Blog. 映画『パラサイト・イヴ』(1997) 久石譲 インタビュー 劇場用パンフレットより

posted on 2016/2/14

1997年公開 映画「パラサイト・イヴ」
監督:落合正幸 音楽:久石譲 出演:三上博史 他

 

ベストセラー原作の映画化作品。シンセサイザーを基調としたスリリングかつダイナミックな楽曲とピアノと弦による美しい旋律の対比が印象的な作品です。

公開当時、劇場で販売された映画パンフレットより、久石譲の貴重なインタビューをご紹介します。

 

 

「映像で表現しきれなかった登場人物の気持ちや背景を、音できちんと語ったつもりです」

-この映画の音楽を担当されることになったきっかけから伺いたいのですが。

久石:
落合監督とは何度か仕事を一緒にやらせてもらってまして、監督が僕の音楽が好きらしくて、コンサートに来て頂いたりとかした時に、いつかホラーをやりたいねという話をしたんですよ。それからしばらくしたら、実はということで、この話を頂いたんですよ。

 

-久石さんご自身はホラーはお好き。

久石:
映画の分野として自分の音楽がすごく生かされる分野だと思ってます。

 

-この原作はあらかじめ御存知でしたか。

久石:
すでに読んでましたので、この話を聞いた時はしめたと思いました(笑)

 

-脚本についてですが。

久石:
僕はもっとホラーに徹するべきだと思いました。ただ、たまたま他の仕事で大林監督にお会いした時に「実は今、ホラーをやってるんです」っていう話をしたら、大林さん曰く「ホラーは究極のラブロマンスだよね」って仰ったんですよね。要するに、現実の世界では何らかの理由でうまくいかなくて、片方があの世に逝っちゃたりして、そこから来る怨念のような物がいろいろ絡まってくる話だから、根底は究極のラブロマンスだと。その話を聞いてなるほどなって思いましたね。

 

-それで音楽的には。

久石:
音楽的に言うと、非常に綺麗なメインテーマをワンテーマ。後は完全なホラーサウンド。そのホラーサウンドも怖いタイプと、宗教がかった運命的な物とか、そういう使い分けで全体を構成しました。

 

-今回の音楽でのドラマ作りというのは。

久石:
落合監督の画は、波が寄せては返し、寄せては返しっていうある種の繰り返しのようにしてジワジワと来る感じなんですよ。それは僕が得意なミニマルミュージックにすごく近いんですね。だから監督が意図されたことと、僕が音楽的に設計図を引いたことがすごくいい形にドッキングしていると思います。

 

-今回の音的な部分についてですが。

久石:
恐怖を煽っていくシーンは、基本的に非常に不思議なエスニックな音とか、とんでもない生楽器ではない物を主体にしました。メインテーマに関しては、生の僕のピアノとか、クラシックのソプラノの歌手だとか、ストリングスだとか、非常に空気感のある人間的な物にして、思いっきり対比をつけました。

 

-今回の音楽のポイントは。

久石:
画面が進行していながら呼吸するように、音楽もやっぱり呼吸しているわけですよね。そうすると、これはもう僕のポリシーなんだけど、単に画面をなぞるような劇伴は一切、書いたつもりはないんです。むしろ映像で表現しきれなかった登場人物の気持ちとか背景、そういう事をきちんと語れるようにしたいと思っていて、もちろん映画にはいろんな要素があるし、映像あっての物ですから、完璧に出来たとは思ってないですけど、うまくいけたなっていう気はしています。

(映画「パラサイト・イヴ」劇場用パンフレット より)

 

パラサイト・イヴ パンフレット

 

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