Posted on 2023/12/09
「GQ MEN OF THE YEAR 2023」レジェンダリー・ミュージシャン賞を久石譲が受賞しました。そのトピックからWEB・SNS・雑誌などメディアに登場しています。ここでは雑誌「GQ JAPAN 2024年1・2月合併号」(12月1日発売)とWEB(12月9日公開)に掲載された久石譲インタビュー(同一)内容をご紹介します。
LEGENDARY MUSICIAN
JOE HISAISHI
久石譲
世界を巡りながら、至高の音楽を追求する
久石譲は、クラシック音楽の最高峰レコードレーベル「ドイツ・グラモフォン」と2023年に契約。映画音楽を通じて人々を魅了してきた、作曲、指揮者、ピアニストとしてのこれまでの功績を讃える。
By 川上康介
2023年12月9日
10月末、久石譲は東京・紀尾井のホールでコンサートを行った。彼の真骨頂とも言えるミニマル・ミュージックのコンサート「MUSIC FUTURE」だ。指揮者の久石は、Tシャツに黒いジャケット、足元はスニーカーというスタイルで、満員の観客の前に小走りで登場。まるでダンスをするかのように全身を揺らし、実に楽しげにタクトを揮っていた。
「楽しいですよ、実際。舞台に出た時に指揮者に自分が楽しんでないと、演奏者は楽しめない。自分が音を楽しみ、演奏者が僕の姿を見て安心して演奏すると、観客も楽しめる。楽しくないコンサートなんてやる意味ないでしょ」
見た目も言葉も、そして音楽も実に若々しい。
「目の前にやらなきゃならないことが山積みになっているから、年を取っている暇がない(笑)。作曲をし、演奏をし、さらに世界トップのオーケストラを相手に指揮する。3人分働いているようなものですから、体力と技術をつけるために自分を鍛えている日々です」
JOE HISAISHIの名は、世界に轟いている。2023年だけでも、1月ヘルシンキ、3月ウィーン、7月ワシントン、8月ロサンゼルス、9月ロンドンと渡り歩き、各都市のトップオーケストラを指揮してきた。もちろん、その合間に日本国内でのコンサートにも多数出演している。
「ありがたいことに、どのコンサートもソールドアウト。楽しくやらせてもらいました。大変なこともあります。ウィーン交響楽団は王道すぎるくらいにクラシカルなオーケストラであり、僕みたいなミニマル・ミュージックの作曲家とは正反対の音楽性が特徴です。その証拠に、初日のリハーサルが終わった時には、あまりに合わないので『もう無理。日本に帰りたい』と思ったほどで(笑)。でも彼らは、自発的にうまくいかない理由を考えて、理解し、学習してくるんです。本番3日前にはびっくりするほど上達していました。一般的なオーケストラは僕の音楽に合わせ過ぎるのか、ミニマル・ミュージックがどこか機械的になりがちなのですが、ウィーン交響楽団はクラシックらしい歌うような演奏をするので、抜群にスケール感が出る。新しく、面白い演奏になったと思います」
2023年4月にはクラシック界最高峰のレーベル「ドイツ・グラモフォン」と契約し、6月には、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とのCD『A Symphonic Celebration – Music from the Studio Ghibli Films of Hayao Miyazaki』が発売。米ビルボードのクラシック部門とクラシッククロスオーバー部門で1位になるなど、クラシックCDとしては異例の売り上げを記録した。音楽で世界を旅している彼には、思いがけない体験も訪れる。
「ウィーン楽友協会のコンダクタールームに入った時は感慨深いものがありました。『マーラーやブラームスもこの部屋にいたんだ』って。ロンドンのウェンブリー・アリーナにはザ・ビートルズやホイットニー・ヒューストンの写真が飾ってある。プラハのドヴォルザークホールでは、窓の外を見ながら、『ドヴォルザークも同じ景色を見たのかな』などと考えたり。自分がそういう歴史上の音楽家たちと同じ場所で音楽をやっていることをすごく幸せに感じます」
月に1度のペースで海外に行きながら、同時進行で作曲活動も行う。2023年は、宮崎駿の10年ぶりの新作映画『君たちはどう生きるか』が公開された。大きな話題となったこの作品の音楽は、もちろん久石が手掛けた。
「映像を観た瞬間、宮崎さんはチャレンジしているなと感じました。『君たちはどう生きるか』は、細かなストーリーを追いかけるのではなく、映像をそのまま受け止めて、観る人が想像力を働かせる映画であると解釈しました。それならば、自分も映像に負けないようなチャレンジをしなければならない。だから、これまでのようなメロディを聴かせる音楽ではなく、自分が一番いいと思うミニマル・ミュージックで全編やってみようと考えたんです。宮崎さんがどういう反応をするのか不安もありましたけど、聴いた瞬間に喜んでくれて。いくら僕がいいと思っていても監督が違うと言ったら意味がないですからね(笑)」
毎朝10時から12時までは自宅で作曲。午後は近所を散歩したり、夕方からまた3時間ほど作曲。夕食後に仮眠を取ると、朝4時頃まで「クラシックの勉強」をするのが基本的な1日の過ごし方だ。
「辞書より分厚いスコアを読んで覚えなきゃならない。1時間かかる曲を全部頭に叩き込むんです。さらに、ピアノを弾くプログラムがあるならその練習もしなければならない。睡眠は6時間確保したいから、本当に時間がない。昔はよく酒を飲みに行ったりしましたけど、最近はそんな機会もほとんどなくなりました」
コンサートの予定は2~3年先まで決まっている。2025年には日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就任することも発表された。
「日本の経済力が落ちたと言われているけど、文化力も落ちているような気がします。例えば、少し難解な曲をやった時、ヨーロッパの観客は身を乗り出すようにして聴いてくれますが、日本の場合、明らかに反応が悪い。新しい音楽、新しい体験を面白がることができないようです。だから日本全国、北から南までオーケストラがみんな同じ曲をやっている。音楽監督を引き受けることにしたのは、そういうところに危機感を抱き、状況を変えていきたいという思いがあったから。みんなで音楽文化を豊かにしっていくことを考えていかないといけない。このままだとまずいと思っています」
これだけ音楽漬けの日々を送っていても満足することができずにいるという。
「作曲をやっても、指揮をやっても、映画音楽をやっても、100点満点ということはありません。やればやるほど、新しい課題が見つかる。それをひとつずつクリアして、自分がいいと思う音楽に少しでも近づけるようになりたい」
久石譲は、きっとこれからも走り続ける。舞台に登場したあの時のように。小走りで、そして楽しげに。
(「GQ JAPAN 2024年1・2月合併号/2024年1月号増刊 特別表紙版/2024年2月号増刊 特別表紙版」より)
WEB版掲載(同一内容)
出典:久石 譲 メン・オブ・ザ・イヤー・レジェンダリー・ミュージシャン賞──世界を巡りながら、至高の音楽を追求する
https://www.gqjapan.jp/article/20231209-moty2023-joe-hisaishi
- Info. 2023/11/27 久石譲がレジェンダリー・ミュージシャン賞を受賞!──「GQ MEN OF THE YEAR 2023」(GQ JAPANより)
- Info. 2023/11/28 【GQ MEN OF THE YEAR】久石譲、日本の音楽界は「生ぬるい」 海外に出るのススメを説く(ORICON NEWSより)ほか
GQ最新号の特集は「MEN OF THE YEAR 2023」! 役所広司や安藤サクラ、Mrs. GREEN APPLE、新しい学校のリーダーズ、ヌートバーなど11組の受賞者を発表! 表紙は3パターンあり
12月1日(金)発売の『GQ JAPAN』1月&2月合併号は、恒例の「GQ MEN OF THE YEAR 2023」! 今年もっとも輝いた受賞者たちを写真とインタビューで大特集した。栄えある受賞者は、新しい学校のリーダーズ、安藤サクラ、桑田悟史(SETCHU)、ヒコロヒー、久石譲、BRIGHT、Mrs. GREEN APPLE、役所広司、山田裕貴、吉田正尚、ラーズ・ヌートバーの11組。インタビュー記事と撮り下ろし写真は必読・必見だ! 表紙は、通常版と2種類の特別表紙版の3パターン。
今年もっとも活躍したヒーローたちを讃える、毎年恒例の大特集。11組の受賞者の撮り下ろし写真&ロングインタビューに注目だ!
【受賞者】
■新しい学校のリーダーズ(アーティスト)/ブレイクスルー・アーティスト賞
■安藤サクラ(女優)/ベスト・アクター賞
■桑田悟史(SETCHU)/ブレイクスルー・ファッションデザイナー賞
■ヒコロヒー(芸人)/ブレイクスルー・エンターテイナー賞
■久石譲(作曲家)/レジェンダリー・ミュージシャン賞
■BRIGHT(アーティスト/俳優)/ベスト・アジアン・エンターテイナー賞
■Mrs. GREEN APPLE(アーティスト)/ベスト・アーティスト賞
■役所広司(俳優)/レジェンダリー・アクター賞
■山田裕貴(俳優)/ブレイクスルー・アクター賞
■吉田正尚(野球選手)/ベスト・ベースボールプレイヤー賞
■ラーズ・ヌートバー(野球選手)/ブレイクスルー・ベースボールプレイヤー賞
*表紙は3種類(GQ JAPAN 1・2月合併号、GQ JAPAN 1月号 増刊特別表紙版、GQ JAPAN 2月号 増刊特別表紙版)あり、それぞれに1面に登場する受賞者が異なります。
発表! GQ MEN OF THE YEAR 2023
日本で18回目を迎えた「GQ MEN OF THE YEAR」に、2023年、圧倒的なパワーと存在感を放った受賞者たちが登場。新しい学校のリーダーズ、安藤サクラ、桑田悟史(SETCHU)、ヒコロヒー、久石譲、BRIGHT、Mrs. GREEN APPLE、役所広司、山田裕貴、吉田正尚、ラーズ・ヌートバー〈※五十音順〉の11組が、これまでの活動を振り返りながら、自身の仕事観や未来について語った貴重なインタビューは必読だ。さらに、今回『GQ JAPAN』が特別に撮り下ろした、スペシャルポートレイトもお見逃しなく。
GQ JAPAN 2024年1・2月合併号
GQ JAPAN 2024年1月号増刊 特別表紙版
GQ JAPAN 2024年2月号増刊 特別表紙版