Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE / THE UNIVERSE WITHIN』

久石譲 『驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE~THE UNIVERSE WITHIN』

1991年7月1日 CD発売 NACL-1038
1994年3月21日 CD発売 NACL-1513

 

1989年放送 NHKスペシャル 「驚異の小宇宙 人体」
音楽:久石譲

 

~三次元 音が飛びかう 包み込む~
久石譲のファンタジック・インナースペースへの航海 スペシャル・ヴァージョン

 

 

楽曲解説

1.THE INNERS Opening Theme – Synthesizer Version
初めてCDをお聞きになった時、「おや?」と思われる方があるかもしれません。「一体どこが空間的な立体音響なのだろう?」でも他のCD(できれば”THE UNIVERSE WITHIN”に入っている同じ曲)と聞きくらべてみてください。こちらの方が格段に広がり感があるのがお分かりいただけるでしょう。つまり、3次元的な広がりがこのミックスのテーマです。

2.VOICE OF SILENCE
ヴォイスによって作られた大きな音空間の中でサックスが自由に動き回り遊んでいます。シンプルですが広い音場がよくわかる曲です。

4.TOUR IN CELL
この曲では、パーカッションのリヴァーブやピアノのリヴァーブを後方に飛ばして前進する感じを出してみたつもりです。ただ、音の世界では、前後の関係はよく間違えられる(普段は視覚のおかげで前後はほとんど間違えない)ので、あまりよく分からない時があるかもしれません。そんな時は、目をとじてリラックスした状態で聞いてみて下さい。ほら、あなたの回りを音が通りすぎてゆくでしょう。

5.MICROWORLD
この曲では、ベーシックなパートを担当するオルガンが空間的に配置され、その中をいろんな楽器が自在に動いています。ミクロの世界での分子の動きをイメージしてみました。

6.HUMAN WAVE
この曲では、ハープをダイナミックに動かしてみました。まるで竜巻のように、あなたの周りをぐるぐる回りながら、上昇下降をくりかえしているのがよくわかると思います。

7.ANIMA PORTRAIT
この曲では音につつみ込まれる感じ(囲にょう感といいます)を出してみました。ピアノとシンセの金属音だけのシンプルな曲ですが、これだけでも十分に音につつみ込まれる感じがします。

8.BIRTH
この曲も、特に奇をてらわず空間的な広がり感を追求してみました。

9.DÉJÁVU
この曲では、ドライな音場を基本として、シンセのメロの部分で急に音場がウェットになるようにしてみました。こうすることにより、後方に広がる大きな音場がよく知覚できるようになったと思います。

10.ONE NIGHT DREAM
この曲は、ドライな音場を基本とし、そこにヴォイスの「ハーッ」という音を空間的に配置しました。大きなひろがりはありませんが、ヴォイスがあなたの頭上を通り越して、反対側に消えてゆくのがよく分かるでしょう。

11.MIND SPACE
この曲では、小宇宙「人体」の広大な空間をイメージしました。イントロから出てくるカリンバの作り出す音場と、ヴォイス及びストリングスの作り出す空間の対比を聞いて下さい。

12.THE INNERS Ending Theme – Orchestra Version
この曲は、このアルバムで唯一の生オケの曲です。ここでは、特に奇をてらわず、2000人程度のコンサートホールの音場をシュミレートしてみました。つまり反射音の到来方向を空間的に配置してみたわけです。目をとじると、あたかもホールの中央にいて、ステージ上の演奏を聞いているかのようです。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

※3.INNER VOYAGEは楽曲解説掲載なし

 

 

久石譲 『驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE~THE UNIVERSE WITHIN』

1. THE INNERS Opening Theme – Synthesizer Version ~遙かなる時間(とき)の彼方へ~
2. VOICE OF SILENCE ~静寂の中の初声~
3. INNER VOYAGE ~内なる宇宙への航海(たびだち)~
4. TOUR IN CELL ~ミクロの戦士たち~
5. MICROWORLD ~10数ミクロンの遠景~
6. HUMAN WAVE ~60兆のさざなみ~
7. ANIMA PORTRAIT ~魂の肖像~
8. BIRTH ~生命の歓び~
9. DÉJÁVU ~わればかりかく思うにや~
10. ONE NIGHT DREAM ~千億光年の夢物語~
11. MIND SPACE ~永遠の亜空間物語~
12. THE INNERS Ending Theme – Orchestra Version ~遙かなる時間(とき)の彼方へ~

COMPOSE & ARRANGEMENT by JOE HISAISHI
PIANO:JOE HISAISHI

PRODUCED by JOE HISAISHI

RECORDED at WONDER STATION, NIKKATSU STUDIO CENTER
MIXED at FREEDOM STUDIO

 

Disc. 久石譲 『ふたり サウンド・シアター・ライブラリー』

久石譲 『ふたり オリジナル・サウンドトラック』

1991年4月21日 CD発売 NACL-1024
1995年2月21日 CD発売 NACL-1516
2001年10月30日 CD発売 WRCT-1003

 

1991年公開 映画「ふたり」
監督:大林宣彦 音楽:久石譲 出演:石田ひかり 他

 

 

音楽監督から 久石譲

ちょっと優しく

大林監督の声はとても魅力的だ。優しくて暖かで、モダンで、そう、男が男らしくいられた時代のカッコ良さがある。大林監督の手はとても大きい。その手でピアノも弾くし作曲もされる。そして驚くほど音楽が好きで信じられないほど音楽について詳しい。

大林監督にお会いしていると本当に楽しい。僕たちはこの都会の大人の社会で生活しているわけで、嫌なことや悲しいことが日々襲ってくる。でもそんなささくれだった心も、大林監督にお会いするとスッと身体の力が抜けて行き、少年の日の心が戻ってくる様な気がする。だから実は毎日でもお会いしたい。そうすればちょっと人に優しくなれるかも知れないから。

ある日、僕達はピアノの前に座っていた。すでにその映画のなかで使用するシューマンとモーツァルトの楽曲は録音を終えていた。そして僕が書いたメインテーマ用のデモテープを1~2回聞いた。ピアノで弾きだそうとした時には、すでに監督は歌い出されていた。それも音程一つ間違えないで。翌日、その歌詞が送られてきた。「昔人の心に、言葉、一つ生まれて……」映画『ふたり』の主題歌『草の想い』が誕生したのだ。

そして僕には歌手、大林宣彦さんのデビューが当然のことに思えた。でもシャイな監督は一人で歌うのを「ウーン…」と首をひねり、問わず語りの眼差しで、僕の方を振り向いたので僕も「ウーン…」と答えた。そこで奥様でありプロデューサーである恭子さんが「ふたり」なのだから「ふたり」で歌えば、という画期的な裁定を下した。大林宣彦&フレンズが歌う『草の想い』はこうして巷間に流れることになった。

映画『ふたり』との出会いはとても幸せだった。すばらしい作品を担当できるなんて音楽家にとって最高の喜びだ。中には8分台の長さの音楽が幾つかあって難しかったのだけれども、そのハードルを越えることにかえって燃えた。

クライマックスの後で、母親が父親に語りかけるシーンがある。「あなた…」「風呂はまだ…」変ロ長調のストリングスの和音が妻であり、母親である一人の女性の台詞と絡みながら徹かに聞こえてくる。静けさと優しさと愛に満ちたシーンだ。

人が人を許しあい、あるいは認めあい、喜びも悲しみも寂しさもすべてそのまま受け入れて生きていく。ほとんど宗教的とも言えるその深さは、この映画が真の傑作であることを決定的なものとしている。

僕はこの映画を3回見る事をお薦めする。1回目は友達と、そうすれば友情の有り難さが分かり、2回目は恋人と、そうすればかけがいのないものが分かり、3回目は父親と、そうすれば誰よりもあなたを愛している人が分かる。

大林監督とお会いしていると本当に楽しい。でも、忙しい監督に毎日お会いするわけにも行かないので僕は大林さんの映画を沢山見ることにした。そうすればちょっと、人に優しくなれるかも知れないから。

Blog. 映画『ふたり』(1991) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより

 

 

ふたり・音楽制作日記

1990年
5月21日:大林監督からお電話を頂き新しい音楽制作の依頼を受ける。
5月22日:台本が届く。
5月25日:大林氏の事務所PSCでの初顔合わせを行う。撮影前にいくつかのシーンに対して、音楽を作る必要があることが判明する。
6月2日:実加の弾く曲をシューマンの飛翔に決め監督にお伝えする。
6月12日:アバコスタジオにてアバコの林氏とPSC大島氏と打合せ、発表会のシーンの音楽と他のシーン用の音楽について、締め切りが7月1日に設定される。
6月16日:発表会のシーンのピアノ曲3曲を決定する。(モーツァルト・ソナタ、シューマン・ノヴェレッテ、シューマン・飛翔)
6月20日:アバコ・スタジオ302stにて18:00からピアノ3曲の録音を行う。
6月22日:大林監督からテーマ曲の「草の想い」(この時点では愛と哀しみのバラードというタイトルであった)の歌詞が届く。
6月24日:ワンダーステーション1stにて14時~21時までテーマ曲の録音。大林監督が仮歌を入れてくださる。
7月9日:ワンダーステーション1stにて13時~17時30分まで島崎和歌子さんによるテーマ曲の歌入れをする。
9月18日:ワンダーステーション1stにて13時から本編音楽制作の開始。
9月19日:ワンダーステーション1stにて13時から22時までレコーディング。
9月21日:ワンダーステーション1stにて13時から20時までレコーディング。最終的な監督との電話での打合せで全42曲に決定。
9月22日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。この日は8曲作る。
9月23日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。最終ロールのR-9が届く。
9月25日:テーマ曲、愛と哀しみのバラードの正式タイトルが「草の想い」となる。2番の歌詞も上がってくる。またこの曲を大林監督、久石氏のふたりで唄うということも決定。
9月26日:ワンダーステーション1stにて9時から中嶋朋子さんによるテーマ曲の歌入れ、大林監督も陣中見舞にいらっしゃる。
9月27日:ワンダーステーション1stにて13時から26時までレコーディング。
9月28日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。オープニングとラストを仕上げる。
9月29日:ワンダーステーション1stにて13時から29時までレコーディング。午後8時より大林監督の唄入れ。
9月30日:ワンダーステーション1stにて13時から28時までと2stで13時~23時まで2つのスタジオを併用してトラックダウン。大林監督も駆けつけて下さる。
10月1日:ワンダーステーション1stにて13時から26時までと2stで13時~23時まで昨日同様、2つのスタジオを併用してトラックダウン。これで全作業が終了。大林さんがワイン等のお土産を持ってきて下さり、作業の終了を祝う。午前3時に全員で「草の想い」を大合唱。

(ふたり・音楽制作日記 ~リマスター盤 CDライナーノーツより)

 

 

今度、NECアベニューから、今まであったレーベルの中に新シリーズ”サウンド・シアター・ライブラリー”を設けて、積極的に映画音楽のCDを出していこうと思っています。基本的に大きな柱が二つあって、一つは日本の良質な映画音楽を出していこうというもので、もう一つは、映画からイメージを受けた耳で聴くサウンドトラックみたいな形で、映像を抜いた新しいサウンド・シアターというか、そういう新しい試みが出来ればいいな、と考えているんです。もっと言えば、実際にサウンドトラックで作った曲ではなく、新たに歌で作り直したりという、そういったことも当然起こってくるでしょう。もちろんベーシックには映画というものを置いてありますけど、映像との関わり合いというか、そういった関係の中で起こり得る、これからのオーディオ・ヴィジュアル時代にあるべきいろんな試みが出来ればいいと思っています。

”サウンド・シアター・ライブラリー”の大きな特徴は、CDに脚本が全部ついてくることです。それによって自分達が映画に対して音との関係とか、映像があるために納得してしまうようなことを、見ないために、脚本を読んで音を聴いてイメージを喚起できることもあるし、その方がよほどイマジネーション豊かなわけ。とりあえず3月21日に「仔鹿物語」を出し、同時に大林宣彦監督自身が歌っている「ふたり」のシングルを、4月にそのサウンドトラックを出す予定です。このシリーズで大事なことは、単発で出してもあまり見向いてもらいないことを、こういったシリーズにして形にすることによって注目してもらうことであり、映画音楽にスポットを当てるという意味では非常に効果的なんです。今回脚本の中に音楽が入る箇所は示さなかったんですが、何かの作品ではやると思います。ただ、専門家用の企画になると困るので、もっと一般の人に楽しめるように、あまり細かい視点までは入れないつもりです。やはりこれ自体、エンターテインメントでありたいものですよね。

Blog. 「キネマ旬報 1991年4月下旬号 No.1056」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

かつて僕は多くの映画から沢山のことを学んだ。人が生きることで出会う様々な喜び、悲しみ、愛と憎しみ、映画は実生活では体験しえない程の人生を見せてくれた。そしてほんのすこし賢くなって僕は人に対してちょっぴり優しくなれた。

小さいころ僕の生まれた町では二つの映画館があり週変わりで3本づつ、月に24本以上の映画が上演され、僕はそのすべてを見た。アクション物から恋愛もの、西部劇から怪談物まで映画館の真暗闇のなかで息を殺してワクワクしながら見守っていた。そして映画館を出てきたとき、その映画の主人公になったつもりでさっそうと歩きながら、口をついて出てきたのが映画音楽だった。それは今でも変わっていない。

”タラのテーマ”(風と共に去りぬ)”ツナイト”(ウエストサイド物語)”アズ・タイム・ゴーズ・バイ”(カサブランカ)”ムーンリバー”(ティファニーで朝食を)今でもこのメロディーが流れて来たら映画のシーンが浮かんできてジーンとしてしまう。

そして今、音楽の道に進んで、それが映画と関わり合うなんて何てすてきなことだろう。僕は映画音楽が大好きだ。

しかし今映画音楽の現状は、日本の映画の現状と同じくらい悲惨だと思う。優れた監督もいれば優れたアクターもいる。また映画を作るための資金もある。なのに何故日本ではこうも閉鎖的で非創造的な環境になってしまったのか? ジリ貧の音楽予算と苛酷なスケジュール、そして劇伴と呼ばれるようなイージーな作曲家側の姿勢。言いだしたらきりがない。

だが、僕たちは現状を嘆いたり批判するだけで良いのだろうか? それでは何も変わらない。まず自分でやれることからやっていくべきなのだ。かつて映画館で見た夢を取り戻すためにも。

(サウンド・シアター・ライブラリー パンフレットより)

 

 

 

「昔、ひとの心に、言葉ひとつ、生まれて、……」
-久石譲さんとの、幸福な、対話

大林宣彦 91.1.6

久石譲さんと話していると、楽しい。こちらの目をきっちりと見て、選び抜かれた言葉を誠実に投げかけてくる。ひとつひとつの言葉が積み重ねられて、次第に、正確に、久石さんのチャーミングなお人柄が、目の前にくっきりと造形されてくる。その久石さんの姿に見惚れながら、こちらも己れの言葉を大切に紡いでいると、いつの間にやら久石さんの笑顔に誘われて、ぼく自身も良い人間になっていくようで、心が洗われるようで、とても気持が良い。そしてそれは、まるで久石さんの音楽を聴いているような心地なのだ。

人は誰でも、言葉でものを考え、言葉で自己を表現し、言葉で相手を受け止める。それを更に自分に似つかわしく、しかも相手に心地良く伝えるために、例えば絵を描き、例えば映画をつくり、例えば音楽にその想いを託する。久石さんの音楽は、久石譲さんの言葉が、最も幸福に表現されたものなのだろう。

そういう意味で、久石さんの音楽は、いわば、動詞だ。日本では、音楽とはどちらかといえば形容詞のようなものと考えられることが多いが、久石さんの音楽は、久石譲というひとりの人間の、想念を伝えるひとつの意志なのだ。そこに音楽というものが本来的に持つ力と美しさとがある。あらゆる芸術は、人間を幸福にするために生み出されてきた。久石さんはいつでもその幸福について考え、実行する。それが音楽となってぼくらの心を揺さぶる。幸福に生きるべく勇気を鼓舞する。そして例えば、あした、もう少しだけよい人間になろう、他人に優しく生きていこう、と決意し、自分自身に約束する。久石さんの音楽は、そのようにして、ぼくらの暮しに働きかけてくるのだ。

そういう久石さんの素晴らしさは、不平不満を一切口にしないという、日常の中での強い意志力にも表れている。この日本という国で、芸術家が幸福であることはまことに難しい。なにかにつけて愚痴も言いたくもなることばかりだ。しかし久石さんはいつでも幸福そうに微笑んでいる。「ぼくは大好きな音楽と一緒に生きていて、そして毎日、一歩ずつ、ぼくの理想の音楽に近づいている。だから、ぼくは幸福です」と久石さんは言う。そうなのだ。自らの幸福を信じる力こそが、創造の源なのだ。自らの幸福に感謝する心こそが、優れた芸術の温床なのだ。そういう幸福と共に暮すことへの畏れと誇りと責任感とが、例えば国際的な音楽家たちの、久石さんの音楽への共感を呼び起し、良き強力となって表れる。

ぼくの最新作の映画『ふたり』の音楽監督は久石さんである。ここには同じ言葉で語り合える二人の人間同士が、お互いの生きる証、愛そのものとしてその人生の中で選び取った、映画と音楽とが、幸福に対話している。この幸福感の中で、久石さんがほとんど即興的に生み出したメロディに、ぼくがほとんど反応するように手操り寄せた言葉たちは、思えば僕と久石さんとの対話のような詞となっていた。

-昔、ひとの心に、言葉ひとつ、生まれて、……聞かせてね、この声を、草の想い。

おまけに、この主題歌を、久石さんとぼくとで唄っちまったというのは、幸福過ぎてのハシャギ過ぎか、あるいはきっちりプロフェッショナルの仕事であるのか、そこのところは賢明なる諸姉諸兄の、判断に委ねるべきであるだろうが。

さあ、久石さんの音楽が、始まる。言葉が聞こえてくる。きょうもまた、幸福だ。

(久石譲シンフォニックコンサート・プログラムより)

 

 

久石譲 『ふたり オリジナル・サウンドトラック』

プロローグ
1. 風の時間 -オープニング・テーマ
2. モノクローム
すぐ近くで…
3. 北尾家の人々
4. 父と娘
5. 不意の出来事
6. 白い指先
明るい日
7. 実加と真子
8. 少女のままで
追憶
9. 別れの予感
10. 揺れるボタン
11. 姉の初恋
友だち
12. 風になって
13. いま泣いたカラスが…
14. 石段の道
15. 海の見える風景
16. 命の糸
17. 拍手の中の二人
卒業・入学
18. ふたりと二人
19. きらめきの瞬間
悪意
20. 汚された台本
21. 黒い電話
22. 震え
23. いたわり
24. 独り暮し
ミュージカル
25. 宴の光と影
26. 痛み
家族の絆
27. 淋しいひとたち
28. 失ったもの
エピローグ
29. 白いページ
30. 草の想い-ふたり・愛のテーマ

Produced by Joe Hisaishi

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi

Recorded and Mixed at Wonder Station

「草の想い -ふたり・愛のテーマ」
作詞:大林宣彦 作曲:久石譲 歌:大林宣彦&FRIENDS

 

 

なお発売後一度廃盤となった本作品は、2001年にワンダーランド・レコードより復刻・再販させることとなった。ジャケットが一新されただけでなく、曲目構成も変更になっている。

 

2001年10月30日 CD発売 WRCT-1003

ふたり 再販

1. 草の想い~ふたり・愛のテーマ~
2. 風の時間
3. モノクローム
4. 父と娘
5. 不意の出来事
6. 少女のままで
7. 別れの予感
8. 揺れるボタン
9. 姉の初恋
10. 風になって
11. 海の見える風景
12. きらめきの瞬間
13. 震え
14. いたわり
15. 独り暮し
16. 宴の光と影
17. 淋しいひとたち
18. 失ったもの
19. 白いページ

 

Disc. 久石譲 『仔鹿物語 サウンド・シアター・ライブラリー』

久石譲 仔鹿物語

1991年3月21日 CD発売 NACL-1022

 

1991年公開 映画「仔鹿物語」
監督:澤田幸弘 音楽:久石譲 出演:三浦友和 他

 

 

今度、NECアベニューから、今まであったレーベルの中に新シリーズ”サウンド・シアター・ライブラリー”を設けて、積極的に映画音楽のCDを出していこうと思っています。基本的に大きな柱が二つあって、一つは日本の良質な映画音楽を出していこうというもので、もう一つは、映画からイメージを受けた耳で聴くサウンドトラックみたいな形で、映像を抜いた新しいサウンド・シアターというか、そういう新しい試みが出来ればいいな、と考えているんです。もっと言えば、実際にサウンドトラックで作った曲ではなく、新たに歌で作り直したりという、そういったことも当然起こってくるでしょう。もちろんベーシックには映画というものを置いてありますけど、映像との関わり合いというか、そういった関係の中で起こり得る、これからのオーディオ・ヴィジュアル時代にあるべきいろんな試みが出来ればいいと思っています。

”サウンド・シアター・ライブラリー”の大きな特徴は、CDに脚本が全部ついてくることです。それによって自分達が映画に対して音との関係とか、映像があるために納得してしまうようなことを、見ないために、脚本を読んで音を聴いてイメージを喚起できることもあるし、その方がよほどイマジネーション豊かなわけ。とりあえず3月21日に「仔鹿物語」を出し、同時に大林宣彦監督自身が歌っている「ふたり」のシングルを、4月にそのサウンドトラックを出す予定です。このシリーズで大事なことは、単発で出してもあまり見向いてもらいないことを、こういったシリーズにして形にすることによって注目してもらうことであり、映画音楽にスポットを当てるという意味では非常に効果的なんです。今回脚本の中に音楽が入る箇所は示さなかったんですが、何かの作品ではやると思います。ただ、専門家用の企画になると困るので、もっと一般の人に楽しめるように、あまり細かい視点までは入れないつもりです。やはりこれ自体、エンターテインメントでありたいものですよね。

Blog. 「キネマ旬報 1991年4月下旬号 No.1056」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

かつて僕は多くの映画から沢山のことを学んだ。人が生きることで出会う様々な喜び、悲しみ、愛と憎しみ、映画は実生活では体験しえない程の人生を見せてくれた。そしてほんのすこし賢くなって僕は人に対してちょっぴり優しくなれた。

小さいころ僕の生まれた町では二つの映画館があり週変わりで3本づつ、月に24本以上の映画が上演され、僕はそのすべてを見た。アクション物から恋愛もの、西部劇から怪談物まで映画館の真暗闇のなかで息を殺してワクワクしながら見守っていた。そして映画館を出てきたとき、その映画の主人公になったつもりでさっそうと歩きながら、口をついて出てきたのが映画音楽だった。それは今でも変わっていない。

”タラのテーマ”(風と共に去りぬ)”ツナイト”(ウエストサイド物語)”アズ・タイム・ゴーズ・バイ”(カサブランカ)”ムーンリバー”(ティファニーで朝食を)今でもこのメロディーが流れて来たら映画のシーンが浮かんできてジーンとしてしまう。

そして今、音楽の道に進んで、それが映画と関わり合うなんて何てすてきなことだろう。僕は映画音楽が大好きだ。

しかし今映画音楽の現状は、日本の映画の現状と同じくらい悲惨だと思う。優れた監督もいれば優れたアクターもいる。また映画を作るための資金もある。なのに何故日本ではこうも閉鎖的で非創造的な環境になってしまったのか? ジリ貧の音楽予算と苛酷なスケジュール、そして劇伴と呼ばれるようなイージーな作曲家側の姿勢。言いだしたらきりがない。

だが、僕たちは現状を嘆いたり批判するだけで良いのだろうか? それでは何も変わらない。まず自分でやれることからやっていくべきなのだ。かつて映画館で見た夢を取り戻すためにも。

(サウンド・シアター・ライブラリー パンフレットより)

 

 

久石譲 仔鹿物語

釧路湿原・秋
1. 釧路湿原
2. 別海への道
3. 牧場のある風景
4. 夕映えの湖
出逢い
5. 恋するふたり
6. 流氷とエゾ鹿
7. 墓標
8. 花子との別れ
9. 出逢い(メインテーマ)
駅(ステーション)
10. 塘路駅にて
11. 初乳
12. 仔鹿のソネット
家族の肖像
13. 家族の肖像
恋人たちの渚
14. 恋人たちの渚
走れラッキー
15. 突然の出来事
16. 約束
17. 走れラッキー
父の背中
18. 父の背中
暗闇の中で
19. 行者葫
20. 日暮の雑木林
21. 暗闇の中で
エンジェル・ハート
22. 家族の絆
23. 誓い
ラッキーを救え
24. 愛のリレーPart 1
25. 愛のリレーPart 2
26. 愛のリレーPart 3
27. 愛のリレーPart 4
仔鹿と子供たち
28. 仔鹿と子供たち (メインテーマ)
老人と子供
29. 老人と子供
さよならの予感
30. 風立ちぬ
31. 野生のめざめ
32. さよなら列車
33. さよならの向こう側
希望へのUターン
34. 希望へのUターン
仔鹿物語〜メインテーマ〜
35. 仔鹿物語 〜メインテーマ〜

Produced by Joe Hisaishi

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi

 

Disc. 大林宣彦 & FRIENDS 『草の想い』

1991年3月21日 CDS発売 NADL-1017

 

映画『ふたり』(監督:大林宣彦 音楽:久石譲)の主題歌。同作品サウンドトラックにも収録されている。大林宣彦監督と久石譲のデュエットという幻の楽曲。事の経緯としては大林監督の奥さんの発案である。

その後、この楽曲は久石譲オリジナル・インストゥルメンタル楽曲「Two of Us」としてさまざまなかたちで発展していくことになる。

 

 

草の想い 大林宣彦

1. 草の想い 作詞:大林宣彦 作曲・編曲:久石譲
2. 風の時間 「ふたり」オープニング曲
3. 草の想い (オリジナル・カラオケ)

 

Disc. 久石譲 『アニメージュ・ベスト・シンフォニー』

アニメージュ・ベスト・シンフォニー

1991年2月25日 CD発売 TKCA-30263
1991年2月25日 CT発売 TKTA-20119

 

スタジオジブリ作品 「風の谷のナウシカ」から「魔女の宅急便」まで
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

すべてオーケストラアレンジのシンフォニー・ベスト・アルバム

 

 

アニメージュ・ベスト・シンフォニー

1. 海の見える街 (魔女の宅急便 サントラより)
2. プロローグ~出会い (天空の城ラピュタ シンフォニー編より)
3. 五月の村 (となりのトトロ サントラより)
4. ウルスラの小屋ヘ (魔女の宅急便 サントラより)
5. 大いなる伝説 (天空の城ラピュタ シンフォニー編より)
6. Gran’ma Dola (天空の城ラピュタ シンフォニー編より)
7. パン屋の手伝い (魔女の宅急便 サントラより)
8. おじいさんのデッキブラシ (魔女の宅急便 サントラより)
9. 風の伝説 (風の谷のナウシカ シンフォニー編より)
10. ねこバス (となりのトトロ サントラより)
11. 傷心のキキ (魔女の宅急便 サントラより)
12. よかったね (となりのトトロ サントラより)
13. 時間(とき)の城 (天空の城ラピュタ シンフォニー編より)
14. となりのトトロ (となりのトトロ サウンドブックより)
15. メイがいない (となりのトトロ サントラより)
16. はるかな地へ… (風の谷のナウシカ シンフォニー編より)
17. デッキブラシでランデブー (魔女の宅急便 サントラよりより)
18. 谷への道 (風の谷のナウシカ シンフォニー編より)

音楽/久石譲

 

Disc. 久石譲 『パーフェクト・オブ・アニメージュ』

パーフェクト・オブ・アニメージュ

1991年1月25日 CD発売 TKCA-30209
1991年1月25日 CT発売 TKTA-20113

 

スタジオジブリ作品 「風の谷のナウシカ」から「魔女の宅急便」まで
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」各イメージアルバム、サウンドトラックから、メインテーマや主題歌など主要楽曲をもれなく収録した初期宮崎駿作品のベスト盤。

 

 

パーフェクト・オブ・アニメージュ

1. 風の谷のナウシカ ~オープニング・テーマ~ (風の谷のナウシカ サントラより)
2. 空から降ってきた少女 (天空の城ラピュタ サントラより)
3. 晴れた日に… (魔女の宅急便 サントラより)
4. 風の丘 (魔女の宅急便 イメージアルバムより)
5. 風のとおり道 (となりのトトロ サントラより)
6. 大樹 (天空の城ラピュタ イメージアルバムより)
7. はるかなる地へ… (風の谷のナウシカ イメージアルバムより)
8. 君をのせて 歌:井上あずみ (天空の城ラピュタ サントラより)
9. となりのトトロ 歌:井上あずみ (となりのトトロ サントラより)
10. さんぽ 歌:井上あずみ (となりのトトロ サントラより)
11. 神秘なる絵 (魔女の宅急便 サントラより)
12. スラッグ渓谷の朝 (天空の城ラピュタ サントラより)
13. 鳥の人~エンディング・テーマ~ (風の谷のナウシカ サントラより)
14. かあさんのホウキ (魔女の宅急便 イメージアルバムより)

作曲・編曲:久石譲

 

Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体 サウンドトラック II / MORE THE UNIVERSE WITHIN 』

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体 Vol.2』

1990年12月21日 CD発売 NACL-1013
1994年3月21日 CD発売 NACL-1512

 

1989年放送 NHKスペシャル 「驚異の小宇宙 人体」
音楽:久石譲

 

~35億年の時空を超えて~
再び、久石譲の内なる宇宙への航海が始まる

 

 

解説

60兆もの細胞からなる我々の人体は”小宇宙”といわれ、大宇宙と同じ様に一つの秩序だった働きをしている。-NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」は、スウェーデン放送協会の特殊カメラによる体内実写映像や、世界最先端を行くNHKのCG等を駆使した特殊映像技術で、私達を肉眼では決して見ることのできない世界、人間の想像力がおよびもしなかった光景を目の当たりに出現させました。その息を呑む映像美を久石譲のスケールの大きな詩情豊かな音楽がより一層感動的に彩っています。

久石譲-アニメ「風の谷のナウシカ」「魔女の宅急便」や映画「Wの悲劇」「タスマニア物語」等の音楽を手がけ、作曲家、プロデューサーとして、日本の「現在(いま)」を代表する音楽家-人体のもつ極めて巧妙精巧な総合システムを、あるいは大編成のオーケストラやピアノ・バイオリンであたかも吟遊詩人のように奏で、あるいはシンセサイザーを駆使して神秘の世界を探査する科学者のように計算されつくされた音の一つ一つで、全編を緻密であたたかい久石メロディーで包みこんでいます。

久石譲の作り出す音楽の底には、一貫した人間に対するたゆまない愛情と人生の素晴らしさ、言うなれば”人間賛歌”が脈々と流れています。スタジオの中で、音を一つ一つひろい集め分析・集積をくり返し続け、やっと一つの音楽として構築する。それは錬金術師のように、永遠に続けられる活動のように思われてくる。無味乾燥で殺伐となりがちな中にあっても彼は笑顔をたやさない。いつでも一緒に作業をする人達への細かい配慮を忘れないのです。

そんなヒューマンで、劇的にして知的、スケールの大きな詩情をかもしだす音楽、それは彼そのものなのです。この第2集は、第1集で聴かせてくれた久石メロディーが、ふんだんに溢れているわけではありませんが、その音の一つ一つに音と音の隙間に、クラシックから現代音楽、JAZZからポップスまで手がける久石譲の音楽性ヒューマンな感情が感じとられる事でしょう。久石譲の音楽が、静寂の中にくり広げられ続ける人体の様々なドラマをよりファンタジックに、よりドラマチックに感動をより一層感動へと導いてくれる事でしょう。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

1998年4月28日 CD発売 PCCR-00301

NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」サウンド・トラック THE UNIVERSE WITHIN Vol.1 & 2(2CD) として再発売された。

 

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体 Vol.1』

(2CDジャケット)

 

 

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体 Vol.2』

1. THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Opening Theme Synthesizer Version)
2. HEART OF NOISE ~生命胎動~
3. STRANGER ~かくも果てしなき未知の世界へ~
4. DÉJÀVU ~わればかりかく思うにや~
5. OMEGA QUEST ~永遠なる探索者~
6. VOICE OF SILENCE ~静寂の中の初声~
7. ANIMA PORTRAIT ~魂の肖像~
8. ONE NIGHT DREAM ~千億光年の夢物語~
9. HUMAN WAVE ~60兆のさざなみ~
10. THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Violin Version)

COMPOSE & ARRANGEMENT:Joe Hisaishi
PIANO:Joe Hisaishi

Producer:Joe Hisaishi

 

Disc. V.A. 『アニメージュ・ヴォーカル・コレクション』

1990年9月25日 CD発売 TKCA-30147
1990年9月25日 CT発売 TKTA-20069

 

宮崎駿作品のヴォーカル集。テーマ曲や挿入歌、イメージ・ソングで構成されたアルバム。

セレクトされている作品は「名探偵ホームズ」「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」の、スタジオジブリ作品を多数収録した全5作品より。映画のイメージソングとして制作され、本編未使用かつ久石譲作品ではないものも含まれている。

 

 

アニメージュ・ヴォーカル・コレクション 1

アニメージュ・ヴォーカル・コレクション 2

1. 君をのせて 歌:井上あずみ
2. 風の谷のナウシカ 歌:安田成美
3. となりのトトロ 歌:井上あずみ
4. おかあさん 歌:井上あずみ
5. まいご 歌:井上あずみ
6. もしも空を飛べたら 歌:小幡洋子
7. 風の妖精 歌:安田成美
8. 空からこぼれたStory 歌:ダ・カーポ
9. 想い出がかけぬけてゆく 歌:井上あずみ
10. 鳥になった私 歌:宝野ありか
11. 好きなのに! 歌:宝野ありか
12. あこがれのまち 歌:MAI & YUMIKO-Chan
13. 合唱 君をのせて 歌:杉並児童合唱団
14. めぐる季節 歌:井上あずみ

 

Disc. 久石譲 『アニメージュ・ベストコレクション』

アニメージュ・ベストコレクション

1990年7月25日 CD発売 TKCA-30115
1990年7月25日 CT発売 TKTA-20053

 

スタジオジブリ作品 「風の谷のナウシカ」から「魔女の宅急便」まで
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

主題歌やイメージソングを集めたソング・コレクション

 

 

アニメージュ・ベストコレクション

1. 晴れた日に
2. めぐる季節 (井上あずみ)
3. 魔法のぬくもり (井上あずみ)
4. はるかな地へ…
5. 風の谷のナウシカ (安田成美)
6. 遠い日々
7. 鳥の人
8. となりのトトロ (井上あずみ)
9. ねこバス (北原拓)
10. さんぽ (井上あずみ)
11. まいご (井上あずみ)
12. 空から降ってきた少女
13. 君をのせて (井上あずみ)

 

Disc. 久石譲 『タスマニア物語 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『タスマニア物語 オリジナル・サウンドトラック』

1990年7月21日 CD発売 PCCA-00095
1990年7月21日 CT発売 PCTA-00057

 

1990年公開 映画「タスマニア物語」
監督:降旗康男 音楽:久石譲 出演:田中邦衛 薬師丸ひろ子 他

 

 

これぞ、正統的な映画音楽の王道です。

いろいろと調べてみましたが、バリ島だったらガムラン、インドだったらシタールのように地域差を出すためのエスニックな楽器というものが、オーストラリアにも、タスマニアにもない。オーストラリア民謡ってないんですよ。この音を聞いたら、それだけで、オーストラリアのイメージがパッと浮かんでくるような音がなかったので、ひたすら広大な大陸を連想させる、スケールの大きなシンフォニー・サウンドに徹した方がいいと思いました。

今回の音楽は、とんでもなく手間暇をかけているんですよ。1曲が4分近くあって、長い。本当に画面と、どこまで密接して作るか考えて、洋画に近い作り方をしたなあという気がします。例えばセリフが一言あるとすると、そのセリフによって、音楽が反応する。コンピュータを駆使して、5秒間に14フレーム、ピシッと入れて、4分間連続して音楽が入る。それが全部で20数曲あるという。これ以上はないほど、正統的な映画音楽の王道をゆくものになったと思いますよ。今まで僕が手がけた映画音楽の中では最大規模でやらせてもらいました。

基本的には、メインのワンテーマだけは前面に押し出して作りました。いい映画って、1曲だけで充分なんですよ。だって「ティファニーで朝食を」で、”ムーン・リバー”以外覚えていますか? 「E.T」で、あのメインテーマ以外に覚えてますか? この映画の参考のために、昔の映画を何本か見てみたんですが、みんな緻密に作ってあるんですよ。やはり、お金と時間をかけてキッチリと作っている。「E.T」にしても、あのメインテーマは、映画の3分の1以上進行しないと、出てこないんです。本当に少ない。最初に出てくるのは、自転車が空を飛ぶ場面ですからね。あのテーマは、あれだけみんな覚えているけど、そんなにひんぱんには出てこない。それほど大事に使っている。インパクトのある場面だけに、ちゃんと流すんですよ。メロディが一寸だけずつ流れる。メロディを全部キチンと流しているのは、そんなに多くない。ああいう音楽の設計の仕方、緻密さは最も大事なことです。あそこまでやらないと、映画音楽とはいえない。この映画でも、メインテーマは最初から出てこないんですよ。随所にモチーフが表れるんですが、メロディが有機的にだんだんと展開していく。それを初めて試みることができました。だから、ワンテーマで十分なんです。現在の日本の映画音楽は、みんなそうですが、メロディを4つか5つ用意すれば、3日か4日で映画音楽を作ることはできる。ワンテーマだと、よほど緻密に設計しないと飽きられちゃうんです。

画面を見ていると、これは非常に正統的な映画だと思います。田中邦衛さんの演技は、見ていても泣かせるし、全体的にも決して奇をてらっていない。特にそういう場面を用意することもなく、降旗監督は本当に大人の眼差しで、手堅く作られたという感じで、僕はすごく好きです。音楽も、それに合わせて正統的に、堂々とやりたかった。時間がなくて徹夜続きでしたが。

ただ僕自身のスタイルは全然変わらないし、監督が映画の中で何をやろうとしているのか、それに対して自分の考えを述べるのが、映画音楽のあり方でしょ。この映画の前に「ペエスケ・ガタピシ物語」をやったんですけど、あれは、わらべうたのような単純なメロディに、超アヴァンギャルド・サウンドを乗せました。それはそれで、映画へのひとつのメリハリのつけ方なんです。そういう意味では、今度はジャズ風にとか、ロック風にとか、クラシック風に作ろうとか、あんまり思わないんですよ。自分のスタイルを守りつつ、その中で、この映画だと、今回はベースドラムを入れて、ポップスっぽい扱いを全くするべきじゃない、スタイルとしては完全にフル・オーケストラで、最先端のサンプリング楽器を使って、どっちがどっちか分からないくらいに作るんです。その混ぜ具合が、作品ごとに違う。いいメロディさえ書けば、それで全て用が足りるかというと、それはそうなんですが、やっぱり同時に表現方法として、時代のテクノロジーがあるわけです。それに対して、新しい表現はどんどん出てくるわけですから、ただミュージシャンを大勢集めて、一斉に演奏してもらって、映画音楽を作るやり方には、あまり興味がありません。

Blog. 映画『タスマニア物語』(1990) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより

 

 

「去年『タスマニア物語』をやった時に、一本の映画にはひとつのメロディしかないというのが正しいということにしたんです。たとえば、『ティファニーで朝食を』という映画には、当然いくつもの音楽が使われていたわけですけど、結局『ムーンリバー』しかないですよね。だったら、メインテーマですべてを押さえなければいけないということにして、それに徹したんです。実は、メロディをいくつか作っておいた方が楽なんです。メロディが一個だと、ものすごく、緻密に作らないと持たないし、本格的にそういう作り方をしようと思ったら、時間とお金が膨大に必要なんですよ。『タスマニア』ではじめてそれが出来たんです」

「だからプレッシャーもすごくあります。そこまで言いきって、予算も用意させて”なに、このくらいの音楽?”って言われたら、その瞬間が自分の終わりですから、そのためにはこちらも命をかけなきゃいけない」

Blog. 「CDジャーナル 1991年4月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

久石譲 『タスマニア物語 オリジナル・サウンドトラック』

1.タスマニア物語 -オープニング-
2.直子との出会い
3.タスマニア島へ出発 ~メインテーマ~
4.父と子の再会
5.正一と実の友情
6.タスマニアの動物達
7.森の銃声~栄二の決断
8.草原の子供達
9.正一と実、森の奥へ
10.闇の中のタスマニアデビル
11.正一と実の別れ
12.タスマニアの虹
13.栄二の告白
14.直子の草笛
15.父と子のふれあい
16.旅立ち -タスマニアタイガーを求めて-
17.「僕は見たんだよ、父さんのタスマニアタイガー」
18.正一と栄二、それぞれの思い
19.エピローグ
20.タスマニア物語 ~メインテーマ~