Blog. 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説(5)組曲

Posted on 2024/10/14

つづけて、「坂の上の雲」組曲をみていきましょう。現在、三つの組曲があります。

 

 

CD発売日

 

 

(A)Saka No Ue No Kumo(2010)

『Melodyphony』に収録されました。構成楽曲は順番に「Stand Alone」「時代の風」「蹉跌」「戦争の悲劇」「Stand Alone」です。演奏は久石譲指揮・ロンドン交響楽団で、オーケストラ通常配置で録音されています。『サウンドトラック 1』と『サウンドトラック 2』の間ということもあり第1部楽曲から中心に構成されています。とはいえ全3部を通して数多く使用された楽曲です。一方では、「青春」「少年の国」「旅立ち」といった快活な楽曲は選ばれていません。「坂の上の雲」の重厚で厳しい時代を描いた一つのかたちとなる音楽作品です。「Stand Alone」もまた組曲のためのオーケストレーションです。さらなる高揚感と壮大なスケールを味わうことができます。

『サウンドトラック 3』に収録されました。構成楽曲は同じ、演奏は外山雄三指揮・NHK交響楽団で、オーケストラ通常配置で新録音されています。こちらの同音源は『総集編』にも収録されています。

メロディフォニー版は約10分半、サントラ版は約11分半、同じ組曲で約1分の違いがあります。クラシック音楽の交響曲約40分の作品でも約4~6分違うだけで聴いている体感は大きく異なってきます。そこからするとこの組曲の約1分の差異は大きい。

 

ラップタイムをみてみましょう。

「Stand Alone」がオープニングを飾る組曲は、次の「時代の風」に移る時にメロディフォニー版(M版)3:30/サントラ版(S版)3:40とここで10秒の差が開きました。次の「蹉跌」に移る時にはM版5:07/S版5:20と15秒の差に少しだけ進んでいます。次の「戦争の悲劇」に移る時にはM版6:19/S版6:44とさらに25秒に広がっています。最後の「Stand Alone」に移るときにはM版8:44/S版9:14と30秒の差に少しだけ進んでいます。そしてラストスパートを駆け抜けゴールを迎えたときは一気に約1分の差が生まれています。

つまりは各パートの演奏時間でみると、エンディング「Stand Alone」で30秒、オープニング「Stand Alone」と「蹉跌」で各10秒、それぞれ演奏時間が異なっています。ピックアップして聴き比べてみるとテンポ感を如実に体感できます。こうして実は2つの「Saka No Ue No Kumo」を楽しむことができます。緩急自在に躍動感のあるM版、丁寧に整然感のあるS版、あなたの好みはどちらでしょうか。

 

 

 

(B)「坂の上の雲」組曲(2009)

(C)「坂の上の雲」第二組曲(2011)

コンサートのみで披露された組曲で音源化はされていません。(B)は『Melodyphony』よりも前で一番最初の組曲にあたります。『サウンドトラック 1』発売直後でありエンターテインメントらしいコンサートに映える楽曲が選ばれています。(C)は『サウンドトラック 3』発売後で遂にTV放送も第3部完結を迎えたタイミングです。そういったことも踏まえながらここでは時系列にみてみましょう。

 

コンサート・プログラム歴

  • 久石譲 ジルベスターコンサート 2009
  • 久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ ニューイヤーコンサート (2010)

「坂の上の雲」組曲
時代の風
旅立ち
青春
戦争の悲劇
Stand Alone

司馬遼太郎の長編小説『坂の上の雲』が初の映像化。同名のNHKスペシャルドラマとして2009年11月から放送を開始した。音楽を担当した久石は、「史実・そこに立ち向かう人々の”凛とした”生き様を描きたかった」という。今回はその作品群の中から『時代の風』『旅立ち』『青春』『戦争の悲劇』『Stand Alone』と5つのテーマを選りすぐり、組曲形式に再構築した。あえて日本の五音階と西洋のモダンな音階を融合させることにより、独特の世界観を引き立たせている。明治時代、近代国家として新しく生まれ変わろうとする「日本」。純粋さやひたむきさだけでなく、高み=”坂の上”を目指そうとする人々の強い志と貪欲さが時代を動かす風となっていく。世界の歌姫サラ・ブライトマンが歌う『Stand Alone』は、明治の人々の”凛として立つ”美しき姿をイメージしたというメインテーマ。今回はオーケストラとピアノのバージョンで演奏する。自然と口ずさんでしまいような普遍的なメロディと壮大なオーケストレーションが秀逸。
*NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』オリジナル・サウンドトラック収録

(久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ ニューイヤーコンサート コンサート・パンフレット より)

 

  • 西本願寺音舞台 2011

Saka No Ue No Kumo

 

  • アルモニーサンク北九州ソレイユホール 1周年記念「久石譲コンサート」(2011)
  • 久石譲 ジルベスタ―コンサート 2011

「坂の上の雲」第二組曲
第3部序幕
少年の国
真之と季子
煉獄と浄罪
絶望の砦〜二○三高地ニ起ツ〜
日本海海戦
終曲
Stand Alone

司馬遼太郎の長編小説『坂の上の雲』が映像化。NHKスペシャルドラマとして2009年11月~12月に第1部。2010年12月に第2部、今年12月に完結編となる第3部が放送されたばかり。明治時代、近代国家として新しく生まれ変わろうとする「日本」。純粋さやひたむきさだけでなく、高み=”坂の上”を目指そうとする人々の強い志と貪欲さが時代を動かす風となっていく。ドラマの枠を超え、壮大なスケールで描かれた作品は日本中に感動と衝撃を与えた。

音楽を担当した久石は、「史実・そこに立ち向かう人々の”凛とした”生き様を描きたかった」という。今回はその作品群の中から第3部を中心に「第3部序幕」「少年の国」「真之と季子」「煉獄と浄罪」「絶望の砦~ニ◯三高地ニ起ツ~」「日本海海戦」「終曲」「Stand Alone」の8曲を選りすぐり、組曲形式に再構築した。第3部のメインテーマ「Stand Alone」を歌うのはヴォーカリスト、麻衣。彼女の透きとおった歌声は、番組プロデューサーの耳に留まり3年目を迎える今年、第3部の歌手として抜擢された。2011年の締めくくりにふさわしい重厚且つ壮大なオーケストレーションが秀逸。
*「NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」オリジナル・サウンドトラック2・3」「Melodyphony」 収録

(ジルベスター・コンサート 2011 コンサート・パンフレット より)

 

  • クラブツーリズムスペシャルコンサート 久石譲 オーケストラの世界 (2013)

久石譲:組曲「坂の上の雲」

 

 

「坂の上の雲」組曲は、TVドラマから音楽作品へと再構成され録音された(A)Saka No Ue No Kumo(2010)、演奏会作品へと再構成され披露された(B)「坂の上の雲」組曲(2009)と(C)「坂の上の雲」第二組曲(2011)、三つの組曲があります。これから先、コンサート演奏されたり録音されたりするといいですね。

 

 

次回は、第1部使用楽曲です。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)語られたこと
(3)Stand Alone
(4)サウンドトラック
(5)組曲
(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲
(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲
(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲

 

 

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