Disc. 久石譲 『天空の城ラピュタ シンフォニー編 大樹』

久石譲 『天空の城ラピュタ シンフォニー編 大樹』

1986年12月21日 LP発売 28AGL-3039
1986年12月21日 CT発売 28AGC-2039
1987年1月25日 CD発売 32ATC-140
1993年12月21日 CD発売 TKCA-70228
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72722
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10013

 

1986年公開 スタジオジブリ作品 映画「天空の城ラピュタ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

「天空の城ラピュタ」の音楽を全8曲に編曲し、総勢60余名のオーケストラによりさらにスケールアップしてシンフォニー化したアルバム。収録は1986年10月。久石は作曲・編曲とプロデュースを担当している。LPとCDのジャケットは同一デザイン。

 

 

LAPUTA SYMPHONY MEMO

今回のレコーディングは、東京・早稲田にあるアバコクリエイティブスタジオで、10月25日(土)、26日(日)の2日間にわたって行われた。演奏は総勢60余名の東京シティフィルハーモニック。指揮はサントラ盤のオーケストラ部を担当した、中谷勝昭さん。

以下の解説中『  』は、イメージアルバム(25AGL-3024)制作時に、宮崎駿氏から示された覚え書きより引用した。

1. プロローグ~出会い
トランペットの高らかな響きでスタート。『全世界をみおろす屋根の上。人々はまだ眠っている。いま世界にいるのは少年とハトたちだけ。朝日が霧をはらい、少年のトランペットから出発の歌が流れはじめる』
続いてピアノと木管による導入部のあと、映画のオープニングとエンディングテーマ「君をのせて」に使用された、おなじみのメロディーが展開される。しめくくりは「スラッグ渓谷の朝」テーマ。

2. Gran’ma Dola
空中海賊ドーラ一家の女親分、ドーラのテーマ。『情熱と誇り、食欲と物欲、あふれるほどの愛と憎しみ。はためく旗は先々代からのもの。今、生きなければいつ生きるのだ。子供達、あたしのあとにつづきな。生きる喜びをおしえてやろう』 海賊たちのコミカルな日常生活をも描写している。

3. 空中散歩
映画では、ティディスの要塞から逃げだしたあとにワンフレーズだけ使われただけの小型のはばたき機フラップターのテーマだが、楽しく軽快なメロディー。『銀バエのように群がり、銀バエのように逃げ、銀バエのようにまいもどる。流れる牧場、村の屋根、雲をかすめて、地の果てまでつっぱしれ。息のつづくかぎり、エンジンの悲鳴は心の叫びだ』 中盤の重いメロディーは、巨大戦艦ゴリアテや、ムスカの冷酷さを表現したもの。

4. ゴンドア(母に抱かれて)
前半は、飛行石の力で空中を漂うふたりのシーンの曲。続いて、シータのふるさと、ゴンドアをイメージしたメロディーが流れる。『なつかしい人々、忘れられぬ面影、石をかさねた家々から立ちのぼる白い煙。たそがれの小径を行けば、牧草の花々、やさしい目をしたヤク達のよびかう声、くれないに染まった頭上の雲からいま光がきえていく。遠くで誰かが家畜をあつめる牧笛をならしている』

5. 大いなる伝説
「ラピュタ」にたどりついたシータとパズーがみたものは、ラピュタ人の墓標を見守るロボットと、城を貫く巨大な樹だった。
『壮大なひろがり。生命の樹。はるかな時間。陽光』

6.大活劇
ドーラ一家の子分が、スラッグ渓谷の親方と力くらべをするコミカルなシーン。そしてシータたちとの、軽便鉄道を舞台にした愉快な追いかけっこを音で表現。下は目もくらむような谷。木製の橋はいまにもくずれそう。ついにオートモーヴィルはバラバラに。だがしかし、根性と度胸の女、ドーラは負けないのだ!

7. 鉱山町
パズーの住むスラッグ渓谷は廃鉱寸前の鉱山町。『今日だめだったとしても、明日はなんとかなるかもしれないじゃないか、つるはしは重くても俺の腕はもっと太いさ。石はかたいが、俺のゲンコはもっとかたいさ。いっぱいの酒さえあれば、いまは天国。オイ、そこのしけたやつ、オレがおごるぜ。この店のエールはとびきりなんだ』

8. 時間(とき)の城
かつて大いに栄華を誇ったであろう、その城は700年前に眠りについた。守るべき主もないままに、ロボットは庭園の世話をし、巨大な樹は、くずれかけた城壁を支えてきた。『かがやく雲の峰のかなた。あこがれ、失われた楽園。よこしまなものと美しいものをふくんだ闇。神秘』 アルバムの最後をかざる「天空の城ラピュタ」のテーマ。

(LAPUTA SYMPHONY MEMO CDライナーより)

 

 

久石譲 『天空の城ラピュタ シンフォニー編 大樹』

1. プロローグ〜出会い
2. Gran’ma Dola
3. 空中散歩
4. ゴンドア(母に抱かれて)
5. 大いなる伝説
6. 大活劇
7. 鉱山町
8. 時間(とき)の城

指揮:中谷勝昭
演奏:東京シティフィルハーモニック管弦楽団

東京シティフィルハーモニック管弦楽団
第1バイオリン 10名
第2バイオリン 8名
ビオラ 6名
チェロ 6名
コントラバス 4名
フルート 2名
オーボエ 2名
クラリネット 2名
バスーン 2名
ホルン 4名
トランペット 3名
トロンボーン 4名
チューバ 1名
ハープ 1名
ピアノ 1名
パーカッション 4名

 

Castle in the Sky – Symphony

1.Prologue – The Encounter
2.Gran’ma Dola
3.A Walk in the Sky
4.Gondoa (In Mother’s Arms)
5.The Legend
6.A Big Adventure
7.A Mining Town
8.The Castle of Time

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ ベスト・コレクション』

1986年11月25日 CD発売 27ATC-126~7

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画『風の谷のナウシカ』
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

本作品は、『風の谷のナウシカ オリジナル・サウンドトラック はるかな地へ…』と『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』を2枚組にしたものである。収録内容同一。

 

 

風の谷のナウシカ ベスト・コレクション

DISC 1
1. 風の伝説
2. 戦闘
3. はるかな地へ…
4. 腐海
5. メーヴェ
6. 巨神兵~トルメキア軍~クシャナ殿下
7. 風の谷のナウシカ
8. 遠い日々
9.谷への道

DISC2
1. 「風の谷のナウシカ」オープニング
2. 王蟲の暴走
3. 風の谷
4. 虫愛ずる姫
5. クシャナの侵略
6. 戦闘
7. 王蟲との交流
8. 腐海にて
9. ペジテの全滅
10. メーヴェとコルベットの戦い
11. 蘇る巨神兵
12. ナウシカ・レクイエム
13. 「島の人」エンディング

作曲・編曲:久石譲

 

Disc. 久石譲 『天空の城ラピュタ ドラマ編 光よ甦れ!』

1986年8月15日 LP発売 19AGL-3029~30
1986年8月15日 CT発売 19AGC-2029~30
1989年2月25日 CD発売 24ATC-178~9
1993年12月21日 CD発売 TKCA-70230

 

1986年公開 スタジオジブリ作品 映画「天空の城ラピュタ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

本作品は映画本編を映像なしの音声のみで聴く作品である。BGMはもちろんセリフや効果音などもそのまま収録されている。

 

 

解説

●宮崎アニメはいつも魅惑のキャラクター・ボイスを生み出す。古くは「未来少年コナン」のラナス役を演じた信沢三恵子さんにはじまり、おなじみ「ルパン三世 カリオストロの城」のクラリス役をはじめ「新ルパン・最終話」の小山田マキや「風の谷のナウシカ」のナウシカを演じた島本須美さんなどのヒロインたち。宮崎作品にふれたことのある人なら、彼女たち以外の脇役にも、必ずひとりやふたりのお気に入りがいるはずだ。

●宮崎アニメの登場人物たちは、その一部分が、宮崎さん自身の”こうあってほしい”という想いから形作られている。と同時に、彼ら彼女らはとても存在感に満ちて描かれている。だから、その”想い”と”存在感”を同時に演じていかなければならないという宿命が、声を演じる人たちの上にのしかかっているはずである。これは、とても大変な仕事だと思う。その想いと存在感が両立したときに、はじめてそのキャラクターが生きてくるからだ。

●はたして「天空の城ラピュタ」ではどうだったのだろうか?

●それはぼくが書くまでもなく、映画をみていただければ、おわかりのはずである。じつに見事に”キマッタ”と思う。

●ロマンアルバムという単行本のための取材で、ぼくは「ラピュタ」の3日間のアフレコのあいだ、東京テレビセンターにほとんどぴったりはりつける、という幸運に恵まれた。詳しくは、ロマンアルバムに掲載されるそのレポートを読んでいただくとして、参考までに、いくつかのことをメモしておきたい。

●アフレコは、6月28日(土)、7月5日(土)、7日(日)の3日間だった。初日の午前中は、出演者全員そろって、オールラッシュを見る。台本片手に見ていた出演者の方々が、いつの間にか、台本から目を離して、映画にひきずりこまれている。台所で料理をするシータのところへ、海賊たちが次から次へと入って来るところは、大爆笑!だった。

●初日の午後は、まずパズー・田中真弓、シータ・横沢啓子のおふたりだけに、録音する。演技のポイントは、オーバーアクト、つまり役を作り過ぎないように、ということだった。自然な少年らしさ、少女らしさを演ずることが、どんなに大変なことか。

●7月5日、6日は一転して、出演者勢ぞろい。永井一郎さんをはじめ芸達者がそろい、自然とアフレコは盛りあがる。そのなかで、ムスカ役の田中農さんだけが淡々としているのが印象的。圧巻はなんといってもドーラ役の初井言榮さんで、ガラス越しに聞いている宮崎さんも思わず笑い出してしまうほど。ドーラには、おそらく”あんな年になっても元気なバアさんがいたら、世の中は平和になるだろう”という宮崎さんの強烈な想いが託されているにちがいない。

●最終日の最後に登場したのがボムじいさん役の常田富士男さんだった。ヒョウ然と現われ、ヒョウヒョウと語り、そしてまた去った、という感じで、アフレコは静かな幕切れをむかえたのだった。

片桐卓也

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

空から降ってきた少女
雲間から月光が射す夜、定期飛行船が空中海賊ドーラ一味に襲撃された。その時、飛行船の中で怪しい男たちに捕らえられていた少女シータは、船外へと飛びだし夜の闇に消えた。

地上の鉱山町、スラック渓谷に住む見習い機械工パズーは、光と共に空から降ってきた少女を助ける。翌朝、パズーの家で目を覚ましたシータに、彼は、死んだ父親が見たという伝説の空中の浮き島”ラピュタ”の話をした。いつか父の話を証明したいと願うパズー。

そこへシータのペンダントを狙うドーラたちが乗り込んできた。機関車にとび乗り、逃げるパズーたち。そこに現われた国防軍の装甲列車。シータを捕らえていた怪しい男たちだ。追っ手の発砲で崩れる橋から、深い谷底へと投げだされるふたり。だがその時、不思議なことが起こった。シータのペンダントが光を放ち始めると、ふたりの体は、空中に浮いていたのだ。

 

飛行石の謎
深い廃坑の底に降り立ったふたりは、そこで鉱山の石の専門家、ボムじいさんに会う。彼はシータのペンダントを見て、それはラピュタの技術だけが可能にする、飛行石の結晶だと言った。

廃坑を出たふたりは、追ってきた国防軍の男たちに捕らえられ、ティディス要塞へと連行された。そこでシータは、政府の調査機関のムスカに、地上のものでない壊れたロボットを見せられる。彼はシータの「リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ」という本名、彼女がラピュタの王位継承者であることまで知っていた。そして、パズーの命と引き換えに”ラピュタ”の位置を示す呪文を教えるよう迫るのだった。そうとは知らず、追い返されるパズー。家には海賊たちが陣どり、ティディスを襲撃しようとしていた。シータの言葉が実は、自分を救うためだということに気づいたパズーは、海賊たちとともに出撃する。

 

竜の巣
捕らえられシータが、幼い頃、おばあちゃんに教わった”われを助けよ、光よ、甦れ!”という呪文を唱えると、ペンダントが強烈な光を発した。すると壊れたはずのロボットが動き、シータを救うかのように要塞を破壊しはじめた。城の塔に出るとペンダントの光は天の一点を指した。混乱の中、パズーと海賊たちは、ついにシータを救い出したが、ペンダントを失ってしまった。それを手に入れたムスカは、ラピュタを目ざし空中戦艦ゴリアテを出動させた。そしてシータとパズーも海賊たちのタイガーモス号でラピュタへと向かう。途中、ゴリアテに遭遇し攻撃を受けたため、パズーたちは凧で偵察に出るが、ラピュタを取り巻く環境の中で、タイガーモス号と離れてしまう。どうにか嵐を抜けた凧は緑の草地に着地する。そこは、あのロボットが守る、緑に囲まれた、天空の城ラピュタだった。

 

天空の城ラピュタ エンディングテーマ 君をのせて
城の中心には巨大な樹が茂り、ラピュタの墓標を見守っていた。突然、爆発音が響く。ゴリアテと、捕らえられたタイガーモス号がラピュタに着船したのだ。財宝を発見し、狂喜する将軍たち。それを尻目にラピュタを調査するムスカ。パズーたちはペンダントを取り戻そうとするが、逆にシータが捕まってしまった。ムスカはシータを連れ、城の奥へ。そこには巨大な飛行石が輝いていた。自分のラピュラ人の末裔だと言うムスカは、ラピュラの地上を一瞬に焼き尽くす強大な力を手中に収め、将軍や兵士たちを殺害する。ムスカのスキをついてペンダントを取り返したシータは、単身、救出に来たパズーとともに滅びに呪文を唱えた。ほとばしる閃光の中、崩壊していくラピュタ。脱出するドーラたち。巨大な樹だけとなったラピュタが飛行石を抱えて天に昇っていく。茫然としたドーラたちの目に何かが映った。パズーとシータが乗った凧がゆっくりと滑空してきた。

(ストーリー解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

《LP盤特典》
ジャケット特典/パズーとシータの複製セル画

天空の城ラピュタ ドラマ編 LP

(LPジャケット)

 

天空の城ラピュタ ドラマ編

DISC 1
1. 空から降ってきた少女
2. 飛行石の謎

DISC 2
1. 竜の巣
2. 天空の城ラピュタ
3. 君をのせて〜エンディングテーマ〜

 

Disc. 久石譲 『天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎』

久石譲 『天空の城ラピュタ サウンドトラック』

1986年8月15日 LP発売 25AGL-3025
1986年8月15日 CT発売 25AGC-2025
1986年9月25日 CD発売 32ATC-115
1993年12月21日 CD発売 TKCA-70227
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72721
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10012

 

1986年公開 スタジオジブリ作品 映画「天空の城ラピュタ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

映画本編で使用されたBGMを収めたサントラ盤。挿入歌「君をのせて」も収録。「ラピュタ」は4chドルビーステレオを初めて採用した宮崎作品であり、音楽もそれにふさわしく、壮大なスケールの内容になった。1986年6~7月にかけて制作。

このアルバムのCDは、LP発売後1ヶ月少々経ってから新ジャケットで発売された。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

LAPUTA STUDIO MEMO

●6月20日(金)オールラッシュフィルム(セリフや音楽のない状態で編集されたフィルム)がほぼ完成。小雨が降り続く、深夜の東京・吉祥寺東映に関係スタッフを集めて映写された。映像のクオリティの高さに、一同息をのむ。

●6月23日(月)『ラピュタ』の制作をしている、スタジオジブリの近くにある喫茶店でBGMの本格的な打ちあわせ。3月に制作したイメージアルバム『空から降ってきた少女』をもとに、監督の宮崎駿さん、プロデューサーの高畑勲さん、音楽の久石譲さんが互いに意見を出し合って決めていく。1曲目からたちまち熱のこもった議論に。シータが捕らわれている飛行船に、海賊たちのフラップターが急襲するシーンに、音楽をつけるのかどうか、それはどんな曲か。熱論2時間、結局この曲は最後にもう一度話し合うことになった。午後4時から場所をジブリ第2スタジオ(実は仮眠室)に移して、深夜まで打ちあわせが行われた。

●6月24日(火)久石さんのワンダーステーション(スタジオ)にてレコーディング開始。「今回は徹底して絵の動きと音楽の流れを合わせることにこだわりたい」と久石さん。ラッシュフィルムのビデオをもとに、絵の動きのポイントの秒数を正確にチェック。『フェアライトIII』というスーパーシンセサイザーにデータを入れて、ベースとなるリズム体を作っていく。タイガーモス号の見張台にいるパズーとシータの曲からスタート。

●7月2日(水)連日徹夜の日が続く。海賊たちとスラッグ渓谷の親方との力くらべのシーンの曲を録る。絵のユーモラスな動きと完全に一致した曲に。楽しいシーンになりそう。

●7月7日(月)作品の最後に流れるテーマ曲『君をのせて』のボーカル録り。イメージアルバムの曲『シータとパズー』のメロディを生かした曲。作詩も宮崎さんとあって、作品にぴったり合ったテーマ曲に。井上杏美のそんだ越えがスタジオに響く。

●7月8日(火)日活スタジオでオーケストラ部分の録り。録るシーンごとに絵をスクリーンに映し、見て感じをつかんでもらってから、レコーディング開始。日活スタジオはじまって以来という総勢50名近くの大編成オーケストラの響きはさすが!

●7月10日(水)クライマックスで使用される児童合唱を録る。『ナウシカ』では4歳の女の子の歌った曲が話題になったが、今回は、杉並児童合唱団の30人の女の子を起用。3声にアレンジされた『シータとパズー』のメロディを歌う。

●7月12日(土)それぞれに録った音をひとつにまとめ上げる作業、トラックダウンを行う。最後まで課題として残っていた、作品の冒頭、フラップターの急襲シーンの曲を入れることに決定。あとはセリフや効果音とのダビング作業を待つばかりとなる。公開まであと1ヵ月弱、『ラピュタ』は4チャンネルドルビーサウンドで公開される。迫力あるラピュタサウンドが楽しめるはずだ。

●『ナウシカ』のサントラ盤を出した時、もう一度『ナウシカ』に、宮崎駿さんに会いたいと書いた。そして今、こうして『ラピュタ』のサントラをお届けできることを大変うれしく思う。あれから2年、自然と人間の調和の中に人間の未来を指し示した『ナウシカ』の叫びが起こした、様々な反響とは裏腹に世相はますます荒れすさんでいくように思える。「おとなから子どもまで、けなげにも非人間的なデジタル的なものにむりやり適応しようと涙ぐましい努力をしている現在、あらゆる面でアナログ的なものこそ人間的であると信じ、徹底してその復権を作品世界の中でめざす熱血漢・宮崎駿の、これは現代人全体への友愛の物語」(企画書の高畑さんの文章より)。という、『ラピュタ』のコンセプトは、このアルバムにも生かされている。そのサウンドに心安らぎ、胸ときめかせてほしい。 (渡辺)

(ラピュタ・スタジオ・メモ ~CDライナーノーツより)

 

 

天空の城ラピュタ LP 復刻

(LPジャケット)

 

 

「君をのせて」井上あずみ

1998年3月25日 CDS発売 10ATC-162

天空の城ラピュタ 君をのせて

(CDSジャケット)

 

1.君をのせて /井上あずみ
2.合唱 君をのせて /杉並児童合唱団

 

 

以降、Track.3に「君をのせて(カラオケ)」が追加収録されている。

2000年4月26日 CDS発売 TKDA-71925

(CDSジャケット)

 

1.君をのせて /井上あずみ
2.合唱 君をのせて /杉並児童合唱団
3.君をのせて (カラオケ)

 

 

2004年にはマキシシングルとして再発売されている。

2004年10月27日 CDS発売 TKCA-72755

(CDSジャケット / CD盤)

 

1.君をのせて /井上あずみ
2.合唱 君をのせて /杉並児童合唱団
3.君をのせて (カラオケ)

 

 

 

映画「風の谷のナウシカ」から「魔女の宅急便」までの主題歌・挿入歌を集めたオムニバスCDには、歌曲版とカラオケ版が各楽曲収録されている。

Disc. V.A. 『アニメージュ・ヒットソング ヴォーカル&カラオケ』

 

 

 

「そうなんです。明るくて、しかも胸にジーンとくるような良さを持った曲というのは、なかなか作れませんからね。しかし、今回はそれにどうしても挑まなければならなかったと思います。それと、音とイメージは、あくまでもアコースティックにいこうと、はじめから考えました。『アリオン』の場合は、音のサンプルの数がひじょうに多かったわけで、この『ラピュタ』ではむしろシンプルなアコースティックの音が中心になっています」

「ただ密度そのものはかなり濃いんです。というのは、実際に映画用の音楽を書くまえに、イメージアルバム(『空から降ってきた少女』)を作っているでしょう。だから、高畑さんの頭にも、ぼくの頭にも、そのイメージアルバムのメロディが鳴っているわけです。たとえばこのシーンではあのテーマ、あのシーンには別のテーマ、というように、きわめて具体性があるんですね。おたがいにそのメロディを鳴らしながら、打ちあわせをしていくわけです。たぶんこんなことは、他の誰もやっていないでしょう。それだけレベルの高い打ちあわせなわけです。だから『ラピュタ』の音楽は、いわば二段階をへて書かれていったわけですね」

Blog. 久石譲 「天空の城ラピュタ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「例えば敵方と味方が交互に現れても、それぞれの音楽がピタッピタッと合う。この方法は昔ディズニーもやっているんですけど、冒頭の殴り合いのシーンではボカッと殴る時にオーケストラの音が合っているんですね。かなり時間がかかりましたが、『──ラピュタ』のように映画音楽で、あくまでも音楽を画面に連動させるのは日本映画で初めてできたことだと思うんです。」

「でも、いくつか使えない音楽もあったんです。例えばフラップターという飛行機の音楽は普通に考えると、パタパタッと飛んでいかにも明るいイメージなんですけど、映画の中でフラップターが出てくるところは、ほとんど危機一髪、助かるか助からないかというシーンですからイメージアルバムのフラップターのテーマは使えなくなってしまうわけです。そうした場合はイメージアルバムと映画の音は違うんです。ただし天空の城の音楽とか根本的なところはほとんど変わりませんでした。いきなり作曲家がメロディを書くのであれば、お互い抽象的な話しかできないでしょう。それが、例えばパズーのテーマを決める時に、「この曲の頭に、もっとインパクトの強い音があった方がパズーの気持ちがもっと雄大になるんじゃないか」と、そこまで話した上で録音に入っているんで、日本映画の音楽ではかなり緻細な仕事をしたと思います。」

Blog. 「月刊 イメージフォーラム 1986年10月号 No.73」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「天空の城ラピュタ」の「君をのせて」は、最初、久石譲さんが歌われたデモテープを聴かせていただいたんですが、温かくて広がりのあるすてきな歌だと思いました。オーディションだったので、「絶対この曲を歌いたい!」って心から願いました。レコーディングのとき、宮崎駿監督に「自由に歌ってください」と言っていただいたことで気持ちが楽になったのを覚えています。完成披露試写会で作品を見たんですけど、どこで流れるのかを知らされてなくて、いつまでたっても流れてこないので、「使われなかったのかな…」って思っていたらエンディングで流れてきたんですよ。映画の感動もあって、号泣しました。

Blog. 「別冊カドカワ 総力特集 崖の上のポニョ featuring スタジオジブリ」(2008) 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

久石譲の会心作

『ナウシカ』のケースと同じく、本作の音楽担当も当初は久石譲ではなかった。久石は『ナウシカ』のスコアで各界の絶賛を浴び、澤井信一郎監督の『Wの悲劇』(84年)『早春物語』(85年)、蔵原惟繕監督の『春の鐘』(85年)など多くの映画で音楽を担当していた。『ラピュタ』準備中には、86年4月公開の映画『アリオン』(安彦良和監督)を手掛けており、『ラピュタ』を担当することは実質的に不可能と思われた。しかし、宮崎はあくまで久石を希望した。久石は宮崎の信頼に応え、86年2月までに『ラピュタ』を担当することを決断した。宮崎・高畑が久石に伝えたコンセプトは「子供たちに向けて今何を残さなければならないか」。宮崎の構想に久石は、アイルランド民謡の持つ五音音階の素朴な響きを重ね見て「イメージアルバム」の作曲に臨んだ。そこには次のような決意があった。「僕にとって是が非でも素晴らしい作品を創らねばならないという無言のプレッシャーが、録音の最中、毎日襲って来ました」

「イメージアルバム」のトラック・ダウンはロンドンで行われた。模索状態であった『ナウシカ』の「イメージアルバム」には劇中で使用されない曲もあった。しかし、より高い完成度を目指した『ラピュタ』では、無駄な曲はひとつもなかった。効果音的構成の「竜の巣」を除き、全曲がアレンジされて劇中で活用された。

『ナウシカ』同様、「イメージアルバム」に続いて「シンフォニー編」 も制作された。久石の構想は当初からフルオーケストラによる演奏が主軸であった。演奏は東京シティフィルハーモニックオーケストラの総勢60名、録音は85年10月25日、26日の2日間で行われた。「イメージアルバム」の各曲はスケールアップされ、大作にふさわしい仕上がりとなっていた。

そして、本番用音楽の作成が開始された。久石はシーンと音楽の完全な一体化を心がけ、初めて0.1秒単位の緻密な音楽設計に挑戦した。この結果、鉱山町での大喧嘩、軽便鉄道の追っかけ、要塞からのシータの救出など、長いシーンに途切れることのない音楽を作り上げた。特にシータ救出のくだりは、フラップターで疾駆するパズーとドーラー家、ロボット兵とシータ、ムスカと軍という三者三様の異なるモチーフを場面毎に切り替えて作曲し、見事に作品を盛り立てている。輝く飛行石のキャラキャラ…というシンセサイザーの効果音混じりの音楽、ラピュタ崩壊時に流れる杉並児童合唱団の少女30人による「パズーとシータ」も印象深い。

一方、久石・宮崎・高畑の間で解釈が異なり、議論で衝突したシーンもあった。まず、導入部の旅客船襲撃シーンについて、高畑は音楽なしを提案したが、久石は「入れたい」と希望。結局入れることに決まり、ギリギリの7月中旬に曲が書かれた。これとは逆に、ムスカがドームから軍の兵士を落下させる残酷なシーンについては、宮崎から「音楽を」と要請があったが、久石が「残酷さが強調された方が、シータとパズーの優しさや人間愛が胸を打つ」と音楽ナシを主張し、これが通った。ラピュタ崩壊シーンで流れる少女の合唱についても、高畑は「途中で止めるべき」、宮崎は「流し続けたい」と論議があったというが、高畑案が通ったようだ。

総じて本作の音楽は、久石が「これ以上のものは出来ない」と自画自賛するほどの出来栄えであった。

本編には主題歌は使われない予定であった。しかし、高畑は、観終わった観客に「宝を求めて行ったんだけれど、宝は手に入らなかった。かわりに何を手に入れたんだろう…」と和やかな気持ちで映画を反芻してもらいたい、そのためには歌があった方がいいのではないかと提案。急遽、高畑日く「映画全体と有機的に結びついた」主題歌制作が決定した。

高畑は宮崎に作詞を要請。曲は、「イメージアルバム」収録の「パズーとシータ」を元に中盤のサビを加えるよう久石に依頼した。高畑は久石と共に、メロディに合わせて助詞を添削してこれを補作し、主題歌「君をのせて」が出来上がった。レコーディングは86年7月7日であった。余りにもギリギリに完成したため、公開時にはシングルレコード発売は間に合わず、「サウンドトラック」に収録される形となった。

 

(書籍「宮崎駿全書」より 抜粋)

*以後のUSA盤サウンドトラックについての記述は省略

 

 

 

久石:
「ナウシカ」をやった直後に同じ徳間で「アリオン」ってアニメーション大作やったんですよ。その音楽を担当してたから、「ラピュラ」を作ってるのは知ってたけど、まあ自分はないなあと100%諦めてました。

鈴木:
当時宮崎駿には久石譲という考えはなかったですね。それはラピュタによって決定づけられるんですよ。いろんな人の作品をもう一度聴き直して、結果久石さんしかいないと。高畑さんがおもしろいこと言ったんですよ、「宮崎駿と久石譲は似てる」って。「二人とも熱血漢、すごい率直、すごい無邪気ですよ」って。意外にいなんですよ、謳いあげてくれる人って。それはいろいろ聴いてよくわかりました。

久石:
「ラピュラ」の時すごく考えてたのは、音楽的にまとめたオーケストラベースのものをできたらいいなあと。ただあの曲がメインテーマになるとは思わなかった。一応もうちょっと違ったやつを作ったはずなんですが、こういうのもあっていいやと夜の23時半ぐらいから20分ぐらいで作った曲。それで渡したら、これをメインテーマにしましょうと。あれぇ、全部ひっくり返ったぞと、そういう記憶があります。だからその「君をのせて」はメロディが先にあった曲。それに宮崎さんの言葉を当てはめていく作業。そこに足りない言葉を補っていく、これは僕と高畑さんとでやった。あの作業はとても楽しかったですよね。

鈴木:
これが主題歌になるとは思ってなかったですよね。とはいえね、宮崎のメモは大きいんですよ。あの地平線~ でしょ。高畑さんに言われてなるほどと思ったのはね、「わかります?鈴木さん。あの地平線、要するに目線がもう空にいる」って。多くの人は地上から空を見上げる。ところが宮さんの詩は、もう自分が空の上にいてそれで語ってる、それを中心にすれば歌になりますよって。なるほどおと思ってね。

久石:
「たくさんの灯が」っていうのが、まあ普通は言わないんですよね。プロの作詞家では絶対に書けない言葉。宮崎さんの言葉にはいつもそういうのがいっぱいあって、それが曲をかたちづくってる原点にはなってます。

Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)

 

 

久石譲 『天空の城ラピュタ サウンドトラック』

1.空から降ってきた少女
2.スラッグ溪谷の朝
3.愉快なケンカ(~追跡)
4.ゴンドアの思い出
5.失意のパズー
6.ロボット兵(復活~救出)
7.合唱 君をのせて (合唱/杉並児童合唱団)
8.シータの決意
9.タイガーモス号にて
10.破滅への予兆
11.月光の雲海
12.天空の城ラピュタ
13.ラピュタの崩壊 (合唱/杉並児童合唱団)
14.君をのせて (歌/井上あずみ)

サウンドプロデュース・作曲・編曲・演奏:久石譲

レコーディングスタジオ:ワンダーステーション、日活スタジオセンター

 

Castle in the Sky (Original Soundtrack)

1.The Girl Who Fell From the Sky
2.Morning in the Slag Ravine
3.A Rowdy Brawl (- Pursuit) 
4.Memories of Gondoa
5.Discouraged Pazu
6.Robot Soldier (Resurrection – Rescue) 
7.Carrying You – Chorus Version
8.Sheeta’s Decision
9.On The Tiger Moth
10.An Omen to Ruin
11.A Sea of Clouds in the Moonlight
12.Castle in the Sky
13.Destruction of Laputa
14.Carrying You

 

Le Chateau Dans Le Ciel
(France, 2003) 9102424

1.La Jeune Fille Tombée du Ciel
2.Un Matin Dans la Mine
3.Poursuite
4.Mémoires De Gondoa
5.Pazu Découragé
6.Le Robot-Soldat (Résurrection & Sauvetage) 
7.Tandis Qu’elle T’emporte  (par le Choeur des Enfants de Suginami)
8.La Décision De Sheeta
9.A Bord Du “Tigre Papillon”
10.Le Présage Des Ruines
11.La Mer Des Nuages Eclairée Par La Lune
12.Le Château Dans Le Ciel
13.L’Effondrement de Laputa  (par le Choeur des Enfants de Suginami)
14.Tandis Qu’elle T’emporte  (par Azumi Inoue)

 

천공의 성 라퓨타 Original Soundtrack
(South Korea, 2004) PCKD 20162

1.하늘에서 떨어진 소녀 
2.슬래그 계곡의 아침 
3.유쾌한 소동 (~추적) 
4.곤도아의 추억 
5.실의에 빠진 파즈 
6.로봇 병사(부활~구출) 
7.합창 너를 태우고 (합창/스기나미 아동합창단) 
8.시터의 결의 
9.타이거모스호에서 
10.파멸의 조짐 
11.월광의 운해 
12.천공의 성 라퓨타 
13.라퓨터의 붕괴 (합창/스기나미 아동합창단) 
14.너를 태우고 (노래/이노우에 아즈미)

 

Disc. 久石譲 『交響組曲 「アリオン」』

久石譲 『交響組曲「アリオン」』

1986年4月25日 CD発売 32ATC-112
1986年4月25日 LP発売 25AGL-3023
1986年4月25日 CT発売 25AGC-2023
1996年1月25日 CD発売 TKCA-70800

 

1986年公開 映画「アリオン」
監督:安彦良和 音楽:久石譲

 

シンフォニーで奏でる壮大な「アリオン」ワールド!
80’Sアニメブームの人気キャラクターたちを描いた人気アニメーター安彦良和
初監督作品「アリオン」を久石譲が壮大な交響組曲で再現!

 

 

音楽解説

この交響組曲「アリオン」のきき方はふたつある。ひとつはここでの久石譲の音楽のうちに「アリオン」のドラマを感じとりながらきくきき方である。もうひとつは、映画「アリオン」のことを考えずに、独立した音楽としてきくきき方である。もし、映画「アリオン」を見ている人にしか、この音楽が楽しめないということであれば、交響組曲「アリオン」は、音楽作品として自立していない、映画「アリオン」に従属したものということになる。しかし、ここできける音楽は、たとえ映画を見ていない人にも、充分に楽しめる。それというのも、この音楽が音楽として、奥行きの深い、しかも魅力にみちたものだからである。

交響曲の多くは4楽章で構成されるが、交響組曲の楽章数は、ここでのように4楽章をこえるものも少なくない。交響組曲「アリオン」は、それぞれの楽章がすこぶる個性的な音楽による6つの楽章でなりたっている。

第1楽章をきいたききては、この音楽の作曲者である久石譲が、その若き日に、フィリップ・グラス、テリー・ライリー、あるいはスティーブ・ライヒといったような作曲家によるミニマル・ミュージックに強い影響を受けたことを思い出すかもしれない。そして、同時に、ここで久石譲は、シンフォニー・オーケストラならではの、まさにシンフォニックな表現力を十全にいかして、スケールの大きい音楽を展開している。

つづく第2楽章では、打楽器を積極的に用いて、リズム的な楽しさを充分に味わわせてくれる主部と、フルートの響きを有効にいかして、抒情的な音楽をきかせる中間部との対比が、効果的である。

第3楽章は、ミステリアスな雰囲気をたたえながら、しかも推進力にとんだ音楽によって、開始されている。この音楽のあきらかにしている緊迫感は、ききてをひきつけずにはおかないものである。つづく中間部では、ほの暗い抒情性が示された後に、さらに冒頭の部分が再現して、第3楽章はしめくくられている。

第4楽章では、静かなピアノのモノローグをきくことができる。この交響組曲「アリオン」のなかで、久石譲のメロディー・メイカーとしての本領がもっともストレートに発揮された部分ともいえるであろう。

第5楽章では、ブラスの力強い吹奏がフィーチャーされていて、勇壮な音楽が展開されている。しかし、ここでは、ブラスの力にみちた響きを弦楽器が支えているために音楽としての厚みがましていることに、注意するべきであろう。

しめくくりの第6楽章は、さまざまな性格の音楽を巧みに構成して、変化にとんだ音楽となっている。この壮大な交響組曲にふさわしい華やかさにみちた、フィナーレらしい音楽によっていて、とりわけ最後のもりあがりは素晴らしい。

黒田恭一

(’86年リリース オリジナル・ライナーノーツより転載)

(CDライナーノーツより)

 

 

(LPジャケット)

 

 

久石譲 『交響組曲「アリオン」』

1. 第一章
2. 第二章
3. 第三章
4. 第四章〈レスフィーナの唄〉
5. 第五章
6. 第六章

プロデューサー:久石譲

作曲:久石譲
指揮:中谷勝昭
演奏:久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団

録音スタジオ:アバコクリエイティヴスタジオ

 

Disc. 久石譲 『炎のアルペンローゼ Vol.2 シンフォニー編』

久石譲 炎のアルペンローゼ シンフォニー編

1985年7月25日 LP発売 25AGL-3008
1985年7月25日 CT発売 25AGC-2008
1987年6月25日 CD発売 30ATC-152
2000年4月26日 CD発売 TKCA-71918

 

1985年放送 TVアニメ「炎のアルペンローゼ」
原作:赤石路代 音楽:久石譲

 

久石譲が音楽を担当した名作少女アニメ・サントラ盤よりオーケストラアレンジされた楽曲を収録したシンフォニーアルバム。

 

 

「アルペンローゼ」シンフォニー編解説

最近にしては珍しい本格的なドラマ・ヒロイン”ジュディ”は、あくまで純粋、かわいくてけなげ(今時いるか?そんなオンナ!)そのうえ記憶喪失で思いっきり星目がち、思わず音楽を引き受けてしまった。

ヨーロッパ調の物語である為か、クラシックにこだわってみたかった。そこでできたのがこのアルバム、学生時代を懐しみつつ、格調高くできました。

A面のシンフォニーは、三楽章よりできていて、ピアノをフィーチャーした、ややピアノ協奏曲スタイルになっている。第三楽章は、かのベートーヴェンかブラームスか…とまではいかなくとも、「歓喜のうた」「民衆のうた」となっております。これは物語の展開上、この曲が演奏されている時にジュディたちがドイツ軍の手を逃れてスイスに逃亡するというほとんど「サウンドオブミュージック」みたいな場面に流れるのです。やった!

又、B面はシンプルにピアノソロとまさにクラシックのウタ、それもソプラノ、いいですねー。一曲目の「夢のつばさ」(メンデルスゾーンの歌のつばさではありませんよー)は、ショパンのワルツ風にアレンジされて、華麗に仕上がっている。2曲目のレオンのテーマは、この物語に登場する天才作曲家のためのもので、ほとんどリチャード・クレイダーマンの如き世界に入りこんでました、ロマンチックに泣かせます。(これから僕のことをレオン久石と呼んで下さい。アハハ…)。3、4曲目は久石さんちの子供のお母さんが学生時代に作った曲です。日頃午前サマの毎日の埋め合わせか、はたまた……。「いえ、純粋に曲で選んだのです。ハイ。」5曲目は「アルペンローゼの歌」、ソプラノの佐藤ひさらさんのすばらしい歌声が、心にしみこんでくるようですね。ほとんど名曲の味わいと、作曲者は浮かれています。

最後にこのアルバムすべてのピアノを弾いた中川理映子、若冠22才の新進ピアニストで、久石譲の秘蔵っ子的存在。レコーディングの時も、スタジオ内で賞讃の声が上がった訳で、そのむしろ男性的な弾き方は、やや荒っぽいが大変ダイナミックであると言えます。

以上様々な話題を提供しつつ(どこがだ!?)このアルバムもめでたく完成しました。

おめでとう

1985.5 プロデューサー久石譲

(CDライナーノーツ より)

 

 

炎のアルペンローゼ シンフォニー編 LP

(LPジャケット)

 

 

久石譲 炎のアルペンローゼ シンフォニー編

1. オーストリア交響曲第1楽章
作曲:藤澤文女 編曲:平部やよい
2. オーストリア交響曲第2楽章
作曲:久石譲 編曲:梶谷脩
3. オーストリア交響曲第3楽章
作曲:久石譲 編曲:梶谷脩
4. 夢のつばさ (メモリー)
作曲:久石譲 編曲:福岡保子
5. 夢のつばさ (ロマンス)
作曲:久石譲 編曲:平部やよい
6. 追憶の薔薇 (レオンハルト=アッシェンバッハ)
作曲:久石譲 編曲:福岡保子
7. 幼な心
作曲:藤澤文女 編曲:藤澤文女
8. 若草の願い
作曲:藤澤文女 編曲:藤澤文女
9. アルペンローゼの歌 (歌:佐藤ひさら)
作詞:赤石路代 作曲:久石譲 編曲:福岡保子

音楽制作クレジット表記なし

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ ドラマ編 風の神さま』

1984年4月25日 LP発売 ANL-1901~2
1984年4月25日 CT発売 38AN-1
1989年2月25日 CD発売 24ATC-176~7
1993年7月21日 CD発売 TKCA-70135

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

本作品は映画本編を映像なしの音声のみで聴く作品である。BGMはもちろんセリフや効果音などもそのまま収録されている。

 

 

不幸な時代でもナウシカは存在します 宮崎駿監督・談

この作品の音響監督を斯波重治さんにひき受けてもらって、よかったと思ってます。声優さんと話す時に、あれだけ言葉を持って意味を語る人はいないですよ。音響効果の人たちも遠距離マラソン・ダビングをよくやってくれました(笑)。また、久石譲さんが先行してイメージレコードを製作してくれたので、音楽を考えるのに非常に助かりました。

ナウシカって少女は変な子なんです。蟲と人間を区別しないんですよ。もうちょっとで蟲の世界へ行ってしまいそうで、だけどギリギリのところで人間世界にとどまっている人物です。髪の毛が赤いのは-クラリスや小山田マキの血統だと言われるんだけど(笑)。-黒はラナでやっちゃってるから。金髪なんかだと人種が確定されちゃうでしょ。赤なら日本人にもいるしね。ホントは肌の色も、もっと濃くしようという意見もあったけれど、これはやめました。

城の斬り合いでも人を殺してしまうんですよね。でも、幸いなことに、うれしそうな顔をしていないでしょ。でも、杖は使っても刀では斬ってないんです。刀は持たせたくなかった。ナウシカは刀を手にしたけど、ユパが割って入らなくとも、刀を使うことはなかったでしょう。そういう人だと思います。

……これは、むずかしい作品でした!(嘆息)

彼女は最終的には、世俗の幸福は得られない人です。たとえば、自分が死ぬ時に、気に入っている娘に、自分の愛する男の子どもを生んでくれと平気で頼んじゃうような、嫉妬とかいう感情が最終的には無くなってしまうタイプじゃないかと思う。

現実にナウシカのような少女がいたら、たしかに集団から疎外され迫害されるでしょう。だからと言って、なぜ、フィクションの世界のこういうキャラクターまで、みんなは躍起になって否定しようとするんでしょうね。こういう人間、みんなキライですか?

昔の物語の主人公は単純明快でした。でもそれを見ていた人々が単純明快だったわけではないですよ。やっかみやら、コンプレックスやら、イジイジしているのやら、色んな人間がいて、そうじゃない主人公を見て、こういう風にやれたらなあ、とか思ってたわけでしょ。

そんな冒険物語を読んでね、人をいじめてばっかりいたような奴が、いじめんのやめたかっていうと、それは嘘ですよ。それとは全然、別なことなんですよ。人間ってのは実に不思議なもんで、自分は悪役のほうに似てるとは思わないんだから(笑)。

いまは、そういう意味では、不幸な時代なんだと思います。時代のせいにはしたくないんですけど、自分の身のまわりにいるイヤな奴とかそんなのを登場させて、作品を作ってもしょうがないですよ。最後に必要なのは人生を肯定していく活力です。だから、僕の作品の主人公みたいな人間はいないと言われると、すごく腹が立ちますね(笑)。

構成 by 鳴海丈 59年3月12日

(CDライナーノーツより)

 

 

サウンド(秘)情報

★最初の腐海のシーンで、「王蟲の~」というナウシカのセリフが2回つづくが、アフレコに立ち会っていた宮崎監督は、これを聞いて、「これが本当のオーム返しだな」

★アテレコは2月下旬に赤坂の新坂スタジオで、中1日休んで、4日間にわたって行われた。総勢26名の声優さんが出演しているが、4日間通してスタジオに通ったのは、ナウシカ役の島本須美さんだけである。

★登場人物が防瘴マスクをつけているシーンでは、実際にマスクをつけてアテレコが行われた。これは1個13円の紙コップに50本100円の輪ゴムをつけたもの。底の部分に星形の切れこみがいれてあり、声が響きすぎないように中にガーゼが張ってある。これをつけた島本さんは、さかんに「まるでブタみたい!恥ずかしいっ!!」

★音響監督は「科学忍者隊ガッチャマン」「未来少年コナン」「うる星やつら」などのベテラン、斯波重治さん。俳優の経験がる斯波さんは、「うる星~」では時々、ガヤのシーンなどで声を入れているそうだ。なお、「ナウシカ」と同時上映の「名探偵ホームズ」も斯波さんが録音を担当している。

★風の谷の少年役で出演している鮎原久子ちゃんは、「ラジオアニメック」のレギュラー。自分の出番を待っている時に、出演者に挨拶をしてから「番組を聞いてくださいね」としっかり宣伝をしていった。

★宮崎監督と高畑勲プロデューサーは、4日間、アテレコに立ち会った。いつものクセで宮崎監督は、終始、椅子の上にアグラをかいたままだった。

★「ナウシカ」にはヒゲのある人物が多く登場し、口の動きが見えないので、アテレコがむずかしい。ユパ役のベテラン納谷悟朗さん、大型船墜落のシーンでセリフが合わず、「あの最後の口がパカッと開くのがおかしい」それは木の葉です、と教えられて、「口に見えたんだよ…あっ!そうか!ヒゲで最初から口は見えないんだ!!(笑)」ナウシカの父、族長ジル役の辻村真人さんは、城おじのニガもアテしている。また、トエトと少女C役の吉田理保子さんは、宇宙船に避難する村人の中の老婆もアテた。

★少女時代のナウシカの演技を宮崎監督は絶賛している。父親を殺されて逆上、立ち回りになった時の気合もすごいが、斯波さんは島本さんに「獣になってください」と指導したそうだ。

★宮崎監督は好きなマンガ映画のひとつにソ連の「雪の女王」をあげているが、これを公民館で1回しか観ていないという。「映画を2回観ると、自分のイメージがふくらみすぎていて、なんか、ガッカリすることがあるでしょ?でもね、自分の心の中でふくらんだイメージというのは、明らかに最初に見た時の感動にもとづているわけ。だから、僕はそのイメージを大切にして、何度も同じ映画を観たりしません」そのかわり、公民館で録音してきたテープは飽きるほど聞いたそうだ。「ナウシカ」を劇場で1回しか観なかった人も、このCDは何回も聞いてください。

END

(CDライナーノーツより)

 

 

《LP盤初回特典》
・島本須美ポートレイト
・B2ポスター
・AR台本
・4頁カラーグラフ

風の谷のナウシカ ドラマ編 LP

(LPジャケット)

 

風の谷のナウシカ ドラマ編

DISC 1
・風使いの娘
・風の谷

DISC 2
・風と人々
・風の神さま

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ サウントドラック はるかな地へ…』

久石譲 『風の谷のナウシカ サウンドトラック』

1984年3月25日 LP発売 ANL-1020
1984年3月25日 CT発売 25AN-20
1984年6月25日 CD発売 35ATC-3
1993年7月21日 CD発売 TKCA-70133
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72717
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10009

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

久石譲による、宮崎駿監督作品最初のサウンドトラック盤。イメージアルバム「鳥の人…」、シンフォニー「風の伝説」を基に新たに録音された映画用BGMを収録。収録は1984年2月。「ナウシカ・レクイエム」のヴォーカルは当時4歳の麻衣が担当している。

このアルバムも、CDについてはしばらく経ってから新ジャケットで発売された。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

美しい自然とナウシカ

美しい自然がまだ残っているから「自然を大切にしよう!」「自然破壊を食いとめよう!」と人々は声を大にして叫んでいる。美しい自然が完全に破壊されてしまったとき、人々は何と叫ぶのか?

映画「風の谷のナウシカ」で宮崎駿が設定した未来の地球の自然-腐海は美しさのかけらも残っていない世界だ。それどころか、有毒の瘴気を発する菌類の広大な森として描かれ、人々が立ち入ることすら許されない。おまけにそこには美しい小鳥のさえずりのかわりに、王蟲とかウシアブという気持ちの悪い巨大な蟲たちを棲まわせている。この蟲たちを、そして腐海を、この時代に生きる人々は、当然のことだが忌み嫌い「自然を大切にしよう!」などとは叫ばない。

だが、野心からこの腐海を焼き払い世界をわがものにしようと企む愚者がこの時代にも登場する。自然を征服し科学文明で繁栄をきわめようという現代人に通じるタイプである。ただ、現代とちがうのは、この時代に於いて腐海を焼き払うことは人類の絶滅を意味していたことである。

-ナウシカは人々の無謀なもくろみに絶望する。彼女だけがそのことに直感で気づいていた。ナウシカは身を躍らせ、メーヴェに飛び乗る。そのとき、奇跡が起こる。そして、人々の忌み嫌う、この腐海という名の自然と調和して生きていかない限り、人類の未来はないことをナウシカは人々に指し示す。もしかしたらその未来は、人類が生き永らえるのは、ほんの短い期間だけなのかもしれないというのに。

人間が生きてゆけるのはほんの少しだけなのか、それとも未来永劫につづくものなのかこの映画は語らない。作者自身、まだその答がわかっていないのだ。やがて再開されるだろう連載のなかで、作者自身、その答をさがすのだろう。

それはともかく、前半がかなりたのしげな映画だっただけに、この映画のラスト、宮崎駿の叫びは悲痛である。

(CDライナーノーツ より)

 

 

NAUSICAÄ STUDIO MEMO

●2月7日、TAMCOスタジオ入り。17日間、全60曲以上にのぼるサントラのレコーディングの始まりだ。映画公開は3月11日だからギリギリのスケジュール。ディレクターの荒川さんの顔もヒキつろうというもの。

●すでに監督の宮崎駿さん、プロデューサーの高畑勲さんとの打ちあわせは終了。基本コンセプトは、前作のイメージアルバム「鳥の人…」でいこうと決定している。このレコードに付属している楽譜をはじめとする、いくつかの主題を、シーンごとに割りふっていく。

●作業はビデオになったラッシュフィルムを観ながら行なわれる。まず曲を入れるシーンの長さをはかり、曲の秒数を決定。これをMC-4というコンピューターに入力すると、秒数にあわせて、「キッコッコッ、カッコッコッ」というリズムガイドが打ち出される。これに合わせて、シーンのイメージを曲にしていくという手順。久石さんの演奏が24チャンネルのマルチレコーダーによって、ひとつずつ重ねられていく。仕上がったところで、ビデオを再生しながら曲のチェック、スタッフどうしで意見を出し、手なおしを加えて完成。

●「たとえ、ラッシュフィルムでも、画面があると、曲作りにすごくプラスになるね」と久石さん。アニメに限らず、現在のサントラの曲づくりでは、画面なしで、シナリオと秒数だけで作曲してしまうケースが多い。ラッシュフィルムのおかげで、メーヴェの飛翔にあわせて曲想を換えていくといった、きめ細かい作業を行うことができた。

●後半の「王蟲との交流」「ナウシカ・レクイエム」に聞かれる女の子の声は、久石さんのお嬢さん、麻衣ちゃん(4歳)。幼年時代のナウシカと王蟲との交流あたたかく表現しようというわけ。電子楽器を中心とした、とかく無機質になりがちなスタジオワークでの曲作りに、ライブな響きが加わった。

●2月15日、C・A・Cスタジオにて、フェアライトCMIを使ってレコーディング。これはコンピューターをフルに活用した万能電子楽器とでもいうべきもの。価格1200万円ナリ。「王蟲との交流」での、コーラスとストリングス系の音がこれ。ウクツシイ!

●2月20日、久石さんの演奏による録音はすべて終了し、にっかつスタジオにてオーケストラ録り。ビデオの画面に合わせて、久石さんから指揮者に細かい指示が送られる。シンフォニー編アルバム「風の伝説」とは、また違った生の迫力をもった曲が仕上がった。

●2月21日から24日まで、一口坂スタジオでミックスダウン。24チャンネルの音を2チャンネルの音に組み上げていく。そして完成!

●久石さんは語る。「ナウシカとは、イメージアルバムから数えると3枚の作品、約8か月間にわたる長いつき合いでした。一つの作品に対して、ここまでじっくり取り組めたことは大変満足しています。しかも、「ナウシカ」という作品のすばらしさ!これは映画を観ていただければ充分に分かっていただけるでしょう。本当に充実した仕事でした」。

(CDライナーノーツ より)

 

 

「音楽のつけ方が普通の映画とは違う場所で入れているんですよね。感情の起伏につけるのではなく、状況的なものにつける。ユパが谷へ降りてくるシーンなんかで突然音楽が盛り上がっているでしょ?ああいうところで目いっぱい音楽を使って、そのかわりセリフの入るところや効果音の生きるところにはなるべくBGMを入れないというポリシーですね。

つまり、音楽をナウシカの目を通して入れているんです。ナウシカの感情につけるのではなく、ナウシカが見て感じるものに入れていったわけで、そうやってアニメの虚構の状況というものを浮き出させようとしたんです。わりと成功したんじゃないかと思いますよ」

Blog. 久石譲 「風の谷のナウシカ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「当時、宮崎さんはもう40歳を超えていたんですが、仕事のことをこんなに夢中になって話せるおじさんがいたんだった驚いたのを覚えています(笑)。例えばセル画のことをひとつ取っても、イスに飛び乗って説明したりしているんですよ。ただ、僕は当時、全くアニメについて知識がなかったので、宮崎さんがカリスマ的な存在ということすら知らなかった(笑)。もうその時点で、あの有名な「ルパン三世 カリオストロの城」を作っていたのに……。でも、結果的にはそれが良かったのかもしれないですね。気負わずに済みましたから(笑)」

久石さんの手掛けたイメージ・アルバムを高く評価した宮崎監督は、当時まだ新人だった久石さんを本編のサウンドトラックにも起用、ここから今や切っても切れない関係となった両者のコラボレーションが始まった。

「自分の中で、初めて明確に映画音楽というものを意識したのは「風の谷のナウシカ」だったんです。映画音楽と自分のソロ・アルバムなどとの最も大きな違いは、映画というのはあくまで監督の世界だということだと思います。ですから、音楽を作るときも、自分の思いだけではなく、監督がどういう世界を作りたいのかということがフィルターとして必ず入ってくるのですが、そのフィルターがすごい人であればあるほど刺激を受けて、そこから新しい自分を発見できるんですよ」

ちょうどそのころ、音楽制作の面でも大きな転機が訪れた。サンプラーとの出会いである。

「「ナウシカ」をやってきたときに、知り合いの人が持っていたFAIRLIGHT CMIを初めて使ったんです。「人間の声みたいな音が出るんだ」って聞かされていたんですが、”そんなワケない”って思っていた。ところが、実際に使ったら本当だったので驚きましたね。そして、「ナウシカ・レクイエム」という曲の歌の部分のバッグを全部FAIRLIGHTで作ったんです。その後、これからはきっとこういう機材がメインになると思って、千数百万円を出してFAIRLIGHTを購入しました。清水の舞台から10回くらい飛び降りるような気持ちでしたね(笑)」

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

久石譲の初参加

音楽の久石譲は、当初イメージアルバム「鳥の人…」限定の担当であった。当時久石は、テレビシリーズのアニメーション用音楽を量産していた。それらは一様に、軽快なシンセサイザー音楽がメインであった。それは、久石の本業であったミニマル・ミュージックの傍らで取り組んだアルバイト的余技と言ってもよい。

当時、アニメーション化されていない人気漫画を題材としたイメージ音楽や音だけのドラマをアルバムとして発売する企画が流行していた。徳間も「アニメージュ・レコード」を立ち上げ、久石は様々な形で起用された。久石は徳間系列のジャパン・レコードからアルバムをリリースしており、近しい関係にあった。徳間発の人気漫画『アリオン』『バース』『ナウシカ』のイメージアルバムはいずれも久石に打診され、後二作が実現した。83年夏、宮崎は打ち合わせに訪れた久石に作品を熱心に解説し、請われて後日「腐海」「メーヴェ」など15個のキーワードを手渡した。久石の宮崎に対する第一印象は「素朴な手造りの人間性」であった。

「当時、作曲で苦労したことはない」と記す久石は、1カ月半でレコーディングまで終えてしまった。実質的には百数時間、スタジオに籠もって仕上げた。メイン・テーマであるピアノ曲「風の伝説」は、わずか30分で書き上げたという。久石が心がけたのは、シンセサイザーでありながら、「アコースティックで広がりのある音」に仕上げることであった。このため、民族音楽で用いられるダルシマ、ケーナなども使われている。

出来上がったアルバムは、静かなピアノ曲「風の伝説」、少女のハーモニー(当時4歳の久石の娘が歌唱)がかぶる「ナウシカ」のテーマ「はるかな地へ…」「遠い日々」、アップテンポのデジタル曲「メーヴェ」(本編未使用)「土鬼軍の逆襲」(本編の戦車シーンで使用)、エスニックな民族音楽風の「王蟲」(王蟲登場シーンで使用)など多彩な要素を備えていた。この段階で既に、ピアノによる主題曲、エスニ ック調、デジタルという後の久石・宮崎コンビ作の三大要素は出揃っていた。高畑と宮崎は久石のメロディを褒め称えた。二人の感想により、それまでサウンド中心に発想して来た久石は、初めてメロディ・メーカーとしての自分に才能に気づいたという。

本編音楽は既に別人に決まっていた。しかし、久石のアルバムを聴きながら制作を続けていた宮崎は、本編音楽に久石を強く推し、高畑もこれを尊重して関係者を説得。音楽の人選は大もめとなったが、84年早々最終的に久石に決定した。久石は、イメージアルバムの各曲を1月の2週間で「交響曲」に仕立て直し、再度アルバム 「風の伝説」をレコーディングした。おそらく本編には一段とスケールアップした音楽が欲しいという高畑・宮崎の意図があったのだろう。久石はオーケストラ50名の現場録音を初体験した。本編には、イメージアルバムとシンフォニーの双方が生かされた。

ほとんどのアニメーション作品は、完成画面が白紙の状態でシナリオと秒数に合わせて作曲が行われ、あとは編集で適宜各曲を切り刻まれて使用される。久石もそうした経験が多々あったが、今回は違った。多くはラッシュの未完成画面だったが、極力シーンに秒数を合わせて繊細に一曲一曲を仕上げた。17日間で全60曲以上を録音、2月24日に音楽は完成した。

久石は各シーンの選曲にもこだわりを見せた。冒頭部でナウシカが滑走し、メーヴェで谷へ帰るシーンにメインテーマが大音響でかぶる。これは久石が提案し、周囲を説得して実現したものだ。メインテーマの同様の使い方は、傷ついたウシアブと共にナウシカがメーヴェで空へ舞い上がるシーンでも見られる。しかし、こうした努力にもかかわらず、完成させた楽曲が「一部のシーンで切り刻まれて、とてもがっかりした」という。久石は、この苦い教訓を経て、さらに成長を遂げることになる。

久石は、『ナウシカ』のために約8カ月で3枚のアルバムを制作し計80曲以上を作曲した。「イメージアルバム」「シンフォニー」「サントラ」という連作によって、本編音楽を完成度の高いものに仕上げていくという贅沢な行程は、以降の宮崎作品の定形となっていく。これは、制作母体の徳間書店が音楽部門・徳間ジャパンを有していたこととも深く関わっている。とはいえ、売れもしない同類商品を販売ルートに出すことは許されない。『ナウシカ』の各アルバムは長期間ヒットチャートにランクインし続けた。長寿商品を生み出すほどの作品の生命力があって初めて連作が成立したとも言える。

(書籍「宮崎駿全書」より)

 

なお上の書籍には、主題歌に関する経緯について、使用したかった楽曲のこと、オリジナル主題歌制作を試みたこと、最終的にインストゥルメンタル「風の伝説」メインテーマが使われたことなどの詳細も記されている。

 

 

 

鈴木:
イメージアルバムというのは高畑さんの発案。当時の日本映画って映像が出来てから慌てて音楽をやる。しかも期間にして1日か2日、それで映画音楽をつけなきゃいけない。つまり音楽を重視してこなかったんですよ。それを高畑勲という人は、その歴史を変えようと。音楽にたっぷり時間を作ろうと。最初自由にイメージして音楽を作ってもらう。それで図々しいこと考えたんですよ。作ってもらったなかに作品に合う良いものと悪いものがある。そうすると映画音楽を当てはめるまでに2回チャンスがある、音楽が充実する。それが高畑さんの考えだった。

数多くいる候補の中から「久石さんがいい」って高畑さんが言い出した。高畑さんの決め手は「久石さんは教養がある。要するにクラシック音楽の勉強をしてる。その基礎があると、映像に音楽を合わせてもらう映画音楽をつくるのにその教養が役に立つに違いない。それがないと注文しにくい。」って言ったんですよ。音楽を聴いて高畑さんはそれを発見するんですよ。周りの人たちがみんな反対するなか、そこが高畑勲のすごさ。ここで決まっちゃうんですもん、宮崎・久石コンビ。

イメージアルバムを作るときに、高畑さんが宮崎に頼んだのが、タイトルとイメージを文章にして渡すこと。こんな感じの曲があるといいというのを10個くらい書いた。だからこれも高畑さんが考えたこと。イメージアルバムを最初に聴いたのは僕と高畑さん。高畑さんは「いける」って言ったんですよ。その後宮崎に聴いてもらって一発で気に入った。当時はカセットテープ、宮崎はそれを一日中大音量で聴くわけですよ。しかも朝9時から午前4時まで同じテープを延々鳴りっぱなしなんですよ、周りは静かに作業してるなか。

久石:
当時はあまり時間がなくてスタジオにこもって作ってたんだけど、実は原作難しくて理解できなかった。今考えると逆に素晴らしいことなんだけど、いい映画ってそうなんだけど、説明を結構省いているから。これは何なんだろうと思ったことを徳間の関係者の人がその都度、これはこうです、これはこうです、って説明もらって。それで一応かたちになったっていう。

鈴木:
忘れちゃいけないのが、高畑さんは「オーケストラでやりたい」と。当時、日本の映画音楽でオーケストラなんてなかったですよ、編成小さかったですもん。結局、イメージアルバムと本編のサントラ、加わった楽曲もあるけれど基本は変わらなかったですもんね。それでいうと、最初からもう気に入っちゃったんですよ。

久石:
イメージアルバムの時が、当時流行りの打ち込みの音で作ってた曲もいっぱいあった。高畑さんはそこから、これがオーケストラに変わればもっといいというのを見抜かれたんですね。

Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)

 

 

 

風の谷のナウシカ LP復刻

(LPジャケット)

 

久石譲 『風の谷のナウシカ サウンドトラック』

1. 「風の谷のナウシカ」〜オープニング〜
2. 王蟲の暴走
3. 風の谷
4. 虫愛ずる姫
5. クシャナの侵略
6. 戦闘
7. 王蟲との交流
8. 腐海にて
9. ペジテの全滅
10. メーヴェとコルベットの戦い
11. 蘇る巨神兵
12. ナウシカ・レクイエム
13. 「鳥の人」〜エンディング〜

 

EXECUTIVE PRODUCER: KOKI MIURA
ASSOCIATE PRODUCER: HISAO HIRATA
PRODUCED by JOE HISAISHI
DIRECTED by MASARU ARAKAWA
MUSIC COMPOSED AND ORCHESTRATION by JOE HISAISHI
RECORDING AND MIXING ENGINEER: MASAYUKI HAYASHI, TAKEO SUZUKI
RECORDING at TAMCO st. HITOKUTHI ZAKA ST. NIKKATSU at C.A.C st
TECHNICAL ASSISTANT: KAORU NASHIMOTO

 

Nausicaä of the Valley of the Wind (Original Soundtrack)

1.Nausicaä of the Valley of Wind – Opening theme
2.Stampede of the Ohmu
3.The Valley of the Wind
4.The Princess Who Loves Insects
5.The Invasion of Kushana
6.Battle
7.Contact with the Ohmu
8.In the Sea of Corruption
9.Annihilation of Pejite
10.The Battle Between Mehve and Corvette
11.The Resurrection of the Giant Warrior
12.Nausicaä Requiem 
13.The Bird Man – Ending theme

 

바람계곡의 나우시카 Original Soundtrack
(South Korea, 2007 CD) PCKD-20201

1.바람계곡의 나우시카
2.오무의 폭주
3.바람계곡
4.곤충을 사랑한 공주
5.크샤니의 침략
6.전투
7.오무와의 교류
8.부해에서
9.페지테의 전멸
10.부활한 거신병
11메베와 콜베트의 전투
12.나우시카 진혼곡
13.하늘을 나는 사람

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

1984年2月25日 LP発売 ANL-1017
1984年2月25日 CT発売 25AN-17
1984年5月25日 CD発売 35ATC-2
1993年7月21日 CD発売 TKCA-70132
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72718
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10010

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

「ナウシカ」の名曲の数々を、約50名のオーケストラで再現したシンフォニー編。シンフォニー・バージョンの制作は通常はサントラの後だが、「ナウシカ」のみはサントラ録音前の1983年11~12月に、主にイメージアルバムの曲をベースにして制作された。

このアルバムも、CDについてはしばらく経ってから新ジャケットで発売された。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

解説

人類の最終戦争があって1000年、地球には高度に発達した産業文明の遺産と歪んだ自然、そしてひとにぎりの人類が生き残った。そのような世界で、人類はどのように生きながらえ、どのような思想を持とうとするのか。再びなぞらえる人類の前史、そして繰り広げられる戦闘。人類は窮極的な最後の地球絶滅の危機を前にしてもみにくく争おうとする。そこに登場する木々を愛で虫と語り風をまねく伝説の少女ナウシカ。彼女は生きることの素朴な喜びを最も敏感に感じとれる少女として登場し、たったひとりの力でこの未来の地球を救おうとする-。

原作は「未来少年コナン」「ルパン三世・カリオストロの城」のアニメーション演出家・宮崎駿がアニメ雑誌「アニメージュ」(徳間書店)に好評連載中の(現在は中断)人気オリジナル・コミック。娯楽大作として、日常性に支配された昨今のマンガでは味わうことのできないダイナミックな世界を描き、テーマ的にも環境汚染・自然破壊・エネルギー消費など現代社会の抱える大問題とまともに対応したことで評判を呼んだ話題作である。

今回のこのCDは、「さすがの猿飛」「愛してナイト」の作曲家久石譲がその原作および宮崎駿の伝えるメッセージをもとに作ったイメージ・レコード集のシンフォニー盤である。

なおこのアニメ映画が、㈱徳間書店・㈱博報堂の製作、配給/東映㈱で’84春休みに公開され、大好評を博した。また、原作者の宮崎駿自身が脚本・監督を担当してこの映画化に取り組んだことでも注目を集めた。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ナウシカへのクラい日々・遠い日々… 久石譲

ナウシカ- 妙になつかしさを感じさせる響き。その名前の少女が活躍する物語は、未来の出来事であるはずなのに、ギリシア時代よりずっと前から育んだ人間のいわば手造りの歴史を感じさせます。「風のイメージなのです。ドッと吹くのではなくて山あいをスーッと抜けるような…」前作の時お会いした原作者の宮崎駿氏自身にもそういう素朴な手造りの人間性を感じました。

前作のシンセサイザーバージョンでは、約百数十時間スタジオにこもって、プロフィットリンドラム等を使って制作したが、その過程で一番注意した事は、いかにアコースティックで広がりのある音創りをするか、でした。そのために、ダルシマ、ケーナ、等の素朴なニュアンスを出せる楽器をブレンドしてみた。もともと民族音楽が大好き人間としては、それなりに納得ができた。

が、今回のオーケストラバージョンの話があったとき、はっきり言って悩みましたよ。それはシンセサイザーを使っていかにアコースティックで広がり…というコンセプトで作った楽曲をオーケストラを使ってそれをやれば、もろ当たり前の事になってしまうではりませんか!それはオモシロくないし、だいいちオーケストラなんてもう何年も書いていないから、あの恐怖の30段スコアを目の前にしたら卒倒するのではないか等々、色々言い訳を考えつつ、約2週間ピアノの前で、クラーイ生活が続きました。

んで終わって我想うに「やってよかった、コンビニエンス」 シンセのレコーディングと違ってオーケストラは、一曲一時間、約50名のメンバーはダビングなしの全員集合、どんどん録っていくのです。もうそれは大きなスタジオが小さく見えて肘を張れば隣りのバイオリンにぶつかるわ、トロンボーンのスライドをカッコよく延ばせば灰皿は飛ぶわ、ティンパニ叩けば珈琲はこぼれるわ、マイクは倒れるわ、はっきり言ってお祭りなのです。普段の一人コツコツ多重どんぶりとはエラく違うのです。興奮しましたよ。

今はトラックダウンも終わり、かなり良い音の仕上がりに満足しています。それはミキサーの大川氏を始めスタッフの皆さんの協力によるものです。

とにかく聞いてみてください。

(CDライナーノーツより)

 

 

音楽解説

〈風の伝説〉
一陣の風が静かに砂漠を渡っていく……。地球のたそがれの時代に生きたひとりの少女があった。美しく、やさしく、熱い闘志を心に秘め、蟲とすら語りあった鳥の人、ナウシカ。ピアノの旋律がナウシカのメイン・イメージを語っていく。その心を表わすボリュームあるオーケストレーション。風は語る。彼女の物語を。そして、風は聞く人の耳に、一筋の涼感を残して吹きずさっていく。ナウシカは、まさに風のような人であったというプロローグ。この曲が全アルバムのメイン・テーマとなっていく。

〈戦闘〉
進撃する軍団や巨大なメカニック、集団のイメージ。雄々しいだけでなく、哀しみ、苦戦、その中から立ちあがっていく戦隊と情感のあふれるダイナミックな曲が続いていく。その中で押しよせる打楽器の激しいリズムが戦闘のイメージをもりあげる。曲は静かなリズム感へ進み、勝利と平安の予感が。進撃の高まりをリズミカルにもう一度くりかえし、戦いは終局へ向かう。

〈はるかな地へ〉
静かに砂漠を歩く旅人…やがて、その旅人の心の中にわきあがる人々が群れつどい、平和と笑いがうずまく村のイメージ。民族歌的なメロディが広がっていくその心と、さらに大空を静かに飛翔していくナウシカのイメージがだぶっていく。戦うナウシカや人々の心のよりどころである、人々の住む村を予感させ、曲はもりあがっていく。曲全体のバックに、進む旅人の心の躍動が感じられ待ちうける見知らぬ土地への想いがあふれていく。ラストは、眼前にその土地が現われ、まるで朝焼けの中にうかびあがるような鐘のイメージでしめくくられる。

〈腐海〉
りん光発する腐海、ふきだす胞子、異形の者の住む世界-そのオドロオドロしたイメージ、蟲たちのリズム感のイメージが続く。次第に力強く広がっていく生命力のイメージ。リズムの中に、チカチカと光るりん光の処理が印象的。しかし、やがて異形のメロディーの中に、次第に清浄な、汚染された地球を清浄化する生命力があふれていることを、曲が変わり印象づけてゆく。この腐海と人間の折りあいをどうつけていくのか。このキーワードがナウシカであることは言うまでもないだろう。曲は明るさの予感を感じさせ、クロージングしていく。

〈メーヴェ〉
大空を駆けるメーヴェ。雲海をぬけ、視界が一気に広がっていく解放感。メーヴェに乗るナウシカのはずむ表情が手に取るように判るオープニングである。小気味よいメーヴェの飛翔ぶりのイメージが浮かびあがってくる。飛べ!ナウシカ。その自由な心のままに! 前から後ろから上から下から、アップに、ロングに大空を飛ぶメーヴェを空中撮影でとらえるようなリズミカルなビートが印象的。大空をかける主人公の飛翔に、人間の自由をオーバーラップさせる宮崎アニメならではのイメージ曲。

〈巨神兵〉
不気味な導入部-何か異形の、巨大な存在がそこにいる実感。それは次第に力を取り戻そうとしている。不気味なもりあがり。メカニカルな、あくまでも非人間的な作動のイメージ。巨神兵は、その作動を開始する。悪魔の心臓に炎が戻り、目が光をおび、腕が静かに上がり始める。起き上がり、動き始める巨神兵-いかなる者も止めることができない悪魔の復活を感じさせるパワフルなメロディーが続く。かつて地球を7日間で破壊しつくした悪魔の兵器、巨神兵-その破壊のリズム感は再び世界をのみこんでいくのか!? 『動』のイメージの後は、巨神兵の『静』のイメージ曲が続く。それは、腐海の中に残骸となって立ちつくす巨神兵のムクロのイメージか。もうこの悪魔の牙も地球には届かない。巨神兵でさえ悠久の時の流れの前には無力なのか。今はただ腐海の景色の一部として、眠るだけである……。眠る兵士の魂をかなでるメロディーで終幕となる。

〈風の谷のナウシカ〉
風の伝説の導入部から、「風の谷のナウシカ」のメロディーへと入ってゆく。弦楽器と木管楽器の情感あふれるメロディーがナウシカのすがすがしさとその心情をあますことなく伝えていく。

〈遠い日々〉
A面の”はるかな地へ”と同じリズムが静かにかなでられていく。その”はるかな地へ”とは、”平安なる地、理想郷”であることは明らかで、その平和のリズム感が、牧歌的な民族歌調のメロディーの中でくりかえしくりかえし、大きくなっていく。いよいよ、シンフォニー「風の谷のナウシカ」も終幕まぢかである。

〈谷への道〉
弦楽器のメドレーが、終曲を形作り、人間の、人々の、私たちの物語を伝える。風の谷とは、明日の人類の姿であると同時に、永遠に生きる”人間”の住み家である。あらゆる人々に門を開く風の谷。そこには暴力ではなく、やさしさが、生きていく力強さがあり、あふれる人々の喜びと哀しみ、人生がある。これこそナウシカの、我々の住む場所である。第1曲の”風の伝説”をくりかえし、ここにシンフォニー「風の谷のナウシカ」は終っていく。

解説/池田憲章

(音楽解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

風の谷のナウシカ シンフォニー編 LP

(LPジャケット)

 

久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

1. 風の伝説
2. 戦闘
3. はるかな地へ…
4. 腐海
5. メーヴェ
6. 巨神兵〜トルメキア軍〜クシャナ殿下
7. 風の谷のナウシカ
8. 遠い日々
9. 谷への道

 

Nausicaä of the Valley of the Wind – Symphony

1.The Legend of the Wind
2.Battle
3.To the Land of Faraway…
4.The Sea of Corruption
5.Mehve
6.The Giant Warrior – The Tolmekian Army – Her Highness Kushana
7.Nausicaä of the Valley of the Wind
8.The Distant Days
9.The Road to the Valley

 

EXECUTIVE PRODUCER
KOKI MURA
PRODUCED BY MASARU ARAKAWA, JOE HISASHI
COMPOSED AND ORCHESTRATION BY JOE HISAISHI
SONG BY
JOE HISAISHI
HARUOMI HOSONO(M-7)
MUSIC PERFORMED BY T.J.C ORCHESTRA
RECORDING AND MIXING ENGINEER
MASAYOSHI OKAWA
TAKEO SUZUKI(B-3)
RECORDING AT HITOKUCHI ZAKA STUDIO
ALBUM COORDINATION BY WONDER CITY I.N.C
A&R
AKIRA SHIMABUKURO