Blog. 「週刊ポスト 2005年7月1日号」 久石譲 リレーエッセイ内容

Posted on 2015/1/12

雑誌「週刊ポスト 2005年7月1日号」、贈る×手紙 リレーエッセイ の最終話に登場した久石譲です。久石譲から秋元康への手紙という内容になっています。

 

 

贈る×手紙 最終話
「てーげーに」

秋元 様

御無沙汰しています。この前お会いした時は赤坂のお店でしたね。特に最後に出たカレーがおいしかったのを覚えています。秋元さんの選んだ店はどこもおいしい。いつも御馳走になりっぱなしで大変申し訳なく思っています。

それから僕の初監督作である「カルテット」も脚本の相談だけでなく、制作委員会に名前を列ねて(つまり出資です)いただいているわけで、この手紙ではせめて感謝の気持ちを伝えたいと思います。

秋元さんの監督作「川の流れのように」の音楽を担当した時はとても楽しかった。伊豆の山々にブルガリアンヴォイスを流したり、亡くなられた美空ひばりさんと僕のピアノが共演したり(昔のマルチテープからヴォーカルだけ抜き出してそれに合わせてダビングした)で、新しいアイデアを出すと秋元さんはほんとうにうれしそうでした。その笑顔を見ていると僕はもっと張り切って喜ばせたくなりました。何だか僕のほうが年下のような書き方になってしまいましたが、秋元さんにはどこか兄貴分的な雰囲気がありますね。

先日沖縄でレコーディングしていたのですが、そこで「てーげー」という言葉を知りました。土地の言葉で「程々に、適当に」という意味だそうです。沖縄のゆったりした時間の流れの中で人々は自然に身を委ね、嫌なこと、うまく行かない事があっても「てーげーに」といって笑って泡盛を飲む、そんな感じらしいのです。今とても気に入っている言葉です。「ここまでかなあ」と思いつつもまだ何かありそうともがくあの瞬間、「てーげー」という言葉が頭を過ります。そして僕は踏ん切りをつけ次に行く、そんな今日この頃です。

それでぱっと浮かんだのが秋元さんなのです。抱えきれないほどの仕事をこなすなかで、きっとこの「てーげー」さを実践しているのではないか、そう思ったわけです。そういう意味でも秋元さんはやはり僕の兄貴分なのでしょう。

そろそろ食事会しませんか?

僕はいつでも大丈夫です。

久石譲

(週刊ポスト 2005年7月1日号 より)

 

この連載は手紙にリレーエッセイです。秋元康さんに始まり、手紙を受け取った人は、また大切な知人で手紙を贈る。秋元康、柴門ふみ、北川悦吏子、桐島かれん、桐島洋子、俵万智、明川哲也、久石譲という全8回のリレーになっていて、最終回の久石譲はリレーの輪をつなぐように秋元康へ贈る手紙となっています。

 

 

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