Disc. V.A. 『魔女の宅急便 ヴォーカル編 カラオケ』

1990年6月25日 CD発売 TKCA-30099
1990年6月25日 CT発売 TKTA-20045

 

親子で歌えるヴォーカル・レッスン・カラオケ

 

映画『魔女の宅急便』の映画音楽に詩と歌をつけて収録したCD作品「魔女の宅急便 ヴォーカル・アルバム」の全9曲、そのカラオケ・バージョンである。

また同映画主題歌・挿入歌の「やさしさに包まれたなら」「ルージュの伝言」のカラオケ盤のみ本作品に追加収録されている。

 

 

 

 

魔女の宅急便 ヴォーカル編 カラオケ

1.ルージュの伝言
2.めぐる季節
3.何かをさがして
4.想い出がかけぬけてゆく
5.わたしのこころ
6.黄昏の迷い子たち
7.鳥になった私
8.好きなのに!
9.あこがれのまち
10.魔法のぬくもり
11.やさしさに包まれたなら

 

Disc. 久石譲 『ネットワーク・ベイビー』 *Unreleased

1990年5月1日 TV放送

 

NHKドラマ「ネットワーク・ベイビー」 (60分)

第17回放送文化基金賞奨励賞受賞作品。「純愛が時代のトレンドになる昨今、現代人は純な心に飢えている。金銭がらみのホンネとは異なり、もっと人間的に生きるための「純粋なもの」が、これほど必要とされている時代はない。このドラマは、純な心を取り戻すために、そして純な心を忘れないために、コンピューターを使った1人の母親の物語である。【この項、NHK広報資料より引用】」「ドラマに最先端のコンピュータ・テクノロジーを導入した新しいスタイルのドラマで新世代のファンタジーを鮮やかに描いている」(放送文化基金賞受賞理由より)。

 

演出:片岡敬司
原作:一色伸幸
脚本:一色伸幸
音楽:久石譲 (編曲: 片倉三起也)
制作:澁谷康生
主演:富田靖子

 

 

メインテーマふくめ、久石譲らしいメロディが聴かれるわけではない。どちらかというと実験的・前衛的な要素をくみとることができる。またこれは編曲が他者によるものからかもしれない。

本作品はVHS化され発売された(1991/2/21)が、サウンドトラック盤などは発売されておらず、また久石譲のどのCD作品にもリアレンジ含め収録されていない。

 

 

(VHS)

 

Disc. 久石譲 『となりのトトロ ハイテックシリーズ』

1990年1月25日 CD発売 TKCA-30014
1990年1月25日 CT発売 TKTA-20008
1996年11月21日 CD発売 TKCA-71029
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72727

 

1988年公開 スタジオジブリ作品 映画「となりのトトロ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

名サントラ音楽を新たな音楽アプローチで表現して来たアニメージュ・ハイテック。宮崎駿アニメ作品第4弾「となりのトトロ」。「ナウシカ」「ラピュタ」「魔女宅」と続いたシリーズの最終盤。

 

 

解説

アニメージュレーベル ハイテックシリーズ、宮崎駿監督作品第4作。「となりのトトロ」’88年春、劇場公開され、その年の日本映画賞を総ナメにした作品。これまでの作品とは違って日本を舞台とし、心暖まるふれあいを描いた田園ファンタジー。音楽の久石譲氏のサウンドものどかに暖かい仕上りとなっていた。

そのサントラの名曲を今、ワールドミュージックの発信地となっている、ヨーロッパエスノ、また、中近東、アジア、南米等の民族色を取り入れた(大きな意味でのエスノポップ)アプローチで試みたのが、このハイテックシリーズである。

この宮崎作品最終盤の「となりのトトロ」も、新たな響きで興味深く楽しめるものとなっている。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 『となりのトトロ ハイテックシリーズ』

1. となりのトトロ
2. さんぽ
3. まいご
4. すすわたり
5. ネコバス
6. 風のとおり道
7. 五月の村
8. おかあさん
9. 小さな写真

Produced by HIROYUKI KAMII
Arranged by KAZUO NOBUTA
Engineered by SHOICHI HARA, SATOSHI IKEDA
Designed by HIKARU KEBUKAWA
Production Co-ordinat by KAZUO SUDO, TADASHI YOSHIDA
Superviser by TOSHIO SUZUKI, TAKASHI WATANABE
All Songs Comporsed by JOE HISAISHI
Special Thanks TOSHIHIRO NAKANISHI Violin, HIROSHI NARUMI Guitar

 

Disc. 久石譲 『Sunny Shore』 *Unreleased

1990年 CM放送

 

日産 サニー CM音楽を久石譲が担当している。

音楽:久石譲「Sunny Shore」

 

1990年1月13日~
日産サニー B13サニー
「サニーの夢は、ひとつじゃない。」篇
「スモールの革命が、はじまった。」篇

Version.1
陣内孝則(出演)のアカペラではじまり、途中から小編成オーケストラによる伴奏が入る。前半は英語歌詞、後半はハミングである。

Version.2
陣内孝則(出演)ナレーションのバッグに、流れるようなしっとりとしたオーケストラバージョンとなっている。

Version.3
躍動的なオーケストラパーカッションに刻む弦楽、リズミカルに駆け抜けるなか、後半に壮大なメロディを奏でる。

 

全バージョンともに、ベースはシンセサイザー音源で作られている。

ちなみに、オリジナルアルバム『I am』に収録されている「Sunny Shore」と同一楽曲であるが、アレンジはすべてCMオリジナルバージョンになっている。

 

 

(CM映像より)

 

Disc. 久石譲 『(資生堂 不老林)CM音楽』 *Unreleased

1989年 CM放送

 

資生堂 「不老林シャンプー」

音楽:久石譲

 

オルガンの悠々とした旋律に、民族的な伴奏やシンセサイザーサウンド。神秘的な楽曲に仕上がっている。曲名不明。未音源化楽曲。

 

(CM映像より)

 

 

1989年 CM放送

資生堂「不老林ACTIVE」

音楽:久石譲

 

こちらは一転、ファンファーレやオープニングセレモニーのような高揚感ある楽曲。シンセサイザーによるブラスサウンドやドラムロールなどを聴くことができる。曲名不明。未音源化楽曲。

 

(CM映像より)

 

 

Disc. 久石譲 『釣りバカ日誌 ミュージック・ファイル Vol.1』

1994年12月21日 CD発売 VPCD-81079

 

1989年公開 映画「釣りバカ日誌 2」
監督:栗山富夫 音楽:久石譲 出演:西田敏行 三國連太郎 他

 

松竹創業100年記念
松竹映画サウンドメモリアル

人気シリーズの音楽がついにCDになった!
栗山富夫監督作品「釣りバカ日誌〈第1作〉」「釣りバカ日誌2」
音楽:三木敏悟 久石譲
全17タイトル39曲収録

 

 

本シリーズについて

弊社の「ミュージックファイルシリーズ」では、これまでにテレビドラマを核として作品の放映当時のオリジナル音源をCD化してまいりました。そしてこの度、松竹創業100年を記念して、松竹株式会社の御協力によって新たな柱となるシリーズがスタートします。その名も「松竹映画サウンドメモリアル」。松竹作品の膨大な音源の中から、名作や人気シリーズ、時には最新作を含めて、リリースする所存です。ミュージックファイルシリーズでは1作品をCD1枚で発売するというのが基本方針ですが、「松竹サウンドメモリアル」はジャンル別のオムニバスという形もあることを申し添えておきましょう。サントラというとどうしても洋画のヒット作にスポットが当たってしまうのが現状ですが、日本にも耳に心地良い素晴らしい映画音楽がたくさんあります。その数々を、特にアナログ時代を通じて、サントラ盤が発売されておらず長年待たせていたものを中心に御紹介していくと共に”邦画サントラの逆襲”となるシリーズを目指して取り組みます。ミュージックファイルシリーズの新企画を今まで同様、ご支援ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

(CDライナーノーツより)

 

 

ミュージックファイルシリーズについて

「ミュージックファイルシリーズ」をお買い上げ頂き誠にありがとうございます。このシリーズは、一部を除いてレコードやCDとして発売されることのなかった作品また、サントラがリリースされてもその盤には収録されてなかった、テレビ作品のオリジナルBGM(劇伴)を当時のマスターテープからCD化したものです。

この「ミュージックファイルシリーズ」も皆様の支持のおかげで「伝説のアクションドラマ音楽全集」から「思い出の青春ドラマ音楽全集」「懐かしのテレビまんがBGMコレクション」へさらに”遊戯シリーズ”等の劇場作品へと拡がり、発売タイトル数も40アイテムを数えました。

作品選択は、放映当時に主題歌しかリリースされなかったもの、また、サントラ・アルバムが作られてもその収録曲の殆どが”ヴォーカル曲”だった作品を中心にピックアップしました。このCDに収録されている楽曲の多くはもともとレコード化を目的としてつくられたものではない”TV用”の曲であるため、モノラル録音のものであったり、古い音源はあまり音質のよくないものもありますが、このオリジナル音楽こそ、それぞれの作品のファンである皆さんの感性に強く訴えるパワーが、作品本編同様にあると思います。

どの作品のBGMも、このような機会がなければきっとどこかの録音作業室や倉庫に眠ったまま埋もれていたかもしれませんし、テープそのものが破棄されてしまうこともあったでしょう。どの曲も埋もれたままではもったいない名曲ばかり。このシリーズを並べれば、日本のテレビ音楽史の一端を垣間見ることができる、貴重なライブラリーになりつつあると自負しております。

それぞれの作品をこよなく愛するファンの皆さんにとって、いつまでもこのCDが宝物であってくれるよう願ってやみません。最後になりましたが、このシリーズの趣旨をご理解頂き、音源の発掘、提供に御協力を頂きました関係者の皆様に感謝いたします。今後ともよろしくご支援をお願いいたします。

高島幹雄

(CDライナーノーツより)

 

 

解説

「釣りバカ日誌」
音楽はテナー奏者でもある三木敏悟。本編のプロローグを飾るスリリングな曲調のもの等、ジャズを基調にしたスイングする音楽が作品の世界をより豊かなものにしている。本CDでは映画のために三木敏悟が書き下ろしたオリジナル楽曲にバダジェフスカ作曲「乙女の祈り」をアレンジしたものも混じえて使用順に配列している。

「釣りバカ日誌2」
2作目の音楽を手懸けたのは久石譲。久石氏の持つ、幻想的かつ暖かいサウンドがハマちゃん、スーさんとその周辺の人々を包みこむように鳴り響いていく。本CDでは、映画本編での使用順に配列した形で構成した。音楽で綴る「釣りバカ日誌」の世界を御堪能頂きたい。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

 

映画「釣りバカ日誌」シリーズにおいて、久石譲が音楽担当したのは第2作目のみである。が、同企画CD「釣りバカ日誌 ミュージックファイル Vol.2」(3,4,Sの3作品)の収録楽曲のなかに、1曲だけ久石譲が手がけた楽曲が収録されている。「鈴木建設社歌」(作曲・編曲:久石譲)である。

シリーズ作品ごとに音楽担当の作曲家が異なる映画「釣りバカ日誌」において、シリーズをまたいで使用されている楽曲ということゆえだと思われる。

 

 

 

〈映画「釣りバカ日誌」 音楽:三木敏悟〉
1.プロローグ~「釣りバカ日誌」メインテーマ 1)リテークM1 2)M2
2.ハマちゃんとみち子さん〈「乙女の祈り」アレンジ〉 1)G-1 2)G-2
3.ハマちゃんのメモ~東京湾 1)M5 2)M6 3) M7
4.浜崎家の一夜 1)M8 2)G-3〈「乙女の祈り」アレンジ〉
5.スーさんの驚き 1)M9 2)M11
6.スーさん、キスを釣る~みち子さんとスーさん 1)M13 2)リテークM14 3)M15
7.スーさん、身分を明かす 1)リテークM16B 2)M17
8.Sometime Will Be Together(「釣りバカ日誌」エンディング) 1)M19

〈映画「釣りバカ日誌 2」 音楽:久石譲〉
9.プロローグ 1)M1 2)M2
10.「釣りバカ日誌2」メインテーマ 1)M2A
11.佐々木課長のテーマ~ハマちゃんの課長談義 1)M4 2)M5 3)M6
12.ハマちゃん家の夜 1)M8 2)M9 3)M10
13.スーさん一人旅~弥生との出会い 1)M11 2)M12 3)M13 4)M14
14.伊良湖岬のハマちゃんとスーさん~ハマちゃんが免職!? 1)M15 2)M16 3)M17
15.弥生とスーさんの再会~ハマちゃん不倫疑惑 1)M18T4 2)M19 3)M19A 4)M20
16.弥生との別れ 1)M21
17.大団円 1)M22

※曲タイトル横の記号は音楽のミュージックナンバーです

 

Disc. 久石譲 『魔女の宅急便 ハイテックシリーズ』

久石譲 『魔女の宅急便 ハイテックシリーズ』

1989年12月21日 CD発売 30ATC-189
1989年12月21日 CT発売 26AGC-2072
1996年11月21日 CD発売 TKCA-71033
2004年9月29日 CD発売 TKCA-72743

 

1989年公開 スタジオジブリ作品 映画「魔女の宅急便」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

「魔女の宅急便 イメージアルバム」の中の曲を、新たな試みで表現、シンセサイザー・アレンジされた企画アルバム。一部、生音での楽器もあり、中村俊博(ヴァイオリン)がSpecial Thanksとしてクレジットされている。

ニューエイジミュージック、エスノポップ感覚で仕上げてある。フュージョン風、エスニック風、アンビエント系など、原曲とはひとあじ違った感覚で、新しい音楽世界を楽しむことができる。日常生活のBGMとしても、ヨーロッパを旅行した気分にもさせてくれる。

 

 

 

久石譲 『魔女の宅急便 ハイテックシリーズ』

1. かあさんのホウキ
2. 渚のデイト
3. パン屋さんの窓
4. リリーとジジ
5. 町の夜
6. 風の丘
7. ナンパ通り
8. 元気になれそう
9. 世界って広いわ

作曲:久石譲 編曲:加藤道明

Produced by HIROYUKI KAMII
Arranged by MICHIAKI KATO
Engineered by SATOSHI IKEDA
Designed by HIKARU KEBUKAWA
Production Co-ordinat by KAZUO SUDO, TADASHI YOSHIDA
Superviser by TOSHIO SUZUKI, TAKASHI WATANABE
All Songs Comporsed by JOE HISAISHI
Special Thanks TOSHIHIRO NAKANISHI violin

 

Disc. 久石譲 『宮崎駿アニメBOX』

1989年12月21日 CD発売 TKCA-30004

 

宮崎駿監督作品BEST!
音楽:久石譲

「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」のBEST CDとキャラクターGoodsの盛り合せBOX!

CD…4作品のBEST選曲

キャラクターGoods(特製カレンダー、ポスト・カード、ドア・ノブ、ハンガー、しおり)

 

 

 

 

1.風の谷のナウシカ
2.空から降ってきた少女
3.五月の村
4.晴れた日に
5.風の丘
6.風のとおり道
7.大樹
8.鳥の人
9.はるかな地へ
10.君をのせて
11.となりのトトロ
12.さんぽ
13.神秘なる絵
14.スラッグ渓谷の朝
15.風の伝説
16.おかあさんのホウキ

音楽:久石譲

 

Score. 『久石譲 PRETENDER / プリテンダー + ベスト』

1989年12月20日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム『PRETENDER』のマッチング・ピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

本楽譜「プリテンダー」に掲載収録されている久石譲インタビューや、久石譲自身による楽曲解説をご紹介します。

 

 

「ピアノ弾き語り 久石譲/プリテンダー +BEST」 監修:久石譲 ドレミ楽譜出版社

INTERVIEW

とにかく活動範囲が広い!!
アーティストとしてはもちろんコンポーザー、アレンジャー、映像(映画、CF等)、舞台音楽等の活動を通して、次々と「MUSIC」を創り上げ、しかもワールド・ワイドな視野に立って活動を続けている久石譲氏。

その久石譲氏に当てた「公開質問状」のチャンスが編集部にまいこんだのだ。さっそく飯倉誠人氏との協議のものと、公開質問状を作成し、久石譲氏にアタック!

それでは忙しい中、久石譲氏が公開質問状に答えてくれた全文をご紹介しましょう。

 

Q.幼年期から少年期(中学~高校時代)にどのように「音楽」に出逢い、どのようなジャンルに興味を持ち始めましたか?

久石:
4歳の時に、ヴァイオリン(鈴木慎一ヴァイオリン教室)を始めたのがキッカケです。童謡からクラシック、歌謡曲等、小さい頃は、ラジオからオンエアされるあらゆるジャンルの「音楽」に興味を持っていました。

小さい頃は「ある一定のジャンルに興味を持つ」ということはなく、どちらかと言うと、自分でラジオから流れていたものを聴き覚えて、歌ったり、気に入った演奏があったらその同じメロディをピアノで奏でてみたり、とかそんなようなことが多かったです。

幼年期から少年期にかけて、一番影響があったものは「映画」だと思います。父も大好きで、小さい私をよく映画館に連れてってくれました。本当にたくさんの映画を見ましたね。この頃に見た映画が後々、いろいろな意味で影響を与えたと思います。

 

Q.大学時代(国立音楽大学作曲科)に興味を持ち始めたという、”テリー・ライリー”、”スティーヴ・ライヒ”、”ジョン・ケージ”等の「ミニマル・ミュージック」との出逢いは? それから発展した当時の「現代音楽」のコンサート活動やレコーディングの状況を教えて下さい。

久石:
大学2年の終わりぐらいに、テリー・ライリーの『レインボウ・イン・カーブド・ミュージック』に出逢ってショックを受け、これが「現代音楽」なのか、と衝撃的でした。それまでは、「クラスター」や「12音技法」等のいわゆる現代音楽の語法の中で、自分もいろいろと考えていたので、こういった音楽があるということに対して、大変ショクを受けました。

それから、かなり悩んで、悩んだあげく自分も「ミニマル・ミュージック」のスタイルを取り入れるようになりました。このスタイルを自分に取り入れ、消化して自分の中で変化するまでに、2年間かかりました。

「現代音楽」のレコーディングは皆無に等しかったですね。なぜって? レコードになっても売れなかったし、誰もレコーディングしてくれなかったからね。むしろ、コンサート活動の方が多かったです(「四名館コンサート」、「西武美術館コンサート」等のコンサートを行う)。

極端な話、「椅子をバタンとひっくりかえして音(音楽を作り上げる)を出す」ような「現代音楽」の中でも最前衛的なものだったから、コンサートをやる度に、客席はまばらで、親類縁者しかいなくて……、こんな事が記憶に残っていますね。

 

Q.ミニマル・ミュージックに興味を持っていた当時、英米のロック・ミュージシャンやジャズ、クラシック等のアーティストで興味を持っていた人はいましたか? 例えば、ロキシー・ミュージックにいたブライアン・イーノがソロ活動に入った時期の作品に対してどのような感じを受けましたでしょうか?

久石:
ブライアン・イーノには興味がありましたね。どちらかというと、僕がミニマル・ミュージックの方向からシンセサイザー等を取り入れて、パターン・ミュージック(反復の音楽)を始めた頃、ブライアンは、ロキシー・ミュージックを通って、ロックの方向からのアプローチでミニマル・ミュージックの活動に入って来たんですね。

気づいて見るとブライアン・イーノがやろうとしていたフィールドと、自分が現代音楽を通ってアプローチしようとしたフィールドが非常に近かったといえると思います。その頃からクラシックの領域である「現代音楽」のフィールドだけでやることが、無意味なのではないかと思い始めた訳なんです。

自分は「ポップス」という、より広い領域でやった方が自分の活動に合うのではないかと思って……。「現代音楽」をやめたというのも、そのような経緯があった訳です。

 

Q.久石譲氏にとって「ピアノ」という楽器は自分の中でどのような位置づけにあるのでしょう?例えば、アーティスト、コンポーザーとしての自分ではなく、もっと根本的な「個人」に戻るものなのでしょうか?

久石:
正直いってピアノは、復習(さら)わなければならないのであまり好きではなかったのですが、特に近年(ここ1~2年)、「ピアノ」という楽器が自分にとっても「作曲する為の道具としてのピアノ」ではなく「表現としてのピアノ」ということで、自分の中での比重がとても増えています。同時にとても好きだし、ピアノの乾いた硬質なサウンドに今もっとも興味があります。

根本的な「個人」に戻るものなのかどうか? ということに関して、答えを出すことは大変むずかしいことですが、但し、「対話」する楽器として、一番近いものは、今の自分にとって「ピアノ」ですね。

 

Q.「映像」と「音楽」の関係について、まず初めに、今まで作り上げてきた数々の「映像」と「音楽」の作品の中で、想い出深いものはどの作品でしょうか?

久石:
「想い出深い」という意味でいうと、薬師丸ひろ子主演の映画『Wの悲劇』と宮崎駿監督のアニメーション映画『風の谷のナウシカ』ですね。特にこの2作品が想い出深いものがあります。

 

Q.「映像」に音楽を作り上げるときに苦労する事や大切な心がまえを教えてください。

久石:
ひとことで言うのは、大変難しいけれど、強いて言えば映像に付随する音楽を作るのではなくあくまで「映像」と「対等にある音楽」を創り上げることを心がけています。

「映像」の従属物であるというものではなく、あくまで「対等」の主張をするということに力点をいつも置いています。

 

Q.作曲する場合、「映像」からのインスピレーションや「映像」とミスマッチ(異質なもの)な音楽をつけて、逆効果を上げる等、「映像」と「音楽」の関係について、常日頃思っていることや、感じていることがあれば教えてください。

久石:
「どのような作曲方法を取るか?」ということは、その時々の条件によっても違って来るのでケース・バイ・ケースですね。但し、僕の場合、特に映画の場合は「台本」がもっとも大切です。台本を読んだ段階で60%か70%ぐらい、どのような「音楽」にするかを決めます。

映画全体の流れを知るために、ラッシュのフィルムを見に行く場合、その映画の監督のテンポ感、編集や画面処理のテンポ感を見にいくことが一番多いです。それによってもまた違うアイディアやヒントが出てくるし……。

 

Q.井上陽水、中島みゆき等を始め、幅広いジャンルで数々のアーティストにアレンジを提供している中で、常に心がけていることがありましたら教えてください。

久石:
別にありませんね。今はアレンジの仕事もやってないし、興味がないし……。僕の場合、「フュージョン風」だ、「何々風」だ、というタイプのアレンジはやらないし、基本的には井上陽水さんのアレンジをしても、中島みゆきさんのアレンジをしても、そのアーティスト自身が変身したい時に、僕のところにアレンジの依頼が来るので、僕自身の音楽のスタイルはまったく変えないでアレンジの提供をしているので、特に心がけていることはないですね。

 

Q.初めて使ったシンセは何ですか?

久石:
ローランドのSH-5です。

 

Q.「音色」を作り出す場合、ヒントとなるものはなんでしょうか? 例えば、曲のイメージ、音色そのもののイメージ、映像のイメージ……?

久石:
「音色」を作り出す場合、もちろん曲のイメージもあれば、いろいろなイメージがあるのでひとことではいい現せませんね。やはり、ケース・バイ・ケースです。

 

Q.「フェアライト」を使い出したキッカケは、いつ頃で、どうして使い始めたのかを教えてください。

久石:
フェアライトを使い始めたのは『風の谷のナウシカ』の時でした。ギタリストでコンポーザーの矢島さんのスタジオにフェアライトがあるということで、どんな楽器なんだろうと思って使いに行ったのが最初ですね。使ってみて、これは凄い! とショックを受けました。これは何としても自分の物にしたいと、自分のスタジオにフェアライトを購入するまでにいたったのです。

フェアライトの利点をひとことで説明することは難しいけど、魅力あるマシンですね。

 

Q.ニュー・アルバム『プリテンダー』のコンセプトの「原点」に戻る……ということについて、くわしく教えてください。

久石:
今回のコンセプトである「原点」に戻るということは、いわゆる本当の根本的な「原点」に戻るということではなく、自分が今ままでやってきた事で、例えば、『α-Bet-City』というアルバムをニューヨークでレコーディングした時、「フェアライトをこれだけ使うのはZTTかHisaishiだけだな」みたいな感じで、レコーディングしている最中にA&Mレコードやセルロイドから引き合いがきたり、自分が今までやってきた「インストゥルメンタル」、「音楽」、「世界レヴェルで通じるもの」を今回徹底して作ってみたいと思っていました。ヴォーカルものは英語詞で歌ったり、歌ってもらったし……。日本語だとどうしてもローカルになってしまうしね。「世界のフィールドで自分がどれだけ通用するか?」ということが一番根底にあったし、それがいわゆる「原点」ですね。

 

Q.海外のアーティストやミキサーと一緒に作り上げた今回のレコーディングのエピソード等がありましたら教えてください。

久石:
今回のレコーディングに参加してくれたミュージシャンを始め、ミキサーや各スタッフ達が日本発売とは思ってなくて、当然、世界発売……すくなくとも自分達の国の音楽だと思って、レコーディングに参加してくれたことが非常に嬉しかったことですね。

例えば、どのチャートを狙うのか、日本国内のチャートではなく、全米のブラコンやディスコ・チャートなのか、ポップス・チャートなのか。「どのチャートを狙うんだ」と、僕のところに親身になっていろいろと相談してくれて、「ブラコンやディスコ・チャートを狙うんだったら、良いミキサーを紹介するよ」って、いろいろ助言してくれたことが印象に残っています。

 

Q.国内とは違う環境でのレコーディングで何か変化や影響がありましたか? また、共演したアーティストやミキサーから触発されたものがありましたでしょうか?

久石:
一番は電話がかかってこないということですね。ふたつ目は、集中して音楽を創り上げられるということです。

基本的には国内でレコーディングしても同じだと思ってました。「海外でレコーディングをする」という意味は例えば、「海外でレコーディングした」ということは、もうアルバム・セールスにおいて「売りになる時代」にはならないし、それだけでインパクトがあるとも思っていないので、重要なファクターではないと思ってます。

今年(1989年)の3月にニューヨークに行って調べたミュージシャンやミキサーと知り合って、例えば、ドラムのノリ等の細かい点で、国内のドラマーが参加すると「こうなってしまう」とか、ある程度先が見えてしまう……海外のアーティストの場合、あるミュージシャンに参加してもらうと、その細かいリズムのノリや仕上がり具合がわかる。そういう意味では、海外でのレコーディングは必然的であったということだと思います。

根本的には海外でレコーディングしたから、今回のアルバムが出来たという気持ちはないけれど、それなりの+αはあったという感じはしています。

 

Q.『プリテンダー』で使用した主要なキーボード系、デジタル系(リズム・マシン、サンプラー、エフェクター等)の楽器を教えてください。

久石:
今回のアルバムでは、ほとんど生の楽器を多様しているし、生リズムで録ったのでシンセサイザーの使用頻度は少なめですが、使用した楽器はフェアライトIII、カーツェルやジュノー、DX7、S1000等の通常使用しているものです。

レコーディングに入る前にフェアライトIIIに全部のパートを打ち込んでおいて、本番ではそれを生の楽器に差し替えて録音しました。実際、レコードに収録されているフェアライトIIIの音や使用頻度は、全体の2~3割程度ですね。

曲のスケッチ段階で、ドラム・パートやベース・パート等すべてを打ち込んでおいて、それは、アルバムで聴けるフレーズや曲の感じの差はあまり変わってないということは、今回のフェアライトIIIの役目としては「縁の下の力持ち」になったということになります。

 

Q.最後に読者に対してコメントをお願いします。

久石:
今回の『プリテンダー』は、自分にとっても非常に大切なアルバムに仕上がりました。「日本」という独特な土壌の中で、日本の人々に受ける(日本人に受けるという言い方も変だけど)、つまり「国内向けに日本的なものを創る」というのではなくもっと乾いた「ウェットな部分ではない部分」を出したいというのがあって、そういう意味でいうと自分なりに納得するアルバム、「洋盤として納得するアルバム」に仕上がったと思ってます。

「聴き手」と「作者としての自分」の関係が「ベタベタ」したものではなく、むしろお互いに「対等」にあるような関係があって、自分の中ではとてもおもしろいチャレンジが出来たし、非常に納得したという部分があるので、その辺を感じながら聴いてもらえるとありがたいと思います。同時に、音楽的にもかなり高度な部分と、それを分かり易く噛み砕いてやている部分とがあるので、その辺がわかっていただけると幸いだし、また、本書を利用して演奏していただけると嬉しいと思います。

(「ピアノ弾き語り 久石譲/プリテンダー +BEST」 インタビューより)

※インタビュー内に文脈に難ありな箇所もあるがあくまでもそのままにしている。

 

 

【楽曲解説】 Music Commentary by Joe Hisaishi

Meet Me Tonight
この曲は古き良きアメリカ、或いはビートルズ・エイジの人々が非常に懐かしく感じるようなメロディ・ラインを意識して作りました。

都会というよりは、田舎のハイスクールの学生が彼女のことを思うというような、ノスタルジックな暖かさを含んだ楽曲です。ニューヨークでレコーディングをしている時にも、ミュージシャンが思わず口ずさんでしまうという感じで、自分達の国の音楽として受け入れられた曲です。サビのコーラスの部分が特に自分でも気に入っています。

 

True Somebody
これはブリティッシュ・ロック系の曲を意図して作った楽曲ですが、ベーシックなリズム・ラインにはモータウンのリズムを取り入れました。ヴォーカルに黒人のヴォーカリスト(N.David “Tigger” Whitworth)を起用しており、世界的なマーケットでも通用するような曲に仕上がっていると思います。

 

Wonder City
この楽曲は、7~8年前にリリースした僕のソロ・アルバムの中に収められていたものです。当時、自分でも納得いかなかった部分もありましたが、今回の再度のチャレンジでかなり納得のいく仕上がりとなりました。自分でも、とっても気に入っている曲です。今年(1989年)の2月に行ったコンサートでもこの曲は非常に評判が良かった曲です。

 

Maria
これはシングル用に作った楽曲で、バラードの路線を狙って作りました。僕の音楽の特徴は、メロディ・ラインが非常に器楽的だということがありますが、それを強調してみようということで、音域の広い曲になっています。『秋の夕日が落ちていく海辺……』そんなイメージ。

 

All Day Pretender
このアルバムのタイトル『PRETENDER』が象徴するように、この曲が全体のコンセプト曲になっています。「いつも”ふり”をしている人」という意味をもったこの曲は、出だしの”モード”っぽいところからサビにいくまで、自分の中でも非常に納得した仕上がりになっています。ある意味では自分の原点的な楽曲といえます。

 

Manhattan Story
これは、古い新しいということではなく、スタンダードできちんとしたメロディを書きたいと思って書いたものです。都会派のメロディ・ラインを意識して作りました。

 

Holly’s Island
この曲は、「東洋的なメロディ・ラインとラテン的なサウンドをドッキングさせたらどうなるか?」ということを考えて作った楽曲です。アイランド的といいますか、非常にほのぼのとした感じが出ているので、自分でもとても好きな曲です。タイトルの”Holly’s”というのは、ドラマーのスティーヴ・ホリーと、「Holly Night(聖なる夜)」からきています。

 

Midnight Cruising
これはインストゥルメンタルの曲で、メロディも非常にクールなハードボイルド・タッチを意識して作った楽曲です。曲の中間部では、ジャズ・ワルツのような部分もあって、演奏面からいっても非常に難しいものなのですが、共演のミュージシャン達もノリにノッて素晴らしい演奏をしてくれました。

 

View of Silence
これはピアノとストリングス(ニューヨーク・フィルのメンバーとの共演)の楽曲です。

アルバム『Piano Stories』以来、ピアニストとしての僕は、前作品の『illusion』に引き続き、必ず最後にピアノの作品を入れていこうという意図で作った楽曲です。いわゆる映画音楽をひくるめて作ってきた、「僕なりのメロディ」というものの延長線上にあるものです。

今回はストリングス・セクションもニューヨークで録るということで、特に力を入れてアレンジをしました。「内なる情熱」というようなエモーショナルな部分が引き出せたと思います。

(【楽曲解説】 「ピアノ弾き語り 久石譲/プリテンダー +BEST」楽譜より)

 

 

プリテンダー 楽譜

ピアノ弾き語り
久石譲/『プリテンダ』+ベスト

from album 『PRETENDER』
Meet Me Tonight
True Somebody
Wonder City
Maria
All Day Pretender
Manhattan Story
Holly’s Island
Midnight Cruising
View of Silence

from album 『illusion』
Night City
Zin-Zin
8 1/2の風景画
風のHighway
冬の旅人
ブレードランナーの彷徨
L’etranger(レトランジェ)
少年の日の夕暮れ

 

監修:久石譲
編曲・採譜・解説:金子浩介
定価:1,600円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Disc. 佐田玲子 『ひとり歩き』

1989年12月1日 CD発売 CSCL-1053

 

久石譲が編曲を担当した2楽曲「くらやみ乙女」「雨のモノローグ」が収録されている。なお、それぞれのシンセサイザー使用機材は下記のとおり。

 

「くらやみ乙女」
Prophet 5, Prophet T8, MKS-20, Matrix-12, S1000HD, M1R

「雨のモノローグ」
Fairlight III, Prophet 5 , DX7 II, DX 7

 

 

ソロデビューシングル

1989年11月22日 CDS発売 CSDL-3030
1989年11月22日 カセット発売 CSSL-3030

1.くらやみ乙女
作詩・作曲:中島みゆき 編曲:久石譲
2.シンデレラ ヴァージン
作詩・作曲:稲葉喜美子 編曲:服部隆之

(CDジャケット)

 

(カセット)

 

 

 

佐田玲子 ひとり歩き 久石譲

1.くらやみ乙女
作詩・作曲:中島みゆき 編曲:久石譲
2.初恋
作詩・作曲:さだまさし 編曲:安田裕美
3.Please Stop Rainny Days
作詩:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:渡辺俊幸
4.破
作詩・作曲:さだまさし 編曲:渡辺俊幸
5.風と少年
作詩・作曲:五輪真弓 編曲:渡辺俊幸
6.シンデレラ ヴァージン
作詩・作曲:稲葉喜美子 編曲:服部隆之
7.雨のモノローグ
作詩・作曲:佐田玲子 編曲:久石譲
8.心に灯が
作詩・作曲:五輪真弓 編曲:服部隆之
9.間奏曲のあとで
作詩:来生えつこ 作曲:来生たかお 編曲:安田裕美
10.ひまわり
作詩・作曲:さだまさし 編曲:服部隆之