Overtone.第82回 モチーフ「久石譲秋2022」

Posted on 2022/11/01

ふらいすとーんです。

Overtone モチーフです。

きれいに考えをまとめること、きれいに書き上げることをゴールとしていない、メモのような雑文です。お題=モチーフとして出発点です。これから先モチーフが展開したり充実した響きとなって開けてくる日がくるといいのですが。

 

モチーフ「久石譲秋2022」

秋に聴きたい曲を移ろい流れる雲のように。毎年秋になったら聴く久石譲オールタイム・セレクトです。新譜が出るとまたそこから振り分けられたりする春夏秋冬プレイリストです。2013年頃にサイト特集したこともあります。今回は気ままに一口コメントとツイートしていた2022年版です。

 

  • INTRO:OFFICEKITANO SOUND LOGO
  • Silencio de Parc Güell(ENCORE)
  • Silence(ETUDE ~ a Wish to the Moon ~)
  • 恋だね(ハウルの動く城 サウンドトラック)
  • 夢の星空(ETUDE ~ a Wish to the Moon ~)
  • 帰らざる日々(紅の豚 サウンドトラック)
  • A Gift From Parents(NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体III~遺伝子・DNA サウンドトラックVol.1)
  • Sunday(PIANO STORIES II ~The Wind of Life)
  • 旅情(NOSTALGIA~PIANO STORIES III~)
  • おくりびと〜Memory〜(おくりびと サウンドトラック)
  • EVE-Piano Version(パラサイト・イヴ)
  • Nostalgia(WORKS II ~Orchestra Nights~)
  • Oriental Wind ~for Orchestra~(Works III)
  • Silence(空想美術館 ~2003 LIVE BEST~)
  • Angel(HANA-BI)
  • HANA-BI(HANA-BI)
  • タムドクのテーマ~メインテーマ~(太王四神記 オリジナル・サウンドトラック Vol.1)
  • コムル村(太王四神記 オリジナル・サウンドトラック Vol.2)
  • Asian Dream Song(WORKS II ~Orchestra Nights~)
  • Welcome to Dongmakgol(トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック)
  • 奇跡のリンゴ(奇跡のリンゴ オリジナル・サウンドトラック)
  • TENCHI MEISATSU(天地明察 オリジナル・サウンドトラック)
  • 風のとおり道~Acoustics Version~(となりのトトロ サウンドブック)
  • 人生のメリーゴーランド
  • Dream More(The End of The World)
  • Gene(NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体III~遺伝子・DNA サウンドトラックVol.1)
  • Instrumental ~ ぴあの(ぴあの Volume 1)
  • 小さいおうち(WORKS IV -Dream of W.D.O.-)
  • Two of Us(My Lost City)
  • Tango X.T.C.(My Lost City)
  • 山里(かぐや姫の物語 サウンドトラック)
  • 彷徨(悪人 オリジナル・サウンドトラック)
  • 何故(悪人 オリジナル・サウンドトラック)
  • 懺悔 (Instrumental)EXILE ATSUSHI & 久石譲
  • 交響幻想曲「かぐや姫の物語」(WORKS IV -Dream of W.D.O.-)
  • この世界の片隅に~メインテーマ~(TBS系日曜劇場「この世界の片隅に」オリジナル・サウンドトラック)
  • すずのテーマ~望郷~(TBS系日曜劇場「この世界の片隅に」オリジナル・サウンドトラック)
  • 赦し(花戦さ オリジナル・サウンドトラック)
  • HANA-BI [Live](Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2)
  • Oriental Wind(Melodyphony ~Best of JOE HISAISHI〜)

 

こんな感じで。コメント見たい人は#久石譲秋で。あまりたいしたことは…移ろい流れる雲のように。

from the most likes

 

 

ハッシュタグ参加してくれた人もありがとうございます!実り豊かな秋になります。

 

  • 遥かなる時を超えて(NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体III~遺伝子・DNA サウンドトラック Vol.1 Gene-遺伝子-)
  • BROTHER(BROTHER オリジナル・サウンドトラック)
  • TWO OF US(Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~)
  • The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra II. The Scaling(Minima_Rhythm IV ミニマリズム 4)
  • Symphonic Suite “Kiki’s Delivery Service” – Mother’s Broom(Symphonic Suite “Kikiʼs Delivery Service”)

from tendo(@tendo01)

 

  • 今、風の中で(マリと子犬の物語 オリジナル・サウンドトラック)
  • Stand Alone (Vocalise)(NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック)
  • 青春のモニュメント(青春デンデケデケデケ オリジナル・サウンドトラック)
  • Angel Springs(PIANO STORIES II ~The wind of Life)
  • 真紅の翼(紅の豚 イメージアルバム)
  • 少年の日の夕暮れ(illusion)
  • Mr.J./しばたはつみ(VOICES)
  • 青春のモニュメント(ピアノ)(青春デンデケデケデケ オリジナル・サウンドトラック)
  • Mother’s love(はつ恋 オリジナル・サウンドトラック)
  • THE WALTZ (For World’s End)(地上の楽園)

from むーん(@HisaishiM)

 

  • 運命(時雨の記 サウンドトラック)

from ken*(@bellaortensia)

 

 

季節ごとにプレイリストを作り出した頃が、主要曲からセレクトしようとかシンセ曲はなるべく入れないとかでやってました。今ならもっと柔軟にカーディガンのように新しくさらっと羽織りたいものもあるかな。アルバム曲からなら「坂の上の雲」「二ノ国」「人体」シリーズから見つけても楽しいし、「Dolls」「風の盆」「Asian X.T.C.」からいろいろありそうです。あとは楽器とか。

 

バンドネオン

  • Tango X.T.C.(My Lost City)
  • Jealousy(My Lost City)
  • THE WALTZ (For World’s End)(地上の楽園)
  • 太陽がいっぱい arr.(NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~)
  • Constriction(FREEDOM PIANO STORIES 4)
  • Woman 〜Next Stage〜(Asian X.T.C.)
  • 室内交響曲 第2番《The Black Fireworks》~バンドネオンと室内オーケストラのための~

 

チェロもいいなとか思い出すわけです。でもアルバムジャケット眺めて見つけるのってけっこう大変です。たとえば、管理してる曲データのところにメロディの楽器とか情報を入れといて、チェロ!とセレクトかけると瞬時にプレイリストできる、みたいな。そんなことできたらいいのにな。その下準備するのが面倒すぎるやらない。メインテーマをチェロが歌ってるバージョンのサントラ曲とか、フルートやホルンの伸びやかさがとか、オーボエが哀愁誘うとか、いろいろありますよね。結局のところ、季節と一緒にたくさん聴いて体に染み込ませていこう。たっぷりじっくり年月かけて。

「昨年の自分と今年の自分は違う」なんか違うなと紹介しなかった曲もあります。諸行無常です。古い曲集になってはいけない。プレイリストもアップデートしなきゃいけない。

 

Special

 

 

(四季:久石譲は、指揮:久石譲にかかっています。季節を指揮する人ですね。今更ながらお粗末さまです)

 

お知らせ
「秋に聴きたい久石譲曲」お待ちしてます!リプから曲名リストだけでも#久石譲秋で一曲でもコメントからでもどしどし豊作に!〆切:秋の深まるころ

 

同じ季節に、同じ曲を、同じファンが、聴く。

肌感覚の合ううれしさ、肌感覚で伝わる楽しさ。

 

そんなモチーフでした。

それではまた。

 

reverb.
もし好評ならほかの季節もやってみたい♪

 

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Info. 2022/10/26,27 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.9」コンサート開催決定!! 【10/25 Update!!】

Posted on 2022/03/29

久石譲がナビゲートするコンサートシリーズ第9弾
東京とニューヨークで開催!
ポスト・クラシカルの重要アーティスト、ニコ・ミューリーと
ジャンルを超越したヴィオラ奏者、ナディア・シロタが来日!
久石譲とのコラボレーションによる“現代の音楽”に全世界が注目する。 “Info. 2022/10/26,27 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.9」コンサート開催決定!! 【10/25 Update!!】” の続きを読む

Overtone.第81回 モチーフ「赤い袖先 The Red Sleeve OST」

Posted on 2022/10/23

ふらいすとーんです。

Overtone モチーフです。

きれいに考えをまとめること、きれいに書き上げることをゴールとしていない、メモのような雑文です。お題=モチーフとして出発点です。これから先モチーフが展開したり充実した響きとなって開けてくる日がくるといいのですが。

 

モチーフ「赤い袖先 The Red Sleeve OST」

韓国ドラマ『赤い袖先 / The Red Sleeve』です。2021年11月~2022年1月まで放送、2月に韓国でサントラ発売。春くらいまでずっと聴いてました。今年のマイベスト10に入る勢いキープしてます。メインテーマやモチーフのバリエーション(変奏)三昧でおもしろくておもしろくてほっぺが落ちる。6月に日本でサントラ発売、同時か時間おいてかデジタルリリースもされて、やっと広く聴ける紹介できるようになりました。

韓国エンタメの勢いを感じます。韓国映画や韓国ドラマが次々と世界で大ヒットしています。世界に照準を合わせたその戦略は、脚本・演技・カメラワーク・セット・CG・編集、そうそして音楽、すべての制作パーツの水準を上げることになるからです。音楽以外の分野のことは全くわかりませんが、欧米からそして日本から大ヒット作や注目作を相当に研究している。うまく取り入れている。

ということは、映像音楽を日本の作曲家から学ぼうとしたときに、まず名前が挙がるのは久石譲 JOE HISAISHIに違いない。実写からアニメーションまで幅広く手がけていないジャンルはないに違いない(否定の連打は肯定)。この作品は歴史ロマンスというこもとあってオリエンタルのテイストもいる。そうじゃなくても同じアジアだし久石譲感あるものいてしかり、かなり楽しいサントラです。

 

赤い袖先 オリジナル・サウンドトラック
The Red Sleeve Original Soundtrack

 

1. ドクイム、愛 (Main Theme)

from Official Audio, YouTube

イントロから久石みましまし。チャーミングでぬくもりのあるメインテーマです。00:30-くらいがそのメロディ、この短いワンテーマからできています。この1曲だけでワクワク突っ込みたいところ全開なんだけど先に進める。

 

2.灯火と子ども二人

イントロもメインテーマからのどかに、そしてメインテーマのバリエーション。00:40-のフルートに始まる木管で軽やかな蝶のようです。クレジットを見ると作曲者が違う、チームで音楽制作しているんです。同じメインテーマをもとにして各々が彩りを加えている。

01:40-くらいから曲想が展開して第2テーマみたいになります。そしてこれがまたさらにバリエーションを生んでいくことになる。作曲者間でバトンリレーされたメインテーマが、さらに違うアイデアを得て、新しい主要テーマが生まれて、どんどん広がり発展していく。

 

3.語り部 幼い宮女

英語のタイトルは「Faily Tale」となってたと思いますけど、なんとも羽ばたくメルヘンです。00:40-くらいからのびのびとフルート歌っています。01:30-くらいからまた違う感じでバリエーションしています。この曲は2曲目と同じ人ですけど、02:00-くらいからまた新しい曲想を生んだりして。

ここがこの作品のキーポイントです。チームで制作する方法は、作曲家ごとに得意なカラーを打ち出して全体をコンピレーションみたくするのはよくある。ジャンルもテイストもバラエティパックのようなもの。でも、曲想や楽器といったカラーを統一したなかで、かつ、メインテーマを軸にして作曲家たちがバリエーション(変奏)で競演している。この方法はなかなかない。もうおもしろくてしょうがない。まだ3曲目ですよ。

『肩の上の蝶 / Rest on Your Shoulder』っていう久石譲が音楽を担当した中国映画があって…サントラないか…先に進める。

 

8.東宮の書庫

ハープもストリングスも、リズミックな音型が久石さん好きにはたまらない。『花戦さ』っぽくていいよねと違和感なく聴きすすめる。おっと最後01:15-くらいから第2テーマの変奏みたいなのが登場します。2分足らずの曲なのに耳が名残惜しそう。

 

11.寵愛を受ければよい

英語のタイトルは「Destiny」だっと思いますけど、そっちのほうが曲にあってます。ストーリーからみたらどちらも正解。ぐっとくる1曲。力込めて盛り上がってくる01:55-くらいなんて聴きどころですね。時代に翻弄される感じ。ここで高音ヴァイオリンの下で鳴っている中弦の対旋律は、上で紹介した「2.灯火と子ども二人」01:50-のオーボエの旋律からのバリエーションだったりします。同じ作曲者による。

こうやってメインテーマから派生して新しい展開を加えた曲、その第2テーマを使って、その第2テーマのパートから旋律の一部をうまく使って、その第2テーマのパートから旋律の一部を対旋律として支える役割で。チームプレーかたい。

 

16.英祖、怒り

歴史ものらしい重みのある曲。『太王四神記』を思い起こしそう。似てるマネしてるそういうことが言いたいわけじゃない。好きなテイストの曲がさらに広がって聴ける喜びってある。世界共通のヒサイシズム。

 

21.謎

ミステリアスな雰囲気をまとったメインテーマです。ハープ、グロッケンと反復音型を幾重にも散りばめてるものそうだし打楽器群の使い方もそうだし、うまいなあ。後半に進むにつれ久石成分多め。

 

25.ドクイム、運命

CDサントラ終曲。きれい。もうメインテーマは覚えましたか?オーボエ?チェレスタ? いやあほんと、曲のもっていきかたが、楽器の使い方が、シンセサイザーのなじませ具合が、対旋律の絡ませかたが。美味しすぎてお腹いっぱいごきそうさまでした。これをもって久石譲を研究してないといえようか。01:40-ああ、万感の主旋律×対旋律よ。

 

 

まだある?

(Bgm) The Red Sleeve OST || 70. Noh Hyung Woo – San, The Moment (노형우 – 산, 순간)

from Viet Tam Tran

これはTrack.70「San, The Moment」という曲です。70曲目?! CD1に18曲(SongとInst.ver)CD2に25曲(BGM)なんですけど、いち早く韓国でリリースされたデジタル限定版には8曲(Song)と71曲(BGM)というのがあります。だから本当は25曲目で終わりじゃなくてそのさき怒涛のバリエーションが続く、日本ではあまり聴けない、残念、入手方法知りたい人は要相談、さておき探せばあるかもしれません、どうかな。全部聴こうと思ったら4時間25分あります要時間。ドラマで使った曲全部入れた?

00:40-くらいからピアノで切なく。あの高揚感いっぱいの1曲目メインテーマが、長い長い物語のエンディングには、こんなにしっとりとやさしく涙に濡れるよう。メインテーマ作曲者ですけれど、他の作曲者たちが紡いできたメロディたちも織りなす。人生の黄昏。どうしても紹介したかったのでun-officialゴメンナサイ。

 

魅力の半分も広げれてないけど、そのエッセンスはたっぷりお伝えできたと思います。

 

参考:
赤い袖先 オリジナル・サウンドトラック | HMV&BOOKS online – KICS-4056/7
https://www.hmv.co.jp/artist_TV-Soundtrack_000000000029998/

赤い袖先 (袖先赤いクットン) | HMV&BOOKS online – L200002344
https://www.hmv.co.jp/artist_TV-Soundtrack_000000000029998/item

*日本/韓国 2CD 全43曲(2022.6)

*韓国限定デジタル版 全79曲(2022.1)は日本リリースされていない

 

 

Overtone モチーフは、モチーフの範囲を越えたり広がったりしてはいけない。そうらしいので、言い足りないことをメモ書してまたいつか。

サントラのチーム制作のかたち(バラエティパックorシェア)/Symphonic Variation “Merry-go-round”はすごい/久石譲は変奏の魔法使い/韓国でも大ヒットした映画『君の名は。』後の音楽的影響/海外サントラは名前で聴かないからおもしろい(作曲家の名札で聴かない)/純粋な音楽センサーで好きなものをキャッチする楽しさ

 

そんなモチーフでした。

それではまた。

 

reverb.
WOWOW(10/28- 全17回)TV初放送も始まります。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Info. 2022/10/08 舞台『となりのトトロ』(ロンドン)開催決定 【10/22 Update!!】

Posted on 2022/04/27

『となりのトトロ』をロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが世界初の舞台化 エグゼクティブ・プロデューサーは久石譲

宮﨑駿監督のアニメーション映画『となりのトトロ』が、イギリスの名門演劇カンパニー、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)によって初めて舞台化することが発表された。上演日程・場所は、2022年10月8日(土)〜2023年1月21日(土)ロンドンのバービカン劇場にて。 “Info. 2022/10/08 舞台『となりのトトロ』(ロンドン)開催決定 【10/22 Update!!】” の続きを読む

Overtone.第80回 長編と短編と翻訳と。~村上春樹と久石譲~ Part.5

Posted on 2022/10/20

ふらいすとーんです。

怖いもの知らずに大胆に、大風呂敷を広げていくテーマのPart.5です。

今回題材にするのは『村上さんのところ/村上春樹』(2015)です。

 

 

村上春樹と久石譲  -共通序文-

現代を代表する、そして世界中にファンの多い、ひとりは小説家ひとりは作曲家。人気があるということ以外に、分野の異なるふたりに共通点はあるの? 村上春樹本を愛読し久石譲本(インタビュー記事含む)を愛読する生活をつづけるなか、ある時突然につながった線、一瞬にして結ばれてしまった線。もう僕のなかでは離すことができなくなってしまったふたつの糸。

結論です。村上春樹の長編小説と短編小説と翻訳本、それはそれぞれ、久石譲のオリジナル作品とエンターテインメント音楽とクラシック指揮に共通している。創作活動や作家性のフィールドとサイクル、とても巧みに循環させながら、螺旋上昇させながら、多くのものを取り込み巻き込み進化しつづけてきた人。

スタイルをもっている。スタイルとは、村上春樹でいえば文体、久石譲でいえば作風ということになるでしょうか。読めば聴けばそれとわかる強いオリジナリティをもっている。ここを磨いてきたものこそ《長編・短編・翻訳=オリジナル・エンタメ・指揮》というトライアングルです。三つを明確な立ち位置で発揮しながら、ときに前に後ろに膨らんだり縮んだり置き換えられたり、そして流入し混ざり合い、より一層の強い作品群をそ築き上げている。創作活動の自乗になっている。

そう思ったことをこれから進めていきます。

 

 

今回題材にするのは『村上さんのところ/村上春樹』(2015)です。

期間限定サイトに寄せられた読者からの質問や相談に村上春樹が回答する、そのやりとりをまとめた本です。たしか受付期間は約2週間、それから3ヶ月半の開設期間のなかで、ご本人がすべて回答しています。そこから選ばれた書籍版とコンプリートした電子書籍版とあります。

 

”春樹さん、こんなことも聞いていいですか? 世界中から集まった質問は何と3万7465通。恋愛・人間関係・仕事など悩ましい人生のモンダイから小説の書き方、音楽や映画、社会問題、猫やスワローズまで、怒濤のメール問答は119日間、閲覧数1億PVに及んだ。可愛くてちょっとシュールなフジモトマサルのイラストマンガを多数加え、笑って泣いて励まされる選りすぐりの473通を収録する!”

(書籍版 作品案内より)

 

”村上作品に関する素朴なクエスチョンから、日常生活のお悩み、ジャズ、生き方、翻訳小説、社会問題、猫、スワローズ、そして珍名ラブホテルまで――。期間限定サイト「村上さんのところ」に寄せられた37,465通の質問・相談メールに、村上春樹が3か月半にわたって続けた回答は、3716問!そのすべてを完全収録し、ウェブサイト掲載時と同様の横組みスタイルで再現。単行本8冊分の愉しみを、スマホやパソコン、タブレットや電子書籍端末にダウンロードして、手軽にたっぷり楽しめるコンプリート版!”

(電子版 作品案内より)

 

自分が読んだあとなら、要約するようにチョイスチョイスな文章抜き出しでもいいのですが、初めて見る人には文脈わかりにくいですよね。段落ごとにほぼ抜き出すかたちでいくつかご紹介します。そして、すぐあとに ⇒⇒ で僕のコメントをはさむ形にしています。

 

 

 

”翻訳された海外の小説は、どうしても文章が「普通の日本語の文章」とは少しずれたところに落ち着いてしまいます。地の文章もそうですし、会話もそうです。できるだけ普通の日本語に近づけようとしますが、やはり超えられない一線みたいなものがあるようです。原文に忠実にあろうとすると、どうしてもそうなってしまいます。「だから海外の小説は読まないんだ」という方も数多くおられると思います。

でも僕はそのような「ずれ」の中に、けっこう大きなポテンシャルが潜んでいるのではないかと思うんです。そういう「ずれ」が、逆に日本語に新しい可能性のようなものを与えているのではないかと。ですから、そういう意味で、翻訳をしていくことは、僕にとってとても良い勉強になっています。

僕が苦労した翻訳はたくさんありますが、いちばん大変だったのは去年の三月に出したサリンジャーの『フラニーとズーイ』(新潮文庫)です。サリンジャーの練りに練られた、凝った強固な文体を日本語に置き換えていくのは、実に至難の業でした。サリンジャーが『キャッチャー~』を乗り越えるために、どれくらい念入りに自分の文体を再構築していったか、訳しているとそれがひしひしとわかります。まさに力業です。訳するのはむずかしかった。でも面白かったなあ。”

~(中略)~

⇒⇒⇒
”「ずれ」の中に、けっこう大きなポテンシャルが潜んでいるのではないか” すごく印象的で深く残りました。英語から日本語に置き換えるときに発生する言語的ずれ。オリジナルテキストから翻訳者が介入するときに発生する表現的ずれ。これは音楽においても、原典のスコアから読み解くときに起こる「ずれ」と共通するかもしれないと思ったからです。

西洋音楽(精神性・人種性・文化性)を日本人が置き換えるときに発生する潜在的ずれ。指揮者が介入するときに発生する表現的ずれ。久石譲もまた「ずれ」をポテンシャルと捉えているからこそ、現代的・ソリッド・リズム重視といったアプローチで臨んでいるともいえます。ヨーロッパのオーケストラだからこそできること、日本のオーケストラだからこそできる可能性。言語面はポップスでも花開くことたくさんあります。映画『アナと雪の女王』主題歌「Let it go」から「ありのままの~」なんてポテンシャルが最大限に発揮されて新しい魅力を輝かせたいい例でした。

 

 

”言語レベルでつきあわせていくと、オリジナルのテキストと翻訳されたものとのあいだには、やはりある程度の落差は生じます。これはもう原理的に仕方のないことです。しかしその表層を一枚剥いだ物語レベルにおいては、ほとんどそのままの内容が伝達可能であるはずだと、僕は考えています。作家としても、翻訳家としても、そう考えています。つまり物語性が強い小説であればあるほど、それは翻訳による転換に耐える体質をそなえているということになると思います。物語というのはいわば、世界の共通言語としての機能を果たしているわけです。僕としてはそういう物語の本来的なパワーを信じたいと思っています。言語レベルにおいても翻訳家のぎりぎりの努力が必要とされることは言うまでもありませんが。”

~(中略)~

⇒⇒⇒
クラシック音楽でいうと、ベートーヴェンもモーツァルトも、いろいろな解釈や演奏があったとしても、作品そのものの価値を失うことはありません。多少つまらない演奏と評されてもだからといって作曲家まで評価を落とすことはない。また一方では、いい作品というのはいい作品たらしめる再現性も極めて高い、そんなことも思ったりします。久石譲のスタジオジブリ交響作品、公式スコアによる演奏会はますます増えています。素晴らしい作品というのは、素晴らしいパフォーマンスを引き出すし、いかなる演奏でもある一定のクオリティは担保されている。そして観客が求める感動水準を約束してくれる。そんなようなこと。くだけて言うと「久石譲指揮で聴いてほしいけど、聴けるチャンスあるなら、生演奏で聴いてみて、オーケストラの迫力を体感してみて、全然違うから、行ってよかったってなると思うよ」。

 

 

”そうですね。僕の文章にとって、音楽の影響はとても大きいように思います。文章を読み返しながら、リズムや響きや流れみたいなものをいつも頭の中で点検しています。声に出して読んでみることもたまにあります。文章の書き方について、僕は多くのことを音楽から学んだかもしれません。

僕が音楽性を感じる文章を書く人としては、ポール・オースターがいます。ただ彼の音楽性は僕のそれとはずいぶん違います。彼の奏でる音楽はとても構築的で、バッハのフーガなんかに通じるところがあります。対位法的に整ったところがあって、読んでいて気持ちがいいです。僕の場合は「構築的」というのはないですね。フリー・インプロビゼーションの方に近いかもしれません。楽器はたぶんピアノだと思います。”

~(中略)~

⇒⇒⇒
ポール・オースターの小説を手にとってみました。たしかに読みやすい。つまずくことなく流れていくし、構築的というのもなんとなくわかる気がする。文章の組み立て方の印象というかもちろん素人感覚です。ただ、そう感じたこと自体が不思議だったりします。だって翻訳された日本語で読んでいるから。村上春樹さんは原文の英語で読んでいて感じたことです。でも、日本語で読んでも程度の差こそあれ同じように感じられたところがある。不思議です。

 

 

”オリジナル・テキストのアップデートは不要です。それは時代性を含んで成立しているものですから。言葉が古くなっても、表現が古くなっても、事情がかわっても、人の考え方が変わっても、それは普遍のオリジナルとして、永遠の定点として存在します。それが芸術というものです。

しかし翻訳は時代とともに更新されていく必要があります。なぜなら翻訳は芸術ではないからです。それは技術であり、芸術を運ぶためのヴィークル=乗り物です。乗り物はより効率的で、よりわかりやすく、より時代の要請に添ったものでなくてはなりません。たとえば古い言葉は更新されなくてはなりませんし、表現はより理解しやすいものに変更されなくてはなりません。それから、以前にはわかりにくかった様々な情報が、今ではわかるようになったということもあります。

例をひとつあげますと、フィッツジェラルドの某長編小説の旧訳に「フランス大旅行団」という言葉が出てきました。目の前を「フランス大旅行団」が通り過ぎていく。僕はこの「フランス大旅行団」が何のことだかわからなくて原文をあたってみたのですが、なんとこれが「Tour de France」なんですね。ツール・ド・フランス、もちろん自転車レースです。ツール・ド・フランスの車列が目の前を通り過ぎていったのです。この翻訳がなされた当時の日本では、ツール・ド・フランスが何かを知る人はあまりいなかったのでしょう。だから翻訳者は適当に想像して、「フランス大旅行団」と訳してしまった。今ならまずあり得ない間違いです。

チャンドラーの古い訳書に、グレープフルーツを「アメリカざぼん」、ブラジャーを「乳バンド」と訳しているものもありました。これはいくらなんでも更新しないとまずいですよね。そういうことが他にもたくさんあります。

優れたオリジナル作品は古びませんが、翻訳は古びます。どんな翻訳だって、多かれ少なかれ古びます。僕の翻訳だっていつか古びます。翻訳は原理的に更新されることが必要なのです。”

~(中略)~

⇒⇒⇒
なぜオリジナルは古くならないのか。なぜ翻訳はアップデートが必要なのか。とてもわかりやすい内容です。ベートーヴェン:交響曲第9番《第九》も複数のスコア版が存在したり、画期的な改訂版が登場したりと、たえずそこに歴史的研究や発見がくり返されています。膨大なスコアの音符のなかから、ここはレかシか、そんな一音をもって論争進行中そんな作品もあります。

演奏においてもそうですね。オーケストラの大きさ・フォーメーション・楽器・奏法など、時代とともに変化してきた部分と作曲当時との研究や比較。そのようにして、時代ごと・作品ごと・作曲家ごとに、今もっともふさわしいと思う一定の成果のもと、さらに新しい追求をつづけるバリエーション豊かな演奏が世界中で響いています。

翻訳は古びる。ひとつの真理なのでしょう深すぎる。中途半端に触れれない。いい作品は翻訳が時代ごとに更新されているし複数の訳版もある。そのときの時代の空気を吸うからまた未来に架け渡すことにもなる。さて、クラシック音楽は。今の時代の空気に触れて響かせることが、もしかしたら久石さんの言う「古典芸能になってはいけない」にもつながるのかもしれません。

 

翻訳の更新について、よく語られる内容で同旨あります。

 

 

”「いわゆる翻訳調のような日本語」に置き換えるところから翻訳はだいたい始まるものです。次にそれをほぐして解体し、もう一度自分の文章として並び替えます。原文の意味や味わいをできるだけ損なうことなく、生きた日本語に再構築していくわけです。それが翻訳の醍醐味であり、翻訳者の腕の見せ所になります。僕も何度も何度もその作業を繰り返します。納得がいくまで繰り返します。そのときに「原文の声に耳を澄ます」という作業が必要になってくるわけです。それから自分自身の文体みたいなものも必要になってきます。声を聞き取る音感と、言語的センスはもちろん必要です。”

~(中略)~


何が言いたくて抜き出したのか忘れてしまったけれど…すべての道に通じる。

 

 

少し追加します。

テーマからは横道になりますけれど、とても印象に残っているページです。

 

”僕は素晴らしい音楽を聴いたら、その素晴らしさをなんとか文章のかたちに置き換えてみたいといつも思います。それはとても自然な欲求なのです。そしてその文章を誰かが読んで、「ああ、この音楽を聴いてみたいな」と思ってくれたら、それに勝る喜びはありません。でも音楽を文章で表すのって、ずいぶんむずかしいです。僕はそれを自分にとっての大事な文章修行だとみなしています。音楽を聴くことと、音楽についての文章を読むことは、お互いを助け合う行為だろうと僕は考えていますが、直感と思索は互いを支え合うべきものなのです。”

~(中略)~


ほんと魅了されていくつその音楽を聴いてきたことか。村上春樹さんの音楽について書いた本や文章はけっこうたくさんあって、惹き込まれるし魅力的です。ついつい活字が止まって音楽を探しはじめてしまう。運良く見つけられたら一緒に聴きながらまた読んでみる。そうやって共感の信頼感みたいなものが生まれてくるのかもしれません。

おすすめしたい音楽を伝えられる文章力がほしい。音楽好きなら誰しも思います。村上さんここさらっと書いてますけどほんととても難しい。その音楽の素晴らしさを伝えるためには、文章力もいるし音楽を感じとる力もいる。だから、技術も感性もどちらも磨かないといけない。だから、ほんととても難しい。できるところから磨いていくしかない。前よりも磨けてるかもって少しでも思えた日にはうれしいものね。

 

 

”気持ちはよくわかります。でも僕は思うんだけど、積極的に常に新しい音楽を聴き続けるという努力(かなりの努力です)をしていかないと、耳は確実に衰えます。だから僕はがんばって新しい音楽をなるべくたくさん聴くようにしています。よいものに巡り合える確率はかなり低いです。でも人間が生きていくというのは、確率の問題じゃないんです。がんばってください。”

~(中略)~


-共通むすび- にあるセンテンスまるごとです。

 

(以上、”村上春樹文章”は『村上さんのところ』より 引用)

 

 

 

今回とりあげた、『村上さんのところ/村上春樹』。多彩なテーマについて質問・回答が繰り広げられています。読者のなかには、ちょっとしたスキマ時間にいい、というレビューも多かったりよくわかります。ひとつの一問一答であれば1-3分で読めるし、ちょっと空いた10-30分くらいなら平気で埋めてくれます。サクサクっと読めて頭をリフレッシュみたいに、ちょっとしたブレイク的な読み方もできたりします。おすすめの一冊です。

電子書籍コンプリート版を読破しようと思ったら……たぶんそうだな…1ヶ月以上はかかる(1日1時間)と思ったほうがいいかもしれません。でもね、そんなに急いで読むこともありません。半年一年かけてじっくり読む、少しずつ味わったほうが楽しいです。今年はこれ読んだなあ!そんな満足感はきっとのこると思います。ときおりまた読みたくなる。コンプリート版はテーマ別(音楽・映画・仕事とか)にも読みすすめることできる、そうセグメントができるデジタルの強み、かなりおすすめの一冊です。

 

 

-共通むすび-

”いい音というのはいい文章と同じで、人によっていい音は全然違うし、いい文章も違う。自分にとって何がいい音か見つけるのが一番大事で…それが結構難しいんですよね。人生観と同じで”

(「SWITCH 2019年12月号 Vol.37」村上春樹インタビュー より)

”積極的に常に新しい音楽を聴き続けるという努力をしていかないと、耳は確実に衰えます”

(『村上さんのところ/村上春樹』より)

 

 

それではまた。

 

reverb.
翻訳/指揮する現在と、翻訳/指揮される未来。時代は流れています♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Info. 2023/02/17 「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第270回 定期演奏会」開催決定!! 【10/17 update!!】

Posted on 2021/11/17

2021年4月日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任した久石譲です。2022-23 シーズンラインナップが発表されました。そのなかの一公演になります。 “Info. 2023/02/17 「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第270回 定期演奏会」開催決定!! 【10/17 update!!】” の続きを読む

Info. 2022/10/15 舞台『となりのトトロ』、ロンドンで“最もチケットが売れている公演“と大好評(ORICON NEWSより)

Posted on 2022/10/15

舞台『となりのトトロ』、ロンドンで“最もチケットが売れている公演“と大好評

今月8日に英ロンドンのバービカン劇場で開幕した舞台『となりのトトロ』の場面写真が到着した。1988年に公開された、スタジオジブリの同名アニメーション映画で音楽を手がけた作曲家の久石譲が舞台化を提案し、宮崎駿監督(※崎=たつさき)がこれを快諾したことで始まったプロジェクト。久石がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、イギリスの名門演劇カンパニー、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)と日本テレビが共同製作し、舞台化が実現した。 “Info. 2022/10/15 舞台『となりのトトロ』、ロンドンで“最もチケットが売れている公演“と大好評(ORICON NEWSより)” の続きを読む