Posted on 2018/10/10
雑誌「pen 2011年7月15日号 No.294」に掲載された久石譲インタビューです。
世界で活躍する創造者たちがクリエーションを生みだす場所を写真家ベンジャミン・リーが写しだす、という好評連載コーナー「創造の現場。」に久石譲が登場した回です。2ページ見開きで1ページ分を大きな写真が掲載されています。取材に人が入るのは初めてというプライベートスタジオの写真です。
創造の現場。 36 久石譲 音楽家
音楽の根本を考える、ここは「世界の中心」。
「ここは、自分にとっては『世界の中心』みたいなところですね」と久石譲はやわらかな声で言った。自宅にあるプライベートスタジオでのことだ。
「音符やリズムの実践は、昼間、オフィスにあるスタジオで行います。でも、根本的なアイデアはここで生まれますね。とても重要な場所です」
深夜に自宅に帰ると、明け方までをこのスタジオで過ごす。
「ここでは、気になるCDを聴いたり、本や資料を読んだり。中心となるのは、昼間に実践している音楽の根本を考えることと、クラシックの勉強です」
自身の生き方を「螺旋を描くように進んできた」という。現代音楽家としてスタートを切り、映画音楽に数多く関わり、2年前からクラシック音楽を活動の芯にしている。コンサートではベートーヴェンやマーラーの曲を指揮し、自身の新作交響曲も披露する。長く親しまれてきたクラシックと、いま生まれたばかりの曲を同じホールに響かせるのは、大きな挑戦だ。
「いまやっておかなければ、という気がするんです。短い作品は2000以上作曲してきたので、そろそろ、全体でものを言うもの(交響曲)を書いてもいいのでは、と。それに、クラシックにもコンテンポラリーな視点を入れたほうがいいと思う。どんなにいい時代の曲でも、新しい視点で前の観念を壊し続けないと、生き続けないから」
自分にプレッシャーをかけ、全身全霊を捧げて音楽を追究する。3月11日を経て、思いはさらに強くなった。
「音楽はひとつの救いになるけれど、我々音楽家はそれに加えてもっと強く、音楽がなぜ必要なのか、自分で回答を出していく仕事をしなければ」
音楽はいつでも、いまを生きる人のためにある。音楽の潮流がこれからもみずみずしく強くあるために、そして螺旋状に続く道をその先へ進めるために、「世界の中心」がある。
写真横に掲載されたコメント)
プライベートスタジオ。オフィスのスタジオと同じ機材を揃えた。オフィスは実践、ここは思考。ふたつの場所を行き来し、気分を切り替える。取材のために人が入るのは初めて。
(pen ペン 2011年7月15日号 No.294 より)
この4年間におよぶ連載は2014年「創造の現場。」書籍化されています。紙面構成は同じです。各界著名人、約100人のクリエイターたちの言葉と象徴的写真を収めた本です。