Score. 久石譲 「Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2Marimbas」 [スコア]

2015年6月24日 発行

《Shaking Anxiety and Dreamy Globe ―揺れ動く不安と夢の球体―》2台ギター版(SJH 005)と2台マリンバ版(SJH 006)の2タイトル同時発売。いずれもスコアとパート譜のセット。

 

2台マリンバ版は、ギター版と同様にテクニカルでありながらも、どこか不思議でノスタルジックな、可愛らしい響きのアレンジが施されています。マリンバという楽器とミニマル・ミュージックとの抜群の相性を楽しむこともできるでしょう。初演は2014年9月29日、よみうり大手町ホールで行われた『久石譲プレゼンツ「ミュージック・フューチャーvol.1」』のプログラムとして、神谷百子と和田光世の2人によって行われました。マリンバ版の音源は、〈久石譲『ミニマリズム 2』〉(ユニバーサル・シグマ UMCK-1518)に収録されています。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

WORLD PREMIÈRE:
September 29, 2014 -Yomiuri Otemachi Hall, Tokyo, JAPAN
Momoko Kamiya & Mitsuyo Wada

 

JOE HISAISHI
SHAKING ANXIETY AND DREAMY GLOBE
FOR 2 MARIMBAS
久石譲 揺れ動く不安と夢の球体 2台のマリンバのための

SJH 006
スコア+パート×2
32ページ
菊倍判 中綴じ製本(227×303mm)
注文番号: SJH 006
ISBN: 978-4-89066-174-9
ISMN: M-65001-250-8
JAN: 1923073020005
出版社: Schott Music Tokyo
定価:2,000円(税別)

公式サイト:ショット・ミュージック 久石譲 内

 

 

◎音源は久石譲『Minima_Rhythm II ミニマリズム 2』に収録されています。

 

Disc. 福田進一×荘村清志 『DUO』

2015年6月24日 CD発売 COCQ-85265

 

久石譲が2012年「第7回 Hakuji ギターフェスタ」のために書き下ろした、ギターデュオのための委嘱作品『Shaking Anxiety and Dreamy Globe』を初CD化。今年2015年「第10回 Hakuji ギターフェスタ」でも再演予定で、もちろんオリジナル・プレーヤーである2大ギタリストによる録音。

 

 

あたたかな円熟のアンサンブル、自在の境地が生み出す「大人の音楽」!

ギター界を牽引してきた第一人者による珠玉の共演アルバム誕生です。演奏のスタイルも奏でる音色も、それぞれに際立つ個性を持つ二人が、雄弁な自己主張を刻みながら、その個性を競い合うのではなく、互いをリスペクトし引き立て合う演奏は音楽への真摯な姿勢とギターへの愛に満ち溢れています。自在の境地から生み出された円熟のアンサンブルは、まさに「大人の音楽」というに相応しいもので、聴き手の心に深く染み入る、滋味溢れる名演と言えます。二人が共同プロデューサーを努めるHakujuギター・フェスタの第10回を記念したアルバムです。

 

寄稿

音楽を聴いて、演奏家の”人生”に思いを馳せるというのは、些か野暮な話なのかもしれない。しかし、本作《DUO》には、なにかそうした類の感慨を抱かせずにはいない、格別の味わいがある。日本のギター界を、それぞれに違ったかたちで牽引してきた荘村清志、福田進一両氏。その共演は、ギターファンのみならず、このせわしない世の中で、決して消費されることのない豊かな才能に憧れるすべての人々を、束の間、夢見心地にさせることだろう。

音楽そのものであると同時に、音楽についての、言葉を超えた対話。お馴染みの〈ニュー・シネマ・パラダイス〉に始まり、〈スペイン舞曲〉、〈カヴァティーナ〉と、ゆったりとした雰囲気で始まる前半の、そこばくの慎みが心地良い。そこから、次第にエモーショナルな部分に触れていって、〈エディット・ピアフを讃えて〉のような、リリカルでチャーミングな演奏に至る。終盤の三曲の委嘱作品は、さすがの聴き応えで、思わず身を乗り出し、息を呑む。二人の演奏家としての歩みに思いを馳せ、その音の説得力に打たれ、最後は〈星に願いを〉が、静かな挨拶のように、名残を惜しむ私たちを、元の日常世界へとそっと見送ってくれる。

この楽曲の多彩さにして、なんという構成の妙だろう!同時代に、この美しい共演を体験できる私たちは、幸福な音楽ファンだ。

平野啓一郎(小説家)

(寄稿 ~CDライナーノーツより)

 

 

名匠同士、妙味尽きぬ音の対話
話題のギターデュオ、待望のレコーディング

荘村清志と福田進一。共に日本のギター演奏界を代表する2人の名匠が、腕を組んでデュオを聴かせる-なんとも素晴らしい企画だが、実はこの「名匠デュオ」は、もはや10年来、ギター・ファンの心を惹きつけ、満足を与えつづけてきた歴史を持っている。荘村と福田が、株式会社白寿生科学研究所の運営するHakuji Hallの全面的援助を受け、同ホールを舞台に、夏の「ギター・フェスタ」を発足させたのは2006年。これは、かねがね声望高く豊かな人脈を持つ両名匠が、内外から実力者アーティスト(多くはギタリストだが他ジャンルの人びとも)を招いて催す通例3日間の演奏会シリーズだが、その中で、両主宰者によるスーパー・デュオは、ひとつの呼び物であってきたのだ。この2015年、「ギター・フェスタ」が10周年を迎えるに当たり、それを記念するためにも2人のデュオを本格的なCDとして残したい、ということになったのは、当然の成行きではあるものの、極めて喜ばしいことである。レパートリーは、これまでこのデュオが手がけてきた曲目、あるいはここに新しく取り組んだ曲目、いずれにしてもたいへん楽しめる高度な楽曲が並んでいるが、とりわけ注目すべきは、この「フェスタ」から、著名作曲家に特別に委嘱されたオリジナル・ギター・デュオ曲が3篇ほど含まれたことである。「フェスタ」の、国際的にも注目される存在意義を、これらの価値高い委嘱作は、如実に証明すると言えよう。

このたびの録音は、往時の「フェスタ」における録音を再使用するようなことはなく、すべて新規に行われた。それに際しては、このたびもHakuji Hall側の快い協力があり、演奏者たちは、ギターのためには理想的なものである同ホールの個性的でデリケートな音響効果を心ゆくまで活用することができた。演奏者たちは、これに関し、同ホールへの深い感謝の念を表明している。

福田進一の述懐によると、このデュオは「荘村さんと僕という、生い立ちも違えば留学先(スペインとフランス)の音楽的・文化的環境も違い、したがっていわゆる芸風も、ふだんの活動状況も異なっている2人が、両者の個性を互いに生かしたまま、歩み寄って行なった共演」であるというところにユニークな意義を持つ。芸風・音楽性の類似、テクニック上の共通性を基盤とする一般の常設デュオとは、ひとつ別な演奏がここには誕生しており、そこにユニークな価値が生じているとは、確かに言えよう。

いずれにせよ、この非凡なデュオが生み出す奏楽としての奥行き、味わい深さは尋常ではない。名手同士の顔合わせという話題性には終らず、演奏芸術というものの果てしない妙味を満喫させる、これはまたとなく貴重なレコーディングである。

濱田滋郎

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe (2012)
2012年度の委嘱は、日本の作曲家に対して行われた。「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「もののけ姫」ほか、数多くの映画音楽を手がけて知らぬ者もない久石譲(1950-)である。彼はまた「ミニマル・ミュージック」の手法を用いても日本の第一人者と呼ばれる作曲家で、この委嘱作をも、ミニマル的に書き上げている。特筆すべきなのが拍子の独創性で、4分の13拍子(3+3+3+4拍子)をとり、しかも2人の奏者は1小節たりとも同じ動きの拍子を共有しない。そのことが生み出す一種幻覚的な音空間の魅力を味わわれたい。

(【楽曲解説】 CDライナーノーツより)

 

 

曲名 “Shaking anxiety and Dreamy Globe”は、アメリカのシュルレアリスムの詩人、ラッセル=エドソンの詩にある、[生命が生まれる瞬間」を表した一節を引用した造語。ミニマルの手法とフラメンコギターのエッセンスを取り入れた作品。複雑な変拍子と躍動感あふれる久石ならではの技巧的な楽曲。

 

 

公式譜も同時発売されている。

 

 

 

 

DUO

1 モリコーネ:ニュー・シネマ・パラダイス (鈴木大介 編曲)
2 ファリャ:スペイン舞曲 ― オペラ「はかなき人生」より (E.プホール 編曲)
3 マイヤース:カヴァティーナ (鈴木大介 編曲)
4 アルビノーニ:アダージョ (A.ラゴヤ 編曲)
5 プーランク:エディット・ピアフを讃えて ― 「15の即興曲」より (福田進一 編曲)
6 グラナドス:オリエンタル ― 「スペイン舞曲集」より (荘村清志 編曲)
7 ディアンス:ハジュ・パルス (2014)
8 ファジル・サイ:リキアの王女 (2009)
9 久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe (2012)
10 ハーライン:星に願いを (江部賢一 編曲)

★7、8、9:Hakujuギター・フェスタ委嘱作品

【録音】
2015年2月17 -19日、Hakuju Hall、東京

 

Score. 久石譲 「Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Guitars」 [ギター]

2015年6月24日 発行

《Shaking Anxiety and Dreamy Globe ―揺れ動く不安と夢の球体―》2台ギター版(SJH 005)と2台マリンバ版(SJH 006)の2タイトル同時発売。いずれもスコアとパート譜のセット。

 

2台ギター版《Shaking Anxiety and Dreamy Globe》は、ミニマル・ミュージックとフラメンコの融合ともいえる響きが特徴の作品。2012年8月19日に行われた『Hakujuギター・フェスタ』のための委嘱作品として作曲され、福田進一と荘村清志によって世界初演が行われました。今回の出版でも、荘村・福田の両名による楽譜監修が行われています。指定テンポの速さも相まって演奏難度の高い作品ですので、多くのギタリストにぜひチャレンジしていただきたい1曲です。この作品が収録されたCD 〈福田進一×荘村清志『DUO』〉も、楽譜発売と同日発売となります。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

WORLD PREMIÈRE:
August 19, 2012 -Hakuju Hall, Tokyo, JAPAN
Shin-ichi Fukuda & Kiyoshi Shomura

 

JOE HISAISHI
SHAKING ANXIETY AND DREAMY GLOBE
FOR 2 GUITARS
久石譲 揺れ動く不安と夢の球体 2台のギターのための

SJH 005
スコア+パート×2
24ページ
菊倍判 中綴じ製本(227×303mm)
注文番号: SJH 005
ISBN: 978-4-89066-174-9
ISMN: M-65001-250-8
JAN: 1923073020005
出版社: Schott Music Tokyo
定価:2,000円(税別)

監修:荘村清志、福田進一

公式サイト:ショット・ミュージック 久石譲 内

 

 

◎音源は福田進一×荘村清志『DUO』に収録されています。

 

Info. 2015/06/24 [楽譜] 「Shaking Anxiety and Dreamy Globe」 発売

久石譲の《Shaking Anxiety and Dreamy Globe》2台ギター版と2台マリンバ版の公式譜が、ショット・ミュージック社より6月24日に発売。

■2台のギターのための《Shaking Anxiety and Dreamy Globe》
2012年の「Hakuju ギター・フェスタ」のための委嘱作。
ミニマルの手法とフラメンコギターのエッセンスを取り入れた作品。
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Info. 2015/06/24 福田進一×荘村清志『DUO』CD発売 久石譲委嘱作品収録

2015年6月24日 CD発売 『DUO』 福田進一×荘村清志

久石譲が2012年「第7回 Hakuji ギターフェスタ」のために書き下ろした、ギターデュオのための委嘱作品『Shaking Anxiety and Dreamy Globe』を初CD化。今年2015年「第10回 Hakuji ギターフェスタ」でも再演予定で、もちろんオリジナル・プレーヤーである2大ギタリストによる録音。

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Info. 2015/06/23 [CDマガジン] 「クラシック プレミアム 39 ~ドビュッシー~」 久石譲エッセイ連載 発売

2015年6月23日 CDマガジン 「クラシック プレミアム 39 ~ドビュッシー~」(小学館)
隔週火曜日発売 本体1,200円+税

「久石譲の音楽的日乗」エッセイ連載付き。クラシックの名曲とともにお届けするCDマガジン。久石による連載エッセイのほか、音楽評論家や研究者による解説など、クラシック音楽の奥深く魅力的な世界を紹介。

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Blog. 「クラシック プレミアム 38 ~ヴァイオリン・チェロ名曲集~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2015/6/21

クラシックプレミアム第38巻はヴァイオリン・チェロ名曲集です。

まったくの余談ですが、久石譲が初めて習った楽器がヴァイオリン、4歳から鈴木鎮一ヴァイオリン教室に通っていました。ちなみに今やピアニストとしても独特の世界観を響かせていますが、実はピアノをきちんと習い始めたのは30歳を過ぎてから。コンサートなどでの演奏に必要になってきたためという理由からだそうです。意外といえば意外ですね。

 

 

【収録曲】
タルティーニ:ヴァイオリン・ソナタ 第4番 ト短調 《悪魔のトリル》 (クライスラー編曲)
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ジェイムズ・レヴァイン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1992年

ベートーヴェン:《ロマンス》 第2番 ヘ長調 作品50
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
チョン・ミュンフン指揮
フィルハーモニア管弦楽団
録音/1996年

サン=サーンス:《ハバネラ》 作品83
ジャニーヌ・ヤンセン(ヴァイオリン)
バリー・ワーズワース指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
録音/2003年

ドヴォルザーク:《ユモレスク》 変ト長調 作品101の7
アルテューユ・グリュミオー(ヴァイオリン)
イシュトヴァン・ハンデュ(ピアノ)
録音/1973年

サラサーテ:《ツィゴイネルワイゼン》 作品20
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ジェイムズ・レヴァイン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1992年

エルガー:《愛の挨拶》 作品12
クライスラー:《愛の喜び》 《愛の悲しみ》
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
フィリップ・モル(ピアノ)
録音/1985年

カタロニア民謡:《鳥の歌》 (カザルス編曲)
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
パーヴェル・ギリロフ(ピアノ)
録音/1987年

シューマン:《アダージョとアレグロ》 変イ長調 作品70 (グリュツマッハー編曲)
ピエール・フルニエ(チェロ)
ラマール・クラウソン(ピアノ)
録音/1969年

フォーレ:《エレジー》 作品24
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
セミヨン・ビシュコフ指揮
パリ管弦楽団
録音/1991年

フォーレ:《夢のあとに》
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
ダリア・オヴォラ(ピアノ)
録音/1999年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第37回は、
指揮者のような生活

前号では、4月に開催されたイタリアでのスペシャルコンサートのお話でした。前々号で、指揮者ドゥダメルの演奏会のことを記していたのですが、そこからの続きになります。5月に開催された富山コンサートのことにも触れていて、演奏会を聴いて感じていたことが、謎が解けました。そんなお話になっています。詳細は順を追って。

一部抜粋してご紹介します。

 

「先日、一連の指揮活動が終了した。イタリアから始まり、すみだトリフォニーホールでのシェーンベルク《浄められた夜》、アルヴォ・ペルトの交響曲第3番を経て、リニューアルされた富山県民会館でのこけら落としコンサート(日本での演奏はいずれも新日本フィルハーモニー交響楽団)まで、なんだか指揮者のような生活を送ってきた。」

「演奏するのはまあ嫌いではないのだが、前にも書いたようにまったく作曲ができなくなるのは痛い。それはそうだ、頭の中で《浄められた夜》のような凄まじく難しい楽曲が鳴りまくっていたら、自分の音符なんて浮かんで来るわけがない。作曲のために徐々に減らしていこうと思うのだが、夏からまたコンサートが始まる。ありがたいことではあるが……複雑な心境だ。」

「富山ではドヴォルザークの交響曲第9番《新世界より》を演奏した。最もポピュラーなクラシック曲だ。オーケストラのレパートリーとしても演奏頻度が高く、場合によってはゲネプロ(当日の全体リハーサル)のみで、本番に臨むというケースさえあるらしい。だからといって易しいとは限らない。シンプルで力強い美しいメロディーの後ろで、各楽章とも変化に富んでいるうえにしっかり構成されていて、思いのほか手強い。前々回に書いたドゥダメル&ロサンゼルス・フィルでも演奏されていたが、その明確な構成力と躍動感に溢れるリズムに圧倒された。スケジュールが込んでいてなんとなく選んだ《新世界より》がまったく別の楽曲に聞こえ、思わず客席で背筋が伸びた。それから合間を縫って今までの方法を改め、猛特訓、いや猛勉強したのだが、スコア(総譜)を読めば読むほど、スルメのように味が出てくる。ドヴォルザーク本人もそれほどの大作に挑んだ(もちろん45分以上かかる楽曲だから大変な労力を必要とするが)と思っていなかったようだが、だからこそ力が抜けて音たちはとても自由に動いている。このことは重要だ。他の芸術でもスポーツでも思い入れが強すぎたり、気合いが入りすぎると力は発揮できない。指揮でいうと力んだ腕をどんなに一生懸命に振ってもスピードは出ないし、他の筋力を巻き込んで軸がぶれたり、頭を前後に大きく振ったりで、自分が頑張っていると思うほど演奏者には伝わっていない。ゴルフでいうところのヘッドアップと同じだ。力みをとる-あらゆる分野で最も大切で、最もできないことかもしれない。」

「だが、それより重要なことがある。結局のところ、どういう音楽を作りたいか明確なヴィジョンを持つことに尽きる!と僕は考える。」

「NHKのクラシック番組で、パーヴォ・ヤルヴィ指揮、NHK交響楽団の演奏でショスタコーヴィチの交響曲第5番の演奏を聴いた。この楽曲については前にも触れているので多くは書かないが、一応形態は苦悩から歓喜、闘争から勝利という図式になっているが、裏に隠されているのはまったく逆であるというようなことを書いたと思う。パーヴォ・ヤルヴィの演奏はその線上にあるのだがもっと凄まじく、この楽曲を支配しているのは恐怖であり、表向きとは裏腹の厳しいソビエト当局に対する非難であると語っていた。第2楽章がまさにそのとおりでこんなに甘さを排除したグロテスクな操り人形が踊っているような演奏は聴いたことがなかったし、第4楽章のテンポ設定(これが重要)がおこがましいが僕の考え方と同じで、特にエンディングでは、より遅いテンポで演奏していた。だから派手ではないが深い。」

「彼はエストニア出身、小さい頃はソビエト連邦の支配下にあったこの国で育った。父親は有名な指揮者でショスタコーヴィチも訪ねてきたときに会ったくらいだから、この楽曲に対する思いは尋常ではない。明確なヴィジョンを持っている彼にNHK交響楽団もよく応え、炎が燃え上がるような演奏だった。」

「ついでにいうと作曲家アルヴォ・ペルトさんも同じエストニア出身だ。若い時は十二音技法やセリー(音のさまざまな要素を音列のように構築的に扱う作曲技法)で作曲していたがソビエト当局の干渉で禁止され、教会音楽などを研究していく中で今の手法を考えだした。今では世界中で最も演奏される現代の作曲家なのだがCDも多く出ていて、その中で一番おすすめなのがパーヴォ・ヤルヴィだ。同じ国の出身、深い共感が良い音楽を作る。」

「以上数回にわたって指揮活動を中心にした音楽的日乗を綴ってきた。」

「それにしても、クラシック音楽はいい。目の前でオーケストラが一斉に音を出すのを聴いていると(これは指揮者の特権)、人類は偉大なものを作り上げたと驚嘆する。そのクラシック音楽は、いやクラシックだけではなく他の分野の音楽も含めて、我々はどういう進化を遂げてこういう形態に至り、これからどういう音楽を作り上げていくのか考えてしまう。つまり画家のゴーギャン風にいうと「我々はどこから来て、どこへ行くのか!」ということだ。次回からはいよいよ本題「音楽の進化」について書く。」

 

 

補足しますと、指揮者パーヴォ・ヤルヴィさんは、2015年9月からNHK交響楽団の首席指揮者に就任予定です。それもあって2014年あたりから歴代の作品が一気にCD再発売されています。2000年録音のアルヴォ・ペルト:「スンマ」「交響曲第3番」を収めたものなど多数あります。

せっかくなので、久石譲も過去に取り上げたことのある、この「スンマ」「交響曲第3番」が収録された、CDを買って聴いてみたいと思っています。久石譲の解説で俄然興味も湧いたアルヴォ・ペルト(作曲)×パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)という組み合わせで。

 

 

もうひとつ。ドヴォルザーク 交響曲第9番 《新世界より》について。5月開催コンサート「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団 富山特別公演」での演奏を聴いたときに、えらく緩急のメリハリがしっかりした構成になっていたということはレポートで書きました。

こちら ⇒ Blog. 「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団 富山特別公演」 コンサート・レポート

 

コンサートに臨む前に、予習もかねて名盤と評されているCDをいくつか聴いていたのですが、もちろん久石譲もCD作品化していますが、聴いていたどの盤にもないテンポ感だったので、非常に強烈に印象に残り、レポートにそのことを記した記憶があります。

その後、このクラシックプレミアム・エッセイにてドゥダメル指揮の《新世界より》を聴いてきたという久石譲の話があったので……

こちら ⇒ Blog. 「クラシック プレミアム 36 ~ビゼー~」(CDマガジン) レビュー

 

もしや!と思い、ドゥダメル指揮の同楽曲音源を探しに探して聴くことができたのですが・・やっぱりっ!という結論でした。久石譲も今号エッセイにてはっきりと綴っているので、疑問から推測が確信へと変わりました。ドゥダメル盤新世界よりと、最新の久石譲盤新世界より。

こうやっていろいろなキーワードやパズルのピースのようなものをたよりに、推測したり時系列で整理したりするのは非常に楽しいですね。おかげで「交響曲第9番 新世界より」はここ数ヶ月のあいだに、何十パターン(指揮者違い,オケ違い,録音年違いなど)聴いただろうと思います。そして自分だけのお気に入りの盤を見つけたときの喜びです。

 

ほんとうにクラシック音楽って、指揮者、演奏者、録音年代、録音場所などで、同じ楽曲でもまたと同じものはないというくらい、全然響きも印象も感動も違います。そして一番感動するのは、どんな名盤をCDなどで聴くことよりも、実際にコンサート会場で体感することだな、ということを痛切に感じているのも事実です。

だいぶんクラシック音楽に対する見方が変わってきたのは、このクラシックプレミアムのおかげなのか、久石譲の同雑誌内エッセイのおかげなのか、はたまた久石譲コンサートでクラシック音楽を聴くことが定着したからなのか…全50巻、2年越しの「クラシックプレミアム」も、7-8合目くらいです。

 

 

クラシックプレミアム 38 ヴァイオリン・チェロ名曲集

 

Blog. 「週刊文春 2015年4月30日号」コーナー「時はカネなり」 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2015/6/13

雑誌 週刊文春 2015年4月30日号にて「時はカネなり」のコーナーに久石譲が登場しました。巻末カラーということで、愛用の腕時計や財布がエピソードとともに写真紹介されています。

 

 

時はカネなり 22

久石譲(作曲家・指揮者)
日本アカデミー賞の副賞で八度目に巡り合った時計

このジャガー・ルクルトは昨年、『風立ちぬ』で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞した際、副賞で頂いたものです。これまでは時計は重くて腕が縛られる感覚が嫌で、ほとんどつけませんでした。でもこれは軽くてシンプル、フェイスもすっきりしていて邪魔にならないので、とても気に入っています。

私は同賞を過去にも受賞していて、この時計は八本目。ほとんどは自宅の机の引き出しなどに入れて保管していたのですが……ある時とてもショックなことが起きました。自宅に泥棒が入り、この副賞の時計が三本も盗まれたんです。さらに腹立たしいことに、僕のCDを一枚も盗んでいかなかった!嘘でもいいから、一枚くらい持っていけよ、と思いました(笑)。

作曲家の時計感覚は独特かもしれません。音楽というものは時間の中に構築する建造物です。例えば、映画音楽は一秒の二十四分の一単位で画面に合わせる。プロなら当たり前にできることではありますが、時間感覚は自然に鋭くなると思います。そのせいか、目覚まし時計が鳴る三分前にはパッと目が覚めます。海外に行っても、時差ボケはほとんどありません。あまり時計を必要としない体なんです。

財布はアイグナーを長く愛用していました。滑らかな革が気に入ってね。それがだいぶ傷んできたなと感じていたところ、ロンドンのヒースロー空港でフライトの待ち時間にふと目に留まったのが、このヴェルサーチの財布です。アイグナーを敢えて買い直そうとは思わなかった。物は”縁”ですから。

そもそも、買いに行く時間がありません(笑)。毎日、昼の一時から二時にスタジオに来て、夜中の十一時まで作曲をします。クラシックコンサートが近い場合は指揮者として、帰宅するとスコアの研究を朝までやる。そんな生活だから、財布を一週間、開かないこともあります。もともと同じ鞄を二十年も使うほど、非常に物持ちがいい。この財布も結局十年も使っていますね。

 

●ジャガー・ルクルト

購入時の価格
日本アカデミー賞 最優秀音楽賞の副賞
(定価は450,000円+税)

愛用年数
約1年

本来ポロプレーヤーのために開発された時計で、ガラスの破損を防ぐためフェイスが反転する。クラシックコンサートのスコア研究のため、自らも手で書き写した楽譜とともに

久石譲 ジャガー・ルクルト

 

●ヴェルサーチ

購入時の価格
覚えていない

愛用年数
10年くらい

平均所持金
7万円

銀行カードはほぼ使わず、奥さまが適宜、現金を補充する。アメックスのブラックカードと、体力作りのために通うジムの会員カード(白)

久石譲 ヴェルサーチ

(「週刊文春 2015年4月30日号」より)

 

 

上の写真にあるとおり久石譲による直筆譜も写りこんでいます。これは5月5日に開催されたコンサート「新・クラシックへの扉・特別編 久石譲 「現代の音楽への扉」」の演目からシェーンベルクの《浄夜》を自ら書き起こした楽譜です。

 

 

 

そしてこの手書き譜面を書き起こす奮闘記は、クラシックプレミアム内連載中エッセイにて語られています。

 

「それで今猛勉強中なのだが、とにかく各声部が入り組んでいるため、スコアと睨めっこしても頭に入ってこない。いろいろ考えたあげく、リハーサルの始め頃は連弾のピアノで行うので、そのための譜面を自分で書くことにした。やはり僕は作曲家なので自分の手で音符を書くことが覚える一番の近道だと考えたのだが、それが地獄の一丁目、大変なことになってしまった。」

「《浄められた夜》は室内楽なので、音符が細かい。例えば4/4拍子でヴィオラに6連符が続くと4×6=24、他の声部もぐちゃぐちゃ動いているので一小節書くのになんと40~50のオタマジャクシを書かなければならない(もちろん薄いところもある)。それが全部で418小節あるのである! そのうえ、4手用なので、弾けるように同時に編曲しなければならない。全部の音をただ書き写しても音の量が多過ぎて弾けないので、どの声部をカットするか? もう無理なのだが、どうしてもこの音は省けないからオクターヴ上げて(下げて)なんとか入れ込もうとかで、とにかく時間がかかる。実はこの作業は頭の中で音を組み立てているのだから、最も手堅い、大変だが確実に曲を理解する最善の方法なのだ。」

「年が明けてから、映画やCMの仕事をずっと作ってきて、台湾のコンサートが終わってからこの作業に入ったのだが、昼間は作曲、夜帰ってから明け方まで譜面作りと格闘した。それでも一晩に2~3ページ、小節にして20~30くらいが限度だった。毎日演奏者に定期便のように送っているのだが、他にもすることが多く、実はまだ終わっていない、やれやれ。」

Blog. 「クラシック プレミアム 35 ~モーツァルト5~」(CDマガジン) レビュー より抜粋)

 

 

週刊文春 久石譲

 

Info. 2015/08/23 「第10回 Hakuju ギター・フェスタ2015」 久石譲委嘱作品 演奏予定

第10回〈Hakuju ギター・フェスタ2015“Viva! エスパーニャ2”〉が8月後半に開催

日本のクラシック・ギター界を牽引する荘村清志と福田進一をプロデューサーに迎え、2006年8月から毎年夏に開催されている白寿ホールの主催公演シリーズ〈Hakuju ギター・フェスタ〉。そのシリーズの第10回〈Hakuju ギター・フェスタ2015“Viva! エスパーニャ2”〉が8月21日(金)から23日(日)にかけて開催されます!

このシリーズは、国内外の著名ギタリストが集まり、テーマに沿った選曲、委嘱作品の初演、新人ギタリストの紹介、他ジャンルとのコラボレーションなど、充実の内容でギター音楽の可能性を拡げ、ギターの魅力を伝えていくことが目的。10回目を数える今年は、ふたたびギター音楽の故郷スペインをテーマに、豪華なゲストが集結します。

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Info. 2015/06/09 [CDマガジン] 「クラシック プレミアム 38 ~ヴァイオリン・チェロ名曲集~」 久石譲エッセイ連載 発売

2015年6月9日 CDマガジン 「クラシック プレミアム 38 ~ヴァイオリン・チェロ名曲集~」(小学館)
隔週火曜日発売 本体1,200円+税

「久石譲の音楽的日乗」エッセイ連載付き。クラシックの名曲とともにお届けするCDマガジン。久石による連載エッセイのほか、音楽評論家や研究者による解説など、クラシック音楽の奥深く魅力的な世界を紹介。

“Info. 2015/06/09 [CDマガジン] 「クラシック プレミアム 38 ~ヴァイオリン・チェロ名曲集~」 久石譲エッセイ連載 発売” の続きを読む