クラスター」や「12音技法」等のいわゆる現代音楽の語法の中で、いろいろと自分も考えに考え、悩みに悩んだあげく「ミニマル・ミュージック」のスタイルを取り入れながら作品を仕上げていましたね。このスタイルを自分なりに咀嚼し、把握して表現するのに2年間かかりました。

 

Q.大学卒業以後、プロとして活動を始めた頃のお話を教えていただけますか?

今にして思えば、大学時代に幸か不幸か、ロック関係の友達がいなかったんですね。もし、ドラマーやベーシストの友人がいたらおそらくガラッと変わった人生になっていたと思います。当然のごとくすぐに”バンド”を結成するだろうし……。今日まで「バンド経験ゼロ」っていう珍しい人ですからね(笑)。普通だったらバンドをやったり、セッションをしながら次第にスタジオ業界の仕事をこなして行くというパターンですよね。僕の場合、最初からスタジオ・ワークでしたね。学生時代の関係じゃなくて、友人関係や、音楽関係、特に現代音楽の関係が多くて、スコアを書く仕事や映像関係の仕事が先でした。

 

Q.プロとしての初期活動はアレンジや作曲が先だったわけですか?

久石:
そうですね。それと映像に関する仕事が一番最初でしたね。映像に関するアレンジが特別なわけじゃないけど……。だけど、今でも思うけどバンドを結成するような友人達に出逢っていたら人生はまったく違ったものになっていたような気がするね。そうすると「風の谷のナウシカ」の音楽等は生まれていなかったかな……。

 

Q.今回のアルバムに収録されている「Venus」や「Echoes」に聴かれる民族音楽との出逢いはいつ頃でしょうか?

久石:
民族音楽はもともと最初から好きだったんですね。エスニックな音楽が大好きで、そこから得る要素は自分の体験外のものなので……。と同時に、僕がやってきた「ミニマル・ミュージック」の音楽的な構造が民族音楽と近い要素を持っていますからね。ミニマル・ミュージックを始めた頃、アフリカ民族音楽のリズム構造を研究したり、中近東のインド音楽に聴ける16拍子の曲や複雑なリズム構成とか、同時にその音楽の時間の流れなど、特殊な時間の流れですよね。そうやって研究していくうちに民族音楽の魅力に魅せられて、気づいてみたらクラシックの勉強と同じかそれ以上ぐらい、自分の中にエスニック的な要素が色濃く染み付いていましたね。

民族音楽的な要素をシンセサイザーで表現する場合、比較的そのニュアンスは出しやすいんだけど、今回のような”ピアノ”と”ストリングス”という「西洋音楽の王者」みたいな楽器編成で演奏する場合、難しいことなんですね。当初は、エスニック的な要素を取り入れられなくて悩んでいたんです。悩んでいたというよりは、取り入れられないだろうなって思ってましたから……。作品を仕上げていく段階で、結果的に「Venus」や「Echoes」の中に、本来の自分らしさを出せたので、とても嬉しいですね。

 

Q.今回のアルバムのコンセプトを教えてください。

久石:
基本的には、現在の商業ベースで作られている音楽の典型的なことはいっさいやめようと……。例えば、誰が聴いてもみんな同じように聴こえるようなものは意味がないしね。全曲に共通していえることなんですけど、基本ラインとして”ピアノだけで表現する(音楽性を保たせる)”ことがポイントなんですね。そして、そこに弦楽のアレンジを入れると。つまり、弦楽を入れて曲を保たせるのではなく、あくまでも”ピアノ”がメインということですね。それに、ぜいたくに弦楽の音色を必要最小限に加えるというコンセプトです。

アルバムをピアノと弦楽だけで作り上げることは非常に難しいことです。なぜ難しいかというと、その編成に耐えうるだけの強力なメロディーを生み出せなければならないし……。そういう意味でいえば、自分には”Hisaishi Melody”とみなさんがおっしゃってくれてるものもあるし、チャレンジできるのではないかなって……。

作品を作り上げていく段階で、一歩間違えるとそれが単にイージ・リスニングになってしまう可能性があるし、イージ・リスニングにしない為には、自分を含めて共演者の持っている確固たるアーティスト性やパーソナリティーがなくてはいけないわけですよ。つまりとても危ういところで作りあげていて、山岳の崖っぷちを歩いているようなものですね。例えば、一歩間違ったらリチャード・クレイダーマンになってしまうし、その反対に踏み外してしまえば、非常に難解なものにもなってしまう。また、要素を剃り落としている分だけ、飽きてしまう可能性も出てきます。

そんな中で、生み出すメロディーを信じて、そして、余計なものをどこまで剃り落とすか? という作業をしながら、例えば、「エスニック的なものが好き」という自分の志向する要素を含めたところでの、削り採る作業といっていいのかな? 音楽的な無駄を排除し、必要最小限の音で作り上げる……これが今回のアルバムで一番重要なことでしたね。

 

Q.完成されたアルバムを客観的に聴きかえしてみてどのような感想をお持ちになりましたか?

久石:
そうですね。初めて完成されたソロ・アルバムを作ったなって印象を持ちましたね。レコーディング中に、何百回、何千回って聴いていますから、トラック・ダウンが終了した頃には、あまり聴きたくないんですよね。でも今回のアルバムに関しては、その後、何度も繰り返して聴いても飽きないんです。それは、「完成されているアルバム」で、僕が創造したという意識を超えて、聴いていられる。

なんていったらいいのかな、不思議なもんでね、アルバムの完成度が高ければ高いほど、その作った作家から作品は離れて行くんですよ。とても客観的な作品になってしまう。そういう意味でいうと、自分の作品であっても、もう僕の作品じゃないっていうような、自分でいうのも変だけど、すぐれた作品に仕上がったと思いますね。

作品を完成させる段階で、ものすごく苦しんだり、悩んだりしました。微妙なコード進行の変化や、1音を付け加えるか、加えないかによって、その曲の雰囲気が変わってしまう……そういう微妙なところで物凄く苦しんだわけです。端の人はどんなことで、どうして苦しんでいる理由が分からないような細かいことで悩んでいたわけでしょ、ところが、苦しんで苦しんだほど、そうやって生まれ出てきた作品にはその苦しんだあとかたもないんですよ。そうして完成した作品は素晴らしいわけです。つまり、作家が苦しんだ形跡が見えるような作品にはろくなものがない。苦しんだ形跡が分かる作品は、カッコが悪いわけで、そして完成度が低い。

完成した作品は、「おお、ここでこんなことをやってる、凄いことやってるな」、「何だこのコード進行は? 何だこのモードは?」ってなプロ志向的な聴き方もできるし、反対に音楽に詳しい方でなくとも、さり気なくBGMとして流したり、「まあ綺麗なメロディーね、楽しい!」というような音楽本来の楽しむ為の聴き方もできるんですね。そんな僕が考える音楽の理想的なことがこのアルバムでできたなって気がしますね。

 

Q.作家の手から離れて行った作品がスタンダードになっていくわけですね? そして聴き続けられると同時に、弾き続けられていくと……?

久石:
できたらね、そういうスタンダードになって欲しいという願いを込めて作ったアルバムですね。例えば、前作『Piano Stories』は、日々アルバムがみなさんの手元に送り出されているわけで、そして、その楽譜もみなさんの手元に届いて、僕の曲を復習(さら)っていてくれると、そうするとその曲は定着しますよね。そのことは、作家にとってとても幸せなことですよ。

今回のアルバムの一つ一つの作品を完成するにあたっても、例えば、とんがり過ぎちゃえば1回聴いて(弾いて)、「おもしろかったな」で終わっちゃう。そういうことのないように、何度も聴いて(弾いて)楽しめる、そう意図して作り上げました。そういう意味では、現代のスタンダードを目指したといってもいいかも知れませんね。

 

Q.それでは、最後に来年(1991年)の活動予定や今後、チャレンジして行きたいものを教えてください。

久石:
来年(1991年)は、いろいろと大変ですよ(笑)。その予定の為のパンフレットを作っているくらいですからね。まず、本アルバム『I AM』がリリースされます。そして『I AM』の楽譜集とパーソナル・ブックを出版します。そして、現在まで各方面からの要望が高かったフル・オーケストラとの共演が実現します。来年(1991年)の2月22日、アルバム・リリースと同時に、東京の池袋にある東京芸術劇場で行います。編曲した楽譜を準備するのも大変ですが、とても充実したコンサートになりますよ。それと、全国各地を弦楽カルテットとパーカッション程度の小編成でコンサート・ツアーを予定しています。

プロデューサーとしては、「サウンド・シアター・ライブラリー」という新しいレーベルをスタートさせます。NECアベニューにある、僕の”IXIA Label”の中に「サウンド・シアター・ライブラリー」というシリーズを作りまして、今日の日本の映画音楽が落ち欠けているものを復興させようという新しいレーベルです。プロデューサーとしてももちろん、一作家としても力をそそいでいきたいと思っています。当初は僕の作品をリリースしていきますが、他のアーティストの作品をもプロデュースしていく予定です。

それと”監督”をやるかもしれません。「環境ビデオ」の監督をやってみたいんですよ。来年中には実現させたいですね。

現在まで、わりと「音楽」というフィールドをメインにして活動してきましたが、少しずつそのフィールドを広げていきたいと思っています。自分が今までいろいろと関わってきた仕事を含めて、多種多様な形態で間口を広げ、より多角的に活動を展開しようと計画しています。

(「Piano Solo 久石譲/アイ・アム (I am)」楽譜 インタビュー より)

 

 

楽曲曲想
演奏解釈のための楽曲イメージ Commentary by 久石譲

Deer’s Wind
本楽曲は来年(1991年)のゴールデン・ウィークに東宝系全国一斉公開される映画『仔鹿物語』のメイン・テーマです。少年と仔鹿との「心の交流」をモチーフにした映画で、楽曲のテーマは、自然の中で繰り広げられる少年と仔鹿との「心の交流」を現す「優しさ」と、それを包む「大自然」を歌ったものです。優しさと同時に、大作映画の「おおらかさ」と「大自然」のスケール感を意識して仕上げてみました。

On The Sunny Shore
この曲は、前作『Piano Stories』に収録されている「Lady of Spring」とサウンド的にも、コード的にも同じ系列に入る曲です。曲のコンセプトとしては、隙間があって、その合間を縫うような淡々としたメロディーが奏でられる……。そして、モードを駆使したような響きと、その中に大人の優しさが出てくれば、と思って書き上げてみました。特に、弦楽のアレンジに関していえば”超スペシャル・アレンジ”で、トレモロや様々な要素を多様し、凝縮しています。アレンジの雰囲気は”空気感”。空気に漂っている”浮遊感”をものすごく意識してみました。今後アレンジャーを目指す方は、是非ともこのアレンジを研究してみてください。また、原曲では「ハーモニカ」が特徴的なフレーズを演奏していますので、メロディー・ラインを他の楽器で奏でてみるのもよいでしょう。いろいろな編成で演奏してみてください。

Venus
この楽曲は、8年ぐらい前に実は作った曲で、3~4回レコーディングをしています。どうも自分の中では形態がなかなか定まらなかったのですが、今回のアルバムでは”エスニック的”な要素を玩味した形態で成り立ち、やっと居場所を見つけ、完成しました。左手のオスティナートを続けながら、右手にロマンティックな割りには、とても器楽的なフレーズが続く不思議な曲です。本来の自分らしさの一部である”エスニック志向”がムクムクと出てきた1曲です。

Dream
本楽曲は、心の奥深い所での響きというか、その包みこむような優しさや味わい深さが出せればと思って書き上げました。Intro.やサビで使っている「Em」のメロディーのところを特に”ジャジー”なイメージにして、大人のけだるさというか、そのような感じを出してみたかったところです。原曲の弦楽のアレンジがかなり凝っていて、後半のピアノと弦楽が非常にダイナミックに絡むところは是非聴いて欲しいところですね。

Modern Strings
この曲は今回のアルバムに収録している曲の中で、もっとも”アヴァンギャルド”的な要素を多様した作品です。「単に驚かす為に」……というアヴァンギャルド的なものはカッコ悪いわけで、むしろ楽曲を聴いていくうちに「エッ?」と思う、本当の意味で深い味わいがあるアヴァンギャルドを打ち出した楽曲です。原曲の弦楽アレンジを具体的に言いますと、冒頭から弦楽が頭打してない点が特徴です。全部が裏拍になっていて、よく聴いていないと分からないかもしれませんね。そして、その「裏拍」がいったん分かると、この楽曲の変な魔力にひかれてしまいます。その魔力といい、スピード感といい、とてもたまらない曲になるんじゃないかと……。原曲の後半でピアノと弦楽が絡むところがとてもスリリングな響きになっています。楽曲のイメージやメロディーの雰囲気が「フランス映画」の感じで、その工夫として、レコーディングの時に、ピアノのタッチや音色を「鼻にかかる音色(鼻音的な音質)」に変えてみました。原曲でサックスを吹いているミュージシャンは”Mr.Steve Gregory”で、彼は「ワム!のケアレス・ウィスパー」で、あの印象的なサックスを吹いている方なのです。「泣ける、大人の味わい」をとても気持ちのいいサックスで演奏してくれていますので、じっくりと聴いてみてください。

Tasmania Story
本楽曲は今年(1990年)の夏に東宝系全国一斉公開された映画『タスマニア物語』のメイン・テーマです。サントラ盤では、ピアノとオーケストラでしたが、本ヴァージョンは、ピアノとストリングスをメインにして、スケールの大きなフレーズの中から、そのしっとりした優しさを引き出してみました。レコーディングでのストリングス・セクションは、ロンドンの精鋭達が一同に会して、そのストリングスは、演奏の随所で歌ってくれて、狙い通り以上の演奏が展開できて非常に満足した仕上がりになっています。また、ピアノ自体のアレンジもサントラ盤とは違うヴァージョンです。

伝言
この曲は数年前にオンエアされたTVドラマのメイン・テーマです。当時の僕、というか”Hisaishi Melody”とみなさんに言われていた、典型的なスタイルの楽曲で、伴奏形式やメロディーにそれが現れています。今回のレコーディングでは、ピアノをメインにし、ストリングス・アレンジを最小限におさえて仕上げてみました。また、原曲のハーモニカもじっくりと聴いてみてください。

Echoes
本楽曲は、僕自身は、今回のアルバムのメイン曲だと思っています。オリエント・ミュージック(僕が付けた呼称です)を現した「アジアの夜明け」、「アジアのこだま」というような意味で作り上げた曲で、とても大切にしている曲でもあります。原曲には民族楽器のタブラーと胡弓が入っています。ピアノの特徴としては、ベーゼンドルファーのピアノでしか出せない超低音を出しており、その深い響きの中で、胡弓がメロディーを奏でる箇所はとても印象的で、僕自身とても気に入っています。原曲で胡弓が奏でるメロディーが終わった後に出てくる、ストリングスの不思議なコード進行も味わってみてください。微妙に変化していくコードの響きが特徴です。

Silencio de Parc Güell
ピアノ・ソロ作品として、あたかもシューベルトの「楽興の時」を思わせるような、さりげない優しい小品をイメージして仕上げてみました。曲のタイトルの「パルク・グエル」は、スペインのバルセロナにある”グエル公園”からです。スペインの鬼才、建築家”アントニオ・ガウディ”が作った印象的な公園で、その「静けさ」にとても感動して、曲名を付けました。

White Island
本楽曲は、テレビ朝日開局30周年記念特別番組の、メイン・テーマ曲です。「南極」をテーマにしたスペシャル・ドキュメンタリーで、この特別番組の為に作曲したものなのですが、放映時からとてもみなさんにご好評いただいた曲だったので、今回のアルバムに収録することになりました。メロディーが持っている親しみやすさ、優しさと同時に、スケール感あふれる形態を兼ね備えている楽曲なので、本アルバムの最後を飾るのがふさわしいのではないかと……。じっくりと聴いてみてください。

(楽曲曲想 ~「Piano Solo 久石譲/I AM」楽譜より)

 

 

久石譲 I am 楽譜

Piano Solo
久石譲/I am

from Album 『I AM』
Deer’s Wind (映画「仔鹿物語」より)
On The Sunny Shore
Venus
Dream
Modern Strings
Tasmania Story (映画「タスマニア物語り」より)
伝言 (東芝日曜劇場「伝言」より)
Echoes
Silencio de Parc Güell
White Island (TV「南極大陸1万3000キロ」より)

 

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/東芝EMI株式会社/株式会社アサヒ・エディグラフィ
編曲・採譜・解説:青山しおり
定価:1,300円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 PRETENDER / プリテンダー + ベスト』

1989年12月20日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム『PRETENDER』のマッチング・ピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

本楽譜「プリテンダー」に掲載収録されている久石譲インタビューや、久石譲自身による楽曲解説をご紹介します。

 

 

「ピアノ弾き語り 久石譲/プリテンダー +BEST」 監修:久石譲 ドレミ楽譜出版社

INTERVIEW

とにかく活動範囲が広い!!
アーティストとしてはもちろんコンポーザー、アレンジャー、映像(映画、CF等)、舞台音楽等の活動を通して、次々と「MUSIC」を創り上げ、しかもワールド・ワイドな視野に立って活動を続けている久石譲氏。

その久石譲氏に当てた「公開質問状」のチャンスが編集部にまいこんだのだ。さっそく飯倉誠人氏との協議のものと、公開質問状を作成し、久石譲氏にアタック!

それでは忙しい中、久石譲氏が公開質問状に答えてくれた全文をご紹介しましょう。

 

Q.幼年期から少年期(中学~高校時代)にどのように「音楽」に出逢い、どのようなジャンルに興味を持ち始めましたか?

久石:
4歳の時に、ヴァイオリン(鈴木慎一ヴァイオリン教室)を始めたのがキッカケです。童謡からクラシック、歌謡曲等、小さい頃は、ラジオからオンエアされるあらゆるジャンルの「音楽」に興味を持っていました。

小さい頃は「ある一定のジャンルに興味を持つ」ということはなく、どちらかと言うと、自分でラジオから流れていたものを聴き覚えて、歌ったり、気に入った演奏があったらその同じメロディをピアノで奏でてみたり、とかそんなようなことが多かったです。

幼年期から少年期にかけて、一番影響があったものは「映画」だと思います。父も大好きで、小さい私をよく映画館に連れてってくれました。本当にたくさんの映画を見ましたね。この頃に見た映画が後々、いろいろな意味で影響を与えたと思います。

 

Q.大学時代(国立音楽大学作曲科)に興味を持ち始めたという、”テリー・ライリー”、”スティーヴ・ライヒ”、”ジョン・ケージ”等の「ミニマル・ミュージック」との出逢いは? それから発展した当時の「現代音楽」のコンサート活動やレコーディングの状況を教えて下さい。

久石:
大学2年の終わりぐらいに、テリー・ライリーの『レインボウ・イン・カーブド・ミュージック』に出逢ってショックを受け、これが「現代音楽」なのか、と衝撃的でした。それまでは、「クラスター」や「12音技法」等のいわゆる現代音楽の語法の中で、自分もいろいろと考えていたので、こういった音楽があるということに対して、大変ショクを受けました。

それから、かなり悩んで、悩んだあげく自分も「ミニマル・ミュージック」のスタイルを取り入れるようになりました。このスタイルを自分に取り入れ、消化して自分の中で変化するまでに、2年間かかりました。

「現代音楽」のレコーディングは皆無に等しかったですね。なぜって? レコードになっても売れなかったし、誰もレコーディングしてくれなかったからね。むしろ、コンサート活動の方が多かったです(「四名館コンサート」、「西武美術館コンサート」等のコンサートを行う)。

極端な話、「椅子をバタンとひっくりかえして音(音楽を作り上げる)を出す」ような「現代音楽」の中でも最前衛的なものだったから、コンサートをやる度に、客席はまばらで、親類縁者しかいなくて……、こんな事が記憶に残っていますね。

 

Q.ミニマル・ミュージックに興味を持っていた当時、英米のロック・ミュージシャンやジャズ、クラシック等のアーティストで興味を持っていた人はいましたか? 例えば、ロキシー・ミュージックにいたブライアン・イーノがソロ活動に入った時期の作品に対してどのような感じを受けましたでしょうか?

久石:
ブライアン・イーノには興味がありましたね。どちらかというと、僕がミニマル・ミュージックの方向からシンセサイザー等を取り入れて、パターン・ミュージック(反復の音楽)を始めた頃、ブライアンは、ロキシー・ミュージックを通って、ロックの方向からのアプローチでミニマル・ミュージックの活動に入って来たんですね。

気づいて見るとブライアン・イーノがやろうとしていたフィールドと、自分が現代音楽を通ってアプローチしようとしたフィールドが非常に近かったといえると思います。その頃からクラシックの領域である「現代音楽」のフィールドだけでやることが、無意味なのではないかと思い始めた訳なんです。

自分は「ポップス」という、より広い領域でやった方が自分の活動に合うのではないかと思って……。「現代音楽」をやめたというのも、そのような経緯があった訳です。

 

Q.久石譲氏にとって「ピアノ」という楽器は自分の中でどのような位置づけにあるのでしょう?例えば、アーティスト、コンポーザーとしての自分ではなく、もっと根本的な「個人」に戻るものなのでしょうか?

久石:
正直いってピアノは、復習(さら)わなければならないのであまり好きではなかったのですが、特に近年(ここ1~2年)、「ピアノ」という楽器が自分にとっても「作曲する為の道具としてのピアノ」ではなく「表現としてのピアノ」ということで、自分の中での比重がとても増えています。同時にとても好きだし、ピアノの乾いた硬質なサウンドに今もっとも興味があります。

根本的な「個人」に戻るものなのかどうか? ということに関して、答えを出すことは大変むずかしいことですが、但し、「対話」する楽器として、一番近いものは、今の自分にとって「ピアノ」ですね。

 

Q.「映像」と「音楽」の関係について、まず初めに、今まで作り上げてきた数々の「映像」と「音楽」の作品の中で、想い出深いものはどの作品でしょうか?

久石:
「想い出深い」という意味でいうと、薬師丸ひろ子主演の映画『Wの悲劇』と宮崎駿監督のアニメーション映画『風の谷のナウシカ』ですね。特にこの2作品が想い出深いものがあります。

 

Q.「映像」に音楽を作り上げるときに苦労する事や大切な心がまえを教えてください。

久石:
ひとことで言うのは、大変難しいけれど、強いて言えば映像に付随する音楽を作るのではなくあくまで「映像」と「対等にある音楽」を創り上げることを心がけています。

「映像」の従属物であるというものではなく、あくまで「対等」の主張をするということに力点をいつも置いています。

 

Q.作曲する場合、「映像」からのインスピレーションや「映像」とミスマッチ(異質なもの)な音楽をつけて、逆効果を上げる等、「映像」と「音楽」の関係について、常日頃思っていることや、感じていることがあれば教えてください。

久石:
「どのような作曲方法を取るか?」ということは、その時々の条件によっても違って来るのでケース・バイ・ケースですね。但し、僕の場合、特に映画の場合は「台本」がもっとも大切です。台本を読んだ段階で60%か70%ぐらい、どのような「音楽」にするかを決めます。

映画全体の流れを知るために、ラッシュのフィルムを見に行く場合、その映画の監督のテンポ感、編集や画面処理のテンポ感を見にいくことが一番多いです。それによってもまた違うアイディアやヒントが出てくるし……。

 

Q.井上陽水、中島みゆき等を始め、幅広いジャンルで数々のアーティストにアレンジを提供している中で、常に心がけていることがありましたら教えてください。

久石:
別にありませんね。今はアレンジの仕事もやってないし、興味がないし……。僕の場合、「フュージョン風」だ、「何々風」だ、というタイプのアレンジはやらないし、基本的には井上陽水さんのアレンジをしても、中島みゆきさんのアレンジをしても、そのアーティスト自身が変身したい時に、僕のところにアレンジの依頼が来るので、僕自身の音楽のスタイルはまったく変えないでアレンジの提供をしているので、特に心がけていることはないですね。

 

Q.初めて使ったシンセは何ですか?

久石:
ローランドのSH-5です。

 

Q.「音色」を作り出す場合、ヒントとなるものはなんでしょうか? 例えば、曲のイメージ、音色そのもののイメージ、映像のイメージ……?

久石:
「音色」を作り出す場合、もちろん曲のイメージもあれば、いろいろなイメージがあるのでひとことではいい現せませんね。やはり、ケース・バイ・ケースです。

 

Q.「フェアライト」を使い出したキッカケは、いつ頃で、どうして使い始めたのかを教えてください。

久石:
フェアライトを使い始めたのは『風の谷のナウシカ』の時でした。ギタリストでコンポーザーの矢島さんのスタジオにフェアライトがあるということで、どんな楽器なんだろうと思って使いに行ったのが最初ですね。使ってみて、これは凄い! とショックを受けました。これは何としても自分の物にしたいと、自分のスタジオにフェアライトを購入するまでにいたったのです。

フェアライトの利点をひとことで説明することは難しいけど、魅力あるマシンですね。

 

Q.ニュー・アルバム『プリテンダー』のコンセプトの「原点」に戻る……ということについて、くわしく教えてください。

久石:
今回のコンセプトである「原点」に戻るということは、いわゆる本当の根本的な「原点」に戻るということではなく、自分が今ままでやってきた事で、例えば、『α-Bet-City』というアルバムをニューヨークでレコーディングした時、「フェアライトをこれだけ使うのはZTTかHisaishiだけだな」みたいな感じで、レコーディングしている最中にA&Mレコードやセルロイドから引き合いがきたり、自分が今までやってきた「インストゥルメンタル」、「音楽」、「世界レヴェルで通じるもの」を今回徹底して作ってみたいと思っていました。ヴォーカルものは英語詞で歌ったり、歌ってもらったし……。日本語だとどうしてもローカルになってしまうしね。「世界のフィールドで自分がどれだけ通用するか?」ということが一番根底にあったし、それがいわゆる「原点」ですね。

 

Q.海外のアーティストやミキサーと一緒に作り上げた今回のレコーディングのエピソード等がありましたら教えてください。

久石:
今回のレコーディングに参加してくれたミュージシャンを始め、ミキサーや各スタッフ達が日本発売とは思ってなくて、当然、世界発売……すくなくとも自分達の国の音楽だと思って、レコーディングに参加してくれたことが非常に嬉しかったことですね。

例えば、どのチャートを狙うのか、日本国内のチャートではなく、全米のブラコンやディスコ・チャートなのか、ポップス・チャートなのか。「どのチャートを狙うんだ」と、僕のところに親身になっていろいろと相談してくれて、「ブラコンやディスコ・チャートを狙うんだったら、良いミキサーを紹介するよ」って、いろいろ助言してくれたことが印象に残っています。

 

Q.国内とは違う環境でのレコーディングで何か変化や影響がありましたか? また、共演したアーティストやミキサーから触発されたものがありましたでしょうか?

久石:
一番は電話がかかってこないということですね。ふたつ目は、集中して音楽を創り上げられるということです。

基本的には国内でレコーディングしても同じだと思ってました。「海外でレコーディングをする」という意味は例えば、「海外でレコーディングした」ということは、もうアルバム・セールスにおいて「売りになる時代」にはならないし、それだけでインパクトがあるとも思っていないので、重要なファクターではないと思ってます。

今年(1989年)の3月にニューヨークに行って調べたミュージシャンやミキサーと知り合って、例えば、ドラムのノリ等の細かい点で、国内のドラマーが参加すると「こうなってしまう」とか、ある程度先が見えてしまう……海外のアーティストの場合、あるミュージシャンに参加してもらうと、その細かいリズムのノリや仕上がり具合がわかる。そういう意味では、海外でのレコーディングは必然的であったということだと思います。

根本的には海外でレコーディングしたから、今回のアルバムが出来たという気持ちはないけれど、それなりの+αはあったという感じはしています。

 

Q.『プリテンダー』で使用した主要なキーボード系、デジタル系(リズム・マシン、サンプラー、エフェクター等)の楽器を教えてください。

久石:
今回のアルバムでは、ほとんど生の楽器を多様しているし、生リズムで録ったのでシンセサイザーの使用頻度は少なめですが、使用した楽器はフェアライトIII、カーツェルやジュノー、DX7、S1000等の通常使用しているものです。

レコーディングに入る前にフェアライトIIIに全部のパートを打ち込んでおいて、本番ではそれを生の楽器に差し替えて録音しました。実際、レコードに収録されているフェアライトIIIの音や使用頻度は、全体の2~3割程度ですね。

曲のスケッチ段階で、ドラム・パートやベース・パート等すべてを打ち込んでおいて、それは、アルバムで聴けるフレーズや曲の感じの差はあまり変わってないということは、今回のフェアライトIIIの役目としては「縁の下の力持ち」になったということになります。

 

Q.最後に読者に対してコメントをお願いします。

久石:
今回の『プリテンダー』は、自分にとっても非常に大切なアルバムに仕上がりました。「日本」という独特な土壌の中で、日本の人々に受ける(日本人に受けるという言い方も変だけど)、つまり「国内向けに日本的なものを創る」というのではなくもっと乾いた「ウェットな部分ではない部分」を出したいというのがあって、そういう意味でいうと自分なりに納得するアルバム、「洋盤として納得するアルバム」に仕上がったと思ってます。

「聴き手」と「作者としての自分」の関係が「ベタベタ」したものではなく、むしろお互いに「対等」にあるような関係があって、自分の中ではとてもおもしろいチャレンジが出来たし、非常に納得したという部分があるので、その辺を感じながら聴いてもらえるとありがたいと思います。同時に、音楽的にもかなり高度な部分と、それを分かり易く噛み砕いてやている部分とがあるので、その辺がわかっていただけると幸いだし、また、本書を利用して演奏していただけると嬉しいと思います。

(「ピアノ弾き語り 久石譲/プリテンダー +BEST」 インタビューより)

※インタビュー内に文脈に難ありな箇所もあるがあくまでもそのままにしている。

 

 

【楽曲解説】 Music Commentary by Joe Hisaishi

Meet Me Tonight
この曲は古き良きアメリカ、或いはビートルズ・エイジの人々が非常に懐かしく感じるようなメロディ・ラインを意識して作りました。

都会というよりは、田舎のハイスクールの学生が彼女のことを思うというような、ノスタルジックな暖かさを含んだ楽曲です。ニューヨークでレコーディングをしている時にも、ミュージシャンが思わず口ずさんでしまうという感じで、自分達の国の音楽として受け入れられた曲です。サビのコーラスの部分が特に自分でも気に入っています。

 

True Somebody
これはブリティッシュ・ロック系の曲を意図して作った楽曲ですが、ベーシックなリズム・ラインにはモータウンのリズムを取り入れました。ヴォーカルに黒人のヴォーカリスト(N.David “Tigger” Whitworth)を起用しており、世界的なマーケットでも通用するような曲に仕上がっていると思います。

 

Wonder City
この楽曲は、7~8年前にリリースした僕のソロ・アルバムの中に収められていたものです。当時、自分でも納得いかなかった部分もありましたが、今回の再度のチャレンジでかなり納得のいく仕上がりとなりました。自分でも、とっても気に入っている曲です。今年(1989年)の2月に行ったコンサートでもこの曲は非常に評判が良かった曲です。

 

Maria
これはシングル用に作った楽曲で、バラードの路線を狙って作りました。僕の音楽の特徴は、メロディ・ラインが非常に器楽的だということがありますが、それを強調してみようということで、音域の広い曲になっています。『秋の夕日が落ちていく海辺……』そんなイメージ。

 

All Day Pretender
このアルバムのタイトル『PRETENDER』が象徴するように、この曲が全体のコンセプト曲になっています。「いつも”ふり”をしている人」という意味をもったこの曲は、出だしの”モード”っぽいところからサビにいくまで、自分の中でも非常に納得した仕上がりになっています。ある意味では自分の原点的な楽曲といえます。

 

Manhattan Story
これは、古い新しいということではなく、スタンダードできちんとしたメロディを書きたいと思って書いたものです。都会派のメロディ・ラインを意識して作りました。

 

Holly’s Island
この曲は、「東洋的なメロディ・ラインとラテン的なサウンドをドッキングさせたらどうなるか?」ということを考えて作った楽曲です。アイランド的といいますか、非常にほのぼのとした感じが出ているので、自分でもとても好きな曲です。タイトルの”Holly’s”というのは、ドラマーのスティーヴ・ホリーと、「Holly Night(聖なる夜)」からきています。

 

Midnight Cruising
これはインストゥルメンタルの曲で、メロディも非常にクールなハードボイルド・タッチを意識して作った楽曲です。曲の中間部では、ジャズ・ワルツのような部分もあって、演奏面からいっても非常に難しいものなのですが、共演のミュージシャン達もノリにノッて素晴らしい演奏をしてくれました。

 

View of Silence
これはピアノとストリングス(ニューヨーク・フィルのメンバーとの共演)の楽曲です。

アルバム『Piano Stories』以来、ピアニストとしての僕は、前作品の『illusion』に引き続き、必ず最後にピアノの作品を入れていこうという意図で作った楽曲です。いわゆる映画音楽をひくるめて作ってきた、「僕なりのメロディ」というものの延長線上にあるものです。

今回はストリングス・セクションもニューヨークで録るということで、特に力を入れてアレンジをしました。「内なる情熱」というようなエモーショナルな部分が引き出せたと思います。

(【楽曲解説】 「ピアノ弾き語り 久石譲/プリテンダー +BEST」楽譜より)

 

 

プリテンダー 楽譜

ピアノ弾き語り
久石譲/『プリテンダ』+ベスト

from album 『PRETENDER』
Meet Me Tonight
True Somebody
Wonder City
Maria
All Day Pretender
Manhattan Story
Holly’s Island
Midnight Cruising
View of Silence

from album 『illusion』
Night City
Zin-Zin
8 1/2の風景画
風のHighway
冬の旅人
ブレードランナーの彷徨
L’etranger(レトランジェ)
少年の日の夕暮れ

 

監修:久石譲
編曲・採譜・解説:金子浩介
定価:1,600円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社