Posted on 2017/1/27
ふらいすとーんです。
久石さんの”Symphonic Variation”といえば、「交響変奏曲 人生のメリーゴーランド」(ハウルの動く城より)ですね。そこにいきます、その前に。
「威風堂々」でおなじみのイギリス作曲家エルガー、「エニグマ変奏曲」という作品があります。「エニグマ(謎)」と名前にあるように、2つの”謎かけ”が込められた作品です。といっても、そこは「威風堂々」のエルガーさん、とてもキャッチーで親しみやすいメロディです。1つは、各変奏に付けられたイニシャルで、それはエルガーの友人たちへの肖像になっていて、謎解きは完了しています。もう1つは、「この変奏曲は、主題とは別の、作品中に現われない謎の主題も使われている」というものだそうで、未だ解明されていません。うーん、深すぎてよくわからない。(^^;)
と、ご紹介したような背景は、この作品を好きになってから調べたことで、聴いたが吉日、そんな作品です。僕のなかの”愛聴盤探し”に火がついて、一時期探しては聴いてをくり返していました。なかなかしっくりくるものがなく、国内盤では飽き足らず、輸入盤にまで手を出してしまう始末。おかげで愛聴盤にめぐり逢うことができました。
「エニグマ変奏曲」 おすすめポイント
主題(テーマ)が1曲目にあり「このメロディが変化していくんだな」と、とてもわかりやすいです。各変奏で長調になったり短調になったり、主旋律(メロディ)だったり対旋律(伴奏)にまわっていたり、高音楽器や低音楽器で奏でられていたり、テンポや拍子が変わっていたり。でも、メロディが見つけやすい、聴いていて楽しいです。
ひとつのメロディが表情豊かにドラマティックに展開していきます。オーケストラ楽器の魅力、オーケストレーションの魅力を味わえる作品です。各変奏とても短い曲で、めまぐるしく展開する映画のワンシーンのよう。いいな!と思ったのも束の間、すぐに次の曲へ移っていきます。もうちょっと聴いていたかったなあと思うほど、この先の展開も聴いてみたかったなあと思うほどに。あれ、なんだか久石さんのSymphonic Variationのほうを言っているみたい…、いいえ「エニグマ変奏曲」のお話です。
「エニグマ変奏曲」のなかでも有名なのが、「第9変奏 “Nimrod”(ニムロッド)」です。ほんとに美しい曲です。エンドレス・リピート、心おだやかに時間がとまります。単独でコンサートのアンコールピースとしても人気のある名曲です。
ニムロッドとは、エルガーの親友アウグスト・イェーガーの愛称で、ベートーヴェンに関する議論をしながら、イェーガーがエルガーの音楽活動を激励した一夜の雰囲気を描いている、そうです。その夜、イェーガーが口ずさんだメロディこそ、「ピアノ・ソナタ第8番 悲愴 第2楽章」/ベートーヴェン、誰もが聴いたことのあるあの旋律です。エルガーはエッセンスとして取り入れているとのこと。(エピソードはかけ足抜粋しています)
そうなの?そんなことになってる?!と知って楽しむ音楽ですね。たしかに「悲愴」のあのメロディが、エニグマ主題のなかに見え隠れしてきます。「悲愴」の「ドシミー、レ、ドミラシミー♪」このシの音、「第9変奏」の「ソミラーファーシーファー、ファラソーシーミーファーレー♪」このファーの音を1オクターブ上げてみると、「悲愴」のメロディと同じ音並びになります。曲冒頭からはじまる旋律です。…伝えきれていない。
♪「悲愴」第2楽章のこの音
♪「第9変奏」のこの音 (を1オクターブ高く響かせてみる)
*僕の解釈ではなく音楽番組で紹介されていたことです。ご安心ください♪
ほんとだ!「悲愴」のメロディとかぶる!と目からウロコでした。そりゃ、心揺さぶられる曲なわけです。ぜひ、第9変奏だけでも聴いてみてほしい、きっと久石さんファンの心には響く、美しい曲です。「エニグマ変奏曲」をとおして聴いてみたいと思ったら、僕の愛聴盤はこちらです。4,5つほどCDを聴き比べて、音の良さ、管弦楽のバランス、演奏の抑揚、ダイナミクスや揺れ、この作品の持ち味を最大限表現できてる、と僕の耳は思ったようです。輸入盤です。もしほかに名盤ご存知の人は、教えてください、飛びつきます!
エルガー:「エニグマ変奏曲」
指揮:ノーマン・デル・マー
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Elgar:Enigma Variations
Conducted by Norman Del Mar
Performed by Royal Philharmonic Orchestra
主題 Theme 1:32
第1変奏 “C.A.E.” 1:54
第2変奏 “H.D.S-P.” 0:54
第3変奏 “R.B.T.” 1:22
第4変奏 “W.M.B.” 0:31
第5変奏 “R.P.A.” 2:05
第6変奏 “Ysobel” 1:24
第7変奏 “Troyte” 0:59
第8変奏 “W.N.” 1:43
第9変奏 “Nimrod” 3:56
第10変奏 “Dorabella” Intermezzo. 2:38
第11変奏 “G.R.S.” 0:57
第12変奏 “B.G.N.” 2:53
第13変奏 “* * *” 3:07
第14変奏 “E.D.U.” Finale. 5:08
さて、「交響変奏曲 人生のメリーゴーランド Symphonic Variation “Merry-go-round”」。映画『ハウルの動く城』メインテーマ曲にして、映画全体を一貫して響かせるあのメロディです。あまり説明の必要ない人気曲、紹介はこの辺で大丈夫ですね(^^)
僕は、最初「人生のメリーゴーランド」を聴いたとき、なんて優雅で胸躍るワルツなんだろう、と聴き惚れていました。さらにサウンドトラックを聴いて、映画を観て、あの旋律がこんなに表情豊かに奏でられるんだ、びっくりうずうず、開いた口が開いた耳がふさがらない、幸せ気分でした。それはまるで、一つの種からいろんな花が咲くようで、一つの卵からいろんな生き物が飛び出すようで。
サントラ盤では楽曲名が違うので、どれがあのメロディをモチーフにしてたっけ、メモしながらリストアップ、「人生のメリーゴーランド」プレイリストで、めくるめく七変化を聴き楽しんでいました。そうこうしているうちに登場したのが、「変奏交響曲 人生のメリーゴーランド」です。
宮崎駿監督の「この映画はひとつのテーマ(曲)でいきたい」という要望に応えた渾身のメロディ「人生のメリーゴーランド」。サントラ盤では場面ごとの短いモチーフ変奏となっていたものを、音楽作品として昇華させたのが「Symphonic Variation “Merry-go-round”」です。
ひとつのメロディだけで映画二時間をもたせるって、なかなかできることではありません。世界観の反映、メロディとしての核、多彩なオーケストレーション、各シーンにあった楽曲構成。もっとも大切なのは、変奏に耐えうるだけの、自由に飛び羽ばたけるだけの、核としてのメロディ。ときに切なく、ときに力強く、ときに優雅に、音楽家久石譲の妙技を堪能できる旋律美です。
そんな「ハウルの動く城」「人生のメリーゴーランド」にまつわる数々のエピソードは当サイト内で紹介しています。ぜひ紐解いてみてください。サイト上部に検索BOXがあります。「ハウルの動く城」キーワードで検索すると、たくさんHitすると思います。Hitしすぎると思います。そんなときは、
「disc ハウルの動く城」
ディスコグラフィ、CD/DVD作品に絞り込むことができます。
「blog ハウルの動く城」
各媒体(コンサート・書籍・Web 他)からの久石譲インタビューや資料に絞り込むことができます。
ひとつの主題(メロディ)から、大きな作品を築きあげていく。それは「エニグマ変奏曲」でも「交響変奏曲 人生のメリーゴーランド」でも同じですね。変奏はそれぞれです。オーケストラ楽器の使い方も、オーケストレーションも、核(メロディ)と世界観、そして作家性を反映した、趣の異なる変奏曲がかたちになっています。そういう変奏曲聴き比べも、おもしろいなと思います。またそうすることで、久石さんの作品がクラシック音楽と並べて響かせても遜色ない、という凄みを感じてしまいもするわけです。
「エニグマ変奏曲」、イギリス作家らしい響きと世界に包まれます。洗練された都会の街、ちょっと郊外の田舎町、自然豊かな風景、音楽旅行です。「ニムロッド」をはじめとして、ぜひ約30分、純粋に音楽からあなただけのイメージを描いてみてほしい作品です。
「第9変奏 “Nimrod”」と「第14変奏 “E.D.U.” Finale.」を聴いてみて、あなたに響くものがなかったら、それ以上の無茶は言いません。ありますよね、聴くタイミングとか響くタイミングって。僕もこの作品少なくとも中学生の時に聴いているはずで。「威風堂々」とカップリングされたCDを持っていました。そのときは、かすりもしなかったなー。エニグマ?謎?なにそれ、ふーん、ピンとこない(^^;) せめて、このあとすぐ、「交響変奏曲 人生のメリーゴーランド」約14分、あのシンフォニックなバリエーションで心躍らせてくださいね♪
あっ、「第9変奏 “Nimrod”(ニムロッド)」は映画『のだめカンタービレ 最終楽章前編』でも使われてたんだ、知らなかったなー、気になってきたかなー(^^)
それではまた。
reverb.
次回からは月1~2回ペースを予定しています。φ (. . ;)
*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number]
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