報告編:「ワールド・ドリーム・オーケストラ」全国ツアー終了

連載 久石譲が挑む「ハウル」の動く音 (読売新聞)
報告編:「ワールド・ドリーム・オーケストラ」全国ツアー終了

作曲家でピアニストの久石譲が、新日本フィルハーモニー交響楽団と組んだポップス・オーケストラ「ワールド・ドリーム・オーケストラ」が8月1日、大阪・中央区の大阪城西の丸庭園で野外コンサートを開き、全国ツアーが終了した。ツアーは、7月19日の宮城・仙台市での公演を皮切りに、全国8か所で行われた。

久石は指揮とピアノで登場。最終日ということで特別メニューを組み、「HANA−BI」「スター・ウォーズ」「007ラプソディー」といった映画音楽を約100人のオーケストラで聴かせた。

一昨年ごろから互いに「何か一緒に続けてやろう」と盛り上がり、ジャンルを超えて楽しめる新しいオーケストラ「ワールド・ドリーム・オーケストラ」の活動を始め、初代音楽監督に久石が就任した。
トラッンペットソロを吹くティム・モリソン
6月には初アルバム「WORLD DREAMS」を発売。欧米の著名な映画音楽と、「天空の城ラピュタ」など自身の作品を編曲し直した。

「あまり経験がない」という他人の曲に挑んだのは「世界中にいい曲がたくさんあるのに、オーケストラ用のものが少ないため、クラシックコンサートではなかなか演奏されない」ともどかしさを抱えていたからだという。編曲は「原曲の作曲家を尊敬しつつ、自分のやりたいことを盛り込んだ」と語る。

コンサートでは「E.T.」などで知られる作曲家ジョン・ウィリアムスと自身の映画音楽を対比させたほか、久石が「真夏のラーメン」と例える管楽器隊の音を前面に出した編成で、「ミッション・インポッシブル」などを激しく演奏、聴衆を魅了した。

台風10号の影響で天候が心配され、リハーサル中も強い風と小雨に悩まされたが、本番は雨風もなく晴れ間も見え、夕暮れに染まる大阪城を眺めながらのコンサートとなった。

途中、ツアーゲストで元ボストン交響楽団主席トランペット奏者のティム・モリソンが、阪神タイガースのTシャツに早着替えすると、観客は大きな声援で「ハプニング」を喜んだ。
野外のためオーケストラもTシャツで演奏 中央は久石
アンコール後、鳴り止まない拍手に久石が三度登場。歓声に押され、プログラム予定になかった映画「菊次郎の夏」のテーマ曲「Summer」をピアノソロで演奏すると、聴衆とオーケストラメンバーは割れんばかりの手拍子で応えた。

終演後、汗をびっしょりかいて控え室に戻った久石は、「驚いたよ。リハーサルで練習用に『Summer』を弾いたのをメンバーが覚えていて、『昼間やっていたからできるでしょ』って。みんなにうまく乗せられちゃったね」と笑った。

「ワールド・ドリーム・オーケストラ」の公演は、どの会場も子どもから大人まで様々な客層が混在していた。最近はなかなか見られなくなった光景だ。地道な活動を今後も続け、「ポップスオーケストラの」という枕詞が必要なくなった頃には、音楽を聴く底辺はずいぶんと広がっていることだろう。

初日の仙台公演のリハーサルで、久石はこんな話をしていた。「音楽にはクラシックもポップスもない。あるのはいい音楽と悪い音楽だけなんだ」(依田謙一)

(2004年8月3日 読売新聞)

 

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