Info. 2023/11/10 「作曲家・久石譲、目指す音は自然の造形美…オペラにオーケストラ指揮と挑戦続く」(読売新聞オンラインより)

Posted on 2023/11/10

作曲家・久石譲、目指す音は自然の造形美…オペラにオーケストラ指揮と挑戦続く

秋の叙勲で、旭日小綬章を受章した作曲家の久石譲(72)が企画する現代音楽のシリーズ公演「ミュージック・フューチャー」が、10回目を迎えた。同じ音型を繰り返す「ミニマル・ミュージック」の系譜に連なる作曲家を自負する久石が目指す音楽とは。(金巻有美) “Info. 2023/11/10 「作曲家・久石譲、目指す音は自然の造形美…オペラにオーケストラ指揮と挑戦続く」(読売新聞オンラインより)” の続きを読む

Info. 2024/01/26 映画『サイレントラブ』音楽:久石譲 公開決定!! 【11/10 update!!】

Posted on 2023/09/11

山田涼介 × 浜辺美波『サイレントラブ』2024年1月公開決定!特報&ティザービジュアルが解禁!

山田涼介がラブストーリー映画初主演を務める『サイレントラブ』が2024年1月に全国公開されることが決定し、特報映像とティザービジュアルが解禁されました。 “Info. 2024/01/26 映画『サイレントラブ』音楽:久石譲 公開決定!! 【11/10 update!!】” の続きを読む

Blog. 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10」コンサート・レポート

Posted on 2023/11/08

10月30日,11月1日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10」コンサートです。近年は慣例となっている春発表、そこにテリー・ライリーさんのお名前を見たときには驚きました。いよいよその時がきました。予感はありました。でも実現するかはまた別、久石譲×テリー・ライリー、世紀のミニマル・コラボが遂に!です。今年10回目を迎えるアニバーサリーにふさわしい夢の共演!11月1日公演はライブ配信(アーカイブ配信なし)も叶えられました。

 

 

久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10

[公演期間]  
2023/10/31,11/01

[公演回数]
2公演
東京・紀尾井ホール

[編成]
久石譲
テリー・ライリー
サラ
Music Future Band

[曲目]
テリー・ライリー:Dr. Feelgood ~The last gasp of my dying classical career~ *World Premiere
久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Cellos

—-intermission—-

テリー・ライリー:Aquatic Parc Mix ~Lago Passacaglia & Danse to the End~ *World Premiere
久石譲:MKWAJU for MFB *World Premiere
    I. MKWAJU
    II. SHAK SHAK
    III. LEMORE
    IV. TIRA-RIN

[参考作品]

ムクワジュ・アンサンブル 『MKWAJU』 久石譲 『Shot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』

 

 

まずは会場で配られたコンサート・パンフレットからご紹介します。

 

 

MUSIC FUTUREはミニマルミュージックをベースにした現代の音楽を聴くことのできる唯一のコンサートです。今年で10回目を迎えますが、皆様に支持されてここまでくることができました。心より感謝いたします。

その記念すべき10回目にミニマル・ミュージックの創始者の一人であるTerry Rielyさんをゲストに迎えられたことは望外の喜びです。彼の音楽と彼から触発されてミニマリストになった僕の音楽を楽しんでいただきたいと思います。

2023年10月
久石譲

 

 

久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Cellos
    揺れ動く不安と夢の球体 ー2台のチェロのための(2022)

原曲は2012年、Hakujjuギター・フェスティバルの委嘱作品として2台ギターのために作曲し、荘村清志氏と福田進一氏により初演された。ギターの開放弦を使ったリズミックな楽曲に仕上がったが、その後2014年にMUSIC FUTURE Vol.1においてマリンバ2台のためにRe-Composeした。そして2022年知り合いの西村朗氏が参加していた作曲家グループ「4人組」のコンサートで「2 Cellos」として再びRe-Composeした。ただスケジュールが厳しかったこともあり、最も信頼する作曲家長生淳氏に編曲を依頼した。チェロの開放弦を利用することなどを打ち合わせした上で彼に全て任せた。そして仕上がった楽曲は別の楽曲に生まれ変わった。躍動感あふれるミニマルの反復と複雑な変拍子を用いた原曲の構成はさらに立体的に、そして人間的になったと僕は考えている。

その機会を作っていただいた西村朗氏は突然他界された。今後10年以上論争をしていくはずだった良きライバルを失い言葉もない。今回MUSIC FUTUREで演奏するのは西村朗氏への追悼の意味もある。ご冥福を心からお祈りしたい。

曲名は、アメリカの詩人ラッセル・エドソン(1935-2014)が生命の宿る瞬間を表現した一節による。「揺れ動く不安と夢の球体」という日本語表現が気に入り、敢えて原文の文脈にとらわれず”shaking anxiety(揺れ動く不安)and dreamy globe(夢の球体)”という英語に逆変換し、新たなタイトルとした。

久石譲

 

 

Terry Riely:Aquatic Parc Mix ~Lago Passacaglia & Danse to the End~(2023) *World Premiere

『アクアティック・パーク(AQUATIC PARC)』は、私が日本に居を構えるようになった2020年から描き始めた楽譜とドローイングの数々を編纂した物の一つです。

この作品を構成する複数の「頁」は、各々が独自のタイトル・音楽の断片そしてドローイングを持つ部分集合(サブセット)として存在しており、それ故に非常にユニークな記譜法と相成りました。演奏者一人一人は、各素材を基に、各々が独自のバージョンを編纂していくことを推奨され、つまり、都度同じ演奏には成り得ません。各頁の演奏時間・オーケストレーション・順序・音の強弱・そして音楽の全体的な形式や流れは、明確に規定されていません。言わば、演奏される度に独自に組み立てられる「音楽素材建設キット」のようなもので、即興的な相互の働きかけを強く促すものです。

今回の公演のために取り上げる頁の各題名は、以下の通りです。(註:全部で14の頁が書かれた中の2頁)

I. ラーゴ・パサカヤ(Lago Passacaglia)
II. ダンス・トゥ・ジ・エンド(Dance to the End)

『ラーゴ・パサカヤ』は、2台のシンセサイザーとあらゆる種類の楽器の混成アンンサンブルとのために作曲しました。楽曲の基礎となる2つのシンセサイザー・パートは、8分の6拍子で書かれた4つのベース反復パターンで構成されています。1台は、一貫してセル’a’,’b’,’c’もしくは”d”のいずれかのセルを反復して演奏。その上に、もう1台は即興で素材を加えていきます。そのセクションと対応して、8分の6拍子で書かれた6小節ずつの6つのラインが楽器アンサンブルによって交互に演奏されていくのですが、各楽器の演奏者は「自分がいつ、どこに入るか」或いは「演奏するか・しないか」等を自由に選択することができます。指揮者は、音楽の流れを整理する、言わば「交通整理をする警察官」のような役割を果たすのですが、「素材に最も効果的な形を与え得る」と判断した際は、指揮者は個々の演奏家の決定を覆しても構いません。

『ダンス・トゥ・ジ・エンド』は、我が弟子である宮本沙羅の協力を得て、今回の公演のために編曲しました。私ライリーが『ジゲル・ターラ(Shigeru Tala)』と命名したリズム構造(5と4に分割した9拍のパターン)に基づき、「水族館」に散在する音楽の断片を使い、ひとつの完全な作曲作品を作り上げてみた、という次第です。

今回私は、主にこれら「水族館」の各頁にある素材から、この生き生きとしたフォルムを編纂していった訳ですが、その過程でも折に触れて新しい素材が浮かんでくるなどして、それらが最終的な構成を形づくる大きな助けとなりました。

創作に於いて、私にはこのような事が屡々起きるのです。

 

註:通常、音楽用語としての「Passacaglia」は「パッサカリア」とカナ表記されるが、ライリー氏曰く「それは勿論認知しつつ、それとは違う自分ならではの形態」ということ。本人による発音、並びに、明確に区別する意味も込めて「パサカヤ」と表記する。

※「Dr. Feelgood ~The last gasp of my dying classical career~」は作曲家の意図により、解説を掲載していません。

テリー・ライリー
北杜市にて 2023年10月21日

 

 

久石譲:MKWAJU for MFB(2023) *World Premiere
    I. MKWAJU
    II. SHAK SHAK
    III. LEMORE
    IV. TIRA-RIN

MKWAJUはスワヒリ語のタマリンドの樹の意味である。作曲当時の1980年前後に東アフリカの民族音楽を集めたLPレコードを聴いてヒントを得たと記憶している。

ムクワジュ・アンサンブルによって1981年レコーディングし、その後英国のバラネスク・カルテットを招聘した国内ツアーなどで演奏した。またロンドン・シンフォニーとのアルバム「Minima_Rhythm」でもオーケストラ用にアレンジしている。

今回Terryさんを迎えたMUSIC FUTURE Vol.10のための新曲も試みたがしっくり来ず、レジェンドである彼へのオマージュの意味を含めて4曲からなるMKWAJU組曲として完成させた。

Re-Composeにあたって、繰り返しを意味するリピートマークが多用されていることに懐かしさと多少の違和感を覚えたが(現在の僕はそれを使うことはない)ミニマル音楽の基本であることを重視し、原作を尊重しながら作業を進めた。Marimba、Vibraphone等をフィーチャーしたMusic Future Bandの演奏を楽しみにしている。

久石譲

(「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10」コンサート・パンフレットより)

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

 

テリー・ライリー×久石譲、コンサート・コラボレーションの予感はありました。2022年3月リモート対談、2022年10月「MUSIC FUTURE Vol.9」コンサートでのバックステージ・ショット、同時期「テリー・ライリー with special guest 久石譲 @Billboard Live YOKOHAMA」は久石譲さんの体調不良のため公演中止になってしまいました。2023年9月「NHK スイッチインタビュー」放送(8月収録)、そうして本公演と一歩一歩着実に距離を縮め親交を深めていった二人のミニマル巨匠です。

 

「A Rainbow in the Curved Air」を聴いて
ミニマル・ミュージックを知った
あまりのショックに数日寝込んだ
そして僕はミニマリストになる決心をした

そのテリー・ライリーが日本に滞在していてコンサートを開く
日本で何を感じ、何を見つめていたのか?
聴き逃すことはできない!

いつか僕の主催するMusic Futureに曲を書いてもらう
そんな夢を実現したい

久石譲

 

 

 

 

 

 

 

 

”いつか僕の主催するMusic Futureに曲を書いてもらう そんな夢を実現したい”(2022年3月)、まさかそしてこんなにも早く実現!テリー・ライリーさんのプログラムはどちらも世界初演になる新作です。

 

 

久石譲あいさつ

久石譲が登壇してあいさつが5分程ありました。MUSIC FUTUREについて、シリーズ振り返り、テリー・ライリーさん紹介、プログラム紹介など。また特記事項としてプログラム順についても。通常はゲストは後ろに組むことにしているけれど、テリーさんの作品はシンセサイザー、電子楽器なのでセッティングなどデリケートになる。音のトラブルを減らしたいという配慮から、前半後半ともにテリー・ライリー作品を先行にプログラムしている。といったお話でした。なるほど。

 

 

Terry Riley:Dr. Feelgood ~The last gasp of my dying classical career~(2023) *World Premiere

楽器編成:キーボード2 (楽器編成はコンサートの目視による、以下同)

約20分の作品。テリー・ライリーさんのコンサートを聴ける日が来るなんて。すぐ近く目の前にテリーさんがいて演奏している。ミニマル好きを育ててもらったファンにはたまらない瞬間です。久石さんを通してミニマル・ミュージックに親しんできた、その源流にふれることができる。よくここまでミニマルについてきたねとご褒美をもらってる気持ち、一生忘れない。

瞑想的で幻想的で、すっと力をほどくことのできる心地よさです。テリー・ライリーさんのスタイルは即興性にあります。どんな感じなんだろうと想像していたんですけれど、とても魅力的でした。たとえば即興性というとジャズのようにエキサイティングあるいは楽器ごとのアドリブバトルのような競演あたりをイメージします。それとは真逆と言っていいほどでした。風や雲のように常に移り変わるもの、ひとつとして同じ瞬間はない、再現できない。録音芸術とはまた異なるライブらしい時間芸術なのかもしれません。

心地よかった理由はほかにもあります。素材やモチーフは用意されている。ジャズほど何が飛び出すかわからないとか奏者の個性的な演奏が如実に現れるとかもない。素材があってその使い方に自由がある、なのでリズムやハーモニーを失うこともない。とても優しい自然的な即興に安心して身を委ねていました。

久石譲ファンからすると、いろいろな国を連想させてくれる異国感、現実と空想の境界がないような世界観、エスニックで神秘的な音色、まるでナウシカやラピュタの世界が蘇ってきそうになります。当然、あの時代に久石譲が受けていたであろうミニマル・ミュージックの影響度からみてもです。後半には「A Rainbow in Curved Air」も出現してきて感涙です。ファンになってから聴いてきた1980年代の久石譲音楽の歩みも走馬灯のように駆け巡ってきて、ずっと聴いていたかったです。フラッシュバックする幸せでした。

 

 

久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Cellos
    揺れ動く不安と夢の球体 ー2台のチェロのための(2022)

楽器編成:チェロ2

約9分の作品。この作品のためだけの登場となったチェリスト古川展生さんと富岡廉太郎さんは、「現代室内楽の夕べ 四人組とその仲間たちコンサート2022」での初演奏者でもあります。

もう少しテンポを落としたらどんな感じだろう?と思い、「久石譲:The Black Fireworks 2018 for Violoncello and Chamber Orchestra/1」(『久石譲 presents MUSIC FUTURE IV』収録・2019)を聴いてみたら、こっちのほうが速いんですね。そうなんだ。チェロの音って点(・)じゃなくて棒(ー)による発音になるから、チェロ2台のフレーズの交錯がちょっと密集して聴こえてしまう。ギターやマリンバは点(・)だから粒がはっきりしてる。だからもう少しテンポを落としたほうが2台それぞれ一音一音の輪郭が出ておもしろいかもと想像していました。エネルギッシュな疾走感は失うことになるかもしれませんが、どっしりとしたチェロらしい重層感は出るみたいなイメージです。ここまできたら、同じテンポ感でいくなら、全く作曲意図を踏み外してしまいますが、「The Black Fireworks」のようにチェロ1台と室内オーケストラのアンサンブルで聴いてみたい、きっといい感じ。

前説明を全て飛ばしてしまいました。作品誕生とその変遷、音源とスコアになっている2台ギター版と2台マリンバ版、2022年の2台チェロ版初演とその経緯を話した西村朗さんとの対談など。ゆっくり紐解いてみてください。

 

 

 

Terry Riely:Aquatic Parc Mix ~Lago Passacaglia & Danse to the End~(2023) *World Premiere

楽器編成:ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピッコロ、フルート、バス・クラリネット、ファゴット、サクソフォン、トランペット、トロンボーン、バス・トロンボーン、マリンバ、ビブラフォン、(キーボード2 *Lago Passacaglia)、(コンガ、ボンゴ、シンバル *Danse to the End)

約20分の作品。こちらも本公演のための新作です。約15-17名のMUSIC FUTURE BANDメンバーによる編成で、久石譲作品「MKWAJU」とほぼ同じ編成になっているところはポイントです。テリーさんがこの編成で作品をお書きになるかはわかりませんが、MUSIC FUTUREのために用意されたバージョンと言っていいほどです。そしてこれは、いくつかの素材でアンサンブルするというテリーさんの創作手法が可能にした編成コラボレーションでもあります。

2楽章形式になっていて「Lago Passacaglia」はテリーさんとサラさんがキーボードで参加、合図を送るなど先導者はテリーさんが担っていました。演奏後、テリーさんらはキーボードから離れ、久石譲が指揮者として登場です。コンサートプログラムとしてだけではなく、ひとつの作品のなかでお二人が密接に関わっている。当たり前のようなスムーズさで進行していましたが、よくよく思うとすごいことです。

「Danse to the End」を聴きながら「久石譲:Single Track Music」(『Minima_Rhythm II ミニマリズム 2』収録・2015)を思い浮かべる箇所もありました。それは手法ではなく雰囲気で、サックスを編成しているなど音色パレットからくる印象だと思います。「Lago Passacaglia」のほうでも「フィリップ・グラス/久石譲編:2 Pages」(『久石譲 presents MUSIC FUTURE IV』収録・2019)っぽいと思うところも。ドレミ♭ドレミ♭とCmコードの音型を反復していて、かつMUSIC FUTURE BANDの楽器編成で色彩感が共通しているからです。ミニマリストたちのいろいろな作品に親近性を感じながら浸っていました。

ふだん即興性のパフォーマンスに慣れないメンバー、1楽章はテリーさんらの即興を軸とし、2楽章は久石譲が指揮したところからもきっちり曲として形を固めていたのかもしれません。今回テリー・ライリーさんの音楽を聴きながら、民族音楽の原点のようなものを感じました。その土地や集落にある音楽、その時集まった人たちで奏でる、その自由度はゲームやレクレーションに近い。音楽を通した楽しいコミュニケーションのようなもの。だから、技術や創造を磨いてほしい即興性ではなくて、ゲームのルールブックのような素材やモチーフがあって、あとは自由に遊びましょうと。難解な現代音楽と違うのは、聴いてもらう音楽になっていること、プレーしている奏者とオーディエンスがいつしか一体となったコミュニティが生まれ一緒に楽しめるようになっていること。

 

 

久石譲:MKWAJU for MFB(2023) *World Premiere
    I. MKWAJU/II. SHAK SHAK/III. LEMORE/IV. TIRA-RIN

楽器編成:ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート2、クラリネット、ファゴット、サクソフォン、トランペット、トロンボーン、バス・トロンボーン、マリンバ2、ビブラフォン、グランカッサ、ドラムセット、ウッド・パーカッション、コンガ、シンバル、ドラ、トライアングル、タンバリン、ピアノ

約20-22分の作品。良すぎてあまり書きたくない。最高すぎた!で終わらせたい。あとは特別配信?再演?音源化を心待ちにしましょう!で締めたい。(ところですが、、)

1981年作品「MKWAJU」の4曲が聴けるとは夢のようでした。約15-17名のMUSIC FUTURE BAND(MFB)フルメンバーによる編成で、大幅に加筆・改訂されていてかっこよすぎる。2001年のアンサンブル版もあるなかその再演だったとしても涙モノ、さらに進化した輝かしいニュー・バージョンでした。

「MKWAJU」ミニマルのモチーフが増えていたり、基本音型の掛け合い方が変わっていたり、本当に新しいMKWAJUでした。「SHAK SHAK」ウッド・パーカッションの奏法が「Deep Ocean」音楽のそれを思わせたり。全体的に捉えても1981年から長い時間を経過して近年の「Deep Ocean」らミニマル・アプローチを通過したうえでの新しいMKWAJUだとひしひし感じます。(だから「Deep Ocean」も並べて聴けるようになることが本当に望ましい!)。「LEMORE」この曲はマリンバ2台からマリンバ1台・ビブラフォン1台になります。オリジナルからそうですが雰囲気を変える曲です。「TIRA-RIN」終曲にふさわしい高揚感かき立てるバージョンアップにもだえる喜びを抑えきれない。すごい。

 

「MKWAJU」の変遷

久石譲バイオグラフィに《1981年「MKWAJU」を発表、翌1982年にファーストアルバム「INFORMATION」を発表し~》と必ず先頭に書かれるように、名義こそ久石譲はありませんが全作曲・プロデュースと実質のデビューアルバムに値する大切な作品です。

 

その位置づけは、

「テリー・ライリーの『A Rainbow in Curved Air』という曲を聴いた時、衝撃を受けましたね。それからは、ミニマル・ミュージックの作曲にシフトしました。でも、曲が全然書けないんですよ。もちろん、その当時なんて曲をちゃんと仕上げる技術力もないし。30歳くらいになって、本当の意味で初めて書けたという感じかな」

Blog. GS9 Club「MASTER OF JAPAN 世界が注目する日本人」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

そうなんです。1981年「MKWAJU」は31歳の時です。この頃に演奏会で披露していた自作品は数多いですが、その中から初めてリリースされるに選ばれたのが「MKWAJU」です。MUSIC FUTURE Vol.10でテリー・ライリー×久石譲の共演とプログラムは本当に互いのリスペクトとオマージュの結晶です。

「TIRA-RIN」だけ触れたい。このアルバムでは4曲ともにリズム・プログラミンングも絡ませています。「TIRA-RIN」のおもしろいところは、この曲のフレーズ歌い出しをTIRA-RINと4音に当てると、RINが小節の頭です。ティラは前の小節にかかっていて次のリンが1拍目です。ミニマルに拍子が変容してもずっとそれは変わりません。曲を通してリンが1拍目です。(曲名もここからきてると勝手に思っているほど。)オリジナル版だとシンセリズムのおかけでよくわかります。『Shoot the Violist』版や今回の『for MFB』版は、前半特にそれはわかりづらい。そこに拍子感覚を錯覚させる面白さがあります。だから『for MFB』版ほんとよかった!

 

 

久石譲 『Shot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』

久石譲アンサンブル名義でリリースされています。ムクワジュ・アンサンブル(1981)からの強いリベンジやリ・チャレンジといった作品へのこだわりを感じます。ポイントのひとつにサクソフォンが編成されていること。今回の『for MFB』版でもサックスは大活躍でした。エスニック感が増すというかやっぱりエキゾチックになります。作品をつくっている雰囲気にとても印象的な楽器です。「MKWAJU組曲」となっていたオリジナル版4曲のうち「SHAK SHAK」は除外されています。だから4曲フルで蘇った『for MFB』版ほんとよかった!

 

 

久石譲 『ミニマリズム』

久石譲ミニマル・ミュージックの真骨頂、シリーズ第1作です。「I. MKWAJU」「DA・MA・SHI・絵」など初期作品を華麗にフルオーケストラに魅せてくれます。このときのMKWAJUは単曲です。今回の『for MLB』版は、「MKWAJU組曲」4曲のフルオーケストラもいけるんじゃないか、そう思わせてくれるバージョンアップでした。楽しみが増えた、期待せざるをえない。久石譲×ミニマル×シンフォニーには、アジアな「ASIAN SYMPHONY」、日本な「交響曲第2番」などがあります。そこにエスニックな「MKWAJU SYMPHONY」が加わったら。世界をまわる壮大で躍動する久石譲交響作品、ほんと聴いてみたいです。だから予感させてくれる『for MFB』版ほんとよかった!

 

 

“JOE HISAISHI & WORLD DREAM ORCHESTRA 2022” Special Online Distribution

from Joe Hisaishi Official YouTube

約10年ぶりに日本コンサートで披露されました。『Minima_Rhythm』版からの単曲ですが、サクソフォンが外れるなど一般的なオーケストラ編成に改訂されています。もしNEW交響組曲になるときには、やっぱり世界各地のオーケストラでたくさん演奏してほしいから、シンフォニーらしい響きもいいなと思います。そのぶんアンサンブル版でサックスを加えた響きを存分に楽しめる、楽しみたい。どちらも躍動的で魅惑的です。ムクワジュ・アドレナリン再熱です!!

 

 

テリー・ライリーさん、そしてMKWAJU。往年の久石譲ファンとも味わえたコンサート、忘れないコンサートになりそうです。今回MKWAJUにライトが当たったように、久石作品にはまだまだ初演・再演してほしい作品がたくさんあります。MUSIC FUTUREなら『フェルメール&エッシャー』なんてどうでしょう。映画『君たちはどう生きるか』音楽が好きになった人、そこからミニマル音楽に興味をもった人にもこの作品は刺さります、きっと。

『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』つながりから「794BDH」「DA・MA・SHI・絵」for MFB版のニュー・アンサンブルで聴いてみたい。そして、【mládí】for MFBで「Summer/HANA-BI/Kids Return」なんてどうでしょう。ついつい調子に乗ってしまいます。コンサートの感動と興奮でついつい浮かれてしまいます。

アニバーサリーにふさわしい本公演でした。作品的にもMUSIC FUTUREコンサートの歴史的にもアルバム!どうぞよろしくお願いします。今年リリースなかった昨年Vol.9の「Viola Saga」も!どうぞよろしくお願いします。

 

 

海外オーディエンスらしい熱狂的な歓声もあがる長い長い終演カーテンコールとなりました。テリー・ライリー×久石譲、まさに人気をかけ算した国際色豊かな観客層でした。まるで国際映画祭のよう、放っておいたらあと5分7分といつまでも拍手喝采がつづきそうな至福の空間でした。素敵な時間でした。

 

 

 

コンサート・レポート plus

コンサートの細かい様子がたくさん伝わってくるレポートです。ファン歴もかなり長いのでMKWAJUにかけてだんだん熱くなってくるのは同じですね(笑)会場でもお会いして「聴けてよかった!聴けてよかった!」とお互いくり返していました。

JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VOL.10(2023.11.1)

from Sho’s PROJECT OMOHASE BLOG 改 seconda

 

 

 

とっておきエピソード

 

 

リハーサル風景

from 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF
https://twitter.com/joehisaishi2019

 

 

ほか

リハーサル風景動画もあります

from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/

 

from 西江辰郎インスタグラム
https://www.instagram.com/tatsuo_music/

 

 

 

公演風景

from 久石譲本人公式インスタグラム

 

ほか

from テリー・ライリー公式インスタグラム
https://www.instagram.com/tadashi.for.terry.riley/

 

 

打ち上げ

from 久石譲本人公式インスタグラム

 

 

from テリー・ライリー公式インスタグラム

 

 

ほか

from 西江辰郎インスタグラム

 

 

 

 

Music Future Series

 

 

Info. 2023/11/03 久石譲、秋の叙勲において旭日小綬章受賞

Posted on 2023/11/03

秋の叙勲4075人 片山虎之助元総務相らに旭日大綬章

政府は3日付で2023年秋の叙勲受章者を発表した。今回最高位の旭日大綬章は井戸敏三元兵庫県知事(78)や片山虎之助元総務相(88)ら14人に授与する。俳優の三浦友和(本名・三浦稔)さん(71)や、スタジオジブリの映画音楽などで知られる作曲家の久石譲(本名・藤沢守)さん(72)らには旭日小綬章が贈られる。発令は同日付。 “Info. 2023/11/03 久石譲、秋の叙勲において旭日小綬章受賞” の続きを読む

Disc. V.A. 『スタジオジブリトリビュートアルバム「ジブリをうたう」』

2023年11月1日 CD発売 VICL-65894
2024年1月10日 LP発売 VIJL-60311~60312

 

武部聡志プロデュースによるスタジオジブリ音楽のトリビュートアルバム

日本国内に留まらず、今や世界中を魅了し、世代を超えて愛されるアニメーションを制作し続けるスタジオジブリ。その素晴らしい作品たちには、いつも素晴らしい音楽たちがドラマを彩っていました。映画と共に愛され続ける数多の心に残る名曲たち。音楽プロデューサー武部聡志プロデュースのもと、そんなスタジオジブリ作品の楽曲たちを世代を超えた様々なアーティストたちが新たな解釈でカバーする、スタジオジブリ音楽のトリビュートアルバムが完成。

※宮崎吾朗監督書き下ろしイラストジャケット仕様

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

映画「コクリコ坂から」「アーヤと魔女」では音楽を担当するなどスタジオジブリ作品とも縁の深い、作・編曲家、音楽プロデューサー武部聡志が全面プロデュースする初のスタジオジブリ トリビュートアルバム

 

 

原曲が久石譲曲の映画主題歌/メインテーマは、「01.となりのトトロ」「03.いのちの名前」「04.君をのせて」「06.人生のメリーゴーランド」「11.もののけ姫」の5曲。

 

 

01.となりのトトロ(映画「となりのトトロ」より) / 岸田繁(くるり)
  作詞:宮﨑駿 / 作曲:久石譲 / 編曲:武部聡志 / コーラスアレンジ:岸田繁
02.カントリー・ロード(映画「耳をすませば」より) / 松下洸平
  作詞・作曲:JOHN DENVER、TAFFY NIVERT、BILL DANOFF / 日本語詞:鈴木麻実子(補作:宮﨑駿) / 編曲:武部聡志
03.いのちの名前(映画「千と千尋の神隠し」より) / 幾田りら
  作詞:覚和歌子 / 曲:久石譲 / 編曲:武部聡志
04.君をのせて(映画「天空の城ラピュタ」より) / 家入レオ
  作詞:宮﨑駿 / 作曲:久石譲 / 編曲:武部聡志
05.テルーの唄(映画「ゲド戦記」より) / Little Glee Monster
  作詞:宮崎吾朗 / 作曲:谷山浩子 / 編曲:寺嶋民哉
06.人生のメリーゴーランド(映画「ハウルの動く城」より) / 角野隼斗
  作曲:久石譲 / 編曲:角野隼斗
07.風の谷のナウシカ(映画「風の谷のナウシカ」より) / 玉井詩織(ももいろクローバーZ)
  作詞:松本隆 / 作曲:細野晴臣 / 編曲:武部聡志
08.ルージュの伝言(映画「魔女の宅急便」より) / 木村カエラ
  作詞・作曲:荒井由実 / 編曲:武部聡志
09.ひとりぼっちはやめた(映画「ホーホケキョ となりの山田くん」より) / 満島ひかり
  作詞・作曲:矢野顕子 / 編曲:武部聡志
10.海になれたら(映画「海がきこえる」より) / GReeeeN
  作詞:望月智充 / 作曲:永田茂 / 編曲:武部聡志
11.もののけ姫(映画「もののけ姫」より) / Wakana
  作詞:宮﨑駿 / 作曲:久石譲 / 編曲:武部聡志
12.時には昔の話を(映画「紅の豚」より) / 渋谷龍太(SUPER BEAVER)
  作詞・作曲:加藤登紀子 / 編曲:武部聡志
13.さよならの夏~コクリコ坂から~(映画「コクリコ坂から」より) / 武部聡志
  作詞:万里村ゆき子 / 作曲:坂田晃一 / 編曲:武部聡志

 

Disc. 宮田大 『VOCE -フェイヴァリット・メロディー』

2023年10月25日 CD発売 COCQ-85615

 

その音は聴くものの心を震わせる― 日本を代表するチェロ奏者・宮田大が圧倒的表現で “歌う”新時代の名曲選

日本を代表するチェリストの宮田大。日本人として初めてロストロポーヴィチ国際コンクールで優勝。世界的指揮者・小澤征爾をはじめ、国内外の音楽家から支持を集め、また、クラシック界における権威のある賞の一つ、OPUS KLASSIK 賞(2021)を受賞するなど国際的な評価を高めている。また、尾高惇忠や菅野祐悟らから協奏曲を献呈され、また、数ある協奏曲のなかでも難曲として知られる吉松隆のチェロ協奏曲の演奏では、作曲家自身から大絶賛されるなど、作曲家からの信頼も厚い。その演奏は聴く者の心の奥底を震わせる、と各地で話題を集め、公演は完売が相次いでいる。

今回のアルバムでは、宮田大が今届けたい「名曲」を厳選して収録。従来のチェロ定番曲にとらわれず、言わずと知れたクラシックの名曲から、日本を代表する作曲家の作品や隠れた名曲まで、その圧倒的な演奏力で、一つ一つの作品に新たな命を吹き込む。「まるで歌声のよう」と評されることも多い、宮田大だからこその唯一無二の表現、“歌声” で届ける、新たな時代に贈る名曲集。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

 

久石譲の「Asian Dream Song」がチェロ&ピアノ版で収録されている。このアルバムのために篠田大介氏の編曲によるもの。この曲には「旅立ちの時 ~Asian Dream Song~」として大サビの書き加えられた歌もあるが、本作はオリジナル版(『PIANO STORIES II ~The wind of Life』)を取り上げている。

 

 

 

1.村松崇継:Earth
2.ロルフ・ラヴランド:ソング・フロム・ア・シークレット・ガーデン
3.ビル・ウィーラン:リバーダンス
4.久石 譲:Asian Dream Song
5.カミーユ・サン=サーンス:「あなたの声に私の心は開く」~《サムソンとデリラ》
6.加羽沢美濃:Desert Rose
7.菅野祐悟:ACT
8.アストル・ピアソラ:リベルタンゴ
9.吉松隆:ベルベット・ワルツ
10.植松伸夫:ザナルカンドにて
11.坂本龍一:星になった少年
12.アントニン・ドヴォルザーク:私にかまわないで ~4つの歌曲 作品82 第1曲

編曲:伊賀拓郎(2, 8) 山中惇史(3) 篠田大介(4, 10, 11)

演奏:宮田大(チェロ)、ジュリアン・ジェルネ(ピアノ)

録音時期:2023年4月18-20日
録音場所:新潟県、柏崎市文化会館アルフォーレ
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

 

Info. 2023/10/24 《速報》マカオ国際音楽祭2023「久石譲コンサート」プログラム

Posted on 2023/10/25

2023年10月20,21,22日開催「久石譲360」と題された3つのコンサートです。第36回マカオ国際音楽祭(9/30-10/30)期間内のイベントとしてスケジュールされました。まさに久石譲のコンサートスタイルや活動スタイルを360度見渡せるようなプログラムが用意され、海外版となる「Music Future」をマカオ管弦楽団と、そして日本での定期演奏会・特別演奏会さながらに日本センチュリー交響楽団との海外遠征公演。アナウンス直後からニュースになるほどのチケット争奪戦は、海外ファンの熱望と期待を物語っているようです。 “Info. 2023/10/24 《速報》マカオ国際音楽祭2023「久石譲コンサート」プログラム” の続きを読む

Info. 2023/10/31,11/01 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10」コンサート開催決定!! 【10/24 update!!】

Posted on 2023/04/07

「A Rainbow in Curved Air」を聴いて、ミニマル・ミュージックを知った。
あまりにショックに数日間寝込んだ。
そして僕はミニマリストになる決心をした。
久石譲 “Info. 2023/10/31,11/01 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10」コンサート開催決定!! 【10/24 update!!】” の続きを読む

Blog. 「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第276回 定期演奏会」コンサート・レポート

Posted on 2023/10/15

2023年10月13日、「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第276回 定期演奏会」が開催されました。久石譲は2021年に日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任して以来数多くの定期演奏会・特別演奏会を精力的に行っています。本公演では世界的活躍で脚光を浴びているヴィオリストのアントワン・タメスティを迎えての華やかな公演となりました。

 

 

日本センチュリー交響楽団 定期演奏会 #276

[公演期間]  
2023/10/13

[公演回数]
1公演
大阪・ザ・シンフォニーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ヴィオラ:アントワン・タメスティ

[曲目]
シューマン:交響曲 第4番 ニ短調 作品120
久石譲:Viola Saga -for Orchestra-

—-Soloist Encore—-
バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007より プレリュード (ヴィオラバージョン)
ヒンデミット:無伴奏ヴィオラソナタ 第1番 Op.25より 第4楽章

—-intermission—-

ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

—-Orchestra Encore—-
Kiki’s Delivery Service

[参考作品]

 

 

まずは会場で配られたプログラム冊子からご紹介します。

 

 

Program Notes

首席客演指揮者の久石譲が2023-24シーズンでは初登場となる定期演奏会です。自身の作品を軸に交響曲2曲の名作が組み合わされました。久石指揮の日本センチュリー交響楽団は、この定期演奏会の直後に第35回マカオ国際音楽祭に参加し、2公演に出演します。本日の定期のプログラムは『久石譲360 非凡傳奇』と題され、10月21日にマカオ文化センターでの開催が予定されています。

 

シューマン:交響曲 第4番 ニ短調 作品120

(*割愛)

 

久石譲:Viola Saga -for Orchestra-

久石譲(1950-)の《Viola Saga》は下記の作曲者自身の言葉にあるように、2022年10月に紀尾井ホールで開かれた『Music Future vol.9』で初演された作品を、2023年7月に東京オペラシティコンサートホールと長野市芸術館メインホールで開催された『Future Orchestra Classics vol.6』でオーケストラ作品に書き換えて再演したもの。前者の独奏者がナディア・シロタで、後者の独奏者が本日演奏することになったアントワン・タメスティでした。

Viola Sagaは2022年のMusic Future vol.9で初演した作品だが、今回Violaとオーケストラの協奏曲として再構成した。タイトルのSagaは日本語の「性ーさが」をローマ字書きしたもので意味は生まれつきの性質、もって生まれた性分、あるいはならわし、習慣などである。同時に英語読みのSagaは北欧中世の散文による英雄伝説とも言われている。あるいは長編冒険談などの意味もある。仮につけていた名前なのだが、今はこの言葉が良かったと思っている。曲は2つの楽曲でできていて、I.は軽快なリズムによるディベルティメント、II.は分散和音によるややエモーショナルな曲になっている。特にII.はアンコールで演奏できるようなわかりやすい曲を目指して作曲した。が、リズムはかなり複雑で演奏は容易ではない。(久石譲)

 

ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

(*割愛)

 

(「日本センチュリー交響楽団 第276回定期演奏会 2023年9,10月プログラム冊子」より)

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

早々にSOLD OUTしていた人気公演です。当日は臨時席も設けられるほどの盛況ぶりで、いつもに増して多国籍な観客層でした。普段なら会場全体からやんわり感じるところですけれど、この日は座った席、前後左右を多国籍で囲まれた、それほどでした。いやほんとに半径3mをぐるっと切り取ってそのなかの日本人比率はよくて50-60%くらいだったかもしれません。たまたまもあるでしょうが、おそらく会場全体でも20%くらいは海外や国内から集った多国籍層だったのではと思わせるくらいの雰囲気を感じました。久石譲人気、さらにはタメスティ人気も加わって。

 

シューマン:交響曲 第4番 ニ短調 作品120

久石譲×日本センチュリー交響楽団でシューマン交響曲ツィクルスです。今シーズンは第2番とこの第4番です。来シーズンに第1番と第3番で完遂予定になっています。

第4番は全楽章が切れ目なく演奏されるうえに、共通の主題が各楽章で登場するので、いま何楽章が進んでいるんだろうと現在地がわからなくなりがちですが、おおむね約35分くらいで一気に駆け抜けます。シューマンの交響曲は込み入ったところがないので、とてもパワフルにエネルギッシュに進んでいく印象です。そして日本センチュリー交響楽団らしい演奏との相乗効果もあってとてもみずみずしい、フレッシュです。キメるところはキメて、リズム効果もわかりやすい勢いがありますね。SNSの書きこみには「第4楽章のくり返しもあって」とあったので、くり返す演奏は珍しい&久石譲は基本すべてスコアに忠実にくり返す、そういうことなんだろうと理解しているところです。

第4番は、シューマンの2番目に書かれた交響曲です。大きく改訂したときに3つの交響曲があったので、出版時に第4番となりました。例えば、久石譲でいうと「Orbis」は2番目に書かれたけれど、大きく改訂したときに4つの交響曲があったので、第5番とナンバリングされることになった、、例えばそんな感じでしょうか。そんな感じでしょうか。

 

 

久石譲:Viola Saga -for Orchestra-

今世界で最も活躍しているヴィオラ奏者、クラシック界で注目を浴びている人、アントワン・タメスティを迎えての作品です。さらっと書いていますが、クラシックに疎い人ですが、えっ、タメスティさん迎えられるの?!と思ったほどでした。ヴィオラ・フリークとしては、この作品を演奏してくれるなんて望外の喜びです。

楽曲構成の基盤はそのままにオーケストラ編成に拡大したものです。同様のアプローチは過去に「Variation 57」や「2 Dances」といった作品があります。室内アンサンブル版とオーケストラ版、テンポ感もほぼ同じです。部分的に遅めな箇所もありますが、アンサンブルから大所帯になっているのに機動力とスピード感を失っていない。

室内アンサンブル版はシックでしなやかな印象、オーケストラ版は色彩感あってダイナミックな印象です。I.冒頭やII.後半のカデンツァなど、ヴィオラ独奏で聴かせるところは抑揚たっぷりに歌っていました。表現のニュアンスも異なるので印象も変わって聴こえるかもしれません。楽器が増え広がった高低の重厚感やパーカッションのアタックも効いたオーケストラ版です。より力強くよりリズミックに感じました。そしてオーケストラと対峙するソロ・ヴィオラ、全く埋もれることのない存在感とパフォーマンスは圧巻です。

あまりにも精緻すぎて、意図的にズレているのか、超難易度でそうなってしまっているのか、答えがわからない聴こえかたもします。この曲は聴く場所や位置によってはシビアに聴こえてしまうかもしれません。ちょっと入り込みすぎてて音の絡まりかたが正解なのかリスナーは判断しづらい、そのくらい難しい作品でもあります。そこに疑問符がついてしまうのがもったいないなとは思いました。とはいえ、風の噂でウィーンで録音したらしい、久石譲×タメスティで実現したらしい。セッション録音の正解を聴ける日を楽しみにしています。

ヴィオラがここまで主役で大活躍する作品ってそんなにないと思います。しかも、リズム主体でわくわくできてエモーショナルも感じる現代的な作品って、世界中にどのくらいあるんでしょうか。久石譲「コントラバス協奏曲」も、コントラバスってこんなに魅力的なんだと感じさせてくれる作品です。近い将来届けられるだろう「Viola Saga」の録音は、頻繁に聴くだろう自信があります。あわせて室内アンサンブル版も音源化してほしいですね。そうですね、室内アンサンブル版が銀のViola Sagaだとしたら、オーケストラ版は金のViola Saga、そのくらい印象も変わるし、それぞれにらしい輝きを放っている作品です。

 

 

ーソリスト・アンコールー

バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007より プレリュード (ヴィオラバージョン)

流麗で美しいひとときでした。バッハのこの作品はいろいろな楽器で演奏されていますが、ヴィオラの生演奏で聴けるなんて。タメスティさんは体全体で表現するので、おそらく体のバネが柔らかい印象、それが音にも現れている。

2012年に第1,3,5番を録音したアルバムが輸入盤やストリーミングであります。本公演ではこのときよりも熟成感のあるたっぷりな演奏でした。ヴィオラの音色だけに耳をすませる、ぜひ聴いてみてください。

 

Cello Suite No. 1 in G Major, BWV 1007: I. Prelude

from Official Audio

 

ヒンデミット:無伴奏ヴィオラソナタ 第1番 Op.25より 第4楽章

バッハの大きな拍手に迎えられ、その喝采にたたみかけるようにアンコール2曲目です。一転して超絶な演奏でした。まるでエレキギターをかき鳴らしているような息つく暇もない約2分間です。人間は空いた口が塞がらない状態を約2分間キープできるでしょうか。

こちらは約5年前(2018年)のパフォーマンスです。百聞は一見に如かずです。

 

Hindemith: Sonate für Bratsche solo op. 25 Nr. 1 (4. Satz) ∙ Antoine Tamestit

from hr-Sinfonieorchester – Frankfurt Radio Symphony Official YouTube

 

本公演のハイライトを全部持っていっちゃったな、というくらいの圧巻のソリスト・アンコールでした。久石譲を目当てに行ったコンサートでもこんなギフトあるんですね。ヴィオラの生演奏をたっぷり聴ける機会もなかなかないですし、ほんとコンサートってどこに新しい出会いや感動ポイントがあるかわかりません。プログラムの予定と予想を超えたところにある、コンサートでしか味わえないおもしろいところです。

 

 

ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

久石譲ファンのあいだでは、久石譲が振るベートーヴェンは演奏会や録音もふくめておなじみかもしれません。でも、初めてジブリ交響組曲をコンサートで聴けた人が感動するように、初めてこんなベートーヴェンを聴いたと新鮮感を味わう人も新定番となりそうなほどです。それほど久石譲版は個性がはっきりしています。SNSの書きこみに「センチュリーでは今まで聴いたことないようなベートーヴェンだった」というのを見ました。まさにすべてを表しているように思います。久石譲に染まるベートーヴェン。

本公演はプログラムそのままに10月21日マカオ公演が予定されています。すでにものすごい熱気とチケット争奪戦を繰り広げているようですが、きっとマカオでも久石譲&JCSOのベートーヴェン交響曲は度肝を抜くほどの注目を集めることでしょう。公演前からの熱気はさらに高まり膨れあがりフィーバーすることでしょう。大盛況をお祈りしています!久石譲指揮で録音されたベートーヴェン交響曲全集は賞を受賞し評価も高く人気を集めています。ぜひアルバムも聴いてみてください。ぜひコンサートで体感してください。マカオ会場で販売予定ならCD-BOXたくさんご用意したほうがいいかもしれませんね。『久石譲指揮 フューチャー・オーケストラ・クラシックス  ベートーヴェン:交響曲全集』です。

 

 

ーアンコールー

久石譲:Kiki’s Delivery Service

映画『魔女の宅急便』から「海の見える街」です。近年のコンサート・アンコールの定番のひとつになっています。そう言ってしまうと元も子もないんですが。でも、本公演のように多国籍な客層からしたらうれしいプレゼントです。やっぱり久石譲の曲をひとつでも多く聴きたいと思っている。本公演のように「Viola Saga」「ベートーヴェン交響曲」の全楽章間で拍手が入るほど初々しい客層からしたらうれしいプレゼントです。やっぱり久石譲の曲をひとつでも多く聴きたいと思っている。

もうどんなクラシック演奏会だったとしても、久石さんが振る演奏会で自身の作品をアンコールに演奏しないといけないのは、しょうがない、宿命です、天性の運命です。だから、このクラシック大曲のあとに、ジブリやるの?自分の曲やるの?とどうぞお気になさらずに、思いっきり響かせてください。気に悩む必要なんてないほど観客は強く大きく切望しています。

この曲は、『A Symphonic Celebration』で聴けるバージョンです。マニアックにいうと「Kiki’s Delivery Service 2018」としてWDOで演奏されたバージョンを継承したものです。『Symphonic Suite “Kiki’s Delivery Service”』とは少し違うので、どちらも聴き楽しんでください。

定期演奏会じゃなければもう1曲アンコールありそうなほどの大喝采でした。ベートーヴェンからアンコールへ、ピークに達したボルテージの行き場に困った観客たち。そんな興奮やまぬざわざわ感で幕をとじました。

 

 

リハーサル風景

ほか

リハーサル風景動画もみれます

from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/

 

 

リハーサル風景

1days

2days

3days

ゲネプロ

ほか

from 日本センチュリー交響楽団公式X(ツイッター)
https://twitter.com/Japan_Century

 

 

公演風景

from 日本センチュリー交響楽団公式X(ツイッター)/日本センチュリー交響楽団公式Facebook

 

 

 

久石譲×日本センチュリー交響楽団は、2023年2月にオーケストラ団体の垣根を超えた九州交響楽団とのジョイントツアーも大盛況で迎えられたことも記憶に新しいです。

 

 

さらに、2025年4月には音楽監督就任も決定しています。プログラムの充実や海外戦略などますます目が離せません。が、その前に来シーズンのラインナップも発表されたばかりです。

 

 

世界中が久石譲の曲を聴きたい、その現象はさらに大きくなってくる。コンサートでもやってほしい、その期待はさらに大きくなってくる。