1988年1月25日 CD発売
ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション vol.3
NEW SOUNDS IN BRASS BEST SELECTION VOL.3
久石譲が編曲を担当した2楽曲「フィール・ソー・グッド」「宇宙のファンタジー」が収録されている。
楽曲解説
1.サウンド・オブ・ミュージック・メドレー
これもブロードウェイに数々の名曲を残したロジャースとハーマンシュタイン二世コンビの代表作。「ドレミの歌」をはじめ、すべてが美しく、ごく一般的に、音楽的に演奏するだけでアピールする。かなり長いメドレーなので、それぞれの曲の特徴を判り易く表現し、変化を持たせることに留意が必要。吹奏楽向きの素材であるし、レパートリーとしても永遠のものである。
2.フィール・ソー・グッド
フリューゲルホーン奏者で曲も作る人気者、チャック・マンジョーネの作品。フリューゲルホーンの美しいソロと、ソプラノ・サックスを中心とした高音木管の掛け合いのディスコ調。大変ハードなサウンドで、めまぐるしいリズムの変化とアドリブは素晴らしく、又楽しい曲だが、演奏するとなるとかなり手ごわい。技術のしっかりした市民バンド向きの編曲といえる。
3.真珠の首飾り
第2次世界大戦中、ヨーロッパ戦線で亡くなったグレン・ミラー大尉は、トロンボーン奏者、指揮者、編曲者として大活躍、ダンス音楽の世界で多くのファンを持っていた。
G.ミラーのサウンドの秘密は、サックス・セクションのリード役にクラリネットを使ったことと、1オクターブの中に、サックスのハーモニーを密集させたことにあった。そして多くのダンス・ミュージックを残したが、「ムーンライトセレナーデ」と共に、この「真珠の首飾り」が有名。
編曲は原曲に忠実であり、吹奏楽でのスイング入門曲としても、ありがたい曲が実現したものである。
4.マジック
美人歌手マリーンが歌い、大ヒットした軽快なロック調の曲。金管セクションが良く鳴り、A.Saxのアドリブを除いたら、さして難しくもなく、極めて調子がよい。ディスクの第1曲目と同様、コンサートのファースト・ナンバーとして好適。
5.ウィー・アー・オール・アローン
77年にヒットしたボズ・スキャッグスのバラード。「二人だけ」という日本語タイトルでも親しまれている。決して力んだ曲でなく、軽く口ずさむ様な愛らしいメロディーが最初フルートのデュエットで始まり、2回の転調を伴いながら全編を各楽器セクションの掛け合いで流している。重たい曲が並んだプログラムの合間にはさみ、気分転換を計る様な演奏に向いている曲。
6.バードランド
このレコードのタイトル”ニュー・サウンズ”と言う言葉からは、正にぴったりのニュー・ミュージックの世界の作品。作曲のジョー・ザビヌルが所属するグループ”ウェザーリポート”は、既成のジャズでもロックでもなく、もっと精神面で訴える分野のポピュラー音楽を追求している前衛的グループのひとつ。
従って編曲も難しく、アドリブも多く、理解しにくい面もあるが、これからのポピュラー音楽の方向を探る意味では、一度チャレンジして見るのもよい。大学や市民バンド、上級向きの作品。
7.ハロー・ドーリー
ブロードウェイでは、毎日いろいろな場所で、いろいろな出し物が上演されている。そんな中には、ピアノ1台だけで伴奏されるミュージカルや、トリオ、カルテット位の編成のバンドを使ったもの等様々であり、その上、上演時間もあっという間のものも多いという。そんな中に何ヶ月もいや何年も続き上演されるようになり、映画化され、海を渡る。これこそブロードウェイのヒット・ミュージカルなのである。
そんな中でもこの曲は、一際高く評価されたミュージカルの主題曲といえるもの。映画、又は実際の来日公演による日本にも紹介されたこのミュージカルは、作詞。作曲をジュリー・ハーマンが担当した1964年の作品。ハーマンは、これによりミュージカル作家としての地位を不動のものにした。
ようこそドーリー、あなたが戻って本当にうれしい、もう二度と行かないと約束して下さい、という大歓迎の歌である。
ところでミュージカルとくれば、歌と相場が決まっているもの。そこで今回のニュー・サウンズでは、合唱付きという試みをあえてしている。(もちろん、これまで、「シング」や「ボルサリーノ」、「オー・シャンゼリゼ」といったようなものはあるが、本格的なものは今回が初めて)
合唱はミュージック・クリエイションというグループが担当している。合唱と吹奏楽、これが又実によい。そして楽しい。コンサートでは合唱が入る事で、会場を爽やかな風が通り抜けたような気持になる事受け合い。ステージ効果もさらにアップするだろう。新しい仲間を加えてのコンサート、さらに吹奏楽の世界が拡がってゆく。楽しみが又一つ増えたような気がするレパートリーである。
8.宇宙のファンタジー
劇画の世界も宇宙ばやりの時代だが、音楽の将来、可能性を追求し続ける黒人グループ”アース・ウィンド・アンド・ファイアー”のヒット曲。題名が示す通り、スケールの大きな曲で、リズムも面白く、若い人達にも演奏の張り合いのあるナウなレパートリーである。リズムが複合しているが、擬音やシンセサイザーの音などの工夫の如何が、聴衆にアピールする鍵となる。
9.ランデヴー
ジャズ・サックス、テレビでもおなじみのナベサダこと、渡辺貞夫が、アメリカのミュージシャンたちと発表したレコードで有名になったサンバ・リズムの曲。
リズム主体、とりたてて特徴が少ないが、演奏には先ずリズム・セクションを確立し、軽快に乗ることが大切。
10.オーメンズ・オブ・ラヴ
人気グループ、”スクエア”のレパートリー。軽快なビートに乗って吹奏楽風のサウンドもたっぷりと楽しめる。木管のスケールはかなり忙しく派手。それにチャイムが重要な効果を出している。演奏に際しては、思い切りの良さが要求される。
11.ナイス・デイ
ヤマハ音楽復興会が提唱する子供たちの自作自演活動、ジュニアー・オリジナル・コンサートの入賞作品。軽快な2ビート、それに中間部の4ビートに乗るトロンボーン・ソロ。又トランペット3部からなるベルトーン効果も面白く、明るく楽しい作品。純粋な子供だからこそ作れるのか、それにしても恐れ入る。
12.ジョン・ウィリアムズ・メドレー
宇宙時代の到来、映画でも先般記録的なヒットとなった「E.T.」はじめ、大型なプロジェクトが続いた。このメドレーは、いずれも同名の映画に使われた音楽をまとめたもので、①E.T. ②未知との遭遇 ③スターウォーズから成っている。宇宙時代にフットするシンセサイザーをバンドに加え、効果を高めておもしろい。ボストン・ポップス・オーケストラの指揮者であり、作曲家でもあるジョン・ウィリアムズの優れた力量は、単なる映画音楽の分野を超越した作品に仕上げ、音楽的満足感を与えてくれている。
演奏はかなり手ごたえがあるが、こんな曲で吹奏楽コンクールに出場してくれるバンドがあったら、素晴らしいことである。
[東京佼成ウィンド・オーケストラ]
昭和35年、東京佼成吹奏楽団として創立、昭和48年に名称を現在の東京佼成ウィンド・オーケストラに改称すると共に、運営方針、編成も改新を進め、進歩的な巾広い活動を続けている我国最高のプロ吹奏楽団である。
現在、ウィンド・アンサンブル活動の提唱者F・フェネル博士を指揮者に迎えており、また”ニュー・サウンズ”は昭和50年以来毎年演奏を担当している。自主制作レコード(佼成出版社)も多く、日本の吹奏楽界に多大な影響を与える立場にある。
[指揮者 岩井直溥]
多感な少年時代を国際都市上海で過ごし、医者になりたかったのに音楽家になってしまったと言う経歴の持ち主。東芝EMI唯一の専属作曲家として数千の作・編曲作品がある。
昭和47年以来、”ニュー・サウンズ”と共に生き、育て続けて来た”ニュー・サウンズ”の生みの親でもある。
単に編曲だけでなく、ポップスの演奏法指導、ゲスト指揮にと全国を走り廻り、温厚かつ軽妙洒脱な人柄と、泉のごとく溢れ続けるアイデア一杯の作品、それに追従を許さぬファンタシー・コンダクティングは、吹奏楽のアイドル的存在となっている。
このシリーズでも、全曲を指揮している。
(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)
1.サウンド・オブ・ミュージック・メドレー The Sound of Music Medley
テーマ THEME ~ ドレミの歌 DO-RE-MI ~ ひとりぼっちの山羊飼い LONELY GOATHERD ~ さようなら、ごきげんよう SO LONG, FAREWELL ~ エーデルワイス EDELWEISS ~ すべての山に登れ CLIMB EV’RY MOUNTAIN
2.フィール・ソー・グッド FEELS SO GOOD
3.真珠の首飾り A STRING OF PEARLS
4.マジック IT’S MAGIC
5.ウィー・アー・オール・アローン WE’RE ALL ALONE
6.バードランド BIRDLAND
7.ハロー・ドーリー HELLO DOLLY
8.宇宙のファンタジー FANTASY
9.ランデヴー RENDEZ-VOUS
10.オーメンズ・オブ・ラヴ OMENS OF LOVE
11.ナイス・デイ NICE DAY
12.ジョン・ウィリアムズ・メドレー JOHN WILLIAMS MEDLEY
E.T.のテーマ E.T. ~ 未知との遭遇 CLOSE ENCOUNTER OF THE THIRD KIND ~ スターウォーズ STAR WARS
編曲:
岩井直溥 1. 4. 6. 12.
久石譲 2. 8.
真島俊夫 3. 10.
小野崎孝輔 5.
三枝成章 7.
中川賢二 9.
森田一浩 11.
指揮:岩井直溥
演奏:東京佼成ウィンド・オーケストラ