Disc. 久石譲 『千と千尋の神隠し イメージアルバム』

2001年4月4日 CD発売 TKCA-72100
2020年11月3日 LP発売 TJJA-10027

 

2001年公開 スタジオジブリ作品 映画「千と千尋の神隠し」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

宮崎監督の音楽イメージメモを歌詞とする歌4曲を含む全10曲を収録。う~み、おおたか静流、上條恒彦、ムッシュかまやつ、RIKKIら多彩な顔ぶれが歌唱。監督のメモが詩に近いものが増えてきたことを反映し、約半分が歌となった。2001年1~2月に制作。

 

 

インタビュー

-今回のこのアルバムの特徴は?

久石:
「ボーカルがたくさん入っているということですね。全10曲のうちの約半数が歌で、しかも宮崎さんが作詞しています。割とジブリの近況そのもののような歌詞もたくさんあるんですよね(笑)。それはやっぱり大きな特徴かな。純粋にその、アルバムとして聴けるものを目指していますね。」

-宮崎さんからは、どのようなリクエストがあったのでしょうか?

久石:
「いつもイメージポエムというか、キーになる言葉を頂いているんですが、『もののけ姫』のあたりからは、だんだん言葉だけじゃなくて、そこにこめた想いというか、ちょっと詩に近いものも頂けるようになってきまして。それを核にしてこちらでもってイマジネーションを膨らませていきました。現実の裏側にある異世界に迷い込んでしまった10歳の女の子の話でしょ。そのへんの、現実との境であるとか、そこで戸惑ってる千尋の気持ちっていうのをどう表現するかが一番重要なところでしたね。それに、絵を見ていてもアジアチックなものが多かったり、でもそれも限定的なアジアじゃなかったりしてるじゃないですか。たぶん昭和の初期だったりとか、大正時代なのかな。すごくレトロな雰囲気と今アジアが持っているパワーみたいなものが渾然としているところがあって、世界観を作るのがとても難しかったですね。音楽的にも、割とバリ島ケチャ風なものから沖縄からアジア風なものまで総動員して作ってますね。又、今まで宮崎さんの世界ではあまりやらなかった、ジャジーでメローな感じのものも作りました。そういう意味ではイメージアルバムとしては、すごく幅が広いですよね。限定していくことよりは、広がっていることを意識して作っています。」

-楽器の特徴などはありますか?

久石:
「今まで自分がやってきたものに比べれば大変カラフルですね。あがってきている詞が『神々さま』とか『油屋』とかね。宮崎さんの気持ちが強く出ているので、あえて五音階的なあるいは沖縄的な、そういうスパイスを強めにふりかけました。だからヴォーカルも純邦楽の人だったりとか、エスニックな歌を得意としている人だったりとか、とても色の濃い人を起用しています。特にかまやつさんと上條さんに唄ってもらえたのは幸せでした。一見バラバラのように聞こえながら、どこで統一をとるか、というのは難しいところでしたけど。」

-楽しみにしています。

久石:
「とにかく、本当に楽しいアルバムになっています。おそらく今頃、ジブリの皆さんは必死の思いで作業していると思いますが、僕は後ろから暖かく見守る応援団のような気持ちで作ってますから(笑)」

2001年2月12日 ワンダーステーションスタジオにて

(インタビュー ~CDライナーノーツより)

 

 

楽曲解説

1.あの日の川へ スキャット:う〜み
アルバムの1曲目を飾るのはう〜みさんの透明感あふれるスキャット。耳に残る印象的なメロディに「ぜひ歌詞を付けて!」と思うのはスタッフだけでしょうか?

2.夜が来る
映画の特報に使われた曲よりもさらにパワーアップして、忍び寄る暗闇を描いているインスト曲。なんとも不気味な雰囲気を醸し出している作品。

3.神々さま ヴォーカル:おおたか静流 合いの手:藤堂彰寛
エスニックからはじまり純邦楽や沖縄の5音階など、この曲ほどカラフルなものない。メロディを聴いてビックリ!歌詞を聴いてビックリ!!の驚きの1曲。

4.油屋 ヴォーカル:上條恒彦
力強い上條さんの唄声と監督自らによる作詞で語られる労働歌(?)。「言ってみればボクらのことを歌っているんです」と誰かがコメントしたとかしなかったとか…

5.不思議の国の住人
木管とピアノ、ティンパニーといった珍しい編成の曲。可愛らしさとおどけた感じにバッハのエチュードを思わせるような独特のメロディが加わって…一体どういう曲でしょう?

6.さみしい さみしい ヴォーカル:ムッシュかまやつ
パラリンピック以来、久しぶりの共演となったかまやつ氏。明るいメロディとかまやつ氏のアジのあるいなたい唄声が、さみしさを語る詞を一段と際立てている作品。

7.ソリチュード ヴァイオリン:鈴木理恵子 チェロ:近藤浩志
「菊次郎の夏」のサントラに参加して頂いた鈴木さんと、久石さんとはツアーで全国を駆け抜けた仲である近藤氏。この御二方による共演はアルバム内でも稀有な存在ともいえる。ヴァイオリンとチェロの奏でる美しいメロディはエレジーなのかラブソングなのか…

8.海
静かで深い海を連想させるようなインスト。久石さんのピアノソロも聴き逃せませんよ!

9.白い竜 ヴォーカル:RIKKI
RIKKIさんとは「醍醐寺音舞台」以来の共演。その美しい唄声と歌詞で繰り広げられる世界観は、聴く人の心を揺さぶります。

10.千尋のワルツ
曲の流れに身を任せると自然に体が動いてしまいそうな、穏やかで愛らしいワルツ。

(楽曲解説 ~ワンダーシティ・スタッフ より)

※出典元が今となってはわからないが映画および本CD制作時期にWeb公開されていた情報である

 

 

書籍「折り返し点 1997~2008」/宮崎駿・著に、『千と千尋の神隠し イメージアルバム』のためのメモ、「1.あの日の川へ」「2.白い竜」「3.夜が来る」「4.油屋」「5.神々さま」「6.海」「7.さみしい さみしい さみしい」が収載されている。これは監督から久石譲へ作品イメージを伝えるために書いたもの。イメージアルバムの曲および曲名・歌詞として生かされている。

 

 

 

 

久石譲 『千と千尋の神隠し イメージアルバム』

1. あの日の川へ 歌:う~み
2. 夜が来る
3. 神々さま 歌:おおたか静流
4. 油屋 歌:上條恒彦
5. 不思議の国の住人
6. さみしい さみしい 歌:ムッシュかまやつ
7. ソリチュード
8. 海
9. 白い竜 歌:RIKKI
10. 千尋のワルツ

作詞:宮崎駿
作曲・編曲・演奏:久石譲

プロデュース:久石譲

レコーディングスタジオ:ワンダーステーション

ゲスト・ミュージシャン:
ヴォーカル:う~み (M-1)
ヴォーカル:おおたか静流 (M-3)
ヴォーカル:藤堂彰寛 (M-3)
ヴォーカル:上條恒彦 (M-4)
ヴォーカル:西田美和 (M-4)
ヴォーカル:ムッシュかまやつ (M-6)
アコースティックギター:古川昌義 (M-6)
ヴァイオリン チェロ:近藤浩志 (M-7)
ヴァイオリン:鈴木理恵子 (M-7)
ヴォーカル:RIKKI (M-9)

 

Spirited Away Image Album

1.To the River of that Day
2.The Night is Coming
3.Gods
4.Yuya
5.People in the Wonderland
6.I’m Lonely, Lonely
7.Solitude
8.Sea
9.White Dragon
10.Waltz of Chihiro

 

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