Score. 『久石譲 スペシャル・セレクション』

1994年6月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム「PIANO STORIES」、および初期アルバムからセレクトされたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

寄稿

”PIANO”──自分にとって”PIANO”は、とても大切な楽器であって、”PIANO”と向かい合う時には、自分は作家としてではなく、まったくの「個人」に戻ってしまいます。

「個人に戻る」──ということは、非常に基本的なことに戻るということなのです。

メロディーを創り、それに対してコード付けをし、さらにベース・ラインを付け加える…いろいろな要素が一体となり、「自分が素朴に指を動かす」。──この行為の先、そして指の先から”メロディー”が立ち昇って行く…このような一番シンプルな行為に戻りたいと思っています。そして結集されて生まれ出たものが、アルバム『PIANO STORIES』なのです。

この基本姿勢は、今日まで変わりません。それは何かというと、「自分の内なるメロディーに対して、自分で耳を傾ける」ということなのです。このような素朴な行為に身を委ねたいと思っています。

作家としてわがままに言わせてもらえば、『PIANO STORIES』の一番最初の聴衆は「自分」である…と。「自分個人」に向けて創ってきたものなのです。

そして、第二の聴衆として、僕と対峙するもう一人の「あなた」。いつも、「僕対もう一人の個人」に向けられる、「一対一の音楽」として創り上げてきました。そういう関係の音楽だと自分では思っています。

それが少しずつ拡大してきていることは事実です。

例えば、アルバム『THE UNIVERSE WITHIN』では、もっと自分が感じる世の中の人々に対する「やさしさ」のメッセージ、さらに広がりを持ったメッセージになっています。

NHKスペシャル『驚異の小宇宙・人体』をご覧になってすでにご承知のように、人間の持っているメカニズムは、人間が創りうる範囲を超越しています。人間生体のメカニズムの凄さ、これはまさに「神の領域」なのではないか…ということや、「人間」に対する「尊厳」と「やさしさ」をテーマに謳い上げたものです。

この時、自分の中で「一対一」の関係で創り上げた、”PIANO”の楽曲がもっと広がりをもてたことは事実です。毎回アルバムをリリースするごとに、自分の中で、「自分」と「PIANO」の関係が少しずつ広がりながら、日々進行形で変わってきています。

例えば、アルバム『illusion』は基本的にヴォーカル・アルバムでしたが、タイトル・チューンの「illusion」に象徴されるように、このアルバムは自分にとって一番大事な作品であり、また次のアルバム『PRETENDER』でニューヨーク・フィルのメンバーと共演した「View of Silence」でも、「自分」と「PIANO」の関係は広がり、脈々と自分の中でも「PIANO STORY」が毎日できあがっています。

JOE HISAISHI

(寄稿 ~本スコア収載)

 

 

Cover Photo by Joel Meyerowitz
Prouncetown 1977

 

久石譲 / スペシャル・セレクション

◎from Album 『PIANO STORIES』
A Summer’s Day [Epilouge]
Resphonia [レスフィーナ] 『アリオン』から
W Nocturne [Wの悲劇] 『Wの悲劇』から
Fantasia (for Nausicaä) [風の伝説] 『風の谷のナウシカ』から
Innocent [空から降ってきた少女] 『天空の城ラピュタ』から
The Wind Forest [風のとおり道] 『となりのトトロ』から
Dreamy Child
Green Requiem 『グリーン・レクイエム』から
The Twilight Shore [砂丘 I] 『恋人たちの時刻』から
Lady of Spring [早春物語] 『早春物語』から

◎from Album 『THE UNIVERSE WITHIN 「NHKスペシャル驚異の小宇宙・人体 サウンドトラック」』
The Origin of Species [35億年の結晶]
The Inners [遥かなる時間(とき)の彼方へ] (Opening Theme-Synthesizer Version)
Mysterious Love [ひと・そして・愛]
Transient Love [うたかたの夢]
Birth [生命(いのち)の歓び]
The Inners [遥かなる時間(とき)の彼方へ] (Ending Theme-Orchestra Version)

◎from Album 『illusion』
冬の旅人 [フジ・東海テレビ全国ネット・テレビ・ドラマ『華の別れ』主題歌/Piano Solo Version]
illusion

◎from Album 『PRETENDER』
Manhattan Story
View of Silence

◎from Original Soundtrack 『タスマニア物語』
Tasmania Story “Main Theme” 『タスマニア物語』から

 

監修:久石譲
編曲・採譜・解説:青山しおり
定価:1,600円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

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