Posted on 2025/02/01
映画『千と千尋の神隠し』(スタジオジブリ/監督:宮崎駿/2001)から珠玉の名曲「あの夏へ」。その誕生から結晶になっていく歴史を聴き解いていく。CD・DVD・楽譜そしてコンサートまで「Ome Summer’s Day」を総力大特集!
名前/Name
器楽版/Instrumental Version
《あの夏へ/One Summer’s Day》
歌曲版/Vocal Version
《いのちの名前/The Name of Life》
この曲は、このメロディは、たくさんの名前を持っているように感じるが、現在も継承されて使用されているのはこうなる。何をおいてもここはおさえておきたい、あっこの人わかってるとなるポイントだ。イメージアルバムやサウンドトラックでは物語に合わせて別の名前が付いていたりもする。また一つずつゆっくり見ていこう。
これから紹介するのはCD10枚とプラス3枚のベストアルバム、DVD2枚、楽譜4冊になる。そこにはピアノソロ版、ピアノ&オーケストラ版、歌曲版、交響組曲版などが多種多彩に存在する。いろいろな括り方でまとめることができると思うがカテゴライズせずに発売順に追っていく流れにした。さあ名曲の歴史をみていこう。
▽千と千尋の神隠し イメージアルバム
▽いつも何度でも / いのちの名前
▽千と千尋の神隠し サウンドトラック
▽ENCORE
▽ENCORE -オリジナル・エディション-
▽SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001
▽a Wish to the Moon -Joe Hisaishi & 9 cellos 2003 ETUDE & ENCORE TOUR-
▽晩夏(ひとりの季節) / いのちの名前
▽久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~
▽Melodyphony メロディフォニー ~Best of JOE HISAISHI〜
▽Melodyphony メロディフォニー -オリジナル・スコア-
▽The Best of Cinema Music
▽Spirited Away Suite
▽SPIRITED AWAY SUITE
▽A Symphonic Celebration
Best / Compilation Album
▽THE BEST COLLECTION presented by Wonderland Records
▽Ghibli Best Stories ジブリ・ベスト ストーリーズ
▽Ghibli Best Stories ジブリ・ベスト ストーリーズ -オリジナル・エディション-
▽Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi
「あの日の川へ」スキャット(歌詞のない歌唱法)で収録されている。久石譲によるピアノとシンセサイザー、そして後半にはリズムプログラミングも入る。このアルバムは【宮崎駿監督のイメージ詩に久石譲が曲をつけ、歌入り4曲を含む全10曲収録したイメージアルバム。う~み、おおたか静流、上條恒彦、ムッシュかまやつ、RIKKIが歌唱。】(メーカーインフォメーションより)とある。まだメインテーマや主題歌はこれと分からない、一列に並んだ楽曲に楽しみワクワクが膨らんだことを憶えている。
書籍『折り返し点 1997~2008 /宮崎駿・著』には【『千と千尋の神隠し イメージアルバム』のためのメモ「1.あの日の川へ」「2.白い竜」「3.夜が来る」「4.油屋」「5.神々さま」「6.海」「7.さみしい さみしい さみしい」】が収載されている。これは監督から久石譲へ作品イメージを伝えるために書いたものでイメージアルバムの曲構想はもちろん曲名・歌詞としても生かされている。
「あの日の川へ」はそのまま歌詞になるような音数の整えられたものというよりは詩に近いものだった。その冒頭にはかっこ書きで【千尋と少年ハクの出会いの主題。なつかしく、あたたかく、甘く、メロディアスに】と宮崎駿監督の曲イメージも添えられている。こうして不朽の名曲は命を授けられた。
主題歌「いつも何度でも」とc/wで「テーマ いのちの名前」も初登場した。久石譲によるピアノとシンセサイザー。歌詞は2番まであってフルサイズで歌われている。イントロ・間奏・アウトロともにイメージアルバムver.を引き継いでいる。シングル盤にはオリジナル・カラオケとなるインストゥルメンタルも収録。
当初は宮崎駿監督による作詞で主題歌として検討もされていた「あの日の川へ(イメージアルバム時の名前)」だが、監督の多忙さもあって断念されたエピソードもある(詳しくは「ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し」ほか)。「いつも何度でも」歌詞:覚和歌子/歌:木村弓の同コンビと作曲:久石譲で歌曲版「いのちの名前」は出来上がる。映画本編にも使用されていない、この時点ではやや控えめなお目見えとなったが原石はたしかな光を宿し未来へ磨かれていく。
「1.あの夏へ」この曲といえばこのピアノイントロ、後世に語り継がれることになる久石譲が生みだした千と千尋の神和音だ。ストーリーに沿ってスリリングなオーケストラ展開部まで続いている。
「10.あの日の川」イメージアルバムの名前「あの日の川へ」に近いが、これは曲構成というよりも宮崎駿監督のメモからイメージを受け継いだものと推察できる。千尋とハクのふれ合いのシーンだ。曲の中間部は演奏会用作品へと引き継がれていくことになる大切なパートだ。
「20.帰る日」神さま達のテーマのあとにたっぷりと聴くことができる。映画のエンディングにふさわしい曲想で音楽も閉じられる。
上記3曲のほかにも、メインテーマであることを示唆するように「3.誰もいない料理店」「10.おクサレ神」でもそのメロディの一部が使われている。
- Disc. 久石譲 『ENCORE』(2002)
自身が手がけた映画音楽やCM音楽をセルフカバーしたピアノソロアルバム。今も最も聴かれている《あの夏へ/One Summer’s Day》の一つがこれと言っていいだろう。とっておきのGIFTだ。留意するとすれば、サウンドトラックから2曲をピアノソロ用に再構成したものであり「あの日の川」の中間部も入り「あの夏へ」の展開部へとまたつながっていく。近年のコンサートで聴ける演奏とは曲構成も曲尺も少し異なる。
同CDの久石譲監修によるピアノ楽譜。《あの夏へ/One Summer’s Day》が弾きたい!久石さんと同じようにピアノで弾きたい!と思ったら、勢いまかせて手にとって安心の一冊だ。作曲者・演奏者と同じアレンジで弾くことができる。CDと同じように留意点も参考にしてほしい。
映画大ヒット中に早くもコンサートで披露された。サウンドトラックから4曲を組曲にまとめたもので「あの夏へ」は当然の登場だ。でもここで気を抜いてはいけない。本盤に収録されているのはサウンドトラックから2曲を再構成したものであり「あの日の川」の中間部も入り「あの夏へ」の展開部へとまたつながっていく。曲尺も長くなりサントラファンにはうれしい音源化だ。ENCORE ver.と同じ曲構成になっていてオーケストラ用とピアノソロ用とを同時期に着手していたことがわかる。
久石譲らしいピアノのニュアンスはコンサート演奏を聴くのが一番。”譲感”に溢れている。ENCORE ver.をベースにしているが展開部は外されることになった。曲構成は1コーラス~中間部~サビ(リプライズ)になる。これでも今コンサートで聴けるピアノソロより長い。この先ますます曲の世界は凝縮されていく。
「いのちの名前 平原綾香 with 久石譲」歌とピアノだけのコラボレーション。歌詞は2番までフルで歌われていて、イントロと間奏はイメージアルバムver.とテーマ いのちの名前ver.が引き継がれている。つまり、久石譲のなかで器楽版《あの夏へ/One Summer’s Day》と《いのちの名前》とで明確な一線を引いていると窺い知ることができる。
そして印象的なピアノのアウトロはこのとき誕生した。さらに奥の方を覗いてみると、実はこのアウトロのコード進行はイメージアルバムver.とテーマ いのちの名前ver.とこれまた同じ。根源はしっかり命を授けられた時のまま遺されている。なにも足さない、なにも引かない、その純度が尊い。
歴史に刻まれる伝説のコンサートだ。知らないはずの世代でも知っているコンサートだ。平原綾香をゲストに迎えて夢の生披露となった。曲名のクレジットは「あの夏へ vocal version 「いのちの名前」」となっている。
ここが一つのマイルストーンになる。《あの夏へ/One Summer’s Day》のためのイントロ・中間部、《いのちの名前/The Name of Life》のためのイントロ・間奏そして共通のアウトロと、いよいよ世界観を結晶するピースがそろった。
「One Summer’s Day」ピアノ&オーケストラ版で今も最も聴かれている一つと言っていいだろう。曲構成はイントロ~1コーラス~中間部~サビ(リプライズ)~アウトロになっている。メロディの装飾も付けられた。久石譲の魔法によって変化してきたこの曲がここに見事に結実した。初回限定盤にはレコーディング映像を収録したDVD付き、ぜひレアコレクションしたい。
2010年以降のコンサート履歴で「One Summer’s Day」あるいは「One Summer’s Day(for Piano and Orchestra)」となっているプログラムはこのバージョンになる。(※ジブリフィルムコンサート除く)
Score. 久石譲 「Melodyphony メロディフォニー -オリジナル・スコア-」 [スコア]
同CDの久石譲監修による総譜。久石譲が編曲・監修したオーケストラのオフィシャル・スコアは希少で久石サウンドの秘密を紐解き、完全再現できる「One Summer’s Day」解体新書。
「久石譲 3.11 東日本大震災チャリティー・コンサート」を収録したもの。『Melodyphony』以降のコンサートはこのピアノ&オーケストラ版「One Summer’s Day」が定番になっていく。少しゆっくりめに想いたっぷりに紡がれる演奏はたしかな一期一会が刻まれている。
映画『千と千尋の神隠し』の音楽を新しく組曲にまとめたもので待望の完全版だ。スタジオジブリ作品交響組曲シリーズにあたるが作品クレジットは交響組曲ではなく組曲となっている。そのひとつの理由に楽器編成があるのではないかと推察する。一般的なオーケストラ楽器で演奏できるものは交響組曲、特殊楽器/独奏楽器も編成に加えられているものは組曲、そう棲み分けをしているのかもしれない。『魔女の宅急便』や『風立ちぬ』も組曲にあたる。もちろんシリーズとして全てラインナップに入れていい。公式な作品紹介や説明の際には交響組曲と使われたりもするのでそう目くじらを立てたり論争することでもない。
冒頭「One Summer’s Day」と終曲「The Return」で、それぞれサウンドトラックから「あの夏へ」はしっかり展開部まで「帰る日」はここでまた初バージョンになる。「The Return」曲想はストリングスがメロディを歌うパートも残しながら終結部はMelodyphony ver.で閉じられる。「千と千尋の神隠し」組曲は、”あの夏へ”にはじまり”あの夏へ”におわる。久石譲ピアノにはじまり久石譲ピアノにおわる。その余韻まで味わいたい。
映画『千と千尋の神隠し』のキャッチコピーに【「生きる力」を呼び醒ませ!】がある。久石譲が映画音楽を音楽作品へと再構成することは、曲が本来持っている力を音楽的に呼び醒ますことだ。サウンドトラック音楽全20曲から、この組曲では9~10曲が選ばれている。本当なら全曲ぶっ通しで聴きたいくらいだ。千尋・ハク・カオナシの登場人物3人にスポットを当てて組曲化を目指したのではないかと思わせる選曲だ。
世界ツアー「ジブリフィルムコンサート」を企画化したアルバムで、あの「武道館コンサート」から完全なる進化を遂げた。フィジカル(CD/LP)は映画作品ごとに切れ目なくワントラックで収録されていて「SPIRITED AWAY」の中に2曲が続いている。デジタルは楽曲ごとに分割されていて「One Summer’s Day (The Name of Life) (Japanese Version / from ‘Spirited Away’)」と「Reprise (from ‘Spirited Away’)」になる。
ひとつめの注目は曲構成だ。器楽版のイントロに始まり1コーラス目はピアノとスキャットがメロディを掛け合っている。スキャットは声を一つの楽器として表現する方法でもある。歌曲版の間奏を挟んで2コーラス目は歌詞の1番が歌われている。そうして器楽版・歌曲版共通のアウトロで終わる。
ふたつめの注目は名前だ。「One Summer’s Day(The Name of Life)」となっている。ここまでさも前提条件のように器楽版《あの夏へ/One Summer’s Day》と歌曲版《いのちの名前/The Name of Life》で解説してきたものが崩れる…崩れるだろうか…そんなことはない。平原綾香ver.に戻ってみてほしい。「武道館コンサート」までは歌曲版イントロになっていて器楽版イントロとは明確な一線が引かれていた。
2017年から始まった同コンサートでこの曲は器楽版と歌曲版が強く結びついた。重なりあってひとつの大きな世界へと広がった。映画主題歌にはなれなかったが、いやだかこそ一曲だけに全身全霊を傾けた最高のかたち、それはインストと歌どちらも輝き溢れる結晶になっている。またその一音一音にこだわるようにピアノのフレーズや伴奏も時間とともに変化してきた。
CD限定盤のボーナスディスクには「One Summer’s Day (The Name of Life) [English Version / from ‘Spirited Away’]」が収録されている。英詞になおされた1番を歌っているが最後だけ2番から「One Summer’s Day~」(夏の日)と訳されるこまやかな演出だ。日本語ver.と英語ver.で歌い手の変わるグラデーションも堪能したい。
よく耳をすませると、日本語ver.と英語ver.はピアノのテイクも異なっている。英語ver.のほうがヴォーカルとピアノの呼吸や抑揚があるように聴こえる。この二つは久石譲ピアノのカラオケの上にヴォーカルを録音したようなもので決してない。久石譲と麻衣、久石譲とグレース・デヴィッドソン、それぞれの共演でそれぞれに録音している。それが、この一曲だけを比べたときのタイムラップ約10秒差、かけがえのない僅かな約10秒に現れているように感じる。ピアノで紡がれるイントロの4つの和音だけを聴き並べてみてもそのニュアンスの繊細さはきっとわかる。
Joe Hisaishi – One Summer’s Day (English Version) featuring Grace Davidson
Joe Hisaishi – One Summer’s Day (English Version) featuring Grace Davidson (Visualizer)
from Joe Hisaishi Official YouTube
Best / Compilation Album
CDは廃盤になっていくことも多いなか発売からずっとある貴重なベスト盤。
(オリジナルリリース『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』収録)
この曲の人気を決定づけるように、映画の一曲のみならず久石譲の代表曲へと昇っていくように、ここでもベスト/コンピレーション・アルバムに収録されている。
(オリジナルリリース『Melodyphony メロディフォニー ~Best of JOE HISAISHI〜』収録)
同CDの久石譲監修によるピアノ楽譜。ピアノ用ではあるが注意してほしい点もある。CDにセレクトされているのはピアノ&オーケストラ版でそれをピアノソロ用に直したものが収載されている。制作協力者もクレジットされているため久石譲自ら手直ししたものではないだろう。ピアノ1本の《あの夏へ/One Summer’s Day》を楽しみたい場合は「ENCORE」の楽譜を先におすすめする。
前言をひっくり返す。あの印象的なピアノのアウトロはこちらにしっかり書かれている。Melodyphony ver.がそうだからだ。これはうれしい。「ENCORE」の楽譜で弾き始めて「Ghibli Best Stories」の楽譜で弾き終わる。どちらの楽譜もそろえたい。
淡い曲だと思った。でもそこに秘められたもの、奥ゆかしさ。時間とともに輝きをましていった曲。ハープ、グロッケン、弦トレモノの舞う光を反射したような音像(2:16-)も、よりくっきりきらめいている。世界に聴いてほしいまず一曲目がこれっていうのが全てを物語っている。
(オリジナルリリース『Melodyphony メロディフォニー ~Best of JOE HISAISHI〜』収録)
世界同日発売のベストアルバムに先駆けて2019年11月に先行配信された同曲は、ニューヨーク撮影の新しいミュージック・ビデオも公開された。
Joe Hisaishi – One Summer’s Day
from Joe Hisaishi Official YouTube
世界が共感するノスタルジーがこの曲にはある。懐かしさや温かさはもちろん孤独や痛み悲しみまで大きく抱擁してくれるような。初めて聴いた曲を懐かしいと思う不思議な感覚だ。人間には生まれる前から持っていた記憶というものがきっとある。日本人なら桜を見てきれいと思う、世界でも月を見てきれいと思う人類の記憶・DNAだ。だから、初めて聴いたときすでに「知っていた」曲となっても不思議はない。それは時に体験したことのない知るはずのない感情すら呼び起こしてくれる。このMusic Videoは2044万回という驚異の再生数を誇り世界中から1万を超えるコメントが寄せられている(2025年2月1日現在)。普遍性とイマジネーションはどこまでも広がっていく。まさに世界をつないでいる一曲だ。そしていつまでもこの曲が似合う日本でありたいと願う。
コンサート歴
コンサート・プログラムから振り返ってみよう。今回の流れに沿って集計したものでアンサンブル版・with バンドネオン・編成不明は除外している。その正確性よりも揺るぎない人気ぶりをみてほしい。
- ピアノソロ 75回
- ピアノ&オーケストラ 61回
- 交響組曲 29回 **
- ジブリフィルムコンサート 46回
**2018年版
(ふらいすとーん調べ/2024年末まで)
コンサートで聴きたい
これからコンサートで聴けるものは、ピアノソロ版『ENCORE』・ピアノ&オーケストラ版『Melodyphony』・交響組曲版『Spirited Away』・世界ツアー版(ジブリフィルムコンサート)『A Symphonic Celebration』でしっかり予習してワクワク会場へ向かいたい。そしていつでもあの感動は甦る。
ここで大切なお知らせがある。今現在コンサートでしか聴けないものがある。それはピアノソロだ。近年のコンサート・アンコールでも久石譲が弾き始めるピアノイントロでどよめきが起こる。曲構成はイントロ~1コーラス~アウトロと音源になっているどのバージョンよりも短い約3分ほどにまとめられている。演奏後にはため息と拍手喝采で会場はうっとり魅了される。
ここで有識者へお知らせがある。アウトロの高い音域で奏でられる分散和音のあとに深く低い音域で和音を響かせるのは、確認できる範囲で2014年頃からだと思われる。WDO2014のピアノソロ版はそうなっている。また2017年「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」でピアノ&オーケストラ版、「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2018」で交響組曲版などその終結部は統一されていくことになる。音源では『Spirited Away Suite』「The Return」と『A Symphonic Celebration』「One Summer’s Day (The Name of Life)」で聴くことができる。さらに素晴らしく格別なものになった。
さらに有識者へお知らせがある。次は世界ツアー版について。4小節の短い間奏のところ、従来の均整な八分音符から付点八分音符のシンコペーションへと変化したのはいつか。2011年NHKBS2放送「The☆Star」平原綾香とのコラボレーションではそうなっているようだ。2018年世界ツアー第2回開催となったメルボルン公演でもそうなっている。ピアノ&ヴォーカルの世界ツアー版が初披露の時だ。「久石譲 in パリ」TV放送もされた第1回開催パリ公演ではピアノソロ版が披露されている。この間奏ピアノフレーズの変化は『A Symphonic Celebration』で聴くことができる。細かすぎて正確でもないかもしれない目安の記録にとどめる。
どうしても残念なお知らせがある。コンサートのライブ配信やTV番組(「久石譲 in パリ」2017年、「NHK 家ピアノ」2020年)などで聴いた人もいるだろう。海外公演のリハーサル試し弾き動画がSNSで世界中を飛び回りトレンド入りしたのも記憶に新しい2022年だ。試し弾きだから貼らない。やっぱりコンサートver.のピアノソロをいつか音源化してほしい。
コンサートで聴けるのは、ピアノソロ版/ピアノ&オーケストラ版/交響組曲版/世界ツアー版の4つだ。いずれにおいても演奏が終わりピアノの音がゆっくり空気に包まれていく余韻まで、久石譲が鍵盤から指をはなして静止した数秒間まで。その”間”をたっぷりと感じとりたい。
今回の特集その全てを一気に掌握するのは難しいかもしれない。興味をもった一曲だけでもゆっくり耳を傾けてほしい。本当に最後にこれだけは言いたい。長い歴史のなかで数々のバージョンが届けられてきたが、いろいろなところからアイデアを持ってきたものではなかった。久石譲が真摯にこの一曲とだけ向き合ってきた、一途にこの曲だけを磨きあげてきたからこそ光り輝いている。最高純度を極めた《あの夏へ/One Summer’s Day》が今ここにある。
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