Disc. 東京佼成ウインドオーケストラ 『ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション Vol.2』

1986年12月20日 CD発売 CA32-1343

 

”ニュー・サウンズ・イン・ブラス”シリーズの中から特別によりすぐった名演奏の数々…。ダイナミックで一味違ったポップな演奏をお楽しみください。

指揮:岩井直溥
演奏:東京佼成ウィンドオーケストラ

 

 

久石譲が吹奏楽アレンジを手がけた「愛のコンチェルト」が収録されている。

 

 

曲目解説

1.ビギン・ザ・ビギン
1935年のブロードウェイ・ミュージカル「ジュビリー」のために書いた、コール・ポーターの傑作ですが、1940年に映画「踊るニューヨーク」で、フレッド・アステアが軽やかなステップで踊ったことで、この曲は爆発的なヒット曲となりました。ビギンとスウィングを交差させた見事な編曲で、楽しいレパートリーがひとつ増えました。

 

2.愛のコンチェルト
ピアノで愛を語りかけ、女性の心を捕えてしまう、何とも世の男性には羨ましいかぎりのピアニスト、リチャード・クレイダーマンのヒット曲。原題は”ジュ・テームと名付けられた若い娘のためのコンチェルト”とつけられ、ピアノとオーケストラの為の作品となっています。変拍子を含んだ優しく美しいメロディーが、アコースティック・ピアノによって演奏され、いかにもクレイダーマンらしい雰囲気を漂わせています。前半はピアノがメインになっていますが、後半に行くに従って、バックと共に盛り上りを見せ、いやが上にもクレイダーマンの世界に、我我を引きずり込んでしまいます。こんなあたりが、彼の魅力の一端と言えそうです。この曲は、吹奏楽の為のピアノを含んだレパートリーとしては、貴重な存在となり、演奏会により変化を持たせてくれる事でしょう。

 

3.ピンクの豹
コミックタッチの刑事物語映画「ピンク・パンサー」のテーマです。漫画にも登場すっかりおなじみですが、映画よりもマンシーニ作曲の音楽の方の出来がよいようです。曲の冒頭からスリラー風のテーマが低音楽器で歌われ、中間部はスウィング調でブラス群が都会風でシャレたサウンドを響かせ、T.サックスのアドリブへと引継がれます。演奏では、普段影にかくれているBr.サックスやチューバのソロもあるので、バンド全員で楽しむことができる良い編曲です。

 

4.ミュージカル ”キャッツ” メドレー
ロンドン生まれのミュージカル、ブロードウェイで大ヒットし、現在、劇団四季も東京で公演を続けています。専用の”キャッツ・シアター”まで建ててしまっての大投資が話題を呼んでいます。出演者はすべて猫の扮装。月夜の晩、野良猫たちの集会。おばあさん猫のガンビーを中心に物語が進みます。このスペクタクル同様、音楽も優れ、スケールの大きな編曲も見事です。

 

5.ティコ・ティコ
軽快なサンバ。ラテン・アメリカ音楽の王者、ザビア・クガー楽団や、ハモンド・オルガンの女王、エセル・スミスの演奏で大ヒットしたラテン・ナンバー。木琴のソロ曲などにも使われています。この編曲はクラリネットを中心に木管群をフィーチャー、運指とリズムが少々難しいがリズムに乗ってしまえば大丈夫。テンポの早い小品として、コンサート・プログラムの途中にはさみ、クラリネットにスポットを当てると良いレパートリーになります。

 

6.オー・シャンゼリゼ
このシリーズ中屈指のスウィング曲。今では子供達も知っているこの日本人向の楽しい曲は、パリのシャンゼリゼ通りを散歩する浮き浮きとした風景の描写であり、その通り理屈抜きに明るい演奏です。ロック一辺倒の今日ですが、この一曲でスウィングならではの良さも充分満喫していただけることでしょう。レコーディングには中間に女声コーラスを使いましたが、コンサートでは貴方自身のアイデアで又違った手法も可能です。ポップス・プログラムのラストナンバーとして最適、会場と一緒になって歌えます。ニュー・サウンズの生みの親とも云うべき岩井直溥氏ならではの最高の編曲です。

 

7.イエロー・サブマリン
ロック全盛、一世を風靡したビートルズのヒット曲。アニメーション映画のテーマ曲として、海を題材に作られたものですが、メロディーも歌詞も簡単、恐らく子供たちに呼び掛ける意図があったのでしょう。そのシンプルな素材を、シンフォニックなスタイルにまとめ、”ローエングリンの前奏曲”を寸借挿入したり、一変して可愛らしい木管アンサンブルに歌わせたり、中学校バンドでも演奏できる楽しい編曲です。

 

8.パリのアメリカ人
若くして世を去ったアメリアの天才ピアニスト、ジョージ・ガーシュインの管弦楽曲。「ラプソディー・イン・ブルー」と共にオーケストラにジャズの手法を持ち込んだ、いわば当時のニュー・サウンズの推進者でもあった訳です。又「パリのアメリカ人」は映画化され、これも大成功を収め、むしろ映画化によってこの音楽が一般化したとも云えるでしょう。全編にわたりディスコとブルース、それに、軽快なスウィング調から成り、トロンボーン、トランペットとA.サックスのソロが美しい。原曲と比べるとテーマの順序がバラバラですが、そこは岩井直溥独自の世界、いたるところにウィットといたずら心が飛び出します。スライドホイッスル等の擬音効果が大切で、同時に今日のディスコと大昔のブルースの吹き分け方など、バンドの練習用としても掛け替えのない優れた編曲です。

 

9.シング・シング・シング
ベニー・グッドマン楽団の演奏で大ヒットしたスウィングの傑作。当時の名ドラマー、ジーン・クルーパのドラム・ソロを全編にフィーチャーさせ、グッドマンのクラリネット・ソロとの掛け合いが大いに受けたものです。この編曲はそのスタイルを忠実にコピーしたものですが、スウィングの名曲でもあるし、演奏会でも必ず大きな反響を得られる曲です。クラリネットのアドリブと共に、ドラム・ソロが延々と続きますが、この演奏の様にあまり型を崩さず、忠実にたたいた方が面白いでしょう。猪俣猛のドラム・ソロが見事だし、ドラムの音色も素晴らしい。スウィングの勉強のためにも是非チャレンジしてもらいたい曲です。

 

10.コーラス・ライン・メドレー
ブロードウェイ・ミュージカルでロングランを続け、映画も大ヒットしました。「ワン-君だけは」「音楽と鏡」「アット・ザ・バレエ」「愛は消えない」そして再び「ワン-君だけは(フィナーレ)」と続きます。全編を通じ、ブロードウェイの伝統を感じさせる温かな作品で、又構成、編曲、演奏も特筆すべき作品となっています。クラシック・ナンバーの中に加えても、決して不自然でないかなり重みを持った好編曲です。

(曲目解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション Vol.2

1.ビギン・ザ・ビギン Begin The Beguine
2.愛のコンチェルト Concerto Pour Une Jeune fille Nommée “Je T’aime”
3.ピンクの豹 The Pink Panther
4.ミュージカル ”キャッツ” メドレー Cats Medley
オーヴァチュア Overture ~ おばさん猫のガンビー・キャット The Old Gumbie Cat ~ メモリー Memory
5.ティコ・ティコ Tico – Tico
6.オー・シャンゼリゼ Les Champs-Élysées
7.イエロー・サブマリン (シンフォニック・ヴァージョン) Yellow Submarine (Symphonic Version)
8.パリのアメリカ人 An American In Paris
9.シング・シング・シング Sing Sing Sing
10.コーラス・ライン メドレー A Chorus Line Medley
ワン-君だけは(リハーサル) One (Rehearsal) ~ 音楽と鏡 The Music And The Mirror ~ アット・ザ・バレエ At The Ballet ~ 愛は消えない What I Did For Love ~ ワン-君だけは(フィナーレ) One (Finale)

編曲:
岩井直溥 1,5,6,8,9
久石譲 2
小野崎孝輔 3
森田一浩 4,10
小六禮次郎 7

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ ベスト・コレクション』

1986年11月25日 CD発売 27ATC-126~7

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画『風の谷のナウシカ』
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

本作品は、『風の谷のナウシカ オリジナル・サウンドトラック はるかな地へ…』と『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』を2枚組にしたものである。収録内容同一。

 

 

風の谷のナウシカ ベスト・コレクション

DISC 1
1. 風の伝説
2. 戦闘
3. はるかな地へ…
4. 腐海
5. メーヴェ
6. 巨神兵~トルメキア軍~クシャナ殿下
7. 風の谷のナウシカ
8. 遠い日々
9.谷への道

DISC2
1. 「風の谷のナウシカ」オープニング
2. 王蟲の暴走
3. 風の谷
4. 虫愛ずる姫
5. クシャナの侵略
6. 戦闘
7. 王蟲との交流
8. 腐海にて
9. ペジテの全滅
10. メーヴェとコルベットの戦い
11. 蘇る巨神兵
12. ナウシカ・レクイエム
13. 「島の人」エンディング

作曲・編曲:久石譲

 

Disc. 久石譲 『機甲創世記モスピーダ スーパーコレクション』

久石譲 機甲創世記モスピーダ スーパー・コレクション

1986年11月21日 CD発売 VDR-1321

 

1983年 フジテレビ系アニメ放送 「機甲創世記モスピーダ」
音楽:久石譲

放送期間:1983年10月2日~1984年3月25日
放送時間:毎週日曜日9時30分~10時(関東地区)
放送局:フジテレビ系
放送話数:全25話

 

 

「機甲創世記モスピーダ Vol.1」「機甲創世記モスピーダ Vol.2」は、放送当時にLPにて発売されている。それをもとにベスト的セレクトをし、初CD化されたのがこの作品にあたる。Vol.1、Vol.2も1990年代にそれぞれ単品としてLPをもとにCD化、また企画シリーズとしてCD2枚組でもCD化されている。

 

 

久石譲 機甲創世記モスピーダ スーパー・コレクション

1. やっつけろ!
2. インビット
3. ヴィーナス・オブ・ザ・スペース
4. ドリーミー・シティー
5. ふたりでいたい
6. フーケのブルース
7. DREAM EATERS
8. ザ・ベトレイヤー
9. ブルー・レイン
10. 愛の涙
11. 荒れ野へ
12. 飛翔の儀式
13. モスパダの歌
14. フレンズ
15. 愛の小石
16. ヤング・スピリッツ
17. 伝説の河
18. 失なわれた伝説(ゆめ)を求めて
19. ブルー・レイン (ライブ・バージョン)

作詩:阿佐茜 (1,5,7,11,13,15) 売野雅勇 (9,18,19)
作曲:久石譲 (1~4,6,8,10,12~17) 小笠原寛 (5,7,11) タケカワユキヒデ (9,18,19)
編曲:久石譲
歌:松本美音 (1,5,7,11,13,15,19) 松本美音・アンディ (9) アンディ (18)
演奏:WHILE ROCK BAND (2~4,6,8,10,12,14,16,17)

 

Disc. 中島みゆき 『36.5℃』

1986年11月12日 LP発売 C28A0527
1986年11月12日 CT発売 28P6604
1986年11月12日 CD発売 YCCW-17

 

中島みゆきの14枚目オリジナル・アルバム。甲斐よしひろをプロデューサーに迎えた本作は、久石譲が「最悪」「白鳥の歌が聴こえる」の編曲を担当している。

 

 

中島みゆき 36.5℃ LP

(LPジャケット / LP盤)

 

中島みゆき 36.5℃ カセット 1

中島みゆき 36.5℃ カセット 2

中島みゆき 36.5℃ カセット 3

(カセットテープ)

 

 

中島みゆき 36.5℃

1.あたいの夏休み (編曲:後藤次利)
2.最悪 (編曲:久石譲)
3.F.O. (編曲:椎名和夫)
4.毒をんな (編曲:椎名和夫)
5.シーサイド・コーポラス
6.やまねこ (編曲:船山基紀)
7.HALF (編曲:椎名和夫)
8.見返り美人 (編曲:萩田光雄)
9.白鳥の歌が聴こえる (編曲:久石譲)

全作詞・作曲:中島みゆき

「最悪」「白鳥の歌が聴こえる」
Synthesizer Programming, Sequencer Programming and Drum Machine Programming:久石譲

 

Disc. 山形由美 『Neo Classique ネオ・クラシック』

1986年11月5日 LP発売 K28A 772
1993年12月22日 CD発売 KICS-1369
2008年6月25日 CD発売
2019年11月27日 CD発売 KICS-3878

 

クラシックとモダンを自由に越えるフルートの旋律

 

久石譲が編曲を担当した2楽曲「パシー通りの風」「光と風の舞踏曲(ワルツ)」が収録されている。

 

 

解説

フルートという楽器は、ある意味で個性の弱い楽器なのかもしれないと思う。もちろんその音色は、たとえどんなオーケストラのなかにあっても際立ってひびいてくるし、他のどんな楽器にもない精妙さとあたたかさを持ってはいる。自己主張ということから言えば、それはかなりの独自性を持ってはいるといっていい。しかし、これほど、さまざまな音楽に”合ってしまう”楽器も少ないように思われるのである。

さてそこで山形由美の登場である。もう良く知られているように、東京芸大の器楽科を卒業、デパートのイメージ・ガールにもなり、身長一六五の長身。美女である。六歳のころからクラシック・バレエを習い、レニングラード・バレエ団の来日公演にも参加した。

フルートは十四歳のころから習いはじめ、芸大卒業後は英国へ留学し、フルートの演奏のウデを磨いた。説明するまでもない。言ってみれば、エリートなのである。

スタートは勿論クラシックだ。だから今でもクラシックはベースにある。だが、いまの彼女のなかでは、ポップスもすべて同列に存在している。

「ビートのとりかたなど、クラシックとポピュラーとは多少違う部分もありますけど、基本的なところは変わらないと思います」と、彼女は実に淡々と語った。クラシック音楽で育った人たちがポピュラーも手がける時、必ずと言っていいほど”気負い”を見せる。新しい世界への積極的な興味である場合もあるのだが、時にそれは、コンプレックスの裏返しであったりする。自分はこんなにハバ広くやれるんだ、と言ったような思いである。だが山形由美というフルート奏者には、それが感じられない。たぶんそれは、森繁久弥やグラシェラ・スサーナのツアーに参加することによって、彼女のなかに、音楽と総称されるものの普遍的な価値への認識が定まったのだろうと思う。様式や形式はどうであれ、空気中を伝わっていく音によって作られる音楽は受け手の好みは別にして、ひとしく人々を楽しませることができるはずのものである。そのことを山形由美は身を持って知った。

それにしても、フルートの音色というものは、人の心をなごませる。吹く息のすべてが音になるという理想的な吹きかたをされたとき、それはたとえようもなく、やわらなか音色となる。世間というもののなかにある汚れは一切洗い流されて、純粋に音の世界が現出する。それは他の楽器の比ではあるまい。全くの私見だが、フルートには白のドレスが良く似合うと思えてしまうのは、その音色のせいだ。

ここにあるのは一枚の板に定着された音である。選曲には、こまかい神経が行き届いていて、軽やかなふんいきのものから、相当に思策的な作品までが収められている。金と銀それぞれの楽器の音色は微妙に違い、その選択もたしかである。ゆったりとした気分でスピーカーに耳をかたむければ、心は一層落ちつくだろう。

このアルバム、ネオ・クラシックと名付けられている。フォーレやラヴェル、バッハ、サティなど、レパートリーは多種にわたる。更に、フレデリック・ニオペイのオリジナルが二曲、糀場富美子のオリジナル曲も一曲、つまり、クラシックを軸に据えて、なおより新しいものへの挑戦の姿勢がうかがえる。それがこのアルバムの面白さだし、冒頭からこの原稿で書いてきた山形由美のハバの広さを示すと同時に、深さをも主張している。だからこのレコードに針を落せば、人は知らずにこの音楽空間のなかで蝶のように舞うことになるだろう。ただ、ここは音だけで終りたくはない。ここに収められた作品を軸として、彼女の数多くのレパートリーを有機的に組み合わせての演奏会を筆者は想像している。たぶんそれは心洗われるコンサートになるだろう。

世間に音楽は氾濫している。そのことは悪いことではない。だが、人々の心をなごませ、心洗い、生きていくことについて、ゆったりと考えるような、そんな音楽はあまりにも少い。あったとしても、多すぎる情報量のなかで、それらの音楽は埋没してしまっている。今こそ、そのことを問い直すべきだと思われる。山形由美は、そんなムーブメントの先頭を切れる音楽家であろう。真に音楽を愛する人たち、様式や形式にとらわれず、人々の心を豊かんにするものとしての音楽を愛する人たちにとって、山形由美は貴重な存在になり得るはずだ。そして、フルートという、一見控え目でありながら、その存在を主張することにかけては、かなり強いパワーを持つ楽器は、他の楽器に抜きん出て強力な武器である。

伊藤 強

(CDライナーノーツ より)

 

 

風のような、フルートを

風のように唄いたい、風のように舞いたい…。いろんな人が、こんな気持を歌にした。でも歌詞をつけたとたんに、この気持は伝わらなくなる。風のように…という気持を、いつも歌詞が邪魔をしてしまう。

そこで、山形由美だ。フルートの音色は、風そのものだ。

「自分の息がそのまま音になるだけに、ちょっとした気持の変化がすぐ表れてしまう。こわい楽器です」と彼女は言うけれど、だからこそ聴く人は、彼女の気持の変化を、息づかいで直接感じとることができる。

ジャケットの写真をながめながら、山形由美の息づかいにひたるもいいし、ちょっと意地悪をして、BGMとしてきき流すのもいい。それは聴き手の自由だし、このレコードを買う者だけに許されたぜいたくだ。

とり上げられている曲は、3曲を除いて、クラシックの名曲ばかりだ。

クラシック、と聴いただけで、何となくめんどうな気持になったあなたは、学校の授業でしかクラシックにふれたことのない、かわいそうな人だ。考えてもみたまえ。今日まで数えきれないほど多くの人が作ってきて、その中で生き残っているのがクラシックの名曲だ。聴いてみて気持悪いはずがない。山形由美は、それを無理をせずに、のびのびと歌い上げてくれる。多くとり上げられているフランス人の曲は彼女のセンスをひきたててくれる。このレコードを聴くことで、あなたには新しい世界が見えてくるかもしれない。

3曲を除いて、と書いたけど、残る3曲、フレデリック・ニオペイと糀場富美子の曲は、このアルバムのために書き下ろされた新曲だ。

ニオペイは、ポール・モーリア楽団のベース・プレイヤーで、作曲家。自分のコンボも持っている。2曲とも、いかにもフランスらしいしゃれたセンスで、その風がダンスをしているような、美しいメロディだ。

一方の糀場富美子は、昨年、広島平和祈念音楽祭で、「広島レクイエム」が初演され、ついで小澤征爾指揮ボストン交響楽団の全米ツアーで、同じ曲がとり上げられたため、一躍脚光をあびた作曲家だ。本人も広島出身で「レクイエム」はまれに見る独創的、感動的な名曲となっているが、その一方で、フランスの小品を愛し、八代亜紀の曲にも興味を持つなど、幅広い音楽性を持っている。山形由美とは、たまたま芸大の先輩に当る(山形由美は器楽科、糀場富美子は作曲科)。「セピアの黄昏」と名づけられたこの曲は、”都会の夕暮れの中でゆれている心”とでも言いたいようなアンニュイな情景がみえてくる。よどみながらも、ほんの少しづつ、流れてゆく風だろうか。女性だけに作れる曲だし、吹ける曲だと思う。

その他の曲の、簡単なメモを書いてみよう。

 

シシリアーノ
シシリア地方の民謡で、さまざまの作曲家が作品のテーマとしてとり入れている。どんな楽器で演奏しても美しい名曲。

ドビュッシー/月の光
もとは歌曲だっただけに、ピアノとからみあうフルートがぞっとするほど美しい。刻々と色を変える和音は、いかにもフランス人らしいドビュッシーのセンスだ。

ショパン/ノクターン op9の2
ショパンの「夜想曲」(ノクターン)はもともとピアノ曲だが、その中で一番有名なのがこのop9の2だ。意外とむずかしいトリルが多く、それを由美は軽やかにこなしている。

パッヘルベル/カノン
パッヘルベルは1653年ドイツ生まれの作曲家。もともとはフルートのパートはなく、弦楽合奏の曲だった。

ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ
名曲としてあまりにも有名。もとはピアノ曲だがあらゆる編成で録音されている。1899年パリでの作曲。

サティ/ジムノペディ
1866年にパリに生まれたサティは、現在ちょっとしたブームになっている。ひとつひとつの音を切りはなした独特のメロディ・ラインは、現代人のとびきりの疲労回復剤だ。

バッハ/アンナ・マグダレーナの為のメヌエット
小さいステップの踊りをメヌエットと言うが、このバッハのメヌエットは、「ラヴァーズ・コンチェルト」として有名になった。

モーツァルト/ピアノ・コンチェルト第21番
いかにもモーツァルトらしい心が洗われるようなメロディで、「みじかくも美しく燃え」としてポピュラーになった。

グノー/セレナード
この曲はもともと歌曲で、「フランス風」というよりはフォーク・ソング風である。グノーはいわば19世紀の流行歌作曲家だったのだ。

マスネ/タイスの瞑想曲
1894年、パリで初演されたオペラ「タイスの間奏曲」。美しい娼婦タイスが信仰にめざめるシーンに使われただけに、なまめかしさと清らかさが同居した美しいメロディ。

井崎 洋

(CDライナーノーツ より)

 

 

久石譲編曲の2楽曲は、シンセサイザー・アレンジとなっている。とりわけ「パシー通りの風」は、使われているデジタルサウンドが、「君をのせて」(映画『天空の城ラピュタ』主題歌)のそれに近しく、久石サウンドが全面に出ている。メロディも哀愁ただよう美しい旋律で、同じような空気感・雰囲気を感じることができる。

「光と風の舞踏曲(ワルツ)」も、シンセサイザーによる壮大なストリングス・サウンドとリズムによるグルーヴを聴くことができる。

同2楽曲以外は、クラシック作品も多く、アレンジもアコースティックを基調としている。だからこそより一層久石譲編曲による2楽曲が斬新かつ新鮮な印象を強烈に与えている。

 

 

山形由美 Neo Classique ネオ・クラシック

1. パシー通りの風/フレデリック・ニオベイ(arr.久石譲)
2. 光と風の舞踏曲(ワルツ)/フレデリック・ニオベイ(arr.久石譲)
3. シシリアーノ/ガブリエル・フォーレ(arr.美野春樹)
4. 月の光/クロード・ドビュッシー(arr.美野春樹)
5. ノクターン/フレデリック・ショパン(arr.美野春樹)
6. セピアの黄昏/糀場富美子(arr.美野春樹)
7. パッヘルベルのカノン/ヨハン・パッヘルベル(arr.坪能克裕)
8. 亡き王女の為のパヴァーヌ/モーリス・ラヴェル(arr.美野春樹)
9. ジムノペディ/エリック・サティ(arr.美野春樹)
10. アンナ・マグダレーナの為のメヌエット/ヨハン・セバスティアン・バッハ(arr.美野春樹)
11. みじかくも美しく燃え/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(arr.坪能克裕)
12. セレナード/シャルル・グノー(arr.美野春樹)
13. タイスの冥想曲/ジュール・マスネ(arr.美野春樹)

 

Disc. V.A. 『ネオ・ヒロイック・ファンタジア アリオン HI TECH』

久石譲 『アリオン ハイテックシリーズ』

1986年10月25日 CD発売 32ATC-118
1986年10月25日 LP発売 28AGL-3031
1986年10月25日 CT発売 28AGC-2031

 

1986年公開 映画「アリオン」
監督:安彦良和 音楽:久石譲

 

久石譲作曲によるオリジナル楽曲たちをシンセサイザーをメインにリアレンジした作品。

 

 

【STUDIO MEMO】

戦闘 作曲/久石譲
「アリオン」のアクションシーンで効果的に使われていた曲。原曲はフェアライトCMIを中心にしたサンプリングサウンドと、本物のオーケストラで演奏されており、バスドラム、スネア、タムなどのドラムスの音を使っていないのが特徴。今回はダンスビートを生かしたロックとしてアレンジした。ドラムの音もリズムマシンではなく、シンクラヴィアの音を使っている。

ペガサスの少女 作曲/林哲司
後藤恭子の歌う主題歌。原曲は、いわゆるアイドルポップスだが、これをナイトキャップミュージック的にアレンジした。このアルバムはほとんどコンピュータのプログラムで演奏されているが、この曲だけ全て手弾きでレコーディングしている。音のリアルさは、シンクラヴィアならではのもの。ベース、トロンボーンなど単音系の音は、ボーカル、サックスプレイヤーでもある李家さんが担当。ギター、ピアノなどの和音系は、ギタリストでもある鈴川さんが、それぞれ担当している。

地底王ハデス 作曲/久石譲
同じリズムでメロディをくりかえすシーケンスサウンドにより、スピード感を強調してアレンジした。原曲の、シンフォニーによるクラシカルな緊迫感に代えて、リズムに、生楽器では不可能なサウンド、たとえば2オクターブ以上も周波数を下げたリムショットの音などを使用して、曲を盛りあげている。

想い 作曲/久石譲
ヒロインのレスフィーナ役の高橋美樹が、ハミングで歌う挿入歌が原曲。メロディをとっているのは、李家さんの口笛をサンプリングした音。素朴な響きが、機械くささを感じさせない。続いてメロディをとるハーモニカも、シンクラヴィアの鍵盤で弾いているわけだが、李家さんによれば、目をつぶって弾くと、あたかも口で本当に吹いているような感覚にとらえられるという。

アリオン・メインテーマ 作曲/久石譲
4~5人編成のバンドにハープを加えたコンボを想定してアレンジ。ハープのアルペジオは手弾きによるもの。ピアノの響きのリアルさ、透明感に注目してほしい。イージーリスニングミュージックとしてアレンジ。原曲のシンフォニックな響きと好対象をなしている。

テュポーン 作曲/久石譲
原曲に比較的近い構成でアレンジしているが、よりファンタジックな広がりを感じさせる仕上りを目ざした。後半のリズムのポイントになっている破裂音は、バスケットボールを体育館にたたきつけた音と、ショットガンの音をまぜたもの。テュポーンとは、アリオンたちを乗せて飛翔する巨大な翼龍である。

レスフィーナ 作曲/久石譲
メロディをとっているのは、「ニューパイプ」と名づけられた、シンクラヴィアのオリジナルサウンド。サウンドトラック盤の中でも特に人気のある曲。スネアドラムの音も深い響きのある音を選び情感タップリにアレンジしている。

初陣 作曲/久石譲
昔なつかし?プログレッシヴロックを感じさせる、変拍子のリズムを基調にして、シンプルなメロディモチーフが組みあわされた曲。曲の流れをリードする音色が次々に変わっていき、重々しい原曲をポップに展開していく。

アポロン~レスフィーナとアリオン 作曲/久石譲
サントラ盤から「アポロン」と「レスフィーナとアリオン」の2曲をメドレーでアレンジ。今や、流行ともいえるエスニックなメロディから、あたかも70年代初頭のLAサウンドを思わせるピアノとハーモニカのなつかしいサウンドへ移行していく。原曲は大オーケストラで映画の最後をかざっているが、ここではむしろさわやかにしめくくっている。

ペガサスの少女 (REPRISE) 作曲/林哲司
A面の2局目から一転して、明るいデジタルポップに。生のブラスではむずかしい、広域のブラスサウンドでスタート。全体に歯切れのいい音色で構成。生音に近づけるというよりは、むしろ機械くさいノリのおもしろさ、スピード感を重視した。これをカラオケに「ペガサスの少女」を歌ってみるのも一興かも。

(CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 『アリオン ハイテックシリーズ』

1. 戦闘
2. ペガサスの少女
3. 地底王ハデス
4. 想い
5. アリオン・メインテーマ
6. テュポーン
7. レスフィーナ
8. 初陣
9. アポロン~レスフィーナとアリオン
10. ペガサスの少女(REPRISE)

編曲:鈴川真樹 / 李家毅

 

Disc. 久石譲 『めぞん一刻 サウンドトラック』

1986年10月25日 LP発売 25MS-0113
1986年10月25日 CT発売 25CS-0113

 

1986年公開 映画「めぞん一刻」
監督:澤井信一郎 音楽:久石譲 出演:石原真理子 他

 

 

(LPジャケット / LP盤)

 

(カセットテープ)

 

 

Side 1
1. 一刻館のテーマ#1
2. 響子
3. 想い・で
4. 御神楽池
5. 響子と父
6. Get Down
7. 雨と二人

Side 2
1. それぞれの過去
2. それぞれの想い
3. 時の過ぎゆくままに
4. 一刻館のテーマ#2
5. 響子のテーマ
6. 男と女の会話 ~テーマ~
7. 響子と五代の会話 ~Alone Again~

Side 1 作・編曲:久石譲(1,2,4,5,7)、作詞:石原真理子、作曲:玉置浩二(3)、編曲:星勝(3)、作詞/作・編曲:ギルバート・オサリバン(6)

Side 2 作・編曲:久石譲(1,2,4,5,6)、作詞:澤井信一郎(1)、作詞:阿久悠(3)、作曲:大野克夫(3)、編曲:久石譲(3)、作詞/作・編曲:ギルバート・オサリバン(7)

 

【テーマソング】
アローン・アゲイン
作詞・作曲・編曲・歌:ギルバート・オサリバン

ゲット・ダウン
作詞・作曲・編曲・歌:ギルバート・オサリバン

 

Disc. 来生たかお 『I Wil…』

1986年9月25日 LP発売 28MS-0107
1986年9月25日 CT発売 28CS-0107
1986年9月25日 CD発売 H33K-20054

 

来生たかおの12枚目オリジナル・アルバム。久石譲が編曲を担当した「森への地図」が収録されている。

CDは1991年、1995年(デジタル・リマスター盤)他、再リリースされている。

 

来生たかお I Will LP 1

来生たかお I Will LP 2

来生たかお I Will LP 3

(LPジャケット / LP盤)

 

 

来生たかお I will

1.WE WILL
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:清水信之
2.Simply
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:矢倉銀
3.恋のHard Days
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:矢倉銀
4.夢の加速
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:武部聡志
5.森への地図
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:久石譲
6.フェアウェル
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:清水信之
7.DOUBT
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:武部聡志
8.夏色の彼方
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:武部聡志
9.水の抱擁
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:矢倉銀
10.夢のスケッチ
作詞:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:八木正生

 

Disc. 久石譲 『CURVED MUSIC』

1986年9月25日 LP発売 28MX2531
1986年9月25日 CT発売 28CX2531
1986年9月25日 CD発売 H33P-20107
1995年2月25日 CD発売 POCH-1485

 

CM音楽だけを集めたBGM集

 

 

「できあがってきたフィルムを見て、そこに音楽をつけていくやり方が多いです。僕の場合は、画面を見た時のインパクトで、音も70%ぐらい決まります。最初見た時にこのCMは何を伝えようとしているのかということを読みとり、どういう音楽をつければ、それが見ているほうにうまく伝わるかを大事に考えます。

スタジオへ入ると大体5~6時間ぐらいで完成しますね。長くて30秒か60秒の短い時間の音楽を、長い時間試行錯誤して作っても良いものができるとは思わない。特に僕の場合、見る人を画面に引きつけるための、インパクトを大事にしています。インパクトという一瞬の力は、一瞬の集中力で作るべきだと、僕は思いますね。」

「そうですね。僕は今、フェアライトII、IIIという2台のサンプリング楽器を使ってますが、しょせん音素材にすぎないと思っています。自分の頭の中にある音をうまく伝えることができるので、シンセをよく使っているだけで、例えば自分のイメージにオーケストラが合うと思うと、そちらを使います。とにかく自分が頭の中に描いた音のイメージが最も重要な事だと思います。」

Blog. 「CM NOW 1988年 冬号 VOL.19」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「THE WINTER REQUIEM」「A RAINBOW IN CURVED MUSIC」にて作詞を手がけているのは宇多田ヒカルの父、宇多田照實氏である。

なお、13曲目「月の砂漠の少女(歌劇“真珠採り”より)」のCMオリジナル・ヴァージョンは調性が異なり、アレンジも若干ながら異なる。

 

 

1. A RING OF THE AIR (電気事業連合会 事業PR)
2. THE WINTER REQUIEM (MAZDA Familia 4WD)
3. WHITE SILENCE (資生堂UVホワイト)
4. OUT OF TOWN (キャノン キャノビジョン8)
5. A VIRGIN & THE PIPE-CUT MAN (東海ベスタ バイオパイプ)
6. 794 BDH (MAZDA Familia 4WD)
7. ZTD (日産 フェアレディZ)
8. PÚFF ÁDDER (小西六 コニカ望遠王)
9. A RAINBOW IN CURVED MUSIC (東洋タイア トランピオ)
10. SYNTAX ERROR II (日経産業新聞)
11. “CLASSIC” (サントリー クラシック)
12. FLOWER MOMENT (オリンパスOM2)
13. 月の砂漠の少女(歌劇“真珠採り”より) (日立 マスタックス)

 

CURVED MUSIC

1.A RING OF THE AIR
2.THE WINTER REQUIEM
3.WHITE SILENCE
4.OUT OF TOWN
5.A VIRGIN & THE PIPE-CUT MAN
6.794 BDH
7.ZTD
8.PÚFF ÁDDER
9.A RAINBOW IN CURVED MUSIC
10.SYNTAX ERROR II
11.“CLASSIC”
12.FLOWER MOMENT
13.A Girl of the Moon-Desert (from Opera “The Pearl Fishers”)

 

except. 13. 作曲:George Bizet

Joe Hisaishi Plays
FAIRLIGHT CMI IIX & III
PPG Wave 2.2 , Prophet 5 , DX-7 ,
Mini Moog , Lindrums , TR-808 and Voice

Musicians
Asuka Kaneko(Violin)
Hitoshi Watanabe(Cello)
Tomofumi Suzuki(Electric Guitar)
Soul Tohru(Drums)
Hiromi Iizuka(Vocal)

Recording:Wonder Station,Hitokuchizaka Studio&Studio; Two Two One
From Winter 1985 to Summer 1986

 

Disc. CHAGE and ASKA 『MIX BLOOD』

1986年9月21日 CD発売 YCCR-00025

 

チャゲ&飛鳥(CHAGE and ASKA)8枚目のオリジナルアルバム。

久石譲が編曲を担当した1楽曲「Newsにならない恋」が収録されている。同曲は早見優に提供した楽曲のセルフカバーである。なお同楽曲はKeybordsとしても参加している。早見優のシングル楽曲として提供されたものは編曲:伊豆一彦であり、本作には久石譲による別アレンジとして収録されている。

 

 

chage and aska mix blood

1.EXPLOSION
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三・THE ALPHA
2.MIX BLOOD
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三
3.TEKU TEKU
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三
4.不条理なkissを忘れない
作詞:澤地隆 作曲:CHAGE 編曲:新川博
5.黄昏を待たずに
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三・飛鳥涼・THE ALPHA
6.Newsにならない恋
作詞:澤地隆 作曲:CHAGE 編曲:久石譲
7.ADIOS SEÑORITA
作詞:澤地隆 作曲:CHAGE 編曲:佐藤準
8.かけひき
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:新川博
9.シングル・ベッド
作詞:澤地隆 作曲:CHAGE 編曲:瀬尾一三
10.やっぱりJAPANESE
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三・飛鳥涼
11.月のしずく
作詞・作曲:飛鳥涼 編曲:瀬尾一三