Disc. 久石譲 『4MOVEMENT』

久石譲 『4 MOVEMENT』

2003年3月19日 DVD/CD発売 PCBE-50470

 

2001年「うつくしま未来博」ナイトファンタジア上映作品 『4 MOVEMENT』
監督:久石譲 音楽:久石譲

久石譲 第二回監督作品

 

日本映画音楽の第一人者、久石譲が奏でる
音楽と映像のシンフォニー、「QUARTET」に続き、
自ら監督を務めた待望の映像ファンタジー!

人は心の中にいくつもの顔を持っている。
優しさと人には言えない暗い部分を…。
ミオは成長していく中で心の中の闇に生まれた
もう一人の自分とどう向き合っていくか?
音楽の精ポコとともに巨大な怪物、
黒鳥と闘いながら見つけ出していく…

【STAFF】
監督・音楽:久石譲
プロデューサー:石原真
原案:ドリアン助川
脚本:小川智子
撮影:阪本善尚
音響:橋本文雄

【CAST】
Pace Wu、黄川田将也、浅野優梨愛、山本小百合、相ヶ瀬龍史、若林淳

 

 

【ストーリー】

MOVEMENT 1
殺伐とした大都会。雑然とした風景が闇に転じると少しずつ鼓動が聞こえ、閉ざされた空間(CUBE)から一人の少女・ミオが現れる。暗闇の中で戸惑うミオが目にする1台のピアノ。彼女が鍵盤をたたくと光りが現れ、その中から可愛らしい音楽の精・ポコが誕生する。ミオの良心の象徴であるポコは、彼女の奏でるフレーズを歓喜に満ちたメロディーに導き、それはやがて大きな光とともに新たな世界へと広がっていく…

MOVEMENT 2
大自然に包まれた世界。10才になったミオはポコとともに鬱蒼と生い茂る森を進み、そこでアルトという名の少年に出会う。彼がミオ自身の心の闇であるとも知らず、その不思議な魅力に惹かれ後をついていくが、突然豹変したアルトに翻弄され、自然の脅威にもまれながら闇へと流されていく…

MOVEMENT 3
無機質な人々の流れの中にいるミオは、黒衣をまとった男と出会う。彼に導かれるまま進む道は、人間の愚かさを具現化した殺伐と狂気の世界であった。ミオは怯えと哀しみにもまれながら傷つく人々の間をさまよい歩いていく。全てが焼き尽くされた大地に辿り着いたミオは、そこで朽ち果てた1台のピアノを見つける。ピアノを弾くミオ、幼い頃の思い出が蘇る。が…

MOVEMENT 4
アルトと再会するミオ。20才に成長した二人は思い出の森へと向かい、お互いの想いに気付く。一瞬の安らぎを得たミオだったが、ふと気づくと巨大な黒鳥に変貌したアルトが、邪悪な牙でミオに襲いかかる。ポコとの必死の戦いも空しく、湖畔へ追い詰められていくミオ。しかし、そこで意外な真実が明らかにされていくのであった…

 

 

【メッセージ】

この物語は、主人公のミオが5歳、10歳、20歳と成長していく、4つの楽章(MOVEMENT)から成り立っている。ひとりの人間の心の中には様々な顔があり、とてもやさしい部分と、人にはいえない暗い部分とを皆んなが持っている。ひとりひとりの中にあるものは小さくても、世界中の人間の、つまり60億分ものエネルギーとなると、それが戦争や、憎しみといった世の中の様々な問題を起こしているのではないか。ひとりひとりの中にある問題が連鎖拡大されて戦争が起こったりする。それを解決するのは、自分自身であって、問題は自分の外にあるのではなくて、自分の中にある。「心の中の闇に生まれたもうひとりの自分とどう向き合っていくか」がこの作品の大きなテーマである。  -久石譲

 

 

 

「『4 MOVEMENT』というんですけど、これは1本目の反省から、最新テクノロジーを駆使する方法でやってるんですよ。やっぱり100パーセント満足することって、ないじゃないですか。『カルテット』を撮りおえたあとも、あのシーン、なんでもうひとつ顔のアップを撮っておかなかったんだとか、そんなことばかり考えてたら、もう1本撮りたくなっちゃんたんですよね。『4 MOVEMENT』はね、すごくいい映像が何カットか撮れてるんです」

「あっ、そういうこと言っちゃいけないか(笑)。でも、実はこれが映画のピンポイントなんですよ。北野監督もみんなおっしゃるんですけど、このシーンを撮りたくてストーリーを作ったということはあるんです。それが5つか6つ、その監督が命がけで、どうしてもこれを撮りたかったというシーンを持っている映画は、すべていい映画ですよ」

Blog. 「月刊ピアノ 2001年7月号」映画『Quartet』 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

当時博覧会会場中央の池にて、夜間開催期間中、野外特設ステージとしてウォータースクリーンにて上映された。噴水などの演出とスクリーンによる映像と音楽である。

 

音楽について。

本編でも登場する(登場人物が奏でる)ピアノやフルート、そしてシンセサイザーを基調としたサウンド構成となっている。シンプルで可愛らしい無邪気なアコースティックサウンド、反面ダークな部分を描いたシンセサイザーサウンドなどである。

主人公がピアノの鍵盤に触れるなにげない音は、同博覧会イメージソング「永遠の心」のモティーフにもなっている。その他の場面にも同メロディーの変奏が、バリエーションとして登場している。

「Crossing」にみられるミニマル的音楽要素も盛り込まれている。

同時期公開(および制作期間においても)であった映画『千と千尋の神隠し』(2001)のエッセンスを思わせるような楽曲もあり、そういった久石譲の音楽時代として聴くこともまたおもしろい。

映像音楽とはいえ、監督・音楽の両方を担っていることから、サウンドトラックという枠にはおさまらない、オリジナル・ソロ作品という捉えかたもできる作品である。

自身が監督を務める作品だけあって、映像と音楽がほぼシンクロするような緻密に練られたサウンド構成となっている。それぞれの楽曲は短いが(1-2分程度)、本編30分、サウンドトラック27分ということからも、ほぼ本編全体で音楽が流れているということでもある。

本編エンドロールにて流れる「VIEW OF SILENCE」は、オリジナル・ソロアルバム『PRETENDER』(1989)に収録されていた楽曲である。メロディーメイカーとして久石譲が存分に堪能できる、ピアノとストリングスの美しい旋律と洗練されたアレンジである。なぜこの楽曲がこの作品に取り上げられたかは、メイキングでのインタビューなどでも語られてはいない。

欲をいえば、イメージソング「永遠の心」のインストゥルメンタル・バージョンを、サウンドトラックのボーナス・トラックとしてでも収録してほしかった。DVDメイキング映像の冒頭と最後のエンドクレジットにて、「永遠の心」オーケストラ・インストゥルメンタル・バージョンが流れる。ピアノとシンフォニーによる美しい構成となっている。フェードイン・フェードアウトのため、1曲全体をとおしてこのシンフォニー版を聴くことはできない。

 

メイキング映像は、撮影記録と久石譲インタビューによって構成されている。森の撮影は屋久島で行われていることや、その他撮影場所、特殊撮影などの様子が記録されている。

音楽の精・ポコは、音符をイメージしてキャラクター化されている。

 

 

 

久石譲 『4 MOVEMENT』

【セル収録内容】
DVD ~ 本編30分 / メイキング(映像)42分
CD ~ オリジナル・サウンドトラック

初回封入特典:オリジナルポストカード

4 MOVEMENT
SOUND TRACK CD

1. Nobody
2. Poco Dance
3. Mio’s Forest
4. Alto ~もう1人の私~
5. Escape
6. Crossing
7. Darkness
8. Sand Piano
9. Refrain
10. Crisis
11. You are …
12. VIEW OF SILENCE

All Music Composed , Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Recording Studios : Wonder Station , Avaco Creative Stuidios

 

Disc. 久石譲 『ETUDE ~a Wish to the Moon~』

久石譲 『ETUDE』

2003年3月12日 CD発売 UPCH-1221

 

 

ETUDE ~a Wish to the Moon~

このアルバムは、映画音楽のように大勢の人に向けて発信するというよりは、聴いてくれる皆さんひとりひとりに語りかけたいと久石は語る。コンセプトは「月」。ルナティックという言葉があるように月は人を変えてしまうと言われている。しかし彼はこう考える。人間の奥底にあるものを引き出してしまうものだと。狂気というものは誰もが潜在的にもっているもの。普段はそれを出さずにいるだけ…だと。人はみな自分を納得させながら、ある意味、偽りながら生きているもの。自分の脳を裏切りながら生きている。しかし、そんな自分に納得できないもうひとりの自分が存在する。そのもうひとりの自分に「月」が持っている力を借りて訴えかけるようなアルバムを作りたいと。

「月」に向かって願い事をする…
それは、たぶん叶い難い夢。密やかに願う願い事。
人はそんな夢、願い事を叶うと信じ続ける事で生きてゆける。

このアルバムの制作にあたっては構想から2年、たいへん贅沢な過程をたどる事になった。東京・初台にある東京オペラシティ・コンサートホール:タケミツメモリアルを何度も借り切ってのレコーディング。このホールは昨年3月に発売された久石のアルバム「ENCORE」のレコーディング現場でもあり、今回のツアー最終日もここである。最近の彼にとってはホームグラウンド的なものとなった。誰もいない1632席の客席のステージにたった1人、久石だけの世界。「もったいない…」とも思ったという。そして、同時にプレッシャーも感じたと。

昨年、ベストメロディー集「ENCORE」の制作が完了したとき、彼には少しの不満が残った。それは、このアルバムのために1曲も作曲をしていないという事。これは作曲家・久石譲にとって少なからず欲求不満であった。そんな思いもあり、今回のアルバム「ETUDE ~a Wish to the Moon~」は特別力を注いだ作品になった。

(「Joe Hisaishi Concert ~a Wish to the Moon~ ETUDE &ENCORE PIANO STORIES 2003」コンサート・パンフレット より)

 

 

万を期して発表されたオリジナル・アルバム”ETUDE ~a Wish to the Moon~”は、聴けば聴きこむほど、ピアノの醍醐味をじっくりと味わうことができる。度重ねられたレコーディングでは、音色を追及すると同時に、”いつか夢は叶う・・・”、このコンセプトのもと1曲1曲に対してさまざまなアプローチが試みられた。

ピアノ・ソロの世界は、シンプル、孤独感・・・それでいて、たった1台のピアノでオーケストラの響きを醸し出せるようなダイナミックな主張を持つ楽器。そんな楽器で語られた世界は、ポップスとクラシックのフィールドの中で見事に融合しつつ、ひとつひとつ丁寧に作られた作品は、高いストーリー性を持ったアルバムに仕上がった。

(「Joe Hisaishi Concert ~a Wish to the Moon~ ETUDE &ENCORE PIANO STORIES 2003」コンサート・パンフレット より)

 

 

 

ETUDE ~a Wish to the Moon~  SHORT STORIES

Silence ~内声和音とオクターブのエチュード~
今、君は沈黙の中にいる。音の重さと等しい無音の中にいる。
辺りは闇だ。心の中……闇と言う字は門の中で音が閉ざされたと書く。
視覚の問題ではない。
人の言葉を、あるいは音楽を拒絶する君には、鏡のような水面に落ちる
水滴の音は聞こえないのだろうか……。

Bolero ~同音連打、右手と左手の交差のエチュード~
(Dedicated to Issac Abléniz)
心踊る一時、でもアルベニーは言った。心とリズムはシンクロしない。
激しいリズムの果てに見えるのは廃墟の世界……。
例え地球が滅びようとも、僕は世界の果てまで君を探しに行く。

Choral ~美しく和音を響かせるためのエチュード~
優しさは誰にもある。でも同じくらいの残酷さが誰の心にも潜んでいる。
Pretender~自分に忠実であることは難しい。
だから、と僕は呟く。「心の声を聞け」と……。

Moon Light ~アルペジョのエチュード~
人は月に密かな願いをするんです。
月に願うことは悲しい。実現不可能な夢をこっそり呟く、その時の君は美しい。
そして、いつか夢は叶う……。

MONOCHROMATIC ~半音階のエチュード~
グールドは白鍵と黒鍵の交差の中に何を見たのだろうか?
日々向かい合うモノクロームの世界、徐々に言葉は失われていく。
でも、意外に居心地は悪くない。
不安定な心の揺れは、意識も揺れると安定になる。

月に憑かれた男 ~スタッカートのエチュード~
ルナチック、狼男は月を見て変身する。
現実をこえた強い願望は人を狂気の世界に誘う。狂おしい激情が君らにわかるか?
でも、そんなメロドラマは俯瞰で見るととても滑稽だ。
街路灯に涙する君のヒロイズムは、最高のコメディーだ。

impossible Dream ~6度のエチュード~
叶わぬ夢……でも、僕は信じる。

夢の星空 ~3度のエチュード~
キラキラ光る夜空の星。大きな月に照らされて僕は砂漠を歩いている。
乾いた砂が頬を過ると、もう何も感じなくなった。
月齢26歳、後2日で僕は消え、また復活する……。
ふと小さな自分の存在が愛おしくなる。
そう、希望はある。

Dawn Flight ~5/4拍子の激しいリズム、及び和音連打のエチュード~
そろそろ僕は行かなくちゃ……。
君を思う気持ちは変わらないが、何時までもこだわってはいられない。
世界は動いている、夜明け前に旅立たなくては……。

a Wish to the Moon ~同音連打の指替えとラグタイムビートのエチュード~
「神様、お月さま、私をもっと美しくして下さい」
「お月さま、お願い、私の彼氏を返して」
「お月さま、お金はそんなに欲しくないんだけど、エルメスのバッグだけ買えるお金がほしい」
「お月さま、テレビ局に入りたいんだけど……」
「お月さま、……心の安らぎが欲しいのですが……」
……あるか、そんなモン!
でも願い事(夢)がある限り、君は生きていける。
月のクレーターだってウサギのダンスに見えるじゃないですか。

久石譲

 

Etude circle

 

 

「ETUDE」

02年の4月から、およそ1年間かけて完成させたのが「ETUDE」というアルバムだ。

13曲書いたが、最終的に3曲をボツにして10曲。それを週に1回、2曲ずつ東京オペラシティに通ってレコーディングした。これはボクにとって特別な作品で、ソロアルバムとしては、「My Lost City」と並んで自分の代表作だと思っている。その後に手がける「ハウルの動く城」や「ワールド・ドリーム・オーケストラ」(WDO)などにも影響を及ぼすことになったわけで、音楽的な面でも意味の大きいアルバムだ。

「ETUDE」は、それまでのいわゆる「久石メロディ(?)」とは異なり、ポップスフィールドに入るかどうかという意味ですら、ギリギリに位置する音楽と言える。

このアルバムを完成させたとき、はっきり自覚したことは、作曲家として「作品として形を残そう」という意識が自分の中で強くなってきている、ということだった。作家性を意識しながらも商業音楽のベースを外さず仕事をしていた作曲家が、「作品を残したい」という意識を強く持つことは、ある意味レールの外にはずれてしまうのかもしれない。

しかしボクは、またもとの道へ戻ることを拒否することで、新しい音楽的境地へ向かった。そうして誕生したのが後に続く「WORKS III」の「組曲DEAD」や「ハウルの動く城」だった。

Blog. 久石譲ソロアルバム『ETUDE』 音楽制作秘話 (久石譲著書より) 抜粋)

 

 

 

2003年「キリン一番搾り生ビール」CM音楽「a wish to the moon」

制作エピソード(久石譲)

「音楽ってね、すごく悲しいとか、すごくハッピーだとか、ものすごく強いものだと書きやすいんですが、こういうほのぼのとして、身近な感じの雰囲気を作るというのは、すごく難しいんですよ。原色をガンガン使うのではなく、淡い色合いの世界観で、しかもオリジナリティのあるものを書くっていうのは意外と難しいんです。今回、候補として3曲書いたんですけど、その中でもCM曲に決まった曲というのは、もっともシンプルなものなんです。クリスマスソングにも感じれば、子守唄にも感じるようなメロディラインで、歌詞をつけて歌になるとちょうどいい…そういう曲なんです。実は、あまりにシンプルすぎるので、採用されるかな?という危惧もあったんですよ。でもこの曲に決まれば、後々ボーカルでもいけるし、いろんなアレンジも可能になるから、そういう意味では、これに決まって欲しいなと、望んでいた曲だったんです。ですから、この曲に決まって、すごく嬉しかったですよ。」

「映画は、2時間なら2時間で構成するので、論理的な構造や構成が大事なんです。だけどCMは、15秒が基本なんですよね。その中で勝負しなければならないわけですから、論理的なものよりも瞬間で感じるものに焦点を当てた書き方に変えるので、アプローチがすっかり変わりますよね。15秒書けばいいっていうと、短いように思うけど、実はその中に、多くの人を引きつけなければいけない、そういう部分が必要なわけだから、とても難しいんですよ。」

 

 

 

技術的にも曲の難易度が高いが、かといってエチュード(練習曲)の枠を超えた1曲1曲として完成された世界、凛としたメロディーたち。映像音楽ではない音楽世界ゆえに、聴く人にイメージや想像力をふくらませる。ピアノのみで表現したとは思えないドラマチックな展開。

(1)「Silence」は水を打ったような幻想的で神秘的な世界。心地よい静寂がその時間を空気を風景を満たしてくれる。

(2)「Bolero」や(6)「月に憑かれた男」などは、あたかもショートフィルムを見ているようなドラマチックな臨場感。

(8)「夢の星空」はピアノとメロディーの美しさが素晴らしい。澄んだ空に星たちが輝く、月が揺れる。満天の夜空。透明の清らかな空気たちが空から降りてきそう。

(10)「a Wish to the Moon」は月でウサギがダンスを踊っているような、軽快なメロディーとジャジーでもありモダンでもあり、良き時代に想いをはせるようでもあり、新しい時代への願いでもあり。本作のハイライトでありクライマックスである。

 

本作ライナーノーツには、久石譲自身が書き下ろした曲ごとのショートストーリーも記されている。

また曲ごとに副題が示され、◯◯のエチュード(練習)と書かれている。内声和音とオクターブ、半音階、スタッカート、3度など。技術練習や音階という音楽形式や楽典になぞらえたうえで、その縛りにとらわれない創造的世界が見事に展開している。

一連の「ピアノ・ストーリーズ」シリーズがその時代ごとの映画・CMなどの映像作品も盛り込みながら、ピアノを軸にアコースティックサウンドで音楽単体として成立させたものとすれば、この本作『ETUDE』はそれとも一線を画した、まさに独創的な音楽世界。ピアニスト久石譲と作曲家久石譲だけで追求され完成した、まさに代表作の1枚。ショパンのエチュードは24曲で構成されていて、すべての調(全24調)で書かれているためこの作品は10曲であり、まだ未完成、いずれ発表したいと当時語っている。

また久石譲本人は、この作品を「My Lost City」と並ぶ自身の代表作だとしていて、「自分の作品を残したい」という強い思いから約1年をかけて制作、それ以降の「ハウルの動く城」や「W.D.O」にも影響を与えることになった、大きな転機となったアルバムであると語っている。

『空想美術館 2003 LIVE BEST』では、本作のオーケストラ・アレンジ、LIVE音源を聴くことができる。(1) (2) (6) (8) (10) などである。ピアノの美しい調べがオーケストラにより表情豊かに彩られ、楽器や編曲による音楽的発展、無限な可能性を感じることができる。

 

 

 

久石譲 『ETUDE』

1. Silence (ダンロップVEURO CM曲)
2. Bolero
3. Choral
4. MoonLight
5. MONOCHROMATIC
6. 月に憑かれた男
7. Impossible Dream
8. 夢の星空
9. Dawn Flight
10. a Wish to the Moon (キリン一番搾り CM曲)

Recording Term:Jul. 2002 – Feb. 2003
Recorded at Tokyo Opera City Concert Hall

All Music Composed, Arranged and Performed by Joe Hisaishi

Produced by Masayoshi Okawa, Joe Hisaishi
Recording Engineer: Tomoyoshi Ezaki (Octavia Records Inc.)
Technical Engineer: Suminobu Hamada (Wonder Station Inc.)
Assistant Engineers: Takeshi Muramatsu (Octavia Records Inc.), Hiroyuki Akita (Wonder Station Inc.)
Piano Technician: Masanori Hanaoka, Toshiro Suzuki (YAMAHA Corporation)
Mastering Engineer: Shigeki Fujino (Universal Music K.K.)
Recording Term: Jul.2002 – Feb.2003
Recorded at Tokyo Opera City Concert Hall
Instrument: Steinway D type, YAMAHA CF III S
Edited at Wonder Station
Mastered at Universal Music Studio

 

ETUDE – A Wish to the Moon

1.Silence
2.Bolero
3.Choral
4.MoonLight
5.MONOCHROMATIC
6.Homme lunaire
7.Impossible Dream
8.Stars in a Dream
9. Dawn Flight
10.A Wish to the Moon

 

Disc. 久石譲 『CURVED MUSIC II CM Tracks of JOE HISAISHI』

久石譲 『CURVED MUSIC 2』

2003年1月29日 CD発売 UPCH-1216

 

CM音楽だけを集めた「CURVED MUSIC」第2弾

久石譲がTVより発信する数々のメロディ!最新CM集を一枚に凝縮!

本作収録の「Summer」は「菊次郎の夏 オリジナル・サウンドトラック」音源

 

 

「Happin’ Hoppin’」制作エピソード(久石譲)

「アレンジしているときに、ピアノを主体に、弦とか木管を入れたんですけど、どうしても何か足りなくてね。ドラムとかではなくて、なにかありきたりではない方法で、もう少しリズム感を前に出せる方法はないかなぁとずっと考えていて。それで、映像を繰り返し見ていたら、あったんですよ。ザッザザッザっていういい刻み音を出せる楽器が。それがウクレレ!ギターだと当たり前で、あの雰囲気は出ないんです。どちらかというと、僕はミスマッチが好きな人間ですから、「冬の温泉場とウクレレ」…これがピッタリだ!とか思って(笑)。それを見つけた瞬間にね、頭の中で全部がこう、いきいきとリズミックになって、「絶対これは勝ち!」って思いましたね(笑)。」

 

 

 

久石譲 『CURVED MUSIC 2』

1. Asian Dream Song (TOYOTAカローラ CM曲)
2. Happin’ Hoppin’ (キリンビール一番搾り おんたまくんたま編 CM曲)
3. Happin’ Hoppin’ (キリンビール一番搾り 春だこ編 CM曲)
4. Happin’ Hoppin’ (キリンビール一番搾り 樽生編 CM曲)
5. Happin’ Hoppin’ (キリンビール一番搾り ゴーヤー編 CM曲)
6. Happin’ Hoppin’ (キリンビール一番搾り 毬花編 CM曲)
7. Ballet au lait (バレトレ) (全国牛乳普及協会 CM曲)
8. Summer (Guitar Version) (TOYOTAカローラスパシオ CM曲)
9. Summer 映画『菊次郎の夏』より (TOYOTAカローラ CM曲)
10. Silence (short Version) (ダンロップ VEURO CM曲)

all music composed, arranged, produced and performed by JOE HISAISHI

recording engineers : SUMINOBU HAMADA, HIROYUKI AKITA, TOSHIYUKI TAKAHASHI (wonder station inc.), TORU OKITSU
recording studio : WONDER STATION
mastering engineer : SHIGEKI FUJINO (universal music)

 

Disc. 久石譲 『壬生義士伝 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『壬生義士伝』

2002年12月26日 CD発売 CPC8-3055

 

2003年公開 映画「壬生義士伝」
監督:滝田洋二郎 音楽:久石譲 出演:中井貴一 佐藤浩市 他

 

 

コメント

久しぶりに”かっこの良い男の仕事ぶり”を見た。音楽録りに立ち会った私は、待ちに待った音楽を聴くより、目の前のオーケストラを率いて、自信に満ち溢れ、自分の曲に浸り、自分だけの至福の瞬間(とき)を求め続ける、圧倒的指揮者久石譲に見惚れてしまった。今、この男を撮ってみたとも思ったくらいだ。

そして、この曲は一生忘れない。

初号の翌日に旅立ってしまったこの映画の編集マン・盟友冨田功の通夜の席、不意にこの曲が流れた時、言葉にならない感動を覚えた。東京国際映画祭のオープニングでも冨田功追悼演奏をしていただき、最高の音楽で彼を送り出すことが出来て、感謝しております。久石さん 本当に「オモサゲナガンス」。

滝田洋二郎

 

コメント

この仕事は僕にとっては久しぶりの時代劇であった。王道を行くこの作品には、奇をてらわない正統派の音作りがふさわしいと考え、オーケストラの起用を決めた。とはいえ、和太鼓、アイルランド民族楽器・ホイッスルなどで独特のサウンドを心がけた。また、家族愛、郷土愛、男女の愛、友情と、多くの愛情がテーマであるため、音楽が情感に流されないよう気を付けた。以前から滝田監督の作品が好きだった僕としては、今回、監督やスタッフのみなさんとの素晴らしいコラボレーションが実現し、とても嬉しく思っている。

久石譲

(コメント ~CDライナーノーツより)

 

 

インタビュー
音楽・久石譲

数々の映画音楽を手がけてきた久石譲だが、本格的な時代劇は初めて。
さらに監督滝田洋二郎とも初顔合わせ。
「王道をいく映画にふさわしい音楽を作りたかった」と語る笑顔の中に、
日本映画の面白さを知る久石ならではの自信がのぞいていた。

 

-本格時代劇にチャレンジしたご感想は?

久石:
滝田監督の映画が以前から好きだったので、これはいい機会だな、と思いましたね。時代劇は『福沢諭吉』(91)でやってはいますが、いわゆる本格的時代劇にチャレンジしてみたかったんです。とはいえ、時代劇だから特に何かが違うというわけではなく、あくまで内容に即するものを作りたい。今回はいい意味でオーソドックスな王道をいく作品なので、それにふさわしい音楽をつけたいという想いがありました。具体的にはオーケストラが一番向いていると思って、そこから入りましたね。

-オーソドックスということで、ご苦労された点は?

久石:
時代劇と言っても、現在作っているんだという点を出さなきゃいけない。そして10年後、20年後に観ても古く感じないようにしなくてはならない。それがオーソドックスということですよね。ですから、オープニング・タイトルが出るときの和太鼓にも、シンセサイザーを入れたりしています。また、この映画には非常にいろんな”情”が出てくるんですね。男と女の情だったり、家族愛や郷土愛、友情。そこにベタベタに音楽をつけてしまうと情緒に流されやすいので、ある意味、音楽はちょっと引いた感じにしました。泣かせるところに泣かす音楽をつけるのではなく、むしろそこは引いて、精神的なものを感じるように音楽をつけていく。そこが一番大変な作業でした。

-メロディの美しさとあわせて、今回はリズムを強く感じました。

久石:
そうですね。アクション・シーンが結構ありますからね。ただ、通常のリズムの音ではつまらないので、非常にエスニックなリズム、たとえば和太鼓とか、アフリカや中近東の太鼓も実は入っています。あくまでこの映画の独特の雰囲気を出すために、使ったんですけれど。

-『壬生義士伝』や北野武監督のような男の世界を描いた映画と、宮崎駿監督のアニメなどを、交互に手がけているのは意識されてのことですか?

久石:
あまり気にしてないですよ。あくまで作品に対して自分がどう思うか、同時に、作品からイマジネーションをどれだけ豊かにできるか、そこが一番大切。宮崎さんのアニメーションであろうと、なんであろうと、僕の中では普通にやっているんです。でも、幅はありますよね。ひとりの人間の中にもいろんな顔がありますから。心温まる作品のときは、必然的にメロディ・ラインが大事になってきますし、突き放したような映画のときには、自分の中にもそういう部分はありますから、極力音楽がでしゃばらないように作る。共通するのは、画面をなぞるような音楽は作らない、ということ。あくまで、もしかしたら絵で表現しきれなかったものを表現する、というようにしています。音楽って非常に怖いんですよ。世界観とかムードを決定してしまうところがありますから。

-ご自身の監督経験は、音楽にも影響がありましたか。

久石:
簡単に言えば、功罪半ばって感じです(笑)。『カルテット』(01)を撮った直後は、監督の気持ちがわかってしまい、「ここはきっと大事にしているな」なんて思うと、音楽をやたら抑えちゃったんですよ。気づいたら、絵に音楽が近づき過ぎている。でも本来、音楽が鳴るなんて異質なんですよ。だって、日常では鳴るわけないんですから。やっぱり距離をとっておいたほうがいい、と反省しました。だから多少、監督が大事にしているシーンだろうがなんだろうが、無視しようと(笑)。お互いの軋轢から、相乗効果が生まれるようにしないといけない。どちらかが寄り添っちゃうと、そのダイナミズムは出ないな、と気づきましたね。今回は、音楽がでしゃばりもせず、けれど主張するところでは主張する、という点はうまくいった気がします。

-最後に観客の方へ一言お願いします。

久石:
メインテーマも含めて、映画音楽の王道をいく音楽をつけたと自分では思っていますので、映像と音楽が一緒になったときのダイナミズム、あるいはサウンドトラックCDで音楽だけを聞いて、両方の楽しさを味わっていただければと思います。

(聞き手・構成 石津文子)

Blog. 映画『壬生義士伝』(2003) 久石譲 インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

 

「ハリウッドでいえば『ブレイブハート』や『グラディエーター』ですよね。日本で古典活劇をやるとするなら時代劇ですから、当然、音楽家としてはチャレンジしておきたいジャンルですし、それをきちんとこなせる日本人でいたいと思いましたね。音楽の持つダイナミズムを、映像に乗せてこれだけ表現できるんだぞってね」

「主人公の吉村貫一郎って、とにかく魅力的なんですよ。エンドロールに流れるテーマ曲は、いわばあの時代に生きた人々への鎮魂曲です。でも、映画の音楽って、あまりドラマに共感しても実はダメなんです。僕の場合、あまり共感していない。むしろぐっと対象化しています。この映画でも醒めた意識を持って取り組んだからこそ、全体がしっかり見えたと思うんです。映像では出演者がガンガン泣いていますけど、僕としてはそこから少し距離をとって高潔な感じで包み込むようにしました。本来ならもう少し情緒を盛り込むところを、今回は吹っ切って作ってるんですね。それがやり甲斐であり、大きな課題でもありました」

Blog. 「キネマ旬報 2003年1月下旬号 No.1372」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

久石譲 『壬生義士伝』

1. 雪の降る夜に
2. 壬生の狼
3. 雨の宴(えん)
4. 「おもさげながんす」
5. ふるさと-南部盛岡-
6. 討入
7. 蛍
8. 愛しき人へ
9. 別離(わかれ)
10. 時代の足音
11. 義への道
12. 友よ
13. 旅立ち
14. 故郷へ
15. 壬生義士伝

All songs are written, arranged, produced by JOE HISAIHIS

Performed by TOKYO CITY PHILHARMONIC ORCHESTRA

Additional musicians:
Whistle:TAKASHI YASUI
Guitar:MASAYOSHI FURUKAWA
和太鼓:AUN

Recorded at WONDER STAION, AVACO CREATIVE STUDIOS

 

Info. 2002/12/01 [雑誌]「DVDビデオぴあ」「キネマ旬報」他掲載

先日行われた取材の模様が、下記日程に発売予定の 4誌に掲載されます。

「DVDビデオぴあ」 12/20
「キネマ旬報」 1/5
「V.A.」(TSUTAYA) 1/20
「MUSEE」(タワーレコード) 1/20

来年1/18(土)から公開の「壬生義士伝」についての インタビューを始め、キネマ旬報には最新情報も掲載されますよ。

 

Disc. 久石譲 『風の盆 NHKドラマ「風の盆から」サウンドトラック』

久石譲 『風の盆』

2002年11月23日 CD発売 WRCT-1006

 

NHKドラマ「風の盆から」サウンドトラック

 

 

樂界の魔王

地上では聴くことの叶わない旋律。たまに夢の中で流れることはあっても、目覚めれば記憶の外へ消えてしまっている謎の旋律。そんな天界の音楽を地上にもたらしてくれる天才を私はひとり知っている。その名は久石譲。

彼と私の関わりは1987年の銀座セゾン劇場公演「楽劇・あづち」にまでさかのぼる。信長時代に渡来したイエズス会宣教師(役所広司)の霊操の世界を彷徨うこの劇は、詩と音楽の完璧な調和を必要とした。公演結果は、久石氏が天界から導いてきた、かつて聴いたこともないさまざまな調べによって奇跡のごとき成功をみた。以後、私は彼を「樂界の魔王」として畏れるに至る。仕事も、また組みたいとは願いながら滅多なことでは頼めないと思うようになった。その間にも、彼はますます高みへと昇華していき、私はといえば相も変わらず地上を這いずりまわるだけの凡夫になり果てて、とても再度の邂逅などは有り得ぬものと諦めかけていたところ、今回、ふとした思いつきから、越中おわらの「風の盆」の祭りを背景にしながら、主人公(松本幸四郎)はクラシックの指揮者という、和洋折衷のドラマを書いてしまって、さて、「これは音楽が大変」と、ディレクター。私は思わず、「久石譲なら大丈夫」。ディレクターが「引き受けてもらえますかねェ」と弱気になるのを、「当たって砕けろ」とけしかける。数日後、NHK側から「オーケーでした」の連絡を受けたときは正直なところホッとした。このドラマの成否は音楽で決まると分かっていたからだ。これでまた、ドラマが消えたのちも音楽が残ってくれる。久石氏には感謝の言葉しかない。

脚本家 市川森一

(CDライナーノーツより)

 

 

参加ミュージシャン
二胡:ジャー・パンファン チェロ:諸岡由美子

 

 

久石譲 『風の盆』

1. 風の盆
2. 彷徨(ほうこう)
3. 邂逅(かいこう)
4. 風の盆・弐
5. 彷徨・弐
6. 追憶
7. 風の盆・参

All songs are written, arranged, produced by JOE HISAISHI

additional musicians
Erhu : JIA PENG FANG appears by the courtesy of PACIFIC MOON
Violoncello : YUMIKO MOROOKA

Recording & Mixing Engineer : SUMINOBU HAMADA (Wonder Station Inc.)
Assistant engineer : HIROYUKI AKITA (Wonder Station Inc.)
Mastering engineer : SHIGEKI FUJINO (Universal Music)
Recording & Mixing at WONDER STATION
Mastering at UNIVERSAL MUSIC

 

Info. 2002/11/20 [楽譜] 久石譲 「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」 発売

久石譲 オーケストラ となりのトトロ 楽譜

ついに待望のオリジナル・スコアが出版!
オーケストラのスコアとしては初出版!

既に発売されているCD「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」
(徳間ジャパ ン)のレコーディング後に、大幅に加筆・改訂しています。

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Score. 久石譲 「オーケストラストーリーズ となりのトトロ -オリジナル・スコア-」 [スコア]

2002年11月20日 発行

久石譲による完全オリジナルスコアです。

2002年東北と東京で開催された『久石譲シンフォニックスペシャル(金洪才:指揮/新日フィル)』で大反響を呼んだオーケストラ作品。そのオリジナルスコアです。久石譲・オーケストラ作品のオリジナル楽譜出版は今回が初めてです。映画「となりのトトロ」のストーリーの語りが含まれる8つの組曲。オーケストラの楽器紹介も盛り込まれていてとても楽しい構成です。

既に発売されているCD「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」のレコーディング後に、大幅に加筆・改訂しています。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

この組曲は、『となりのトトロ』の初めてのオーケストラ演奏版です。今まで僕のコンサートは、どちらかというと大人向けのスタンスでやって来たので、『トトロ』の曲を演奏したことはなかったんです。『トトロ』は誰でも分かるくらいキャッチーなメロディで出来ているので、コンサートで演奏してしまうと、一気に小さい子向けになってしまうんです。

随分前から、親と子のためのコンサートも開催してほしいという希望がたくさんあって、『トトロ』を作ってからだいぶ時間も経っているし、今だったら新たな気持ちでオーケストラに書き直せると思ったんです。どういう形態のものを作ろうかなと考えた時、頭に浮かんできたのは、ブリテンの『青少年のための管弦楽入門』とかプロコフィエフの『ピーターと狼』などの、ナレーション入りのオーケストラ作品でした。あのような、ある種啓蒙的な、今までにあまりオーケストラを聴いたことがない人に、オーケストラっていいなぁと教えてあげられるような作品を、『トトロ』で作りたい。そこから『トトロ』を素材とした、オーケストラ・ストーリーズという発想が生まれたんです。

僕自身、今でも元気がなくなった時は『トトロ』のビデオを観て、元気をもらっています。何度観ても、本当にすごい作品だと思います。だから、僕の作品として作る時も、中途半端なものは作れない。『トトロ』のフィルムやビデオと同じように、ずっと語り継がれるくらいのスタンダードな作品を作らなければいけない、自分の手を離れて、ファンの皆さんのものになってしまった楽曲なので、自分の一存で好き勝手にはいじれないな、というプレッシャーを感じながら作りました。

そもそも『トトロ』の音楽は、14年前のイメージソング集から始まりました。『風の谷のナウシカ』も『天空の城ラピュタ』も、サントラに取りかかる前にまず、イメージアルバムをインストゥルメンタルで作ったのですが、『トトロ』は歌でいこうと思って。宮崎監督もちょうど、児童文学者の中川李枝子さんとのコラボレーションを考えていて、イメージアルバムの作詞はお二人に担当していただきました。それが功を奏したと思います。どの曲も完結した親しみやすいメロディになっているんです。しかしその分、最初に作った時にインストゥルメンタルのシンフォニックという捉え方を全くしていないので、今回のオーケストラ版は、アレンジが大変でした。どの曲もシンプルなメロディで個性を出すという、簡単に見えて実は難しいことをやっているので。

フルオーケストラで100人近い人間が楽器を演奏しているぬくもりみたいなものを、『トトロ』の親しみやすいメロディとともに、感じ取っていただきたいですね。

尚、CDのレコーディングの後に、このオーケストラスコアの出版にあたり、大幅に加筆・改訂をしています。

久石譲

(スコア 寄稿より)

 

 

オーケストラ ストーリーズ
となりのトトロ
original edition

[収録曲]
さんぽ
五月の村
ススワタリ 〜 お母さん
トトロがいた!
風のとおり道
まいご
ネコバス
となりのトトロ

(ナレーション原稿付き)

 

菊倍判/112ページ
定価:2,800円+税
発行:株式会社全音楽譜出版社

 

 

◎音源は久石譲『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』に収録されています。

久石譲 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』

 

Disc. 久石譲 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』

久石譲 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』

2002年10月23日 CD発売 TKCA-72453
2021年11月27日 LP発売 TJJA-10043

 

1988年公開 スタジオジブリ作品 映画「となりのトトロ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

初めてオーケストラに接する子供達と大人達のために、久石が新たに編曲した「トトロ」の曲を、分かりやすく楽器を解説しながらオーケストラ演奏した作品。糸井重里によるナレーション・ヴァージョンと、「となりのトトロ組曲」を収録。録音は2002年5月。

 

 

『となりのトトロ』交響組曲

このCDは、『となりのトトロ』の初めてのオーケストラ演奏版です。僕のコンサートでは今までなぜか、『トトロ』の曲を演奏したことはなかったんです。だけど、ずいぶん前から、親と子のためのコンサートも開催してほしいという希望がたくさんあって、あれからだいぶ時間も経っているし、今だったら新たな気持ちでオーケストラに書き直せると思ったんです。じゃあ、どういう形態のものを作ろうかなと考えた時、頭に浮かんできたのは、ブリテンの『青少年のための管弦楽入門』とかプロコフィエフの『ピーターと狼』などの、ナレーション入りのオーケストラ作品でした。ああいう、ある種啓蒙的な、今まであまりオーケストラを聴いたことがない人に、オーケストラっていいなぁと感じられる作品を作りたい。そこから『トトロ』を素材とした、オーケストラストーリーズという発想が生まれたんです。

僕自身、今でも、元気がなくなった時は『トトロ』のビデオを観て、元気をもらっています。何度観ても、本当にすごい作品だと思います。だから、中途半端なものは作れない。『トトロ』のフィルムやビデオと同じように、ずっと語り継がれるくらいのスタンダードな作品を作らなければいけないというプレッシャーを感じました。

そもそも『トトロ』の音楽は、14年前のイメージソング集から始まりました。『風の谷のナウシカ』も『天空の城ラピュタ』も、サントラに取りかかる前にまず、イメージアルバムをインストゥルメンタルで作ったんですが、『トトロ』は歌でいこうと思って。宮崎監督もちょうど、児童文学者の中川李枝子さんとのコラボレーションを考えていて、イメージアルバムの作詞はお二人に担当していただきました。それが功を奏したと思うんです。最初に歌詞のついた歌う曲を作ったために、どの曲も完結した親しみやすいメロディになっています。その分、シンフォニックという捉え方は全くしていないので、今回のオーケストラ版は、アレンジが大変でした。どの曲もシンプルなメロディで個性を出すという、簡単に見えて実は難しいことをやっています。

今回の録音は、ホールレコーディングです。やっぱり、フルオーケストラの演奏で、2000人規模の広くて天井も高いホールで録音すると、非常に空気感を伴った音になる。100人近い人間が楽器を演奏しているぬくもりみたいなものを、『トトロ』の親しみやすいメロディとともに、感じ取っていただきたいですね。

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

CDブックレットには、ナレーション台本も収められている。

 

 

2021.11 update

liner notes 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』について/楽章解説 (前島秀国)所収

 

 

 

久石譲 『オーケストラシリーズ となりのトトロ』

「オーケストラストーリー となりのトトロ」 語り:糸井重里
1. さんぽ
2. 五月の村
3. ススワタリ~お母さん
4. トトロがいた!
5. 風のとおり道
6. まいご
7. ネコバス
8. となりのトトロ
「となりのトトロ組曲」 ※ナレーションなし・ヴァージョン
9. さんぽ
10. 五月の村
11. ススワタリ~お母さん
12. トトロがいた!
13. 風のとおり道
14. まいご
15. ネコバス
16. となりのトトロ

作曲・編曲・プロデュース:久石譲
ピアノ:久石譲
指揮:金洪才

原作:宮崎駿「となりのトトロ」より
ナレーション:糸井重里
脚本:宮崎至朗 久石譲
ナレーション・ディレクター:林和弘

演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
録音:すみだトリフォニーホール (2002年5月22日録音)

レコーディング・エンジニア:江崎友淑(オクタヴィア・レコード)
              浜田純伸(ワンダーステーション)
アシスタント・エンジニア:村松健(オクタヴィア・レコード)
             秋田裕之(ワンダーステーション)

監修・ジャケット画:宮崎駿

 

Orchestra Stories – My Neighbor Totoro

1.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – Hey Let’s Go
2.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – The Village in May
3.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – The Dust Bunnies – Mother
4.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – Totoro’s here!
5.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – The Path of the Wind
6.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – A Lost Child
7.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – Cat Bus
8.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – My Neighbor Totoro
9.”My Neighbor Totoro Symphony” Hey Let’s Go
10. “My Neighbor Totoro Symphony” The Village in May
11.”My Neighbor Totoro Symphony” The Dust Bunnies – Mother
12.”My Neighbor Totoro Symphony” Totoro’s here!
13.”My Neighbor Totoro Symphony” The Path of the Wind
14.”My Neighbor Totoro Symphony” A Lost Child
15.”My Neighbor Totoro Symphony” Cat Bus
16.”My Neighbor Totoro Symphony” My Neighbor Totoro

 

Disc. 久石譲 『Dolls オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『Dolls』

2002年10月2日 CD発売 UPCH-1191
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9010

 

2002年公開 映画「Dolls」
監督:北野武 音楽:久石譲 出演:菅野美穂 西島秀俊 他

 

北野武監督10作品目、久石譲が音楽を手がけた北野武映画7作目。そしてこの映画を最後に北野武と久石譲のタッグはない。

 

 

シンセサイザーの神秘的な響きとピアノを基調としたシンプルな構成。ほぼメロディといえるような旋律はないなかで、かくも絵画的な印象を与える世界。久石譲音楽のなかでも異色な作品といえるが、その完成度は素晴らしく、新しい境地を切り拓いたともいえる作品。

サウンドトラックとしても30分にも満たないが、まさに循環音楽、ずっとエンドレスで聴いていたくなる力がある。(1) (3) (5)は映画のメインテーマともいえるモチーフのバリエーション。そして(4)はピアノ・ソロで、美しすぎる名曲である。癒される、心が洗われる、涙がでる、心にしみる、それを超えた言葉として形容しがたい音楽が込められている。

主張がない映画と同じく、主張しない音楽を貫いているが、かといって印象に残らないわけではない、芯のある音楽。主張しない音楽が薄っぺらい安い音楽になっていないのは久石譲の巨匠たるゆえんだろう。

日本の四季を美しく表現した映画本編と同じく、この音楽にも日本の美、四季の美しさ、そして儚さがある。神秘的であり叙情的でありポエムのような音楽。絵画的な音楽ということは、起承転結がない。封じ込められた一瞬の世界、時間軸のない世界。だからこそその瞬間が永遠につづくのである。これこそがこの作品の極意といえる。

日本を象徴する風景が桜や紅葉とするならば、そのような美に共鳴する音楽こそがこの作品だろう。

 

 

久石譲 『Dolls』

1. 桜 – SAKURA –
2. 白 – PURE WHITE –
3. 捩 – MAD –
4. 感 – FEEL –
5. 人形 – DOLLS –

All Music Composed, Arranged, Produced and Performed by Joe Hisaishi

Recording Studio:Wonder Station

M-5:Asian Samples Courtesy of Spectrasonics “Heart of Asia”