Blog. 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.8」コンサート・レポート

Posted on 2021/10/12

10月8日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.8」コンサートです。入魂1公演、一期一会の1公演。また前回Vol.7に引き続いてライブ配信もあり、国内外から広く視聴できるコンサートになりました。

 

 

久石譲プレゼンツ ミュージック・フューチャー Vol.8
Joe Hisaishi presents MUSIC FUTURE VOL.8

[公演期間]  
2021/10/08

[公演回数]
1公演
東京・紀尾井ホール

[編成]
指揮:久石譲
室内楽:Music Future Band
バンドマスター:西江辰郎

[曲目] 
Nico Muhly: Step Team (2007) *日本初演

Bryce Dessner: Murder Ballades for Chamber Ensemble (2013) *日本初演
1. Omie Wise
2. Young Emily
3. Dark Holler
4. Wave the Sea
5. Brushy Fork
6. Pretty Polly
7. Tears for Sister Polly

—-intermission—-

Arvo Pärt: Fratres for Violin and Piano (1977/1980)

Lepo Sumera: 1981 from “Two pieces from the year 1981” (1981)

Joe Hisaishi: 2 Dances for Large Ensemble (2021) *世界初演
Mov.I How do you dance?
Mov.II Step to heaven

 

 

 

まずは会場で配られたコンサート・パンフレットからご紹介します。

 

 

ニコ・ミューリー:Step Team

ステッピング(Stepping)は、声だけでなく全身を使う軍隊を模したダンスです。高度な振り付けと正確さが必要とされますが、表現の自由度が高く、そのため多くのエネルギーを要します。

この曲はシカゴ交響楽団のMusicNOWのために作曲したものですが、あまり繊細にせず、点描画的な手法を避け、9人の奏者が一つのチームとして機能することで単一のリズムを刻みます。シカゴ交響楽団がニューヨークに来るたび、金管楽器によるステーキハウスのような重厚なサウンドに感銘を受けていたので、この曲ではバス・トロンボーンをハーモニーや叙情的な素材のガイド役として起用しています。

曲のある時点で、リズミカルなユニゾンが崩れ始め、個々の奏者やグループがパルスに対して遅くなったり、速くなったりします。一方、バス・トロンボーンは、セクション間の変化を告げる統一的な役割を担っています。散漫なパルスに続き、金管セクションは他の楽器を整列させるよう導きます。そして、バス・トロンボーンとピアノのデュエットは他のプレーヤーによる装飾を伴いながら幕を閉じます。

Nico Muhly

 

ブライス・デスナー:Murder Ballades

ああ、私の話を聞いてください、嘘は言いません。
ジョン・ルイスがどのようにして可哀想なオミー・ワイズを殺したか。

マーダー・バラッドとは、ヨーロッパの伝承をルーツにした、血なまぐさい殺人事件を歌で語る曲のスタイルです。この伝承はのちにアメリカに伝わり、独自のものとして発展しました。デスナーはこれらのバラッドの魅惑的な旋律、暴力的なストーリー、演奏スタイルからインスピレーションを得て、オリジナルの作品を作りました。「Omie Wise」、「Young Emily」、「Pretty Polly」は、古典的な曲からヒントを得た曲。一方、「Dark Holler」は、デスナー自身によるメロディで、クローハンマー・バンジョーをイメージしたサウンドで描かれています。「Brushy Folk」は、南北戦争時代のマーダー・バラッドやフィドルをもとにした曲。「Wave the Sea」「Tears for Sister Polly」は、アメリカ音楽が持つ奇妙な側面、そしてその奥深さから紡ぎ出されたオリジナル作品です。

ブライス・デスナー(1976-)は、作曲家、エレクトリック・ギタリスト、芸術監督として活躍し、作品にはバロック音楽や民俗音楽、後期ロマン主義やモダニズム、ミニマリズム、ブルースなどを取り入れています。今回の「Murder Ballads」は、アメリカの室内楽アンサンブルのエイト・ブラックバード(eight blackbard)とルナパークから委嘱を受け、2013年4月5日にオランダのアイントホーフェン音楽堂で初演されました。

brycedessner.com

 

アルヴォ・ペルト:Fratres

「Fratres」(ラテン語で「兄弟」の意)は1977年に作曲され、ティンティナブリ様式の音楽が認められてから膨大の生み出された作品の一つです。この曲は当初、さまざまな楽器で演奏可能な、決まった楽器編成のない3パート構成の音楽として作曲され、1977年にペルトの同志である古楽器グループ、ホルトゥス・ムジクスによって初演されました。

「Fratres」はまた、ソロ楽器のためのバリエーションを加えた曲としても編曲されています。その中で最初となるのが、ザルツブルク音楽祭の委嘱を受け、ヴァイオリンとピアノのために書かれたもので、1980年の同音楽祭において初演されました。(今回演奏されるのはこのバージョンです。)

構造的には、繰り返される打楽器のモチーフで区切られた変奏曲となっています(打楽器のない編成の場合は、ドラムのような音を模倣します)。曲全体を通し、異なるオクターブから始まって繰り返されるテーマが聞こえてきます。徐々に動く2つのメロディラインと短三和音の音符上を動くティンティナブリの主声部による3つの声部をはっきりと認識することができます。また、全体を通し、響くような低いドローンを伴っています。高度な技術を要する独奏楽器のパートが、繰り返される3部構成のテーマに新たなレイヤーを加え、変化する要素と不変の要素によるコントラストが強調されます。アルヴォ・ペルトの曲は一見シンプルに聞こえますが、声部の動き、メロディやフレーズの長さ、拍子の変化など、厳格な数学的な法則によって支配されています。

Arvo Pärt Center

 

レポ・スメラ:1981(1981年から2つの小品)

「1981」は、エストニアの作曲家レポ・スメラ(1950-2000)の最も有名なピアノ曲「1981年から2つの小品」の第1曲で、「The Piece from the Year 1981」と題されることもあります。世界初演は、1981年3月15日にエストニアのタリンで、ケルスティ・スメラによって演奏されました。第2曲は「Pardon, Fryderyk!」。このピアノ曲はこれまで2千回以上、世界中で演奏されている作品であり、トム・ティクヴァ監督のドイツ映画『プリンセス・アンド・ウォリアー(原題:Der Krieger und die Kaiserin)』のサウンドトラックとして起用されたことでも知られています。

 

久石譲:2 Dances for Large Ensemble

「2 Dances for Large Ensemble」は2020年12月9日から東京近郊の仕事場で作曲をスタートした。11月の後半にMUSIC FUTURE Vol.7が行われ好評を得た後である。その時の作曲ノートには「2楽章形式で約22分、Rhythm Main」と書いている。ほとんどその通りに作品はできたのだが、大きく違う点がある。元々のアイデアは2管編成約60人を想定していた楽曲だった。

2020年12月はまだ新型コロナ禍の真っ只中にいた。舞台上の蜜を避けるためオーケストラの3管編成、約90人の楽曲はほとんど演奏できない状況にあった。つまり、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスはできるが、マーラー、ブルックナーなどの後期ロマン派や20世紀前半の作品、例えばプロコフィエフ、ショスタコーヴィチなどは全く演奏できない状況にあった。「現代の音楽」を演奏したいと考えている僕としては、懸命にその編成でできる楽曲を探したのだが、ほとんどない有様だった。そこで2管編成で演奏できる楽曲、このようなパンデミックの状況でも演奏できる楽曲を作ろうというのがそもそもの発想だった。

僕は日記のように毎日作った楽曲を、あるいは途中経過をコンピューターに保存しているので、楽曲の成立過程を簡単に見ることができる。2 Dancesは12月はら翌2021年1月の中旬まで集中して作曲した後、飛び飛びで作った形跡はあるが、だいぶ飛んで8月の中旬からまた集中して作曲している。これは交響曲第2番と第3番を締切の関係で先に作らなければならなかったことやコンサートなど他のことをするため一時中断したということである。ちなみに2020年から2021年にかけて2つの交響曲を書いたことは本当に嬉しいことであり、ある意味奇跡的なことでもある。少なくとも僕にとって。MUSIC FUTURE Vol.8に向けて仕上げることは春先に決めていたように思われるが、そういう曖昧に考えたことなどは残念ながらコンピューター上には残らない。

「2 Dances for Large Ensemble」はダンスなどで使用するリズムを基本モチーフのようにして構成している。そのため一見聴きやすそうだが、かなり交錯したリズム構造になっているため演奏は難しい。これはMFB(Music Future Band)の名手たちへの信頼があって初めて書けることである。また使用モチーフを最小限にとどめることでリズムの変化に耳の感覚が集中するように配慮したつもりである。またMov.2では19小節のかなりメロディックなフレーズが全体を牽引するが、実はそこにリズムやハーモニーのエッセンスが全て含まれている。その意味では単一モチーフ音楽、いわゆるSingle Musicといえる。

最後に2 Dancesはダンスのリズムを使用した楽曲であるが、これで踊るのはとても難しいと思う。もし踊る人がいたら、僕は、絶対観てみたい。

久石譲

(「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.8」コンサート・パンフレットより)

 

 

 

コンサートに先駆けて9月21日から8日間、久石譲コメント動画がツイートされています。コンサートやプログラム作品の魅力についてわかりやすく語られています。

 

[日本語テロップ]
現代の音楽
アートとしての作品を中心に演奏するコンサート
自分が一番演奏してみたい
自分が聞いてみたい楽曲を中心に組んでいる
室内楽のコンサートシリーズ

 

[日本語テロップ]
日本では現代音楽として
ヨーロッパ流の作曲法に基づく音楽が
主流として演奏されていた
アメリカでもミニマルミュージックという
新しい音楽のスタイルが
1964年くらいからできて
世界中に強い影響を与えた
この音楽は
ロックが好きな人たちも馴染める
一般の人たちも取り込める強さがある
そっちの音楽を”現代の音楽”と言っている

 

[日本語テロップ]
ニコ・ミューリー
世界で一番売れている若手作曲家のひとり
ニコ・ミューリーの「Step Team」
18分くらいの曲
非常に知的レベルが高く
ハーモニーを重要視したサウンド
来年来日してもらうための
プロモーションもかねて
彼の曲を最初に演奏します

 

[日本語テロップ]
ブライス・デスナーは
ロックバンドもやっている
リードギター奏者でもあって
現代音楽に転身して
とてもいい曲を書いている
彼も今ナンバーワンのひとり
「Murder Ballades」は
全部で7曲からなる組曲
すごく聞きやすくて非常に現代的
もしかして本や映画のように書いたのか
何かベースとなるテキストがあって
それに対して作った組曲という感じ

 

[日本語テロップ]
ミニマル的なパターンの影響を受けたのは
東欧の作曲家にたくさんいる
一つの拠点になっているのがエストニア
エストニアの世界的に有名な作曲家
アルヴォ・ペルト
このところ僕が一番注目している作曲家
レポ・スメラ
2曲後半聞いてもらいます
「Fratres」はバイオリンとピアノの曲
アルヴォ・ペルト
「Piece from the Year 1981」は
ピアノのソロ曲でレポ・スメラ
アメリカの作曲とは違うスタイルで
皆さんに気に入ってもらえるのでは

 

[日本語テロップ]
最後は僕の曲で「Two Dances」
2つのダンスリズムを使って
自分なりのミニマル的・パターン的な
アプローチをかけた作品
非常に複合的な5・6・7・9拍子…が
同時進行していく
非常に複雑なリズム構造だが
すごく聞きやすいんじゃないか
ただし踊るのは無理
変拍子すぎて
どこが頭かわからないから

 

[日本語テロップ]
やれる限り続ける
コロナの状況とは無関係に
続けていくべき
音楽家は皆そうしなければならない
僕は去年から今年で
シンフォニーの2番・3番
それぞれ35分以上かかる大作を
2つ仕上げ
映画の音楽なども入れると
去年から今年で休んだ日がない
毎日作曲しているから
与えられた環境の中でやり続けることが
一番大事

 

[日本語テロップ]
この2年間作曲していて
すごく感じていることは
理屈っぽい・高邁な事をいう楽曲を
書きたいとは思わない
みんなが日々生活するのが大変な時に
重い曲を自分が聴きたいとは思わないし
人に聴いてくれという気持ちもない
この2年は
非常にわかりやすい曲を書こうとした
それがどういう意味があるのか
10年後にならないとわからないかも
自分の作曲のスタイルがすごくシンプルに
皆さんにどう受け入れてもらえるか
すごく楽しみ

 

 

 

さらに!

コンサート数日前に開設されたばかりホヤホヤのインスタグラムでは、リハーサル風景の動画や写真と一緒に、プログラムの紹介テキストなどが次々と投稿されました。コンサートの舞台裏、創作の内側までのぞけそうな貴重な発信スタートしました。

 

Joe Hisaishi: Instagram No.1

 

こんな投稿もファンにはうれしいですね!

(コメントも引用 ↓ )

 

明日のコンサートでお披露目となる僕の新曲『2 Dances』の各楽章のタイトルを、やっと、決めました。

久石譲 : 2 Dances for Large Ensemble
Mov. I How do you dance?
Mov. II Step to heaven

このあいだプログラムの原稿を書いた時は、まだタイトルが決まっていなかったので、明日お渡しするプログラムには載っていません。
久石譲

from 久石譲インスタグラム @joehisaihsi_composer

 

 

ぜひフォローしましょう!

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

 

現代作品はコンサート前に予習できないもの多いです。本公演でも久石譲新作はもちろん、日本初演の作品もあります。まだ音源化されていない、パフォーマンスが少なくウェブを駆使しても探せない。事前に予備知識がないこともあってか、演奏会聴きすすめながら「これを日常生活のどこで聴こうかなあと思ったときに…なかなか置き場所にまよう音楽だなあ」そんなことも一瞬思いました。

でも、よぎった一瞬のウィークポイントは、実はMUSIC FUTUREの大きなストロングポイントです。日常生活ではきっと出会うことのないだろう音楽、自分の音楽経験や音楽アンテナでは行き着くことのないだろう音楽。私の人生のなかで聴くことがなかったかもしれない音楽。…ちょっとおおげさだけど、でもそうですね…。ここに大きな価値と大きな好奇心がつまっています。非日常の演出や特別な時間を提供してくれるコンサート・シリーズです。

 

 

ニコ・ミューリー:Step Team

楽器編成:ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、フルート、ファゴット、ホルン、トロンボーン、バス・トロンボーン、ピアノ (楽器編成はライブ配信の映像目視による、以下同)

約18分の作品。最初はプログラムのなかで一番とっつきにくい印象でした。うまく受け取ることができない体を素通りしてしまう音楽のように。ライブ配信をアーカイブで楽しみながら、少しつかめそうな気もしてきたかなどうかな。楽曲解説に「9人の奏者が一つのチームとして機能することで単一のリズムを刻みます」とあります。特に前半部分を聴きながら、なるほどわかりやすかったです。久石譲の”Single Track Music(単旋律)”の手法ではないけれど、複数の楽器でハーモニーは発生するけれど、リズム的には同じ動きをしている。単律動な旋律みたいな。そうとっかかりができるとおもしろかったです。

楽曲解説に「曲のある時点で、リズミカルなユニゾンが崩れ始め、個々の奏者やグループがパルスに対して遅くなったり、速くなったりします。一方、バス・トロンボーンは、セクション間の変化を告げる統一的な役割を担っています」とあります。久石譲指揮が、指で数字をさして進める箇所がありますが、たぶんそこのことじゃないかな違うかな。バス・トロンボーンの伸ばした音で次のセクションに変化しているように(久石譲指揮は数字の4?5?)思いました。

ニコ・ミューリーの作品には、どこかにそれとわかる和音感があるものも多いですが、この作品に限っては、ハーモニーも楽想も言われなければ気づけないほど新鮮なタイプの作品でした。まあとにかく僕はというと、芸術的絵画を目の前にして、パンフレットの解説と絵を交互に見やり首が疲れるほど。なるほどここのことか、とか、どこ一向にわからない、とか、そんな感じでこらして向き合っていた気分です。それもまた楽しい。

 

 

ブライス・デスナー:Murder Ballades

楽器編成:ヴァイオリン、チェロ、フルート、クラリネット、ピアノ、パーカション

約20分の作品。6つの楽器という小編成なアンサンブルながら、とてもバラエティに富んだイメージを喚起してくれる楽曲たちです。コンサートで聴きながら、各楽章の境目がわからずに今どこにいるのかさまよい気味だったのですが、ライブ配信のテロップ表記で安心しました。1,2楽章と4,5楽章は、曲間の切れ目なく演奏されているようです。

ウェスタン(西部劇とまではいかない)を連想するような楽章もあったりと、アメリカな空気を感じる作品です。音色的効果も多彩に盛り込まれているように、楽器の奏法などから感じました。また、ピアノの弦に大胆に板を置いて演奏していた「3.Dark Holler」。楽曲解説に、「クローハンマー・バンジョーをイメージしたサウンドで描かれています」とあります。おそらくここのことで、バンジョーのような音色をピアノから出すための演出だと思います。そしてバンジョー的乾いた音色も、いろいろなニュアンスを出すウッド・パーカッションも、やっぱりウェスタンです。「7.Tears for Sister Polly」なんかは、「久石譲:I Want to Talk to You」に通じるような親和性も感じたりしながら(弦楽器の力強い刻みかな)印象に残りました。

楽曲解説プロフィールに、「作品にはバロック音楽や民俗音楽、後期ロマン主義やモダニズム、ミニマリズム、ブルースなどを取り入れています」とあります。ほんとこの作品にも言えることです。さあ、西部劇音楽・カントリー音楽・ウェスタン音楽を聴こうってなかなかないかもしれません。トラディショナルな古き時代からある音楽です。こうやって現代の音楽として新しい音楽として聴けると新鮮だし楽しい。わらべ歌を現代の交響作品にしてみせた『久石譲:交響曲第2番』もそうだと思う。現代作曲家たちがアイデンティティをもって臨んだ作品たち。これもまたレガシーなのかもしれませんね。

 

・・・・

こんなときに紹介したいから。

この曲は、ブライス・デスナーの新作にあたるひとつで、子供のための子守唄として書かれたピアノ曲です。倍音の音響効果を意識したとどこかで見たのですが少し前のことで忘れました。とてもきれいな曲です。

Bertrand Chamayou plays Bryce Dessner: Song for Octave (約3分)

from Warner Classics YouTube, uploaded in 2020

 

 

MC

約5分のMC。休憩あけ久石譲がマイクを持って登場です。プログラム作品の紹介です。Twitterインタビュー動画と同旨なところもあるので要点だけ箇条書きにします。

 

・ニコ・ミューリーとブライス・デスナーは今世界で最も売れている作曲家。いろいろな催し物や音楽祭などで作曲の依頼が彼らに集中するほど。この二人はアメリカ系の作曲家。

・来年のMUSIC FUTUREはいよいよニコ・ミューリーが来日して一緒にコンサートをする。10月に東京とニューヨークで公演予定。世界的に優れたヴィオラ奏者ナディア・シロタも一緒にやる。

・アルヴォ・ペルトは世界的にとても人気のある作曲家。レポ・スメラは日本でほとんど知られていない。たまたまチェコでこの人の作品を演奏してほしいという依頼があって初めて知った(2022年4月公演予定)。今年は7月にFOCで「レポ・スメラ:交響曲第2番」を9月に日本センチュリー交響楽団と「レポ・スメラ:チェロ協奏曲」を演奏した。今日はピアノ曲。この二人は東欧系の作曲家。

(自身の新作については「そのあとは僕のこのコンサートのために作った曲をお送りします」とひと言添えたくらいです)

 

 

・・・「あと何か言うことあったかな」とつぶやいたあと話題はインスタグラムに。とてもおもしろかったので、ここだけは臨場感たっぷりに書き起こしテイストでお届けできたらと思います。

 

”あっそうだ!インスタっていうのを始めたんですよ、Instagramっていうんですか、一昨日始めて夜の段階で百何十人って…ふざけんじゃねえよコラみたいな、それでもうイヤだと思っていたら昨日中に1万人越しまして、今1万1千人ぐらい、(会場拍手!)。それで指揮者のアルヴォ・ペルトさんは3万4千人ぐらいいる、めざせ!っていう感じでがんばって。でも上をみたら、ラン・ラン40何万人とかね、すごいなあそういう人もいるんだと思いつつ。で、一番おかしいのは、リハーサルやります、リハーサル1時間やったら休憩で戻ります、ケータイに飛びついてまず見るんです数字を…3千人か、とかなんかね、言いながら見てます(笑)。全然ふつうのおじさんになっちゃいました(会場笑)。そういうのを見て来られた方もいらっしゃるという話もありました。自分が発信できることはいろいろな方法をとって皆さんに発信していきます。これからもMUSIC FUTURE、いろいろなことを楽しみにしていてください。じゃあ、このあと楽しんでください。どうも。”

 

 

アルヴォ・ペルト:Fratres

楽器編成:ヴァイオリン、ピアノ

約11分の作品。アルヴォ・ペルト作品集のようなアルバムには必ず収録されていると言っていいほどの代表曲です。ただ、僕が聴き馴染んでいた編成とは違って、ヴァイオリンとピアノのみの組み合わせは初めてです。

冒頭からヴァイオリン独奏の激しい技巧で静かな緊張感が走ります。速いパッセージで和音を構成している音たちを速弾きしています。その残響で和音を作り出すように、そうまるで素早く手を振って分身の術の残像を作り出すように。ずっとくり返す同じモチーフがつづくなか、ヴァイオリンはさまざまなバリエーションでリズムやハーモニーを変容させています。ときに鋭く重音奏法で切りこむことも。弦をはじいている箇所がパーカッションを模倣していると思います。

僕は、演奏前にパンフレットを見ていたので、この曲を聴きながら、久石譲作品の解説がふっと浮かんだんです。「実はそこにリズムやハーモニーのエッセンスが全て含まれている」。中身は違うかもしれないけれど、これもそうだよね!と思ったんです。そう思えただけでも大きな収穫ありました。なるほどなあ、音楽を言葉にするとそうなるなあ、なんてひとり納得しながら。この曲は動画共有サイトで譜面付きのものなど含めてあるようです。言わんとすることが少しだけでも伝わるとうれしいです。ヴァイオリンが弾いている旋律がいろいろなリズムを生み出し、速弾きの残響でハーモニーをつくりだす。旋律がリズムでありハーモニーである。

この作品とりわけ弦楽合奏版はぶ厚い雲の層を漂うような、静謐なゆったりと流れる宗教音楽のようで、ときおり入る木質感の遠くのびるパーカッションの一打も荘厳さを誘います。たぶんStrings and Percussion版がポピュラーなんじゃないかな。このイメージが強かったからViolin and Piano版はことさら新鮮でした。できたら両方聴いて作品のよさや各バージョンのすごさを感じてほしい、そう思います。全然イメージ違いますから。ある種静と動ほど違う。

 

 

レポ・スメラ:1981(1981年から2つの小品)

楽器編成:ピアノ

聴き入ってしまって抜け出せなくなりそうな、不思議な力を感じる曲です。左手は終始規則正しいリズムの伴奏音型を通奏しながら、右手は変幻自在にリズム的旋律を奏でていきます。その両手が組み合わさったとき、独特のポリリズムを生み出しているように聴こえます。この作品も、スコア動画があったのでそれを見ながら聴くと、譜面にするとこうなってるんだ、と思うところで終わってしまいますけれど。感覚で聴こうとするか、知的に聴こうとするか、どちらにもそれでしか見えない景色があるように思います。

 

 

久石譲:2 Dances for Large Ensemble

楽器編成:ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、バス・トロンボーン、パーカション (2奏者) 、ピアノ

約23分の作品。第1楽章、冒頭の5拍子のリズムとリズミックなモチーフが基本となっているようです。一度ハマるとなかなか頭から離れないほど印象に残ります。そしてすごく魅惑的です。この冒頭にチェロが奏でている基本モチーフは、曲が進むなかでも変拍子になるなかでも、いろいろな楽器でよく登場しています。これをマスターするとあなたはこのダンスをエスコートしてあげられる上級者になれるかもしれません。うん、いろいろな変装(変奏)をしていても、とにかくウォーリー(基本モチーフ)を探せ!…どこにいたってちゃんと見つけたもんね!…とかね。僕はいくつ見つけることできたんだろう。それだけでもひとまずは楽しめそうな第1楽章だと思います。低い次元ですいません。

タイトルからみると。ダンスリズムで構築されたこの作品は、アフリカ、アジア、タンゴ、ジャズ、あらゆる種類のリズム要素を内在したかのような、すごく魅惑的です。そして聴くタイミングによって活動的になったり内省的になったりする作品のようにも思います。タイトルからみるとパート2。danceにheaven…「踊る=生きる」としてみたら、あなたはどう生き生きしていますか? 思い切り生きていますか? さあ踊りましょう!…とかね。こんな時だからこそエネルギーをもらえるメッセージも込められていたりするのかな、なんて思ったりもしました。遠い次元ですいません。

第2楽章、楽曲解説に「19小節のかなりメロディックなフレーズが全体を牽引するが」とあります。僕は、演奏前にパンフレットを見ていたので、そうなんだすごく手引きになって助かる、そう思っていたらまんまとやられました。たしかにどこで始まってどこで終わったかはなんとなくわかる19小節です。・・・だけど小節の切り分けがまったくできないじゃないですか。きれいに等分じゃない変拍子はさまってて、これじゃ切り分けたケーキで子供たちがケンカするじゃないですか。・・・くだらない表現はさておき、そうだもんだから、19小節の基本モチーフを鼻歌できるほど覚えられるにはけっこう時間かかりそう、そんな感じです。

後半にかけてチェロのピッツィカートらが基本モチーフを、ドラムスはスウィングを始め、そのときモチーフは引き伸ばされています。そこから2巡目になると、テンポはキープしたままモチーフは圧縮されています。演奏する時間の長さの伸び縮みです。ここからヒートアップしてたたみかけていきますが、まるで倍速になったような効果を感じることができるパートです。

気がつけば第2楽章はとにかく19小節のフレーズで貫いています。順繰りにくり返しながらバリエーション(変奏)している。旋律が変化する。そのとき旋律のリズムは変化し、アンサンブルのリズムも変化する。旋律が変化する。そのとき旋律の調性は変化し、アンサンブルの内声も変化する。楽曲解説に「19小節のかなりメロディックなフレーズが全体を牽引するが、実はそこにリズムやハーモニーのエッセンスが全て含まれている」とあります。旋律の変化がリズムやハーモニーの変化をリードしている。

 

”この2年間作曲していて
すごく感じていることは
理屈っぽい・高邁な事をいう楽曲を
書きたいとは思わない
みんなが日々生活するのが大変な時に
重い曲を自分が聴きたいとは思わないし
人に聴いてくれという気持ちもない
この2年は
非常にわかりやすい曲を書こうとした
それがどういう意味があるのか
10年後にならないとわからないかも
自分の作曲のスタイルがすごくシンプルに
皆さんにどう受け入れてもらえるか
すごく楽しみ”

 

久石譲インタビューからです。うん、今はこれから長く聴きつづける作品にしたい、そう思える作品にまたひとつ出会えた。このことがうれしいです。

 

 

 

みんなの”MF Vol.8”コンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

リハーサル風景

 

公演風景

from 久石譲インスタグラム @joehisaihsi_composer

 

 

 

会場では、最新アルバム(前回Vol.7を収録)の先行販売もありました。いち早く聴けることはうれしいです。こうやってMFコンサート毎に音源化してくれることはもっとうれしいです。

 

 

 

 

まだ間に合うライブ配信!

アーカイブ配信期間
10月15日(金)23:59まで

チケット価格
1,980円(税込)
※Streaming+、ローチケLIVE STREAMINGにて配信

 

購入ページや視聴環境については公式サイトご覧ください。

公式サイト:久石譲プレゼンツ・ミュージック・フューチャー Vol.8|ライブ配信
https://joehisaishi-concert.com/mf-vol8-online/

Official web site for overseas:JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VOL.8|LIVE STREAMING
https://joehisaishi-concert.com/mf-vol8-online-en/

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

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