Disc. 東京佼成ウインドオーケストラ 『ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション Vol.2』

1986年12月20日 CD発売 CA32-1343

 

”ニュー・サウンズ・イン・ブラス”シリーズの中から特別によりすぐった名演奏の数々…。ダイナミックで一味違ったポップな演奏をお楽しみください。

指揮:岩井直溥
演奏:東京佼成ウィンドオーケストラ

 

 

久石譲が吹奏楽アレンジを手がけた「愛のコンチェルト」が収録されている。

 

 

曲目解説

1.ビギン・ザ・ビギン
1935年のブロードウェイ・ミュージカル「ジュビリー」のために書いた、コール・ポーターの傑作ですが、1940年に映画「踊るニューヨーク」で、フレッド・アステアが軽やかなステップで踊ったことで、この曲は爆発的なヒット曲となりました。ビギンとスウィングを交差させた見事な編曲で、楽しいレパートリーがひとつ増えました。

 

2.愛のコンチェルト
ピアノで愛を語りかけ、女性の心を捕えてしまう、何とも世の男性には羨ましいかぎりのピアニスト、リチャード・クレイダーマンのヒット曲。原題は”ジュ・テームと名付けられた若い娘のためのコンチェルト”とつけられ、ピアノとオーケストラの為の作品となっています。変拍子を含んだ優しく美しいメロディーが、アコースティック・ピアノによって演奏され、いかにもクレイダーマンらしい雰囲気を漂わせています。前半はピアノがメインになっていますが、後半に行くに従って、バックと共に盛り上りを見せ、いやが上にもクレイダーマンの世界に、我我を引きずり込んでしまいます。こんなあたりが、彼の魅力の一端と言えそうです。この曲は、吹奏楽の為のピアノを含んだレパートリーとしては、貴重な存在となり、演奏会により変化を持たせてくれる事でしょう。

 

3.ピンクの豹
コミックタッチの刑事物語映画「ピンク・パンサー」のテーマです。漫画にも登場すっかりおなじみですが、映画よりもマンシーニ作曲の音楽の方の出来がよいようです。曲の冒頭からスリラー風のテーマが低音楽器で歌われ、中間部はスウィング調でブラス群が都会風でシャレたサウンドを響かせ、T.サックスのアドリブへと引継がれます。演奏では、普段影にかくれているBr.サックスやチューバのソロもあるので、バンド全員で楽しむことができる良い編曲です。

 

4.ミュージカル ”キャッツ” メドレー
ロンドン生まれのミュージカル、ブロードウェイで大ヒットし、現在、劇団四季も東京で公演を続けています。専用の”キャッツ・シアター”まで建ててしまっての大投資が話題を呼んでいます。出演者はすべて猫の扮装。月夜の晩、野良猫たちの集会。おばあさん猫のガンビーを中心に物語が進みます。このスペクタクル同様、音楽も優れ、スケールの大きな編曲も見事です。

 

5.ティコ・ティコ
軽快なサンバ。ラテン・アメリカ音楽の王者、ザビア・クガー楽団や、ハモンド・オルガンの女王、エセル・スミスの演奏で大ヒットしたラテン・ナンバー。木琴のソロ曲などにも使われています。この編曲はクラリネットを中心に木管群をフィーチャー、運指とリズムが少々難しいがリズムに乗ってしまえば大丈夫。テンポの早い小品として、コンサート・プログラムの途中にはさみ、クラリネットにスポットを当てると良いレパートリーになります。

 

6.オー・シャンゼリゼ
このシリーズ中屈指のスウィング曲。今では子供達も知っているこの日本人向の楽しい曲は、パリのシャンゼリゼ通りを散歩する浮き浮きとした風景の描写であり、その通り理屈抜きに明るい演奏です。ロック一辺倒の今日ですが、この一曲でスウィングならではの良さも充分満喫していただけることでしょう。レコーディングには中間に女声コーラスを使いましたが、コンサートでは貴方自身のアイデアで又違った手法も可能です。ポップス・プログラムのラストナンバーとして最適、会場と一緒になって歌えます。ニュー・サウンズの生みの親とも云うべき岩井直溥氏ならではの最高の編曲です。

 

7.イエロー・サブマリン
ロック全盛、一世を風靡したビートルズのヒット曲。アニメーション映画のテーマ曲として、海を題材に作られたものですが、メロディーも歌詞も簡単、恐らく子供たちに呼び掛ける意図があったのでしょう。そのシンプルな素材を、シンフォニックなスタイルにまとめ、”ローエングリンの前奏曲”を寸借挿入したり、一変して可愛らしい木管アンサンブルに歌わせたり、中学校バンドでも演奏できる楽しい編曲です。

 

8.パリのアメリカ人
若くして世を去ったアメリアの天才ピアニスト、ジョージ・ガーシュインの管弦楽曲。「ラプソディー・イン・ブルー」と共にオーケストラにジャズの手法を持ち込んだ、いわば当時のニュー・サウンズの推進者でもあった訳です。又「パリのアメリカ人」は映画化され、これも大成功を収め、むしろ映画化によってこの音楽が一般化したとも云えるでしょう。全編にわたりディスコとブルース、それに、軽快なスウィング調から成り、トロンボーン、トランペットとA.サックスのソロが美しい。原曲と比べるとテーマの順序がバラバラですが、そこは岩井直溥独自の世界、いたるところにウィットといたずら心が飛び出します。スライドホイッスル等の擬音効果が大切で、同時に今日のディスコと大昔のブルースの吹き分け方など、バンドの練習用としても掛け替えのない優れた編曲です。

 

9.シング・シング・シング
ベニー・グッドマン楽団の演奏で大ヒットしたスウィングの傑作。当時の名ドラマー、ジーン・クルーパのドラム・ソロを全編にフィーチャーさせ、グッドマンのクラリネット・ソロとの掛け合いが大いに受けたものです。この編曲はそのスタイルを忠実にコピーしたものですが、スウィングの名曲でもあるし、演奏会でも必ず大きな反響を得られる曲です。クラリネットのアドリブと共に、ドラム・ソロが延々と続きますが、この演奏の様にあまり型を崩さず、忠実にたたいた方が面白いでしょう。猪俣猛のドラム・ソロが見事だし、ドラムの音色も素晴らしい。スウィングの勉強のためにも是非チャレンジしてもらいたい曲です。

 

10.コーラス・ライン・メドレー
ブロードウェイ・ミュージカルでロングランを続け、映画も大ヒットしました。「ワン-君だけは」「音楽と鏡」「アット・ザ・バレエ」「愛は消えない」そして再び「ワン-君だけは(フィナーレ)」と続きます。全編を通じ、ブロードウェイの伝統を感じさせる温かな作品で、又構成、編曲、演奏も特筆すべき作品となっています。クラシック・ナンバーの中に加えても、決して不自然でないかなり重みを持った好編曲です。

(曲目解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション Vol.2

1.ビギン・ザ・ビギン Begin The Beguine
2.愛のコンチェルト Concerto Pour Une Jeune fille Nommée “Je T’aime”
3.ピンクの豹 The Pink Panther
4.ミュージカル ”キャッツ” メドレー Cats Medley
オーヴァチュア Overture ~ おばさん猫のガンビー・キャット The Old Gumbie Cat ~ メモリー Memory
5.ティコ・ティコ Tico – Tico
6.オー・シャンゼリゼ Les Champs-Élysées
7.イエロー・サブマリン (シンフォニック・ヴァージョン) Yellow Submarine (Symphonic Version)
8.パリのアメリカ人 An American In Paris
9.シング・シング・シング Sing Sing Sing
10.コーラス・ライン メドレー A Chorus Line Medley
ワン-君だけは(リハーサル) One (Rehearsal) ~ 音楽と鏡 The Music And The Mirror ~ アット・ザ・バレエ At The Ballet ~ 愛は消えない What I Did For Love ~ ワン-君だけは(フィナーレ) One (Finale)

編曲:
岩井直溥 1,5,6,8,9
久石譲 2
小野崎孝輔 3
森田一浩 4,10
小六禮次郎 7

 

コメントする/To Comment