Score. 『久石譲 サントラ・ベスト・アルバム』

1994年12月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。久石譲が手がけた映画音楽から主題歌・メインテーマ曲など主要楽曲がセレクトされたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / サントラ・ベスト・アルバム

◆Album 『B+1』(Original Movie’s Sound Track Theme)より
As Time Passes 映画「NASA -未来から落ちてきた男-」
Against Love 映画「極道渡世の素敵な面々」
New Win 映画「カンバック」
Spring Powder 映画「春の鐘」
Remorse Wind 映画「春の鐘」
Dairy 映画「釣りバカ日誌2」
Dear Friends 映画「福沢諭吉」
The Fatal Day 映画「福沢諭吉」

◆Album 『ふたり』(Sound Theater Library)より
草の想い ~ふたり・愛のテーマ~
少女のままで
揺れるボタン

◆Original Sound Track 『水の旅人 -侍KIDS-』より
夢を叶えて
少名彦の願い
あなたになら… (Original Sound Track Versionをピアノ・ソロに編曲)
水の旅人 ~メイン・テーマ~

◆Album 『I am』より
Deer’s Wind 映画「仔鹿物語」
Tasmania Story 映画「タスマニア物語」

◆Album 『地上の楽園』より
The Waltz (For World’s End) 映画「女ざかり」

◆Album 『あの夏、いちばん静かな海」より
Silent Love (Main Theme)
Clifside Waltz I

 

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ
編曲:青山しおり 他
定価:1,500円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 サウンド・トラック〈人体〉セレクション』

1994年12月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」「驚異の小宇宙・人体II/脳と心」よりセレクトされたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / サウンド・トラック〈人体〉セレクション

◆ 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体 THE UNIVERSE WITHIN サウンドトラック Vol.1』より
THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Opening Theme-Synthesizer Version)
TOUR IN CELL ~ミクロの戦士たち~
FANTASY ~かくも壮大なる小宇宙~
MYSTERIOUS LOVE ~ひと・そして・愛~
TRANSIENT LIFE ~うたかたの夢~
BIRTH ~生命(いのち)の歓び~
THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Ending Theme-Orchestra Version)
THE ORIGIN OF SPECIES ~35億年の結晶~

◆ 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体 MORE THE UNIVERSE WITHIN サウンドトラック Vol.2』より
STRANGER ~かくも果てしなき未知の世界へ~
DÉJÀVU ~わればかりかく思うにや~
ONE NIGHT DREAM ~千億光年の夢物語~
THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Violin Version) [ヴァイオリン・ソロ+ピアノ伴奏]

◆ 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体II 脳と心/BRAIN&MIND サウンドトラック Vol.1』より
PRINCIPLE OF LOVE ~やさしさの芽生え~
IMAGINATION FACTORY ~魔術師たちの部屋~
BRAIN&MIND ~未知の秘境へのいざない~ [ピアノ弾き語り]
EMOTION ~永遠の春~

◆ 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体II 脳と心/BRAIN&MIND サウンドトラック Vol.2』より
COMPASSION ~はぐくまれた命~
DREAM OF GAEA ~懐かしき時夢~
FLASHOVER ~この一瞬にこめた想い~
PROCESS OF EVOLUTION ~運命の万華鏡~

 

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/日本放送出版協会
編曲・採譜:青山しおり
定価:1,400円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 地上の楽園』

1994年12月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム『地上の楽園』とのマッチング・ピアノ譜。ヴォーカル曲はピアノ弾き語り、インスト曲はピアノ・ソロとなっている。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / 地上の楽園

1. The Dawn
2. She’s Dead
3. さくらが咲いたよ
4. HOPE
5. MIRAGE
6. 季節風 (Mistral)
7. GRANADA
8. THE WALTZ (For World’s End)
9. Lost Paradise
10. Labyrinth of Eden
11. ぴあの (English Version)

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/パイオニアLDC株式会社
編曲・採譜:青山しおり
定価:1,500円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 テレビ・ドラマ・アルバム』

1994年12月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。久石譲が手がけたテレビドラマからのセレクト。ピアノ弾き語り、ピアノソロ、ヴァイオリン+ピアノなど、バラエティに富んだピアノスタイルで収載。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲/テレビ・ドラマ・アルバム

Original Sound Track 『ぴあの Vol.1』より
ぴあの “Joe’s Project” [ピアノ弾き語り]
Ripply Mind ~さざめく心~ [ピアノ・ソロ]
The Bonds Of Love ~愛情の絆~ [ピアノ・ソロ]
Fortepiano ~心の動機~ [ピアノ・ソロ]
From Pianissimo ~小さな決心~ [ピアノ・ソロ]
Path To The Lights ~希望への道~ [ピアノ・ソロ]
White Lie ~罪のない嘘~ [ピアノ・ソロ]
Twitter ~姉妹の喜び~ [ピアノ・ソロ]
Behind Backs ~ひそかな裏切り~ [ピアノ・ソロ]
Instrumental ~ぴあの~ [ピアノ・ソロ]

Original Sound Track 『ぴあの Vol.2』より
Regrets ~夕焼け~ [ピアノ・ソロ]
She Calls ~おむかえ~ [ピアノ・ソロ]
Tears ~夜~ [ピアノ・ソロ]
No Answer [ピアノ・ソロ]
ぴあの “純名里沙&Joe’s Project” [ピアノ弾き語り]
ぴあの ~Instrumental~ [ヴァイオリン・ソロ+ピアノ伴奏]
へんなまち ~Introduction~ (※) [ピアノ・ソロ]
へんなまち “純名里沙” [ピアノ弾き語り]
ぴーかぴか “純名里沙” [ピアノ弾き語り]
Broken Whistle ~拾いもの~ [ピアノ・ソロ]

Album 『地上の楽園』より ☆特別収載
ぴあの “English Version” [ピアノ弾き語り]

フジテレビ系全国ネット・ドラマ 『大人は判ってくれない』より
君だけを見ていた ~オープニング・テーマ~ [ピアノ・ソロ]

(※)CD『ぴあの Vol.2』に収録されている11曲目「へんなまち」と12曲目「ぴーかぴか」の前後に本楽譜のインストの曲が収録されています。

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/パイオニアLDC株式会社
編曲・採譜:青山しおり
定価:1,500円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Book. 久石譲 「パラダイス・ロスト」

1994年10月3日 刊行 パロル舎

 

「風の谷のナウシカ」「ぴあの」の作曲家・久石譲が言葉で奏でる繊細壮大、新たな世界。楽園にいながらも、決して楽園を歌わない人を描いた、「失われた楽園」の物語。

(ブック・インフォメーションより)

 

 

パラダイス・ロスト

【目次】

1あらかじめプログラムされていたマイヤ。

2デジタル表記の0と1の間にはミクロの世界が存在する。

3夏子はまるで少女のように危険な摩天楼と友達になった。

4僕の中の一つのロンドンは終わったのかもしれない。

5あんたは偶然という奴を信じますか?
そして冴恵はサウスイーストの季節風に乗って現われた。

6女はひとつ恋する度に前へ進み、男は振り出しに戻る。

7僕はいまパリにいる。だがそんなことは誰もしらない。
そして、サティは無造作に僕の前の椅子に腰かけ足を組んだ。

8ザクロのように真っ赤な血の滴る。

9楽園にいる人は楽園を歌うことはない。

 

 

この作品は1993年10月より1994年9月まで12回にわたって、『エスクァイア』誌上に連載された同名小説に、大幅に加筆訂正されたものである。なお本文中ゴシック部分は、アンヌ・レエ著 村松潔訳 『エリック・サティ』(白水社刊)より引用した。

(本書巻末より)

 

単行本: 229ページ
出版社: パロル舎
言語: 日本語
ISBN-10: 4894191156
ISBN-13: 978-4894191150
寸法: 19 x 13.4 x 2.4 cm

 

Disc. 久石譲 『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 2』

1994年8月25日 CD発売 PICL-1084

 

1994年放送 NHK連続テレビ小説「ぴあの」
音楽:久石譲 出演:純名里沙 他

 

NHK連続テレビ小説「ぴあの」テーマ・ソング「ぴあの」(純名里沙&JOE’S PROJECT)、挿入歌「ぴーかぴか」、「へんなまち」(唄:純名里沙)を含む全15曲収録。

 

 

NHK連続テレビ小説「ぴあの」挿入歌
「ぴーかぴか/へんなまち」 純名里沙

1994年8月21日 CDS発売 CODA-467

ぴーかぴか 純名里沙

1. ぴーかぴか 作詞:富永元文 作曲:久石譲 編曲:青木望 歌:純名里沙(桜井ぴあの)
2. へんなまち 作詞:嶋田陽子 作曲:久石譲 編曲:青木望 歌:純名里沙
3. ふしぎなポケット 作詞:まどみちお 作曲:渡辺茂 編曲:小森昭宏 歌:濱松清香
4. ぴーかぴか 作曲:久石譲 編曲:青木望 (オリジナル・カラオケ)

 

同作品収録のTrack.15「ぴーかぴか」とはバージョンが異なる。編曲者が違うためである。

 

 

 

「(映画などの)メイン・テーマやNHKのドキュメンタリー番組「人体」とか、作品として残る仕事以外は断っていたので、テレビの劇伴は10年ぶりなんです。ずっと映画だけやってきているから、テーマをもとに適当にセレクトしてやればいいところを、映画のようにきちんと合わせて作っちゃった(笑)。NHK側が思いっきり恐縮していましたけど(笑)。15分番組だと約5曲入れてるから、週に6本で30曲でしょ? 10週書くと300曲。もちろん決まったテーマはあるから全部新しいわけじゃないけれども、途中でハッと気づいたら、とんでもない量を作ってたんです(笑)。『オリジナル・サウンドトラック ぴあの Vol.2』(8月発売予定)と合わせてもその中の抜粋でしかなくて、5枚ぐらい出せるんじゃないかっていう(笑)。でも、しかたがないですね。流れ作業的なテレビのやり方が、僕はあまり好きじゃないから。」

「ええ。テレビのスタイルに合わせて小編成にしたんですが、基本的にシンセサイザーが中心で、最後に全部まとめて録った生と混ぜてます。全体的なことで言えば、今回は半年間、毎朝流れるので何度聴いても飽きがこないように配慮してました。」

Blog. 「KB SPECiAL キーボード・スペシャル 1994年9月号 No.116」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

ぴあの オリジナルサウンドトラック volume 2

1. ぴあの (純名里沙&JOE’S PROJECT)
2. South WInd ~南風
3. Regrets ~夕焼け
4. Music Box ~lost
5. Searching Time ~探しもの
6. Broken Whistle ~拾いもの
7. She Calls ~おむかえ
8. Side Wals ~草笛
9. Piano
10. Music Box ~found
11. Tears ~夜
12. No answer
13. ぴあの ~Instrumental
14. へんなまち (純名里沙)
15. ぴーかぴか (純名里沙)

Produced by Joe Hisaishi

Musicians
Keboards:Joe Hisaishi
Additional Keyboards:Haruki Mino
Drums:Yasushi Ichihara
Bass:Chiharu Mikuzuki , Makoto Saito
Guitar:Jun Sumida , Shuji Nakamura
Accoustic Guitar:Hironori Miyano
Strings:Shinozaki Group

 

Disc. 純名里沙 & Joe’s Project 『ぴあの』

1994年8月10日 CDS発売 PIDL-1134

 

1994年放送 NHK連続テレビ小説「ぴあの」
音楽:久石譲 出演:純名里沙 他

 

テーマ・ソング「ぴあの」

1994年4月4日-1994年10月1日まで放送された同作品の後期オープニング主題歌である。

前期オープニング主題歌は「ぴあの」/JOE’S PROJECT として同楽曲であるがボーカルおよびアレンジが異なる。(『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 1』収録)

この純名里沙 & JOE’S PROJECT版は、シングル発売されたほか『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 2』に収録されている。

 

カップリング曲「Labyrinth of Eden」は、久石譲ソロアルバム『地上の楽園』にも収録された同楽曲である。「ぴあの」(オリジナル・カラオケ)では、JOE’S PROJECT、つまり久石譲のコーラスをたっぷりと聴くことができる貴重な音源でもある。

 

 

1. ぴあの 作詞:松本隆 作曲・編曲:久石譲
2. Labyrinth of Eden (Instrumental) (アルバム「地上の楽園」より)
3. ぴあの (オリジナル・カラオケ)

 

Disc. 久石譲 『地上の楽園』

地上の楽園

1994年7月27日 CD発売 PICL-1085

 

洗練された都会派ポップスとしてのテイスト
ゲストにビル・ブラフォードやビル・ネルソンらを迎え、
クオリティの高いスタンダードなシティポップ・サウンドに。

 

 

やっと君に手紙を書く気になったよ。
できたんだ。いや正確に言うともうすぐできそうなんだアルバムが。
覚えているかな? エクスワイアの連載
~それは漠然とした思いであったし、形のない意志でもあった。
「なにかを変えなければ…」。
不満があったわけでもないし(もちろんないわけでもないが)、
作曲家・アーティストとして大きな問題を抱えていたわけでもない。
でももう一人の自分が赤色の信号を点滅させる。
「昨日と同じ自分であってはならない。」と。
そして僕はロンドンに渡った。 (Esquire Paradise Lost 連載より)~

 

1992年夏の終わり、秋風が吹き始めた頃同時にソロアルバムもスタートした。楽勝だと思った、ほんとに。アルバムのコンセプトは前作の制作中にできていたしね。君が好きだった「マイ・ロスト・シティ」-根なし草の都市生活者、文明社会になじまないで生きる人間の孤独と魂を歌った-より一歩踏み出して、ニヒリズムに走らない前向きなアルバムを作りたかったんだ。「地上の楽園」というタイトルだってできていたんだから。でも、何かを変えようと思ったロンドン生活は返って自分の矛盾を拡大し、分裂しちゃって創作活動ができなくなった。もちろんその間、僕だって黙って何もしなかったわけじゃない。数本の映画を担当し、ロンドン・シンフォニー・オーケストラ(85名)やビッグ・セールスの歌手のプロデュースもやった。内容には満足しているし仕事の量も人の3倍はやったと思う。でもソロ・アルバムだけはできなかった。時として人は自意識が強くなり過ぎて本来しなければならない、あるいは力を発揮しなければならないときに空回りするもんだね。東京とロンドンの異常な往復がそれに拍車をかけたと思う。10数回は往復しているんだから、疲れたよまったく。

早いよね、あれから2年が過ぎ、今僕はロンドン・タウン・ハウス・スタジオにいる。今日は「The Dawn」のミックス・ダウンだ。遅れていたヴォーカルを録り、今リアル・ドラムとマシン関係のリズムの調整中だ。信じられるかい? あのビル・ブラッフォードだぜ!そう君が好きだったキング・クリムゾンのドラマーさ。夜の12時を少し回ったところ、これからミックスだ。そう、もう何日も寝てないんだ。今年に入ってからずっとさ。中毒のことをこちらではホリックっていうんだけど僕なんか正しくスタジオ・ホリックって呼ばれているよ。毎朝11時から明け方4時か5時まで、異常だよまったく、珍しく早く東京に帰りたいよ。でも、ふと考える、曲も書けずにロンドンの街を彷徨った日々を思うとどんなに幸せかと。もちろん今だってトラブル続きで頭に来る毎日だが、それだってあの寒々しい所を誰にも頼れず送った日々に比べたらまるで天国だ。でもやっとわかった。曲が書けなかったんではなくて頭の中で書きたかったテーマに対して僕がついていけなかったんだっていうことに。だから時間がかかった。バリ島にも行ったしアフリカのサバンナにも行った。そして僕は理解したよ。このアルバムは僕自身の楽園を目指すための試練なんだと、ちょっと大袈裟かな。もちろんこれは反意語だ。心の中の楽園を希求するアルバムであって楽園賛歌ではない。フォーク・ソングという言葉がすでに故郷を離れた人からしか言えないように楽園にいる人は楽園を歌うことはない。このアルバムには様々のスタイルの曲が収められて、それは3年かかった僕の心の軌跡であり変化でもある。でも94年の春、覚悟のレコーディングに入って数曲のBasic Recordingを終えたとき僕は悟った。すべては-DEAD 死-人間にとっての死をテーマにしていたと。それは決して恐れるものでも暗いものでもないし、むしろそれを身近に感じることによって死と隣り合わせの生を感じる、生を生きることなのだと。その意味でこれはコンセプト・アルバムだよ。といってもそんなに難しいものじゃない。むしろすごくポップだよ。例えば「HOPE」あのビル・ネイソンが詞を書いて歌ってもいるよ。すごくいい仕上がりだ。きっと君も気に入るはずだ。もともと「HOPE」は19世紀のイギリスの画家ワッツが描いたものなんだけど、地球に座った目の不自由な天女がすべての弦が切れている堅琴に耳を寄せている。でもよく見ると細く薄い弦が一本だけ残っていて、その天女はその一本の弦で音楽を奏でるために、そしてその音を聞くために耳を近づけている。ほとんど弦に顔をくっつけているそのひたむきな天女は、実は天女ではなく”HOPE”そのものの姿なんだって。いいだろう、だからほんとはその絵をこのアルバムのジャケットにしたかったんだよ。何故か無理だったけどね。他のも一見関係なさそうに見える曲がそのテーマのまわりをまるで走馬灯のように、音楽的に言えばロンドのようにぐるぐるまわっているんだ。ミルトンの「失楽園」や坂口安吾の「桜の森の満開の下」などから歌詞のコンセプトを得たのもその為だ。すべてはこの世紀末の価値観が崩れる時代だからこそ必要な表現だった。興奮するよ、僕が作ったんじゃなくて誰かに作らされたような気がする。でもそんなことは僕の問題でしかないのかも知れない。おそらく56分前後の長いアルバムになるはずだ。でもこれは僕と君とのロング・ディスタンスの後としてはあまりに短い。僕はもっと君に語りたい。取りあえずこのアルバムを聞くことから始めてくれないか? そしたら少しは僕たちの間は公園のベンチの隣どうし位は近い存在になれるかも知れない。君の返事を待ってるよ。又、会おうよ、いつかきっと…何処かで。

Joeより愛をこめて

(CDライナーノーツより)

 

 

HOPE 地上の楽園

『HOPE』(1885) George Frederic Watts

 

 

1. The Dawn
夜明け、魂が最も肉体から離れるとき。
地上をさす光と天井にともる星のイルミネーション。
やがて希望の光が地上を覆い現実の世界が白日のもとに晒される。
そして人々はそれから目を背ける。

2. She’s Dead
あの娘が死んだ。ディンドンとベルが鳴りオレは叩き起こされた。
刑事は疑っている。アリバイ? そんなものはない。
何も覚えてないんだ、何も・・・。
でもオレはやってない、がやってない証拠もない。記憶にないっていうことは・・・
とにかく-あの娘は死んだ。

3. さくらが咲いたよ
山賊は惚れた、女があまりに美しすぎて。やがて自分を失う。
7人の妻を殺し、京に上り毎夜女の為に首を取る。 (坂口安吾「桜の森の満開の下」より)

4. HOPE
その日、僕はテイトギャラリーにある「HOPE」の前に立った。1886年、WATTSが描いたそれはいつもと変わりなく僕を迎える。
地球に座った目の不自由な天女「HOPE」が奏でる音楽を聞きたいと君はいった。

5. MIRAGE
時々砂漠の夢を見る。
都会の(夜も更けた頃)汚れた歩道を歩いているとそれが果てしなく続き、やがては砂漠に辿り着く。
そして僕は口ずさんでいる。
金と銀の鞍をつけたラクダはすでに死に、焼けた砂を踏みしめながらゆっくり僕は歩く。
蜃気楼の地平線をめざして。

6. 季節風 (Mistral)
サウスイーストの季節風にのって君は現れた。
運命的な出会いは案外さりげなくやってくる。仄かな潮の香りが肌から立ち昇る。
忘れていた熱い情熱が蘇る。
いつか終わりが来て、けだるい孤独だけが残ることを僕は知っている。
でも賭けてみようか?

7. GRANADA
ざくろの実が割れたものをじっと見たことがありますか?
すごく鄙猥でいかがわしくて何だか吸い込まれそうで、まるで地獄だ。
その真っ赤な血のような汁の海に人間がのたうち回っている。芥川風に一本の糸が垂れて人々がそれに飛び付く。
それを遥か彼方の上空からたのしそうに見ている天使たち。笑顔の中の瞳は何の感情も浮かんではいない。
そこが世界の始まりかも知れない。

8. THE WALTZ (For World’s End)
「ねえ、一緒に逃げようよ。どこまでもさー、この世の果てまで、なんか追われるって素敵だよね。
そしたら俺達もう一度やり直せるかもしれない。二人しかいないんだ、他にはなにもない、物音一つしない・・・。
ねえ、踊ろうよそこでタンゴを。何なら・・・ワルツだっていいんだ、君さえよかったら」
タキシードの僕は一人で踊った、砂の上で・・・・。

9. Lost Paradise
ミルトンの失楽園は何を問いかけているのか? サタンは最も人間的な存在なのか?
東洋の阿修羅、西洋のサタン、伝説は人の心の裏返し。
「すべてはサタンの誘惑から始まった」

10. Labyrinth of Eden
迷宮への誘い(いざない)。
死-それは一つの終わりであって始まりでもある。

喜びは次に来る悲しみを産み、怒りは自己嫌悪を産む。
哀しみはいつまでも心の片隅に残り、楽しみは突然襲ってくる空しさを産む。
そのすべてから解き放たれたとき、魂は浄化され人間は初めて自由を得る。

永遠の罪を背負って砂漠を旅するアダムとイヴ。
ただひたすら、ラクダに揺られて・・・。
(僕は歩く、魂の砂漠を。たった一人で・・・・。)

11. ぴあの (English Version)
そこには音楽があった。
こわれたおもちゃのピアノ。
ソの音は低く、シの音は限りなくドに近い。
でもそこには音楽があった。やさしく哀しく、
そして、温もりをもって・・・。

(CDライナーノーツより)

 

 

 

「そうですね。今、僕といっしょにやってくれてるブルー・ウィバーは、ビー・ジーズのワールド・ツアーとかを死ぬほどやったひとりだから、歌の伴奏の極致のようなワザを持っていて、ロンドンでやる時は彼と相談しながら作っていったんです。歌モノが中心なので、アレンジは複雑なポリフォニックなリズムとかではなく、もっと直線的な扱いになりましたが、いわゆる日本の歌伴奏的なものではないエレメントが欲しかったので、とてもいい勉強になりましたね。メロディ・ラインをボーカル・ラインに切り換えたことにも通じるんですが、この数年間は弦とピアノのピュアな世界を作ってましたから、今度はカオス…混沌とさせるぐらいにいろんな要素が入ってるサウンドということで、限定する作業から開放する作業に切り換えたんです。」

「バンドネオンという楽器にこだわりがあって、前回の「タンゴ・エクスタシー」に引き続き、今回も1曲やりたいと思ってたんです。あれだけ色の濃い楽器はないでしょ? アコーディオンはシャンソンで象徴されるように比較的洗練された楽器だけれども、バンドネオンはアタックが想像以上に強くてキレがすごいから、鳴ってるだけで世界観がひとつできてしまうようなところがあるし…。ちなみに、この曲「THE WALTZ(For World’s End)」は映画「女ざかり」のテーマに使われています。」

「ドラムで言うと、みんなやっているようにパーセンテージで細かく見ていくとか、ハイハットもベロシティで変化が出るようにする。中でもドラムで難しいのはフィル・インなので、タムやシンバルはローランドのオクタパットでリアルタイムでやるようにしてますね。音に関しては、3、4種類のキックをうまく使い分けていくやり方。ただし、僕は生のシミュレートは時間のムダづかいと思ってるのでやりません。たとえば今回参加してもらったビル・ブラッフォード(キング・クリムゾン)にしても、彼独特のスネアの音とフィーリングが欲しければ彼に頼んだほうがよいわけだから。」

「漂った感じを出したい時やパッド的な扱いの時はシンセ・ストリングス。そのほうが奥ゆき感が出たりするんですよ。僕の場合、フェアライトの音源やK1000とかだけで成り立つぐらいのクオリティの音を作っておいたものに、生の弦を入れるやり方で、いつも両方コンバインしながら作っていくんですが、生弦に関しては今回はロンドン・シンフォニーということもあって、シンセはいっさい足してません。」

「フェアライトIIの時代のいちばん誰も使わない音を、あえて使ってるんです(笑)。ハダカで聴いたらクオリティの悪い音だけれども、実はその音が持ってる不思議なエキゾチックな世界観が僕にとってはすごく大切なんですよ。ただし、あの音を支えるためにかなりのストリングスがユニゾンで鳴っていて、ほとんど聴けないぐらいの状態でM1もなぞってるはず。何を際立たせるかによって、いろんなものを組み合せて考えていく方法を僕はとってます。」

[使用機材]
☆マスター・キーボード
AKAI MX76
☆シーケンサ
Macintosh Quadra 610/Vision Ver 2.02
☆音源
Fairlight SERIES III/SEQUENCIAL CIRCUIT Prophet-5/YAMAHA DX7/YAMAHA DX7 II FD/MIDI MINI/KORG i2/KORG WAVESTATION SR/KORG M1R/KURTZWEIL K1000/KURTZWEIL K1000PX Plus/E-MU Proformance/YAMAHA TX81Z

Blog. 「KB SPECiAL キーボード・スペシャル 1994年9月号 No.116」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「じつは3年前、今井美樹のアルバムのプロデュースが終わったあとロンドンのスタジオにこもって『地上の楽園』というコンセプトで何曲か創ったんですけど、どうも納得できない部分があってアルバム作りを中断したんです。あの時期は自分の中ではっきりと音への志向性が変わっていきつつあることが感じられて…一時期、ボクは完全にスランプに陥っていましたね。映画やテレビのスタッフワークの中からはいくらでもアイデアは出るんですけれど、ソロアルバムとなると自分の中にたまったものが勝負になる。それがあのときの自分には少なかった」

「歌メロをやっていく中で、これまでのインストゥルメンタルの活動がいかに重要だったか痛感させられましたね。というのも、たとえば歌詞で簡単に〈愛してる〉と歌うところをインストゥルメンタルだとかなり細かく、かつ量も豊富にメロディーを積み重ねて聴いてくれる人を説得するわけですよね。細かい音創りが求められるわけです。そうした経験がどんな内容の歌詞が乗ろうと十分に聴きごたえのある音創りに生かされる。ボクはつねづね日本でもデイヴィッド・フォスターやクインシー・ジョーンズのようなメロディー作家が出てくるべきだと思ってた。彼らは自分で作詞も演奏もしなくてもでき上がってきたアルバムには彼らの個性が貫かれている。ひとつにまとまったプロジェクトを組んでアルバム作りをしているからなんですけど、そうしたスタイルをボクは日本でも定着させたいんですよ」

Blog. 「テレパル TeLePAL 1994年 6.25-7.8」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

地上の楽園

1. The Dawn
2. She’s Dead
3. さくらが咲いたよ
4. HOPE
5. MIRAGE
6. 季節風 (Mistral)
7. GRANADA
8. THE WALTZ (For World’s End) (映画「女ざかり」より)
9. Lost Paradise
10. Labyrinth of Eden
11. ぴあの (English Version) (NHK連続テレビ小説「ぴあの」より)

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi
(except “Piano” Strings Arranged by Nick Ingman)

Musicians
Iain Ballamy,Bill Bruford,
Hugh Burns,Dabid Cross,Lance Ellington,
Motoya Hamaguchi,Mitsuo Ikeda,Rap Jonzi,
Michel Mondesir,Bill Nelson,Tessa Nile,
Jackie Sheridan,Kenji Takamizu
The London Session Orchestra,Gavyn Wright

Recorded at:
Townhouse Studio,London
Abbey Road Studio,London
Music Inn Yamanakako
Crescente Studio Tokyo
Wonder Station Tokyo

Pre-produced at Blue Weaver Studios, London
Mixing & Recording Engineer:Stuart Bruce
Alan Douglas(3,7)
Mastering Engineer:Tony Cousins(at Metropolice Studio)
Recording Engineer:Richard Evans(Real World)
Darren Godwin(Abbey Road Studio)
Suminobu Hamada, Tohru Okitsu, Eiichi Tanaka
(Wonder Station)
Assistant Engineer:Mark Hayley, Lorraine Francis
(Townhouse Studio)
Tomonori Yamada, Ayato Taniguchi
(Wonder Station)
Shinpachirou Kawade(Music Inn Yamanakako)
Mitsuo Sawanobori(Crescente Studio)

 

Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体II 脳と心/BRAIN&MIND サウンドトラック 総集編』

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体II 脳と心/BRAIN&MIND サウンドトラック 総集編』

1994年7月21日 CD発売 MRCA-20040

 

1993年放送 NHKスペシャル「驚異の小宇宙 人体II 脳と心」
音楽:久石譲

 

羊水の中で聴いた、あの音に似て…
限りなき脳宇宙への旅立ち

 

APO(高品質素材)、Qサウンド(3Dサウンド)デジタルリミックスによる人体IIベスト盤

 

 

Q SOUNDとは…?
Q SOUNDとは、現行の2チャンネルステレオシステムそのままでスピーカーの外側の空間に音を定位させることができる画期的なレコーディングシステムです。例えば、リスニングポジションの真横に音を定位させたり、耳元に定位させたりすることが可能で、そしてなによりも音楽にとって必要な空間スペース、ホールやルームの響きをリアルに再現することができます。

APO方式スーパーCD
APOは、アモルファス・ポリ・オレフィン(Amorphas poly Olephin)で光ディスク基盤用に研究・開発された新素材です。このAPOで作られたCDは、従来のCD素材に比べ、

◎高音の歪みが少なく、音抜けが良い。◎低音が豊かに響き、重量感がある。◎残響音の拡がりを、繊細に再現できる。◎光学特性がケタ違いに優れ、ピュアな音を再現できる。◎光弾性系数が良く、CDプレーヤーにセットするときに加わる、クランプ時の応力による複屈折率変化が小さいため、音に歪みが生じにくい。◎硬度が高く、キズがつきにくい。◎吸水性・耐熱性に優れ、真夏の車中でも安心。

など、数々の優れた特徴をもち、まさしく世界最高水準の、ケミカルテクノロジーから生まれたものです。

(音質解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

Posted on SNS, 2024

総集編は寄せ集めベスト盤にあらず。実は全曲でバージョンやミックスが違うnot重複。開封しよう!ゲットしよう!手元におこう!コレクション泣かせとは言わせない一枚だ!

 

BRAIN&MIND 未知の秘境へのいざない
総集編ver.はイントロ追加、ピアノやエレキギターの即興的フレーズが曲全体で大増量!!ボーカル久石譲

ETERNAL HARMONY ひらめきの瞬間
総集編ミックスは、音がぐるぐる回るステレオ感がとっても楽しい。左右のバランスチェックに、故障かなと思ったら?!

PRINCIPLE OF LOVE やさしさの芽生え
タイムは全く同じなのに、Vol.1と総集編の2つを並べたらバージョン違うとはっきりわかる。表記はないけど。スネアやシンバルもくっきり、個人的こっち一択

MYSTERIOUS NEURON きらめく神秘の世界
イントロからディレイ的チャンネルが1つ多いとか、2分くらいからのベースにドラムのキック重ねてないとか、3分くらいからシェイカー効いてるとか、分ごとに多々ある

COMPASSION はぐくまれた命
総集編ver.はメロディを切り気味なシンセサイザーに修正してる。エコーとかのミックスかな、弾き直しはしていないデジタルな調理法

IMAGINATION FACTORY 魔術師たちの部屋
総集編ver.はピアノもシンセストリングスも音の質感が違う、耳でころがすテイスティング

MEMORIES OF… 鮮やかな記憶の残照
総集編ver.はSEみたく歪んだ音加工したシンバルが曲の味ベース。左右にパンするスネアのフィル追加。シンセサイザーのアドリブ大増量。30秒長いED2コーラスループ

DREAM OF GAEA 懐かしき時夢
総集編ver.はイントロからこだましてる、トトロみたいな伴奏もこだましてる1:30くらいわかりやすい

EMOTION 永遠の春
曲名とおり春も感じる。総集編ミックスはストリングスもぐっと大きい

NEW GENERATION 未来人への予感
総集編ver.はイントロからこだましてる(この曲も!?)、16ビート感がアップしたリズム、2分くらいのブンッブンッSE

RETURN TO LIFE 驚異の再生能力
総集編ver.はメロディの笛の音が2種重ねてある、30秒くらいわかりやすい。曲全体のシンセピッチカートも硬質な肌ざわりに

WHY DO THE PEOPLE 長い旅路の果て
終曲。ここまできて一曲だけ同じバージョンってことはない。何が違うかな….総集編ver.はVol.1&2収録バージョンと全曲違う!マストな一枚!(ふらいすとーんの耳調べ)

 

 

 

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体II 脳と心/BRAIN&MIND サウンドトラック 総集編』

1. BRAIN&MIND 未知の秘境へのいざない
2. ETERNAL HARMONY ひらめきの瞬間
3. PRINCIPLE OF LOVE やさしさの芽生え
4. MYSTERIOUS NEURON きらめく神秘の世界
5. COMPASSION はぐくまれた命
6. IMAGINATION FACTORY 魔術師たちの部屋
7. MEMORIES OF… 鮮やかな記憶の残照
8. DREAM OF GAEA 懐かしき時夢
9. EMOTION 永遠の春
10. NEW GENERATION 未来人への予感
11. RETURN TO LIFE 驚異の再生能力
12. WHY DO THE PEOPLE 長い旅路の果て

Compose&Arrangement:Joe Hisaishi
Producer:Joe Hisaishi

Singer:Jackie Sheridan / Without Sugar
Guitar:Clem Clempson

Synthesizer Operator:Peter Wielk / Blue Weaver

Recording Studio:
Battery Studios (London)
Matrix Studios (London)
The Townhouse
Wonder Station

 

Score. 『久石譲 スペシャル・セレクション』

1994年6月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム「PIANO STORIES」、および初期アルバムからセレクトされたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

寄稿

”PIANO”──自分にとって”PIANO”は、とても大切な楽器であって、”PIANO”と向かい合う時には、自分は作家としてではなく、まったくの「個人」に戻ってしまいます。

「個人に戻る」──ということは、非常に基本的なことに戻るということなのです。

メロディーを創り、それに対してコード付けをし、さらにベース・ラインを付け加える…いろいろな要素が一体となり、「自分が素朴に指を動かす」。──この行為の先、そして指の先から”メロディー”が立ち昇って行く…このような一番シンプルな行為に戻りたいと思っています。そして結集されて生まれ出たものが、アルバム『PIANO STORIES』なのです。

この基本姿勢は、今日まで変わりません。それは何かというと、「自分の内なるメロディーに対して、自分で耳を傾ける」ということなのです。このような素朴な行為に身を委ねたいと思っています。

作家としてわがままに言わせてもらえば、『PIANO STORIES』の一番最初の聴衆は「自分」である…と。「自分個人」に向けて創ってきたものなのです。

そして、第二の聴衆として、僕と対峙するもう一人の「あなた」。いつも、「僕対もう一人の個人」に向けられる、「一対一の音楽」として創り上げてきました。そういう関係の音楽だと自分では思っています。

それが少しずつ拡大してきていることは事実です。

例えば、アルバム『THE UNIVERSE WITHIN』では、もっと自分が感じる世の中の人々に対する「やさしさ」のメッセージ、さらに広がりを持ったメッセージになっています。

NHKスペシャル『驚異の小宇宙・人体』をご覧になってすでにご承知のように、人間の持っているメカニズムは、人間が創りうる範囲を超越しています。人間生体のメカニズムの凄さ、これはまさに「神の領域」なのではないか…ということや、「人間」に対する「尊厳」と「やさしさ」をテーマに謳い上げたものです。

この時、自分の中で「一対一」の関係で創り上げた、”PIANO”の楽曲がもっと広がりをもてたことは事実です。毎回アルバムをリリースするごとに、自分の中で、「自分」と「PIANO」の関係が少しずつ広がりながら、日々進行形で変わってきています。

例えば、アルバム『illusion』は基本的にヴォーカル・アルバムでしたが、タイトル・チューンの「illusion」に象徴されるように、このアルバムは自分にとって一番大事な作品であり、また次のアルバム『PRETENDER』でニューヨーク・フィルのメンバーと共演した「View of Silence」でも、「自分」と「PIANO」の関係は広がり、脈々と自分の中でも「PIANO STORY」が毎日できあがっています。

JOE HISAISHI

(寄稿 ~本スコア収載)

 

 

Cover Photo by Joel Meyerowitz
Prouncetown 1977

 

久石譲 / スペシャル・セレクション

◎from Album 『PIANO STORIES』
A Summer’s Day [Epilouge]
Resphonia [レスフィーナ] 『アリオン』から
W Nocturne [Wの悲劇] 『Wの悲劇』から
Fantasia (for Nausicaä) [風の伝説] 『風の谷のナウシカ』から
Innocent [空から降ってきた少女] 『天空の城ラピュタ』から
The Wind Forest [風のとおり道] 『となりのトトロ』から
Dreamy Child
Green Requiem 『グリーン・レクイエム』から
The Twilight Shore [砂丘 I] 『恋人たちの時刻』から
Lady of Spring [早春物語] 『早春物語』から

◎from Album 『THE UNIVERSE WITHIN 「NHKスペシャル驚異の小宇宙・人体 サウンドトラック」』
The Origin of Species [35億年の結晶]
The Inners [遥かなる時間(とき)の彼方へ] (Opening Theme-Synthesizer Version)
Mysterious Love [ひと・そして・愛]
Transient Love [うたかたの夢]
Birth [生命(いのち)の歓び]
The Inners [遥かなる時間(とき)の彼方へ] (Ending Theme-Orchestra Version)

◎from Album 『illusion』
冬の旅人 [フジ・東海テレビ全国ネット・テレビ・ドラマ『華の別れ』主題歌/Piano Solo Version]
illusion

◎from Album 『PRETENDER』
Manhattan Story
View of Silence

◎from Original Soundtrack 『タスマニア物語』
Tasmania Story “Main Theme” 『タスマニア物語』から

 

監修:久石譲
編曲・採譜・解説:青山しおり
定価:1,600円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社