Blog. 「クラシック プレミアム 34 ~リスト ピアノ作品集~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2015/4/20

クラシックプレミアム第34巻は、リストです。

誰もが耳にしたことがある「愛の夢」から、村上春樹の長編小説でも一躍脚光を浴びた「巡礼の年」など、リストのピアノの世界へひきこまれていきます。

ピアノだけの音色とは思えないほどの色彩豊かな世界、そして一人で弾いているとは思えない難易度の高い楽曲の数々。リストの魅力は、そういった超絶技巧を駆使したなかにも、しっかりと聴かせる、心に響く旋律があるところでしょうか。

 

【収録曲】
《パガニーニによる大練習曲》 LW-A173 (S141) より 第3曲 〈ラ・カンパネラ〉
《愛の夢》 LW-A103 (S541) 第3番 変イ長調
ホルヘ・ボレット(ピアノ)
録音/1982年

《ハンガリー狂詩曲集》 LW-A132 (S244) 第6番 変ニ長調
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
録音/1960年

《超絶技巧練習曲集》 LW-A172 (S139) 第5番 〈鬼火〉・第8番 〈死霊の狩り〉
ホルヘ・ボレット(ピアノ)
録音/1985年

《3つの演奏会用練習曲》 LW-A118 (S144) 第3曲 〈ため息〉
《2つの演奏会用練習曲》 LW-A218 (S145) 第1曲 〈森のざわめき〉
ホルヘ・ボレット(ピアノ)
録音/1978年

《巡礼の年 第1年 スイス》 LW-A159 (S160) より
第4曲 〈泉のほとりで〉・第8曲 〈ノスタルジア〉
ラザール・ベルマン(ピアノ)
録音/1977年

《巡礼の年 第2年 イタリア》 LW-A55 (S161) より
第5曲 〈ペトラルカのソネット 第104番〉
《巡礼の年 第3年》 LW-A283 (S163) より
第4曲 〈エステ荘の噴水〉

アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
録音/1986年、1979年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第33回は、
クラシックは演奏するたび新しい発見がある

前号ではクラシック音楽を指揮する久石譲が指揮者としてのあれこれや体験談をまじえた内容でした。今号でもその続きとなるわけですが、2015年今年初のコンサートとなった台湾(台北/台南)でのコンサート舞台裏を垣間見ることができます。演奏プログラムでもあった「ショスタコービッチ:交響曲 第5番 ニ短調 作品47」についての考察もめぐります。

一部抜粋してご紹介します。

 

「台湾でショスタコーヴィチ作曲の交響曲第5番を指揮した。2月の終わりで中華圏では旧正月明けの華やいだ時期だった。台北と台南の2回公演だったが、おかげさまでチケットは両日とも即日完売。台南はホールの外でもスクリーンを設置し、約1万人以上の人が詰めかけた、ロックコンサートでもないのに。実は昨年の5月もそこでコンサートを行ったのだが、同じく数万人の人が押し寄せた。もちろん台湾でも異例なことだ。ただそのときはベートーヴェンの第9交響曲だったのでまだわかるが(それもよく考えると何だか変だが)、ショスタコーヴィチと僕の曲でこれほど人が詰めかけるとは、僕自身が驚いている。ちなみに台湾は世界の名だたるオーケストラのツアーサーキットに入っていて観客の耳は肥えている。その観客はとても素直で熱心に聴いてくれて、オーケストラ(国家交響楽団)と僕はかなりハイテンションの演奏ができた。」

「もう一つ、忘れられない出来事!それはコンサートが終わってから駅までパトカーに先導されて移動したこと。去年、人が大勢出過ぎて交通渋滞を起こし、共演したウィーンの合唱団の人たちが危うく列車に乗り遅れるところだった。その反省からか今回はパトカーが待機。コンサート終了を待って、駅まで誘導していただいたのである。」

「だいぶ脱線したが、台湾では音楽家としてパトカー先導されたのだからこれはちょっとうれしい。だから駅に着いてから運転していた警察官たちと記念写真を撮った。もちろん頼まれたからではあるが。」

「ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、前回、読売日本交響楽団と演奏したのだが(これは当時の「深夜の音楽会」という番組でオンエアされた)、そのときより僕自身だいぶ進化し、全体のテンポ設計や、細部の表現、何よりも何が行いたいのかより明確にオーケストラに伝えられたのではないか、と思っている。」

「そして一番わかったことは「革命」というタイトルを持つこの楽曲が(これは日本だけでしか呼ばれていない)、実はとてつもなく暗く、表の表現とはかけ離れているところにショスタコーヴィチ本人はいたということだ。つまり苦悩から歓喜へ、闘争から勝利へ、というベートーヴェンの第5番、第9番やマーラーの第5番交響曲と同じ図式に従って全体は構成しているが決して歓喜でも勝利でもないのである。表面上をそうすることで党から睨まれている状況から脱出したが、本人の心はいたってクール、冷めて見ているのがよくわかった。だからといってこの楽曲を適当に書いたのではなくて、むしろ裏に託した批判の精神、孤独などが痛いほど僕には感じられた。だから第4楽章ラストのテンポは色々議論の的なのだが、これは遅ければ遅いほどよいというのが僕の結論。凱旋パレードのように華やかに盛り上げるのは以ての外。まるであたりを埋め尽くしている戦車軍団がゆっくり進軍していくようなA音(ラ)の連打がここの決め手になる。もちろんこれは僕の考えで、人に押し付けられるものではない。やはりクラシックは演奏するたびに新しい発見がある。」

「そういえば僕の指揮の師でもある秋山和慶先生はベートーヴェンの第9番をなんと400回以上指揮されたと伺った。恐るべし、と言いたいのだが、もっと凄いことを先生は仰った。「これだけ演奏してもまだ毎回新しい発見があるんだよね、それで頑張ろうと……」 やはり、クラシック音楽は奥が深い。」

 

 

ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、ムラヴィンスキー指揮やレナード・バーンスタイン指揮などで名盤があります。うえのふたつはどちらもライブ録音(しかも東京公演)が、よくレビューなどで話題にあがっています。もちろんエッセイにもあるようにテンポのことでもいろんな感想など。

気に入ったクラシック音楽に出会えたときに、そういった聴き比べをしてみるのもおもしろいですね。明らかに「これが同じ楽曲とは思えない!」という感動に出逢えるときがあります。

 

また、2月に開催された台湾公演での、セットリスト(アンコールまで)、および久石譲も語っていたその”熱狂的な様子”は現地写真付で公開しています。

こちら ⇒ Info. 2015/02/27 《速報》 久石譲 「世紀音樂大師-久石譲」 台北コンサート プログラム

 

そうこうしているうちに、2015年日本での久石譲の熱い夏がやってきそうです!

 

クラシックプレミアム 34 リスト

 

Info. 2015/Aug. Sep. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」「Music Future Vol.2」 コンサート開催決定! 【4/17 UPDATE!】

コンサート「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2015」
コンサート「Music Future Vol.2」

<圧巻と濃密、今夏も久石譲の二大コンサートが開催決定>

◆「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2015」
今年のW.D.O.2015は、8年ぶりの全国ツアーが決定。
戦後70年、日本と世界が抱える「祈り」をテーマにしたプログラムのほか、
宮崎駿作品の楽曲を壮大な交響曲として表現するシリーズも始動いたします。

◆「Music Future Vol.2」
昨年始動し、好評を博したプレミアムシリーズの第二弾も決定。
ミニマル、ポストクラシカルなど最先端の現代の音楽を久石がセレクトし、
“明日のために届けたい音楽”をナビゲートします。

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Info. 2015/04/14 [CDマガジン] 「クラシック プレミアム 34 ~リスト ピアノ作品集~」 久石譲エッセイ連載 発売

2015年4月14日 CDマガジン 「クラシック プレミアム 34 ~リスト ピアノ作品集~」(小学館)
隔週火曜日発売 本体1,200円+税

「久石譲の音楽的日乗」エッセイ連載付き。クラシックの名曲とともにお届けするCDマガジン。久石による連載エッセイのほか、音楽評論家や研究者による解説など、クラシック音楽の奥深く魅力的な世界を紹介。

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Blog. 「NHK SWITCH インタビュー 達人達 久石譲×吉岡徳仁」 番組内容紹介

Posted on 2015/4/10

2014年3月8日放送 NHK Eテレ「SWITCH インタビュー 達人達(たち) 久石譲×吉岡徳仁 ~考える音 感じる形~」

最近ではあまりテレビ番組に出演しない久石譲だけに、こういった特集を組まれた番組はすごく貴重な放送でした。放送から約1年以上が経過しようとしていますが、ようやくまとめることができましたので保存版として。

 

なにを書きとめておきたかったというと

久石譲のインタビュー内容
久石譲の紹介のされかた(言葉)
久石譲の紹介のされかた(音楽)

 

長年ファンをやっていますと、どうもある意味で感覚が普通ではないところもあり、一般的に皆さんが見るテレビ番組などで久石譲が紹介されるとき、どういう肩書や紹介で言われるんだろう?どの音楽がピックアップして紹介されるんだろう?という感覚のバランスというものを確認したいところもあります。

番組プログラムの流れにそって要点をご紹介します。(久石譲を軸にしていますので、対談お相手の吉岡徳仁さんについては割愛しています。予めご了承ください。)

 

 

 

久石譲紹介(ナレーション)
大人から子どもまでジブリ映画の音楽は誰もが知っている。宮崎駿監督最新作「風立ちぬ」まで30年にわたりその世界を音楽で支えてきた男、作曲家久石譲。宮崎駿は語っている。「自分たちの作品にふさわしい才能を探していくと、いつも久石さんに辿りつく」これまで久石が手がけた映画は70本以上、作った曲は数千曲に及ぶ。

*ジブリ武道館コンサート(2008年)の映像やトゥーランドット・ピアノ曲BGMにて

SWITCH 達人達 久石譲 1

 

【東京都現代美術館にて】

吉岡徳仁が久石に興味をもつ理由
音楽は人の感情に直接訴えかけるもの。僕もそのようなデザインをやってみたい。人間の感覚というものに興味がある。久石さんのクリエイションをみると、人間の感情とかがそういったものにリンクしているんじゃないかなあと。

久石譲が吉岡に興味をもつ理由
デザインは発注があってしか成立しない。その中でぎりぎり自分のアート性を出す。作品のアイデンティティを追究するわけだから。すると当然思い通りにいかないこともいっぱいある。それは僕らがやっている映画も一緒。そういうところを見てみたい。

 

SWITCH 達人達 久石譲 2

 

時間軸と空間軸の話
音楽は時間軸と空間軸のなかにつくる。時間軸の構造をもつものは論理的である。音楽は「ド」だけでは意味がなく「ドレミ」とか「ドミソ」などと続けて初めて意味を持つ。音が連なるためには時間の経過がいる。だから論理性が成立する。一方絵画などは空間軸のうえに成り立っている。ビジュアル系は時間の経過が絶対必要ではない。ところがそのなかでフェルメールなんかは、左から当たってくる光、時間を感じさせる。時間の観念を持っている作品はすごくいいなといつも思う。

 

このあたりのことは自身の著書や、雑誌クラシックプレミアム内エッセイなどでも、よく語られています。

参考1)

「「音楽は時間軸と空間軸の上に作られた建築物である──久石譲」なんてね。」

「時間が絡むと、そこには論理的な構造が成立する。つまり言葉は「あ」だけでは意味がなく「あした」とか「あなた」などと続いて初めて意味を持つ。その場合、どうしても「あした」と読むために時間経過が必要である。このように時間軸上の前後で関係性が決まるものは論理的構造をもつ。音楽でも「ド」だけでは意味がなく「ドレミ」とか「ドミソ」などと続けて初めて意味を持つ。だからこれも論理性が成立する。」

「一方、絵画は論理的構造を持たない。絵を観るのに時間がかかったというのは本人の問題であって表現自体に時間的経過は必要ない。よって絵画は論理的構造を持たない。「百聞は一見に如かず」。見えちゃうんだからしょうがないだろうということはやはり論理性は感じられない。断っておくが絵が単純だと言っているわけではない。だからこそ論理を超えた体感という何かを感じるわけだ。」

Blog. 「クラシック プレミアム 22 ~メンデルスゾーン / シューマン~」(CDマガジン) レビュー より)

 

参考2)

「音楽を構成する要素は小学校で習ったとおり、メロディー(旋律)、ハーモニー(和音)、リズムの3要素だ。座標軸で考えるととてもわかりやすいのだが、横のラインが時間軸、縦のラインが空間軸となる。リズムというのは刻んでいくので時間の上で成り立ち、ハーモニーは響きなのでそれぞれの瞬間を輪切りで捉える、いわば空間把握だ。そしてメロディーはと言えば時間軸と空間軸の中で作られたものの記憶装置である。時間軸上の産物であるリズムと空間の産物であるハーモニー、それを一致させるための認識経路として、メロディーという記憶装置があるわけだ。そしてこれはあらゆる音楽に適合する。例えばあの難解な現代音楽にも当てはまる。不協和音や特殊奏法も響きとしての空間処理であるし、十何連音符のような細かいパッセージも聴き取りやすいリズムではないが時間軸上でのことであるし、覚えやすいメロディーではないとしても基本の音形や何がしかの手がかりがあるし、セリー(十二音列)などでもやはり時間と空間軸の上での記憶装置にはなっている(もちろんわかりにくいが)。そして多くの現代音楽が脳化社会のように込み入ってしまって、本来メロディーが持つ説得力やリズムの力強さ、心に染み入るハーモニーなどを捨て去ったために、力を失ったことは歴史が証明している。今こそ音楽の原点を見直し、多くの人たちに聴いてもらえる「現代の音楽」を必要とする時がきたのである。」

Blog. 「クラシック プレミアム 30 ~ストラヴィンスキー / プロコフィエフ~」(CDマガジン) レビュー より)

 

 

久石譲作品『フェルメール&エッシャー』紹介(ナレーション)
久石がフェルメールの作品を手がかりに作曲した音楽。時を閉じ込めたような絵画に、久石の音楽が共鳴する。(ナレーション)

*BGM「Sense of the Light」

Disc. 久石譲 『フェルメール&エッシャー Vermeer & Escher』

 

スイッチ フェルメール

 

 

発注とやりたいことの話
デザインの仕事って、僕らの映画音楽とかも一緒で、クライアントがあって発注があってからしか成立しない。見えない闘いがある。その中であるクオリティを保っていくのはすごく大変なこと。そういうときに実験的な精神を忘れたら終わってしまう。逆に、発注をうけてそれ用に書いたりしていない。そのときにやりたいものを強引に合わていくことがある。つまり、自分がいま書きたいものと発注をすりあわせていく。

 

このあたりのこと、雑誌インタビューでも詳しく語られています。

参考3)

「アーティストというのは、モーツァルトだってハイドンだって、発注があってしか書いていないんです。発注なしで作っていたのは、シューベルトとプーランクくらいじゃないかな。「浮かんだら書く」なんてそんな呑気な話はありません(笑)。」

「依頼は、作品をつくる手がかりにもなります。「お金がない」と言われたらオーケストラではなく小編成にするし、「アクション映画だ」と言われたらラブロマンスみたいな曲を書くわけにはいかない。このように、どんどん限定されていきますよね。そういった制約は決してネガティブなことではなく、「何を書かなければいけないか」ということがより鮮明に見えてくるだけなので、僕は気にしていません。」

「大事なのは、映画のために書いているふりをして、実は本当に映画のためだけではないこと。つまり、自分がいま書きたいものと発注をすりあわせていくんです。アーティストが書きたいと思っているものでなければ、人は喜んでくれない。いま自分が良いなと思っている音楽の在り方──それは幅広いジャンルにあるので、その中で、いま発注の来ている仕事と自分の良いと思うものとを照らし合わせるんです。」

Blog. 久石譲 『WORKS IV』 発売記念インタビュー リアルサウンドより より)

 

【吉岡徳仁作品「虹の教会」にて】

スイッチ 虹の教会

 

何かを連想しませんか?

そうこの2014年3月放送のTV対談を経て、同年10月に発表された久石譲『WORKS IV -Dream of W.D.O.-』には、吉岡徳仁さんの”The Gate”に一目惚れした久石譲がメインデザインに熱望したというCDジャケットが使用されています。

 

久石譲 WORKS IV

Disc. 久石譲 『WORKS IV -Dream of W.D.O.-』

 

なにがきっかけで、どんなコラボが実現するのかわかりませんね。分野は違えど、アートの世界も一期一会、共鳴しあっている結晶です。

以上、余談でした。

 

 

感覚は信じない
人間の感覚ほどあてにならないものはない。僕は感覚を信じない。まったく信じないというより、最後の最後では信じるんだが、過程では信じることはない。人間はたえず変わっていく。変わっていく人間の感覚なんてあてにならない。

たとえば朝起きてコーヒーをいれたら寝起きなんだけどピアノを弾く。大体1ヶ月くらい同じ曲を弾く。それをクイックっていう…テンポを出すやつをかけながらやる。そうすると何か今日はすごく遅く感じたりするわけ。すごく疲れてた時はテンポを上げたくなるから遅く感じるんだ。毎日違う。要するに、同じ曲で同じテンポで物理的に何も変わってないのに、こちらの感覚は毎日変化している。その感覚をあてにしながら観客相手にコンサートなんてできない。そうするとどうするか? 徹底的に自分を鍛えるしかない。鍛え方としては、どんな時でも同じテンポで弾けるようにしなければならない。

 

SWITCH 達人達 久石譲 3

 

脚本家のタイプ
映画の脚本家は2タイプいる。全体のストーリーを決めてそのストーリーに合わせて人物を動かしていく脚本家。もう一方は全くストーリーを決めてなくて、最初にシーンだけ浮かべて、そこから考えていく。最終的にストーリーなんて後からくっつけりゃあいいと。後者の脚本家の方が面白い。なぜなら、人物が生きているから。「偶然性を取り入れてるからですかね」(という吉岡さんのあいの手に)、だと思う。

 

95%は論理的、残りの5%が感覚
「夕日をイメージして作曲したんですか?」みたいなまねは死んでもしない。冗談じゃないよと。こっちが書いたものがよければ、それがちゃんと構成されていれば、そこから朝焼けを感じる人も夕焼けを感じる人もいる。こっちがイメージを押し付けるのは一番よくない。極力フラットに書く。感覚(的)だと思っていることの95%は論理的に解明できる。ただ残り5%ができない。その残りの5%を指して感覚と言いたい。

 

SWITCH 達人達 久石譲 4

 

 

これはもう名言、有名な久石譲語録に入るものなのですが、自身の著書にも詳しく書かれていますし、インタビューでもよく出てきます。

参考4)

久石によると「作曲の95%はテクニック」だ。95%までは理詰めで緻密に構築していく。残りの5%は、いわば直感の領分。論理を超えた何かを掴むまで自分を追い込み、まだ形にならないアイデアを頭の底に泳がせておく。すると思わぬところでブンと、たとえばトレイや布団の中でメロディや音の形が浮かぶ。その後は95%の枝葉をばっさり切ったり、1音の上げ下げに何日も悩んだり、あらゆる試行錯誤を繰り返し、「これだ」と確信できてはじめて曲の誕生となる。2週間徹夜することもざらである。それだけの複雑を経由して久石はようやく自分の「シンプル」を手に入れるのだった。

作家性にこだわる人だ。「悪人」(2010年)で久石の胸を借りた監督の李相日は久石とがっぷり組んだ組み心地を「開きながらもプライドの高い方です」と語ってくれたが、そのプライドが彼の作家性である。「映像と音楽は対等」という構えを崩さない。注文通りの作曲なら95%ですむ。しかしそんな予定調和の仕事からは何のダイナミズムも生まれない。対等な関係で「監督のテーマをむき出しにする」のが彼の仕事であり、その作家性を担保しているのが彼の5%だった。

Blog. 久石譲 雑誌「AERA」(2010.11.1号 No.48) インタビュー より)

 

参考5)

「感性に頼って書く人間はダメですね。2~3年は書けるかもしれないけれど、何十年もそれで走っていくわけにはいきません。自分が感覚だと思っているものの95%くらいは、言葉で解明できるものなんです。最後の5%に行き着いたら、はじめて感覚や感性を使っていい。しかし、いまは多くの人が出だしから感覚や感性が大事だという。それだけでやっているのは、僕に言わせると甘い。ムードでつくるのでなく、極力自分が生みだすものを客観視するために、物事を論理的に見る必要があります。」

「そうですね。とはいえ、言葉で説明できる段階というのは、まだ作曲にならないんです。無意識のところまでいかないと、作品化するのは難しい。ある程度はつくっているけどピンと来ない、ほぼできているけど納得できない…というものが、一音変えただけでこれだ!という曲もあるし、どこまでやっても上手くいかないから、ゼロからもう一度、という場合もある。「残りの5%」のような解明できないところ、つまり無意識の領域にまでいかないと、作品にするのは難しいです。」

Blog. 久石譲 『WORKS IV』 発売記念インタビュー リアルサウンドより より)

 

参考6)

「話が脱線した。もう一度昨日の自分と今日の自分について考える。僕の場合は同じではないという認識で行動する。例えば毎朝起きたらまずピアノを弾く。目的は2つ。この起き上がりの意識がまだボーッとした状態は、コンサートで弾くときの様々なマイナス要因(緊張したり体調が悪かったり)を抱えた状態と同じと考えるから、その状態できちんと弾けたら、コンサートでほとんど問題は起きない。2つ目はいつもと同じテンポで弾いているかどうかの確認だ。これはクリック音に合わせて弾くのだが、同じテンポなのに日によって速く感じる自分と、遅く感じる自分がいる。遅く感じる場合は明らかに速く弾きたいからそう思うのであり、主に寝不足のときや精神状態が良くない場合が多い。速く感じる場合はその曲が身体に入っていないか、まだ身体が眠っているのか(笑)。いずれにせよ昨日の自分と今日の自分は違うのである。」

Blog. 「クラシック プレミアム 24 ~ベートーヴェン5~」(CDマガジン) レビュー より)

 

 

久石譲紹介(ナレーション)

(この時点で一番新しいNHK番組の音楽担当作品から)

スイッチ イカ

Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 深海の巨大生物 オリジナル・サウンドトラック』

 

北野武監督をはじめ国内外の監督たちとタッグを組んできた。

*BGM「Summer」 および映画「菊次郎の夏」より本編映像

EXILEのATSUSHIが歌う「懺悔」。去年東京国立博物館で開催された特別展「京都」の公式テーマソングとして作曲したものだ。

*BGM「懺悔」 およびPV映像

映画にドラマ、CMまで、感動を生み出すために久石はどのように音楽と向き合っているのか。今度は吉岡が久石マジックの秘密に迫る。(ナレーション)

*過去NHK出演番組より「Oriental Wind」の演奏シーンにのせて

 

スイッチ 伊右衛門 Oriental wind

 

 

プレッシャー
あの監督とできたら別の刺激が来るんじゃないか。新しい自分の何かが出てくるんじゃないか。そこがやってて一番おもしろいところ。プレッシャーはたしかにある、だけど自分は制約があるほうが発想のとっかかりになることがある。

 

このことについても例え話をまじえてよく語られています。

参考7)

「僕はソロでの活動も行っているが、その楽しさは映画音楽のそれとは大きく異る。ソロ活動は広いサッカー場に一人で佇んでいるようなもので、何の制約も受けないが、すべての判断を自分で下さなければならない。ところが、映画では座の中心に監督がいて、その意見は絶対だ。周囲には多くのスタッフがおり、音楽もさまざまな制約を余儀なくされる。しかし、彼らと時に激しく意見の交換をするうち、予定調和に終わらない、思わぬ発想を得ることもしばしばである。そこに共同作業ならではの面白さを感じるのだ。」

Blog. 「文藝春秋 2008年10月号」「ポニョ」が閃いた瞬間 久石譲 より)

 

参考8)

「映画やドラマの音楽は制約の中で作ります。台詞や効果音があり、尺も意識しなくてはいけません。さらに、厳しい締め切りもあります。ただし、こうしたシバリは必ずしも作品にマイナスではありません。たとえば、大平原で、自由に遊びなさい、と言われたとしましょう。ほとんどの人はどうしていいかわからなくなるはずです。でも、テニスコートで、ボールをひとつ渡されて、仲間が3人いたら、いろいろな楽しみ方ができる。それと同じです。多少なりとも制限があったほうが、発想は広がることもあります。」

Blog. 久石譲 『WORKS IV』 クロワッサン 2014年11月10日号 インタビュー内容 より)

 

参考9)

「普段、ひとりで音楽をやっている時は、他人の意見が介入してくると音楽が成立しなくなる可能性が出てきます。ところが映画音楽の場合は、幸運なことに、発想の基準は常に監督の頭の中にある、というのが僕の考えです。特に、映画は監督に帰属するという意識が強い邦画の場合は、そうですね。例えば、僕らが映画音楽を書く場合、その期間は長くて半年か1年くらいです。ところが監督に関しては、その人が職業監督でない限り、自分で台本を書く場合にせよ、脚本家に注文をつけながら撮影稿を練っていく場合にせよ、ひとつの作品にだいたい2、3年の時間を費やすわけです。それだけの時間をかけた強い思いが、監督の頭の中にある。その意図を考えながら作曲していくというのが、僕のスタンスですね。監督から注文されたことに対し、明らかにそれは違うと感じた場合は意見を申し上げますけど、それ以外は、監督の意図を自分なりに掴み、音楽的にそれを解決しようと努力します。すると、ひとりで音楽をやっている時には予想もつかなかった、新たな自分が出てくるんですよ。『俺にはこういう表現ができるんだ』という。もっとダークなやり方でも音楽がいけそうだとか、メインテーマさえしっかり書いておけば、30曲あるうちの5、6曲は実験しても大丈夫そうだ、といったことが見えてきます。そういう意味で、映画音楽というのは、普段気になっている方法を実験する機会を監督に与えていただく場所でもあるのです。自分にとっては、非常に理想的なスタンスですね」

Blog. 「オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇 」(キネ旬ムック) 久石譲 インタビュー内容 より)

 

 

アイデア
最初に話しているときに、アイデアが浮かぶ仕事は幸せ。映画『崖の上のポニョ』のときは最初の打ち合わせのときにメロディが浮かんだ。そしてそのメロディーは最後までそのままだった。

 

この逸話も有名ですね。

参考10)

「宮崎監督との最初の打ち合わせを思い出す。台本の裏側に五線譜を引き、あの旋律を残した。しかし僕はこのメロディをいったん忘れ、しばらく寝かせておくことにした。本当にこれが主題歌にふさわしいのか自信がなかったし、いろいろな可能性を検討してみたかったからだ。情感豊かなバラードはどうかと考えてみたり、二ヶ月ほど試行錯誤を繰り返した。しかし、最初に閃いたあの旋律が一番だという結論に至った。」

「ソーミ、ドーソソソの六音からなるこのフレーズは単純だけれども、だからこそさまざまにアレンジすることができる。この機能性は映画音楽では最高の武器だ。困ったらこのメロディに戻ればいいわけで、水戸黄門の印籠のようなものである。この瞬間、迷いは霧散した。」

「僕はこれまで50本を超える映画音楽を担当し、多くの監督と仕事をしているが、第一感がベストだったというケースが結果的には多い。」

Blog. 「文藝春秋 2008年10月号」「ポニョ」が閃いた瞬間 久石譲 より)

 

参考11)

「4年ぶりの『ハウル(の動く城)』以来の作品で、今回音楽をやるのにとても緊張していたんですが、絵コンテのA・Bパートを見せてもらった段階で、最初の打ち合わせの時にもうこのテーマのサビが浮かんできました。あまりにもシンプルで単純なものですから、これはちょっと笑われちゃうかなと思って、2~3ヶ月くらい寝かしたんですけど、やはりそのメロディーが良いなと思って、思い切って宮崎さんに聴いてもらったところ、「このシンプルさが一番いいんじゃないですか」ということで。結構、出足は非常にスムースです。「出足は」ということろを強調している理由ですが(笑)、来年の8月までまだまだ時間があって、3つか4つくらい山がくるだろうと思いつつ、今のところ年は越せそうだと思っています。そういう状況です。」

Blog. 久石譲 「崖の上のポニョ」 インタビュー ロマンアルバムより より)

 

 

久石譲スコア(ナレーション)
久石が他人にはめったに見せることがないという自分用の楽譜。宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』のレコーディングに使ったものだ。

大正から昭和へ、日本が戦争へ突き進んでいった時代。「風立ちぬ」は零戦を設計した天才技師堀越二郎が主人公。飛行機づくりへの夢と挫折、後に妻となる女性との出逢いと別れ。久石は音楽の制作に1年2ヶ月を費やした。(ナレーション)

*BGM「旅路(夢中飛行)」 映画「風立ちぬ」プロモーション映像にのせて

スイッチ スコア

 

映画音楽の制作について
最初にメインテーマを考えるほうが多い。人間でいうと顔の部分にあたるから。これが明確じゃないと。苦しいんだけどメインテーマをあげておかないと全体の構成なんて。軸がないと全体が見えない。

 

映画「風立ちぬ」のメインテーマについて(ナレーション)
「風立ちぬ」の冒頭、主人公の堀越少年が夢のなかで空を飛ぶシーン。久石は当初このメインテーマをフルオーケストラで作曲した。しかし収録直前宮崎が「夢の中の話だから、もっとシンプルな小編成がよい」と言い出した。久石はロシアの民族楽器バラライカを主軸とした音楽に書き換える。このメインテーマが映画全体の世界観を決定づけることになった。(ナレーション)

 

スイッチ 風立ちぬ メインテーマ

 

監督について
監督が持っている生理的なテンポってすごく大事。それが映画全体のテンポになる。これと自分が書く音楽が一致していかないと、なにやってもうまくなじまない。話をして台本を見て、どういう世界観をつくっていくか、そういった考える時間が僕はすごく必要。

 

映画音楽の制作について 2
通常の映画音楽は登場人物の気持ちを説明する、状況を説明する。僕はそれを両方やらない、やりたくない。そんなの映像見ればいいだろっていう話で、興味ない。登場人物とどのくらい距離をとったところで、音楽が観客の間でどこに位置するか。そういうことを考えてるんですよ。

映画音楽は、映画のなかでもっともウソくさい。例えば、恋を語っている時に現実に音楽が流れるわけがない。流れるわけがないウソを映画音楽はやっている。もっともフィクション。映画自体はフィクションなわけで、そのなかでフィクションである映画音楽がもっとも映画的とも言える。その代わり、使い方を間違うと超陳腐になる。

 

ここも詳しく紐解く文献が多数あります。

参考12)

「まずは、オーケストラを小さな編成にしたことです。宮崎さんも「大きくない編成が良い」と一貫して言っていました。それから鈴木プロデューサーから出たアイデアで、ロシアのバラライカやバヤンなどの民族楽器や、アコーディオンやギターといった、いわゆるオーケストラ的ではない音をフィーチャーしたことです。それによっても、今までとは違う世界観を作り出せたんじゃないかと思います。」

「オープニング曲は、飛行機が飛び立つまでは、ピアノがちょっと入るくらいで、あとは民族楽器だけです。大作映画では、頭からオーケストラでドンと行きたくなりますけど、それを抑えたのが凄く良かったですね。二郎の夢の中なので、空を飛んだとしても派手なものになるわけではないと、宮崎さんは言っていましたし、僕としても、観る人の心を掴むオープニングに出来たと思っています。この曲があったから、映画全体の音楽が「行ける!」と感じました。」

Blog. 久石譲 「風立ちぬ」 インタビュー ロマンアルバムより より)

 

参考13)

「これは非常に重要なところなんですが、高畑さんから持ち出された注文というのが「一切、登場人物の気持ちを表現しないでほしい」「状況に付けないでほしい」「観客の気持ちを煽らないでほしい」ということでした。つまり、「一切感情に訴えかけてはいけない」というのが高畑さんとの最初の約束だったんです。禁じ手だらけでした(笑)。例えば「”生きる喜び”という曲を書いてほしいが、登場人物の気持ちを表現してはいけない」みないな。ですから、キャラクターの内面ということではなく、むしろそこから引いたところで音楽を付けなければならなかったんですね。俯瞰した位置にある音楽といってもいいです。高畑さんは僕が以前に手がけた『悪人』の音楽を気に入ってくださっていて、「『悪人』のような感じの距離の取り方で」と、ずっとおっしゃっていました。『悪人』も登場人物の気持ちを表現していませんからね。」

Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー ビジュアルガイドより より)

 

参考14)

「舞台やテレビとは違うところなのですが、例えば、Larkという銘柄が刻まれたライターでたばこに火をつけるとします。舞台だと、客席から舞台まで距離があるので「Larkのライターで、たばこに火をつけた」という台詞が必要です。テレビだとライターでたばこに火をつけるのは説明の必要がないのですが、銘柄は見えないので、それを言う必要がある。映画の場合は、大画面でしかもアップで映りますから一目ですべてが分かる。ですから、劇伴のように走るシーンでは速いテンポ、泣いたら哀しい音楽という場面の説明ではなく、一歩進んで哀しいシーンでも、妙に楽しい音楽をつけると、哀しさが増していくこともある。それは映画音楽的な表現です。私は映画的な表現と音楽の関係について常に考えながら作曲しています。」

Blog. 「モーストリー・クラシック 2007年9月号」 久石譲インタビュー内容 より)

 

参考15)

では、そんな久石の映画音楽の秘訣(ひけつ)はというと、「エンターテインメント性が強い作品はできるだけ音楽を多く、実写としてのリアルな作品には極力付けない」ことだという。それは「映画音楽は虚構中の虚構なんです。リアルなこの現実世界で、恋人とワインを飲んでいたからといって音楽は流れてくれないでしょう? 音楽は実際には見えない心情を語るのが得意な分野で、だからこそ、これほどうそくさいものはないと思うんですよ」という自身の哲学にのっとってのことだ。

「でも、映画自体がフィクションですから、僕は『一番映画的であるというのは、映画音楽だ』とも思っています」と話す久石からは、自身の仕事に対する誇りもうかがうことができた。

Blog. 「シネマトゥデイ」 久石譲 Webインタビュー内容 より)

 

 

映画「小さいおうち」紹介
(映画シーンを見ながらの対談)

最初の音楽が登場するのは冒頭から1分後だ。(ナレーション)

昭和と平成を生きていきたある女性の過程の物語。同時に昭和と平成を見てきた運命のテーマみたいなかたちで書いた曲。実はここはほかの音楽を書いたんだけれども、最終的に山田監督がやっぱりこれがいいということになり、非常にシンプルなピアノだけにした。(久石)

同じテーマが顔を出すのはさらに1分半が経過してからだ。(ナレーション)

もう1回同じテーマを出すわけですけども。少しずつビルドアップ(増殖)させてくるんだけれども、極力、音楽は入ったという印象を与えないようにやりたい。積み重ねていくことで、いつのまにかメロディーが通奏低音みたいに残るという方法をとった。(久石)

 

山田洋次監督インタビュー
映画音楽っていうのは、いい意味で画面を邪魔しちゃいけない。画面のなかからすーっと、気がついたら音楽が聴こえてくる、そんな入り方をする音楽が僕にとってのいい音楽。

たとえば女中のタキさんが坊っちゃんを背負って雨の日も風の日も治療院に通ったシーン。そういうところにも音楽が必要なんだけれども、どんな音楽か検討もつかないし久石さんに考えてくれって言ったら、とても軽やかなワルツ、懐かしいようなアコーディオンの響きでね。それはちょっと思いもかけない音楽でしたね。

タキという女中さんが、奥様の手紙を恋人に届けにいくという重要な場面。しかし同時にここは音楽的にもうんと膨らんでほしいと思っていた。例えばどんな音楽なんだろうなと思っていろいろな音楽をはめてみる。既成の音楽、ジャズからクラシックからボーカルまで。そして「こういうのだったら合うな」と思った音楽を実際に撮影セットでも流してみる。そこまでやって、久石さんに「この音楽だったら合うんですよ」というようなことを伝える。作曲者にそういうことを言うのは酷なことかもしれないけれど。しかし見事に久石さんはそれを消化してくれた。

 

久石譲紹介(ナレーション)
久石譲の名を一躍有名にしたのは1984年の「風の谷のナウシカ」。文明社会が崩壊して1000年後の物語に、久石の音楽が奥行きをあたえた。

*BGM「風の伝説」 および映画「風の谷のナウシカ」本編映像

久石の出発点は現代音楽だった。同じようなリズムの繰り返しのなかで、少しずつ和音がずれていく、ミニマル・ミュージック。

*BGM「MKWAJU」

久石の音楽には今でも前衛的な要素が散りばめられている。このCMもそのひとつ。(ナレーション)

*BGM「I will be」 および日産スカイランCM映像

 

 

久石譲スコア 2
実は20代なんかは「即興演奏の集団的管理」というのをやっていた。

良い音楽は絶対譜面が美しい。1ページが2ページ見たらだいたいその人の才能はわかる。

クラシック音楽の譜面、「第九」なんか70分かかるので譜面もすごく分厚い。それを作るのに何年かかったんだろうということになる。そうするとそのなかの(作曲家の)思考過程を見ている感じがする。僕は作曲家の目線でしか見ない。たとえば第1主題から第2主題へ移っていく譜面の流れを見ていくと、「あ、ここで詰まってるな」「あ、もうやりようがなくなっていったな」という目線で見ちゃうので、普通の方とはちょっと違うかもしれない。

 

久石譲紹介(ナレーション)
近年クラシック音楽の指揮に精力的に取り組んでいる久石。オリジナル曲「Orbis」は、ベートーヴェンの交響曲第9番に捧げる序曲として書き上げた。実はこの曲にもミニマル・ミュージックの実験的な手法が用いられている。久石の持ち味とベートーヴェンを研究した成果が結びついて生まれた曲だ。(ナレーション)

*BGM「Orbis」 コンサート演奏映像とともに

 

スイッチ オルビス

 

”いい音楽”の定義
養老孟司さんがおっしゃるには「長い年月を経て時間がたっても生き残るのがいい音楽だ」と。たしかにモーツァルトやベートーヴェンなど、長い時間を経て生き残った音楽があります。今それを自分が指揮すると、なんて自分が今書いている曲がつまんないもん書いてんだろう、といつも反省するから、永久に書き続けるしかないような気がしている。

シンプルな構造でものを言い切ることほど難しいことはない。例えば「運命」(ベートーヴェン)だって、「タタタターン」しかない。あれだけでできている。シンプル、それが一番強い。

そういうものを書いてみたい、それが僕の夢。

*BGM「Muse – um」 『フェルメール&エッシャー』収録

 

ここにも補足説明できるインタビューがあります。

参考16)

ミニマル音楽というのは最小限の音形を反復しながら微妙にズラしていく音楽だ。最初から最後まで主旋律がシンプルな四つの音だけで展開される「運命」が究極のミニマル音楽だというゆえんである。

「音楽にはたぶん、いい音楽とそうでない音楽しかないんですよ。いい音楽はシンプルです。ベートーヴェンは最大のキャッチーな作曲家ですね。タタタターンでしょ。彼の『運命』は究極のミニマル音楽です」

Blog. 久石譲 雑誌「AERA」(2010.11.1号 No.48) インタビュー より)

 

参考17)

「自作の《フィフス・ディメンション》は、ベートーヴェンの《運命》のリズム動機(有名なダダダダー)と音程を音列化し、ミニマル楽曲として作ろうとしたのだが、作曲していた最中に東日本大震災がおこり、それが影響したのか激しい不協和音とエモーショナルなリズムに満ちていて演奏がとても難しい。今回はさらに手を加えてより完成度を上げたのだが、難易度も計り知れないほど上がった。指揮していた僕が「この作曲家だけはやりたくない!」と何度も思った、本当に。」

Blog. 「クラシック プレミアム 6 ~モーツァルト2~」(CDマガジン) レビュー より)

 

参考18)

「最終的に僕が言いたいことは一点。クラシックが古典芸能になりつつあることへの危機感です。そうでなくするにはどうしたらいいかというと、”今日の音楽”をきちんと演奏することなのです。昔のものだけでなく、今日のもの。それをしなかったら、十年後、二十年後に何も残らない。前に養老孟司先生に尋ねたことがあります。「先生、いい音楽って何ですか」。すると、養老先生は一言で仰った。「時間がたっても残る音楽だ」と。」

「例えばベートーヴェンの時代、ベートーヴェンしかいなかったわけではない。何千、何万人とい作曲家がいて、ものすごい量を書いている。でも、ベートーヴェンの作品は生き残った。今の時代もすごい数の曲が書かれているけれど、未来につながるのはごくわずか。つまらないものをやると客が来なくなる。だが、やらなかったら古典芸能になってしまう。」

Blog. 「考える人 2014年秋号」(新潮社) 久石譲インタビュー内容 より)

 

 

最後に
今日吉岡さんの作品を見て、「もっと広げようかな」と思った。この辺の空間で、たとえばこのなかにあるものをたたくなり、こするなり、吹いたりして、それで映画1本やれと言われたら、僕やりますよ。

 

SWITCH 達人達 久石譲

 

 

【編集後記】
久石譲を語るうえでの代名詞、キーワードとなる作品や楽曲
*映画「風の谷のナウシカ」はじめスタジオジブリ作品
*映画「菊次郎の夏」はじめ北野武作品
*現代音楽/ミニマル・ミュージック/「Orbis」 etc
*作曲家/演奏家/指揮者
♪ 「Oriental Wind」サントリー京都福寿園 伊右衛門CM曲
♪ 「Summer」映画「菊次郎の夏」/ TOYOTA CM曲

他、放送当時直近で手がけた作品たちより
(映画/CM/コラボ楽曲/企画作品/NHK番組 etc)

 

 

『ジブリ』『宮崎駿』『北野武』『Summer』『Oriental Wind』やはりこれが久石譲の代名詞となっていることがよくわかりました。同時に、このNHK番組では久石譲の大衆性(エンターテイメント)だけでなく、芸術性(アート)な部分もバランスよく紹介してくれていました。

上の代名詞をもとにその大衆性で「あ、これね、久石譲の音楽ね」となるわけですが、そこに直近作品やオリジナル作品という芸術性(アート)で「あ、これも久石譲だったのか」「こんな曲もつくってるんだ」となります。

この両輪があって久石譲音楽の広がりと奥ゆきが生きてきます。そんなことを思った良質なTV特番「NHK SWITCH インタビュー 達人達」でした。

 

Disc. 麻衣 『空みあげて』

2015年4月8日 CD発売 WRCT-1014

 

麻衣のミニアルバム。父・久石譲の出身地でもある長野県中野市イメージソング「空みあげて」などを収録。

 

久石譲作品では、1987年11月に発表されたアルバム『となりのトトロ イメージソング集』に収録された「小さな写真」が本作品に収められている。映画では使われなかったが、後に上条恒彦が「お母さんの写真」としてカバーし、シチューのCMソングに使われ、ジブリファンの間では隠れた人気曲となっている。オリジナル盤では久石譲が歌っていた曲を、麻衣の透き通るような声で朗々と歌い上げる。

今作のジャケットは、元スタジオジブリのアニメーター 百瀬義行による書き下ろし。中野市の自然風景を描いた、どこか懐かしくもあり、優しさに包まれたジャケットとなっている。他にも中部電力のCMソングとして地元では知られた「Dreamland」など、全6曲が収められている。信州の、日本のうたがいっぱい詰まった一枚。

 

 

なお「小さな写真」は本作に先駆けて2014年に配信限定シングルとしてリリースされている。

 

2014年7月9日 配信限定シングル

 

 

 

1.空みあげて (長野県中野市イメージソング)
作詞:麻衣 作曲:松本俊明
2.Dreamland (中部電力CMソング)
作詞:麻衣 作曲:Stefan Aberg & 麻衣
3.ゴンドラの唄
作詞:吉井勇 作曲:中山晋平
4.つなぐ (テレビ信州冬の祭典テーマ)
作詞:麻衣 作曲:Stefan Aberg & 麻衣
5.小さな写真
作詞:宮崎駿 作曲:久石譲
6.故郷
作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一

 

Blog. 「クラシック プレミアム 33 ~エルガー/ホルスト~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2015/4/5

クラシックプレミアム第33巻は、エルガーとホルストです。

どちらもイギリスを代表する作曲家で、それぞれ代表曲の「威風堂々」と「組曲 惑星」が特集されています。

 

【収録曲】
エルガー
行進曲 《威風堂々》 作品39
アンドレ・プレヴィン指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1985年

ホルスト
組曲 《惑星》 作品32
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
フィルハーモニア管弦楽団
モンテヴェルディ合唱団女声コーラス
録音/1994年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第32回は、
オーケストラに何をどのように伝えるか

今号でも、指揮者としてのあれこれが、興味深く語られています。

一部抜粋してご紹介します。

 

「音楽が音楽になる瞬間のことについて、前回書いた。指揮者はその瞬間のために、何をどのようにオーケストラに伝えたらいいのか、さらに考えてみたい。」

「まずは、伝える手段である言葉について。僕は、アジア・ツアーなどで海外のオーケストラを振ることもあるが、そんな時、音楽用語と片言の英語でほぼ伝わる。「モア・ピアノ(もっと弱く)」「ユー・ラッシュ(あなた、走っているよ)」……。カルロス・クライバーは《こうもり》序曲を指揮したとき、ある箇所でオーケストラに「この8分音符にはニコチンが足りない。タールや毒が必要だ」と言ったそうだが、クライバーのように文学的な人は話したほうがいいのだろう。僕の場合はとてもシンプルだ。」

「「これはこうで……」と、長いセンテンスで言葉を投げかけるのではなく、具体的な指示をする。作曲家としてクラシック音楽に向かって指揮をするので、その観点から端的に伝えていく。例えばメロディーラインのほかに、第2ヴァイオリンやヴィオラにこまかい音符が書いてあると、せっかく作曲家がここまで書いたのだから大切にしよう、立体的に作ろうと考える。だから多くの場合、メロディーを振るよりも内声部やリズムを整えるほうに神経を使う。」

「でも、こんなこともあった。僕の《World Dreams》という曲がある。朗々とメロディーが歌う曲だ。これを新日本フィルハーモニー交響楽団と録音していた時のこと。いい演奏だったのだが、もっとぐっと迫ってきてほしかった。そこでなぜこの曲を作ったのかという話をした。作曲当時、僕が脳裏に描いていたのは、2001年の9.11、飛行機が突っ込んだ世界貿易センタービルの映像と、戦争に巻き込まれた子供たちの飢えて泣いている顔だった。そうした悲惨な映像しか浮かんでこなかった。それをイメージしながら、いつか平和という「世界の夢」が果たせればという気持ちで作った曲だと話した。すると、オーケストラの音がまったく変わった。たしかに言葉は有効なのだ。」

「今度、久しぶりに、ショスタコーヴィチの交響曲第5番を指揮する。そこで、いろいろ勉強している最中なのだが、オーケストラに強弱やテンポのことばかり言っていると、音楽としていったい何をやりたいのかが伝わらないだろうなと痛感している。単純に強弱やテンポについてなら、楽譜にしっかり書いてあるわけだから、それを繰り返して指示したって「そんなことは言われなくてもわかっている」ということになる。しかも、第5番でいえば、金管楽器が全奏するある箇所で、全体としては大音量になるのだけれど、じつは各楽器で強弱記号が微妙に違っていたりする。そこで指揮者は、その楽譜の微妙な違いをきちんと把握したうえで、実際のオーケストラから出てくる音を冷静に聴きわけ、さらにオーケストラにどのような音楽を作っていきたいのかを示さなければならないのだ。ところが、どうしても即物的に、そこは抑えて、ここはもっと出して……となりがちだ。そうなると、音楽が伝わらない。ピアノの箇所で、いくら「ピアノで」と言ったところで何も伝わらない。ところが、「ここは甘い音ではないのです。ピアノでも、ロシアの厳しい大地のようにすべて冷たく」と言えば、オーケストラも、ああ、そういう音がほしいのかとなる。」

「この曲で何をしたいのかを伝えられずに、こまかいことだけを指示していくと、オーケストラは守りに入る。言われたとおりに、間違えないように……。そうなると音楽が音楽になる瞬間には辿りつけない。だからといって、こまかいことは一切言わなくていいというわけでもない。」

「例えば、ベートーヴェンの交響曲第9番第1楽章の冒頭。多くの指揮者の場合、ピアニッシモで抑えに抑えて、深淵から音が現れるように演奏するが、僕は第2ヴァイオリンとチェロが6連符を刻み続けるリズムを大事にしたいので、あまり弱くはしない。第2主題になるとだいたい遅くなるのだが、そこはどうしてもリズムをキープしたい、ソリッドな構造が見えるベートーヴェンにしたい。それは最初の練習の時にはっきり伝える。そうすると、オーケストラの奏者も、この指揮者は全体を通して何をやるたいのかが見えてくる。2日か3日のリハーサルしかない中で、極論すれば、指揮者は自分のやりたいことを最初の10分で伝えなければならない。」

「ところで、最近、指揮をするのが、ほんの少々だがつらくもなってきた。なぜなら、同じ曲でも初めてのときと2回目、3回目では出来上がりが全然違うのだ。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目とよくなっていく。新たな発見もある。つまり、もっともっと膨大な時間が必要だと思い知ってしまったからだ!」

 

 

クラシックプレミアム 33 エルガー ホルスト

 

Disc. 『柘榴坂の仇討 特装限定版』

2015年4月3日 DVD/Blu-ray発売 BCBJ-4659

 

2014公開 映画『柘榴坂の仇討』
監督:若松節朗 音楽:久石譲 出演:中井貴一・阿部寛 他

 

 

通常版と特装限定版、それぞれDVD/Blu-rayと計4形態にて発売された「特装限定版」の映像特典に、「監督 若松節朗×音楽 久石譲 対談」が収録されている。約30分にも及ぶスペシャル対談で、本映画の音楽について、随所にそして具体的に語られている。

 

 

【「雪」を音楽にする】

若松:
最初にオーダーしたのは、「雪」を音楽にするということ。いろいろな雪がイメージできるが、久石さんがどのような雪の音楽を作ってくるのか楽しみだった。

最初に聴いた本編冒頭のM1で驚いた。夢の中で起こる事件の話だったが、サスペンス的な音楽かなと想像していたら、久石さんの楽曲は、とても温かい音楽でまさに雪の音楽だった。

久石:
メインテーマは別にもあるが、この映画ではM1がすごく重要だったかもしれない。

いわゆる時代劇のような音楽ではないほうがこの映画にはいいと思った。時代劇とするよりは、たまたま設定が時代劇で、現在の自分たちととても近いものとしたほうが。

 

【秋元邸で金吾が涙を流すシーン】

若松:
音楽の止める場所とかものすごく学ぶことが多かった。

久石:
構成の問題もあって、あのあと最後の決闘シーンが控えている。登場人物たちの心情を表現するとしても、音楽はそこにとっておく必要がある。なのでこの場面はあえて突き放して音がないほうがいいと思った。

 

【映画音楽の作り方】

久石:
今ハリウッドでやっている映画音楽は「効果音楽」。そのシーンごとに切り取ったらぴたっとはまるけれど、全体としては残らない。そこには全体の構成がないから。

これはあまりにもデジタル技術が発達したため、つまりシュミレーションが簡単にできるようになったために起こっている現象だと思っている。

 

【俯瞰した音楽をつくる】

久石:
映画音楽は一般的に「状況に音楽をつける」「登場人物の心情に音楽をつける」という大きく二つの方法がある。最近はそのどちらでもなく、もう一歩引いたところから、「俯瞰して音楽をつける」ということをしている。そうすることによって作品が言いたいことがより伝わりやすくなったり、より立体的になるように思っている。

(インタビュー内容一部抜粋書き起こし)

 

 

<本編盤>
本編119分+映像特典3分(特報/予告編/TVスポット集)
<特典収録盤>
監督 若松節朗×音楽 久石 譲 対談
メイキング映像
イベント映像(完成報告会見/プレミア試写会舞台挨拶/豪徳寺大ヒット祈願/初日舞台挨拶)
<特製小冊子(21p)> 封入特典
キャストインタビュー集
原作・浅田次郎インタビュー
撮影地&緑の地 紹介
歴史年表
用語集

 

Info. 2015/04/03 映画『柘榴坂の仇討』 Blu-ray/DVD 発売 久石譲対談特典あり

2015年4月3日 Blu-ray / DVD 発売

2014年公開 映画『柘榴坂の仇討』
監督:若松節郎 音楽:久石譲 出演:中井貴一 阿部寛 他

浅田文学の最高峰、待望の完全映画化!
中井貴一×阿部寛が激突!
武士と誇りと覚悟、師への想い、妻への感謝と愛――日本人の真心がここにある!
「今、日本人としてどう生きるか」を見事に提示する作品が、ブルーレイ&DVDで発売!
ひたむきに生きる。

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Blog. 「オトナの!格言」 鈴木敏夫×久石譲×藤巻直哉 対談内容紹介

Posted on 2015/4/2

TBSトークバラエティ番組「オトナの!」

関東ローカル番組ですが、2014年2月5,12,19日と3週間にわたって、トークゲストで鈴木敏夫、久石譲、藤巻直哉が登場しました。そして、2014年12月20日に、番組のゲストトークを集めた書籍が発売されています。

 

 

「オトナの! 格言 いとうせいこう×ユースケ・サンタマリアPresents」

各界を代表する23人による、今を生きる僕たちのための最新格言集!!「オトナとは…」をテーマに、仕事・芸術・生き様・サブカルについて、生きる達人たちが贈る、他では聞けない話の数々。クスッと笑えて、きっと人生の参考になること必至!!

【掲載人】
鈴木敏夫/久石譲/藤巻直哉/道尾秀介/森田恭通/本田直之/岸博幸/猪子寿之/西野亮廣/中村佑介/会田誠/枡野浩一/筒井康隆/みうらじゅん/杉作J太郎/劒樹人/吉田豪/カンニング竹山/高須光聖/坂口恭平/園子温/蜷川実花/紀里谷和明

 

 

この書籍のなかから、久石譲たちの対談内容をご紹介します。

なにせ3週分、全トークが文字起こしされたのかは番組を観れなかったためわかりませんが、結構なボリュームと濃密内容でした。そこから久石譲や音楽にまつわるエピソードだけを抜粋してご紹介します。とってだしの秘話やこの番組だけの話というよりも、鈴木敏夫さんの著書やポッドキャスト「ジブリ汗まみれ」などでも語られてきた、珠玉の秘話たちです。

もちろん「そうだったのか!」と新発見するそのときの経緯やお話も登場します。トークというその場の空気感や勢いもあってか、より話し言葉でリアルに当時の場面が浮かんでくる内容です。メディアインタビューで語っていることも多いです。そこには活字にするかしこまった感がある、でもここにはもっとフランクな、まんまの状況や言葉が伝わってくる。

久石譲が語ったジブリのこと、監督たちのこと、指揮者としてのこと、など、さかのぼっても1-2年前の話ですので、わりと旬な久石譲を垣間見ることができます。ジブリと久石譲、その30年の歴史を総括するような、そのときどきの重要なマイルストーンを発見できる対談内容です。

 

 

 

天才たちとシゴトをする
鈴木敏夫 × 久石譲 × 藤巻直哉

ジブリが大好きで、僕はプロデューサーの鈴木敏夫さんに長年お話を聞いてみたかった。いや当然宮崎駿監督にも高畑勲監督にもものすごくお会いしたいですが、僕が鈴木敏夫さんにすごく惹かれたのは、実は鈴木敏夫さんは最初は徳間書店の『週刊アサヒ芸能』の記者だったという経歴です。そのころアニメは全然詳しくない門外漢だったのにアニメ雑誌『アニメージュ』を創刊するにあたって、初めてアニメの世界に触れることになり、そこで宮崎駿さんと高畑勲さんに出会い、やがて皆でスタジオジブリを設立し、いまや数々のヒット作を生んだ日本一のアニメプロデューサー、その彼の遍歴にビジネスマンとしてプロデューサーとしてさらにひとりの男として、ものすごく興味が湧いたのです。

ジブリ作品は日本テレビが製作会社のひとつですし、なかなかご出演が叶わなかったのですが、何度か交渉した挙句、憧れのスタジオジブリにおじゃまして、ご本人に熱く僕の想いを語ると、『かぐや姫の物語』の公開のタイミングで出演を快諾いただけました。鈴木さんがそのときおっしゃっていたのは、実は日テレだと逆になかなか話せない裏話があるとのこと。それは日テレの氏家元会長とジブリのエピソードです。「それがTBSで話せますか?」。僕は即答しました。「はい、ぜひお話しください!僕はそれが聞きたいのです」。

一緒に出演する方は、鈴木さんがお話ししやすい方で……とお伝えすると、藤巻直哉さんのお名前が最初に挙がりました。でもすぐに「いや、藤巻さんと一緒だと話しやすいけど『オトナの!』出演のインパクトがないな(笑)。考えます」と言われ、すぐさま、なんと作曲家の久石譲さんのご出演をご自身でブッキングしてくださったのでした。さらに収録場所は、なんと恵比寿の鈴木さんの隠れ家、通称”れんが屋”。まさに鈴木プロデューサーご本人にプロデュースしていただいた収録になったのでした。

(2013年11月29日恵比寿にて収録)

 

鈴木:最悪の出会いが運命を変えた
徳間書店の編集者として、アニメーション雑誌『アニメージュ』を担当。宮崎駿が『カリオストロの城』を作り始めたばかりのときに、紹介したいので話を聞きたいと取材に行ったら、口をきいてくれないんですよ。「どうせ、いろんな作品を並べて紹介するんだろう、子供相手に。そんな雑誌に協力できるか!」と言われ、頭にきました。でも、言われっぱなしで帰ったら僕の負け。そばにあった椅子を持ってきて、彼の横に座りました。それでも彼は知らん顔。ヒドイ男でしょう。その日は午前4時まで、ずっといましたね。その間、彼も僕にひとことも口をきかず。まあ、宮さん(宮崎駿)は一生懸命、作業に没頭しているから、「帰れ」とも言いませんでした。

そんなんだから、初めて口をきいてもらったときのことは、よく覚えています。『カリオストロの城』にカーチェイスのシーンがあって、そのことについて質問してくれました。「車が競っていて、後ろの車が前の車を追い抜くことを専門用語で何ていうんですか?」と。「捲り(まくり)といいます」と同行した編集者が答えたら、「捲りっていうんですか。あぁ…」とつぶやきながら、シナリオの台詞に入れたんです。それが3日目のコト。そこからは、いろんなことをしゃべりだして、なんとなく毎日、会いに行くようになって。僕も途中からはそこに仕事を持ち込んで、原稿を書いたりしていて、気がついたら映画完成までつきあって……今日に至るわけです。

当時、僕は彼を「デキルやつだな」と思いましたが、彼は僕に対する第一印象を「胡散臭いヤツだ」と感じていたそうですよ(笑)。

 

鈴木:プロとしての意地の張り合いが縁を結ぶ
高畑勲との出会いは、宮さんのすこしあと。彼が『じゃりン子チエ』の制作中に、取材に行きました。この人も、一番最初の台詞をよく覚えているんですが、僕に「どうせあなたは」と言ったんです。

「どうせあなたは、『じゃりン子チエ』の原作を読んで、ここが良かったので、それを根拠にして映画を作っている……って、こんなような答えが聞きたいんだろう?」と因縁をつけられました。これまた、頭にきましたね。でも、そうは言いつつ、映画制作について3時間もしゃべってくれた。

僕も機嫌が良くなって、この人とはうまくやれそうだなと思っていたら、彼が突然「これを原稿にまとめるんですか?まとめられないでしょう」と。僕も「これが商売ですから、まとめますよ!」とムキになって、もちろん原稿を書いた。

そんなところから、つきあいが始まりました。

 

鈴木:一流の本質を見抜く、一流の眼
『風の谷のナウシカ』の作曲者を決めるとき、当時はまだ新進気鋭だった頃の久石譲さんを最終的に推したのは高畑さん。「久石さんの作る曲がいいのもさることながら、あの人には音楽的素地に加えて教養がある。いろんな曲を知っていると、映画音楽として助かるんだ」と言ったプロの意見を、いまでもよく覚えています。

 

久石:一つひとつ、丁寧につくる
映画音楽を作曲する際、まず、実写は台本を、アニメーションは絵コンテを読みます。どんなものを作るのかとイメージしつつ、監督とディスカッションをしながら作っていく。

一作品でだいたい30~40曲、作曲します。どのシーンにどんな曲を挿れるのかを構想するのと同様に、実は、シーンをどう切り取るかもとても重要。いまは長い曲を作って、その中から切り貼りしてはめていくような選曲スタイルもありますが、それでは嫌なんです。

一つひとつ、丁寧に作業するので、時間がかかりますね。

シーンや感情に合わせるようなものは作りません。だって、走っているシーンにテンポの速い音楽をかけるなんで、アホでしょう。たまにはやりますけど(笑)。

男女が見つめ合っていて、十分、好き同士だとわかるのに、「好きだ」という台詞を言わせ、「二人は好き合っている」というナレーションをかぶせて、ロマンティックな曲を要求されることもあるのですが(笑)。

基本は、画面を上塗りしても仕方ないのだから、泣いているシーンに悲しい音楽は必要ないと思います。観ている人に感じてもらうためには、表現しているものと同じことをしないほうがいい。

悲しいシーンに、あえて明るい音楽をつけると切なくなる。よりリアルさを出すための技法をふまえたうえで、そこまで計算した映画のための音楽にしたいと考えながら制作しています。

 

鈴木:最高の作品は、運も味方につける
『ナウシカ』と『天空の城ラピュタ』で、宮崎×久石の名コンビが世間にも認知された。どちらも音楽担当をしていた高畑さんは、「だから自分が映画を制作するときには、久石さんに音楽を頼むことはできない」と話していたんです。ところが、突如『かぐや姫の物語』の音楽は、久石さんにお願いしたいと言い出した。

当初、『風立ちぬ』との同日公開を目論んでいた僕は、困ってしまった。その両作を久石さんがやるのはどうかと。

そこで宮さんがどう思うかと話しに行きました。「久石さんもかぐや姫の音楽をやりたがってるし、高畑さんもお願いしたいと言っている」と。そういうとき、宮さんはすこしキレ気味に、決まってこう言うんです。

「そんなことは、久石さんが決めればいいんだ!俺の知ったこっちゃない」

このときもそう話した途端に、「久石さんやっちゃうよな~。マズイよ、鈴木さん。久石さんを阻止してよ。『風立ちぬ』だけでいいよ!パクさん(高畑勲)は他の人がいっぱいいるじゃん」と言うんですよ。

結局、『かぐや姫』のほうの制作が遅れて、公開が4ヵ月延期されることになり、改めて久石さんにお願いしました。同日公開はできなかったけれど、作品として、これは本当に運が良かった。同日公開は僕の夢でした。その夢が破れてしまったので、後日宮さんと高畑さんに冗談をいったんです。

「もうひとつ、やりたいことがある。2人の葬式を、同じ日にしたい」

 

久石:監督・高畑勲
宮崎さんの作品は30年以上一緒にやって来ましたが、実は高畑さんとご一緒したのは『かぐや姫の物語』が初めて。高畑さんはどんな目上の人でも若い人でも同じように丁寧に接するし、どんな場合でもニコニコと対応する。でもジブリの他の人に聞いたら、宮崎さんだと何かあるとすぐカッとなって「何やってんだ、コラ!」って怒ってすぐ済むんだけど、高畑さんは「違いますよ、君は……」って始まるとそこから3時間真綿で首を締めるように懇々と言われるらしいんです。どっちが辛いって言われると高畑さんのほうが辛いって言う方もいます(笑)。

 

鈴木:やり直しさせても結果が良ければ信頼を得る
でも高畑さんは人が持っている能力を引き出す天才。名演出家なだけでなくまさに彼は名プロデューサーなんです。

アニメーターが描いた原画を見て、「これは違う、その理由は……」ときちんと説明する。それを受けて直した原画を見て、また注文を出す。これを何回も繰り返すうちに、そのアニメーターは上手になるんです。だから、たくさんのアニメーターからの信頼が厚い。

初めて高畑さんと久石さんが組んだ『かぐや姫の物語』でも、同じように音楽の直しの指示を幾度も入れていた。そして気がつかないうちに久石さんの創る音楽がどんどん高畑さんの表現したい世界に近づいて行くんです。

その裏で、「久石さんという人は、これだけの人じゃない。もっと出せるはずだ。このまま世に出したら、悔いが残るに違いない」、こんなふうに話していました。

 

藤巻:ジブリには曲者がいっぱい
僕は博報堂の社員として長年ジブリ映画の広告のお手伝いをさせていただいてきたんですが、この鈴木敏夫ってのはコミュニケーションに長けた本当に名プロデューサーなんです。だって宮崎駿さんや高畑勲さん、久石譲さんといった巨匠の方たちや、まわりにいらっしゃる日本テレビの故・氏家齊一郎会長、徳間書店の故・徳間康快社長などといった、まさに猛獣、5人の曲者をたやすく転がしちゃうんですよ。でもその鈴木さんが実は一番の曲者でして、この男の陰謀で、僕が『崖の上のポニョ』の主題歌を歌うことになったのです。

 

久石:信頼が傑作を生み出す
『崖の上のポニョ』の主題歌を、大橋のぞみちゃんが歌うのはいいとして、一緒に藤岡藤巻というオジサン2人が歌うという。「宮さんが気に入っているから、この人でいく」と、この鈴木敏夫さんに騙されたんです。「それなら、仕方がないですね」と返事をしたことを覚えています。なんだかなあ~……と思いました。レコーディングが始まっても、最後までつきあう気になれなかったほど。

ところが後日、記者会見で歌っているのを見たら、すごく良かった。ああいう、シンプルで童謡のようなメロディは、うまい歌手が歌ってもおかしいじゃないですか。じゃあ、誰が歌うのか?と考えても、ぴったりの人がいない。そう思うと、大橋のぞみちゃんとオジサンたちはまるで親子のようで、これが良かったんだと納得できました。

また、作曲後に少し不安があり、宮崎さんに聞いてもらう前に鈴木さんに聞いてほしいとお願いしたことがありました。鈴木さんの意見を求めましたが、「これは宮さんも感動する」、「これだと宮さんはどう思うかなあ」という発言ばかり。自分がどうかではなく、宮崎さんならどうかを考えるコメントを聞いて、鈴木さんは、最高のマネージャーで、最高のプロデューサーだと感心しました。

宮崎さんのような作家そのものという人たちは、思い込みが激しいもの。その意見を忍耐強く、その場では何も言わずに聞いている。受け止めたような顔をしておいて、裏工作に入る。また、困ったなぁという雰囲気を出しながら頼まれるので、みんな鈴木さんに協力してしまうんです。人の動かし方も天才的ですね。

 

鈴木:コトを運ぶには、動くことも動かないことも重要
まわりから、コミュニケーション能力に長けているという評価をもらうことがあります。かつて、『大菩薩峠』という小説がありました。主人公の最大の特徴は、刀を抜いてストンと落として、相手が来るまで待つ”音無しの構え”。たいがい相手は動くから、そこを斬ってしまう。この音無しの構えを身に付けようと努力してきたことが、参考になっているのかもしれませんね。

映画監督にはそういうところがあるものですが、一番大事なシーンに音楽を挿れずに画だけで見せたがる。『となりのトトロ』でサツキがトトロに出逢う雨のシーンがそうでした。子どもはトトロの存在を信じてくれるけど、大人まで巻き込むにはどうしようかと考えて、あのバス停のシーンが重要だと。それなのに宮さんは「画だけで」と言って。それを聞いた久石さんも「ハイ」と答える。

そこで、トトロの横で『火垂るの墓』を制作中の高畑さんに相談。音楽にも久石さんのことも詳しい彼は「あそこには音楽があったほうがいいですよ。ミニマル・ミュージックがいい。久石さんの一番得意なものができる」とアドバイスしてくれました。その高畑さんが言ったことは内緒にして久石さんに頼みに行きました。「でもここは宮崎さんはいらないって言ったけど、そんなことしてイイの?」と言う久石さんに、僕は言いました。「宮さんは、いいものができれば気が付かないから」。そして作曲してもらった。ジブリで完成した曲を聞く日、宮さんは「あっ、いい曲だ!」と喜び、あの幻想的なシーンが完成しました。僕は思うんですけど、久石さんはそんな綱渡りの状態のほうが、かえって名曲を生み出してくれるんです。

 

鈴木:亡き人がいたから作れた物語もある
日本テレビの会長だった氏家さんが、あるとき「高畑勲の作品が見たい」と言ってきました。高畑さんが映画を作ると大変だから、はじめのうちはうっちゃっておいた。そうしたら氏家さんが「高畑が映画を作らないのは、お前が原因だな」と詰め寄ってくるので、僕は正直に言いました。「もう嫌なんです。あの人と作品を作るということは、大袈裟ではなく、1日24時間つきあわなきゃいけない。しかもお金も時間もかかる」と。

すると氏家さんは「俺は高畑勲に惚れている。70いくつになるまで、俺はこうやろうと思ってやったことはひとつもない。その男の寂しさがわかるか?」と言われたんです。「そんな、いろいろやっているじゃないですか」と驚きながら反論する僕を、「ばかやろう!読売グループはすべて正力松太郎さんが作ったもので、俺はそれを受け継いでやっているだけだ。俺だって、死ぬ前にひとつ何かやりたい。俺の死に土産に、高畑の作品を作ってくれ」と諭すんです。

その話を高畑さんにしましたが、なかなか決めてくれない。かぐや姫が題材に決まってから8年というだけで、本当は制作に14年かかりました。「高畑さんの作品で一番好きなところは”詩情”だ」と言う氏家さんのコメントに、高畑さんは大層喜んだ。結局、完成前に亡くなられてしまいましたが、脚本ができればすぐに見せて、絵コンテも実はれんが屋で目を通してもらっていた。2時間かけて『かぐや姫』の絵コンテを見た氏家さんは、「かぐや姫ってわがままな女だな。でもな、女はわがままに限るんだ」っておっしゃいました。完成した映画を見せたかったですけどね。氏家さんがあって出来上がった映画が、この『かぐや姫の物語』なんです。

故人を製作総指揮にしたのは2人目で、『千と千尋の神隠し』の徳間康快がそうでした。なので2人とも、エンドロールの一番はじめに名前が登場するんです。

 

 

オトナの”モノを創る現場”

鈴木:個人的なつきあいはしない
たとえば、久石さんとは仕事をして長いが、あまり個人的なつきあいはしていない。高畑さんと宮さんも、2人で食事になど行かないという。なぜなら、プライベートのつきあいが始まると、仕事上での関係性がダメになってしまうから。

 

鈴木:「おい、お前」の関係性ではモノを創れない
まさしく高畑×宮崎がそう。50年つきあっている2人だが、お互い丁寧語でしゃべっている。「おい、お前」と呼び合うような、近しい関係性になってしまうと、違うと思ったときに、批判ができなくなってしまうからでしょうか。

 

久石:自信がないことを前提に創作する
自信がないことを前提にモノを創るべきだと考えています。

僕は、自分に才能があるとは思っていません。だから、努力しなければ何もできなくなってしまう。聞いた話によると、宮崎さんもそう思っていらっしゃるそうですよ。

創作し続けるためには、勉強が大切。一にも二にも勉強ですね。

 

久石:いくつになっても、努力して、勉強する
指揮者としての活動もしていますが、職業指揮者を目指したいわけではなく、作曲のこやしになると思ってのこと。譜面を見るだけでは、構成やメロディやハーモニーを頭の中でイメージするのみ。遠くから眺めるだけで終わってしまいます。でも、オーケストラの指揮をして、演奏者に指示を出すとなると、そうはいかない。自分がしっかり譜面を読み込み、勉強しておかないと。

僕の場合は、昼から夜の11時くらいまで作曲し、家に帰ってから明け方までスコアを見て、指揮の勉強をします。そうやって覚えて、実際にオーケストラに指示を出すと、目の前かつ、リアルタイムでプロの音楽家が音を出してくれる。そこで浴びるパワーがあって、ようやく曲を深く理解できるわけです。

たとえばそれがブラームスの曲だとして、ブラームスのすごさを体感すると、次の創作にはね返すことができる。そうやって、結局は努力をするしかありません。

 

藤巻:考えに考えて考え抜くと、運がいいと神様がアイデアをくれる
宮崎駿さんも自分は才能がないと言っています。以前娘が夏休みの宿題で宮崎さんに「おもしろいお話はいったいどういう風に作るんですか?」とインタビューしたら、「考えに考えに考えに考えに考えに…ってもう何回考えるんだろうってくらい考えて考え抜くと、運がいいとポッと神様がアイデアをくれるんだけど、ほとんど運が悪いんだよね(笑)」と言っていました。

 

オトナとは?
収録の最後に”あなたが思うオトナとは何か?”を一筆、白紙の本に書いてもらう。それが『オトナの!格言』です。

 

鈴木敏夫

大人とは、
どうにもならんことは
どうにもならん
どうにかなることは
どうにかなる

あるがままに。
レット・イット・ビーですね。

 

久石譲

大人とは
子供であることを
忘れないこと。

僕自身はこう思って行動しているのですが、まわりから「久石さんは、子供であることを忘れる能力に欠ける」とか、「すこしは大人になったほうがいい」と言われて、心外です(笑)。

 

藤巻直哉

大人とは
長い物には巻かれろ

僕はまさに巻かれっぱなしです。

 

(書籍「オトナの!格言」より)

 

 

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オトナの!格言 久石譲

 

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