Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ サウントドラック はるかな地へ…』

久石譲 『風の谷のナウシカ サウンドトラック』

1984年3月25日 LP発売 ANL-1020
1984年3月25日 CT発売 25AN-20
1984年6月25日 CD発売 35ATC-3
1993年7月21日 CD発売 TKCA-70133
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72717
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10009

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

久石譲による、宮崎駿監督作品最初のサウンドトラック盤。イメージアルバム「鳥の人…」、シンフォニー「風の伝説」を基に新たに録音された映画用BGMを収録。収録は1984年2月。「ナウシカ・レクイエム」のヴォーカルは当時4歳の麻衣が担当している。

このアルバムも、CDについてはしばらく経ってから新ジャケットで発売された。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

美しい自然とナウシカ

美しい自然がまだ残っているから「自然を大切にしよう!」「自然破壊を食いとめよう!」と人々は声を大にして叫んでいる。美しい自然が完全に破壊されてしまったとき、人々は何と叫ぶのか?

映画「風の谷のナウシカ」で宮崎駿が設定した未来の地球の自然-腐海は美しさのかけらも残っていない世界だ。それどころか、有毒の瘴気を発する菌類の広大な森として描かれ、人々が立ち入ることすら許されない。おまけにそこには美しい小鳥のさえずりのかわりに、王蟲とかウシアブという気持ちの悪い巨大な蟲たちを棲まわせている。この蟲たちを、そして腐海を、この時代に生きる人々は、当然のことだが忌み嫌い「自然を大切にしよう!」などとは叫ばない。

だが、野心からこの腐海を焼き払い世界をわがものにしようと企む愚者がこの時代にも登場する。自然を征服し科学文明で繁栄をきわめようという現代人に通じるタイプである。ただ、現代とちがうのは、この時代に於いて腐海を焼き払うことは人類の絶滅を意味していたことである。

-ナウシカは人々の無謀なもくろみに絶望する。彼女だけがそのことに直感で気づいていた。ナウシカは身を躍らせ、メーヴェに飛び乗る。そのとき、奇跡が起こる。そして、人々の忌み嫌う、この腐海という名の自然と調和して生きていかない限り、人類の未来はないことをナウシカは人々に指し示す。もしかしたらその未来は、人類が生き永らえるのは、ほんの短い期間だけなのかもしれないというのに。

人間が生きてゆけるのはほんの少しだけなのか、それとも未来永劫につづくものなのかこの映画は語らない。作者自身、まだその答がわかっていないのだ。やがて再開されるだろう連載のなかで、作者自身、その答をさがすのだろう。

それはともかく、前半がかなりたのしげな映画だっただけに、この映画のラスト、宮崎駿の叫びは悲痛である。

(CDライナーノーツ より)

 

 

NAUSICAÄ STUDIO MEMO

●2月7日、TAMCOスタジオ入り。17日間、全60曲以上にのぼるサントラのレコーディングの始まりだ。映画公開は3月11日だからギリギリのスケジュール。ディレクターの荒川さんの顔もヒキつろうというもの。

●すでに監督の宮崎駿さん、プロデューサーの高畑勲さんとの打ちあわせは終了。基本コンセプトは、前作のイメージアルバム「鳥の人…」でいこうと決定している。このレコードに付属している楽譜をはじめとする、いくつかの主題を、シーンごとに割りふっていく。

●作業はビデオになったラッシュフィルムを観ながら行なわれる。まず曲を入れるシーンの長さをはかり、曲の秒数を決定。これをMC-4というコンピューターに入力すると、秒数にあわせて、「キッコッコッ、カッコッコッ」というリズムガイドが打ち出される。これに合わせて、シーンのイメージを曲にしていくという手順。久石さんの演奏が24チャンネルのマルチレコーダーによって、ひとつずつ重ねられていく。仕上がったところで、ビデオを再生しながら曲のチェック、スタッフどうしで意見を出し、手なおしを加えて完成。

●「たとえ、ラッシュフィルムでも、画面があると、曲作りにすごくプラスになるね」と久石さん。アニメに限らず、現在のサントラの曲づくりでは、画面なしで、シナリオと秒数だけで作曲してしまうケースが多い。ラッシュフィルムのおかげで、メーヴェの飛翔にあわせて曲想を換えていくといった、きめ細かい作業を行うことができた。

●後半の「王蟲との交流」「ナウシカ・レクイエム」に聞かれる女の子の声は、久石さんのお嬢さん、麻衣ちゃん(4歳)。幼年時代のナウシカと王蟲との交流あたたかく表現しようというわけ。電子楽器を中心とした、とかく無機質になりがちなスタジオワークでの曲作りに、ライブな響きが加わった。

●2月15日、C・A・Cスタジオにて、フェアライトCMIを使ってレコーディング。これはコンピューターをフルに活用した万能電子楽器とでもいうべきもの。価格1200万円ナリ。「王蟲との交流」での、コーラスとストリングス系の音がこれ。ウクツシイ!

●2月20日、久石さんの演奏による録音はすべて終了し、にっかつスタジオにてオーケストラ録り。ビデオの画面に合わせて、久石さんから指揮者に細かい指示が送られる。シンフォニー編アルバム「風の伝説」とは、また違った生の迫力をもった曲が仕上がった。

●2月21日から24日まで、一口坂スタジオでミックスダウン。24チャンネルの音を2チャンネルの音に組み上げていく。そして完成!

●久石さんは語る。「ナウシカとは、イメージアルバムから数えると3枚の作品、約8か月間にわたる長いつき合いでした。一つの作品に対して、ここまでじっくり取り組めたことは大変満足しています。しかも、「ナウシカ」という作品のすばらしさ!これは映画を観ていただければ充分に分かっていただけるでしょう。本当に充実した仕事でした」。

(CDライナーノーツ より)

 

 

「音楽のつけ方が普通の映画とは違う場所で入れているんですよね。感情の起伏につけるのではなく、状況的なものにつける。ユパが谷へ降りてくるシーンなんかで突然音楽が盛り上がっているでしょ?ああいうところで目いっぱい音楽を使って、そのかわりセリフの入るところや効果音の生きるところにはなるべくBGMを入れないというポリシーですね。

つまり、音楽をナウシカの目を通して入れているんです。ナウシカの感情につけるのではなく、ナウシカが見て感じるものに入れていったわけで、そうやってアニメの虚構の状況というものを浮き出させようとしたんです。わりと成功したんじゃないかと思いますよ」

Blog. 久石譲 「風の谷のナウシカ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「当時、宮崎さんはもう40歳を超えていたんですが、仕事のことをこんなに夢中になって話せるおじさんがいたんだった驚いたのを覚えています(笑)。例えばセル画のことをひとつ取っても、イスに飛び乗って説明したりしているんですよ。ただ、僕は当時、全くアニメについて知識がなかったので、宮崎さんがカリスマ的な存在ということすら知らなかった(笑)。もうその時点で、あの有名な「ルパン三世 カリオストロの城」を作っていたのに……。でも、結果的にはそれが良かったのかもしれないですね。気負わずに済みましたから(笑)」

久石さんの手掛けたイメージ・アルバムを高く評価した宮崎監督は、当時まだ新人だった久石さんを本編のサウンドトラックにも起用、ここから今や切っても切れない関係となった両者のコラボレーションが始まった。

「自分の中で、初めて明確に映画音楽というものを意識したのは「風の谷のナウシカ」だったんです。映画音楽と自分のソロ・アルバムなどとの最も大きな違いは、映画というのはあくまで監督の世界だということだと思います。ですから、音楽を作るときも、自分の思いだけではなく、監督がどういう世界を作りたいのかということがフィルターとして必ず入ってくるのですが、そのフィルターがすごい人であればあるほど刺激を受けて、そこから新しい自分を発見できるんですよ」

ちょうどそのころ、音楽制作の面でも大きな転機が訪れた。サンプラーとの出会いである。

「「ナウシカ」をやってきたときに、知り合いの人が持っていたFAIRLIGHT CMIを初めて使ったんです。「人間の声みたいな音が出るんだ」って聞かされていたんですが、”そんなワケない”って思っていた。ところが、実際に使ったら本当だったので驚きましたね。そして、「ナウシカ・レクイエム」という曲の歌の部分のバッグを全部FAIRLIGHTで作ったんです。その後、これからはきっとこういう機材がメインになると思って、千数百万円を出してFAIRLIGHTを購入しました。清水の舞台から10回くらい飛び降りるような気持ちでしたね(笑)」

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

久石譲の初参加

音楽の久石譲は、当初イメージアルバム「鳥の人…」限定の担当であった。当時久石は、テレビシリーズのアニメーション用音楽を量産していた。それらは一様に、軽快なシンセサイザー音楽がメインであった。それは、久石の本業であったミニマル・ミュージックの傍らで取り組んだアルバイト的余技と言ってもよい。

当時、アニメーション化されていない人気漫画を題材としたイメージ音楽や音だけのドラマをアルバムとして発売する企画が流行していた。徳間も「アニメージュ・レコード」を立ち上げ、久石は様々な形で起用された。久石は徳間系列のジャパン・レコードからアルバムをリリースしており、近しい関係にあった。徳間発の人気漫画『アリオン』『バース』『ナウシカ』のイメージアルバムはいずれも久石に打診され、後二作が実現した。83年夏、宮崎は打ち合わせに訪れた久石に作品を熱心に解説し、請われて後日「腐海」「メーヴェ」など15個のキーワードを手渡した。久石の宮崎に対する第一印象は「素朴な手造りの人間性」であった。

「当時、作曲で苦労したことはない」と記す久石は、1カ月半でレコーディングまで終えてしまった。実質的には百数時間、スタジオに籠もって仕上げた。メイン・テーマであるピアノ曲「風の伝説」は、わずか30分で書き上げたという。久石が心がけたのは、シンセサイザーでありながら、「アコースティックで広がりのある音」に仕上げることであった。このため、民族音楽で用いられるダルシマ、ケーナなども使われている。

出来上がったアルバムは、静かなピアノ曲「風の伝説」、少女のハーモニー(当時4歳の久石の娘が歌唱)がかぶる「ナウシカ」のテーマ「はるかな地へ…」「遠い日々」、アップテンポのデジタル曲「メーヴェ」(本編未使用)「土鬼軍の逆襲」(本編の戦車シーンで使用)、エスニックな民族音楽風の「王蟲」(王蟲登場シーンで使用)など多彩な要素を備えていた。この段階で既に、ピアノによる主題曲、エスニ ック調、デジタルという後の久石・宮崎コンビ作の三大要素は出揃っていた。高畑と宮崎は久石のメロディを褒め称えた。二人の感想により、それまでサウンド中心に発想して来た久石は、初めてメロディ・メーカーとしての自分に才能に気づいたという。

本編音楽は既に別人に決まっていた。しかし、久石のアルバムを聴きながら制作を続けていた宮崎は、本編音楽に久石を強く推し、高畑もこれを尊重して関係者を説得。音楽の人選は大もめとなったが、84年早々最終的に久石に決定した。久石は、イメージアルバムの各曲を1月の2週間で「交響曲」に仕立て直し、再度アルバム 「風の伝説」をレコーディングした。おそらく本編には一段とスケールアップした音楽が欲しいという高畑・宮崎の意図があったのだろう。久石はオーケストラ50名の現場録音を初体験した。本編には、イメージアルバムとシンフォニーの双方が生かされた。

ほとんどのアニメーション作品は、完成画面が白紙の状態でシナリオと秒数に合わせて作曲が行われ、あとは編集で適宜各曲を切り刻まれて使用される。久石もそうした経験が多々あったが、今回は違った。多くはラッシュの未完成画面だったが、極力シーンに秒数を合わせて繊細に一曲一曲を仕上げた。17日間で全60曲以上を録音、2月24日に音楽は完成した。

久石は各シーンの選曲にもこだわりを見せた。冒頭部でナウシカが滑走し、メーヴェで谷へ帰るシーンにメインテーマが大音響でかぶる。これは久石が提案し、周囲を説得して実現したものだ。メインテーマの同様の使い方は、傷ついたウシアブと共にナウシカがメーヴェで空へ舞い上がるシーンでも見られる。しかし、こうした努力にもかかわらず、完成させた楽曲が「一部のシーンで切り刻まれて、とてもがっかりした」という。久石は、この苦い教訓を経て、さらに成長を遂げることになる。

久石は、『ナウシカ』のために約8カ月で3枚のアルバムを制作し計80曲以上を作曲した。「イメージアルバム」「シンフォニー」「サントラ」という連作によって、本編音楽を完成度の高いものに仕上げていくという贅沢な行程は、以降の宮崎作品の定形となっていく。これは、制作母体の徳間書店が音楽部門・徳間ジャパンを有していたこととも深く関わっている。とはいえ、売れもしない同類商品を販売ルートに出すことは許されない。『ナウシカ』の各アルバムは長期間ヒットチャートにランクインし続けた。長寿商品を生み出すほどの作品の生命力があって初めて連作が成立したとも言える。

(書籍「宮崎駿全書」より)

 

なお上の書籍には、主題歌に関する経緯について、使用したかった楽曲のこと、オリジナル主題歌制作を試みたこと、最終的にインストゥルメンタル「風の伝説」メインテーマが使われたことなどの詳細も記されている。

 

 

 

鈴木:
イメージアルバムというのは高畑さんの発案。当時の日本映画って映像が出来てから慌てて音楽をやる。しかも期間にして1日か2日、それで映画音楽をつけなきゃいけない。つまり音楽を重視してこなかったんですよ。それを高畑勲という人は、その歴史を変えようと。音楽にたっぷり時間を作ろうと。最初自由にイメージして音楽を作ってもらう。それで図々しいこと考えたんですよ。作ってもらったなかに作品に合う良いものと悪いものがある。そうすると映画音楽を当てはめるまでに2回チャンスがある、音楽が充実する。それが高畑さんの考えだった。

数多くいる候補の中から「久石さんがいい」って高畑さんが言い出した。高畑さんの決め手は「久石さんは教養がある。要するにクラシック音楽の勉強をしてる。その基礎があると、映像に音楽を合わせてもらう映画音楽をつくるのにその教養が役に立つに違いない。それがないと注文しにくい。」って言ったんですよ。音楽を聴いて高畑さんはそれを発見するんですよ。周りの人たちがみんな反対するなか、そこが高畑勲のすごさ。ここで決まっちゃうんですもん、宮崎・久石コンビ。

イメージアルバムを作るときに、高畑さんが宮崎に頼んだのが、タイトルとイメージを文章にして渡すこと。こんな感じの曲があるといいというのを10個くらい書いた。だからこれも高畑さんが考えたこと。イメージアルバムを最初に聴いたのは僕と高畑さん。高畑さんは「いける」って言ったんですよ。その後宮崎に聴いてもらって一発で気に入った。当時はカセットテープ、宮崎はそれを一日中大音量で聴くわけですよ。しかも朝9時から午前4時まで同じテープを延々鳴りっぱなしなんですよ、周りは静かに作業してるなか。

久石:
当時はあまり時間がなくてスタジオにこもって作ってたんだけど、実は原作難しくて理解できなかった。今考えると逆に素晴らしいことなんだけど、いい映画ってそうなんだけど、説明を結構省いているから。これは何なんだろうと思ったことを徳間の関係者の人がその都度、これはこうです、これはこうです、って説明もらって。それで一応かたちになったっていう。

鈴木:
忘れちゃいけないのが、高畑さんは「オーケストラでやりたい」と。当時、日本の映画音楽でオーケストラなんてなかったですよ、編成小さかったですもん。結局、イメージアルバムと本編のサントラ、加わった楽曲もあるけれど基本は変わらなかったですもんね。それでいうと、最初からもう気に入っちゃったんですよ。

久石:
イメージアルバムの時が、当時流行りの打ち込みの音で作ってた曲もいっぱいあった。高畑さんはそこから、これがオーケストラに変わればもっといいというのを見抜かれたんですね。

Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)

 

 

 

風の谷のナウシカ LP復刻

(LPジャケット)

 

久石譲 『風の谷のナウシカ サウンドトラック』

1. 「風の谷のナウシカ」〜オープニング〜
2. 王蟲の暴走
3. 風の谷
4. 虫愛ずる姫
5. クシャナの侵略
6. 戦闘
7. 王蟲との交流
8. 腐海にて
9. ペジテの全滅
10. メーヴェとコルベットの戦い
11. 蘇る巨神兵
12. ナウシカ・レクイエム
13. 「鳥の人」〜エンディング〜

 

EXECUTIVE PRODUCER: KOKI MIURA
ASSOCIATE PRODUCER: HISAO HIRATA
PRODUCED by JOE HISAISHI
DIRECTED by MASARU ARAKAWA
MUSIC COMPOSED AND ORCHESTRATION by JOE HISAISHI
RECORDING AND MIXING ENGINEER: MASAYUKI HAYASHI, TAKEO SUZUKI
RECORDING at TAMCO st. HITOKUTHI ZAKA ST. NIKKATSU at C.A.C st
TECHNICAL ASSISTANT: KAORU NASHIMOTO

 

Nausicaä of the Valley of the Wind (Original Soundtrack)

1.Nausicaä of the Valley of Wind – Opening theme
2.Stampede of the Ohmu
3.The Valley of the Wind
4.The Princess Who Loves Insects
5.The Invasion of Kushana
6.Battle
7.Contact with the Ohmu
8.In the Sea of Corruption
9.Annihilation of Pejite
10.The Battle Between Mehve and Corvette
11.The Resurrection of the Giant Warrior
12.Nausicaä Requiem 
13.The Bird Man – Ending theme

 

바람계곡의 나우시카 Original Soundtrack
(South Korea, 2007 CD) PCKD-20201

1.바람계곡의 나우시카
2.오무의 폭주
3.바람계곡
4.곤충을 사랑한 공주
5.크샤니의 침략
6.전투
7.오무와의 교류
8.부해에서
9.페지테의 전멸
10.부활한 거신병
11메베와 콜베트의 전투
12.나우시카 진혼곡
13.하늘을 나는 사람

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

1984年2月25日 LP発売 ANL-1017
1984年2月25日 CT発売 25AN-17
1984年5月25日 CD発売 35ATC-2
1993年7月21日 CD発売 TKCA-70132
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72718
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10010

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

「ナウシカ」の名曲の数々を、約50名のオーケストラで再現したシンフォニー編。シンフォニー・バージョンの制作は通常はサントラの後だが、「ナウシカ」のみはサントラ録音前の1983年11~12月に、主にイメージアルバムの曲をベースにして制作された。

このアルバムも、CDについてはしばらく経ってから新ジャケットで発売された。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

解説

人類の最終戦争があって1000年、地球には高度に発達した産業文明の遺産と歪んだ自然、そしてひとにぎりの人類が生き残った。そのような世界で、人類はどのように生きながらえ、どのような思想を持とうとするのか。再びなぞらえる人類の前史、そして繰り広げられる戦闘。人類は窮極的な最後の地球絶滅の危機を前にしてもみにくく争おうとする。そこに登場する木々を愛で虫と語り風をまねく伝説の少女ナウシカ。彼女は生きることの素朴な喜びを最も敏感に感じとれる少女として登場し、たったひとりの力でこの未来の地球を救おうとする-。

原作は「未来少年コナン」「ルパン三世・カリオストロの城」のアニメーション演出家・宮崎駿がアニメ雑誌「アニメージュ」(徳間書店)に好評連載中の(現在は中断)人気オリジナル・コミック。娯楽大作として、日常性に支配された昨今のマンガでは味わうことのできないダイナミックな世界を描き、テーマ的にも環境汚染・自然破壊・エネルギー消費など現代社会の抱える大問題とまともに対応したことで評判を呼んだ話題作である。

今回のこのCDは、「さすがの猿飛」「愛してナイト」の作曲家久石譲がその原作および宮崎駿の伝えるメッセージをもとに作ったイメージ・レコード集のシンフォニー盤である。

なおこのアニメ映画が、㈱徳間書店・㈱博報堂の製作、配給/東映㈱で’84春休みに公開され、大好評を博した。また、原作者の宮崎駿自身が脚本・監督を担当してこの映画化に取り組んだことでも注目を集めた。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ナウシカへのクラい日々・遠い日々… 久石譲

ナウシカ- 妙になつかしさを感じさせる響き。その名前の少女が活躍する物語は、未来の出来事であるはずなのに、ギリシア時代よりずっと前から育んだ人間のいわば手造りの歴史を感じさせます。「風のイメージなのです。ドッと吹くのではなくて山あいをスーッと抜けるような…」前作の時お会いした原作者の宮崎駿氏自身にもそういう素朴な手造りの人間性を感じました。

前作のシンセサイザーバージョンでは、約百数十時間スタジオにこもって、プロフィットリンドラム等を使って制作したが、その過程で一番注意した事は、いかにアコースティックで広がりのある音創りをするか、でした。そのために、ダルシマ、ケーナ、等の素朴なニュアンスを出せる楽器をブレンドしてみた。もともと民族音楽が大好き人間としては、それなりに納得ができた。

が、今回のオーケストラバージョンの話があったとき、はっきり言って悩みましたよ。それはシンセサイザーを使っていかにアコースティックで広がり…というコンセプトで作った楽曲をオーケストラを使ってそれをやれば、もろ当たり前の事になってしまうではりませんか!それはオモシロくないし、だいいちオーケストラなんてもう何年も書いていないから、あの恐怖の30段スコアを目の前にしたら卒倒するのではないか等々、色々言い訳を考えつつ、約2週間ピアノの前で、クラーイ生活が続きました。

んで終わって我想うに「やってよかった、コンビニエンス」 シンセのレコーディングと違ってオーケストラは、一曲一時間、約50名のメンバーはダビングなしの全員集合、どんどん録っていくのです。もうそれは大きなスタジオが小さく見えて肘を張れば隣りのバイオリンにぶつかるわ、トロンボーンのスライドをカッコよく延ばせば灰皿は飛ぶわ、ティンパニ叩けば珈琲はこぼれるわ、マイクは倒れるわ、はっきり言ってお祭りなのです。普段の一人コツコツ多重どんぶりとはエラく違うのです。興奮しましたよ。

今はトラックダウンも終わり、かなり良い音の仕上がりに満足しています。それはミキサーの大川氏を始めスタッフの皆さんの協力によるものです。

とにかく聞いてみてください。

(CDライナーノーツより)

 

 

音楽解説

〈風の伝説〉
一陣の風が静かに砂漠を渡っていく……。地球のたそがれの時代に生きたひとりの少女があった。美しく、やさしく、熱い闘志を心に秘め、蟲とすら語りあった鳥の人、ナウシカ。ピアノの旋律がナウシカのメイン・イメージを語っていく。その心を表わすボリュームあるオーケストレーション。風は語る。彼女の物語を。そして、風は聞く人の耳に、一筋の涼感を残して吹きずさっていく。ナウシカは、まさに風のような人であったというプロローグ。この曲が全アルバムのメイン・テーマとなっていく。

〈戦闘〉
進撃する軍団や巨大なメカニック、集団のイメージ。雄々しいだけでなく、哀しみ、苦戦、その中から立ちあがっていく戦隊と情感のあふれるダイナミックな曲が続いていく。その中で押しよせる打楽器の激しいリズムが戦闘のイメージをもりあげる。曲は静かなリズム感へ進み、勝利と平安の予感が。進撃の高まりをリズミカルにもう一度くりかえし、戦いは終局へ向かう。

〈はるかな地へ〉
静かに砂漠を歩く旅人…やがて、その旅人の心の中にわきあがる人々が群れつどい、平和と笑いがうずまく村のイメージ。民族歌的なメロディが広がっていくその心と、さらに大空を静かに飛翔していくナウシカのイメージがだぶっていく。戦うナウシカや人々の心のよりどころである、人々の住む村を予感させ、曲はもりあがっていく。曲全体のバックに、進む旅人の心の躍動が感じられ待ちうける見知らぬ土地への想いがあふれていく。ラストは、眼前にその土地が現われ、まるで朝焼けの中にうかびあがるような鐘のイメージでしめくくられる。

〈腐海〉
りん光発する腐海、ふきだす胞子、異形の者の住む世界-そのオドロオドロしたイメージ、蟲たちのリズム感のイメージが続く。次第に力強く広がっていく生命力のイメージ。リズムの中に、チカチカと光るりん光の処理が印象的。しかし、やがて異形のメロディーの中に、次第に清浄な、汚染された地球を清浄化する生命力があふれていることを、曲が変わり印象づけてゆく。この腐海と人間の折りあいをどうつけていくのか。このキーワードがナウシカであることは言うまでもないだろう。曲は明るさの予感を感じさせ、クロージングしていく。

〈メーヴェ〉
大空を駆けるメーヴェ。雲海をぬけ、視界が一気に広がっていく解放感。メーヴェに乗るナウシカのはずむ表情が手に取るように判るオープニングである。小気味よいメーヴェの飛翔ぶりのイメージが浮かびあがってくる。飛べ!ナウシカ。その自由な心のままに! 前から後ろから上から下から、アップに、ロングに大空を飛ぶメーヴェを空中撮影でとらえるようなリズミカルなビートが印象的。大空をかける主人公の飛翔に、人間の自由をオーバーラップさせる宮崎アニメならではのイメージ曲。

〈巨神兵〉
不気味な導入部-何か異形の、巨大な存在がそこにいる実感。それは次第に力を取り戻そうとしている。不気味なもりあがり。メカニカルな、あくまでも非人間的な作動のイメージ。巨神兵は、その作動を開始する。悪魔の心臓に炎が戻り、目が光をおび、腕が静かに上がり始める。起き上がり、動き始める巨神兵-いかなる者も止めることができない悪魔の復活を感じさせるパワフルなメロディーが続く。かつて地球を7日間で破壊しつくした悪魔の兵器、巨神兵-その破壊のリズム感は再び世界をのみこんでいくのか!? 『動』のイメージの後は、巨神兵の『静』のイメージ曲が続く。それは、腐海の中に残骸となって立ちつくす巨神兵のムクロのイメージか。もうこの悪魔の牙も地球には届かない。巨神兵でさえ悠久の時の流れの前には無力なのか。今はただ腐海の景色の一部として、眠るだけである……。眠る兵士の魂をかなでるメロディーで終幕となる。

〈風の谷のナウシカ〉
風の伝説の導入部から、「風の谷のナウシカ」のメロディーへと入ってゆく。弦楽器と木管楽器の情感あふれるメロディーがナウシカのすがすがしさとその心情をあますことなく伝えていく。

〈遠い日々〉
A面の”はるかな地へ”と同じリズムが静かにかなでられていく。その”はるかな地へ”とは、”平安なる地、理想郷”であることは明らかで、その平和のリズム感が、牧歌的な民族歌調のメロディーの中でくりかえしくりかえし、大きくなっていく。いよいよ、シンフォニー「風の谷のナウシカ」も終幕まぢかである。

〈谷への道〉
弦楽器のメドレーが、終曲を形作り、人間の、人々の、私たちの物語を伝える。風の谷とは、明日の人類の姿であると同時に、永遠に生きる”人間”の住み家である。あらゆる人々に門を開く風の谷。そこには暴力ではなく、やさしさが、生きていく力強さがあり、あふれる人々の喜びと哀しみ、人生がある。これこそナウシカの、我々の住む場所である。第1曲の”風の伝説”をくりかえし、ここにシンフォニー「風の谷のナウシカ」は終っていく。

解説/池田憲章

(音楽解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

風の谷のナウシカ シンフォニー編 LP

(LPジャケット)

 

久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

1. 風の伝説
2. 戦闘
3. はるかな地へ…
4. 腐海
5. メーヴェ
6. 巨神兵〜トルメキア軍〜クシャナ殿下
7. 風の谷のナウシカ
8. 遠い日々
9. 谷への道

 

Nausicaä of the Valley of the Wind – Symphony

1.The Legend of the Wind
2.Battle
3.To the Land of Faraway…
4.The Sea of Corruption
5.Mehve
6.The Giant Warrior – The Tolmekian Army – Her Highness Kushana
7.Nausicaä of the Valley of the Wind
8.The Distant Days
9.The Road to the Valley

 

EXECUTIVE PRODUCER
KOKI MURA
PRODUCED BY MASARU ARAKAWA, JOE HISASHI
COMPOSED AND ORCHESTRATION BY JOE HISAISHI
SONG BY
JOE HISAISHI
HARUOMI HOSONO(M-7)
MUSIC PERFORMED BY T.J.C ORCHESTRA
RECORDING AND MIXING ENGINEER
MASAYOSHI OKAWA
TAKEO SUZUKI(B-3)
RECORDING AT HITOKUCHI ZAKA STUDIO
ALBUM COORDINATION BY WONDER CITY I.N.C
A&R
AKIRA SHIMABUKURO