連載 久石譲が挑む「ハウル」の動く音 (読売新聞)
報告編:久石譲がカンヌで指揮 出来は「完全」
今年のカンヌ国際映画祭で、作曲家でピアニストの久石譲が、バスター・キートンの無声映画「キートン将軍」(1926年)のデジタル修復版の上映に合わせて、オーケストラの指揮を務めた。映画史に輝く作品を集めた特集上映「カンヌ・クラシックス」の終幕を飾る催しで、映画祭最終日前日の5月22日に行われた。
久石は、この秋、修復版をDVD化するフランスの映画会社の依頼で、「キートン将軍」用のオリジナル音楽を書き下ろした。上映会では、現地のオーケストラが、計22曲を1時間15分にわたって披露。叙情的、かつ胸はずむような久石サウンドが、作品に新たな命を吹き込んだ。映像とぴったり合った演奏が終わると、総立ちの観客から拍手喝采(かっさい)を浴びた。
久石はこれまで、宮崎駿監督や北野武監督の作品など、数多くの映画音楽を手がけているが、サイレント映画は初めて。「クールでスラップスティック」なキートン作品が好きだったということに加え、「効果音やせりふに縛られず、100%音楽で表現できる」ことにも大きな魅力を感じて、音楽監督を引き受けたという。
「映像における音楽は想像以上に重要。世界観とか感情とかは、結構、音楽が決めていると思うんです」
現地オーケストラとの練習時間は、本番前日のみ。だが、出来は「完ぺき」だったという。
「映像と合わせるため、1曲の中でもめまぐるしくテンポが変わる。それを22曲、75分間やり続けるのは、人間の生理的に無理なのではと思った。だが、このオーケストラの人たちは素晴らしかった」
カンヌの観衆の反応には「やっぱり、ぐっと来ました。コンサートをやり終えた時の感じ。日本でもやりたいなあと思いました」と満足そうだった。(読売新聞夕刊芸能面より)
(2004年6月4日 読売新聞)