Score. 久石譲 「弦楽四重奏曲集 カルテット -オリジナル・スコア-」 [弦楽四重奏]

待望の完全オリジナル・スコア。オリジナルならではのプラスαが随所に盛り込まれています。演奏する方も、そうでない方もファンなら絶対持っていたい1冊です。久石譲の楽曲メモ&メインテーマの久石譲直筆スコア、撮影メモを一挙掲載。

今日の日本映画を代表する音楽監督である久石譲がついに映画監督に挑戦した。タイトルは「Quartet カルテット」。弦楽四重奏団を組んだ4人の若者の挫折と再起、愛と友情を描くさわやかな青春ドラマである。本書は、映画の中で主人公たちが演奏する曲のオリジナル楽譜集。メインテーマ「Quartet g-moll」を含む弦楽四重奏作品5曲に加え、ヴァイオリン・ソロ作品1曲を収めた。映画撮影用絵コンテが書き込まれた久石譲の自筆譜も所載。ファン必携。

 

 

究極のスタイル
久石譲

弦楽四重奏は無駄をすべて削ぎ落とした究極の形態であると思う。重音(じゅうおん)奏法があるとはいえ、基本的には4つの楽器で奏でる、というところから非常にシンプルで、かつ作曲家の技量をもっとも問われるスタイルである、というのがカルテットだと思う。

作曲家にとって、弦楽四重奏とは何か。まず、作曲家が勉強をはじめたときには、皆”和声学”という学問から入る。どうやって和音というものが出来るのかという和声学の形態は、基本的にはソプラノ・アルト・テノール・バスという4つの声部から成る4声体を基準に音楽を作る。

弦楽四重奏もまた、同じ形式である。作曲家にとっては、最初に学ぶ4声体から始まり、4声体で終わる、といえるほど究極の形態がカルテット、弦楽四重奏であると思う。

たとえば、ベートーヴェンもある時期、スタイルを少しずつ変えていくが、まず新しい試みをピアノ・ソナタで作曲する、そして次にそれを発展させて、オーケストラ曲いわゆるシンフォニーに拡大して、その時期の自分のスタイルを確立し、そして最後に必ず弦楽四重奏曲を書いている。ピアノでまずチャレンジし、オケで拡大、最後にカルテットでその時期をまとめる、という繰り返しによって、自分の音楽のアプローチというものに、必ず区切りをつけていっている。

そのくらいベートーヴェンにとっても弦楽四重奏というものは、非常に重い存在で、あくまでも無駄のない形態の中で、自分のスタイルを結晶させていった。

したがって、作曲家にとって弦楽四重奏に最後に行き着くことは、それが無駄を削ぎ落とした本当のエッセンスのような究極の形態であるから、という気がする。

 

カルテットというのはある時期から、いわゆる”現代音楽”としての世界観というものはあるのだけれども、広く一般の人に聴いてもらう音楽を、作曲家がup to dateで、今日的に書かなくなってしまった。そのような状況もあり、今回のオリジナル・スコア出版により、できるだけ多くの人に演奏してもらいたいと考えている。

演奏するにあたっての注意点としては、やはりリズムでしょうね。各楽曲によって、細かい注意点は異なるが、トータルで言うと、リズムと音色。自分たちの持っている音色と楽曲が要求する音色をきちんと弾きわけられると、より良くなるのではないかと思う。

 

1.Quartet g-moll
ぎりぎりの調性のところで、調性がはっきりする前にどんどんキーを変えていったり、あるいは全く無調の部分があったり、という楽曲であることから、まず音程、自分たちは何の調を弾いているのか、その辺りをしっかり頭に入れながら弾く、そして中間部の激しい部分も含めて、リズムをきっちりと、ジャストなビート感をまず体に入れてから練習すると、すごく良くなるのではないかと思う。

この楽曲は、覚えやすく、またテンションが高まるようなメロディを作りつつ、高度なカルテットの技法にのっとって、より複雑さを出していっている。たとえば白鳥のように、表面では優雅だが裏(水中)ではそうではないといったところだろうか。…それは表には決して見えない、というように。映画では、父が息子に贈ったというシーンで、親が子を想う感じを出している。

 

2.Black Wall
映画の中では、”マレーヴィッチ・ウォルハイム”という著名な作曲家の有名な楽曲、という設定。(因みに、この作曲家の名前は、美術の分野でのミニマル作家の名前を組み合わせた。)

不協和音を使用するのは映画音楽としてはタブーなのかもしれないが、何かぴりっとした感じが欲しかった。

 

3.Student Quartet
映画では、モーツァルトの有名なディヴェルティメントでいく予定だったが、自分の楽曲以外はどうかと思ったことと、映像には合わないと感じた。

ディヴェルティメントを意識して、誰もが”青春”っぽく感じる、イタリアン・メロディラインらしい楽曲に仕上げた。

 

4.Melody Road
『となりのトトロ』『HANA-BI』『Kids Return』を基本にしたサービス的楽曲。映画で、全曲新曲が流れていても楽しくないし、久石の楽曲が好きな人であればとても馴染み深いと思ったので。映画の中では思わず子供たちが振り向くところの音楽で、変化していく気持ちも表している。

 

5.浜辺のQuartet
メインテーマのアレンジである。主人公の明夫と智子の恋愛感情を、音で表現したロマンティックな楽曲。

 

6.パッサカリア
オーディションのシーンで、主人公・明夫が演奏する楽曲。パガニーニのカプリース24番をベースに作曲した。パガニーニに捧げるオマージュ、といったところだろうか。

(楽譜 寄稿より)

 

 

 

弦楽四重奏曲集 カルテット
JOE HISAISHI QUARTET

久石譲 カルテット オリジナルスコア

[収録曲]
Quartet g-moll
Black Wall
Student Quartet
Melody Road
浜辺のカルテット
パッサカリア

A4版
発行:全音楽譜出版社
スコア60ページ+パート譜(第一ヴァイオリン・第二ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)各16ページ

[参考CD/DVD]

QUARTET カルテット 久石譲 「Quartet カルテット オリジナル・サウンドトラック」

カルテット DVD 映画 「Quartet カルテット」

 

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