Disc. 久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

2008年4月16日 CD発売

’88年に第一弾をリリースして以来 Piano Stories シリーズの4枚から、久石譲が自らセレクトした本格ベストアルバム。

映画、CM、ジブリ作品等に使われた名曲の数々がピアノ&ストリングスによるアレンジでより美しく輝きを放つ。久石譲の入門編としても親しみやすく、ファンの間でも名盤として評価の高い作品。

 

 

久石譲 『PIANO STORIES BEST ’88-’08』 に寄せて

この『Piano Stories Best ’88-’08』に収録された楽曲は、久石が折に触れて発表してきたソロ・アルバム・シリーズ『PIANO STORIES』全4枚の中からセレクションされた楽曲と、ピアノ・ソロとしては今回が初収録となる未発表音源「人生のメリーゴーランド」を加えた構成となっている。1枚目のアルバム『Piano Stories』が発表されたのが1988年だから、今年でちょうど20年。その20年という時間の流れの中で、久石という音楽家が歩んできた「Histories=歴史」つまり「His Story=彼(久石)の物語」が語られてきたのであり、また、彼の音楽に接し続けてきた我々自身の「歴史=物語」が語られてきたわけである。

このアルバムに収録されている楽曲の多くは、これまで久石が手がけてきた映像音楽(映画音楽やCM、テレビ音楽)の代表作を中心に、久石自身がソロ・アルバム用にアレンジし直した=ピアノで語り直したものである。だからといって、これが単なる久石の「映像音楽集」というかというと、実はそうではない。いささか逆説めいた言い方になるが、久石の音楽は映像音楽であって、映像音楽ではないのである。このことを、少し細かく見てみたい。

宮崎作品での方法論が典型なのだが、久石は具体的な映像を見る前から音楽的構想を組み立てていく作曲家である。誤解を恐れずに書けば、久石は特定の”映像”に音楽を付けているわけではない。「僕の映画音楽の作り方というのは、監督の作りたい世界を根底に置いて、そこからイメージを組み立てていく」という久石の言葉に端的に表れているように、あくまでも久石は映画やテレビ番組の”世界観”に音楽を付けているのである。だからこそ、作品の世界観を出発点として生まれた音楽を、繰り返しアレンジする自由も生まれてくる。

久石にとって、映像作品の完成は、即、音楽の完成とはならない。現代音楽の用語を用いれば、久石の映像音楽は常に”ワーク・イン・プログレス”なのである。ソロ・アルバム『PIANO STORIES』のシリーズは、ある映像の世界観をきっかけにして生まれた久石の音楽を「ピアノで語り直した物語」なのだ。

言うまでもなく、ピアノは作曲家・久石譲のアイデンティティと密接に結びついている、きわめて特権的な楽器である。例えば『風の谷のナウシカ』のメインテーマとして知られる《風の伝説》、すなわち[04]「Fantasia (for NAUSICAÄ)」を聴いてみていただきたい。ここに収められたのはピアノ・ソロ・ヴァージョンによる演奏だが、映画本編のサウンドトラック盤の演奏でも、あるいは映画完成前に作られたイメージアルバムの演奏でも、《風の伝説》の主題は常にピアノで演奏されている。つまり、『ナウシカ』という作品の世界観-主人公ナウシカの凛とした面持ち、彼女の勇気ある姿勢など-の核心(ハート)を音楽で表現する時に、ピアノに自己を託す作曲家であることを意味する。ピアノという楽器は、久石自身の核心(ハート)でもあるのだ。

そのことを非常に象徴的に表した例として、もうひとつ、『ハウルの動く城』のメインテーマである[13]「人生のメリーゴーランド」を挙げてみよう。本編をご覧になったリスナーならご存知だと思うが、『ハウルの動く城』ではほぼ全編にわたり《人生のメリーゴーランド》の主題が繰り返し登場する(スコア全体が一種の変奏曲と言っても過言ではない)。本編の冒頭シーン、《人生のメリーゴーランド》は久石のピアノ・ソロで2回繰り返して演奏されるが、そのシーンの登場人物の会話から、我々観客はハウルが他人の心臓を取ってしまう魔法使いであること、すなわちハウルにとって心臓(ハート)が重要であることを知る。映画の中で最後にピアノ・ソロが登場するのは、ハウルが心臓(ハート)を取り戻す場面であり、そこで演奏される楽曲は本編冒頭の音楽と全く同じである(変奏曲の最後に主題が回帰する手法に似ている)。つまり《人生のメリーゴーランド》が流れる冒頭シーンは、物語的にも音楽的にも”主題提示部”の役割を果たしており、『ハウル』本編で展開される物語と音楽は、この主題を用いた”変奏曲”に他ならない。こうした作曲手法は、バッハやベートーヴェンがピアノ(鍵盤楽器)のために書いた変奏曲の方法論と、実は何ら変わるところがないのだ。さらに『ハウル』全体の音楽を注意深く聴いてみると、《人生のメリーゴーランド》の演奏にピアノが使用される箇所は、ヒロインのソフィーがハウルに抱く恋愛感情を表現した場面に限定されていることがわかる。《人生のメリーゴーランド》は、ピアノという楽器で演奏されることで”愛のテーマ”の役割も果たしているわけだ。ハウルがソフィーの恋愛感情によって心臓(ハート)を取り戻すこと。これこそが『ハウルの動く城』という作品の核心(ハート)的テーマに他ならない。その最も重要なテーマを、久石はピアノという楽器に託していたのである。

このような奇跡的な作曲を可能にしたのは、繰り返すまでもないが、ピアノという楽器が、久石のアイデンティティの根幹に関わる核心(ハート)的楽器だからである。そうしたことを頭の片隅に置きながら、この『Piano Stories Best ’88-’08』に耳を傾けていただきたい。久石譲という音楽家の核心(ハート)が、彼のピアノ演奏同様、いささかも曇ることのないタッチで、明確に語られていることに気づくはずだ。

2008年3月 前島秀国

(寄稿文 CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

01. The Wind of Life
『PIANO STORIES II』に収録。ポップス・メロディの作曲家としても、久石が第一線の才能を有していることを示した好例である。

02. Ikaros -2008 Remix-
『PIANO STORIES 4』に収録。ブラームスのピアノ音楽に通じる重厚さと、躍動感溢れるミニマルのパルスの対比が絶妙である。2008年再ミックス音源。

03. HANA-BI
『PIANO STORIES III』に収録。北野武監督『HANA-BI』メインテーマ。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞など、この作品と縁の深いイタリアで録音された演奏である。イタリアならではのストリングスの色合いが、楽曲の風格を高めることに貢献している。

04. Fantasia (for NAUSICAÄ)
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』のメインテーマ《風の伝説》に基づく。

05. Oriental Wind -2008 Remix-
『PIANO STORIES 4』に収録。サントリー緑茶「伊右衛門」CMソング。”和”のテイストを基調としながら、久石自身のルーツであるミニマル的な要素や新ウィーン楽派風のストリングス・アレンジも顔を覗かせる。2008年再ミックス音源。

06. Innocent
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『天空の城ラピュタ』のメインテーマ《空から降ってきた少女》のソロ・ピアノ・ヴァージョン。

07. Angel Springs
『PIANO STORIES II』に収録。サントリー「山崎」CMソング。冒頭のチェロとピアノの絡みが美しい。希望に満ち溢れた楽曲。

08. il porco rosso
『PIANO STORIES III』に収録。宮崎駿監督『紅の豚』メインテーマで、同映画のサウンドトラック盤に収録された《帰らざる日々》をさらにジャジーにアレンジしたもの。作品の舞台はアドリア海周辺という設定だったが、そのアドリア海に面したイタリアでの録音である。

09. The Wind Forest
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『となりのトトロ』の《風のとおり道》が原曲。冒頭のミニマル風の音型が小さき生命の存在をユーモラスに表現し、東洋的なメロディが森の大らかな生命を謳い上げる。

10. Cinema Nostalgia
『PIANO STORIES III』に収録。日本テレビ系「金曜ロードショー」オープニングテーマ。久石の敬愛するニーノ・ロータにオマージュを捧げたような、クラシカルな佇まいが美しい。

11. Kids Return
『PIANO STORIES II』に収録。北野武監督『キッズ・リターン』メインテーマをピアノ+弦楽四重奏、すなわちピアノ五重奏曲の形で演奏したもの。

12. A Summer’s Day
『Piano Stories』に収録。ミニマル・ミュージックの先駆者的作曲家として知られる、エリック・サティの楽曲を彷彿とさせるピアノ曲。

13. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-
『PIANO STORIES 4』にオーケストラ伴奏のアレンジ版が収録されていたが、ここに聴かれるピアノ・ソロ・ヴァージョンはそれとは別に収録されたもので、本盤が初出となる。宮崎駿監督『ハウルの動く城』のメインテーマ。

text by 前島秀国

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

この作品全体を通してシンプルなアコースティック感が心地いい。エンターテイメント音楽としての大衆性と芸術性を両立させた音楽たち。どの曲も映画やCMから解放されたひとつの音楽作品としてリアレンジされ成立している。

(4) (6) (9) のような「ナウシカ」「ラピュタ」「トトロ」の壮大なオーケストラの世界をピアノひとつでドラマチックに色鮮やかに表現している。

一方で(8)の「紅の豚」では、ピアノ&ストリングにトランペット・ベース・ドラムが加わり、よりJAZZYに、大人の雰囲気たっぷりにしっとりと聴かせている。

北野武監督作品の(3) (11)でも、映画スクリーンの枠から独立した、アコースティックサウンドでありながら、よりエモーショナルでパッション豊かな演奏が。その他CM音楽たちも、一度は聴いたことがある印象的なメロディー。

「PIANO STORIES 4」に収録されていた(2) (5) はリミックスされ、より音の広がりと深みがある。

本作品のためのだけに収録されたボーナス・トラックとも言える、未発表音源(13)の「ハウル」は、ピアノ・ソロでの華やかで上品なワルツが舞う。

 

参考までに、本作品に収録されたオリジナル作品を補足。入門編として手にとった方に、次の作品に触れ音の世界を広げるきっかけになれれば。

「Piano Stories」 ・・ (4) (6) (9) (12)
「Piano Stories II ~The Wind of Life」 ・・ (1) (7) (11)
「NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~」 ・・ (3) (8) (10)
「FREEDOM PIANO STORIES 4」 ・・ (2) (5)

 

 

2018年4月25日 LP発売 UMJK-9075/6
完全生産限定盤/重量盤レコード/初LP化

 

 

久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

1. The Wind of Life
2. Ikaros -2008 Remix- (東ハト「キャラメルコーン」CMソング)
3. HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
4. Fantasia (for NAUSICAÄ) (映画『風の谷のナウシカ』より)
5. Oriental Wind -2008 Remix- (サントリー緑茶「伊右衛門」CMソング)
6. Innocent (映画『天空の城ラピュタ』より)
7. Angel Springs (サントリー「山崎」CMソング)
8. il porco rosso (映画『紅の豚』より)
9. The Wind Forest (映画『となりのトトロ』より)
10. Cinema Nostalgia (日本テレビ系「金曜ロードショー」オープニングテーマ)
11. Kids Return (映画『キッズ・リターン』より)
12. A Summer’s Day
13. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- (映画『ハウルの動く城』より) ※未発表音源

All Music Composed , Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by Joe Hisaishi (except Track-08 Backing Piano by Masahiro Sayama)

 

Disc. 久石譲 『HISAISHI meets MIYAZAKI Films』

2008年4月8日 CD発売 ※輸入盤

スタジオジブリ宮崎駿監督作品からのコンパイル。日本国内盤で既出の複数のCDアルバムからセレクトされたもの。

なお、LP盤もリリースされているが、SIDE-A「もののけ姫」より、SIDE-B「千と千尋の神隠し」より「紅の豚」よりが収録されている。(「風の谷のナウシカ」よりは未収録)

 

 

NAUSICAA OF THE VALLEY OF THE WINDS
Nausicaä Symphonic Poem
1. First Movement
2. Second Movement
3. Third Movement

PORCO ROSSO
4. Madness

PRINCESS MONONOKE
5. The Legend of Ashitaka
6. Princess Mononoke Theme Song
7. TA.TA.RI.GAMI
8. Ashitaka and San

SPIRITED AWAY
9. One Summer’s Day
10. The Dragon Boy / The Bottomless Pit
11. The Sixth Station
12. Reprise

All Composed, arranged and produced by Joe Hisaishi

Track 1,2,3 and 4
from WORKS I

Track 5,6,7,8
from WORKS II

Track 9,10,11,12
from SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『W.D.O. BEST』

久石譲 WDO 『BEST』

2007年6月20日 CD発売

新しいポップス・オーケストラとして誕生したニュープロジェクト「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」 3年間の活動集大成。

 

 

World Dreams
これは、ワールド・ドリーム・オーケストラのテーマ曲。このオーケストラのアイデンティティを象徴する曲といってもいい。もともと祝典序曲のような曲を創ろうと思っていた。シンプルで朗々と唄う、メロディを主体とした曲。メジャーで、ある種、国歌のような拡張あるメロディで、あまり感情に訴えるものではないもの。ストーンと潔い曲を書きたかった。

以前、『Asian Dream Song』という曲を書いた。今回は『World Dreams』だ。じゃあ、アジアの夢が世界の夢になったのかというと、そんなことはない。情報技術の飛躍的な進歩によって、世界はどんどん小さくなって、地域になってきている。同時に世界全体のシステムというものが壊れ始めている。しかし、これが世界の夢だったのか? 世界中の人々の夢は何だったのか? こんな世界を人々は望んではいなかったはずだ。音楽家としてできることは何なのか。僕は憑かれたように作曲した。

この曲が、聴く人のささくれ立った感情を少しでも和らげ、そして「まあ、いいか、明日もまた頑張ろう」と思ってくれたら・・・。そんな気持ちを代表しているようなのがこの曲だ。

曲ができて、3管編成のフルオーケストラのスコアにまとめるまで1週間ほど。それはちょっと「自分は何かに書かされているんじゃないか」と思うくらいの速さだった。

 

風のささやき
映画「華麗なる賭け」のテーマ。これを選んだのは、映画よりもミシェル・ルグランの作品だから。彼にはクラシックの要素があり、ジャズにも精通していて、楽曲がとても機能的にできている。それでいて、変に情緒に流れない。有名な2小節のフレーズがほとんど変わらずにずっと続くこの曲は、フランス人である彼のハリウッド・デビューの曲だ。全世界を相手にしようって時に、彼は敢えて、このような機能的で情緒に流れない曲を持ってきた。これは大チャレンジだと思う。しかも、「このコード進行しかありえない」って時に、メロディは違うところにいって、不協和音になってしまう。この曲については、アレンジは10通りくらい書いたと思う。一番苦労した曲だ。木管と弦だけという非常にシンプルな形態をとったが、決して楽ではないこの曲で、CDでもオーケストラが素晴らしい演奏をしている。

 

The Pink Panther
ヘンリー・マンシーニのこの作品は、ワンフレーズ聴いただけで何の曲かはっきりわかる、とても個性的な曲。これほどユーモアがあって、しかもしっかり創られている曲は少ないので、これはのちのち、我々にとっても大事な曲になっていくと思う。だからぜひやりたかった。ところで、この曲はたいがい、ブラス・サウンドが中心になる。しかし今回は、「隠し味」とも言える、弦のちょっと色っぽい音がすごく重要な要素。それがたぶん、僕のアレンジの特色になるだろう。

 

China Town
同名の映画は1930年代を舞台にした、情ない探偵の話で、僕の大好きな映画。主演のジャック・ニコルソンも好きな俳優だ。曲はジェリー・ゴールドスミス。この曲のテーマが頭にこびりついていたので、今回、ティムさんというトランペット奏者を得て、どうしてもこの曲を入れたいと思った。ティムさんのジャジーな雰囲気も素晴らしい。その演奏からは、音楽性の幅の広さがわかる。

 

Iron Side
テレビで部分的に使われることが多くて、そういうイメージが強いが、とてもいい曲だ。「鬼警部アイアンサイド」のテーマで、創ったのはクインシー・ジョーンズ。僕はクインシー・ジョーンズが好きでよく聴いてるけど、いつも羨ましいと思うのは、彼がソウル・ミュージックやブルースといったブラック・コンテンポラリーの原点をちゃんと持っていて、いつでもそこに帰ることができるということ。そんな彼の曲の中でも、これはとても洗練された楽曲。いろんなものが凝縮している曲だ。

 

Mission Impossible
あまりにも有名な、「スパイ大作戦」のテーマ曲。この曲を創ったラロ・シフリンも大好きな作曲家だ。変型のはずなのに、心地いい5拍子。このリズムの凄さが、オーケストラのダイナミック・レンジを表現するのにぴったりだ。「ハードボイルド・オーケストラ」のシメの曲としてもピッタリではないか?

 

ジャズ組曲第2番 ワルツ (ショスタコーヴィチ)
僕が今年、最もはまった曲。映画「アイズ ワイド シャット」の曲だけれど、とにかく見事にはまっている。他人の曲で、今年一番好きになった曲はこれだ。

 

天空の城ラピュタ
これは、ティム・モリソンさんが吹くことを想定して、彼のためにアレンジした。これまで何度もやってきた曲だけれども、ティムさんという演奏家を得て、新日本フィルと共に演奏するというところで、改めてアレンジした。今までの印象とは違う曲になっている。ティムさんは本当に音楽性豊かな演奏家。大いに期待してほしい。

 

Raging Men
HANA-BI
北野武監督の映画「BROTHER」の中で使った曲。エネルギーの塊みたいな曲なので、オーケストラのパーカッションとブラスの激しさを聴いてもらいたい。『HANA-BI』は、マイ・フェイバリット・ソングのひとつ。今回はヴァイオリンをフィーチャーしている。これまでとは違った魅力を感じてほしい。

 

ロミオとジュリエット (プロコフィエフ)
この曲は、ひとつひとつ挙げられないほど、多くの映画に使われている。複雑なテクスチュアというよりも、素朴な、強いメロディの楽曲。

Blog. 「World Dream Orchestra 2004」 コンサート・パンフレットより

 

 

【楽曲解説】

あれからまだ1年も経っていないのか・・・久石譲が2004年夏に新日本フィルハーモニー交響楽団とともに新しいプロジェクトとしてスタートさせた”久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ”の3年間の活動を集大成したベスト・アルバムを聴きながら、僕は思った。

「アヴェ・マリア」が流れてきた時にフラッシュバックしてきた。2006年8月13日に東京・錦糸町のすみだトリフォニー・ホールで行われた一夜限りのコンサート「真夏の夜の悪夢」の圧倒的な素晴らしさ。久石さんが曲の間のMCで「サスペンス映画やホラー映画の曲というのはコード進行も含めて非常に精密で複雑、奥が深いものが多いので、オーケストラで演るにはいいものがたくさんあるんです」と話しながら『エクソシスト』や『サイコ』『殺しのドレス』・・・といった曲をカール・オルフの代表作である「カルミナ・ブラーナ」などと同列線上に並べて聴かせるという離れ技を軽々とこなして見せたが、その間にいろいろなことをやっているので、記憶がぼやけてしまっていたのである。

少し例をあげてみると、2006年10月には、久石譲というアーティストがアメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマンと並んで世界でもトップクラスの現代音楽の作曲家であることを証明したソロ・アルバム『Asian X.T.C.』が発表された。また、その直後から2007年3月まで全国ツアーとアジア・ツアーも行い、大成功させている。TVから流れてくるCFの音楽も、担当する映画音楽の話題もとぎれることがない。

だから、本当にもったいないことに、久石さんが「システムの壊れかけた世界で、僕たち音楽家は、音楽ができることは何なのか・・・」という熱い想いをもとにスタートさせたW.D.O.のプロジェクトは、作り出された音楽が素晴らしくクオリティが高く、唯一無二の魅力を持ちながら、久石譲の旺盛な仕事の中に埋没してしまっている感がある。そう考えると、このベスト・アルバムは久石譲というアーティストの才能の深さ、広さを知るには絶好のものであり、選曲と曲のつながりは、いわゆる人気のある曲、聴きたいだろう曲を集めた一般的な意味での”ベスト・アルバム”という範疇を完全に超えたアルバムと言える。

久石さんはW.D.O.について「これは僕のコンサートでもなければ、新日本フィルのコンサートでもない。新日本フィルの音と自分の2つが1つになって、別の新しいユニットを創る。それを何かいい形で世に出したいというお互いの思いがワールド・ドリーム・オーケストラとなって実現した。僕は基本的にアレンジはやらない人間だ。作曲家だから興味がない。だが、自分がアレンジをすることによって、作品となって初めて発表できるものになる。1つの楽曲やメロディーやリズムのエッセンスを基に、僕のオリジナル部分を組み立てていく。僕にとってアレンジは翻訳みたいなものかも知れない。外国語の作品が日本語になる段階で翻訳家の個性が反映されるのと同じように、他の人の楽曲でも、こうしてひとつの組曲のようにすることで、そこに自分の作曲家としての意図が出てくる。世界中にはいい曲が山ほどあるので、それを僕のフィルターを通して、オーケストラ作品として完成させ、世に出していく。それがこのオーケストラの一番大きなテーマだ」とコメントしているが、W.D.O.のために久石さんが書き下ろした「World Dreams」からショスタコーヴィチの「Waltz II」までの14曲は、過去3枚のアルバムと3回の公演で、その思いが結実したことをはっきりと示している。久石さんが最初のアルバムに寄せた文章をもう一度ここで紹介し、そこから全曲を紹介していくことにしよう。

1.World Dreams
「新日本フィルハーモニー交響楽団とのこのニュープロジェクトは、色々考えて「ワールド・ドリーム・オーケストラ」と命名した。そして、まずこのCDの制作を決めた。 目玉は「ハードボイルド・オーケストラ」という組曲だ。例えるなら「夏場のラーメン」。暑い夏に熱いラーメンを食べて汗を掻き切ると清々しくなる。それと同じで暑い夏に暑苦しいブラスセクションが大汗を掻いて鳴りまくって!という男らしいコンセプトなのだ。 そして、あまり今までやった事のなかった自分の楽曲でないもののアレンジに取り掛かった。「Mission Impossible」とか「007」とか、しかし、何か物足りなかった。 何をやりたいんだろう、このオーケストラと?
何のために・・・・。 そんな中でこのオーケストラの為に曲を書き下ろした。もともと祝典序曲のようなものを、と思っていた。作曲している時、僕の頭を過ぎっていた映像は9.11のビルに突っ込む飛行機、アフガン、イラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだった。「何で……」そんな思いの中、静かで優しく語りかけ、しかもマイナーではなくある種、国歌のような格調のあるメロディーが頭を過ぎった。「こんなことをするために我々は生きてきたのか?我々の夢はこんなことじゃない!」まるで憑かれたように僕は作曲し、3管フル編成のスコアは異様な早さで完成した。タイトルは「World Dreams」以外なかった。漠然と付けた名前、「ワールド・ドリーム・オーケストラ」ということ事体がコンセプトそのものだった。 レコーディングの当日、まさにこれから録る!という時に僕は指揮台からオーケストラの団員にこれを伝えた。「感情的な昂りは音楽事体には良くない」といつも心がけていたが、込み上げてくるものを押さえることが出来ないまま僕は腕を振り続けた・・・。そしてホールに響いたその演奏は、今まで聞いたことがないくらいすばらしいものだった。 その瞬間、僕らは「ワールド・ドリーム・オーケストラ」として1つになった。」

この文章を読みながら曲を聴くと、様々な映像が頭を過り、映像を喚起する音楽を書かせたら、久石譲という作曲家が世界でも5本の指に入る存在であることを改めて実感させられる。W.D.O.の出発点であると同時に、これは永遠のテーマ曲であり、オープニングを飾るにふさわしい名曲、名演である。

2.パリのアメリカ人
ジャズの自然さをブロードウェイとコンサート・ホールに結合させた作曲家ジョージ・ガーシュインの代表作の1つに、オープニング・ナンバーは時の流れを超えてつながっていく。1951年に同名のミュージカル映画が作られ、大当たりをとった名曲がフル・オーケストラ用管弦楽曲として書かれたのは1928年ガーシュウィンが30歳の時。名曲が4分の3世紀の時を超えて感応しあっている。

3.男と女
”映像と音楽が合体した最高の成功例”として評価され、1966年のカンヌ映画祭グランプリに輝いたクロード・ルルーシュ監督の名作の主題曲で、数え切れないほどのカバー・バージョンが作られているが、有名な”ダバダバダ”のフレーズより、オーケストレイションに趣向をこらしたこのバージョンは本当に個性的だ。

4.白い恋人たち
ルルーシュの名パートナー、フランシス・レイとピエール・バルーのコンビの曲が続く。1968年にフランスのグルノーブルで開催された第10回冬季オリンピックの模様を収めたルルーシュ監督のドキュメンタリー映画の主題曲だが、「イージーリスニングではなく、どうしたらオーケストラになるか」を考えてアプローチをしている久石さんならではの仕上がりになっている。

5.風のささやき
スティーヴ・マックィーンとフェイ・ダナウェイが共演した粋でお洒落な犯罪映画『華麗なる賭け』の主題歌。1968年のアカデミー主題歌賞を受賞した名曲で、久石さんはミシェル・ルグランのメロディーを”華麗なるオーケストラ”に仕立て上げている。

6.ロシュフォールの恋人たち
フランスの名監督ジャック・ドゥミ監督がミシェル・ルグランと組み、カトリーヌ・ドヌーヴと姉のフランソワーズ・ドルレアックをメインにジーン・ケリー、ジョージ・チャキリスといったアメリカのスター俳優をキャスティングして作ったフランス製ミュージカルの決定版『ロシュフォールの恋人たち』。リズミカルなアンサンブルが夢の世界へと誘ってくれる。

7.The Pink Panther
ミシェル・ルグランなどとともに映画音楽の世界に輝ける足跡を残している名匠ヘンリー・マンシーニが書いたユーモラスな主題曲が軽快な調子で演奏される。ドジなクルーゾー警部の活躍ぶりをコミカルに描き、1963年のシリーズ第1作から93年の7作まで30年間にわたり、人気を呼んだ「ピンクの豹」を選ぶあたりは、久石さんの遊び心か・・・。

8.China Town
雰囲気はいきなりダークなハードボイルドの世界へと変わる。『チャイナタウン』は60年代のポーランド映画界を代表するロマン・ポランスキーがアメリカで製作したハードボイルド映画の傑作。デカダンなムード漂う30年代のロサンジェルスの風俗を克明に映し出したカメラも出色だったが、ジェリー・ゴールドスミスの書いた音楽を久石さんはさらに深く掘り下げている。アレンジひとつで音楽は本当に色々な表情を見せてくれることを実感して欲しい。

9.Ironside
作曲家としてもアレンジャーとしてもプロデューサーとしても、ジャズからポップスの分野まで幅広く、かつ長いこと一線で活動し続けているクインシー・ジョーンズが書き下ろした曲を久石さんが信頼しているアレンジャー山下康介さんが、変幻自在という言葉がぴったりとはまる感じでW.D.O.バージョンに仕立て上げた。本当に良く鳴っているオーケストラ。W.D.O.はイージーリスニングのオーケストラではないから出来るだけ音量を上げてその魅力を堪能して欲しい。

10.映画『殺しのドレス』よりテーマ曲
ラルフ・ボードの官能的なカメラワークが光っていたブライアン・デ・パルマ監督の『殺しのドレス』は非常にファンの多いサスペンス映画の傑作だ。製作は1980年。デ・パルマとは何本か一緒に仕事をしているイタリア人作曲家、ピノ・ドナジオの書いた楽曲も素晴しく、それをさらに美しく昇華させたW.D.O.の魅力的な音の響きを味わうことが出来る。

11.シェルブールの雨傘
再びジャック・ドゥミとミシェル・ルグランが組んで作られたフランスの有名なミュージカル映画の主題曲が登場する。唸らされるのは前曲とのつなぎの絶妙さ。ストリングスの美しいゆれ方もW.D.O.ならではの魅力という感じで、7分近い音の芸術が楽しめる。

12.Mission Impossible
人気テレビ・シリーズをトム・クルーズが映画にして大ヒットさせた。一度聴いたら忘れられないリフが最高にキャッチーな楽曲を書いたのはラロ・シフリン。『スパイ大作戦』から『ミッション・インポッシブル』と変わっても、名曲だけはきちんと引きつがれたが、久石さんは「どのくらい緻密なアレンジが出来るかを考え」ストリングスの人たちに音楽的な冒険をさせた。それが成功していることは言うまでもない。

13.アヴェ・マリア
たくさんのバージョンが存在する「アヴェ・マリア」だが、W.D.O.は16世紀イタリアの作曲家ジュリオ・カッチーニの手によるものを2006年の8月にすみだトリフォニーホールで演奏した。美しいコーラスとストリングスの融け合い方は言葉にならないほど素晴しい。この「アヴェ・マリア」を聴きながら、久石さんはこのベスト・アルバムを作りたいために前3作を作ったのではないかと言ってしまいたくなるほどの出来映えであり、また曲順としてもぴったりとはまっている。

14.Waltz II  Suite for Jazz Orchestra No.2
ショスタコヴィチの作品で、スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ・ワイド・シャット』で使われて有名になったこの曲で、久石さんが「女の子が夜聴ける感じ・・・」とさらりと言ってのけた美しい世界は完結する。「W.D.O.でこのワルツを振ったので、ハウルのメインテーマにつながった」という言葉を聞くと、本当に音楽というのは不思議な魔力を持っているものだと思う。

2007年5月 立川直樹

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

「World Dreams」 (2004)、「パリのアメリカ人」 (2005)、 「真夏の夜の悪夢」 (2006)の3枚のアルバムから選曲した初のベストアルバム。未発表音源として 『Waltz II Suite For Jazz Orchestra No. 2』をボーナストラックとして収録。

久石譲は本作品ライナーノーツでも、こう語っている。

「僕は基本的にアレンジはやらない人間だ。作曲家だから興味がない。だが、自分がアレンジをすることによって、作品となり初めて発表できるものになる。ひとつの楽曲のメロディーやリズムのエッセンスを基に、僕のオリジナル部分を組み立てていく。僕にとってアレンジは翻訳みたいなものかもしれない。外国語の作品が日本語になる段階で翻訳家の個性が反映されるのと同じように、他の人の楽曲でも、こうしてひとつの組曲のようにすることで、そこに自分の作曲家としての意図が出てくる。世界中にはいい曲が山ほどあるので、それを僕のフィルターを通して、オーケストラ作品として完成させ、世に出していく。それがこのオーケストラの一番大きなテーマだ。」

また同ライナーノーツでは、未発表音源・ボーナストラックとして収録された(14) 『Waltz II Suite For Jazz Orchestra No. 2』の項にて、「W.D.O.でこのワルツを振ったので、ハウルのメインテーマにつながった」とも語っている。

ポップス・オーケストラとしての名演と、それを可能にした選曲とアレンジという、まさにすべてが一体となってその新しい輝きを解き放ったプロジェクトである。

 

 

久石譲 WDO 『BEST』

1. World Dreams
2. パリのアメリカ人
3. 男と女
4. 白い恋人たち
5. 風のささやき
6. ロシュフォールの恋人たち
7. The Pink Panther
8. China Town
9. Iron side
10. 映画『殺しのドレス』より テーマ曲
11. シェルブールの雨傘
12. Mission Impossible
13. アヴェ・マリア
14. Waltz II Suite For Jazz Orchestra No. 2 *未発表音源

【初回限定盤DVD収録内容】
001. 天空の城ラピュタ
002. Raging Men
003. HANA-BI
004. ロミオとジュリエット

except
Arranged by Kousuke Yamashita 6. 9. 13.
Arranged by Chieko Matsunami 10.

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『W.D.O.』

久石譲 『W.D.O.』 DVD

2006年12月20日 DVD発売

久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ、ついに初映像作品発売!

2004年にリリースした1枚目のアルバム「ワールド・ドリームス」を受けて行われた”ハードボイルド”をコンセプトにした全国ツアー、2005年12月にリリースした2枚目のアルバム「パリのアメリカ人」を受けて30名の女性コーラス「リトルキャロル」を従えたツアー「12月の恋人たち」、そして今夏「真夏の夜の悪夢」と題して100人を超える合唱団を迎えて一夜限り行われた”背筋が凍るような熱い特別な夜”の3つの異なるコンサートを収録。珠玉の名演が1枚のDVDにコンパイルされた、これ以上ないほどの大満足の内容!

 

 

World Dreams
これは、ワールド・ドリーム・オーケストラのテーマ曲。このオーケストラのアイデンティティを象徴する曲といってもいい。もともと祝典序曲のような曲を創ろうと思っていた。シンプルで朗々と唄う、メロディを主体とした曲。メジャーで、ある種、国歌のような拡張あるメロディで、あまり感情に訴えるものではないもの。ストーンと潔い曲を書きたかった。

以前、『Asian Dream Song』という曲を書いた。今回は『World Dreams』だ。じゃあ、アジアの夢が世界の夢になったのかというと、そんなことはない。情報技術の飛躍的な進歩によって、世界はどんどん小さくなって、地域になってきている。同時に世界全体のシステムというものが壊れ始めている。しかし、これが世界の夢だったのか? 世界中の人々の夢は何だったのか? こんな世界を人々は望んではいなかったはずだ。音楽家としてできることは何なのか。僕は憑かれたように作曲した。

この曲が、聴く人のささくれ立った感情を少しでも和らげ、そして「まあ、いいか、明日もまた頑張ろう」と思ってくれたら・・・。そんな気持ちを代表しているようなのがこの曲だ。

曲ができて、3管編成のフルオーケストラのスコアにまとめるまで1週間ほど。それはちょっと「自分は何かに書かされているんじゃないか」と思うくらいの速さだった。

 

天空の城ラピュタ
これは、ティム・モリソンさんが吹くことを想定して、彼のためにアレンジした。これまで何度もやってきた曲だけれども、ティムさんという演奏家を得て、新日本フィルと共に演奏するというところで、改めてアレンジした。今までの印象とは違う曲になっている。ティムさんは本当に音楽性豊かな演奏家。大いに期待してほしい。

 

Iron Side
テレビで部分的に使われることが多くて、そういうイメージが強いが、とてもいい曲だ。「鬼警部アイアンサイド」のテーマで、創ったのはクインシー・ジョーンズ。僕はクインシー・ジョーンズが好きでよく聴いてるけど、いつも羨ましいと思うのは、彼がソウル・ミュージックやブルースといったブラック・コンテンポラリーの原点をちゃんと持っていて、いつでもそこに帰ることができるということ。そんな彼の曲の中でも、これはとても洗練された楽曲。いろんなものが凝縮している曲だ。

 

風のささやき
映画「華麗なる賭け」のテーマ。これを選んだのは、映画よりもミシェル・ルグランの作品だから。彼にはクラシックの要素があり、ジャズにも精通していて、楽曲がとても機能的にできている。それでいて、変に情緒に流れない。有名な2小節のフレーズがほとんど変わらずにずっと続くこの曲は、フランス人である彼のハリウッド・デビューの曲だ。全世界を相手にしようって時に、彼は敢えて、このような機能的で情緒に流れない曲を持ってきた。これは大チャレンジだと思う。しかも、「このコード進行しかありえない」って時に、メロディは違うところにいって、不協和音になってしまう。この曲については、アレンジは10通りくらい書いたと思う。一番苦労した曲だ。木管と弦だけという非常にシンプルな形態をとったが、決して楽ではないこの曲で、CDでもオーケストラが素晴らしい演奏をしている。

 

Raging Men
HANA-BI
北野武監督の映画「BROTHER」の中で使った曲。エネルギーの塊みたいな曲なので、オーケストラのパーカッションとブラスの激しさを聴いてもらいたい。『HANA-BI』は、マイ・フェイバリット・ソングのひとつ。今回はヴァイオリンをフィーチャーしている。これまでとは違った魅力を感じてほしい。

 

ロミオとジュリエット (プロコフィエフ)
この曲は、ひとつひとつ挙げられないほど、多くの映画に使われている。複雑なテクスチュアというよりも、素朴な、強いメロディの楽曲。

 

Blog. 「World Dream Orchestra 2004」 コンサート・パンフレットより

 

 

本作品には、久石譲インタビューもおりこまれている。インタビュー内容は各公演コンサート・プログラムや雑誌インタビューなどで活字化されているものとほぼ同内容である。

 

 

久石譲 『W.D.O.』 DVD

2004 | World Dreams ~ハード・ボイルド・オーケストラ
1.World Dreams 2004 / 久石譲
2.風の谷のナウシカ (風の伝説) / 久石譲
3.天空の城ラピュタ / 久石譲
4.アイアンサイド TVシリーズ『鬼警部アイアンサイド』より / クインシー・ジョーンズ
5.Raging Men 映画『BROTHER』より / 久石譲
6.HANA-BI 映画『HANA-BI』より / 久石譲
7.風のささやき 映画『華麗なる賭け』より / アラン・バーグマン, マリリン・バーグマン & ミシェル・ルグラン
8.ロミオとジュリエット / セルゲイ・セルギーヴィッチ・プロコフィエフ

2005 | 12月の恋人たち
9.男と女 / ピエール・バロウ & フランシス・レイ
10.白い恋人たち / ピエール・バロウ & フランシス・レイ
11.キャロル・オブ・ザ・ベルズ / ミクロ・レオントヴィッチ
12.ロシュフォールの恋人たち / ミシェル・ルグラン, ジャック・デミ & レイモンド・ルイス
13.ボレロ / M.ラヴェル

2006 | 真夏の夜の悪夢
14.カルミナ・ブラーナ「おお、運命の女神よ」 / カール・オルフ
15.ジ・オーケストラ・チューブラー・ベルズ パート1 映画『エクソシスト』より / マイク・オールドフィールド
16.映画『殺しのドレス』より テーマ曲 / ピノ・ドナジオ
17.レクイエム「怒りの日」 / ジュゼッペ・ヴェルディ
18.「もののけ姫」組曲 / 久石譲
19.カルミナ・ブラーナ「アヴェ、この上なく姿美しい女」〜カルミナ・ブラーナ「おお、運命の女神よ」 / カール・オルフ
20.World Dreams 2006 / 久石譲

All Produced & Conducted by JOE HISAISHI

Orchestra:JOE HISAISHI & NEW JAPAN PHILHARMONIC WORLD DREAM ORCHESTRA

2004 World Dreams ~ハード・ボイルド・オーケストラ 〈2004.7.27 Sumida Triphony Hall〉
2005 12月の恋人たち 〈2005.12.5 Yokohama Minato Mirai Hall〉
2006 真夏の夜の悪夢 ~Psycho Horror Night 〈2006.8.13 Sumida Triphony Hall〉

Iron Side:Arranged by Kosuke Yamashita
The Windmills of Your Mind:Arranged by Joe Hisaishi
Un Homme et Une Femme:Arranged by Joe Hisaishi
Treize Jours En France:Arranged by Joe Hisaishi
Carol of The Bells:Arranged by Yasuo Minami
Les Demoiselles De Rochefort:Arranged by Kosuke Yamashita
The Orchestra Tubular Bells Part 1 “The Exorcist”:Arranged by Kosuke Yamashita
“Dressed to Kill” Main Theme:Arranged by Chieko Matsunami
“PRINCESS MONONOKE” Suite:Scoring by Kenji Ashimoto

 

Disc. 久石譲 『THE BEST COLLECTION presented by Wonderland Records』

久石譲 『THE BEST COLLECTION』

2006年6月7日 CD発売

久石譲が主宰するレーベル ワンダーランドレコードからのベスト・セレクション。レーベル・テーマ「EVERGREEN」を象徴した、本人自らの選曲、リマスタリング音源で構成されたセレクト・アルバム。

 

 

音楽の”WONDERLAND”の素晴しき城主、久石譲

日本を代表する、というより今や世界的にその名を知られている作曲家であり、ピアニストである久石譲は、その知名度と、多くの人に作品が愛されているのと対照的に意外なほど、その実像と本質が一般的には伝わっていないアーティストではないだろうか。

僕は久石譲がプロデュースするレーベル”Wonderland Records”からリリースされたアルバムのベスト盤『THE BEST COLLECTION』を聴いて、改めてそのことを思った。初のピアノ・ソロ・アルバムとして1988年にリリースされた『Piano Stories』でもオープニングを飾っていた「A Summer’s Day」からNHKドラマ「風の盆から」のテーマ曲「風の盆」までの見事なまでの音の連なり。”いい音楽”が時代や流行を超えて人々に愛され、存在していることは周知の事実だが、”EVERGREEN”をテーマに、久石譲の音楽観を投影させたレーベルとして、2000年に設立され、その年の12月6日に『Piano Stories』を第1弾としてリリースした”Wonderland Records”からリリースされた8枚のアルバムからの選曲に、今年リリースされる新曲3曲を加えて作られた『THE BEST COLLECTION』は単なるベスト盤というより、久石譲という稀有な才能と音楽的魅力を兼ね備えたアーティストの音楽の旅のドキュメントなのである。

それはジョエル・マイヤーウィッツという知る人ぞ知る写真家の美しい写真をカバーにした『Piano Stories』からの2曲に、久石譲の映画音楽家としての評価を決定的なものにした「あの夏、いちばん静かな海」のメインテーマ曲が続いていくあたりで明らかになる。4歳の頃からヴァイオリンを学び、国立音楽大学作曲科に入学した久石譲が最初に感化されたのが”ミニマル・ミュージック”で、出発点が現代音楽の作曲家だったということは久石譲というアーティストの本質を理解する上では非常に重要なポイントであり、「僕の作曲家としての原点はミニマルであり、一方で僕を有名にしてくれた映画音楽では叙情的なメロディー作家であることを基本にした。ただそのいずれも決して新しい方法論ではない。全く別物の両者を融合することで、本当の意味での久石独自の音楽を確立できると思う。ミニマル的なわずか数小節の短いフレーズの中で、人の心を捕らえる旋律を表現できないか…」という言葉を聞くと、「風の谷のナウシカ」から始まった宮崎アニメの一般的なファンが例外なく口にする”美しく優しいメロディー”の深みが理解できるだろうし、久石譲が作曲家としてだけでなく、アレンジャー、プロデューサーとしての才能も傑出していることがよくわかる。映像と音楽のコラボレーションの素晴しさが公開当時、評判をとった北野武監督の映画「あの夏、いちばん静かな海」から、久石譲とは何作もタッグを組んでいる大林宣彦監督の映画「ふたり」からの曲への切り返しの見事さはもはや魔術的領域にすら達している。

そう、本当にいろいろなところに連れていかれてしまうのだ。1984年の「風の谷のナウシカ」を始まりに、20年と少しの間に何と43本もの映画音楽を手がけてきた久石譲は「僕にとって、音楽は生きている上で一番好きなことで、映画は2番目に好き。その両方をいっぺんにできるのが映画音楽。映画音楽を作る場合、映像と音楽は必ず対等であるように心がけている。映画には大もとには脚本があって、そこからイマジネーションを膨らませて、片方は映像に、もう片方は音楽になる。勿論、音楽は映像に関連しているわけだけど、たいがいの場合、追随し過ぎてしまう。泣くシーンでは悲しいメロディーとかね。逆に映画のコンセプトから考えたら、音楽はそうする必要がなかったりもする。映像と音楽をもっと戦わせてもいいのではないかと…」と語っているが、その音楽のイマジネイティブな広がりとスケールの大きさは、間違いなくこのクリエイティブな視点と姿勢が反映されたものといえるのではないだろうか。

そして、Wonderland Recordsからリリースされている大林宣彦監督の映画「はるか、ノスタルジィ」のサントラ盤に添付されたブックレットに久石譲が書いた文章の一節が、映像と音楽の世界を、また音楽の多くのジャンルの世界を、自由奔放に往き来している久石譲というアーティストの思考回路の深さを僕に教えてくれた。

「この映画に音楽を付けるに当たって色々と悩み、最初はロマンティックな曲を色々考えたりしましたが、結果的にテーマ的には”過去に対面して行くサスペンス”という括りでの音楽にしようと考えました。これはある時ヒッチコックの「めまい」(1958年)をレンタルビデオでたまたま見た時に、出だしがサスペンス調に作られているという事に気がつき、「はるか、ノスタルジィ」も自分の過去に対面するサスペンスなのだという共通項の発見から考えついた事です。このようにすることで最終的に出会った所に本当のロマンがあるというような作りにすればこの映画は行けると考え、大林監督にこの話をし”それは最高にいい”という事になり、テーマのメロディーをロマンにもサスペンスにも取れるような複雑なものにして、短いモチーフ風な扱いをすると完全にサスペンス音楽になってしまうようなものに仕上げました。その後この「追憶のX.T.C.」というテーマ曲は「MY LOST CITY」の「Tango X.T.C.」という曲に発展していくことになりました」

やや長い引用になったが、久石譲の物作りに対する考え方やアプローチを知るには非常に興味深い文章であり、このアルバムの中盤からエンディングに至るまでの流れとどこかで通底しているようにも僕には思える。日本映画界に大きく貢献してきた今までの実績とその功績が評価され、久石譲は2002年淀川長治賞を受賞しているが、先にも書いたように多くの人の記憶に残っている美しいメロディーと壮麗なサウンドは驚くべき計算と準備とテクニックがあって初めて成立しているのである。

だが、それにしても、1989年に6枚目のソロ・アルバムとしてリリースされた『PRETENDER』の中から選び出された「VIEW OF SILENCE」のアレンジの見事さはどんな言葉を使って形容すればいいのだろうか。どの曲を聴いても、久石譲の楽器の鳴らし方のうまさには改めて唸らされ、今回のアルバムでいくつもの新しい発見をしたのはうれしい驚きだったが、ふるえるようなストリングスがピアノと絡み合い、ひとつずつの楽器が知的な会話をして、全体としては官能的に匂いが漂う「VIEW OF SILENCE」はアレンジャーとしてもその時代に既に久石譲が世界的レベルに達していたことの証であり、続く『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』から選ばれた「千と千尋の神隠し」組曲の2曲も、自身の作品をオーケストラ用にアレンジしてここまで昇華できるということに素直に脱帽させられてしまう。久石譲が、”戦友”と呼び、”Wonderland Records”に初のオリジナル・アルバム・アーティストとして迎え入れたチェリスト、近藤浩志のソロ・アルバム『Arcant』から選び出された「風の谷のナウシカ」組曲(改訂版)「風の伝説」の素晴しさも特筆すべきものがあるし、続く2曲と合わせて絶妙なレーベルのプロモーションになっている。

あとは全16曲の収録曲のうち、唯一のヴォーカル・ナンバーである「さくらが咲いたよ」と、久石譲を”楽界の魔王”と形容して讃えている脚本家、市川森一の依頼による仕事となったNHKドラマ「風の盆から」のサントラ盤から選び出された2曲について書いておけばいい。

久石譲が坂口安吾の名作「桜の森の満開の下」にインスピレーションを受けて書き下ろし、1994年のソロ・アルバム『地上の楽園』に収録した曲を、久石譲の愛娘、麻衣が全く新しい楽曲としてリメイクした「さくらが咲いたよ」は、ただ桜の表面的な美しさだけではなく、桜が持つ妖しさや狂おしさ、儚さが見事なまでに表現されているところが実に久石譲らしいし、続く「彷徨」は本人がニヤリと笑いながら原点回帰をしているようなところにある種の凄みすら感じられる。

でも、それが久石譲というアーティストの唯一無二なところだろう。例えば「ポップスの分野に入ったけれど、音楽の可能性を追求する精神は前衛音楽と同じ。常に新たな音楽につながるものをと考えながら作曲している」という言葉ひとつとっても、久石譲がかつて”ニューエイジ・ミュージック”という言葉つきで紹介され、ちょっと耳ざわりのいい音楽を聴かせたものの気がついたら姿を消してしまったような人たちとは全く違うレベルのところに存在していることがわかるだろうし、しばらく前に久々に久石譲本人と会話を交わした時に、僕は彼がアメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマンときて、日本の久石譲というような関係性をみてとったのである。

そして、この『THE BEST COLLECTION』を聴いて、それを確信した。また、こうして自分自身の音楽作品をきちんと整理し、世に送り出していこうという姿勢に心からの拍手を贈りたい。映画音楽から自身のソロ・アルバム、さまざまなアプローチによるコンサート活動、はたまたイベント・プロデュースに至るまで、久石譲の旺盛なまでの創作意欲は全くとどまるところを知らないが、「ピアノは、僕にとってはとても大事な楽器。以前は作曲の道具でしたが、コンサートを行うようになって、表現の道具にもなりました。ピアノとの対話が、自分の別の可能性を引き出してくれる。作曲においては極めて理性的である自分がピアノを通してメンタルな面で人に訴えかけることができる」と語る純粋さが僕はまた好きだ。

立川直樹

(CDライナーノーツより)

 

 

誰もが耳にしたことのある、久石譲の旋律が集約されてはいるが、同レーベルから発表された8枚のアルバムの中からセレクトという趣向のため、オールタイムベストではない。

1980年代後半~1990年代前半の廃盤作品を自身レーベルより再発売した作品から、そして2000年以降の作品からという構成になっている。そういった意味では時代や流行を超えた色褪せることのない、音楽の旅。

それでも、(2)はアニメ「アリオン」からの美しい叙情的なピアノ曲だし、(3)~(7)は北野武監督作品や大林宣彦監督作品から、(9)~(10)は宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」より、コンサートライブ音源から、(14)は1994年CD作品「地上の楽園」に収録されていた同曲を、麻衣のヴォーカルによって新しくリメイク、本作だけに収録された楽曲となっている。

以下のオリジナル収録作品のリストもご参考。

「Piano Stories」(1988年) ・・ (1) (2)
「あの夏、いちばん静かな海」(1991年) ・・ (3) (4)
「ふたり」(1991年) ・・ (5) (6)
「はるか、ノスタルジィ」(1993年) ・・ (7)
「PRETENDER」(1989年) ・・ (8)
「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」(2002年) ・・ (9) (10)
「Arcant / 近藤浩志」(2003年) ・・ (11)
「Winter Garden / 鈴木理恵子」(2006年) ・・ (12)
「FREEDOM PIANO STORIES 4」(2005年) ・・ (13)
※本作品初収録 ・・ (14)
「風の盆」(2002年) ・・ (15) (16)

 

 

久石譲 『THE BEST COLLECTION』

1.A Summer’s Day
2.Resphoina
3.Silent Love
4.Clifside Waltz
5.風の時間
6.少女のままで
7.出会い ~追憶のX.T.C.~
8.VIEW OF SILENCE
9.あの夏へ
10.6番目の駅
11.風の伝説 「風の谷のナウシカ」組曲 (改訂版)から
12.For You
13.Fragile Dream
14.さくらが咲いたよ Vocal:麻衣
15.彷徨
16.風の盆

 

Disc. オムニバス 『チェコ・フィルプレイズ スタジオジブリ交響曲集』

久石譲 『スタジオジブリ交響曲集』

2005年11月16日 CD発売

スタジオジブリ作品のチェコフィル名演奏を集めたベスト盤
SACD ハイブリッドディスク

「チェコ・フィルプレイズ スタジオジブリ交響曲集」
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
チェコ・フィルハーモニー室内管弦楽団

録音:ドヴォルザーク・ホール/プラハ

1998年「交響組曲もののけ姫」以来、プラハ(ドヴォルザークホール)にてチェコ・フィルとのセッションの数々の中からバランスエンジニアとして参加した江崎友淑がセレクト&リマスタリング。スタジオジブリレコーズ初のSACD(ハイブリッド)。

チェコ・フィルとは数々セッションを重ねてきた江崎氏によるライナーノーツ解説掲載。

 

 

プロデューサーノート

ここに集められた作品群は、スタジオジブリが制作した一連のサウンド・トラックからの抜粋である。日本の映画や映像を取り巻く環境、こと音楽に関しては決して明るいものとはいえない。というのも、本編と同等とも言えるほど大事な音楽に関して、かけられる予算がどんどん下降の傾向にあるということだ。そんな日本のサウンド・トラックの中にあって、ことスタジオジブリの制作するものは、一流の作曲家、そして世界的なオーケストラの起用といった豪華な内容になっていることは非常にユニークなことだ。ぼくも、そのいくつかの仕事を一緒に出来たことは、自分の録音生活の中でもとても有意義であったといえる。

僕たちが普段行っている録音活動は、あくまでクラシックの再生芸術の分野において、先の巨匠たちが残したが曲を演奏者と我々録音側でその時々の正誤を探って仕上げてゆく。しかも、そのほとんどは欧州においてで、欧州の演奏家達と欧州の作曲家の作品の携わることがその大部分である。すなわち、我々日本人がそこで現場をリードする事は容易なことではないのである。

ジブリ作品の録音を通じては、いつもの逆で日本人の作曲家のものを、作った本人とともに音楽制作していくというのは非常な醍醐味である。欧州においては日本人の感性は非常に高く評価されているのも面白い。

今回はSACDでこれまでのいくつかの作品をバージョン・アップしてリリースできることも非常に嬉しい限りだ。SACDは、これまでとは全く違った音声信号によって、CDでは再生できなかった20kHz以上の音、すなわち人間の耳には聞こえていない気配感などの超広帯域の音が収録されている。それによる音楽表現の幅が更に広がっているということだ。

これはマニアが揃える大型のオーディオでなくても、充分にミニ・コンポでもその違いは歴然とわかる。我々制作側にいると、マスターのクオリティーをどうやってリスナーの皆々により高い次元のサウンドを届けられるか、それがいつも大きな難問であるが、これらの次世代メディアの登場で、一つ大きくマスターに近いサウンドを届けられるようになったのは喜ばしい限りだ。

今回リリースされるこの作品群は、それぞれの作曲家が、特に日本で人気の名門オーケストラ、チェコ・フィルの名手たちとともに作り上げた珠玉のオムニバス盤で、これはサウンド・トラックとして、また独立した音楽作品として是非末永く聴き続けられるアルバムとなることを望むばかりである。

江崎友淑

(CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 『スタジオジブリ交響曲集』

「交響組曲 もののけ姫」より
作曲:久石譲 演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 ピアノ:久石譲
1.第一章 アシタカせっ記
2.第四章 もののけ姫
3.第八章 アシタカとサン
「となりの山田くん クラシックアルバム」より
作曲:矢野顕子 演奏:チェコ・フィルハーモニー室内管弦楽団
4. となりの山田くんのテーマ~オーケストラバージョン~
5.たかしとまつ子のタンゴ・シンフォニコ
「猫の恩返し サウンドトラック」より
作曲:野見祐二 演奏:チェコ・フィルハーモニー室内管弦楽団
6.バロン
7.パストラーレ(牧歌)
8.ハルのおもいで
「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」より
作曲:久石譲 演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
9.ミステリアス・ワールド
10.動く城
11.ウォー・ウォー・ウォー(War War War)
12.ケイヴ・オブ・マインド
ボーナストラック〈初収録〉
作曲:木村弓 演奏:チェコ・フィルハーモニー室内管弦楽団
13.いつも何度でも~オーケストラバージョン~

録音:
1998/6/6~8 「交響組曲もののけ姫」
1999/2/27~28 「となりの山田くんクラシックアルバム」
2001/12/11~12 「猫の恩返しサウンドトラック」
2003/10/18~20 「イメージ交響組曲ハウルの動く城」
2001/12/11~12 ボーナス・トラック「いつも何度でも」

指揮:マリオ・クレメンス
録音ホール:芸術家の家(ドヴォルザーク・ホール/プラハ)

 

Disc. 久石譲 『PRIVATE プライベート』

久石譲 『PRIVATE プライベート』

2004年1月21日 CD発売

久石譲はボーカリストだった!~本人セレクトによる初のボーカルベスト~

 

 

寄稿

映画を見ていると、ひとつやふたつ必ずや印象的なシーンがあります。特に一流の映画ともなれば、人間の視覚だけではなく、聴覚をも刺激して、音楽や効果音を含めた、ひとつのシーンを鮮明に心に刻み込むものです。また、逆に映像と音楽がミックスされることで、より印象に残るシーンが生まれます。たとえばホラー映画の代表作『エクソシスト』は、あの名曲「チューブラー・ベルズ」がなければ、怖さも半減してしまうでしょう。

日本映画を見ていて、あの名曲と言えば必ず”久石譲”という名前が浮かぶようになったのは、いつ頃からでしょうか?彼は誰もが知っている『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』などの宮崎駿作品、『ソナチネ』『菊次郎の夏』『BROTHER』などの北野武作品、『ふたり』『はるか、ノスタルジィ』などの大林宣彦作品の音楽を担当し、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を5回も受賞している、日本映画音楽の”ヒットメーカー”です。久石譲作品はなぜたくさんの人たちのハートを捕らえて離さないんでしょうか?それは彼の作るメロディーが聴き手の心のひだにまで染み込んできて”心の琴線”を震わせる力があるからだ、と思います。

地震のエネルギーの大きさは”マグニチュード”で表します。だとしたら、名曲のエネルギーの大きさは”曲力”で表せるのではないでしょうか?すなわち、この曲は”曲力10”のすごい名曲である、云々。おそらく久石譲の作る曲は全て”曲力10以上”のすごい”名曲”に違いありません。だからこそ、たくさんの人たちのハートを侵食して、気づかないうちに心を奪ってしまっているのです。

ニューアルバム「プライベート」は、1987年『となりのトトロ・イメージソング集』から1993年のNHKスペシャル『人体II・脳と心』までのカタログから選りすぐられた久石譲本人によるボーカル曲のみで構成されています。今となってはピアニストのイメージが強い彼の作品の中でも、貴重な一枚になる事は間違いないでしょう。

このアルバムを聴いていると、自分の”脳裏のスクリーン”に自然と映像が浮かんできます。そして、いつしか心のひだから素直な感情が溶け出して、心が癒やされます。久石譲の作る曲はまさに”名曲”という”良薬”なのです。

宮澤一誠

(寄稿 ~CDライナーノーツより)

 

 

This album made by selection od following albums
M-3:NHKスペシャル 驚異の小宇宙「人体II 脳と心」サウンドトラック Vol.1 (1993)
M-12:「となりのトトロ」イメージソング集 (1987)
M-11:「ふたり」オリジナルサウンドトラック (1990)
M-4,5,6,9,10:illusion (1988)
M-2,7,8:PRETENDER (1989)

 

 

久石譲 『PRIVATE プライベート』

1.Nightmoves
2.MEET ME TONIGHT
3.Brain & Mind
4.風のHighway
5.Night City
6.冬の旅人
7.MARIA
8.WONDER CITY
9.ブレードランナーの彷徨
10. 少年の日の夕暮れ
11.草の想い
12.小さな写真

All Composed, Arranged, Produced and SUng by Joe Hisaishi

Original Tracks Recorded at Roppongi, Kannonzaki, New York and London

 

1.Nightmoves
Lyric:Michael Franks
Composition:Michael Lewis Small
Arrangement:久石譲
Volcal:久石譲

2.MEET ME TONIGHT
Lyric:宇多田照實
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

3.Brain & Mind
Lyric:久石譲
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲・Jackie Sheridan

4.風のHighway
Lyric:松本一起
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

5.Night City
Lyric:三浦徳子
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

6.冬の旅人
Lyric:松本一起
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

7.MARIA
Lyric:BANDIT・KYSIA BOSTICK
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

8.WONDER CITY
Lyric:宇多田照實
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

9.ブレードランナーの彷徨
Lyric:松本一起
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

10.少年の日の夕暮れ
Lyric:松本一起
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲・藤澤麻衣

11.草の想い
Lyric:大林宣彦
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:大林宣彦・久石譲

12.小さな写真
Lyric:宮崎駿
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

 

Disc. 久石譲 『空想美術館 ~2003 LIVE BEST~』

久石譲 『空想美術館』 2003 LIVE BEST

2003年10月22日 CD発売

2003年春のチェリストとのツアーと、同年夏の新日本フィルとのツアー、この2つのツアーからベスト・テイクを選りすぐったライヴ・ベスト盤。ピアノ・ソロアルバム『ETUDE』の名曲たちをシンフォニック・アレンジで聴くことができる。

 

 

~空想美術館紀行~

久石譲さんの演奏には必ず光景が伴う。オーケストラや観客、或いは久石さん本人の向う側に、かつて旅で出会った人々やその時々の風のようなものが立ち上がるのだ。たとえ有名な映画曲であろうと、目をつぶれば私には独自のシーンが浮かんでくる。見事、としか言い様がない魔法である。

 

Musée imaginaire (Orchestra Ver.)
エクアドルの首都キトからバスでアンデス山脈を越えた時、高度四千メートルで突然もやが晴れ、笑顔で手を振るインディオの子供たちが現れた。この曲をあの峠でもう一度聴いてみたい。

Summer
米国オレゴン州のキャノンビーチには日本の風鈴八百個と暮らす老人がいた。彼は東京を空襲したパイロットで、海風に鳴りやまぬ風鈴を聴きながら静かに枯れ枝と化していくのだった。風鈴はまだ揺れているだろうか。

MIBU
展開とともにまったく新しいイメージが湧きあがるこの曲は、アンコールワットの日の出を思い出させた。たとえ大地が戦乱の荒廃にあったとしても、日輪は何万もの色彩をもって新たな一日を祝福しようとしたのだ。

Silence
トルコのエフェス遺跡のイメージ。エーゲ文明の遥か昔に愛しあった男女の吐息が、今もなお朽ちた柱に絡み付いているようだった。風は時の向う側から情念と音楽を運んでくるらしい。

月に憑かれた男
三年間暮らしたニューヨークで、やるせない気持ちになる度にブルックリン橋を歩き、そこから見える窓灯りを数えていた。どの窓にも命があり、苦悩があり、歓喜がある。その痛いような感覚を思い出させる曲。

夢の星空
ベトナムの漁村を夜明けに訪れたら、歩き始めたばかりの漁民の子が丸太の上に乗って用を足し始めた。あっけらかんとした笑い声、世界で一番幸せそうだったあの子の笑顔に、いつまでも美しい星空とこの曲を捧げたい。

Bolero
チェコの田舎街道はひまわり畑に埋もれているため、夏になると地平線までの黄色で覆われる。しかしその横を走る線路はかつてアウシュビッツまで続いていたのだ。無数の魂が風にそよいでいたようなあの夏空。黄色。

a Wish to the Moon
沖縄から台湾までは貨物船の旅がお薦め。島をひとつ経る度に珊瑚礁の色は濃くなり、五線譜から飛び出す音符のようにイルカたちがジャンプを繰り返していた。

KIKI
洞窟ホタルを見るためにオーストラリアのアウトバックを踏破した夜。気がつけば横をカンガルーの群れが並走していた。この曲のように心が舞い続けた夜。

谷への道
ヨルダン砂漠のロレンス砦に行った時、どこまでも続く赤い砂漠の果てに、三千年前の落書きがあることを知った。どうしてこの曲はあの時のジープの荷台を思い出させるのだろう。歴史なんて一瞬で、それよりも大切なのは今生きているこの鼓動なのだと曲が伝えているようである。

Musée imaginaire (9 Cellos Ver.)
バージョンが変われば曲がイメージさせる疾走感も異なる。世界で一番好きな列車、ハンブルグ発ブダペスト行のハムレット号だ。エルベ川沿いの小鹿飛び出す列車の旅を、この曲を聴いたすべての人に体験してもらえたらと思う。

TETSUYA (ex. ドリアン助川)

(空想美術館紀行 ~CDライナーノートより)

 

 

2018年4月25日 LP発売 UMJK-9073/4
完全生産限定盤/重量盤レコード/初LP化

 

 

久石譲 『空想美術館』 2003 LIVE BEST

1.Musée imaginaire (Orchestra Ver.) (NHK「世界美術館紀行」より)
2.Summer (映画「菊次郎の夏」/トヨタ カローラ CM より)
3.MIBU (映画「壬生義士伝」より)
4.Moonlight Serenade
5.Silence (ダンロップ VEURO CMより)
6.月に憑かれた男
7.夢の星空
8.Bolero
9.a Wish to the Moon (キリン一番搾り生ビール CMより)
10.KIKI (映画「魔女の宅急便」より)
11.谷への道 (映画「風の谷のナウシカ」より)
12.Musée imaginaire (9 Cellos Ver.) (NHK「世界美術館紀行」より)

Recorded at Tokyo Metropolitan Art Space , Tokyo Opera City Concert Hall , Niigata-City Performing Arts Center

Conducted by Kim Hongje (except M10-12) , Joe Hisaishi (M10-12)

Orchestra:New Japan Philharmonic

 

Disc. 久石譲 『a Wish to the Moon -Joe Hisaishi & 9 cellos 2003 ETUDE & ENCORE TOUR-』

久石譲 『a Wish to the Moon -Joe Hisaishi & 9 cellos  2003 ETUDE&ENCORE TOUR-』

2003年6月25日 DVD発売

2003年3月から行われた久石譲のコンサート・ツアーの中から4月16日に東京オペラシティーにて行われたコンサートの模様を収録。オリジナルアルバム「ENCORE」「ETUDE~a Wish to the Moon」からの曲を中心に披露したベストライブ。

長い音楽活動とコンサート活動のなかで、意外にもコンサートDVDとしては初作品化である。

公演プログラムの曲間に、リハーサル風景やピアノ練習風景などが、ドキュメンタリータッチで記録されている。

 

 

a Wish to the Moon -Joe Hisaishi & 9 cellos  2003 ETUDE&ENCORE TOUR

– Encore & Others –
KIKI
谷への道
View of Silence
風のとおり道
Asian Dream Song
Friends
Summer
One Summer’s Day
HANA-BI

– Etude –
Moonlight Serenade 〜 Silence
月に憑かれた男
impossible Dream
夢の星空
Bolero
a Wish to the Moon

Musée Imaginaire
la pioggia
Tango X.T.C.

ToToRo
Madness
君だけを見ていた

本編111分

Recorded at Tokyo Opera City Concert Hall on April 16,2003

Composed (except “Moonlight Serenade”),
Arranged and Produced,
Conducted and Piano
by
Joe Hisaishi

Violoncello
1st
Hiroshi Kondo ~Concert Master,Solist
Takashi Kondo
Susumu Miyake
2nd
Makoto Osawa
Haruki Matsuba
3rd
Yoshihiko Maeda
Masanori Taniguchi
4th
Hiromi Uekusa
Seiko Ishida

 

Disc. 久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

2002年7月26日 CD発売

2001年12月7日東京芸術劇場で行われた公演のCD化
指揮:金洪才 演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団

アカデミー賞受賞作品「千と千尋の神隠し」組曲
北野武監督映画「Kids Return」、久石譲監督映画「Quartet」他収録

 

 

解説

本作は2001年10月30日から始まったツアー「久石譲・SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」の最終日、2001年12月7日の東京芸術劇場におけるコンサートのCD化である。

収録された楽曲は全曲が初演であり、久石自身がコンサートの数ヶ月前から少しずつアイデアを固め、全ての関連スコアをチェックした後、オーケストラ演奏用にリ・アレンジし、演目の最終決定というプロセスをたどっている。これは映画音楽が映像とのマッチングを前提として作曲されているため、コンサートの演目として演奏するためには全く異なるアレンジアプローチが必要となったからである。どの作品にも意欲的に思い切ったアレンジを施しているが、特に「BROTHER」は1度作ったアレンジから徹底して離れて新しく作り直しており、非常に聴き応えのある作品に仕上がっている。また「千と千尋の神隠し」は、映画の中の印象深い楽曲をセレクトして組曲形式で構成し、独立した完成度の高い作品となった。

演奏は「千と千尋の神隠し」「BROTHER」「Quartet」のサウンドトラックのレコーディングを行った新日本フィルハーモニー交響楽団で、レコーディング時のオリジナルに近いメンバーによるコンサート音源であることも興味深い。

録音は、クラシック・レコーディング界における日本屈指のエンジニア、江崎友淑氏による。演奏収録場所は東京芸術劇場。指揮は金洪才氏、ピアノ演奏は久石譲。また今回は1曲だけ「Student Quartet」を久石自身が指揮している。

(宮崎至朗)

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ほとばしる魂の音楽

わたしがアナウンサーを志したのは、NHKのある番組がきっかけだった。

それは大学の頃に偶然見た「胃の粘膜が…」とか、「人の遺伝子とは…」といった科学番組だった。優しく包み込むような音楽とナレーションが心に染み入り、気がつくとポロポロ涙がこぼれていた。衝撃だった。耳から受ける刺激は、これほどまでに人の心を揺さぶるものなのか、と。同時に何かを伝えたい、表現したい、いつかこんな仕事に関わりたい、そう強く望むようになった。これが久石譲さんの音楽との出会いだった。

昨年、雑誌の対談で初めてお目にかかる機会に恵まれた。黒のスーツをさり気なく身にまとい、颯爽と登場された久石さんは、わたしの想像とは全く違っていた。

正直、驚いた。失礼ながら『サンタクロースの様なおじいさん』を思い描いていたからだ。穏やかな語り口にかい間見える鋭さ。「学生時代は尖っていましたからね」と微笑まれたのが印象的だった。

当時、久石さんは前衛的な音楽に傾倒されていたと聞いた。だからこそ、創造力果てしなく、あまたの作品が生み出されてきたのだろうか。

”SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001”。今回もまた心が震え、喚起された。ほとばしる魂を感じさせる久石さんの音楽。これからもわたしたちを新たな世界へ導いて下さることだろう。

進藤晶子 (キャスター)

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

「千と千尋の神隠し」組曲
1.あの夏へ 2.竜の少年~底なし穴 3.6番目の駅 4.ふたたび
日本における映画記録をことごとく塗り替えた、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」。宮崎監督とのコンビも「風の谷のナウシカ」以来7作目となるこのファンタジー映画の中で、久石譲の音楽は観客の感情の振幅を見事に広げてみせた。今回、ステージで初めて演奏されたのは、スクリーンで耳に馴染んだ数々のメロディを、コンサートのために4曲からなる組曲として書き下ろしたものである。

「Quartet」より
5.Black Wall 6.Student Quartet 7.Quartet Main Theme
2001年秋、久石譲がはじめて監督・脚本・音楽を手掛けた作品「Quartet」が公開された。音楽学校を卒業した後、社会でそれぞれの挫折を味わった4人の仲間が出会い、再びカルテットを組んでコンテストに挑戦するという物語で、日本では珍しい本格的な音楽映画に仕上がっている。全ての音楽を、久石譲はこの映画のために新たに作曲した。CDではその中から3曲を選んでいるが、「Black Wall」は現代音楽風に、「Student Quartet」はモーツァルト風に、そして「Quartet Main Theme」はフランス印象派風にと、久石譲の音楽的センスの多彩さが溢れでている。

「BROTHER」より
8.Drifter…in LAX 9.Wipe Out 10.Raging Men 11.Ballade
久石譲は「BROTHER」の音楽を、自分自身、非常に気に入っているものの1つだと言う。それを今回、コンサートホールでの演奏用に書き換えた。リ・アレンジというより、ほとんど作り替えてしまったと言ってもいい。そのくらい迫力と存在感のある楽曲となった。哀しみを含んだメロディライン、対比する息も詰まるようなパーカッション・リズムの躍動感が聴く者の心を揺さぶり、否応なくハードボイルドともいえるその世界に引きずり込んでいく。

「Le Petit Poucet」より
12.Le petit Poucet Main Theme
久石譲が、監督オリビエ・ダアンの「プチ・プセ」(原作シャルル・ペロー、日本語原題「親指トム」)でフランス映画に進出した。映画は2001年10月17日に公開されたが、色彩の美しさを際立たせた映像美と緩急自在の語り口、そして特別出演のカトリーヌ・ドヌーブを初めとする豪華なキャスティングが話題となり、公開初日にはパリとその近郊だけで1万3千人を動員した。「久石節」とでもいうべき美しい旋律と和声は映像美と見事に絡み合い、本来「子供向け」にカテゴライズされるこの作品のクオリティを、1ランク引き上げることに成功している。日本での公開が待たれる作品である。

「Kids Return」より
13.Kids Return 2001
メインテーマとなったこの曲は、素晴らしい速力と緊張感をもっている。それは物理的な速力というに止まらず、人間の内面に鋭く切り込んでくるかのような疾走感である。聴くたびに新しい感動を呼ぶこの曲を、久石はフルオーケストラとピアノのためにリ・アレンジした。その驚くべき華やかさの裏に、ある秘めた切なさを感じさせるのは、さすがに久石譲である。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

「千と千尋の神隠し組」組曲
1. あの夏へ
2. 竜の少年〜底なし穴
3. 6番目の駅
4. ふたたび
「Quartet」より
5. Black Wall
6. Student Quartet
7. Quartet Main Theme
「Brother」より
8. Drifter… in LAX
9. Wipe Out
10. Raging Men
11. Ballade
「La Petit Poucet」より
12. La Petit Poucet Main Theme
「Kids Return」より
13. Kids Return 2001

All composed, arranged and Produced by Joe Hisaishi

ピアノ:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:金洪才

2001年12月7日 東京芸術劇場にて収録