Posted on 2014/11/16
2014年10月25日発売 雑誌「クロワッサン」(特大11/10号 No.888)の“MUSIC”コーナーに久石のインタビュー記事が掲載されています。
内容は新作『WORKS IV』関連インタビューです。さらには、今年2014年の活動スタイルと、来年以降の展望まで、久石譲音楽活動の方向性が見えてくるような内容です。
サウンドトラックがシンフォニックに。
パーソナルな楽曲が普遍的な作品へ。
作曲家、久石譲さんの新作『WORKS IV -Dream of W.D.O.』には、「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」「小さいおうち」など、映画やドラマの主題曲や挿入曲が収録されている。すべて久石さん作だが、サウンドトラックではない。
久石 「ピョートル・チャイコフスキーは数多くのバレエ音楽や歌劇を作曲しましたが、それらは後に本人の手で組曲として作り直されています。ジョージ・ガーシュウィンのオペラ『ポーギーとベス』も、後に『キャットフィッシュ・ロウ』という交響組曲になりました。同じ発想でレコーディングしたのが、僕の『WORKS IV』です。」
映像有りきで生まれた作品を音楽作品として生まれ変わらせたのだ。
久石 「映画やドラマの音楽は制約の中で作ります。台詞や効果音があり、尺も意識しなくてはいけません。さらに、厳しい締め切りもあります。ただし、こうしたシバリは必ずしも作品にマイナスではありません。たとえば、大平原で、自由に遊びなさい、と言われたとしましょう。ほとんどの人はどうしていいかわからなくなるはずです。でも、テニスコートで、ボールをひとつ渡されて、仲間が3人いたら、いろいろな楽しみ方ができる。それと同じです。多少なりとも制限があったほうが、発想は広がることもあります。」
こうして一度完成した作品を今度は逆に、制約のない”大平原”に解き放ち、シンフォニーとして録音した。
久石 「サントラでは使わなかった楽器を足し、時には主旋律も書き加えています。」
すると、特定の映像のために作られたはずの音楽なのに、まったく違うドラマ性をまとうことになる。
久石 「実は今、自分の”本籍”をクラシックに戻しつつあるところです。」
久石さんは、30代前半まで前衛的な音楽を手掛けていた。しかし、’84年の宮崎駿監督作品『風の谷のナウシカ』の音楽で一躍脚光を浴び、スタジオジブリをはじめ数々の映画音楽を依頼され、超多忙な作曲家生活に没頭していった。
久石 「大量に音符を生むためには、大量に音符を生むための生活サイクルにしなくてはいけませんでした。」
ここ数年は、午前はピアノの練習、昼から深夜までは作曲、そこから明け方近くまではクラシックコンサートのための準備を行う毎日を送っていた。その生活を見直す時期が訪れた。
久石 「時代や国境を越えて聴かれ演奏される音楽を制作したい。そのための時間を作る生活にシフトチェンジしている最中です。今回の『WORKS IV』のように完成度を高めた楽曲は、楽譜をドイツに本拠を構えるショット・ミュージックから出版しています。」
ショットは世界的な楽譜出版社。世界中の音楽家がここから楽譜をレンタルし、演奏会を行っている。
久石 「かつて、僕の作品は僕だけが演奏していました。それが今では、世界各国のオーケストラが僕の書いたオリジナルの楽譜で演奏しています。自分の作品がパーソナルなものから普遍性を帯びてきました。」
作品が、久石さんの手を離れ、独り歩きを始めている。
久石 「海の向こうのカフェで、隣のテーブルに座る誰かが僕の作品とは知らずに『風立ちぬ』や『かぐや姫の物語』のメロディを口ずさむ。それを聴くのが、作曲家として最高に幸せな体験です。」
(クロワッサン 2014年11月10日号 MUSICコーナー より)
「2014年はほとんど依頼を断って立ち止まった一年」と他インタビュでも語っています。このインタビューでも日常生活のサイクルを見直す時期が訪れた、と。いろいろと触れたいことはあるのですが、別の機会にあらためて。
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