Info. 2017/07/04 羽生結弦×久石譲「Hope & Legacy」誕生秘話 (VICTORY記事より)

Web「VICTORY -ALL SPORTS NEWS」に掲載された記事をご案内します。

フィギュアスケート 音響デザイナーの矢野桂一さん、羽生結弦選手や宇野昌磨選手などトップスケーターのプログラム音源の編集を手がけている方です。これまでの仕事内容から、羽生結弦選手『SEIMEI』そして『HOPE & LEGACY』の誕生エピソードが語られています。

プログラム音源ができるまでの各方面での苦労、久石譲から特例として許可を得ることになった経緯など、さすが当事者と関係者ならではの読みごたえのある貴重な秘話です。

ジャンルを超えた一流プロたちのそれぞれの想いと共鳴、協力と理解、尽力と厚意によって誕生したフィギュアスケートのためのもうひとつの作品「Hope & Legacy」。

ぜひオリジナル記事をご覧ください。

音響デザイナー・矢野桂一が紡ぐ『フィギュアスケート音楽』の世界(前編) | VICTORY 
(Posted on 2017/7/4)

 

 

久石譲氏のご厚意『Hope & Legacy』

羽生選手が久石譲さんの曲を持ってきた時には、周りが慌てた。久石さんといえば日本を代表する音楽家で、スタジオジブリが制作するアニメーション作品の音楽でも有名だ。

「作るのはいいけど、羽生くん側の関係者に『使用許可だけは取ってくださいね』と言ったんです。編集はそれと平行してスタートさせました」

矢野さんがそう言ったのには理由があった。以前、小塚選手本人が編集したジブリの曲の使用許可が下りず、敢えてプログラム用に再録音した経緯があったからだ。なので、羽生選手のリクエストには細心の注意が払われた。ところが、羽生選手の関係者から伝えてもらった時点では了承を得られなかった。

いちばんの問題は、別の2曲を繋げて使用することにあった。作曲した経緯や曲のコンセプトがまるで違うものを合わせるということは、作曲者の意と反することである。どちらか1曲を編集して使用するのであれば目をつぶることもなくはないが、繋げることに関しては、楽曲を大切にする観点からも簡単に許可できるものではないとのことだった。

これは音楽に携わるものとして納得のいく説明だった。それでも、何とか了解してもらう方向を探した。今度はテレビ関係者の仲立ちのもと、矢野さんとスケート関係者の数人で、久石さんの事務所にあらためて頼みに行った。

「本人はいらっしゃらなかったのですが、プログラム用に私が編集した現物をその場で事務所の方に聞いていただいたんです。それで、フィギュアスケートは営利目的ではなく、純粋にスポーツのひとつであること。その競技のプログラムとして久石さんの曲を使わせていただきたいこと。競技時間や演技にあわせて編集を加える許可をいただきたいこと。それらをあらためてお願いしたんです。羽生選手の中にはすでにイメージがあるようで、何とか許可をいただきたく久石さんのほうにお話ししてくだされば、と」

その後、久石さんからは許可をいただけることになった。ただし、これは今回限りの特例であり、久石さんのご厚意によるものだ。プログラム曲『Hope & Legacy』は、『View of Silence』という美しいピアノ曲が、エキゾチックな『Asian Dream Song』を挟む形になっている。世界にひとつしかない珠玉のプログラム曲は、羽生結弦の代表的な作品になった。

まもなく、『Hope & Legacy』に携わった関係者は、東京でのコンサートに招待された。その時、矢野さんははじめて久石さん本人に直接挨拶をしたのだった。

(抜粋紹介)

 

 

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こちらでは「Hope & Legacy」について羽生結弦選手のコンセプトや、久石譲の長野パラリンピックでのコンセプトが紹介されています。

羽生結弦が自らのスケート人生を投影したFS/『Hope & Legacy』 | VICTORY
(Posted on 2017/4/21)

 

 

超えるもの

Hope & Legacy(希望と遺産)というコンセプチュアルワードは、作曲家・久石譲氏が長野パラリンピックのフィナーレをプロデュースした際に生まれたものだ。みなで共有するテーマを久石氏が提案したのである。

「障害があっても希望(ホープ)を持って生きること。希望を持てば、必ず乗り越えられること。アスリートとしての姿を見せ、障害者も健常者も共に生きられる世界、その新しい価値観を作り出すことがレガシィ(遺産)になる」

こうして生まれたのが、テーマソング『旅立ちの時~Asian Dream Song~』である。すでに発表されていた曲だが、ドリアン助川氏の作詞で合唱曲に生まれ変わった。

「今地球に生きる者よ、旅立ちの勇気を」
「夢をつかむ者たちよ、君だけの花を咲かせよう」

厳しくも、深い絶対的な愛は、大自然そのものだ。羽生は長野五輪・パラリンピックが開催された1998年にフィギュアスケートを始めたという。青年になった今、この曲に何か運命的なものを感じたのかもしれない。プログラムは、『Asian Dream Song』を挟むように、久石氏の代表曲『View of Silence』がアレンジされている。題名は、久石氏がフィナーレのテーマにした『Hope & Legacy』が踏襲された。

久石氏は著書でこんなことを書いている。ある映画監督からの曲依頼についての話だ。

「映画を作ろう、監督をやろうという人は、想像力にあふれている。自分の持てるすべてを投入して映画を撮っている。こちらもそれに太刀打ちできるだけのもので応えなければならない。監督は、実は自分の要求したイメージの殻を突き破るような新鮮味のある音楽を求めているのだ」

コーチと選手、振付師と選手は、映画監督と音楽家の関係によく似ている。互いにすり合わせ、ぶつかり合いながら、さらなる上を懸命に模索する。“要求したイメージの殻を突き破るような”羽生の進化はつづいてゆく。その中にこそ、「希望と遺産」が生まれるのだ。

(抜粋紹介)

 

 

関係者による公式のようなエピソードが盛りだくさんで、これまで見えなかったところが少し知ることができて感謝です。妥協しないそれぞれのまっすぐな想い、そんな水面下での一部を垣間見ることができた素敵な楽曲ストーリーです。ありがとうございます。

 

(写真1枚お借りしました)

 

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